発明の簡単な概要
本発明は、ファージにコードされた細胞壁分解活性、例えばムレイン分解(一般に「壁分解性(muralytic)」と呼ばれる)酵素(典型的には、宿主細胞から出るためのファージ溶解機能の中核である)が、ファージビリオンの構造的構成要素としても存在し、かつ宿主細胞中にファージが浸入するのを助けるという発見に部分的に基づいている。本明細書においてTAME(tail-associated murein-degrading enzyme)と呼ぶこれらの活性は、ファージ複製経路とは無関係に、固有の殺菌活性を有する。3種すべての形態型の各ファージ粒子は、尾部構造に関連するか、またはポドファージの場合は、頭部もしくはカプシドの微小構成要素として関連するTAMEを有すると考えられている。細胞壁が局部的に分解すると、DNA注入プロセスが容易になると考えられている。本発明は、特定のファージTAME、ORF56、すなわちブドウ球菌(staphylococcal)ミオウイルスKのorf56の生成物を説明する。特に、これまで「溶解性」物質と認識されていなかった精製ORF56が、殺菌活性を有することが判明している。さらに、切断によってORF56から誘導される殺菌性ポリペプチドも同定されている。同様または関連する供給源、例えば、進化的に多様な様々な供給源に由来する類似した構造およびドメインを有する供給源から殺菌活性をスクリーニングして、有利な特性を有するさらなる殺菌活性を発見することができる。このような供給源は、さらなる有利な特性、例えば、安定性、殺菌効率、サイズ、および基質特異性などに関する変異誘発およびスクリーニングのための開始点であってもよい。最も重要なことには、精製TAME ORF56またはその切断誘導体において見出されるよりも有意に(例えば、桁違いまたは複数倍)効率的である強力な殺菌活性が、ORF56のムレイン分解触媒ドメインおよび溶解性のブドウ球菌バクテリオシンであるリソスタフィンの非触媒的細胞壁結合ドメイン(CBD)からなるキメラにおいて見出されている。これらのTAME-CBDキメラは、殺菌活性の点で、精製TAMEよりもはるかに効率的である。さらに、TAME-CBDキメラタンパク質は、いくつかの有用な製剤混合物中で、殺菌活性の見地から有効な状態で存在する(例えば、酵素安定性を保持する)ことが示されている。これをベースとする精製タンパク質、およびこれをコードする核酸配列が、それらに対する抗体と共に提供される。標的細菌の増殖または存在を低減させるための方法を含む、前記組成物を使用するための方法が提供される。
本発明は、細胞壁分解活性の影響を受けやすい細菌を死滅させる方法であって、以下より選択される組成物を前記細菌の環境に導入する段階を含む方法を提供する:(a) ファージの尾部もしくは尾部様バクテリオシンの精製TAME成分;(b) ファージK ORF56 TAMEもしくはファージphi11の推定上のTAMEであるORF49の細胞壁分解部分;(c) ファージK ORF56もしくはファージphi11 ORF49の細胞壁分解ポリペプチドを含む、実質的に純粋なポリペプチド;または(d) 他のファージもしくは尾部様バクテリオシンに由来するTAMEホモログもしくはその断片から本質的になる薬学的組成物。供給源の例は、YP_238566(ORF007(ブドウ球菌ファージTwort))、YP_406405(gp29(リステリア(Listeria)バクテリオファージP100))、NP_765044(分泌性抗原SsaA様タンパク質(表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)ATCC12228))、YP_164769(orf134(ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)バクテリオファージLP65))、YP_492702(輸送複合体タンパク質TraG(黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)亜種aureus USA300))、AAA71958(推定上(黄色ブドウ球菌))、NP_765786(N-アセチルムラモイル-L-アラニンアミダーゼ(表皮ブドウ球菌ATCC 12228))、YP_189676(分泌性抗原前駆体SsaA関連タンパク質(表皮ブドウ球菌RP62A))、YP_189814(N-アセチルムラモイル-L-アラニンアミダーゼ(表皮ブドウ球菌RP62A))、およびさらに後述する他の指定される供給源からなる群を含む。別の供給源は、ファージphi11 ORF49、すなわち推定上の細胞壁ヒドロラーゼ(NP_803302; GeneID:1258067)である。
本発明はさらに、説明するように、細菌がブドウ球菌属に属し;かつ、具体的には、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)、および他の臨床的に重要なブドウ球菌であり;環境がインビボまたは粘膜もしくは他の器官表面上または医療用の器具もしくはインプラント上であり;導入が局所的、全身的、非経口的、または吸入によるものであり;抗生物質もしくはファージ由来生成物を含む、別の抗微生物治療が使用されるか;または、前記殺菌活性が、多数の細菌株および/もしくは多数の細菌種にわたる広範な標的特異性を有する方法も提供する。
標的細菌に対するファージ由来の殺菌活性をスクリーニングするための様々な方法が提供される。前記方法は、供給源ファージを分離可能な構造的断片に断片化する段階;どの断片が前記標的細菌に対する結合親和性を保持しているかを決定する段階;および前記断片の殺菌活性を試験し、それによって前記殺菌活性を有する構造物を同定する段階を含む。これはまた、この方法から得られるデータが米国管轄下に置かれる態様も含む。特定の態様において、標的細菌はグラム陽性細菌であるか、または殺菌活性が壁分解活性である。
変種殺菌活性を発生させるための1つの方法を含む、より多くの方法が提供される。この方法は、細胞壁分解活性を示すことを特徴とするポリペプチドをコードする遺伝子を変異誘発する段階;および改変された殺菌活性を有する変種をスクリーニングする段階を含む。このような方法から得られるデータを伝達する段階も、同様に包含されると考えられる。他の方法は、改変された殺菌活性、例えば、異なる基質代謝回転数、または温度、塩、pH、もしくは水和などを含む反応条件に対する酵素特性の感受性の変化について評価する段階以外は、前述した内容を含む。
動物の細菌感染症を治療する1つの方法を含む、治療方法が提供される。この方法は、1種または複数種の殺菌性ポリペプチドを前記動物に投与する段階を含み、前記ポリペプチドのうち少なくとも2種は、異なる細胞壁分解遺伝子に由来し;殺菌性ポリペプチドは、広範な標的殺菌活性を有し;細胞の外部に適用された場合に殺菌性タンパク質は「溶解性」であり;または、殺菌活性はムレイン分解性もしくは壁分解性であり、これらには、ムレイングリコシダーゼ(グルコサミニダーゼおよびムラミニダーゼを含む)活性、トランスグリコシラーゼ活性、リゾチーム活性、アミダーゼ活性、またはエンドペプチダーゼ活性を有するタンパク質が含まれる。
本発明は、標的細菌に対する殺菌活性を有し、かつ、最低でも、SEQ ID NO:1のアミノ酸残基620〜808またはSEQ ID NO:3の残基481〜618に対して少なくとも80%、90%、または95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、ORF56ポリペプチドまたはORF49ポリペプチドを提供する。1つの態様において、ORF56タンパク質は、SEQ ID NO:1のアミノ酸残基620〜808と全く同じ配列を含むか、または、ORF49タンパク質は、SEQ ID NO:3のアミノ酸残基481〜618と全く同じ配列を含む。さらなる態様において、本発明は、標的細菌に対する殺菌活性を有し、かつ、最低でも、SEQ ID NO:1のアミノ酸残基620〜808またはSEQ ID NO:3の残基481〜618に対して少なくとも80%、90%、または95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むORF56ポリペプチドから本質的になる組成物を提供する。
1つの態様において、本発明は、標的細菌に対する殺菌活性を有し、かつ、最低でも、SEQ ID NO:1のアミノ酸残基620〜808またはSEQ ID NO:3の残基481〜618に対して少なくとも80%、90%、または95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む ORF56ポリペプチドまたはORF49ポリペプチドを含む、組成物、例えば、薬学的組成物、診断用試薬、または殺菌性組成物を提供する。組成物は、殺菌活性を有する少なくとも1種の他のタンパク質、例えば、ファージp68に由来するp16タンパク質またはPal型「溶解性酵素」を含んでよい。組成物はまた、静菌活性または殺菌活性を有する他の成分、例えば抗生物質も含んでよい。
開示されるORF56ポリペプチドまたはORF49ポリペプチドは、ブドウ球菌種、特に、メチシリン耐性のブドウ球菌種である標的細菌の増殖を防止するのに使用することができる。別の態様において、標的細菌は、緩徐に複製する細菌種、例えば、1時間〜72時間の間、またはそれ以上、例えば、約2時間、4時間、8時間、12時間、20時間、30時間、40時間、または50時間の倍加時間を有する細菌である。
開示されるORF56ポリペプチドおよびORF49ポリペプチド、またはORF56ポリペプチドもしくはORF49ポリペプチドを含む組成物は、例えば、細菌細胞壁を酵素的に分解するために使用することができる。
別の局面において、本発明は、ORF56ポリペプチドもしくはORF49ポリペプチドまたはORF56ポリペプチドもしくはORF49ポリペプチドを含む組成物を対象に投与することによって、対象の細菌感染症を治療する方法を提供する。対象は、例えば、哺乳動物、霊長類、ヒト、家畜、伴侶動物、ヒト、家禽種、雌ウシ、ウマ、ヤギ、ネコ、ヒツジ、げっ歯動物、イヌ、ブタ、ニワトリ、カモ、ウズラ、またはガチョウでよい。展示動物、例えば、ゾウ、ライオン、トラ、シマウマ、クジラ、イルカ、およびクマもまた、本発明の組成物を用いて治療することができる。
様々な態様において、対象は雌ウシであり、かつ細菌感染症はウシ乳房炎であるか;対象はヒトであり、かつ細菌感染症が、メチシリン耐性ブドウ球菌種によって引き起こされるか;または、対象は家禽種であり、かつ細菌感染症は皮膚もしくは羽毛上で起こる。
別の局面において、本発明は、細菌をORF56ポリペプチドまたはORF49ポリペプチドと接触させ、かつ細菌へのORF56ポリペプチドまたはORF49ポリペプチドの結合を検出することによって、細菌を検出するか、または疾患を引き起こす細菌を同定する方法を提供する。好ましい態様において、ORF56ポリペプチドまたはORF49ポリペプチドは、検出可能に標識される。
1つの局面において、本発明は、ORF56ポリペプチドもしくはORF49ポリペプチドまたはORF56ポリペプチドもしくはORF49ポリペプチドを含む組成物に表面を接触させることによって、表面を消毒する方法を提供する。この消毒方法を用いて、表面のすべての細菌、または複数もしくは特定の細菌種もしくは株、例えばブドウ球菌種を減少させるか、または排除することができる。
1つの局面において、本発明は、以下の特性のうち少なくとも1種を特徴とする実質的に純粋なまたは単離されたポリペプチドを提供する:ORF56の残基1〜808、297〜808、363〜808、603〜808、620〜808、もしくは691〜805に対して、少なくとも17アミノ酸からなるセグメントにわたり少なくとも約85%の同一性を含むか;ORF56の残基691〜805に対して、少なくとも24アミノ酸からなるセグメントにわたり少なくとも約90%の同一性を含むか;または、ORF56に対して少なくとも85%の同一性を有しかつ重複しない、複数の異なるセグメントを含む。いくつかの付加的な特性には、以下が含まれる:例えば、ORF56の残基691〜805に対して、少なくとも17アミノ酸にわたり少なくとも約75%の同一性を有する付加的な異なるセグメント;ORF56に対して少なくとも約65%の同一性を示す、少なくとも17アミノ酸の付加的な異なるセグメント;完全長ORF56もしくはネイティブなORF56の少なくとも30%の細胞壁分解活性;ORF56の少なくとも約50%のブドウ球菌細菌株に対する壁分解活性;別の機能的なポリペプチド配列もしくはドメイン、例えば、シグナル配列;または検出可能な標識;ORF56の残基690〜769を少なくとも含む;完全長ORF56である;ORF56の1〜808、297〜808、363〜808、Met-603〜808、もしくは620〜808に対応する;CHAPドメインを含む;他のファージタンパク質を実質的に含まない;他のタンパク質性材料を実質的に含まない;抗生物質を含む、別の抗微生物物質と組み合わされている;薬学的賦形剤と混合されている;緩衝化組成物もしくは無菌組成物中に存在する;壁分解活性、グルコサミダーゼ(glucosamidase)活性、アミダーゼ活性、もしくはエンドペプチダーゼ活性より選択される細菌細胞壁分解活性を示す;多数のグラム陽性細菌株に対する殺菌活性を示す;ブドウ球菌細菌株に対する殺菌活性を示す;または、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、S.レンティス(lentis)、S.シミュランス(simulans)、およびS.カルノーサス(carnosus)として記載される1種もしくは複数種の株に対する殺菌活性を示す。
1つの局面において、本発明は、ORF56ポリペプチドもしくはORF49ポリペプチドまたは本明細書において開示するORF56ポリペプチドの切断物をコードする単離された核酸または組換え核酸を発現する発現ベクターを提供する。本発明はまた、ORF56発現ベクターを含む宿主細胞も含む。宿主細胞は、例えば、ORF56ポリペプチドまたはORF56核酸を作製するのに使用される真核細胞または原核細胞でよい。
1つの局面において、本発明は、細胞壁構成要素に選択的に結合する抗体の抗原結合部位を有する、実質的に純粋なまたは単離されたORF56ポリペプチドを提供する。このORF56ポリペプチドは、例えば、検出可能な標識に結合させるか、または標的細菌の存在を評価するために使用される、取扱い説明書付きキットの一部分として提供することができる。
1つの局面において、本発明は、細胞壁をORF56ポリペプチドまたはORF49ポリペプチドに曝露することによって、標的細菌の細胞壁を酵素的に分解する方法を提供する。この方法の段階は、例えば、細菌感受性を決定するための診断に組み入れられて、作業台表面もしくは家具表面の感受性細菌集団を少なくとも約5分の1に減少させ得るか;ORF56ポリペプチドもしくはORF49ポリペプチドを動物に導入し、前記動物の内部もしくは表面の選択された場所の感受性細菌集団を少なくとも5分の1に減少させ得るか;前記ポリペプチドを動物の表面もしくは区画に投与し得るか;個体に接種することができる死滅細菌もしくは複製能力の無い細菌を作製するための手段であり得るか;または、皮膚感染症、粘膜感染症、尿路感染症、気道感染症、鼻腔感染症、胃腸管感染症、もしくは他の細菌感染症を治療するために使用され得る。他の態様において、感受性細菌集団の減少は、例えば、2分の1、3分の1、4分の1、7分の1、9分の1、10分の1、20分の1、25分の1、50分の1、もしくは100分の1、またはさらにそれ以下への減少である。
1つの局面において、本発明は、SEQ ID NO:1の組換え切断型ORF56タンパク質を提供し、これは、ORF56タンパク質のアミノ末端から1〜620アミノ酸が切断されているか、またはORF56タンパク質のカルボキシ末端から1〜3アミノ酸が切断されており、かつ、ORF56タンパク質は細菌細胞壁分解活性を有する。残存するORF56タンパク質は、SEQ ID NO:1の対応するアミノ酸配列に対して約80%、90%、または95%の同一性を有し得る。
本発明は、ブドウ球菌株ムレイン分解生物活性を示す実質的に純粋なポリペプチドまたは組換えポリペプチドを提供し、このポリペプチドは、黄色ブドウ球菌に感染するファージの尾部関連ムレイン分解酵素(TAME)セグメントおよび異種の黄色ブドウ球菌細胞壁結合ドメインを含む。
特定の好ましい態様において、ポリペプチドは、約400KDa、約250kDa、もしくは約100KDa未満のタンパク質主鎖分子量を有するか、または、ポリペプチドは、黄色ブドウ球菌ムレインに対するペプチダーゼ活性、アミダーゼ活性、もしくはヒドロラーゼ活性を示すか、または、ポリペプチドは、カウドウイルス目ファージ、例えば、ミオウイルス科ファージ、ポドウイルス科ファージ、もしくはシホウイルス科ファージの尾部に由来する。他の態様において、ムレイン分解酵素セグメントは、ファージK ORF56、ファージphi11 ORF49、またはMRSA由来のファージに由来する。他の様々な態様において、細胞壁結合ドメインは、ブドウ球菌の細菌タンパク質、例えば、ブドウ球菌(Staph)リソスタフィンもしくはファージ尾部タンパク質に由来するか;または、以下のものを含む:細菌SH3セグメント、ORF56、S.シミュランスのリソスタフィン、もしくはファージL54aアミダーゼに由来する配列、または、結合ドメインの機能を欠く同等のポリペプチドと比べて、ポリペプチドのムレイン分解活性を少なくとも30倍増大させる、任意の細胞壁結合ドメイン構築物。
1つの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:4を含む。
例えば、ポリペプチドがクリーム剤もしくはゲル剤中に存在するか、または、例えば、少なくとも10ナノグラムのポリペプチドを含む1回量の容器中に存在する薬学的組成物もまた、提供される。このような組成物は、制御放出製剤中に存在するか;インプラント、カテーテル、もしくは医療用器具に添加されるか;または、無菌製剤もしくは緩衝化製剤中に存在してよい。
他の好ましい態様において、組成物は、鼻区画に存在するか;または乳房炎を引き起こすか、または熱傷創もしくは穿刺創に感染するか;またはメチシリン耐性であるか、もしくはバンコマイシン耐性であるブドウ球菌株に対して作用する。別の好ましい態様において、創傷を覆うために使用される包帯剤またはガーゼなどに、細菌感染の可能性を最小限に抑えるために、TAMEポリペプチドまたはTAMEポリペプチドを含むキメラタンパク質を染み込ませる。さらなる態様において、創傷は、穿刺創または熱傷である。さらに別の態様において、創傷を有する個体は、例えば、HIV感染、臓器移植および関連処置、幹細胞移植もしくは骨髄移植、または化学療法が原因で弱まった免疫系を有する。TAMEポリペプチドおよびTAMEポリペプチドを含むキメラタンパク質はまた、レシピエント中に移植する前に臓器または血液製剤を処理するのにも使用することができる。
本発明はさらに、培養物を記載するキメラポリペプチドと接触させる段階を含む、細菌培養物を処理する方法を提供する。典型的には、接触段階により、前記培養物の増殖速度は少なくとも約5分の1に低下し;もしくは、別の抗微生物療法も使用され;または、この方法は、異なる細菌株を標的とするポリペプチドのカクテルを使用する。好ましくは、処理段階により、感受性の標的細菌の増殖速度は少なくとも約30%低下し;ポリペプチドは、各標的細菌に対して少なくとも約10個のポリペプチドの化学量論量で、もしくは少なくとも約500ng/mlで投与され;または、投与の接触は、約7日未満の間、継続される。あるいは、培養物は、ブドウ球菌株、グラム陽性細菌を含むか、もしくは感染体であり、または、培養物は哺乳動物の細胞もしくは組織を含んでもよい。
本発明はさらに、ポリペプチドをコードする核酸も提供するが、これらのポリペプチドは合成タンパク質方法によって作製してもよい。かつ、この核酸を含む細胞が提供される。
本発明はさらに、TAMEポリペプチド配列または壁分解性ドメインを含むTAME配列のセグメントと細胞壁結合ドメイン(CBD)を構成する別のポリペプチドのセグメントとの融合物に由来する、等価なポリペプチドまたは関連したポリペプチドも提供する。これらのキメラ構築物は、TAME-CBDと呼ばれる。例えば、グラム陽性株ムレイン分解生物活性を示す実質的に純粋なポリペプチドまたは組換えポリペプチドであり、このポリペプチドは、グラム陽性菌感染ファージの尾部関連ムレイン分解酵素(TAME)セグメントの改変された、例えば変異誘発された配列、および/または改変された、例えば変異誘発された異種のグラム陽性菌細胞壁結合ドメインを含む。これらの場合、「変異誘発された」とは、主として、完全なTAMEタンパク質の領域が欠失し、完全長TAMEと比べて、殺菌活性もしくは酵素活性、タンパク質溶解性、および/またはタンパク質安定性を増大させる効果を有する形態のTAMEである。
[請求項101]
壁分解性ドメイン(MD)を含みかつ標的細菌に結合する異種細胞結合ドメイン(CBD)を含むキメラ尾部関連壁分解酵素(Tail Associated Muralytic Enzyme;TAME)ポリペプチドであって、該キメラTAMEポリペプチドとの接触後に、該標的細菌が増殖減少または増殖なしを示す、キメラ尾部関連壁分解酵素(TAME)ポリペプチド。
[請求項102]
MDが、ムレイングリコシダーゼ活性、グルコサミニダーゼ活性、ムラミニダーゼ活性、トランスグリコシラーゼ活性、リゾチーム活性、アミダーゼ活性、およびエンドペプチダーゼ活性からなる群より選択される活性を有する、請求項101記載のキメラTAMEポリペプチド。
[請求項103]
MDがORF56タンパク質に由来する触媒ドメインである、請求項101記載のキメラTAMEポリペプチド。
[請求項104]
MDが、リソスタフィンタンパク質由来の触媒ドメイン、ORF56タンパク質由来の触媒ドメイン、およびLytMペプチダーゼ由来の触媒ドメインから選択される、請求項101記載のキメラTAMEポリペプチド。
[請求項105]
標的細菌がブドウ球菌(Staphylococcus)種である、請求項101記載のキメラTAMEポリペプチド。
[請求項106]
標的細菌が、メチシリン耐性のブドウ球菌種である、請求項105記載のキメラTAMEポリペプチド。
[請求項107]
標的細菌が緩徐に複製する細菌種である、請求項101記載のキメラTAMEポリペプチド。
[請求項108]
細胞壁を請求項101記載のキメラTAMEポリペプチドと接触させる段階を含む、細菌の細胞壁を酵素的に分解する方法。
[請求項109]
請求項101記載のキメラTAMEポリペプチドを含む薬学的組成物を対象に投与する段階を含む、そのような治療を必要とする対象の細菌感染症を治療する方法。
[請求項110]
対象が哺乳動物である、請求項109記載の方法。
[請求項111]
対象が、ヒト、霊長類、雌ウシ、ウマ、ヤギ、ネコ、ヒツジ、げっ歯動物、イヌ、およびブタより選択される、請求項110記載の方法。
[請求項112]
対象が雌ウシであり、細菌感染症がウシ乳房炎である、請求項111記載の方法。
[請求項113]
対象がトリである、請求項109記載の方法。
[請求項114]
トリが家禽種である、請求項113記載の方法。
[請求項115]
CBDが、ORF56タンパク質およびリソスタフィンタンパク質からなる群より選択されるメンバーであるタンパク質に由来する、請求項101記載のキメラTAMEポリペプチド。
[請求項116]
MDがORF56タンパク質に由来する触媒ドメインであり、CBDがリソスタフィンタンパク質に由来する、請求項101記載のキメラTAMEポリペプチド。
[請求項117]
表面を請求項101記載のキメラTAMEポリペプチドと接触させる段階を含む、表面を消毒する方法。
[請求項118]
(a) ORF56の残基1〜808、297〜808、363〜808、603〜808、620〜808、もしくは691〜805に対して、少なくとも17アミノ酸からなるセグメントにわたり少なくとも85%の同一性を含むか;
(b) ORF56の残基691〜805に対して、少なくとも24アミノ酸からなるセグメントにわたり少なくとも90%の同一性を含むか;または、
(c) ORF56に対して少なくとも85%の同一性を有しかつ重複しない、複数の異なるセグメントを含む、
実質的に純粋なまたは単離されたポリペプチド。
[請求項119]
(a) ORF56の残基691〜805に対して、少なくとも17アミノ酸にわたり少なくとも75%の同一性を有する付加的な異なるセグメント;
(b) ORF56に対して少なくとも65%の同一性を示す、少なくとも17アミノ酸の付加的な異なるセグメント;
(c) ORF56の少なくとも30%の細胞壁溶解活性;
(d) ORF56の少なくとも50%のブドウ球菌細菌株に対する壁分解活性;
(e) 別の機能的なポリペプチド配列もしくはドメイン、例えば、シグナル配列;または
(f) 検出可能な標識
をさらに含む、請求項118記載のポリペプチド。
[請求項120]
(a) ORF56の残基690〜769を少なくとも含むか;
