以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。本実施形態1は、本発明に係る冷凍装置(10)である。この冷凍装置(10)は、図1に示すように、室外ユニット(11)と室内ユニット(13)とを備えた空気調和装置(10)であって、冷房運転と暖房運転とを切り換えて行うように構成されている。
−冷凍装置の構成−
室外ユニット(11)内には、室外回路(21)が設けられている。室内ユニット(13)内には、室内回路(22)が設けられている。この冷凍装置(10)では、室外回路(21)と室内回路(22)とを、液側連絡配管(23)及びガス側連絡配管(24)で接続することによって蒸気圧縮冷凍サイクルを行う冷媒回路(20)が構成されている。冷媒回路(20)には、例えばフロン系の冷媒が充填されている。
《室外ユニット》
室外ユニット(11)の室外回路(21)には、圧縮機(30)と、熱源側熱交換器を構成する室外熱交換器(34)と、減圧機構を構成する膨張弁(36)とが、回路構成機器として設けられている。また、室外回路(21)には、冷媒の循環方向を切り換えるための四路切換弁(33)と、液側連絡配管(23)が接続される液側閉鎖弁(25)と、ガス側連絡配管(24)が接続されるガス側閉鎖弁(26)とが設けられている。
圧縮機(30)は、密閉容器状のケーシング内が圧縮後の冷媒で満たされる高圧ドーム型の圧縮機である。圧縮機(30)は、ピストンとシリンダとにより形成した圧縮室で流体を圧縮する回転式の流体機械と、流体機械のピストンを駆動するモータと、流体機械とモータとを収容するケーシングとを備えている(図示省略)。圧縮機(30)の吐出側は、吐出管(40)を介して四路切換弁(33)の第1ポート(P1)に接続されている。圧縮機(30)の吸入側は、吸入管(41)を介して四路切換弁(33)の第3ポート(P3)に接続されている。
室外熱交換器(34)は、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器により構成されている。室外熱交換器(34)の近傍には、送風機を構成する室外ファン(12)が設けられている。室外熱交換器(34)では、室外ファン(12)によって送られる室外空気と冷媒との間で熱交換が行われる。なお、室外ファン(12)は、風量を複数段階に調節することができる。
室外熱交換器(34)の一端は、四路切換弁(33)の第4ポート(P4)に接続されている。室外熱交換器(34)の他端は、液配管(42)を介して液側閉鎖弁(25)に接続されている。この液配管(42)には、開度可変の膨張弁(36)が設けられている。また、四路切換弁(33)の第2ポート(P2)はガス側閉鎖弁(26)に接続されている。
四路切換弁(33)は、第1ポート(P1)と第2ポート(P2)が互いに連通して第3ポート(P3)と第4ポート(P4)が互いに連通する第1状態(図1に実線で示す状態)と、第1ポート(P1)と第4ポート(P4)が互いに連通して第2ポート(P2)と第3ポート(P3)が互いに連通する第2状態(図1に破線で示す状態)とが切り換え可能となっている。
室外回路(21)では、圧縮機(30)の吸入側に、一対の吸入温度センサ(45a)及び吸入圧力センサ(46a)が設けられている。圧縮機(30)の吐出側に、一対の吐出温度センサ(45b)及び吐出圧力センサ(46b)が設けられている。また、室外熱交換器(34)のガス側には、室外ガス温度センサ(45c)が設けられている。室外熱交換器(34)の液側には、室外液温度センサ(45d)が設けられている。室外ファン(12)の上流には、外気温度センサ(18)が設けられている。なお、これらのセンサ(18,45,46)は、変化量検出手段(31)と熱量検出手段(32)とに兼用されている。
《室内ユニット》