(b) 完全長ORF56であるか;
(c) ORF56の1〜808、297〜808、363〜808、Met-603〜808、もしくは620〜808に対応するか;
(d) CHAPドメインを含むか;
(e) 他のファージタンパク質を実質的に含まないか;
(f) 他のタンパク質性材料を実質的に含まないか;
(g) 抗生物質を含む別の抗微生物物質と組み合わされているか;
(h) 薬学的賦形剤と混合されているか;
(i) 緩衝化組成物もしくは無菌組成物中に存在するか;
(j) 壁分解活性、グルコサミダーゼ(glucosamidase)活性、アミダーゼ活性、もしくはエンドペプチダーゼ活性より選択される細菌細胞壁分解活性を示すか;
(k) 多数のグラム陰性細菌株に対する溶解活性を示すか;
(l) ブドウ球菌細菌株に対する溶解活性を示すか;または、
(m) 黄色ブドウ球菌(S. aureus)、表皮ブドウ球菌(S. epidermis)、S.レンティス(lentis)、およびS.カルノーサス(carnosus)と記載される1種もしくは複数種の株に対する溶解活性を示す、
請求項118記載のポリペプチド。
[請求項121]
請求項118記載のポリペプチドをコードする単離された核酸または組換え核酸を含む、発現ベクター。
[請求項122]
請求項121記載の核酸を含む細胞であって、
(a) 真核細胞もしくは原核細胞であるか;
(b) 該核酸を発現させてタンパク質を産生するために使用されるか;または
(c) 該核酸を発現させてタンパク質を分泌するために使用される、
細胞。
[請求項123]
請求項118記載のポリペプチドに選択的に結合する抗体の抗原結合部位を含む、実質的に純粋なまたは単離されたポリペプチド。
[請求項124]
(a) 検出可能な標識が付着しているか;または
(b) 標的細菌の存在を評価するために使用される、取扱い説明書付きのキット中に存在する、
請求項123記載のポリペプチド。
[請求項125]
細胞壁を請求項118記載のポリペプチドに曝露する段階を含む、細菌の細胞壁を酵素的に分解する方法。
[請求項126]
(a) 細菌感受性を決定するための診断に組み入れられるか;
(b) 作業台表面もしくは家具表面の感受性細菌集団を少なくとも5分の1に減少させるか;
(c) ポリペプチドを動物に導入し、前記動物の内部もしくは表面の選択された場所の感受性細菌集団を少なくとも5分の1に減少させるか;
(d) 前記ポリペプチドを動物の表面もしくは区画に投与するか;
(e) 死滅細菌もしくは溶解された細菌を個体に接種するための手段であるか;または、
(f) 皮膚感染症、粘膜感染症、尿路感染症、気道感染症、胃腸管感染症、もしくは他の細菌感染症を治療するために使用される、
請求項125記載の方法。
[請求項127]
SEQ ID NO:1の切断型ORF56タンパク質を含む組換え壁分解性タンパク質であって、該ORF56タンパク質のアミノ末端から1〜117アミノ酸が切断されているか、または該ORF56タンパク質のカルボキシ末端から1〜3アミノ酸が切断されており、かつ、細菌細胞壁分解活性を有する、組換え壁分解性タンパク質。
[請求項128]
(a) 細菌の細胞壁を分解する尾部関連ムレイン分解酵素(Tail Associated Murein-degrading Enzyme;TAME)ポリペプチド;および
(b) 細菌細胞壁に結合する異種ターゲティングドメイン
を含む、単離された殺菌性ポリペプチド。
[請求項129]
請求項128記載の単離された殺菌性ポリペプチドをコードする核酸。
[請求項130]
請求項129記載の核酸を含む宿主細胞。
[請求項131]
請求項128記載の単離された殺菌性ポリペプチドと細菌とを接触させる段階を含む、細菌を死滅させる方法。
[請求項132]
TAMEポリペプチドがグラム陽性細菌の細胞壁を分解し、かつ、ターゲティングドメインがグラム陽性細菌の細胞壁に結合する、請求項128記載の単離された殺菌性ポリペプチド。
[請求項133]
TAMEポリペプチドがブドウ球菌細菌の細胞壁を分解し、かつ、ターゲティングドメインがブドウ球菌細菌の細胞壁に結合する、請求項132記載の単離された殺菌性ポリペプチド。
[請求項134]
TAMEポリペプチドが黄色ブドウ球菌細菌の細胞壁を分解し、かつ、ターゲティングドメインが黄色ブドウ球菌細菌の細胞壁に結合する、請求項133記載の単離された殺菌性ポリペプチド。
[請求項135]
黄色ブドウ球菌感染ファージに由来する、尾部関連ムレイン分解酵素(TAME);および
異種黄色ブドウ球菌細胞壁結合ドメイン
を含む、ブドウ球菌株ムレイン分解活性を有する実質的に純粋なポリペプチドまたは組換えポリペプチド。
[請求項136]
(a) 400kDa未満のタンパク質主鎖分子量を有するか;
(b) 黄色ブドウ球菌ムレインに対するペプチダーゼ活性を示すか;
(c) カウドウイルス目(Caudoviraes)ファージの尾部に由来するか;
(d) ムレイン分解酵素セグメントがファージK ORF56に由来するか;
(e) 細胞壁結合ドメインがブドウ球菌細菌タンパク質に由来するか;
(f) 薬学的組成物中に存在するか;
(g) 制御放出製剤中に存在するか;
(h) 前記ブドウ球菌株が鼻区画内に認められるか;または
(i) 前記細胞壁結合ドメインが細菌のSH3セグメントを含む、
請求項135記載のポリペプチド。
[請求項137]
(a) 250kDa未満のタンパク質主鎖分子量を有するか;
(b) 黄色ブドウ球菌ムレインに対するアミダーゼ活性を示すか;
(c) ミオウイルス科(myoviridae)ファージの尾部に由来するか;
(d) ムレイン分解酵素セグメントがファージphi11 ORF49に由来するか;
(e) 細胞壁結合ドメインがブドウ球菌リソスタフィンに由来するか;
(f) クリーム剤もしくはゲル剤中に存在するか;
(g) インプラント、カテーテル、もしくは医療用器具に適用されるか;
(h) 前記ブドウ球菌株が乳房炎を引き起こすか、または熱傷創もしくは穿刺創に感染するか;または
(i) 前記細胞壁結合ドメインがORF56、S.シミュランス(S. simulans)のリソスタフィン、もしくはL54アミダーゼに由来する配列を含む、
請求項135記載のポリペプチド。
[請求項138]
(a) 100kDa未満のタンパク質分子量を有するか;
(b) 黄色ブドウ球菌ムレインに対するヒドロラーゼ活性を示すか;
(c) ポドウイルス科(podoviridae)ファージもしくはシホウイルス科(siphoviridae)ファージの尾部に由来するか;
(d) ムレイン分解酵素活性セグメントがMRSA由来のファージに由来するか;
(e) 細胞壁結合ドメインがファージ尾部タンパク質に由来するか;
(f) 1回量の容器中に存在するか;
(g) 無菌製剤もしくは緩衝化製剤中に存在するか;
(h) 前記ブドウ球菌株がメチシリン耐性であるか;または
(i) 前記細胞壁結合ドメインが、結合ドメインの機能を欠く同等のポリペプチドと比べて、ポリペプチドのムレイン分解活性を少なくとも30倍増大させる、
請求項135記載のポリペプチド。
[請求項139]
SEQ ID NO:4を含む、請求項135記載のポリペプチド。
[請求項140]
培養物を請求項135記載のポリペプチドと接触させる段階を含む、細菌培養物を処理する方法。
[請求項141]
(a) 接触段階により、培養物の増殖速度が少なくとも5分の1に低下するか;
(b) 別の抗微生物療法もまた使用されるか;
(c) 異なる細菌株を標的とするポリペプチドのカクテルを使用するか;
(d) 処理段階により、細菌培養物の増殖速度が少なくとも30%低下するか;
(e) ポリペプチドが各標的細菌に対して少なくとも10個のポリペプチドの化学量論量で投与されるか;
(f) 該ポリペプチドが少なくとも500ng/mlで投与されるか;
(g) 接触段階が7日未満であるか;
(h) 該細菌培養物がブドウ球菌株を含むか;
(i) 該細菌培養物がグラム陽性細菌を含むか;または
(j) 該培養物が感染体である、
請求項140記載の方法。
[請求項142]
請求項135記載のポリペプチドをコードする核酸。
[請求項143]
請求項142記載の核酸を含む宿主細胞。
[請求項144]
グラム陽性菌感染ファージの尾部関連ムレイン分解酵素(TAME)セグメントの改変配列;および
異種グラム陽性細胞壁結合ドメイン
を含む、グラム陽性株ムレイン分解生物活性を示す実質的に純粋なポリペプチドまたは組換えポリペプチド。
発明の詳細な説明
I. 緒言
本研究において、殺菌活性を示すことが現在示されている、これまで未確認であった実体、すなわちファージK ORF56を同定した。これは、壁分解活性を有するビリオンの構造的構成要素としての、ある種のミオウイルス科ファージの構成要素である。触媒部位は、タンパク質のC末端部分に位置し、かつ、システイン-ヒスチジン依存性のアミノヒドロラーゼ/ペプチダーゼ(CHAP)ドメインを示す。例えば、Rigden, et al.(2003)Trends Biochem. Sci. 28:230-234を参照されたい。CHAPドメインは様々な遺伝子のN末端領域に存在するが、少数の遺伝子では、CHAPドメインはコード領域のC近位のセグメントに存在する。本発明の一部分は、ファージタンパク質に割り当てられた「細胞壁分解活性」の特徴付けと、人工的な条件下で評価される「溶解性」機能から、典型的な細菌増殖環境の非人工的条件下での殺菌機能に分解活性を変換する能力との関係を理解することである。これらの「分解活性」は、治療的条件下で使用するための認識されていない殺菌活性の新たな供給源である可能性があり、ムラミニダーゼ活性、グルコサミニダーゼ活性、アミダーゼ活性、またはエンドペプチダーゼ活性が含まれ得る。この活性は、同定、単離することができ、かつ、例示的な精製された様々な可溶性タンパク質構築物において、著しく人工的なアッセイ条件下で試験したファージ構造物の状況以外で、標的細菌に対する殺菌活性を有することが示された。さらに、このような活性を含む組換え構築物は、抗微生物組成物および抗微生物製剤としてかなり有利な特性を有する。
同様に、シホウイルス科ファージphi11もムレイン分解活性(TAME)を有し、これは遺伝子構造のパターンによって部分的に認識される。
本研究は、ブドウ球菌ファージKの「仮定されたORF56」が壁分解活性を有すること、およびさらに、組換えタンパク質生成物が、91kDのコードされた「推定上の」翻訳産物から23kDのタンパク質にプロセッシングされると思われることを示す。ブドウ球菌細菌の様々な株を23kDの生成物に曝露すると、殺菌活性が示される。切断構築物から、殺菌活性がタンパク質翻訳産物のC近位領域においてコードされていることが示唆される。
本研究は、ORF56から作製される23kDのタンパク質生成物がCHAPドメインを有することを示す。さらに、C近位領域およびCHAPドメインを含む、23kDタンパク質生成物の16kD切断型も殺菌性である。配列相同性検索に基づき、殺菌活性の潜在的な代替供給源である様々な他の類似した構造物が同定された。異なる壁分解活性が存在する可能性があるが、細菌感受性の範囲は一般に研究されていない。したがって、様々なこれらの新規な活性は、比較的広範な標的抗細菌活性を有する可能性がある。さらに、これらの活性を示すポリペプチドの大きさが小さいことから、これらは、作製および体内での接触性もしくは関連する細胞壁標的構成要素、例えばペプチドグリカンへの接触性の面で効率的である。
ファージ療法は、最近、細菌感染症の予防および/または治療のための代替案として再び注目されている。Merril, et al.(2003)Nat. Rev. Drug Discov. 2:489-497;およびSulakvelidze, et al.(2001)Antimicrob. Agents Chemother. 45:649-659を参照されたい。あるいは、ファージにコードされたエンドリシンが、グラム陽性細菌によって引き起こされる感染症を抑制するための有効な作用物質として提案されている(Fischetti(2003)Ann. N. Y. Acad. Sci. 987:207-214)。ファージエンドリシンに関する最近の論文により、腸球菌(Enterococcus)以外の連鎖球菌(Streptococcus)およびブドウ球菌に作用する腸球菌ファージのエンドリシンの非特異性が示された(Yoong et al (2004)J. Bact. 186:4808-4812)。
ファージ構成要素に割り当てられたこれらの壁分解性標識または細胞壁分解標識は、ミオウイルス科、ポドウイルス科、およびシホウイルス科のクラスを含む多くのファージタイプに存在する。
出願者らは、これらのTAME細胞壁分解活性を用いて研究して、用語「溶解」実体に適用された人工条件下での殺菌活性に関して試験し、これらの特異的活性が比較的低いことを発見した。この制限が、極度に限定された細胞壁分解を発生させる際にある生物学的役割を有するTAME活性に固有であり、ファージDNAの注入を可能にするのに十分であるが、細胞の完全性に有害な影響を引き起こすには十分ではないことが明らかになった。特に、細菌増殖に対する影響をもたらす細胞壁分解速度は目立たず、大半の状況において、商業的な治療用途には不十分であることが判明した。
ファージタンパク質は、細胞外、しばしば動物の体外の厳しい環境に耐えるように進化した可能性が高く、かつ、標的宿主細胞を非効率的に死滅させるように進化した。実際、ファージの生活環は、感染プロセスにおいて細胞が死滅させられないことを必要とし、さもなければ、ファージの生活環は複製前に中止されると考えられる。したがって、TAMEタンパク質は、殺菌性要素として本質的に非効率的である。
したがって、出願者らは、ファージ尾部酵素が感染プロセスを補助する進化上の目的を有する一方で、標的宿主を死滅させる程に効率的にならないようにそれらが進化していることをさらに認識した。したがって、TAMEタンパク質が効率的な殺菌物質として有用になるには、TAMEタンパク質は、そのようになるための改変を必要とするはずである。本発明は、変異誘発方法、および特定の細菌または細菌上の特定の部位にTAME触媒ドメインを誘導し得る細胞壁分解モチーフを同定するために適用することができるスクリーニング方法を提供する。ORF56をモデルとして用いて、出願者らが、例えば、完全長TAMEポリペプチドが高い殺菌機能を示すのを妨げると思われる配列を除去し、かつ/または残存する触媒ドメインを異種細胞壁結合ドメインに融合することによって、十分とは言えない殺菌物質から著しく効率的かつ強力な殺菌物質にファージTAMEタンパク質を変換することができることを初めて認識した。上記のように、これらの融合物またはキメラは、本明細書においてTAME-CBDと呼ぶ。
前述したように、天然型のこれらのファージTAMEタンパク質の殺菌活性は限定されている。出願者らは、壁分解ドメインに連結されたターゲティングモチーフが、細胞壁基質における触媒部位の局部濃度の劇的な上昇に影響を及ぼすことを発見した。特定の細菌に由来するキメラタンパク質は、例えば、天然の状況で細菌表面に天然に存在する適切な細胞壁構造物に作用するTAMEタンパク質に由来する触媒セグメントと、適切な親和性を有し、かつ適切な細胞壁構造物を標的にする結合セグメントを組み合わせることによって、設計することができる。ファージ由来の細胞壁分解セグメントにターゲティングモチーフを連結することにより、所望の静菌活性、殺菌活性、または細胞壁「溶解」活性についてスクリーニングするためのいくつかの融合構築物または二機能性構築物を提供することができる。
本発明の範囲を実証するために、付加的な細胞壁分解酵素セグメントが選択され、構築物が作製された。例えば、酵素活性、例えば細胞壁分解酵素をコードする、ファージに由来するセグメント、典型的には尾部構造物が使用された。様々なファージ供給源または細菌供給源から酵素活性が単離され、かつ、同様の活性を有することが示された。ファージベースの構造物から、例えば、典型的には感染に関連したプロセスにおいて宿主に接近するためにファージが使用する公知の活性に対する配列相同性に基づいて、同様の活性を入手することができる。ファージゲノムにおける、例えばファージ尾部結合/壁浸入構造物を含むカセットにおける感染酵素の遺伝子構成に基づいて他の例を同定することができる(ファージKのORF56に対する構造的「対応物」である、黄色ブドウ球菌ファージphi11細胞壁ヒドロラーゼ(NP_803302)のORF49を参照されたい)。他の例には、黄色ブドウ球菌ファージ69由来のORF004(gi:66395297、YP_239591.1)、ファージPhiNM4由来の細胞壁ヒドロラーゼ(gi:104641981、ABF73289.1)、phi ETA2由来の細胞壁ヒドロラーゼ(gi:122891778、YP_001004324.1)、黄色ブドウ球菌ファージ85由来のORF004(gi:66394874、YP_239746.1)、およびファージROSA由来のORF004(gi:66395969、YP_240329.1)が含まれる。また、これらのドメインまたはモチーフの両方とも、不活化されたファージゲノムまたは不完全なファージゲノムに由来する、細菌ゲノム中に残されたプロファージゲノムまたは「残遺(remnant)ファージ」に由来してもよい。プロファージおよびそれらを同定するための方法は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられる、Canchaya et al., Microbiol. Mole.Biol. Rev. 67:238-276(2003)において開示されている。他の活性は、ピオシン(バクテリオシン)、または正常なファージとして増殖できない可能性があるが、不完全なゲノムの副産物として産生もしくは維持されるファージ関連構造物に由来してよい。したがって、タンパク質またはコード配列は、生存可能なファージに相当する構造物から単離されるか、またはそれらに由来してよい。さらに、これらの各構造物は、例えば前述したように、使用するのに望ましい条件下での活性を最適化するための変異誘発の開始点として役立ち得る。
II. 尾部関連ムレイン分解酵素(TAME)
尾部関連ムレイン分解酵素(TAME)は、バクテリオファージ粒子中に存在する壁分解性酵素と定義されており、好ましくはグラム陽性細菌の細菌細胞壁を消化するものが含まれるが、グラム陰性細菌または他の細菌の材料を消化することができるものにも適用され得る。典型的には、活性はペプチドグリカン分解酵素であり、かつ、1種または複数種のムラミニダーゼ、グルコサミニダーゼ、トランスグリコシラーゼ、リゾチーム、アミダーゼ、またはエンドペプチダーゼ酵素活性を有してよい。酵素は細胞壁を分解する能力を有してよく、さらに、細胞に対して「溶解性」と特徴付けられてもよいが、このような溶解性の特徴は、ファージ感染プロセスの通常の環境と比べて著しく人工的な条件下で認められる。好ましくは、これらの酵素は、ファージ構造物、尾部もしくはポドファージの尾部等価物、または、ポドファージの内部の頭部タンパク質に由来し、ファージのゲノム材料が外部環境から細菌宿主に侵入するための手段を提供する。これらのタンパク質は、尾部構造物中に最も一般に存在するため、本出願の目的において、クラス全体をTAMEタンパク質と呼ぶ。ポドファージ中の尾部等価物に関連したTAMEタンパク質の例は、ファージT7のgp16タンパク質である。gp16タンパク質は、ペプチドグリカンを攻撃するトランスグリコシラーゼである。gp16タンパク質はDNA注入を助けるが、カプシド内部に含まれており、感染中に放出された場合に尾部の一部分を形成すると思われる。例えば、Molineux(1999)The T7 family of bacteriophages、Encyclopedia of Molecular Biology. Creighton TE編、NY, John Wiley & Col、2495〜2507頁を参照されたい。
典型的には、標的細菌は、動物、特に霊長類を冒すか、または感染させるものである。しかしながら、いくつかの公衆衛生問題のように、様々な静菌用途または殺菌用途が有利に遂行されるはずである。細菌はしばしばグラム陽性クラスに分類されるが、マイコバクテリア、胞子、または他の原核生物を含む、一方にも他方にも明確に分類されない他の病理学的細菌がある。病原性細菌標的または病理学的細菌標的が最も興味深く、グラム陽性株、例えば黄色ブドウ球菌を含むブドウ球菌種、および連鎖球菌種、ならびにグラム陰性株の両方である。特に重要なグラム陰性標的種には、エシェリキア(Escherichia)属、特に大腸菌(coli)、シュードモナス(Pseudomonas)属、特に緑膿菌(aeruginosa)、カンピロバクター(Campylobacter)属、サルモネラ(Salmonella)属、ナイセリア(Neisseria)属、ヘリコバクター(Helicobacter)属、およびビブリオ(Vibrio)属が含まれる。例えば、Merck ManualおよびMerck Veterinary Manualを参照されたい。
本明細書において開示されるORF56ポリペプチドは、例えば、1種または複数種の細菌株による感染を治療するために、少なくとも1種の他の壁分解性酵素と組み合わせて使用することができる。例示的なさらなる壁分解性酵素には、例えば、ファージp68タンパク質16およびPal型「溶解性」酵素が含まれる。ファージp68タンパク質16は、例えば、Vybiral D et al.(2003), FEMs Microbiol Lett., 219, 275-283において開示されている。Pal型「溶解性」酵素は、例えば、Fischetti, et al.(2005)、米国特許出願公開第20050208038号において開示されている。
本明細書において開示されるように、TAMEタンパク質は、配列解析とファージゲノム上のコード核酸の位置決定とを組み合わせることによって当業者が同定することができる。
III. 定義
「細胞壁分解活性」とは、細菌細胞を分解、破壊、崩壊させるか、または細菌細胞の完全性を減少もしくは低下させる酵素活性である。「溶解性」という用語は、典型的には、「細胞壁分解性」を意味するために使用される。壁分解触媒活性の大半(いくつかの例外はある)が加水分解性であることが、理由の一部である。したがって、使用される専門用語の多くは、触媒メカニズムが加水分解を伴わない場合でも、「溶解性」を意味する。あるいは、ある種の所定の基質または人工基質の分解は、(標的の集団に基づいた)「溶解」活性または静菌活性についての有用なアッセイ法となり得る。ファージの文脈における「細胞壁溶解活性」は、通常、人工的条件下での試験に基づいて、ある構造物に割り当てられた特徴であるが、このような特徴は、細菌の種、科、属、または亜綱(感受性によって定義され得る)によって特殊であり得る。したがって、「細胞壁分解活性の影響を受けやすい細菌」とは、細胞壁が分解、破壊、崩壊されるか、または1種もしくは複数種の特定の細胞壁分解活性によって細胞壁の完全性が減少もしくは低下させられる細菌を意味する。他の多くの「溶解活性」は、宿主細菌細胞が起源であり、かつ、細胞分裂またはファージ放出において重要である。他のファージ由来細胞壁分解活性はファージ上に存在し、かつ、ファージ感染の様々な侵入段階で役立つように進化してきたが、ファージDNAが細胞中に注入される前にそれらが宿主細胞を死滅させる場合には、ファージ複製は生理学的に失敗に終わると考えられる。侵入段階で有用な構造物は、これらの活性が外部からの正常な宿主上で作動するという点で、本発明に特に関連する。好ましい態様において、細胞壁分解活性は、非ホリン酵素であるか、かつ/または非ライシン酵素である酵素によって提供される。他の態様において、細胞結合活性は、非ホリン酵素であるか、かつ/または非ライシン酵素である酵素によって提供される。
「細胞結合ドメイン」または「CBD」は、典型的には、細菌の外表面を認識するターゲティングモチーフである。グラム陽性細菌では、細菌の外表面は典型的にはムレイン層である。したがって、これらの標的の好ましい結合セグメントは、細胞表面実体であり、タンパク質、脂質、糖、または組合せを問わない。公知のリゾチームおよびエンドリシンなどに由来する結合セグメントが公知であり、かつ、それらの特性は、PubMed検索またはEntrez検索によって容易に判明する。細菌に結合する他のタンパク質には、後述するPGRP、TLR、鞭毛および線毛結合実体、ならびに標的認識に関与するファージ尾部タンパク質が含まれる。好ましい態様において、CBDは、いずれも本明細書において開示されるTAMEタンパク質または細胞壁分解タンパク質に融合される。さらに好ましい態様において、CBDは、TAMEタンパク質または細胞壁分解タンパク質と比べて異種のドメインである。すなわち、CBDタンパク質は、非TAMEタンパク質もしくは非細胞壁分解タンパク質に由来するか、または異なるファージ、細菌、もしくは他の生物に由来する細胞壁分解タンパク質に由来する。したがって、異種CBDドメインは、特異的な標的細菌にTAMEタンパク質を誘導するのに使用することができ、または、TAMEタンパク質の標的範囲を増大させるのに使用することができる。
細菌の「環境」はインビトロ環境またはインビボ環境を含んでよい。インビトロ環境は、単離または精製された細菌を使用するいくつかの態様において、典型的には反応容器中に存在するが、機器もしくは動物舎(animal quarter)、または水道施設、浄化施設、もしくは下水道施設などの公共衛生施設の表面滅菌、一般的処置を含んでよい。他のインビトロ状態は、例えば、いくつかの共生的な種または極めて接近して相互作用する種を含む、混合種集団をシミュレートしてよい。ファージおよび細菌の研究の多くは、標的宿主とファージの比率が人工的かつ非生理学的である培養物において実施される。インビボ環境は、好ましくは、細菌に感染された宿主生物である。インビボ環境には、器官、例えば、膀胱、腎臓、肺、皮膚、心臓、および血管、胃、腸、肝臓、脳または脊髄、眼、耳、鼻、舌などの感覚器官、膵臓、脾臓、甲状腺などが含まれる。インビボ環境は、組織、例えば、歯肉、神経組織、リンパ組織、腺組織、血液、痰などを含み、かつ、互いに対する相互作用にその生存が依存し得る異なる種の協同的相互作用を反映し得る。体内に導入されるカテーテル、インプラント、およびモニタリング用器具または治療用器具は、通常の用法において感染の供給源であり得る。また、インビボ環境は、食品、例えば、魚材料、肉材料、または植物材料の表面も含む。肉には、例えば、牛肉、豚肉、鶏肉、シチメンチョウ肉、ウズラ肉、または他の家禽肉が含まれる。植物材料には、野菜、果物、または果物および/もしくは野菜から製造されたジュースが含まれる。いくつかの態様において、細菌が感染した食品と接触した表面を、TAMEタンパク質またはTAMEタンパク質、例えば、ORF56もしくはORF49を含むキメラタンパク質で処理する。
ある環境に組成物を「導入する」ことは、化合物または組成物を投与すること、および細菌をそれらと接触させることを含む。前記化合物または組成物の導入は、しばしば、それらを産生または放出し得る生きた細菌によって実施することができる。
「細胞壁分解タンパク質」は、細胞壁またはその構成要素に対して検出可能な活性、例えば、実質的な分解活性を有するタンパク質である。「溶解」活性は、分解活性の極端な形態または結果であり得る。例示的な殺菌性ポリペプチドには、例えば、ORF56生成物またはORF49生成物、構造的に関連したその実体、変異体、および変種、ならびに、それらまたはtwortファージ、Kファージ、G1ファージ、もしくはphi 11ファージに由来する他の関連構築物が含まれる。具体的な好ましい配列は、例えば、ブドウ球菌(Staph)ファージG1由来のORF005 (gi:66394954、YP_240921.1を参照されたい)、ブドウ球菌ファージTwort由来のORF007(gi:66391262、YP_238566.1を参照されたい)、またはリステリアファージP100(gi:82547634、YP_406405.1を参照されたい)に由来する。同様の分解活性は、ファージ尾部上でのそれらの位置または天然ファージ、変異ファージ残遺物(例えば、ピオシンもしくはバクテリオシン)の標的宿主接触点によって特定されるか、またはプロファージ配列にコードされる。好ましいセグメントは、例えば、ORF56もしくはORF49、S.シミュランスリソスタフィン(lss)、黄色ブドウ球菌LytMペプチダーゼ、S.キャピティス(capitis)ALE1、および他のファージ尾部壁分解性ポリペプチドに由来する。
「ORF56ポリペプチド」またはその文法的変形は、ブドウ球菌ファージKのORF56にコードされた殺菌性または殺菌活性を意味する(関連した構造的特徴は、gi|48696445に関係している)。例示的な変種ORF56ポリペプチドには、ポリペプチドの多形性変種、アレル、変異体、および種間ホモログが含まれ、これらは、(1) ブドウ球菌ファージK由来のORF56核酸にコードされるアミノ酸配列(例えば、アクセッション番号YP_024486を参照されたい)またはブドウ球菌ファージTwort、ファージK、もしくはファージG1由来の壁分解性ポリペプチドのアミノ酸配列に対して、好ましくは、例えば少なくとも約8個、12個、17個、25個、33個、50個、65個、80個、100個、200個、またはそれ以上のアミノ酸からなる1つまたは複数の領域にわたり、約60%を上回るアミノ酸配列同一性、約65%、70%、75%、80%、85%、90%、好ましくは約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、またはそれ以上のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有し;(2) ORF56の活性断片のアミノ酸配列を含む実質的に精製された免疫原および保存的に改変されたその変種に対して産生させた抗体、例えばポリクローナル抗体に結合し;(3) ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、ORF56ポリペプチドをコードする天然の核酸配列および保存的に改変されたその変種に対応するアンチセンス鎖に特異的にハイブリダイズし;(4) ORF56をコードする核酸またはその断片をコードする核酸に対して、好ましくは、少なくとも約25個、50個、100個、150個、200個、250個、300個、400個、500個、600個、700個など、またはそれ以上のヌクレオチドからなる領域にわたり、約65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%を上回る、好ましくは約96%、97%、98%、99%、またはそれ以上を上回るヌクレオチド配列同一性を有する核酸配列を有する。特に好ましいセグメントは、CHAPドメインに由来する。本発明の核酸およびタンパク質には、天然分子または組換え分子の両方が含まれる。完全長ORF56ポリペプチドおよび約16kDほどの小さなそのN末端切断型断片は、典型的には細胞壁構成要素に対する分解活性を有する。細胞壁構成要素に対する分解活性に関するアッセイ法は、当業者に公知である方法に従って、かつ本明細書において説明するようにして実施することができる。好ましい態様において、ORF56ポリペプチドは、黄色ブドウ球菌種、表皮ブドウ球菌種、レンティス種、およびカルノーサス種を含む様々なブドウ球菌の細菌株に対する殺菌活性を有する。類似した比較手段が、本明細書において説明する他の配列、例えばORF49に応用可能な場合がある。
いくつかの態様において、細胞壁分解ポリペプチドをコードする核酸は、説明する細胞壁分解ポリペプチドの配列に基づいたPCRプライマーを用いて増幅することができる。例えば、ORF56ポリペプチド変種およびその断片、ならびに、おそらく壁分解活性候補物をコードする核酸は、プライマーを用いて増幅することができる。例えば、Vybiral, et al.(2003)FEMS Microbiol. Lett. 219:275-283を参照されたい。したがって、細胞壁分解ポリペプチドおよびその断片には、同定された細胞壁分解ポリペプチドの配列に基づいてPCRによって増幅される核酸にコードされたポリペプチドが含まれる。好ましい態様において、殺菌性ポリペプチドもしくは静菌性ポリペプチドまたはその断片は、説明するORF56配列またはORF49配列に関連するプライマーによって増幅される核酸にコードされる。
「ファージ粒子構成要素」とは、例えば、ファージ、例えばファージK、ファージTwort、ファージG1、またはファージphi11の頭部または尾部の構成要素を意味する。しかしながら、本発明は、多くの様々なファージタイプが、ファージ構成要素に大まかに割り当てられた「溶解」活性の供給源となり得ることを提供する。例えば、PiuriおよびHatfull(2006)「A peptidoglycan hydrolase motif within the mycobacteriophage TM4 tape measure protein promotes efficient infection of stationary phase cells」Molecular Microbiology 62:1569-1585を参照されたい。ファージ核酸とは、ファージの核酸構成要素を意味し、二本鎖核酸および一本鎖核酸、例えば、DNA、RNA、またはハイブリッド分子を含む。関連した配列が、プロファージまたは不完全なファージゲノム中に存在する場合があり、典型的には細菌宿主染色体中に組み込まれて存在する。尾部構成要素は、典型的には、標的宿主に対するファージの認識および結合を媒介し、かつ、宿主中へのファージ構成要素の侵入を助ける細胞壁分解活性を有する場合がある。
「GMP条件」とは、例えば、米国政府の食品医薬品局(Food and Drug Administration)によって定義されているような、医薬品の製造管理および品質管理に関する基準(good manufacturing practices)を意味する。類似した実施基準および規則が、欧州、日本、および大半の先進諸国で存在する。
上記の「実質的に純粋」の定義における「実質的に」という用語は、一般に、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または、より好ましくは少なくとも約90%、およびさらにより好ましくは少なくとも約95%純粋であることを意味し、タンパク質、核酸、または他の構造的分子もしくは他のクラスの分子を問わない。
「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様の様式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を意味する。天然のアミノ酸とは、遺伝コードによってコードされるもの、ならびに、後で修飾されるそれらのアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO-ホスホセリンである。アミノ酸類似体とは、天然アミノ酸と同じ基本化学構造、例えば、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合されているα炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを意味する。このような類似体は、修飾されたR基を有するか(例えばノルロイシン)、または修飾されたペプチド主鎖を有するが、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を保持している。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般的化学構造とは異なる構造を有するが、天然のアミノ酸と同様の様式で機能する、化学的化合物を意味する。
「タンパク質」、「ポリペプチド」、または「ペプチド」とは、モノマーの大半またはすべてがアミノ酸であり、かつ、アミド結合を介して相互に結合されているポリマーを意味し、あるいはポリペプチドと呼ばれる。アミノ酸がα-アミノ酸である場合、L光学異性体またはD光学異性体のいずれかが使用され得る。さらに、非天然アミノ酸、例えばβ-アラニン、フェニルグリシン、およびホモアルギニンも同様に含まれる。遺伝子にコードされていないアミノ酸もまた、本発明において使用してよい。さらに、適切な構造または反応性基を含むように修飾されたアミノ酸もまた、本発明において使用してよい。本発明において使用されるアミノ酸は、D型異性体もしくはL型異性体、またはその混合物でよい。一般に、L型異性体が好ましい。さらに、他のペプチドミメティックもまた、本発明において有用である。一般的な総説については、Spatola、Weinstein, et al.(編)(1983)CHEMISTRY AND BIOCHEMISTRY OF AMINO ACIDS, PEPTIDES AND PROTEINS、Marcel Dekker、New York、267頁を参照されたい。
「組換え」という用語は、細胞に関して使用される場合、その細胞が異種核酸を複製するか、または異種核酸にコードされたペプチドもしくはタンパク質を発現することを示す。組換え細胞は、ネイティブ(非組換え)型の細胞内には存在しない遺伝子を含んでよい。また、組換え細胞は、遺伝子が人工的な手段によって改変され、かつ細胞に再導入されたネイティブ型の細胞中に存在する遺伝子を含んでもよい。この用語はまた、細胞から核酸を除去することなく改変された細胞に内因性の核酸を含む細胞も含む。このような改変には、遺伝子置換、部位特異的変異、および関連した技術によって得られるものが含まれる。特に、配列の融合物を作製してもよく、例えば、所望の配列の上流に上流分泌カセットを組み入れて、分泌タンパク質生成物を生成させてよい。
「融合タンパク質」は、元来のもしくはネイティブな完全長タンパク質をコードするアミノ酸配列またはその部分配列に加えた、それらの代わりの、それらより小さい、かつ/またはそれらとは異なるアミノ酸配列を含むタンパク質を意味する。複数の付加的なドメイン、例えば、1つのエピトープタグもしくは精製タグ、または複数のエピトープタグもしくは精製タグを、本明細書において説明す細胞壁溶解性タンパク質に付加することができる。例えば、(混合されたコロニーもしくは生物膜の標的生物もしくは関連生物に対する)付加的な溶解活性、細菌カプセル分解活性、ターゲティング機能を加え得るか、または生理学的プロセス、例えば血管透過性に影響を及ぼす付加的なドメインを結合してよい。あるいは、異なるポリペプチド間の物理的親和性をもたらして複数鎖のポリマー複合体を生成させるように、ドメインを結合させてもよい。
「核酸」という用語は、一本鎖または二本鎖の形態のデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、または混合ポリマーを意味し、かつ、他に限定されない限り、天然のヌクレオチドと同様の様式で核酸にハイブリダイズする、天然ヌクレオチドの公知の類似体を包含する。別段の定めも文脈による定めも無い限り、個々の核酸配列は、その相補的配列を含む。
「組換え発現カセット」または単に「発現カセット」は、そのような配列に適合性のある宿主において構造遺伝子の発現に影響を及ぼすことができる核酸エレメントを有する、組換えまたは合成によって作製された核酸構築物である。典型的には、発現カセットは、少なくともプロモーターおよび/または転写終結シグナルを含む。典型的には、組換え発現カセットは、転写されるべき核酸(例えば、所望のポリペプチドをコードする核酸)およびプロモーターを含む。例えば、本明細書において説明するように、発現を実施するのに必要または役立つ付加的な因子もまた使用されてよい。特定の態様において、発現カセットはまた、宿主細胞からの発現されたタンパク質の分泌を指示するシグナル配列をコードするヌクレオチド配列も含んでよい。転写終結シグナル、エンハンサー、および遺伝子発現に影響する他の核酸配列もまた、発現カセットに含まれてよい。特定の態様において、細胞壁に対する溶解活性を含むアミノ酸配列をコードする組換え発現カセットが、細菌宿主細胞において発現される。
「異種配列」または「異種核酸」とは、本明細書において使用される場合、特定の宿主細胞に対して外来の供給源に由来するもの、または同じ供給源に由来する場合には、元来の形態から改変されたものである。異種配列の改変は、例えば、DNAを制限酵素で処理して、プロモーターに機能的に連結されることができるDNA断片を作製することにより、起こることができる。部位特異的変異誘発のような技術もまた、異種配列を改変するために有用である。
「単離された」という用語は、酵素の活性を妨害する構成要素を実質的または本質的に含まない材料を意味する。本発明の糖類、タンパク質、または核酸に関して、「単離された」という用語は、ネイティブな状態で存在する材料に通常は付随する構成要素を実質的または本質的に含まない材料を意味する。典型的には、単離された本発明の糖類、タンパク質、または核酸は、銀染色ゲル上でのバンド強度または純度を決定するための他の方法によって測定した場合に、少なくとも約80%純粋、通常、少なくとも約90%純粋、および好ましくは、少なくとも約95%純粋である。純度または均一性は、当技術分野において周知のいくつかの手段によって同定することができる。例えば、試料中のタンパク質または核酸は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離することができ、次いで、染色によって、そのタンパク質または核酸を可視化することができる。ある種の目的のためには、タンパク質または核酸の高度分離が望ましい場合があり、例えば、HPLCまたは同様の精製手段が利用され得る。
「機能的に連結される」という用語は、核酸発現制御配列(プロモーター、シグナル配列、または転写因子結合部位のアレイなど)と第2の核酸配列との機能的な連結を意味し、その際、発現制御配列は、第2の配列に対応する核酸の転写および/または翻訳に影響を及ぼす。
2つまたはそれ以上の核酸またはタンパク質配列という文脈において、「同一の」または「同一性」パーセントという用語は、配列比較アルゴリズムのうち1種を用いてまたは目視検査によって測定されるように、比較し、かつ最大限一致するようにアラインさせた場合に、同じであるか、または同じであるアミノ酸残基もしくはヌクレオチドを特定の比率有する、2つまたはそれ以上の配列または部分配列を意味する。
2つの核酸またはタンパク質という文脈において、「実質的に同一」という語句は、以下の配列比較アルゴリズムのうち1種を用いてまたは目視検査によって測定されるように、比較し、かつ最大限一致するようにアラインさせた場合に、適切なセグメントにわたり、少なくとも約60%を上回る核酸配列同一性またはアミノ酸配列同一性、65%、70%、75%、80%、85%、90%、好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のヌクレオチド同一性またはアミノ酸残基同一性を有する、2つまたはそれ以上の配列または部分配列を意味する。好ましくは、実質的な同一性は、少なくとも約13個、15個、17個、23個、27個、31個、35個、40個、50個、またはそれ以上のアミノ酸残基長に対応する配列の領域にわたり、より好ましくは、少なくとも約100個の残基の領域にわたり存在し、および最も好ましくは、これらの配列は少なくとも約150個の残基にわたり実質的に同一である。コドンの重複性が考慮される可能性があるが、より長い対応する核酸長が意図される。最も好ましい態様において、これらの配列は、コード領域の全長にわたり実質的に同一である。
配列比較をする場合、典型的には、一方の配列が参照配列の役割を果たし、それに対してテスト配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、テスト配列および参照配列がコンピューターに入力され、必要な場合には、部分配列座標が指定され、かつ配列アルゴリズムプログラムのパラメーターが指定される。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメーターに基づいて、参照配列に対するテスト配列の配列同一性パーセントを算出する。
比較のための最適な配列アライメントは、例えば、SmithおよびWaterman(1981)Adv. Appl. Math. 2:482の局所的相同性アルゴリズムによって、NeedlemanおよびWunsch(1970)J. Mol. Biol. 48:443の相同性アライメントアルゴリズムによって、PearsonおよびLipman(1988)Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 85:2444の類似性検索法によって、これらのアルゴリズムおよび関連したアルゴリズムのコンピュータによる実行によって(Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または目視検査(一般に、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubel, et al.編、Current Protocols、Greene Publishing Associates, Inc.および John Wiley & Sons, Inc.の合弁会社(1995年および補遺)(Ausubel)を参照されたい)によって、実施することができる。
配列同一性および配列類似性のパーセントを決定するのに適しているアルゴリズムの例は、Altschul, et al.(1990)J. Mol. Biol. 215:403-410およびAltschuel, et al.(1977)Nucleic Acids Res. 25:3389-3402にそれぞれ記載されているBLASTアルゴリズムおよびBLAST 2.0アルゴリズムである。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(ncbi.nlm.nih.gov/)または同様のソースから公式に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さのワードとアラインさせた場合に、何らかの正の値の閾値スコアTに合致するか、またはそれを満たす、クエリ配列中の長さWの短い「ワード」を同定することによって、高スコア配列ペア(HSP)を最初に同定する段階を含む。Tは、近隣ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul et al. 前記)。これら初期の近隣ワードのヒットは、それらを含むより長いHSPを発見するための検索を開始する種の役割を果たす。次いで、これらのワードヒットを、累積アライメントスコアが増加し得る限り、各配列に沿って両方向に伸長させる。累積スコアは、ヌクレオチド配列の場合、パラメーターM(1対の一致残基に対するリワード(reward)スコア、常に0より大きい)およびパラメーターN(不一致残基に対するペナルティスコア、常に0未満)を用いて、算出する。アミノ酸配列の場合は、スコアリングマトリックスを用いて、累積スコアを算出する。各方向へのワードヒットの伸長は以下の場合に停止される:累積アラインメントスコアが、その最大達成値から量Xだけ減少する場合;累積スコアが、1つもしくは複数の負スコアの残基アライメントの蓄積が原因で、0以下になる場合;または、いずれかの配列の末端に達した場合。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T、およびXは、アライメントの感度および速度を決定する。(ヌクレオチド配列用の)BLASTNプログラムは、初期設定として、ワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4、および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムは、初期設定として、ワード長(W)3、期待値(E)10、およびBLOSUM62スコアリングマトリックス(HenikoffおよびHenikoff(1989)、Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 89:10915を参照されたい)を使用する。
配列同一性パーセントの算出のほかに、BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計学的解析も実施する(例えば、KarlinおよびAltschul(1993)Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 90:5873-5787を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの測定値は、最小確率和(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間の一致が偶然によって起こると考えられる確率の指標を与える。例えば、核酸は、テスト核酸を参照核酸と比較した際の最小確率和が約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、および最も好ましくは約0.001未満である場合、参照配列に類似しているとみなされる。
2つの核酸配列またはタンパク質が実質的に同一であるというさらなる指標は、後述するように、第1の核酸にコードされるタンパク質が、第2の核酸にコードされるタンパク質と免疫学的に交差反応性であることである。したがって、例えば、2つのペプチドが保存的置換によってのみ異なる場合、タンパク質は、典型的には、第2のタンパク質に実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であるという別の指標は、後述するように、それら2つの分子がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。