室内ユニット(13)の室内回路(22)には、利用側熱交換器を構成する室内熱交換器(37)が、回路構成機器として設けられている。室内熱交換器(37)は、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器により構成されている。室内熱交換器(37)の近傍には、送風機を構成する室内ファン(14)が設けられている。室内熱交換器(37)では、室内ファン(14)によって送られる室内空気と冷媒との間で熱交換が行われる。なお、室内ファン(14)は、風量を複数段階に調節することができる。また、室内ユニット(13)では、室内に開口する吸込口と室内ファン(14)との間にエアフィルタが設けられている(図示省略)。
室内回路(22)では、室内熱交換器(37)の液側に、室内液温度センサ(45e)が設けられている。室内熱交換器(37)のガス側に、室内ガス温度センサ(45f)が設けられている。室内ファン(14)の上流には、室内温度センサ(19)が設けられている。なお、これらのセンサ(19,45,46)は、変化量検出手段(31)と熱量検出手段(32)とに兼用されている。
《コントローラ》
本実施形態1の冷凍装置(10)は、本発明に係る冷凍装置の診断装置(50)により構成されたコントローラ(50)を備えている。コントローラ(50)は、本発明に係る冷凍装置の診断方法により冷凍装置(10)の状態を診断する。コントローラ(50)は、圧縮機(30)、室外熱交換器(34)および室内熱交換器(37)のそれぞれを診断対象機器にして、各診断対象機器の状態を個別に診断するように構成されている。コントローラ(50)は、冷媒状態検出部(51)とエクセルギー算出部(52)と熱量算出部(53)と診断部(54)とを備えている。
なお、本実施形態1では、冷媒状態検出部(51)及びエクセルギー算出部(52)が、変化量検出手段(31)を構成している。冷媒状態検出部(51)及び熱量算出部(53)が、熱量検出手段(32)を構成している。冷媒状態検出部(51)は、変化量検出手段(31)と熱量検出手段(32)とに兼用されている。そして、診断部(54)が、診断手段(54)を構成している。
冷媒状態検出部(51)は、各温度センサ(45)の測定値及び各圧力センサ(46)の測定値を用いて、圧縮機(30)の入口(蒸発器(34,37)の出口)における冷媒の温度及びエントロピー(図2における点Aの座標値)と、圧縮機(30)の出口(凝縮器(34,37)の入口)における冷媒の温度及びエントロピー(図2における点Bの座標値)と、膨張弁(36)の入口(凝縮器(34,37)の出口)における冷媒の温度及びエントロピー(図2における点Eの座標値)と、膨張弁(36)の出口(蒸発器(34,37)の入口)における冷媒の温度及びエントロピー(図2における点Gの座標値)とを検出するように構成されている。冷媒の温度は、温度センサ(45)の測定値から直接検出され、冷媒のエントロピーは、温度センサ(45)の測定値及び圧力センサ(46)の測定値から算出される。
エクセルギー算出部(52)は、各診断対象機器について、該診断対象機器における冷媒のエクセルギーの変化量を算出するように構成されている。エクセルギー算出部(52)は、冷媒状態検出部(51)で得られた冷媒の温度及びエントロピーを用いて、各診断対象機器における冷媒のエクセルギーの変化量を算出する。エクセルギー算出部(52)では、冷媒のエクセルギーの変化量を算出するのに、エクセルギー分析(熱力学的分析)が利用されている。
熱量算出部(53)は、各診断対象機器について、該診断対象機器において冷媒が吸熱又は放熱する熱量を算出するように構成されている。熱量算出部(53)は、冷媒状態検出部(51)で得られた冷媒の温度及びエントロピーを用いて、各診断対象機器において冷媒が吸熱又は放熱する熱量を算出する。なお、冷媒が吸熱又は放熱する熱量とは、冷媒に出入りする熱量である。