「特異的にハイブリダイズする」という語句は、ある分子が、特定のヌクレオチド配列が複合混合物(例えば、全細胞性)DNAまたはRNA中に存在する場合に、ストリンジェントな条件下で、その特定のヌクレオチド配列にのみ、結合、二重鎖形成、またはハイブリダイズすることを意味する。
「ストリンジェントな条件」という用語は、あるプローブが、その標的部分配列にハイブリダイズするが、他の配列にはハイブリダイズしない条件を意味する。ストリンジェントな条件は、配列依存性であり、かつ、異なる状況においては異なる。配列が長いほど、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。一般に、ストリンジェントな条件は、所定のイオン強度およびpHにおける個々の配列の熱融点(Tm)より約15℃低くなるように選択される。Tmは、(所定のイオン強度、pH、および核酸濃度下で)標的配列に相補的なプローブの50%が、平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度である。(標的配列は一般に過剰に存在するため、Tmでは、50%のプローブが平衡状態で占有されている)。典型的には、ストリンジェントな条件は、pH7.0〜pH8.3で、塩濃度が約1.0M未満のナトリウムイオン、典型的には約0.01M〜1.0M未満のナトリウムイオン濃度(もしくは他の塩)であり、かつ、温度が、短いプローブ(例えば10〜50ヌクレオチド)の場合は少なくとも約30℃であり、長いプローブ(例えば、50ヌクレオチドより長い)の場合は少なくとも約60℃である条件であると考えられる。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドのような不安定化剤を添加することによって実現してもよい。選択的ハイブリダイゼーションまたは特異的ハイブリダイゼーションの場合、陽性シグナルは、典型的にはバックグラウンドの少なくとも2倍、好ましくはバックグラウンドハイブリダイゼーションの10倍である。例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、以下のようなものでよい:50%ホルムアミド、5×SSC、および1%SDS、42℃でインキュベーション、または5×SSC、1%SDS、65℃でインキュベーションし、0.2×SSCおよび0.1%SDS中、65℃で洗浄。PCRの場合、約36℃の温度が、低ストリンジェンシーの増幅には典型的であるが、アニーリング温度は、プライマー長に応じて約32℃〜48℃の間を変動してよい。高ストリンジェンシーのPCR増幅の場合、約62℃の温度が典型的であるが、高ストリンジェンシーのアニーリング温度は、プライマー長および特異性に応じて約50℃〜約65℃までの範囲にわたってよい。高ストリンジェンシー増幅および低ストリンジェンシー増幅の両方のための典型的なサイクル条件は、90℃〜95℃で30秒〜120秒間の変性段階、30秒〜120秒間続くアニーリング段階、および約72℃で1分〜2分間の伸長段階を含む。低ストリンジェンシー増幅反応および高ストリンジェンシー増幅反応のためのプロトコルおよびガイドラインは、例えば、Innis, et al.(1990)PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications, Academic Press, N.Y.において提供されている。
「あるタンパク質に特異的に結合する」または「特異的に免疫反応性」という語句は、抗体に言及する場合、タンパク質および他の生物学的物質(biologies)の不均一な集団の存在下で、そのタンパク質の存在を決定する能力のある結合反応を意味する。したがって、指定のイムノアッセイ条件下で、指定された抗体は、特定のタンパク質に優先的に結合し、試料中に存在する他のタンパク質には有意な量で結合しない。このような条件下でのタンパク質への特異的結合は、特定のタンパク質に対する特異性に関して選択された抗体を要する。特定のタンパク質と特異的に免疫反応性である抗体を選択するには、様々なイムノアッセイ形式を使用することができる。例えば、固相ELISAイムノアッセイ法は、あるタンパク質と特異的に免疫反応性であるモノクローナル抗体を選択するためにルーチン的に使用される。特異的免疫反応性を決定するために使用され得るイムノアッセイの形式および条件に関する説明については、HarlowおよびLane(1988)Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publications, New Yorkを参照されたい。
特定のポリヌクレオチド配列の「保存的に改変された変種」とは、同一もしくは本質的に同一なアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを意味し、または、そのポリヌクレオチドがアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一な配列を意味する。遺伝コードには縮重があるため、多数の機能的に同一な核酸が、任意の所与のタンパク質をコードする。例えば、コドンCGU、CGC、CGA、CGG、AGA、およびAGGはすべて、アミノ酸アルギニンをコードする。したがって、アルギニンがコドンによって指定されている各位置において、そのコドンを、コードされるポリペプチドを変更することなく、記載した対応するコドンのうちの別のものに変更することができる。このような核酸変種は、「保存的に改変された変種」の1種である、「サイレント変種」である。あるタンパク質をコードする、本明細書において説明する各ポリヌクレオチド配列は、特に言及した場合を除き、存在し得るサイレント変種も記載する。当業者は、標準的な技術により、核酸中の各コドン(通常はメチオニンに対する唯一のコドンであるAUG、および通常はトリプトファンに対する唯一のコドンであるUGG以外)を改変して、機能的に同一な分子を得ることができることを理解すると考えられる。したがって、あるタンパク質をコードする核酸の各「サイレント変種」は、典型的には、記載する各配列に潜在的に含まれる。
当業者は、あるタンパク質中の多くのアミノ酸が、そのタンパク質の機能に影響を及ぼすことなく、互いに置換され得ること、例えば、保存的置換が、開示する細胞壁溶解性タンパク質のようなタンパク質の保存的に改変された変種の基礎であり得ることを認識する。保存的アミノ酸置換の不完全なリストは以下である。以下の8グループは、それぞれ、通常は互いに対する保存的置換であるアミノ酸を含む:(1) アラニン(A)、グリシン(G);(2) アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);(3) アスパラギン(N)、グルタミン(Q);(4) アルギニン(R)、リシン(K);(5) イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、アラニン(A);(6) フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);(7) セリン(S)、トレオニン(T)、システイン(C);および (8) システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton(1984) Proteinsを参照されたい)。
さらに、当業者は、コードされる配列中の単一のアミノ酸または低比率のアミノ酸(典型的には5%未満、より典型的には1%未満)を変更、付加、または欠失させる個々の置換、欠失、または付加が、それらの変更の結果、あるアミノ酸が化学的に類似したアミノ酸で置換された、効果的に「保存的に改変された変種」であることを認識すると考えられる。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当技術分野において周知である。
当業者は、タンパク質、例えば細胞壁溶解性タンパク質、およびタンパク質をコードする核酸の多くの保存的変種が、本質的に同一の生成物を生じることを認識する。例えば、遺伝コードは縮重しているため、「サイレント置換」(例えば、コードされるタンパク質の変化をもたらさない核酸配列の置換)は、アミノ酸をコードする各核酸配列の含意された特徴である。本明細書において説明するように、配列は、好ましくは、細胞壁溶解性タンパク質を産生させるために使用される個々の宿主細胞(例えば、酵母およびヒトなど)において発現させるために最適化される。同様に、アミノ酸配列中の1つまたは数アミノ酸における「保存的アミノ酸置換」は、特性の著しく類似した異なるアミノ酸で置換され、また、特定のアミノ酸配列またはアミノ酸をコードする特定の核酸配列に著しく類似したものとして容易に同定される。任意の特定配列のこのような保存的に置換された変種は、本発明の特徴である。同様に、Creighton(1984)Proteins, W.H. Freeman and Companyも参照されたい。さらに、コードされる配列中の単一のアミノ酸または低比率のアミノ酸を変更、付加、または欠失させる、個々の置換、欠失、または付加もまた、一般的に、「保存的に改変された変種」である。
本発明の実践は、組換え核酸の構築および宿主細胞、好ましくは細菌宿主細胞における遺伝子の発現を含んでよい。特定の宿主に対して最適化したコドン使用が、しばしば適用可能である。これらの目標を達成するための分子クローニング技術は、当技術分野において公知である。発現ベクターのような組換え核酸の構築に適した多種多様のクローニングおよびインビトロ増幅方法は、当業者に周知である。これらの技術の例および多くのクローニング演習を通じて当業者に指導するのに十分な指示書は、BergerおよびKimmel、Guide to Molecular Cloning Techniques、Methods in Enzymology 152巻、AcademicPress, Inc., San Diego, CA(Berger)、ならびにCurrent Protocols in Molecular Biology、Ausubel, et al.編、Current Protocols、Greene Publishing Associates, Inc.および John Wiley & Sons, Inc.の合弁会社(1999年補遺)(Ausubel)において見出される。組換えポリペプチドの発現に適した宿主細胞は当業者に公知であり、例えば、大腸菌(E. coli)のような原核細胞、ならびに昆虫細胞、哺乳動物細胞、および真菌細胞(例えばクロコウジカビ(Aspergillus niger))を含む真核細胞が含まれる。
ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)、リガーゼ連鎖反応法(LCR)、Qβ-レプリカーゼ増幅法、および他のRNAポリメラーゼを介した技術を含むインビトロの増幅法を通じて当業者に指導するのに十分なプロトコルの例は、Berger、Sambrook、およびAusubel、ならびにMullis, et al.(1987)、米国特許第4,683,202号、PCR Protocols A Guide to Methods and Applications(Innis, et al.編) Academic Press Inc. San Diego, CA(1990)(Innis)、ArnheimおよびLevinson(1990年10月1日)C&EN 36-47、The Journal Of NIH Research(1991)3:81-94、Kwoh, et al.(1989)Proc.Nat'l Acad. Sci. USA 86:1173、Guatelli, et al.(1990)Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 87:1874、Lomell, et al.(1989)J. Clin. Chem. 35:1826、Landegren, et al.(1988)Science 241:1077-1080、Van Brunt(1990)Biotechnology 8:291-294、WuおよびWallace(1989)Gene 4:560、ならびにBarringer, et al.(1990)Gene 89:117において見出される。インビトロで増幅させた核酸をクローニングする改良法は、Wallace, et al.の米国特許第5,426,039号に記載されている。
IV. 商業的応用
説明する酵素活性の様々な応用を直ちに認識することができる。1つの重要な応用は、通常の用途では汚染される可能性がある物品の抗菌処置である。標的細菌が公衆衛生上の危険要因になる可能性がある場所、機器、または環境などをこのような実体を用いて処理することができる。対象となる場所には、標的細菌を含む材料を処理する目的または機会が存在する公共衛生施設が含まれる。これらの材料には、廃棄物、例えば液体、固体、または空気が含まれ得る。水溶性廃棄物処理施設は、廃液から標的を除去するためにこれらを組み入れてよく、酵素実体による直接処理によるか、またはこれらを産生する細胞の放出によるかは問わない。固体廃棄物施設は、標的宿主が大発生する可能性を最小限に抑えるためにこれらを導入してよい。逆に、食品を調理する区域または機器は、定期的に清掃する必要があり、本発明は、標的細菌を効果的に排除するための組成物および手段を提供する。汚染されやすい医学的環境および他の公共の環境は、標的微生物の増殖および伝搬を最小限に抑えるための同様の手段を保証してよい。これらの方法は、集中治療室用の空気ろ過システムを含む、標的細菌の滅菌排除が望ましい状況において使用することができる。
別の応用には、獣医学的状況または医学的状況における使用が含まれる。特定の細菌の存在を決定するため、または特定の標的を同定するための手段は、集団または培養物に対する選択物質の作用を利用してよい。動物およびペットの洗浄を含む、洗浄物質に静菌活性または殺菌活性を含めることが望ましい場合がある。
ORF56ポリペプチドおよび関連ポリペプチドを用いて、例えばヒトまたは動物の細菌感染症を治療することができる。これらのポリペプチドは、予防的に投与することができるか、または細菌感染症にかかった対象に投与することができる。好ましい態様において、ORF56ポリペプチドは、死滅メカニズムが宿主細胞複製に依存しないため緩徐に複製する細菌によって引き起こされる感染症を治療するのに使用される。多くの抗菌物質、例えば抗生物質は、細菌の複製に対抗するのに最も有用である。緩徐に複製する細菌は、例えば、約1〜72時間、1〜48時間、1〜24時間、1〜12時間、1〜6時間、1〜3時間、または1〜2時間の倍加時間を有する。
好ましい態様において、これらのタンパク質は、ブドウ球菌種に感染したヒトまたは他の動物を治療するのに使用される。別の好ましい態様において、ORF56タンパク質またはORF49タンパク質は、メチシリン耐性ブドウ球菌種に感染したヒトまたは他の動物を治療するのに使用される。
V. 投与
投与経路および投薬量は、感染した細菌株、感染の部位および程度(例えば、局部または全身)、ならびに治療される対象によってさまざまである。投与経路には、経口、エアロゾルもしくは肺に送達させるための他の器具、点鼻用スプレー、静脈内(IV)、筋肉内、腹腔内、くも膜下腔内、眼内、膣、直腸、局所的、腰椎穿刺、くも膜下腔内ならびに脳および/または髄膜への直接適用が含まれるが、それらに限定されるわけではない。治療的物質を送達するためのビヒクルとして使用され得る賦形剤は、当業者には明らかである。例えば、酵素は、凍結乾燥された形態で存在し、かつ、静脈注射による投与の直前に溶解されてよい。投与の投薬量は、宿主感染症において細菌当たり約0.03、0.1、0.3、1、3、10、30、100、300、1000、3000、10000またはそれ以上の酵素分子の範囲になるように企図される。タンパク質のサイズによって(それ自体が直列に結合していてもよく、または複数のサブユニット形態(二量体、三量体、四量体、および五量体など)で、または1種もしくは複数種の他の実体、例えば酵素もしくは特異性の異なる断片との組合せであってよい)、用量は、約100万〜約10兆/kg/日、および好ましくは約1兆/kg/日でよく、かつ、約10×106殺菌単位/kg/日〜約10×1013殺菌単位/kg/日でよい。
殺菌能力を評価するための方法は、無傷の複製ファージ、例えばプラーク形成単位またはpfuを評価するために当業者によって使用される方法に類似していてよいが、殺菌単位は、殺菌単位の測定後に生存している細菌数を決定することによって、より上手く評価することができる。しかしながら、非複製ファージは細菌叢上でプラークを形成しないと考えられるため、殺菌の定量はより独特である。したがって、「殺菌」単位の量を評価するための段階希釈法が、標準的なpfuの代わりに便宜的に使用される。殺菌組成物に曝露された細菌培養物の段階希釈物により、殺菌単位を定量することができる。あるいは、生存能力があるコロニー単位を有する全細菌数を比較することにより、どれだけの割合の細菌が実際に生存能力があるか、および暗に、どれだけの割合が殺菌構築物に感受性であったかを確かめることができる。人工基質または特別に調製した基質に対する活性の他の測定値は、しばしば、殺菌単位の代用指標として使用され得る。
典型的には、治療的物質は、病原性細菌の成功裡な排除が実現されるまで投与されるが、感染株の具体的な診断が判定されている間、広域スペクトル製剤を使用してもよい。したがって、本発明は、本発明の組成物の単一の剤形、ならびに複数の剤形、ならびにこのような単一の剤形および複数の剤形を送達するための持続放出手段を遂行するための方法を企図する。
肺または他の粘膜表面へのエアロゾル投与の場合、治療的組成物は、投与のために特別に設計されたエアロゾル製剤中に組み入れられる。このような多くのエアロゾルが当技術分野において公知であり、本発明はいかなる特定の製剤にも限定されない。このようなエアロゾルの例は、Schering-Plough社製のProventil吸入器であり、この噴射剤は、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、およびオレイン酸を含む。他の態様は、対象または患者の鼻経路および副鼻腔経路への投与のために設計された吸入器を含む。噴射剤成分および乳化剤の濃度は、治療で使用される個々の組成物に基づいて必要に応じて調整される。エアロゾル処置毎に投与されるべき酵素殺菌単位の数は、典型的には、10×106〜10×1013殺菌単位、および好ましくは約10×1012殺菌単位の範囲である。
殺菌能力を評価するための方法は、しばしば、無傷の複製ファージを扱う際に使用される多くの方法に類似している。特に、非複製ファージは細菌上でプラークを形成しないと考えられるため、殺菌の定量はより困難である。したがって、「殺菌」単位の量を評価するための段階希釈法が、標準的なpfu(plaque forming unit)と同様に実施されるが、これは、細菌叢上で起こる殺菌および増幅を利用することができない。殺菌組成物に曝露された細菌培養物の段階希釈物により、殺菌単位を定量することができる。あるいは、生存能力があるコロニー単位を有する全細菌数を比較することにより、どれだけの割合の細菌が実際に生存能力があるか、および暗に、どれだけの割合が殺菌構築物に感受性であったかを確かめることができる。静止活性を評価するための他の手段は、細胞内内容物(天然であるか添加されたものであるかを問わない)の放出、または天然の細胞壁構造物に対応する所定の基質もしくは調製された基質に対する酵素活性を含んでよい。
典型的には、殺菌により、細菌の複製能力が少なくとも約3分の1に低下し、かつ、約10分の1、30分の1、100分の1、300分の1など〜何桁分の1まで影響を及ぼす場合がある。しかしながら、死滅させずに細菌複製速度を減速させることさえ、有意な治療的価値または商業的価値を有する場合がある。好ましい遺伝的不活性化効率は、0.1、0.2、0.3、0.5、0.8、1、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4、5、6、7、8またはそれ以上の対数単位でよい。
VI. 製剤
本発明はさらに、薬学的に許容される賦形剤中で提供される本発明の少なくとも1種の壁分解酵素、例えばムラミダーゼを含む薬学的組成物も企図する。したがって、本発明の製剤および薬学的組成物は、細菌に特異的な単離された酵素セグメント;同じまたは典型的な細菌宿主に影響を及ぼす2種、3種、5種、10種、もしくは20種またはそれ以上の酵素の混合物;および、異なる細菌または同じ細菌の異なる株に影響を及ぼす2種、3種、5種、10種、もしくは20種またはそれ以上の酵素の混合物、例えば、黄色ブドウ球菌の複数の株の増殖をまとめて阻害する酵素のカクテル混合物を含む製剤を企図する。この様式で、本発明の組成物を患者の必要に適応させることができる。化合物または組成物は、典型的には無菌またはほぼ無菌である。
「治療的有効量」とは、本明細書において、投与される対象に効果、静菌性または好ましくは殺菌性の効果をもたらす用量を意味する。厳密な用量は、治療の目的に依存し、かつ、当業者が公知の技術を用いて確かめることができる。例えば、Ansel, et al. Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery; Lieberman(1992)Pharmaceutical Dosage Forms(1巻〜3巻)、Dekker, ISBN 0824770846, 082476918X, 0824712692, 0824716981; Lloyd(1999)The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding;およびPickar(1999)Dosage Calculationsを参照されたい。当技術分野において公知であるように、タンパク質分解、全身送達対局所送達、および新規のプロテアーゼ合成速度、ならびに年齢、体重、全体的健康状態、性別、食生活、投与時間、薬物相互作用、コロニー中の細菌成分のスペクトル、および病態の重症度に対する調整が必要である場合があり、これは、当業者がなんらかの実験法を用いて確認することができる。
様々な薬学的に許容される賦形剤は、当技術分野において周知である。本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される賦形剤」は、組成物の活性成分と組み合わせられた場合に、その成分が生物活性を保持することを可能にし、かつ、対象の免疫系との破壊的反応を引き起こさない材料を含む。これらは、安定化剤、保存剤、塩、または糖複合体もしくは結晶などを含んでよい。
例示的な薬学的担体には、無菌の水性または非水性の溶液、懸濁液、および乳濁液が含まれる。例には、リン酸緩衝化生理食塩水溶液、水、油性/水性乳濁液のような乳濁液、および様々なタイプの湿潤剤など標準的な薬学的賦形剤が含まれるが、それらに限定されるわけではない。非水性溶液の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、およびオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルである。水性担体には、生理食塩水および緩衝化媒体を含む、水、アルコール性/水性溶液、乳濁液、または懸濁液が含まれる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲルまたは不揮発性油が含まれる。静脈内用ビヒクルには、液体および栄養素補充液、ならびに電解質補充液(例えばリンゲルデキストロースをベースとするもの)などが含まれる。他の態様において、これらの組成物は、徐放粒子、ガラスビーズ、包帯、眼内挿入物、および局所用形態を含む固体マトリックス中に組み入れられる。
本発明の酵素を含む組成物はまた、例えば、本発明に従って後で溶解および使用するために、当技術分野において周知の手段を用いて凍結乾燥することもできる。
また、リポソーム送達用の製剤、および糖結晶を含むマイクロカプセル中に入れた酵素を含む製剤も対象である。このような賦形剤を含む組成物は、周知の従来の方法によって調製される(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第43章、第14版、Mack Publishing Col, Easton PA 18042, USAを参照されたい)。
一般に、薬学的組成物は、顆粒剤、錠剤、丸剤、坐剤、(例えば、経口送達用に適応された)カプセル剤、マイクロビーズ、マイクロスフェア、リポソーム剤、懸濁剤、軟膏剤、およびローション剤など様々な形態で調製され得る。経口使用および局所使用に適した医薬品グレードの有機または無機の担体および/または希釈剤が、治療的に活性な化合物を含む組成物を構成するために使用され得る。当技術分野に公知の希釈剤には、水性媒体、植物および動物の油および脂肪が含まれる。製剤は、安定化剤、湿潤剤および乳化剤、浸透圧を変更するための塩、または適切なpH値を保証するための緩衝剤を含んでよい。