診断部(54)は、各診断対象機器について、該診断対象機器における冷媒のエクセルギーの変化量と、該診断対象機器において冷媒が吸熱又は放熱する熱量とを用いて、診断用指標値を算出するように構成されている。すなわち、診断部(54)は、各診断対象機器について、該診断対象機器に対応するエクセルギー算出部(52)の算出値(変化量検出手段(31)の検出値)と、該診断対象機器に対応する熱量算出部(53)の算出値(熱量検出手段(32)の検出値)とを用いて、診断用指標値を算出するように構成されている。診断指標値は、診断時における診断対象機器の状態を表す値となる。
具体的に、診断部(54)は、熱交換器(34,37)については、「熱交換器(34,37)における冷媒のエクセルギーの変化量」を「熱交換器(34,37)において冷媒が吸熱又は放熱する熱量」で除することによって、「熱交換器(34,37)の熱交換量」に対する「熱交換器(34,37)における損失量」の比率を、診断用指標値として算出する。また、診断部(54)は、圧縮機(30)については、「圧縮機(30)において冷媒が吸熱又は放熱する熱量」を「圧縮機(30)における冷媒のエクセルギーの変化量」で除することによって、「圧縮機(30)の入力電力」に対する「圧縮機(30)における損失量」の比率を、診断用指標値として算出する。
熱交換器(34,37)における熱交換量は熱交換器(34,37)の動作状態を表し、圧縮機(30)の入力電力は圧縮機(30)の動作状態(運転状態)を表すことから、熱交換器(34,37)の診断用指標値と圧縮機(30)の診断用指標値は、両方とも、「診断対象機器における損失量を表す検出値」と「診断対象機器の動作状態を表す検出値」とから算出されていることになる。熱交換器(34,37)の診断用指標値と圧縮機(30)の診断用指標値は、「診断対象機器における損失量を表す検出値」と「診断対象機器の動作状態を表す検出値」との一方に対する他方の比率となっている。
診断部(54)は、各診断対象機器について、診断用指標値を診断対象機器に対して設定された診断用基準値と比較することによって、診断対象機器の状態を診断するように構成されている。診断用基準値は、診断部(54)に設けられたメモリに記憶されている。
診断部(54)のメモリには、各診断対象機器に対して、該診断対象機器が正常な状態のときを基準にして作成した診断用基準値が記憶されている。メモリには、各診断対象機器について、様々な運転条件に対応する複数の診断用基準値が記憶されている。メモリには、室外ファン(12)のファンステップ、室内ファン(14)のファンステップ、凝縮器(34,37)に流入する空気と蒸発器(34,37)に流入する空気との温度差の3つの数値をパラメータとする診断用基準値が、複数の運転条件に対して格納されている。なお、診断用基準値は、例えばシミュレーション計算によって作成される。
診断部(54)のメモリにおいて、熱交換器(34,37)に対して設定された診断用基準値は、該熱交換器(34,37)が正常な状態のときの「熱交換器(34,37)における熱交換量」に対する「熱交換器(34,37)における損失量」の比率である。また、圧縮機(30)に対して設定された診断用基準値は、該圧縮機(30)が正常な状態のときの「圧縮機(30)の入力電力」に対する「圧縮機(30)における損失量」の比率である。診断用基準値は、診断用指標値と同じ比率を正常な状態の値として数値化したものである。
なお、本実施形態1では、診断部(54)による診断対象機器の診断結果が、表示手段を構成する表示部(55)に表示される。なお、表示部(55)には、上記診断結果以外に、診断対象機器の状態を診断するための情報として、診断用指標値に基づく情報(診断用指標値や診断用指標値をグラフ化した画像)を表示してもよい。これにより、表示部(55)を見た冷凍装置(10)の管理者が、診断対象機器の状態を診断することも可能となる。
−冷凍装置の運転動作−
冷凍装置(10)の運転動作について説明する。この冷凍装置(10)は、四路切換弁(33)によって冷房運転と暖房運転の切り換えを行うことができるように構成されている。
<冷房運転>