薬学的組成物は、「溶解性」酵素に加えて他の構成要素を含んでよい。さらに、薬学的組成物は、複数種の活性成分、例えば、2種もしくはそれ以上、3種もしくはそれ以上、5種もしくはそれ以上、または10種もしくはそれ以上の異なる酵素を含んでよく、その際、これらの異なる酵素は同じ細菌、異なる細菌、または付随的な細菌に対して特異的でよい。例えば、薬学的組成物は、複数の(例えば、少なくとも2種またはそれ以上)の所定の壁分解酵素を含んでよく、その際、組成物中のこれらの酵素のうち少なくとも2種は異なる細菌特異性を有する。このようにして、治療的組成物は、異なる細菌の混合感染症を治療するために適合させることができ、または、特定の施設環境において一般に認められる様々なタイプの感染症に対して有効となるように選択された組成物であり得る。例えば、感染症において(例えば感染部位中に)存在すると推測される異なる細菌または重大な意味を持つ細菌(例えば、株、種など)に対して有効な少なくとも1種の構成要素を含むように、異なる特異性を有する様々なバクテリオファージに由来する異なるグループの壁分解性または「溶解性」実体を選択することによって、選択の組合せが起こり得る。上記のように、壁分解酵素は、従来の抗微生物物質のような他の作用物質と組み合わせて投与することができる。いくつかの態様において、酵素および抗生物質を同じ製剤内で投与することが望ましい場合がある。
VII. 方法論
本発明を実施するいくつかの局面は、一般臨床微生物学の周知の方法、バクテリオファージを取り扱うための一般的方法、ならびにバイオテクノロジーの一般的基礎、原理、および方法を含む。このような方法に関する参考文献を下記に列挙する。これらは、あらゆる目的のために、参照により本明細書に組み入れられる。
A. 一般臨床微生物学
一般微生物学は、微生物の研究である。例えば、
を参照されたい。
B. バクテリオファージを取り扱うための一般的方法
バクテリオファージを取り扱うための一般的方法は周知である。例えば、
を参照されたい。
C. バイオテクノロジーの一般的基礎、原理、および方法
バイオテクノロジーの一般的基礎、原理、および方法は、例えば、
に記載されている。
D. 変異誘発;部位特異的、ランダム、シャッフリング
本明細書において提供される構造および機能の説明に基づいて、好ましい特徴を最適化し得るホモログおよび変種を単離または作製することができる。したがって、ファージ侵入機能の付加的な触媒セグメントは、構造相同性により、または特徴的な遺伝子構成モチーフ中に存在する実体を評価することにより、発見することができる。ファージ尾部遺伝子は、典型的には特定の遺伝子配列中に存在し、かつ、対応する配列中に存在する他の実体は、細胞壁分解機能に関して試験することができる。これらはまた、構造物の変種をスクリーニングするための開始点としても役立つ場合があり、例えば、このような構造物を変異誘発し、かつ、所望の特徴、例えば、より広範な基質特異性を有するものをスクリーニングする。変異誘発の標準的方法を使用することができ、例えば、Johnson-Boaz, et al.(1994)Mol. Microbiol. 13:495-504、米国特許第6,506,602号、第6,518,065号、第6,521,453号、第6,579,678号、およびそれらにより、またはそれらの中で引用されている参考文献を参照されたい。
結合セグメントを同様に同定することができ、かつ、優勢な標的モチーフまたは特定の標的モチーフを、それらと特異的に相互作用する結合ドメインに関してスクリーニングすることができる。これらの標的の多くは、様々な潜在的標的株上に存在する、高発現されるタンパク質、炭水化物、または脂質を含む構造物でよい。細胞壁に結合する多くのタンパク質が公知であるが、2つのファミリーは、昆虫から哺乳動物までの種に存在するペプチドグリカン認識タンパク質(PGRP)(例えば、
を参照されたい)を含む。これらのタンパク質のC末端にはアミノ酸約160個の保存されたセグメントが存在し、他のものは、PubMedまたは配列検索によって発見することができる。細菌に結合するタンパク質の別のグループは、toll様受容体(TLR)、具体的には、細菌LPSを直接検出するTLR4;細菌リポタンパク質、ペプチドグリカン、および酵母ザイモザンに結合するTLR2;二本鎖RNAに結合するTLR3;および細菌鞭毛上のタンパク質であるフラゲリンを認識するTLR5である。細菌細胞の外側に存在する線毛構造物は、タンパク質が結合のために標的とする別の構造物であり得る。変異誘発により、結合選択性を広げるか、またはセグメントもしくは構築物全体の安定性を高めることができ、欠失戦略により、外来性セグメントを除去することができる。
グラム陽性細菌細胞壁の構成要素は、グラム陰性細胞壁の構成要素と、または場合によっては他のマイコバクテリアもしくは胞子と共有されてよい。しかしながら、ファージの接近に対する付加的な障壁としても役立ち得る壁の付加的な層が、グラム陰性菌中に存在する場合がある。ファージまたは別の場所に由来する他の活性を組み合わせて、より複雑なグラム陰性細胞壁構造物に侵入することができる。特に、複数の触媒セグメントは複数の活性を提供することができ、これらの活性は、単一の構築物内で相乗的に機能し得るか、または、別の治療的物質、例えば抗生物質または抗微生物物質と組み合わされた場合に相乗効果を提供し得る。
ターゲティング部分は、触媒断片の局部濃度を上昇させ得るが、適切な長さのリンカーもまた、壁分解事象の数を局部的に増加させ得る。したがって、標的モチーフおよび触媒モチーフと適合性があるか、または適切な長さのリンカーが有用な場合があり、かつ、標的細菌の静止または死滅をもたらす触媒的侵入活性を増大させ得る。
本発明から得られる概念上の進歩の一部分は、ファージが、細胞外で、しばしば生物学的に住みにくい条件下で生存するように選択されたという認識である。したがって、これらの構造物は、特に丈夫かつ頑強、かつ、別の状況ではファージを不活性化し得る環境条件に耐性である可能性が高い。住みにくい環境、例えば、温度、塩、酸化性もしくは反応性の極端な状態、および高圧などの極端な環境中に生息する細菌は、細胞外で生存するのに特に適応したファージを有する可能性が高い。したがって、これらは、丈夫で、それらの極端な状態に耐性であり、かつ恐らくは、同様の選択に供されていないタンパク質よりも容易にその状況を生き抜くことができる。また、これらの供給源に由来するポリペプチドは、様々な精製プロセス、貯蔵、および薬理学的使用条件においてより安定である可能性が高い。本発明のさらに別の局面は、TAME構造物の目的は、標的細菌を認識し、結合することであるが、その細胞を直ちに死滅させることではないという推定に由来する。したがって、TAMEは、商業的に実施可能な使用条件下での殺菌にあまり有能にならないように進化した。商業的に実用的なぎりぎりの殺菌活性を増大させ得るかを調べるために、ORF56構築物を試験した。実際には、ポリペプチド欠失の組合せおよび結合機能物の結合により、より魅力的なレベルの商業的実現可能性まで活性が増大した。細胞壁ターゲティング部分への結合により、細胞壁分解活性部位での局部的基質濃度を上昇させることができ、かつ、天然TAMEに由来する配列を欠失させることにより、ファージが細胞内で複製できるようになる前に宿主を死滅させるのを防ぐために殺菌速度を制限するように採用された可能性がある特徴のうちいくつかを欠失させることができる。そして、これらの特徴は、ファージと同様に、これらの用途のために望ましい特性を集め、かつそれに関してスクリーニングするための開始点として遍在的に存在する。
E. スクリーニング
変異体または新規の機能的セグメント候補を評価するためのスクリーニング方法を考案することができる。ファージ粒子の精製調製物を、ファージ構造物上のこのような遺伝子産物の存在に関してスクリーニングすることができる。結合は、標的細胞上の標的結合の親和性および数を決定するために、未精製の細菌培養物、単離されば細菌細胞壁構成要素、ペプチドグリカン調製物、合成基質、または精製した反応物を使用してよい。標的株の細胞壁の完全性を評価するための侵入アッセイ法または壁分解アッセイ法を考案することができ、菌叢阻害アッセイ法、培養物の生存能力試験、(例えば、結合モチーフに関して説明するような)細胞壁調製物もしくは他の基質に対する活性、または触媒作用の際の細胞壁の構成要素(例えば、糖、アミノ酸、ポリマー)の放出である。アミダーゼ活性は、可溶性のN-アセチルヘキソースアミンの放出(例えば、改良されたモーガン・エルソン反応)、またはDNFBアッセイ法を用いた遊離アミノ基に関するアッセイ法によるエンドペプチダーゼ活性(ala-glyエンドペプチダーゼに対してはL-アラニン、gly-glyエンドペプチダーゼに対してはL-グリシン)により測定することができ、これらのアッセイ法は3つともすべて、Petit, et al.(1966)「Peptide cross-links in bacterial cell wall peptidoglycans studied with specific endopeptidases from Streptomyces albus G」Biochemistry 5:2764-76; PMID:5968582に基づいている。gly-glyエンドペプチダーゼ活性はまた、N-アセチル化ヘキサグリシン(アセチル-Gly6)に由来する遊離アミノ基の放出として測定することともできる。Kline, et al.(1994)「A colorimetric microtiter plate assay for lysostaphin using a hexaglycine substrate」Anal. Biochem. 217:329-331; PMID:8203764を参照されたい。
リンカー特徴を試験して、個々のリンカーの結合もしくは触媒作用に対する影響を比較するか、または断片の様々な向きを比較することができる。標的のパネルは、より広い範囲またはより狭い範囲の標的細菌に作用する触媒断片に関してスクリーニングすることができ、かつ、パネルは、細胞壁構成要素を共有し得る他の微生物、例えばマイコバクテリアまたは胞子を含んでよい。これは、例えば、S.カルノーサス、表皮ブドウ球菌、S.シミュランス、およびS.レンティスの単離物を含む関連するブドウ球菌株のより広範なパネルを利用してよい。より多数の候補物または変種のスクリーニングを可能にする戦略を考案することができる。
細胞壁分解活性を試験するための1つの方法は、穏やかに作用する洗浄剤または変性剤でファージを処理して、構造的に結合したタンパク質を遊離させることである。細菌細胞に対する壁分解活性または「溶解」活性に関して、これらのタンパク質をさらに試験する。別の方法は、ファージ耐性細菌宿主に対する細胞壁分解活性または外因性溶菌(LO)の検査である。ファージの構造的構成要素に関連した壁分解活性または「溶解」活性を評価するための第3の方法は、ザイモグラムアッセイ法の実施であり、例えば、純粋なファージ調製物を、高圧滅菌した宿主細菌細胞を組み入れたSDS-ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動させる。ゲル上のタンパク質はインサイチューで復元され、次いで、これらは細胞壁構成要素に作用して、メチレンブルー色素でゲルの残りが青色に染色される際に、染色されない(clear)「溶解」領域を生じる。例えば、Lepeuple, et al,(1998)「Analysis of the bacteriolytic enzymes of the autolytic lactococcus lactis subsp. cremoris strain AM2 by renaturing polyacrylamide gel electrophoresis:identification of a prophage-encoded enzyme」Appl. Environ. Microbiol. 64:4142-428, PMID:9797258を参照されたい。染色されない領域を可視化し、かつこれらの領域に由来するタンパク質バンドを溶出させ、例えばN末端配列決定または質量分析によってアイデンティティを決定する。次いで、これらのタンパク質をコードするORFを単離することができる。
VIII. 細胞壁分解性ポリペプチドまたは結合ポリペプチドをコードする核酸の単離
例えば、ブドウ球菌ファージK、Twort、G1、またはphi11に由来する前述の細胞壁「溶解性」タンパク質または結合タンパク質、およびそれらの配列の保存的に改変された変種をコードする核酸が同定された。これらのコードされた細胞壁「溶解性」タンパク質は、細胞壁分解活性を有し、かつ、同定されたCHAPドメインをコードするもの、特に、CHAPドメインがC近位であるものは、主要な候補物である。代替の供給源には、ファージ尾部様構造物(例えば、ピオシンまたは欠陥のあるファージ様粒子)、または「溶解」活性を含むエレメントの独特な特徴を有する、例えば、このような構造物に特徴的な遺伝子構成を示すゲノム配列が含まれる(例えば、Rybchin(1984)「Genetics of bacteriophage phi 80--a review」Gene 27:3-11; PMID:6232171を参照されたい)。
また、細胞壁「溶解性」ポリペプチドをコードする核酸の例は、本発明の核酸態様にも関連している。このような核酸を得る方法は、当業者によって認識される。ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)、リガーゼ連鎖反応法(LCR)、転写ベースの増幅系(TAS)、または自己維持配列複製系(SSR)などインビトロの方法によって、適切な核酸(例えば、cDNA、ゲノム、または部分配列(プローブ))をクローニング、または増幅することができる。合成方法論の他に、多種多様のクローニングおよびインビトロ増幅の方法論が当業者に周知である。これらの技術の例および多くのクローニング演習を通じて当業者に指導するのに十分な指示書は、BergerおよびKimmel、Guide to Molecular Cloning Techniques、Methods in Enzymology 152、AcademicPress, Inc., San Diego, CA(Berger); Sambrook, et al.(1989)Molecular Cloning -A Laboratory Manual(第2版)1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Press, NY,(Sambrook, et al.); Current Protocols in Molecular Biology、Ausubel, et al.編、Current Protocols、Greene Publishing Associates, Inc.および John Wiley & Sons, Inc.の合弁会社(1994年補遺)(Ausubel);Cashion, et al.、米国特許第 5,017,478号;ならびにCarr、欧州特許第0,246,864号において見出される。
細胞壁分解ポリペプチドをコードするDNAは、例えば、制限酵素を用いた適切な配列のクローニングおよび制限を含む、前述の適切な方法によって調製することができる。1つの好ましい態様において、細胞壁分解ポリペプチドをコードする核酸は、ルーチンなクローニング方法によって単離される。例えばアクセッション番号YP_024486で提供されるような細胞壁分解ポリペプチドのヌクレオチド配列を用いて、(例えば、サザンブロットまたはノーザンブロットにおいて)、そのポリペプチドをコードする遺伝子、または全RNA試料中の細胞壁分解タンパク質をコードするmRNAに特異的にハイブリダイズするプローブを提供することができる。細胞壁「溶解性」タンパク質をコードする標的核酸が同定されると、当業者に公知の標準的方法に従ってこれを単離することができる(例えば、Sambrook, et al.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、1〜3巻)Cold Spring Harbor Laboratory; Bergerおよび Kimmel(1987)Methods in Enzymology、第152巻:Guide to Molecular Cloning Techniques, San Diego:Academic Press, Inc.; またはAusubel, et al.(1987)Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley-Interscience, New Yorkを参照されたい)。さらに、単離された核酸を制限酵素で切断して、完全長の細胞壁分解ポリペプチドをコードする核酸、または、例えば、細胞壁分解ポリペプチドの触媒ドメインの部分配列を少なくともコードする部分配列を含む、その部分配列を作製することができる。次いで、細胞壁分解ポリペプチドまたはその部分配列をコードするこれらの制限酵素断片を連結して、例えば、細胞壁分解ポリペプチドをコードする核酸を作製することができる。
同様の方法を用いて、適切な細胞壁結合断片または断片間のリンカーを作製することができる。標的細菌上の優勢な表面特徴に対する親和性を有する結合セグメントを同定することができ、これらには、例えば、ファージKのORF56、S.シミュランスのリソスタフィン、L54aアミダーゼ、ファージphi11アミダーゼ、黄色ブドウ球菌リソスタフィン類似体ALE-1(GI:3287732を参照されたい);黄色ブドウ球菌NCTC 8325自己溶菌酵素中に存在する細菌SH3ドメインセグメント(YP_500516を参照されたい)、黄色ブドウ球菌JH9 N-アセチルムラモイル-L-アラニンアミダーゼファミリー2(ZP_01242312を参照されたい)、黄色ブドウ球菌Mu50アミダーゼ(NP_371437を参照されたい)、黄色ブドウ球菌RF122ファージ関連アミダーゼ(YP_417165を参照されたい)、黄色ブドウ球菌ペプチドグリカンヒドロラーゼ(AAA26662を参照されたい)、スタフィロコッカス・ヘモリチカス(Staph, haemolyticus)JCSC1435 N-アセチルムラモイル(acetylmuramoly)-L-アラニンアミダーゼ(YP_254248を参照されたい)、スタフィロコッカス・シミュランスタンパク質生成物CAA29494、細菌ペプチドグリカン認識タンパク質(PGRPまたはPGLYRP、グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌の細菌ペプチドグリカン(PGN)に結合する、昆虫から哺乳動物に至るまで存在する高度に保存されたタンパク質の大ファミリー)、ならびに、他の関連した配列、例えば、遺伝子カセット中の配列または位置に基づいたホモログに由来するものが含まれる。様々な種の細菌細胞壁が特徴付けられており、それらに結合するタンパク質が、例えばPubMedにおいてしばしば報告されている。しばしば、結合タンパク質は、Sarc相同3ドメイン(SH3)の原核生物対応物を有すると考えられる。適切な長さおよび特性のリンカーセグメントを用いて、結合ドメインおよび触媒ドメインを連結することができる。例えば、Bae, et al.(2005)「Prediction of protein interdomain linker regions by a hidden Markov model」Bioinformatics 21:2264-2270、ならびにGeorgeおよびHeringa(2003)「An analysis of protein domain linkers:their classification and role in protein folding」Protein Engineering 15:871-879を参照されたい。
適切なポリペプチドをコードする核酸またはその部分配列は、発現産物を分析することによって特徴付けることができる。発現されたポリペプチドの物理的、化学的、または免疫学的特性の検出に基づいたアッセイ法を使用することができる。例えば、その核酸にコードされたポリペプチドが例えば本明細書において説明するように細菌細胞を分解または消化する能力に基づいて、細胞壁分解ポリペプチドを同定することができる。
また、所望のポリペプチドをコードする核酸またはその部分配列は、化学合成することもできる。適切な方法には、Narang, et al.(1979)Meth.Enzymol. 68:90-99のリン酸トリエステル法、Brown, et al.(1979)Meth. Enzymol. 68:109-151のリン酸ジエステル法、Beaucage, et al.(1981)Tetra. Lett. 22:1859-1862のジエチルホスホラミダイト法、および米国特許第4,458,066号の固体支持体法が含まれる。化学合成は、一本鎖オリゴヌクレオチドを生成する。相補的配列とのハイブリダイゼーションによって、または一本鎖を鋳型として用いたDNAポリメラーゼによる重合によって、これを二本鎖DNAに変換することができる。当業者は、DNAの化学合成はしばしば約100塩基の配列に限定されるが、より短い配列のライゲーションによって、より長い配列を得ることができることを認識する。
所望のポリペプチドをコードする核酸またはその部分配列は、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)のようなDNA増幅法を用いてクローニングすることができる。したがって、例えば、核酸配列または部分配列は、1つの制限酵素部位(例えばNdeI)を含むセンスプライマーおよび別の制限酵素部位(例えばHindIII)を含むアンチセンスプライマーを用いて、PCR増幅する。これにより、所望のポリペプチドまたは部分配列をコードし、かつ、末端に制限酵素部位を有する核酸が生じる。次いで、この核酸を、第2の分子をコードし、かつ適切な対応する制限酵素部位を有する核酸を含むベクター中に容易に連結することができる。GenBankまたは他の情報源において提供される配列情報を用いて、当業者は適切なPCRプライマーを決定することができる。また、適切な制限酵素部位は、部位特異的変異誘発により、細胞壁分解ポリペプチドまたはそのポリペプチド部分配列をコードする核酸に付加することもできる。細胞壁分解ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列または部分配列を含むプラスミドは、適切な制限エンドヌクレアーゼで切断され、次いで、標準的な方法に従って、増幅および/または発現させるための適切なベクター中に連結される。インビトロの増幅法によって当業者に指導するのに十分な技術の例は、Berger、Sambrook、およびAusubel、ならびにMullis, et al.(1987)米国特許第4,683,202号; PCR Protocols A Guide to Methods and Applications(Innis, et al.編)Academic Press Inc. San Diego, CA(1990)(Innis); ArnheimおよびLevinson(1990年10月1日)C&EN 36-47; The Journal Of NIH Research(1991)3:81-94;Kwoh, et al.(1989)Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 86:1173; Guatelli, et al.(1990)Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 87:1874; Lomell, et al.(1989)J. Clin. Chem. 35:1826; Landegren, et al.,(1988)Science 241:1077-1080; Van Brunt(1990)Biotechnology 8:291-294; WuおよびWallace(1989)Gene 4:560; ならびにBarringer, et al.(1990)Gene 89:117において見出される。
細胞壁分解ポリペプチドをコードするいくつかの核酸は、同定されたポリペプチドの配列に基づいたPCRプライマーを用いて増幅することができる。
例えば、特定の核酸から発現される組換え細胞壁分解ポリペプチドの他の物理的特性を公知の所望のポリペプチドの特性と比較して、例えば、細菌特異性、結合特異性、および/または触媒活性の決定因子である、細胞壁分解タンパク質の適切な配列またはドメインを同定する別の方法を提供することができる。あるいは、細胞壁分解ポリペプチドをコードする推定上の核酸または細胞壁「溶解性」ポリペプチド組換え遺伝子を変異させることができ、かつ、未変異、天然、または対照の細胞壁分解ポリペプチドによって通常は増強される細菌「溶解性」の変化を検出することによって、細胞壁分解ポリペプチドとしてのその役割、または特定の配列もしくはドメインの役割を確立することができる。当業者は、本発明の細胞壁分解ポリペプチドの変異または改変が、それらのポリペプチドをコードする核酸を操作するための分子生物学技術、例えばPCRによって促進され得ることを認識する。他の変異誘発技術または遺伝子シャッフリング技術を、壁分解活性、壁結合特性、またはキメラ構築物と適合性のあるリンカー特徴を含む、本明細書において説明する機能的断片に適用することができる。