冷房運転では、四路切換弁(33)が第2状態に設定される。そして、この状態で圧縮機(30)の運転が行われると、冷媒回路(20)では室外熱交換器(34)が凝縮器となって室内熱交換器(37)が蒸発器となる蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。なお、冷房運転では、例えば室内熱交換器(37)の出口の冷媒の過熱度が所定の目標値(例えば5℃)になるように、膨張弁(36)の開度が調節される。
具体的に、圧縮機(30)で圧縮された冷媒は、室外熱交換器(34)で室外空気と熱交換して凝縮する。室外熱交換器(34)で凝縮した冷媒は、膨張弁(36)を通過する際に減圧され、その後に室内熱交換器(37)で室内空気と熱交換して蒸発する。室内熱交換器(37)で蒸発した冷媒は、圧縮機(30)で再び圧縮される。
<暖房運転>
暖房運転では、四路切換弁(33)が第1状態に設定される。そして、この状態で圧縮機(30)の運転が行われると、冷媒回路(20)では室外熱交換器(34)が蒸発器となって室内熱交換器(37)が凝縮器となる蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。なお、暖房運転では、例えば室内熱交換器(37)の出口の冷媒の過冷却度が所定の目標値(例えば5℃)になるように、膨張弁(36)の開度が調節される。
具体的に、圧縮機(30)で圧縮された冷媒は、室内熱交換器(37)で室内空気と熱交換して凝縮する。室内熱交換器(37)で凝縮した冷媒は、膨張弁(36)を通過する際に減圧され、その後に室外熱交換器(34)で室外空気と熱交換して蒸発する。室外熱交換器(34)で蒸発した冷媒は、圧縮機(30)で再び圧縮される。
−コントローラの動作−
コントローラ(50)の動作について説明する。コントローラ(50)は、冷房運転中や暖房運転中に、回路構成機器の状態を診断する。以下では、冷房運転中の診断について説明する。
最初に、蒸発器として動作する室内熱交換器(37)の診断について説明する。室内熱交換器(37)の診断では、まず、室内熱交換器(37)における冷媒のエクセルギーの変化量を検出する変化量検出ステップが行われる。変化量検出ステップでは、まず、冷媒状態検出部(51)が、室内熱交換器(37)の入口(膨張弁(36)の出口)における冷媒の温度及びエントロピーと、室内熱交換器(37)の出口(圧縮機(30)の入口)における冷媒の温度及びエントロピーとを検出する。
冷媒状態検出部(51)は、室内液温度センサ(45e)の測定値を室内熱交換器(37)の入口における冷媒の温度として検出する。冷媒状態検出部(51)は、室内液温度センサ(45e)の測定値及び吸入圧力センサ(46a)の測定値を用いて、室内熱交換器(37)の入口における冷媒のエントロピーを算出する。室内熱交換器(37)の入口の冷媒のエントロピーの算出では、室内熱交換器(37)の入口の圧力が圧縮機(30)の入口の圧力に等しいものとみなして、吸入圧力センサ(46a)の測定値が用いられる。また、冷房運転中は室内熱交換器(37)の入口の冷媒が気液二相状態になるため、冷媒の温度及び圧力からエントロピーを算出できるように、室内熱交換器(37)の入口の冷媒のエンタルピーが、室外熱交換器(34)の出口の冷媒のエンタルピーに等しいものと仮定している。これにより、図2に示すT−s線図の点Gの座標値が得られる。
また、冷媒状態検出部(51)は、吸入温度センサ(45a)の測定値を室内熱交換器(37)の出口における冷媒の温度として検出する。また、冷媒状態検出部(51)は、吸入温度センサ(45a)の測定値及び吸入圧力センサ(46a)の測定値を用いて、室内熱交換器(37)の出口における冷媒のエントロピーを算出する。これにより、図2に示すT−s線図の点Aの座標値が得られる。
続いて、変化量検出ステップでは、エクセルギー算出部(52)が、室内熱交換器(37)の入口の冷媒の温度及びエントロピーと、室内熱交換器(37)の出口の冷媒の温度及びエントロピーとに加えて、室内温度センサ(19)の測定値を用いて、室内熱交換器(37)における冷媒のエクセルギーの変化量を算出する。
ここで、T−s線図(図2及び図3)において、冷凍サイクルを表すラインを利用して領域分けされた各領域の面積を用いると、回路構成機器(圧縮機(30)、凝縮器(34,37)、膨張弁(36)、蒸発器(34,37))における冷媒のエクセルギーの変化量を知ることが可能である。図2及び図3において、Thは、凝縮器(34,37)に送り込まれる空気の温度(冷房運転では、外気温度センサ(18)の測定値)、Tcは、蒸発器(34,37)に送り込まれる空気の温度(冷房運転では、室内温度センサ(19)の測定値)をそれぞれ表している。
また、点Aは、圧縮機(30)の入口(蒸発器(34,37)の出口)の冷媒の温度とエントロピーから定まる点である。点Bは、圧縮機(30)の出口(凝縮器(34,37)の入口)の冷媒の温度とエントロピーから定まる点である。点Eは、膨張弁(36)の入口(凝縮器(34,37)の出口)の冷媒の温度とエントロピーから定まる点である。点Gは、膨張弁(36)の出口(蒸発器(34,37)の入口)の冷媒の温度とエントロピーから定まる点である。
また、点Cは、点Bを通る等圧線と飽和蒸気線とが交わる点である。点Dは、点Cを通る等温線と飽和液線とが交わる点である。点Fは、点Eを通る等エンタルピー線と飽和液線とが交わる点である。点Hは、点Gを通る等温線と飽和蒸気線とが交わる点である。また、点Iは、点Aを通る等エントロピー線上で温度がTcになる点である。点Jは、点Aを通る等エントロピー線上で温度がThになる点である。点Kは、点Gを通る等エントロピー線上で温度がThになる点である。点Lは、点Gを通る等エントロピー線上で温度がTcになる点である。点Mは、点Bを通る等エントロピー線上で温度がThになる点である。
なお、本実施形態1では、点A、点B、点Eおよび点Gの座標値と、外気温度センサ(18)の測定値と、室内温度センサ(19)の測定値とを用いて、点C、点D、点F、点H、点I、点J、点K、点Lおよび点Mの座標値が算出される。
図2及び図3では、圧縮機(30)における冷媒のエクセルギーの変化量(増加量)が、(a)の領域の面積で表される。圧縮機(30)において冷媒が吸熱又は放熱する熱量が、(b)の領域の面積で表される。凝縮器(34,37)における冷媒のエクセルギーの変化量(損失量)が、(c)の領域の面積で表される。膨張弁(36)における冷媒のエクセルギーの変化量が、(d)の領域の面積で表される。蒸発器(34,37)における冷媒のエクセルギーの変化量(損失量)が、(e)の領域の面積で表される。
また、図2では、逆カルノーサイクルの仕事量が、(f)の領域の面積で表される。凝縮器(34,37)における放熱量(熱交換量)が、点Bから点Cと点Dを経て点Eに至る線の下側の領域、つまり(a)の領域に(g)の領域を加えた領域の面積(図2においてハッチングされた全面積)で表される。蒸発器(34,37)における吸熱量(熱交換量)が、点Gから点Hを経て点Aに至る線の下側の領域、つまり(g)の領域の面積で表される。
なお、蒸発器(34,37)における冷媒のエクセルギーの変化量は、「蒸発器(34,37)で失われる冷媒のエクセルギーの量」、つまり「蒸発器(34,37)における冷媒のエクセルギーの損失量」ということもできる。また、凝縮器(34,37)における冷媒のエクセルギーの変化量は、「凝縮器(34,37)で失われる冷媒のエクセルギーの量」、つまり「凝縮器(34,37)における冷媒のエクセルギーの損失量」ということもできる。「エクセルギーの損失量」は、「理論サイクル(逆カルノーサイクル)に対して実際のサイクルで余計に必要になるエネルギー」を意味しており、「エクセルギー損失」と表現することも可能である。また、圧縮機(30)において冷媒が吸熱又は放熱する熱量も、「理論サイクル(逆カルノーサイクル)に対して実際のサイクルで余計に必要になるエネルギー」を意味している。実際の冷凍サイクルにおける圧縮機(30)では、理論サイクルの断熱圧縮とは異なり、冷媒に対する熱の出入りがあることが原因で、理論サイクルに対してエネルギーが余分に必要となる。