新規に同定された細胞壁分解ポリペプチドの機能的ドメインは、これらのポリペプチドを変異させるか、または改変するための標準的方法を用い、かつ、本明細書において説明するように受容体基質活性および/または触媒活性などの活性に関してそれらを試験することによって、同定することができる。様々な細胞壁分解タンパク質の機能的ドメインの配列を用いて、1種もしくは複数種の細胞壁分解ポリペプチドの機能的ドメインをコードするか、またはそれらを組み合わせる核酸を構築することができる。次いで、複数の活性を有するこれらのポリペプチド融合物を、所望の殺菌活性または静菌活性に関して試験することができる。同定された「溶解」活性に対する相同性に基づいた関連配列を同定し、かつ適切な基質に対する活性に関してスクリーニングすることができる。標的細胞壁構造物に結合および侵入するのに使用されるファージ構造物上に存在するポリペプチドに特徴的なファージ遺伝子構成特徴、例えばカセット構造物は、外側から壁を攻撃する際に有用な結合活性および/または殺菌活性もしくは静菌活性を有する可能性がある新規な配列を特定し得る。具体例には、機能的ファージゲノムの不完全な残遺物、またはファージ様遺伝子セグメントに由来する粒子を含む、ピオシン様構造物、例えば、細菌DNA中に残存する欠失もしくは変異した遺伝子残遺物を含む、プロファージ配列が含まれ得る。
細胞壁分解ポリペプチドをコードする核酸のクローニングに対する例示的なアプローチにおいて、クローニングされたポリペプチドの公知の核酸配列またはアミノ酸配列は、相互の配列同一性の量を決定するために、アラインされ、比較される。この情報は、関心対象のポリペプチド間の配列同一性の量に基づいて、細胞壁分解ポリペプチド活性、例えば、標的細菌特異性もしくは結合特異性および/または分解活性もしくは「溶解」活性を与えるか、または調節するポリペプチドドメインを同定および選択するのに使用され得る。例えば、関心対象の細胞壁分解ポリペプチドとの配列同一性を有し、かつ、公知の活性に関連するドメインを用いて、そのドメインおよび他のドメインを含み、かつそのドメインに関連する活性(例えば、細菌特異性もしくは結合特異性および/または壁分解活性)を有するポリペプチドを構築することができる。同様の戦略を適用して、細胞壁構造物、ペプチドグリカン認識タンパク質(PGRP)、ファージ尾部「溶解性」ポリペプチド、またはドメイン間で間隔を取るためのリンカーに結合する細菌SH3ドメインを単離することができる。
IX. 宿主細胞における所望のポリペプチドの発現
本発明の細胞壁分解タンパク質または他のタンパク質は、大腸菌、他の細菌宿主、および酵母を含む、様々な宿主細胞において発現させることができる。宿主細胞は、好ましくは、例えば、酵母細胞、細菌細胞、または糸状菌細胞などの微生物である。適切な宿主細胞の例には、多くの他種のうちで、例えば、アゾトバクター(Azotobacter)種(例えばA.ビネランジー(vinelandii))、シュードモナス種、リゾビウム(Rhizobium)種、エルウィニア(Erwinia)種、エシェリキア種(例えば大腸菌)、バチルス(Bacillus)、シュードモナス、プロテウス(Proteus)、サルモネラ、セラチア(Serratia)、赤痢菌(Shigella)、根粒菌(Rhizobia)、ビトレオシラ(Vitreoscilla)、パラコッカス(Paracoccus)、およびクレブシエラ(Klebsiella)種が含まれる。これらの細胞は、サッカロマイセス属(Saccharomyces)(例えば、S.セレビシエ(cerevisiae))、カンジダ属(Candida)(例えば、トルラ酵母(C. utilis)、C.パラプシローシス(parapsilosis)、C.クルセイ(krusei)、C.バーサチリス(versatilis)、C.リポリティカ(lipolytica)、C.ゼイラノイデス(zeylanoides)、C.グイリアモンジ(guilliermondii)、C.アルビカンス(albicans)、およびC.フミコラ(humicola))、ピキア属(Pichia)(例えば、P.ファリノサ(farinosa)およびP.オーメリ(ohmeri))、トルロプシス属(Torulopsis)(例えば、T.カンジダ、T.スファエリカ(sphaerica)、T.キシリナス(xylinus)、T.ファマタ(famata)、およびT.バーサチリス)、デバリオマイセス属(Debaryomyces)(例えば、D.サブグロボサス(subglobosus)、D.カンタレリ(cantarellii)、D.グロボサス(globosus)、D.ハンセニイ(hansenii)、およびD.ジャポニカス(japonicus))、ザイゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces)(例えば、Z.ロウキシイ(rouxii)およびZ.バイリイ(bailii))、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)(例えば、K.マルキシアヌス(marxianus))、ハンゼヌラ属(Hansenula)(例えば、H.アノマラ(anomala)およびH.ジャジニイ(jadinii))、ならびにブレタノマイセス属(Brettanomyces)(例えば、B.ランビカス(lambicus)およびB.アノマラス(anomalus))を含む、いくつかの属のいずれかのものでよい。有用な細菌の例には、エシェリキア属、エンテロバクター属(Enterobacter)、アゾトバクター属、エルウィニア属、クレブシエラ属、バチルス属、シュードモナス属、プロテウス属、およびサルモネラ属が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
宿主細胞において発現された後、細胞壁分解ポリペプチドは、適切な細菌の増殖を妨げるために使用され得る。好ましい態様において、ORF56ポリペプチドは、ブドウ球菌細菌の増殖を減少させるために使用される。さらに好ましい態様において、このタンパク質は、黄色ブドウ球菌細菌または他の同様のブドウ球菌種の増殖を減少させるために使用される。(gly-gly結合およびgly-ala結合の両方を切断し得る)ペプチダーゼ触媒活性およびアミダーゼ触媒活性の両方を含む複数の壁分解活性を含むか、または細胞壁構築物に結合するターゲティングセグメントと活性を組み合わせた融合タンパク質を含む、このような断片を組み合わせた融合構築物を作製することができる。分解活性の組合せは、相乗的に作用して、より優れた静菌活性または殺菌活性をもたらし得る。結合標的の近くに、局部濃度の高い触媒部位のための付加的な体積を提供するために、リンカーを組み入れてもよい。
典型的には、細胞壁分解ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、所望の宿主細胞中で機能的であるプロモーターの制御下に置かれる。極めて多種多様のプロモーターが周知であり、個々の用途に応じて、本発明の発現ベクター中で使用され得る。通常、選択されるプロモーターは、そのプロモーターが活性であるべき細胞に応じて変わる。リボソーム結合部位および転写終結部位など他の発現制御配列もまた、任意で含まれる。1種または複数種のこれらの制御配列を含む構築物は、「発現カセット」と呼ばれる。したがって、本発明は、例えば、触媒断片と結合断片を組み合わせた融合タンパク質をコードする核酸が、所望の宿主細胞において高レベルで発現させるために組み入れられる発現カセットを提供する。
特定の宿主細胞において使用するのに適した発現制御配列は、しばしば、その細胞で発現される遺伝子をクローニングすることによって得られる。一般に使用される原核生物制御配列は、本明細書において、リボソーム結合部位配列と共に、任意でオペレーターと共に、転写開始のためのプロモーターを含むものと定義され、これらには、β-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)プロモーター系およびラクトース(lac)プロモーター系(Change, et al.(1977)Nature 198:1056)、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddel, et al.(1980)Nucleic Acids Res. 8:4057)、tacプロモーター(DeBoer, et al.(1983)Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 80:21-25)、ならびにλ由来PLプロモーターおよびN遺伝子リボソーム結合部位(Shimatake, et al.(1981)Nature 292:128)などの一般に使用されるプロモーターが含まれる。典型的には、個々のプロモーター系は本発明に対して決定的ではなく、原核生物中で機能する多くの利用可能なプロモーターが使用され得る。バクテリオファージT7プロモーターが様々な実施例において使用される。
大腸菌以外の原核細胞における細胞壁分解ポリペプチドの発現の場合、特定の原核生物産生種において機能するプロモーターが使用される。このようなプロモーターは、これらの種からクローニングされた遺伝子から得ることができ、または異種プロモーターを使用してもよい。例えば、trp-lacハイブリッドプロモーターは、大腸菌に加えて、バチルス属においても機能する。
リボソーム結合部位(RBS)は、便宜的には、本発明の発現カセット中に含まれる。大腸菌の例示的なRBSは、開始コドンの3〜11ヌクレオチド上流に位置する、3〜9ヌクレオチド長のヌクレオチド配列からなる(ShineおよびDalgarno(1975)Nature 254:34; Steitz in Goldberger(1979年編)Biological regulation and development:Gene expression(1巻、349頁)Plenum Publishing, NY)。
酵母においてタンパク質を発現させる場合、簡便なプロモーターには、GAL1-10(JohnsonおよびDavies(1984)Mol. Cell. Biol. 4:1440-1448)、ADH2(Russell, et al.(1983)J. Biol. Chem. 258:2674-2682)、PHO5(EMBO J.(1982)6:675-680)、およびMFα(HerskowitzおよびOshima(1982)、Strathern, et al.(編)、The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces、Cold Spring Harbor Lab., Cold Spring Harbor, N.Y.、181〜209頁)が含まれる。酵母中で使用するための別の適切なプロモーターは、Cousens, et al.(1987)Gene 61:265-275(1987)に記載されているADH2/GAPDHハイブリッドプロモーターである。例えば、真菌アスペルギルス属の株のような糸状菌の場合(McKnight, et al.、米国特許第4,935,349号)、有用なプロモーターの例には、ADH3プロモーター(McKnight, et al.(1985)EMBO J. 4:2093-2099)およびtpiAプロモーターなどアスペルギルス・ニダランス(Aspergillus nidulans)解糖系遺伝子に由来するものが含まれる。適切なターミネーターの例は、ADH3ターミネーターである(McKnight, et al.)。
構成的プロモーターまたは調節的プロモーターのいずれかが、本発明において使用され得る。融合タンパク質の発現が誘導される前に、宿主細胞が高濃度まで増殖することができるため、調節的プロモーターが有利であり得る。異種ポリペプチドの高レベルな発現は、いくつかの状況において細胞増殖を遅らせる。誘導性プロモーターは、例えば、温度、pH、嫌気的条件または好気的条件、光、転写因子、および化学物質などの環境因子または発育因子によって発現レベルが変更できる遺伝子の発現を指示するプロモーターである。このようなプロモーターは本明細書において「誘導性」プロモーターと呼ばれ、所望のポリペプチドの発現時期を制御することを可能にする。大腸菌および他の細菌宿主細胞の場合、誘導性プロモーターは当業者に公知である。これらには、例えば、lacプロモーター、バクテリオファージλPLプロモーター、trp-lacハイブリッドプロモーター(Amann, et al.(1983)Gene 25:167; de Boer, et al.(1983)Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 80:21)、およびバクテリオファージT7プロモーター(Studier, et al.(1986)J. Mol. Biol.; Tabor, et al.(1985)Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 82:1074-78)が含まれる。これらのプロモーターおよびそれらの使用は、前記のSambrook, et al.の著書において考察されている。
適切な宿主細胞中に配置された場合に、ポリヌクレオチドの発現を推進する遺伝子発現制御シグナルに機能的に連結された関心対象のポリヌクレオチドを含む構築物は、「発現カセット」と呼ばれる。本発明の融合タンパク質をコードする発現カセットは、しばしば、宿主細胞中に導入するための発現ベクター中に配置される。典型的には、これらのベクターは、発現カセットに加えて、1種または複数種の選択された宿主細胞においてベクターが独立に複製することを可能にする核酸配列を含む。一般に、この配列は、宿主の染色体DNAから独立にベクターが複製することを可能にするものであり、かつ、複製起点または自律複製配列を含む。このような配列は、様々な細菌に関して周知である。例えば、プラスミドpBR322に由来する複製起点は、大半のグラム陰性細菌に適している。あるいは、ベクターは、宿主細胞のゲノム補完物中に組み込まれ、かつ、細胞がDNA複製を経るのと同時に複製されることによって、複製することができる。
ポリヌクレオチド構築物の構築は、一般に、細菌中で複製することができるベクターの使用を必要とする。細菌からプラスミドを精製するための極めて多数のキットが市販されている(例えば、いずれもPharmacia Biotech社製のEasyPrepJ、FlexiPrepJ;Stratagene社製のStrataCleanJ;およびQiagen社製のQIAexpress Expression Systemを参照されたい)。次いで、単離および精製されたプラスミドをさらに操作して他のプラスミドを作製し、かつ、細胞をトランスフェクトするために使用することができる。ストレプトマイセス属(Streptomyces)またはバチルス属におけるクローニングもまた、可能である。
選択マーカーは、本発明のポリヌクレオチドを発現させるために使用される発現ベクター中にしばしば組み入れられる。これらの遺伝子は、選択的培地中で増殖させられる形質転換された宿主細胞の生存または増殖のために必要な、ポリペプチドのような遺伝子産物をコードすることができる。選択遺伝子を含むベクターで形質転換されていない宿主細胞は、培地中で生存しないと考えられる。典型的な選択遺伝子は、アンピシリン、ネオマイシン、カナマイシン、クロラムフェニコール、またはテトラサイクリンなどの抗生物質または他の毒に対する耐性を与えるポリペプチドをコードする。あるいは、選択マーカーは、栄養要求性欠陥を補完するか、または複合培地から入手ができない不可欠な栄養素を供給するタンパク質をコードしてよく、例えば、バチルス属の場合、D-アラニンラセマーゼをコードする遺伝子である。しばしば、ベクターは、例えば、大腸菌、または宿主細胞中に導入される前にベクターが複製される他の細胞において機能的である1種の選択マーカーを有する。いくつかの選択マーカーが当業者に公知であり、例えばSambrook, et al.の前記著書に記載されている。
上記に挙げた構成要素のうち1種または複数種を含む適切なベクターの構築では、上記に引用した参考文献において説明されているような標準的ライゲーション技術を使用する。必要とされるプラスミドを作製するために望ましい形態で、単離したプラスミドまたはDNA断片を切断し、調整し、かつ、再連結する。構築されたプラスミド中の正確な配列を確認するために、制限エンドヌクレアーゼ消化、および/または公知の方法による配列決定などの標準的技術によって、これらのプラスミドを解析することができる。これらの目標を達成するための分子クローニング技術は、当技術分野において公知である。組換え核酸の構築に適した多種多様のクローニングおよびインビトロ増幅方法は、当業者に周知である。これらの技術の例および多くのクローニング演習を通じて当業者に指導するのに十分な指示書は、BergerおよびKimmel、Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology、152巻、AcademicPress, Inc., San Diego, CA(Berger);ならびにCurrent Protocols in Molecular Biology、Ausubel, et al.編、Current Protocols、Greene Publishing Associates, Inc.およびJohn Wiley & Sons, Inc.の合弁会社(1999年補遺)(Ausubel)において見出される。
本発明の発現ベクターを構築するための開始材料として使用するのに適した様々な一般的ベクターは、当技術分野において周知である。細菌中でクローニングする場合、一般的ベクターには、pBLUESCRIPT(商標)のようなpBR322由来のベクター、およびλファージ由来のベクターが含まれる。酵母の場合、ベクターには、酵母組込み型プラスミド(例えばYIp5)および酵母複製プラスミド(YRpシリーズプラスミド)ならびにpGPD-2が含まれる。哺乳動物細胞における発現は、pSV2、pBC12BI、およびp91023を含む、様々な一般に利用可能なプラスミド、ならびに溶解性ウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、およびバキュロウイルス)、エピソームウイルスベクター(例えば、ウシパピローマウイルス)、およびレトロウイルスベクター(例えば、マウスレトロウイルス)を用いて実現することができる。
選択された宿主細胞中に発現ベクターを導入するための方法が典型的には標準であり、このような方法は当業者に公知である。例えば、発現ベクターは、塩化カルシウム形質転換によって、大腸菌を含む原核細胞中に、およびリン酸カルシウム処理またはエレクトロポレーションによって、真核細胞中に導入され得る。他の形質転換方法もまた、適している。
翻訳共役は、発現を増大させるために使用され得る。この戦略は、プロモーターの下流に配置された、翻訳系に固有の高発現遺伝子に由来する上流の短いオープンリーディングフレーム、および終始コドンが数個のアミノ酸コドンの後に続くリボソーム結合部位を使用する。終止コドンの直前に、第2のリボソーム結合部位があり、終始コドンの後に、翻訳開始のための開始コドンがある。この系により、RNA中の二次構造が解消されて、効率的な翻訳開始が可能になる。Squires, et al.(1988)J. Biol. Chem. 263:16297-16302を参照されたい。
本発明の様々なポリペプチドは、細胞内で発現させることができ、または、細胞から分泌させることもできる。細胞内発現は、しばしば、高い収率をもたらす。必要な場合には、リフォールディング手順を実施することによって、可溶性の活性融合ポリペプチドの量を増加させることができる(例えば、Sambrook, et al.、前記; Marston, et al.(1984)Bio/Technology 2:800; Schoner, et al.(1985)Bio/Technology 3:151を参照されたい)。所望のポリペプチドが細胞から周辺質中または細胞外媒体中のいずれかに分泌される態様において、DNA配列は、しばしば、切断可能なシグナルペプチド配列に連結される。シグナル配列は、細胞膜を通過する融合ポリペプチドの移行を指示する。プロモーター-シグナル配列単位を含む、大腸菌で使用するのに適したベクターの例はpTA1529であり、これは、大腸菌phoAプロモーターおよびシグナル配列を有する(例えば、Sambrook, et al.、前記; Oka, et al.(1985)Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 82:7212; Talmadge, et al.(1980)Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 77:3988; Takahara, et al.(1985)J. Biol. Chem. 260:2670を参照されたい)。別の態様において、融合ポリペプチドは、例えば、精製、分泌、または安定性を促進するために、プロテインAまたはウシ血清アルブミン(BSA)の部分配列に融合される。例えば結合断片の標的を用いた親和性方法が、適切な場合がある。
本発明の細胞壁分解ポリペプチドはまた、他の細菌ポリペプチドセグメント、例えばターゲティング断片にさらに連結されてもよい。通常の原核生物制御配列は転写および翻訳を指示するため、このアプローチは、しばしば高収率をもたらす。大腸菌では、lacZ融合物が、異種タンパク質を発現させるためにしばしば使用される。pUR、pEX、およびpMR100シリーズなど適切なベクターが容易に入手可能である(例えば、Sambrook, et al.、前記を参照されたい)。いくつかの用途では、精製後に融合ポリペプチドから外来性配列を切断することが望ましい場合がある。これは、臭化シアン、プロテアーゼ、またはXa因子による切断を含む、当技術分野において公知のいくつかの方法のいずれかによって遂行することができる(例えば、Sambrook, et al.、前記;Itakura, et al.(1977)Science 198:1056; Goeddel, et al.(1979)Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 76:106; Nagai, et al.(1984)Nature 309:810; Sung, et al.(1986)Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 83:561を参照されたい)。切断部位は、融合ポリペプチドに対応する遺伝子中に所望の切断点で設計することができる。
単一の発現ベクター中に複数の転写カセットを配置することにより、または、クローニング戦略で使用される各発現ベクターに対して異なる選択マーカーを使用することにより、複数種の組換えポリペプチドを単一の宿主細胞中で発現させることができる。
N末端の完全性を維持した大腸菌由来の組換えタンパク質を得るために適切な系は、Miller, et al.(1989)Biotechnology 7:698-704によって説明されている。この系では、関心対象の遺伝子は、ペプチダーゼ切断部位を含む酵母ユビキチン遺伝子の最初の76残基に対するC末端融合物として作製される。2つの部分の連結部で切断されると、完全な真正のN末端残基を有するタンパク質が生成する。
X. 所望のポリペプチドの精製
本発明のポリペプチドは、本発明の方法において、細胞内タンパク質として、または細胞から分泌されるタンパク質として発現させることができ、かつ、この形態で使用することができる。例えば、発現された細胞内ポリペプチドまたは分泌ポリペプチドを含む粗製の細胞抽出物が、本発明の方法において使用され得る。
あるいは、硫酸アンモニウム沈殿法、アフイニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、およびゲル電気泳動などを含む、当技術分野の標準的手順に従ってこれらのポリペプチドを精製してもよい(一般に、Scopes(1982)Protein Purification Springer-Verlag, N.Y.; Deutscher(1990)Methods in Enzymology(182巻)Guide to Protein Purification, Academic Press, Inc. NYを参照されたい)。少なくとも、分解セグメントは、安定性の点で選択されたファージタンパク質に由来するため、精製は、混入物質を変性させるためにこれらの特性を利用することができる。少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%の均一性を有する実質的に純粋な組成物が好ましく、約92%、95%、98%〜99%またはそれ以上の均一性が最も好ましい。精製したポリペプチドは、例えば、抗体作製のための免疫原としても使用することができ、この抗体は、免疫選択精製法において使用され得る。