エクセルギー算出部(52)は、室内熱交換器(37)の出入口における冷媒の温度及びエントロピーに加えて、室内温度センサ(19)の測定値を用いて、室内熱交換器(37)における冷媒のエクセルギーの変化量を表す(e)の領域の面積を算出する。(e)の領域の面積から得られる変化量は、冷媒1kg当たりの値である。エクセルギー算出部(52)は、(e)の領域の面積に冷媒の循環量を掛けて、室内熱交換器(37)における冷媒のエクセルギーの変化量を単位時間当たりの仕事量(ワット)に換算した値を、第1検出値(変化量検出手段(31)の検出値、変化量検出ステップの検出値)として算出する。なお、冷媒の循環量は、例えば、圧縮機(30)の入力電力を圧縮機(30)の出口と入口のエンタルピー差で除することによって算出される。以上により変化量検出ステップが終了する。
次に、室内熱交換器(37)において冷媒が吸熱する熱量を検出する熱量検出ステップが行われる。熱量検出ステップでは、熱量算出部(53)が、室内熱交換器(37)の出入口における冷媒の温度及びエントロピーを用いて、室内熱交換器(37)において冷媒が吸熱する熱量を表す(g)の領域の面積を算出する。(g)の領域の面積から得られる熱量は、冷媒1kg当たりの値である。熱量算出部(53)は、(g)の領域の面積に冷媒の循環量を掛けて、室内熱交換器(37)において冷媒が吸熱する熱量を単位時間当たりの仕事量(ワット)に換算した値を、第2検出値(熱量検出手段(32)の検出値、熱量検出ステップの検出値)として算出する。以上により熱量検出ステップが終了する。
なお、熱量検出ステップを変化量検出ステップよりも先に行ってもよい。その場合は、熱量検出ステップにおいて、冷媒の温度及びエントロピーを検出する。この点は、後述する室外熱交換器(34)や圧縮機(30)の診断でも同じである。
次に、室内熱交換器(37)の状態を診断する診断ステップが行われる。診断ステップでは、まず、診断部(54)が、第1検出値を第2検出値で除して、「室内熱交換器(37)において冷媒が吸熱する熱量」に対する「室内熱交換器(37)における冷媒のエクセルギーの変化量」の比率を診断用指標値(蒸発器側指標値)として算出する。診断用指標値は、診断時における「室内熱交換器(37)における吸熱量」に対する「室内熱交換器(37)における損失量」の比率を表す。
そして、診断部(54)は、蒸発器として動作するときの室内熱交換器(37)の診断用基準値の中から、診断時と同じ運転条件の診断用基準値(蒸発器側基準値)、もしくは同じ運転条件の診断用基準値がなければ最も近い運転条件の診断用基準値(蒸発器側基準値)をメモリから読み出す。つまり、診断部(54)は、診断時と同じ運転条件又は近い運転条件における正常な状態の「室内熱交換器(37)における吸熱量」に対する「室内熱交換器(37)における損失量」の比率を読み出す。
そして、診断部(54)は、診断時における「室内熱交換器(37)における吸熱量」に対する「室内熱交換器(37)における損失量」の比率を、正常な状態の「室内熱交換器(37)における吸熱量」に対する「室内熱交換器(37)における損失量」の比率で除した第1演算値(蒸発側指標値/蒸発側基準値)を算出する。診断部(54)は、第1演算値が所定の第1判定値を下回る場合には、“室内熱交換器(37)は劣化していない”と判定し、第1演算値が第1判定値を上回る場合には、“室内熱交換器(37)は劣化している”と判定する。なお、第1演算値は、「室内熱交換器(37)における吸熱量」に対する「室内熱交換器(37)における損失量」の比率について、正常な状態からの変化率を表す。以上により診断ステップが終了する。
なお、複数の判定値を用いることで、室内熱交換器(37)の劣化状態を段階的に診断することが可能である。また、劣化を判定するとき判定値よりも、大きな判定値を用いることで、室内熱交換器(37)が故障しているか否かを判定することが可能である。この点は、後述する室外熱交換器(34)や圧縮機(30)の診断でも同じである。
ここで、室内熱交換器(37)が劣化又は故障すると、図4に示すように、冷凍サイクルの低圧が低下する。そして、室内熱交換器(37)における損失量が増加する一方で、室内熱交換器(37)における吸熱量が減少する。その結果、「室内熱交換器(37)における吸熱量」に対する「室内熱交換器(37)における損失量」の比率が増加する。そこで、本実施形態1では、室内熱交換器(37)に対して設定された蒸発側基準値に対して蒸発側指標値が所定の割合だけ増加すると、室内熱交換器(37)が劣化していると判定する。なお、図4(A)は室内熱交換器(37)が劣化していない状態のT−s線図であり、図4(B)は室内熱交換器(37)が劣化している状態のT−s線図である。
本実施形態1では、室内熱交換器(37)が劣化又は故障すると、すなわち、室内熱交換器(37)における損失量が増加すると、どんな運転条件のときでも、図4に示すように、室内熱交換器(37)における吸熱量が減少する。このため、どのような運転条件であっても、室内熱交換器(37)における損失量の変化に対して、室内熱交換器(37)における吸熱量がどのように変化するのかによって、室内熱交換器(37)における損失量の変化が室内熱交換器(37)の劣化によって引き起こされているかどうかをある程度判断することができる。従って、診断時とは多少異なる運転条件の基準データであっても、室内熱交換器(37)の状態を適切に診断することができる。
続いて、凝縮器として動作する室外熱交換器(34)の診断について説明する。室外熱交換器(34)の診断では、まず、室外熱交換器(34)における冷媒のエクセルギーの変化量を検出する変化量検出ステップが行われる。変化量検出ステップでは、まず、冷媒状態検出部(51)が、室外熱交換器(34)の入口(圧縮機(30)の出口)における冷媒の温度及びエントロピーと、室外熱交換器(34)の出口(膨張弁(36)の入口)における冷媒の温度及びエントロピーとを検出する。
冷媒状態検出部(51)は、吐出温度センサ(45b)の測定値を室外熱交換器(34)の入口における冷媒の温度として検出する。また、冷媒状態検出部(51)は、吐出温度センサ(45b)の測定値及び吐出圧力センサ(46b)の測定値を用いて、室外熱交換器(34)の入口における冷媒のエントロピーを算出する。これにより、図2に示すT−s線図の点Bの座標値が得られる。
また、冷媒状態検出部(51)は、室外液温度センサ(45d)の測定値を室外熱交換器(34)の出口における冷媒の温度として検出する。また、冷媒状態検出部(51)は、室外液温度センサ(45d)の測定値及び吐出圧力センサ(46b)の測定値を用いて、室外熱交換器(34)の出口における冷媒のエントロピーを算出する。室外熱交換器(34)の出口の冷媒のエントロピーの算出では、室外熱交換器(34)の出口の圧力が圧縮機(30)の出口の圧力に等しいものとみなして、吐出圧力センサ(46b)の測定値が用いられる。これにより、図2に示すT−s線図の点Eの座標値が得られる。
続いて、変化量検出ステップでは、エクセルギー算出部(52)が、室外熱交換器(34)の出入口における冷媒の温度及びエントロピーに加えて、外気温度センサ(18)の測定値を用いて、室外熱交換器(34)における冷媒のエクセルギーの変化量を表す(c)の領域の面積を算出する。(c)の領域の面積から得られる変化量は、冷媒1kg当たりの値である。エクセルギー算出部(52)は、(c)の領域の面積に冷媒の循環量を掛けて、室外熱交換器(34)における冷媒のエクセルギーの変化量を単位時間当たりの仕事量(ワット)に換算した値を第3検出値(変化量検出手段(31)の検出値、変化量検出ステップの検出値)として算出する。以上により変化量検出ステップが終了する。