本発明のポリペプチドの精製を容易にするために、それらをコードする核酸はまた、対応する親和性結合反応物が利用可能なエピトープまたは「タグ」、例えば精製タグのコード配列を含んでよい。適切なエピトープの例には、mycおよびV-5 レポーター遺伝子が含まれる。これらのエピトープを有する融合ポリペプチドの組換え作製に有用な発現ベクターが市販されている(例えば、Invitrogen(Carlsbad CA)社製のベクターpcDNA3.1/Myc-HisおよびpcDNA3.1/V5-Hisが、哺乳動物細胞における発現に適している)。本発明のポリペプチドにタグを結合させるのに適したその他の発現ベクターおよび対応する検出システムは、当業者に公知であり、いくつかが市販されている(例えば、FLAG(Kodak, Rochester NY))。適切なタグの別の例は、金属キレートアフィニティーリガンドに結合することができるポリヒスチジン配列である。典型的には、6個の隣接したヒスチジンが使用されるが、それより多くても少なくてもよい。ポリヒスチジンタグに対する結合部分として機能し得る適切な金属キレートアフィニティーリガンドには、ニトリロ三酢酸(NTA)(Hochuli 「Purification of recombinant proteins with metal chelating adsorbents」、Setlow(編、1990年)、Genetic Engineering:Principles and Methods, Plenum Press, NY;Qiagen社(Santa Clarita, CA)から市販されている)が含まれる。精製タグには、マルトース結合ドメインおよびデンプン結合ドメインも含まれる。マルトース結合ドメインタンパク質の精製は、当業者に公知である。
タグとして使用するのに適した他のハプテンは当業者に公知であり、例えば、Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals(第6版、Molecular Probes, Inc., Eugene OR)において説明されている。例えば、ジニトロフェノール(DNP)、ジゴキシゲニン、バルビツラート(例えば、米国特許第5,414,085を参照されたい)、およびいくつかのタイプの蛍光体がハプテンとして有用であり、これらの化合物の誘導体もそうである。ハプテンおよび他の部分をタンパク質および他の分子に連結するためのキットが市販されている。例えば、ハプテンがチオールを含む場合、SMCCのようなヘテロ2官能性リンカーを用いて、捕捉反応物上に存在するリシン残基にタグを結合させることができる。
当業者は、ポリペプチドの触媒ドメインまたは機能的ドメインに、それらの生物活性を減少させることなく、いくつかの改変を施し得ることを認識すると考えられる。いくつかの改変は、触媒ドメインのクローニング、発現、または融合ポリペプチド中への組込みを容易にするために実施してよい。このような改変は当業者に周知であり、例えば、触媒ドメインをコードするポリヌクレオチドのいずれかの末端へのコドン付加、例えば、開始部位を提供するためにアミノ末端に付加されるメチオニン、または、便宜的に配置された制限酵素部位または終始コドンもしくは精製配列を作製するためにいずれかの末端に配置される付加的なアミノ酸(例えばポリHis)が含まれる。
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「and」、および「the」は、文脈が明らかに他の意味を規定するのでは無い限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。したがって、例えば、「バクテリオファージ(a bacteriophage)」への言及は、複数のそのようなバクテリオファージを含み、かつ、「宿主細菌(a host bacterium)」への言及は、1つまたは複数の宿主細菌および当業者に公知であるその等価物などへの言及を含む。
本明細書において考察される刊行物は、本出願の出願日より前にそれらの開示があったことを示すためだけに提供される。本明細書における何事も、以前の発明によるそのような刊行物に本発明が先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。さらに、提供される刊行物の日付は、実際の出版日と異なる場合があり、別個に確認する必要がある場合がある。引用は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
本明細書に引用されるすべての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願のそれぞれが具体的かつ個別に参照により組み入れられるように示されるかのように、参照により本明細書に組み入れられる。
前述の本発明は、理解を明確にするために、例示および例としていくらか詳しく説明してきたが、添付の特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなく、いくつかの変更および修正をそれに加え得ることは、本発明の教示に照らして、当業者には容易に明らかになると考えられる。
実施例
I. 完全長ORF56
アクセッション番号YP_024486において、ブドウ球菌ファージK中に存在する推定上のORF56が報告された。この報告に基づいて、完全長ファージK ORF56を適切なファージ供給源からPCR増幅した。フォワードプライマー中のNdeI部位およびリバースプライマー中のXhoIを有する遺伝子特異的プライマーを用いて、T7プロモーター下で、このPCR生成物をNdeI-XhoI挿入物としてpET21aベクター中にクローニングした。このクローンはpGMB617と呼ばれ、かつ、予想される生成物(SEQ ID NO:1)のアミノ酸1〜808に対応するコード領域を含んだ。これは、約91kDaのタンパク質生成物を生成するはずである。
A. CHAPドメイン
アクセッション番号YP_024486を説明する報告書では、システイン-ヒスチジン依存性アミノヒドロラーゼ/ペプチダーゼ(CHAP)として説明されるドメインが同定された。例えば、Rigden, et al.(2003)Trends Biochem. Sci. 28:230-234を参照されたい。溶解活性を含むと認識されるある種の遺伝子は、一般に、コードされるポリペプチドのN近位領域のドメインと共に、CHAPドメインを有する。CHAPドメインは、推定上のORF56のC近位領域にあり、かつ、アミノ酸の690〜805付近に由来する指定されたアミノ酸に対応するはずである。
B. 分解生成物
しかしながら、生成および精製後、PAGEによって観察したところ、約50kDaおよび約23kDaのタンパク質生成物が、実質的な量で存在していた。これらは、元の91kDaの発現タンパク質の安定な分解生成物に相当すると思われた。
II. ブドウ球菌標的種
精製したタンパク質構築物を、黄色ブドウ球菌分離株におけるCFU(colony forming unit)の減少に関して最初に試験した。いくつかの構築物は、表皮ブドウ球菌、S.レンティス、およびS.カルノーサスの分離株におけるCFUの減少についてもさらに試験した。この場合に観察される溶解活性は、多くのファージ感染選択性よりも株特異性が低いようである。したがって、本明細書において説明する溶解活性の使用は、同様に複数の株特異性を示し、かつ、さらに幅広く、多くの属または他の機能的クラスもしくは構造的クラスの細菌(例えば、すべてのグラム陽性菌、またはさらに、一部もしくはすべてのグラム陰性菌を含む)に渡り得る可能性が高い。さらに、溶解活性は、グラム陽性クラスとグラム陰性クラスに共通の構造的特徴に一般的である場合もある。例えば、グラム陰性の細菌内部細胞壁のいくつかの特徴は、グラム陽性細胞壁と共通な場合がある。
III. 切断構築物
仮定上のORF56として説明される領域は、独特な内部PstI部位を有し、これを使用することにより、SEQ ID NO:1のアミノ酸の297〜808付近に由来するタンパク質の約57kDaのC末端領域を提供すると考えられる構築物を容易に作製することができる。前述の完全長ORF56クローンから、リーディングフレームのC末端部分をコードするPstI-HindIII断片を切り出した。PstI-HindIII断片をpRSETAベクター中にクローニングして、pRSETA-57kDa(pGMB599)ORF56クローン構築物を作製した。これから、NdeI-HindIIIとしてpET21aベクター中にクローニングしたNdeI-HindIII断片を切り出して、pGMB612を作製した。このクローンは、(予想された)57kDaタンパク質、ならびに約50kDaのタンパク質および約23kDaのタンパク質を発現した。意外なことに、小さい方のタンパク質は、完全長91kDaタンパク質を発現する構築物に由来するほぼ同じサイズの安定な分解生成物であるように見受けられる。
SEQ ID NO:1のアミノ酸363〜808付近に対応する推定上のORF56領域の50kDaのC末端部分を作製するためのDNA配列を構築した。適切な特異的プライマーを用いて、PCR増幅生成物を作製した。このPCR生成物は、フォワードプライマー中のNdeI部位およびリバースプライマー中のXhoI部位を有していた。結果として生じるNdeI-XhoI断片をpET21aベクター中にクローニングして、NdeI-XhoI挿入物を組み入れた。この作製物をpGDC060/061と呼んだ。この構築物は、(予想された)50kDaタンパク質および約23kDaのタンパク質を発現した。やはり、意外なことに、小さい方のタンパク質は、91kDaの完全長ORF56タンパク質および57kDaの切断型ORF56タンパク質の構築物の場合に観察されるのとほぼ同じサイズの安定な分解されたORF56タンパク質であるように見受けられる。
Met-(アミノ酸603〜808)付近に対応するORF56タンパク質の23kDaのC末端部分を作製するためのDNA構築物を作製した。23kDaのC末端領域をコードするORF56のDNA配列をPCR増幅して、フォワードプライマー中のATG開始コドンを導入した。このPCR生成物をNdeI-XhoI断片としてpET21a中にクローニングして、pGDC070と呼ばれる構築物を作製した。この構築物は、SDS PAGE上で約27kDaの位置に泳動するタンパク質および約23kDaの位置に泳動する別のタンパク質を発現した。4℃で保管すると、これら2種の形態が崩れて、約23kDaの単一のバンドになる。
アミノ酸620〜808付近に対応するORF56タンパク質の19kDaのC末端断片を作製するためのDNA構築物を作製した。特異的プライマーを用いて、これに対応するDNA配列を増幅し、かつ、NdeI-XhoI挿入物としてpET21a中にクローニングした。結果として生じる構築物をpGDC089と呼んだ。この構築物は、SDS PAGE上で約21kDa、すなわち前述の構築物から観察される安定な分解生成物とほぼ同じ位置に泳動する単一のタンパク質を発現した。
これらの様々な構築物から、91kDaの完全長タンパク質生成物が、使用される条件下で特に安定というわけではないことが示唆される。2種の適度に安定な分解生成物は、第1に50kDaのタンパク質、および次いで、23kDaのタンパク質であると思われる。この分解が、急速なエキソプロテアーゼ活性に起因するのか、エンドプロテアーゼ活性に起因するのか、または両方の組合せに起因するのかは、依然として不明である。しかしながら、これらの異なる構築物は、安定な23kDaの切断型ORF56タンパク質まで分解されると思われる。
IV. 精製タンパク質の抗微生物活性
様々なORF56切断物および/または分解生成物の溶解活性を、黄色ブドウ球菌細菌培養物のCFU(colony forming unit)の減少を決定するアッセイ法を用いて試験した。すべての場合において、ORF56切断物または分解生成物は、溶液中の黄色ブドウ球菌のCFUを減少させる有効な能力を示し、このことから、これらの構築物および安定な分解生成物がすべて、細胞壁に対する溶解活性を保持していることが示唆された。これらの構築物すべてに共通の構造的特徴は、CHAPドメインを含むC末端領域である。
V. 溶解活性に関して試験される、CHAPドメインを有する候補相同遺伝子
ORF56殺菌活性は、C末端のCHAPドメインと相関関係があった。したがって、BLAST検索を用いて、配列決定されたファージゲノム中のその他の「溶解」活性を同定した。これらの「溶解性」セグメントの他の有用な供給源には、例えば、ファージが標的宿主に結合するのに使用される尾部もしくは結合構成要素に由来するか、または、プロファージ構造物もしくはピオシン様構造物に由来する、宿主中へのファージゲノムの侵入に関与している構成要素が含まれる。その他のいわゆる「溶解」活性は、例えば、特徴的な遺伝子構成に基づいて、ファージ尾部カセットのコード性セグメント中に存在するものとして同定され得る。
これらの検索は、CHAPドメインまたは他の特徴を用いて実施される。特に、CHAPドメインがORFのC末端領域にある遺伝子は、この活性に関連している可能性がより高い。ブドウ球菌ファージK、Twort、およびG1に由来するCHAPドメインを含むタンパク質が特に興味深い。
VI. キメラ構築物
標的ブドウ球菌株の細胞壁に作用する触媒性断片を、細胞表面実体に結合するターゲティング断片に連結して、いくつかの融合構築物を作製した。結合部分は、適切な標的細菌の表面への選択的局在化を提供し、触媒活性は近くの基質部位に作用する。より広い領域の基質接近容易性(活性部位濃度の高い領域)を実現するために、リンカーを組み入れても良い。極めて接触しやすいか、高度に発現されるか、または選択的な細菌細胞表面マーカーを認識する様々な結合部位が使用され得る。グラム陰性細胞壁マーカー結合セグメントは、宿主細菌に由来するタンパク質から発見することができ、かつ、同様のグラム陰性壁マーカー結合セグメントは、それらが細胞壁構造を管理するのに使用されるタンパク質から発見することができる。これらの宿主に特異的なファージはまた、それらの個別の宿主細胞壁を認識し、かつ結合する尾部ポリペプチドも有するはずである。下等真核生物から高等真核生物までの範囲の供給源に由来するペプチドグリカン認識タンパク質(PGRP)、ならびに、好ましくは生理学的条件および形態で、特定の細菌細胞壁に対する親和力によって結合する他の結合タンパク質は、適切な結合活性断片のための供給源であると考えられる。いくつかの状況において、複数の異なる部位が使用され得る。リンカーは、適切な基質の近くて局部的触媒濃度を上昇させるためのつなぎ鎖を提供しつつ、干渉せずに他の断片を適切にフォールディングさせる能力に基づいて選択してよい。触媒断片は、好ましい基質を標的としてよく、かつ、複数の断片は、標的細菌上に存在する異なる結合を標的としてよい。
特に、グラム陽性標的を扱う場合、結合セグメントは、好ましくは、細菌によって生理学的に「提示される」細胞外細胞壁を認識するタンパク質に由来すると考えられる。したがって、グラム陰性細胞壁を認識するタンパク質は、これらの感染性物質を認識する免疫系構成要素を含んでよい。細胞壁分解ドメインのための適切な供給源は、グラム陰性宿主に感染するファージに由来する尾部構造物であると考えられる。同様に、グラム陽性の場合、結合ドメインは、グラム陽性に感染するファージの尾部構造物またはグラム陰性細菌に対するPGRPに由来してよい。壁分解活性は、グラム陰性宿主に感染する尾部構造物に由来してよい。マイコバクテリア、胞子、または他の原核生物もしくは関連生物が細胞壁の構造を共有する限りにおいて、これらの反応物はそれらの増殖を調節するのに有用な場合がある。
さらに、特定の宿主に感染するファージの選択プロセスが理由で、極端な条件、好熱菌、好塩菌、高酸化または反応性化学種の条件、極端なpH、および高度にタンパク質分解性の環境などで生息する宿主を標的とするファージは、有用な触媒断片または結合断片の特に興味深い供給源である。細胞外の外部環境に曝露されているタンパク質(移入を切望している)は、比較的安全な細胞内環境の外側で生存するための特徴を著しく進化させたに違いない。したがって、不利な条件に対するこの安定性により、生成物に高い安定性を提供すると考えられるドメインの構造的特徴が選択されると考えられる。そして、生成物は、優良な貯蔵特性を有しているはずであり、薬理学的存続および寿命に関して選択することができ、かつ、精製および単離のための単純な手段を提供することができる。
ORF56配列由来の様々なセグメント(Gene ID 2948023、YP_024486、YP_024486.1を参照されたい)、すなわち、アミノ酸669〜808に対応する16KDaの断片、アミノ酸629〜808に対応する19KDaの断片、アミノ691〜808に対応する13KDaの断片、およびアミノ酸629〜690に対応するORF56結合断片を含む構築物を作製した。ブドウ球菌のリソスタフィン(lss; AAB53783)セグメントには、アミノ酸395〜493に対応する結合断片、およびアミノ酸248〜394に対応する触媒(lys-lys切断)断片が含まれる。L54aアミダーゼ(AAW38858; YP_185281)結合断片は、アミノ酸376〜484に対応する。LytMペプチダーゼ(L77194; AAV62278.1)触媒断片は、アミノ酸223〜322に対応する。ファージphi11アミダーゼ(NP_803306; AAL82281; AF424781.1の40893〜42365を参照されたい)断片は、アミノ酸391〜490に対応する。これらの構築物は、T7プロモーターによって駆動された。
いくつかの融合構築物を作製した。構築物1は、配列Met-(16KDa ORF56触媒断片)-Leu-Glu-(リソスタフィン結合断片)を有し、結果として生じるタンパク質生成物は、キメラ128(SEQ ID NO:4)と呼ばれる。構築物2は、配列(19KDa ORF56触媒断片)-Leu-Glu-(リソスタフィン結合断片)を有する。構築物3は、配列(13KDa ORF56触媒断片)-Leu-Glu-(リソスタフィン結合断片)を有する。構築物4は、配列(16KDa ORF56触媒断片)-Leu-Glu-(L54aアミダーゼ結合断片)を有する。構築物5は、配列Met-(LytMペプチダーゼ触媒断片)-Leu-Glu-(リソスタフィン結合断片)を有する。構築物6は、配列Met-(リソスタフィン触媒断片)-(ORF56結合断片)を有する。構築物7は、配列(LytMペプチダーゼ触媒断片)-構築物1を有し、2つの触媒ドメイン(LytMペプチダーゼ、ORF56)を有する。構築物8は、配列Met-16KDa ORF56触媒断片-Leu-Glu-(phi11アミダーゼ結合断片)を有する。同様に、他の供給源に由来する他の触媒断片または結合断片を使用してよく、または、これらの変種を作製し、かつ所望の特徴に最適化してもよい。
構築物1を適切な宿主中で産生させ、かつ、超音波処理段階を含めて、宿主を溶解した。同様の方法が、他の構築物に適用される。硫酸アンモニウム沈殿法(20〜50%)、Q-500カラムクロマトグラフィー(pH7.5)、溶出のために200mM NaClを用いるCMセルロースクロマトグラフィー(pH6.0)、およびゲルろ過によって、未精製の溶解物を精製した。銀染色により、生成物の純度は98%より高いと推定された。
VII. 活性試験
構築物1生成物であるキメラ128を、spa型、Agr型、またはMec型に関して選択され、かつMLSTおよびメチシリン耐性を含む、30種の異なるタイプの黄色ブドウ球菌株のパネルで試験した。キメラ128はこれらの試験した株に対して活性であり、タンパク質1.5マイクログラムをスポットしたところ、菌叢阻害が観察された。約1×108CFUのMRSA株B911を用いると、50マイクログラムの完全長ORF56タンパク質は、CFUを約2対数単位減少させたのに対し、1.5マイクログラムのキメラ128は、CFUを約5対数単位減少させた(10,000倍)。35℃でインキュベートした、1%BSAを含むミュラー・ヒルトン培養液中の5×105細胞/mlの黄色ブドウ球菌の様々な代表株(Kusumaおよび Kokai-Kun(2005)「Comparison of four methods for determining lysostaphin susceptibility of various strains of Staphylococcus aureus」Antimicrob.Agents Chemother. 49:3256-263; PMID:16048934を参照されたい)において、コロニーは16時間静的であった。キメラ128の最小阻止濃度(MIC)は、約1〜10マイクログラム/mlであった。キメラ128を用いた最初の曝露に対する黄色ブドウ球菌COL株の生存菌の試験を実施した。生存菌は、再曝露の際にタンパク質に感受性であることが判明した。黄色ブドウ球菌株B911のリソスタフィン耐性変種の試験により、99.9%の細胞が、1.5マイクログラムのキメラ128タンパク質に感受性であることが示された。
キメラ128はトリス緩衝液中で、4℃では少なくとも1ヶ月間、室温(約25℃)では約4週間、および37℃では約1日、安定である。ある種のゲル製剤および液体製剤は、はるかに長い期間の安定性を有していた。
菌叢阻害アッセイ法、ザイモグラムアッセイ法、およびコロニー形成単位(CFU)滴下アッセイ法を用いて、その他のキメラ構築物の活性を試験した。菌叢阻害アッセイ法は、試験タンパク質を細菌叢上にスポットし、増殖阻害ゾーンを測定する定性的アッセイ法である。殺菌活性は、菌叢上の阻害ゾーンに対応する。活性が無い場合は、可視の阻害ゾーンが無い。ザイモグラムアッセイ法もまた、高圧滅菌滅菌された標的細菌細胞をSDS-PAGEゲルに染み込ませ、かつ、ファージ調製物を電気泳動してゲルを通過させる定性的アッセイ法である。ゲル上のタンパク質はインサイチューで復元され、次いで、これらは細胞壁構成要素に作用して、メチレンブルー色素でゲルを染色した後に、透明な「溶解」ゾーンを生じる。例えば、Lepeuple, et al.(1998)Appl. Environ. Microbiol. 64:4142-428, PMID:9797258を参照されたい。活性は、濃青色のバックグラウンドに対して透明な可視ゾーンに対応する。CFU滴下アッセイ法は、殺菌率によって活性を測定する定量的アッセイ法である。細菌培養物をキメラタンパク質と混合し、LB培地上に播種する。活性は、少なくとも99.9%の細胞数の減少に対応する。活性が無い場合は、細胞数の減少は認められない。各アッセイ法と共に、適切な陽性対照および陰性対照を実施する。いくつかのキメラタンパク質に関する結果を表1に示す。触媒ドメイン(CD)とも呼ばれるORF56壁分解性ドメインを含むいくつかのTAME-CBDタンパク質において活性が実証された。リソスタフィンCDおよびORF56結合ドメインを含むTAME-CBDタンパク質もまた、殺菌活性を有していた。
TAME保存ドメインの同定
本発明者らは、カウドウイルス目ファージゲノム中のTAME遺伝子を同定するための包括的な戦略を開発した。候補TAME遺伝子を探索するために、本発明者らは、各TAMEにおける、細菌細胞壁結合に関連している保存ドメイン(CD)、結合ドメイン(CBD)、または壁分解性分解ドメイン(MD)の存在に依拠する。図1は、本発明者らが、検索キーワード文字列:「リゾチームまたはエンドリシンまたはライシンまたはムラミダーゼまたはムラミニダーゼまたはグルコサミニダーゼまたはムレインまたはペプチドグリカンまたは細胞壁または溶解またはアミダーゼまたはトランスグリコシラーゼまたは自己溶菌酵素またはヒドロラーゼ」を用いて、ウェブサイトncbi.nlm.nih.gov/Structure/cdd/cdd.shtmlのNCBI CDD(Conserved Domain Database)の検索から作製したこのようなドメインの例示的なリストである。当業者は、異なる検索用語を用いた様々な検索戦略が実施され得ることを認識すると考えられる。他のデータベースもまた、検索することができる。
次いで、検索結果を、細菌細胞壁の結合、維持、または分解への関連性に関して手作業で検査した。細菌細胞壁結合機能(細胞結合ドメインはCBDと略する)または分解機能(壁分解性ドメインはMDと略する)に関連した保存ドメインの非限定的なリストは以下のとおりである。下記に挙げる保存ドメインのいずれかを任意の組合せで使用して、本発明の殺菌性キメラTAME-CBDタンパク質を作製することができる。
pfam05382:アミダーゼ_5:バクテリオファージペプチドグリカンヒドロラーゼ。このファミリーのメンバーの少なくとも1つ、肺炎球菌バクテリオファージDp-1由来のPalタンパク質が、N-アセチルムラモイル-L-アラニンアミダーゼであることが示された。肺炎球菌系に由来するこのおよび他のペプチドグリカンヒドロラーゼの公知のモジュール構造によれば、活性部位はN末端ドメインに存在すべきであるのに対し、C末端ドメインは、細胞壁テイコ酸のコリン残基に結合する。このファミリーは、pfam00877に関連していると思われる。[pfam05382|68934]。MD。
pfam01510:アミダーゼ_2:N-アセチルムラモイル-L-アラニンアミダーゼ。このファミリーは、N-アセチルムラモイル-L-アラニンアミダーゼ活性を有する亜鉛アミダーゼを含む。EC:3.5.1.28。この酵素ドメインは、細菌細胞壁中のN-アセチルムラモイルとL-アミノ酸の間のアミド結合(優先的に:D-ラクチル-L-Ala)を切断する。この構造は、バクテリオファージT7構造に関して公知であり、保存されたヒスチジンの2つが亜鉛結合していることを示す。[pfam01510|65318]。MD。
pfam01520:アミダーゼ_3:N-アセチルムラモイル-L-アラニンアミダーゼ。この酵素ドメインは、細菌細胞壁中のN-アセチルムラモイルとL-アミノ酸の間のアミド結合を切断する。[pfam01520|65327]。MD。
pfam00912:トランスグリ(Transgly):トランスグリコシダーゼ。ペニシリン結合タンパク質は、それぞれN末端およびC末端のトランスグリコシラーゼおよびトランスペプチダーゼからなる2機能性タンパク質である。トランスグリコシラーゼドメインは、ムレイングリカン鎖の重合を触媒する。[pfam00912|64762]。MD。
cd00737:エンドリシン_自己溶菌酵素:エンドリシンおよび自己溶菌酵素は、それぞれウイルスおよび細菌中に存在する。真正細菌の二本鎖(ds)DNAファージは、細菌細胞中に存在するペプチドグリカンを分解する小型膜タンパク質であるホリン(hollin)と協同して、エンドリシンまたは壁分解性酵素を使用する。同様に、細菌は、細胞壁のヘテロポリマーペプチドグリカンの生合成および細胞分裂を促進する自己溶菌酵素を産生する。エンドリシンおよび自己溶菌酵素の両方とも、ペプチドグリカンのN-アセチルムラミン酸とN-アセチルグルコサミンの間のβ1,4-グリコシド結合を切断する。[cd00737|29561]。MD。
pfam07486:ヒドロラーゼ_2:細胞壁ヒドロラーゼ。これらの酵素は、枯草菌(Bacillus subtilis)において最も大規模に、細胞壁加水分解に関係があるとされている。例えば、枯草菌のSCLE、すなわち胞子表層溶解酵素は、胞子形成の進行中に不活性型として発現され、次いで、細胞外側の表層に沈着する。発芽の進行中に、この酵素は活性化され、表層を加水分解する。同様の役割が、部分的に重複している細胞壁ヒドロラーゼcwlJによって実施される。これらの酵素はアミダーゼまたはペプチダーゼでよい。[pfam07486|70935]。MD。
pfam05257:CHAPドメイン。このドメインは、アミダーゼ機能に対応する。これらのタンパク質の多くは、細菌の細胞壁代謝に関与している。このドメインは、二機能性の大腸菌酵素のN末端に存在し、そこでグルタチオニルスペルミジンアミダーゼ(EC:3.5.1.78)として機能する。[pfam05257|68816]。ORF56は、CHAPドメインの例を提供する。MD。
pfam03562:MltA:MltA特異的挿入ドメイン。このβバレルドメインは、MltA、ムレイン分解トランスグリコシラーゼ酵素中に挿入されて存在する。このドメインは、ペプチドグリカン結合に関与している可能性がある。[pfam03562|67195]。MD。
pfam01471:PG_結合_1:推定上のペプチドグリカン結合ドメイン。このドメインは、3つのαヘリックスから構成される。このドメインは、細菌細胞壁分解に関与している様々な酵素のN末端またはC末端に存在する。このドメインは、一般的なペプチドグリカン結合機能を有し得る。このファミリーは、マトリキシンの触媒ドメインに対してN末端側に存在する。[pfam01471|65280]。CBD。
pfam08823:PG_結合_2:推定上のペプチドグリカン結合ドメイン。このファミリーは、ペプチドグリカン結合ドメインでよい。[pfam08823|72246]。CBD。
pfam06737:トランスグリコシラーゼ:トランスグリコシラーゼ様ドメイン。このファミリーのタンパク質は、pfam00062およびpfam01464に関係したトランスグリコシラーゼ酵素として作用する可能性が非常に高い。これらの他のファミリーは、このファミリーと少し一致し、かつ、公知の活性部位残基を含む。[pfam06737|70216]。MD。
pfam06267:DUF1028:機能が不明のファミリー(DUF1028)。機能が不明な細菌タンパク質および古細菌タンパク質のファミリー。いくつかのメンバーはC末端のペプチドグリカン結合ドメインと結合しており、ペプチドグリカン代謝に関与している可能性がある。[pfam06267|69772]。CBDおよびMD。
pfam01476:LysM:LysMドメイン。LysM(lysin motif)ドメインの長さは、約40残基である。これは、細菌細胞壁分解に関与している様々な酵素中に存在する。このドメインは、一般的なペプチドグリカン結合機能を有し得る。このドメインの構造は公知である。[pfam01476|65285]。CBD。
smart00701:PGRP:バクテリオファージT3リゾチームに相同な動物性ペプチドグリカン認識タンパク質。蛾ホモログを除く、バクテリオファージ分子は、N-アセチルムラモイル-L-アラニンアミダーゼ活性を有することが示された。このファミリーTag7の1つのメンバーはサイトカインである。[smart00701|47970]。CBD。
COG2951:MltB:膜結合型溶解性ムレイントランスグリコシラーゼB。[細胞エンベロープ生合成、外膜][COG2951|32773]。MD。
COG2821:MltA:膜結合型溶解性ムレイントランスグリコシラーゼ。[細胞エンベロープ生合成、外膜][COG2821|32649]。MD。
COG0741:MltE:可溶型溶解性ムレイントランスグリコシラーゼおよび関連する調節タンパク質(一部はLysM/インベイシンドメインを含む)。[細胞エンベロープ生合成、外膜][COG0741|31084]。MD。
cd00736:バクテリオファージ_λ_リゾチーム:バクテリオファージλ由来のリゾチームは、他のリゾチームと同様に、N-アセチルムラミン酸(MurNAc)とN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)の間のβ1,4-グリコシド結合を加水分解する。しかし、他のリゾチームとは違って、バクテリオファージλは、ペプチドグリカンが切断された際に還元末端を生成せず、むしろ、同じMurNAc残基の6-OHを用いて1,6-アンヒドロムラミン酸末端残基を生成し、したがって、溶解性トランスグリコシラーゼである。同一の1,6-アンヒドロ結合が、大腸菌の溶解性トランスグリコシラーゼの作用によって、細菌ペプチドグリカン中で形成される。しかしながら、これらは構造が異なる。[cd00736|29560]。MD。
cd00118:LysM:細菌細胞壁分解に関与している様々な酵素中に存在するライシンドメイン。このドメインは、一般的なペプチドグリカン結合機能を有し得る。[cd00118|29017]。CBD。
pfam08230:Cpl-7:Cpl-7リゾチームC末端ドメイン。このドメインは、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)バクテリオファージCp-7にコードされるCpl-7リゾチームのC末端部分中で最初に発見された。[pfam08230|71664]。CBDおよびMD。
pfam03411:ペプチダーゼ_M74:ペニシリン非感受性ムレインエンドペプチダーゼ。[pfam03411|67049] 22:pfam01473 CW_結合_1:推定上の細胞壁結合リピート。これらのリピートは、保存された芳香族残基を特徴とし、かつ、いくつかのタンパク質において複数のタンデム型コピー中にグリシンが存在する。CWリピートの長さはアミノ酸残基20個である。連鎖球菌ファージCP-1リゾチーム中のこれらのリピートは、コリンを含む細胞壁の特異的認識を司っている可能性がある。類似しているが、より長いリピートが、口腔連鎖球菌のグルコシルトランスフェラーゼおよびグルカン結合タンパク質中に存在し、かつ、グルカン結合、ならびにロイコノストック・メゼンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)の関連するデキストラン分解酵素に関与していることが示されている。リピートはまた、クロストリジウム・ジフィシル(Clostridium difficile)および他のクロストリジウム属(Clostridia)の毒素中にも存在するが、これらのリガンドは常に公知というわけではない。[pfam01473|65282]。CBD。
pfam01464:SLT:トランスグリコシラーゼSLTドメイン。このファミリーは、pfam00062と遠い関係にある。メンバーは、ファージ、II型、III型、およびIV型の分泌系(本文中で概説する)に存在する。[pfam01464|65274]。MD。
pfam00062:Lys:C型リゾチーム/α-ラクトアルブミンファミリー。α-ラクトアルブミンは、ラクトース合成酵素の調節サブユニットであり、ガラクトシルトランスフェラーゼの基質特異性をN-アセチルグルコサミンからグルコースに変更する。C型リゾチームは、分泌型溶菌性酵素であり、細菌細胞壁のペプチドグリカンを切断する。構造はマルチドメインで、αおよびβの混合したフォールドであり、4つの保存されたジスルフィド結合を含む。[pfam00062|63951]。MD。
COG5632:COG5632:N-アセチルムラモイル-L-アラニンアミダーゼ。[細胞エンベロープ生合成、外膜]。[COG5632|35191]。MD。
COG5479:COG5479:ペプチドグリカン生合成に潜在的に関与している、特徴付けられていないタンパク質。[細胞エンベロープ生合成、外膜]。[COG5479|35038]。CBDおよびMD。
COG4623:COG4623:ABC型アミノ酸結合タンパク質に融合された、予測される可溶型溶解性トランスグリコシラーゼ。[細胞エンベロープ生合成、外膜]。[COG4623|34243]。CBDおよびMD。
COG3863:COG3863:細胞壁関連ヒドロラーゼの特徴付けられていない遠縁の物質。[COG3863|33653]。CBDおよびMD。
COG3773:SleB:胞子発芽に関与する細胞壁加水分解。[細胞エンベロープ生合成、外膜]。[COG3773|33568]。CBDおよびMD。
COG3770:MepA:ムレインエンドペプチダーゼ。[細胞エンベロープ生合成、外膜][COG3770|33565]。MD。
COG3409:COG3409:推定上のペプチドグリカン結合ドメインを含むタンパク質。[細胞エンベロープ生合成、外膜][COG3409|33215]。CBD。
COG3023:ampD:N-アセチル-アンヒドロムラミル-L-アラニンアミダーゼ。[細胞エンベロープ生合成、外膜][COG3023|32839]。MD。
COG2247:LytB:推定上の細胞壁結合ドメイン。[細胞エンベロープ生合成、外膜]。[COG2247|32428]。CBD。
COG1215:COG1215:細胞壁生合成におそらくは関与しているグリコシルトランスフェラーゼ。[細胞エンベロープ生合成、外膜][COG1215|31408]。CBD。
COG0860:AmiC:N-アセチルムラモイル-L-アラニンアミダーゼ。[細胞エンベロープ生合成、外膜]。[COG0860|31201]。MD。
COG0791:Spr:細胞壁関連ヒドロラーゼ(侵入関連タンパク質)。[細胞エンベロープ生合成、外膜][COG0791|31134]。MD。
cd02848:キチナーゼ_N_末端:キチナーゼN末端ドメイン。キチナーゼは、大量の天然生体高分子キチンを加水分解して、より小さなキト-オリゴ糖を生成する。キチンは、β-1,4-グリコシド結合を介して連結された複数のN-アセチル-D-グルコサミン(NAG)残基からなり、真菌細胞壁および節足動物外骨格の重要な構造的要素である。キチン加水分解の様式を基準にして、キチナーゼは、ランダムキチナーゼ、エンドキチナーゼ、およびエキソキチナーゼに分類され、かつ、配列基準に基づいて、キチナーゼは、グリコシルヒドロラーゼのファミリー18および19に属する。キチナーゼのN末端は、免疫グロブリンおよび/またはフィブロネクチンIII型スーパーファミリーに関係している場合もある。これらのドメインは、N末端またはC末端のいずれかの異なるタイプの触媒ドメインに関連しており、かつ、ホモ二量体/四量体/十二量体の相互作用に関与している可能性がある。このファミリーのメンバーには、αアミラーゼファミリー、シアリダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、セルラーゼ、セルロース、ヒアルロン酸リアーゼ、キトビアーゼ、およびキチナーゼのメンバーが含まれる。[cd02848|30335]。MD。
cd02847:キトビアーゼ_C_末端:キトビアーゼC末端ドメイン。キトビアーゼ(N-アセチルグルコサミニダーゼとしても知られる)は、真菌細胞壁および節足動物外骨格の重要な構造的要素であるキチン中に存在するN-アセチルグルコサミン(NAG)オリゴマーのβ1-4グリコシド結合を消化する。これは、酸塩基反応メカニズムを通じて進行すると考えられており、このメカニズムでは、1つのタンパク質カルボキシラートが触媒酸として作用し、求核試薬は、アノマー配置を保持する基質に補助された反応における糖の極性アセトアミド基である。キトビアーゼのC末端は、免疫グロブリンおよび/またはフィブロネクチンIII型スーパーファミリーに関係している場合もある。これらのドメインは、N末端またはC末端のいずれかの異なるタイプの触媒ドメインに関連しており、かつ、ホモ二量体/四量体/十二量体の相互作用に関与している可能性がある。このファミリーのメンバーには、αアミラーゼファミリー、シアリダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、セルラーゼ、セルロース、ヒアルロン酸リアーゼ、キトビアーゼ、およびキチナーゼのメンバーが含まれる。[cd02847|30334]。MD。
cd00735:バクテリオファージ_T4様_リゾチーム:バクテリオファージT4様リゾチームは、原核生物細胞壁のペプチドグリカンヘテロポリマー中のN-アセチルムラミン酸(MurNAc)とN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)の間のβ1,4-グリコシド結合を加水分解する。メンバーには、様々なバクテリオファージ(T4、RB49、RB69、Aeh1)、ならびにタマホコリカビ属(Dictyostelium)が含まれる。[cd00735|29559]。MD。
cd00254:LT_GEWL:溶解性トランスグリコシラーゼ(LT)およびガチョウ卵白リゾチーム(GEWL)ドメイン。メンバーには、細菌中の可溶性および不溶性膜結合型LT、バクテリオファージλ中のLT、ならびに、真核生物「ガチョウ型」リゾチーム(GEWL)が含まれる。LTは、「ガチョウ型」リゾチームと同様に、N-アセチルムラミン酸(MurNAc)とN-アセチル-D-グルコサミン(GlcNAc)の間のβ1,4-グリコシド結合の切断を触媒する。しかしながら、これに加えて、それらは、同じムラミン酸残基のC6ヒドロキシル基と新しいグリコシド結合も形成する。[cd00254|29556]。MD。
cd00119:LYZ1:C型リゾチーム(1,4-β-N-アセチルムラミダーゼ、LYZ)およびα-ラクトアルブミン(ラクトース合成酵素Bタンパク質、LA)。これらは、進化上の関係が近く、かつ、同様の三次構造を有するが、機能的にはかなり異なる。リゾチームは、主として溶菌機能、原核生物細胞壁のペプチドグリカンの加水分解およびグリコシル転移を有する。LAは、授乳中に乳腺でもっぱら発現されるカルシウム結合性金属タンパク質である。LAは、酵素ラクトース合成酵素の調節サブユニットである。LAがラクトース合成酵素、ガラクトシルトランスフェラーゼの触媒構成要素と結合すると、このグリコシルトランスフェラーゼの受容体基質特異性が改変されて、ラクトースの生合成が促進される。[cd00119|29018]。MD。
smart00047:LYZ2:リゾチームサブファミリー2;真核生物リゾチームと遠い関係にある真正細菌酵素。[smart00047|47396]。MD。
pfam02016:ペプチダーゼ_S66:LD-カルボキシペプチダーゼ。ムラモイルテトラペプチドカルボキシペプチダーゼは、ペプチドグリカン中のテトラペプチド部分における二塩基性アミノ酸とC末端D-アラニンの間のペプチド結合を加水分解する。これは、L-アミノ酸とD-アミノ酸の間の結合を切断する。この活性の機能は、ムレインの再利用にある。また、このファミリーは、マイクロシンc7自己免疫タンパク質も含む。このファミリーは、MeropsファミリーS66に対応する。[pfam02016|65774]。MD。
pfam02324:グリコ_ヒドロ_70:グリコシルヒドロラーゼファミリー70。このファミリーのメンバーは、グリコシルヒドロラーゼファミリー70に属する。グルコシルトランスフェラーゼまたはスクロース6-グリコシルトランスフェラーゼ(GTF-S)は、スクロース由来のD-グルコピラノシル(glucopyramnosyl)単位の受容体分子への転移を触媒する。EC:2.4.1.5。このファミリーは、大ざっぱに言って、酵素のN末端触媒ドメインに対応する。また、このファミリーのメンバーは、C末端グルカン結合ドメインに対応する、推定上の細胞壁結合ドメインpfam01473も含む。[pfam02324|66049]。MD。
pfam06347:SH3_4:細菌のSH3ドメイン。このファミリーは、機能が不明であるいくつかの仮定上の細菌タンパク質からなる。これらは、SH3様ドメインから構成される。[pfam06347|69844]。CBD。
pfam08239:SH3_3:細菌SH3ドメイン。[pfam08239|71673]。CBD。
pfam08460:SH3_5:細菌SH3ドメイン。[pfam08460|71889]。CBD。
COG4991:COG4991:細菌SH3ドメインホモログを有する特徴付けられていないタンパク質。[COG4991|34596]。CBD。
COG3103:COG3103:SH3ドメインタンパク質。[シグナル伝達メカニズム]。[COG3103|32917]。CBD。
smart00287:SH3b:細菌SH3ドメインホモログ。[smart00287|47616]。CBD。
pfam01551:ペプチダーゼ_M23:ペプチダーゼファミリーM23。このファミリーのメンバーは、一連の特異性を有する亜鉛メタロペプチダーゼである。ペプチダーゼファミリーM23はこのファミリーに含まれ、これらはGly-Glyエンドペプチダーゼである。ペプチダーゼファミリーM23もまた、エンドペプチダーゼである。このファミリーはまた、タンパク質分解活性が実証されていないいくつかの細菌リポタンパク質も含む。このファミリーはまた、白血球細胞由来のケモタキシン2(LECT2)タンパク質も含む。LECT2は、肝細胞増殖に関係していると考えられている肝臓特異的タンパク質であるが、このタンパク質の正確な機能は不明である。[pfam01551|65358]。MD。
TAME候補物を得るためにファージゲノムをスキャニングする方法
現在、このプロセスは、各ファージゲノムを手作業で検査することによって実施されているが、将来、自動スキャニングが、CDD[Conserved Domain Database(NCBI)、またはその等価物]によって実施される可能性がある。例としてスタフォリコッカス(Stapholycoccus)ファージ11を用いて、段階的なプロセスを下記に挙げる。
1. 適切なデータベース、例えば、ジェンバンク(GenBank)ファージゲノムデータベース(ncbi.nlm.nih.gov/genomes/static/phg.html)中でファージゲノムを同定する。その参照番号を選択する(ファージ11の場合、画面の右側にNC番号があり、NC_004615である)。[この説明は、この日付でのこのデータベースの使用に基づいている。ルック/フィールのデザインが進化する場合には、この説明は「例示的」になる]。
2. ゲノム概観ウィンドウから、タンパク質コード特徴(またはその機能的等価物)を選択する(この場合、53個のタンパク質)。ゲノムの予測されるタンパク質生成物すべてを列挙するウィンドウが、完全な予測タンパク質リストと共に開く。この場合、遺伝子産物に広範囲に渡るアノテーションが付与されている。しかしながら、この方法は、潜在的なORFの自動同定以外は、事前のアノテーションを必要としない。
3. 次の段階は、上記に挙げたCD[Conserved Domains;すなわち、細胞結合ドメインまたは壁分解性ドメイン]のうちの1つの存在に関して、予測される各タンパク質生成物を検査することである。この手作業検査は、最大の予測タンパク質で開始し、サイズリストの小さい方に進行すべきである。(例としての)ファージ11の場合、最大のORFはphi11_45であり、636アミノ酸を含むと予測される。最も単純な手順は、7桁の遺伝子IDを選択することである。これにより、ファージゲノムにおける位置を示すORFの図示を含む、ORFの概観が提示される。この図示を選択することによって、ドロップダウンメニューが表示される。ORF中に任意のCDがあれば、これらの選択のうち1つは保存ドメインであると考えられる。この選択肢を選択することにより、ORFは、配列中で検出されたCDのアイデンティティおよび位置と共に、図の形態で表示される。phi11_45の例の場合、CDは検出されない。このプロセスを次に大きな予測タンパク質生成物に対して繰り返す。この場合、アミノ酸633個のphi11_44であると考えられる。このORF中には2つのCDが存在するが、どちらも、図1に示すリストには属さない。この例において、次のORFはphi11_49である。このORFは2つのCD、すなわちCHAPおよびLyz2を有することが判明し、いずれも図1中に存在する。理想的には、このプロセスは、アミノ酸150個を上回るORFすべてに対して繰り返すべきである。一般に、第2のORFは、図1において少なくも1つのヒットをもたらすと考えられる。phi11の場合、ORF phi11_53は、CHAPドメイン、Ami2ドメイン、およびSH3_5ドメインを有することが判明している。
予測されるORFの完全なリストを解析した後、一般に、2つのORF、すなわち、TAMEおよび溶解性エンドリシンが同定される。TAMEを選択するために、いくつかの基準が適用される。第1に、TAMEは通常、図1に挙げられるCDを含む最大のORFである。ファージ11の例において、TAMEはphi11_49であり、これは、エンドリシン、phi11_53(アミダーゼ)より大きい。ファージ尾部タンパク質が同定された場合には、第2の確認基準が利用可能になる場合がある。TAMEは、尾部遺伝子によってグループ分けされる。ファージ11の場合、TAME遺伝子phi11_49は、DNAの同じ(+)鎖上で、尾部繊維遺伝子phi11_50に隣接し、かつ巻き尺遺伝子phi11_42を含む他の尾部遺伝子の下流にある。エンドリシン(この場合、アミダーゼ;phi11_53)は、通常、ホリン(この場合、phi11_52)に隣接しているか、または近接している。
現在使用しているブドウ球菌ファージ中のTAME
現在利用可能なブドウ球菌ファージにこの手順を適用して、図1を作成した。この図では、各バクテリオファージに関して(一番右の列のGI番号と共に)TAME候補物を挙げている。各ファージに関連する行において、TAMEを同定するのに使用したCDを挙げる。
細胞結合ドメインおよび壁分解性ドメインが一旦同定されると、当業者は、本明細書の開示内容および標準的な分子生物学技術を用いて、TAME-CBDタンパク質を作製することができる。多数のTAME-CBDタンパク質の殺菌機能を、本明細書において説明するアッセイ法、例えば、菌叢阻害アッセイ法、ザイモグラムアッセイ法、およびコロニー形成単位(CFU)滴下アッセイ法を用いて分析することができる。
多くのファージゲノムが、公的に利用可能なデータベースで開示されている。当業者は、ブドウ球菌ファージに由来する保存ドメイン、すなわち、キメラTAME-CBDタンパク質で使用され得るCBDおよびMDの両方の同定を拡大適用して、他の細菌に感染するファージ、例えば、連鎖球菌細菌株および炭疽菌(Anthrax)細菌株に感染するファージに由来する保存ドメイン(CBDおよびMDの両方)を同定することができる。