次に、室外熱交換器(34)において冷媒が放熱する熱量を検出する熱量検出ステップが行われる。熱量検出ステップでは、熱量算出部(53)が、室外熱交換器(34)の出入口における冷媒の温度及びエントロピーを用いて、室外熱交換器(34)において冷媒が放熱する熱量を表す(a)の領域と(g)の領域の合計面積を算出する。(a)の領域と(g)の領域の合計面積から得られる熱量は、冷媒1kg当たりの値である。熱量算出部(53)は、(a)の領域と(g)の領域の合計面積に冷媒の循環量を掛けて、室外熱交換器(34)において冷媒が放熱する熱量を単位時間当たりの仕事量(ワット)に換算した値を第4検出値(熱量検出手段(32)の検出値、熱量検出ステップの検出値)として算出する。以上により熱量検出ステップが終了する。
次に、室外熱交換器(34)の状態を診断する診断ステップが行われる。診断ステップでは、まず、診断部(54)が、第3検出値を第4検出値で除して、「室外熱交換器(34)において冷媒が放熱する熱量」に対する「室外熱交換器(34)における冷媒のエクセルギーの変化量」の比率を診断用指標値(凝縮器側指標値)として算出する。診断用指標値は、診断時における「室外熱交換器(34)における放熱量」に対する「室外熱交換器(34)における損失量」の比率を表す。
そして、診断部(54)は、凝縮器として動作するときの室外熱交換器(34)の診断用基準値の中から、診断時と同じ運転条件の診断用基準値(凝縮器側基準値)、もしくは同じ運転条件の診断用基準値がなければ最も近い運転条件の診断用基準値(凝縮器側基準値)をメモリから読み出す。つまり、診断部(54)は、診断時と同じ運転条件又は近い運転条件における正常な状態の「室外熱交換器(34)における放熱量」に対する「室外熱交換器(34)における損失量」の比率を読み出す。
そして、診断部(54)は、診断時における「室外熱交換器(34)における放熱量」に対する「室外熱交換器(34)における損失量」の比率を、正常な状態の「室外熱交換器(34)における放熱量」に対する「室外熱交換器(34)における損失量」の比率で除した第2演算値(凝縮側指標値/凝縮側基準値)を算出する。診断部(54)は、第2演算値が所定の第2判定値を下回る場合には、“室外熱交換器(34)が劣化していない”と判定し、第2演算値が第2判定値を上回る場合には、“室外熱交換器(34)が劣化している”と判定する。なお、第2演算値は、「室外熱交換器(34)における放熱量」に対する「室外熱交換器(34)における損失量」の比率について、正常な状態からの変化率を表す。以上により診断ステップが終了する。
ここで、室外熱交換器(34)が劣化又は故障すると、図5に示すように、凝縮温度を上げようとする圧縮機(30)の入力電力の増加に伴って、冷凍サイクルの高圧が上昇する。そして、「室外熱交換器(34)における損失量」と「室外熱交換器(34)における放熱量」とでは、「室外熱交換器(34)における損失量」の方が増加率が大きくなる。従って、室外熱交換器(34)が劣化又は故障すると、「室外熱交換器(34)における放熱量」に対する「室外熱交換器(34)における損失量」の比率が増加する。そこで、本実施形態1では、室外熱交換器(34)に対して設定された凝縮側基準値に対して凝縮側指標値が所定の割合だけ増加すると、室内熱交換器(37)が劣化していると判定する。なお、図5(A)は室外熱交換器(34)が劣化していない状態のT−s線図であり、図5(B)は室外熱交換器(34)が劣化している状態のT−s線図である。
本実施形態1では、室外熱交換器(34)が劣化又は故障すると、すなわち、室外熱交換器(34)における損失量が増加すると、どんな運転条件のときでも、図5に示すように、室外熱交換器(34)における放熱量は、凝縮温度を上げようとする圧縮機(30)の入力電力の増加に伴って増加する。このため、どのような運転条件であっても、室外熱交換器(34)における損失量の変化に対して、室外熱交換器(34)における放熱量がどのように変化するのかによって、室外熱交換器(34)における損失量の変化が室外熱交換器(34)の劣化によって引き起こされているかどうかをある程度判断することができる。従って、診断時とは多少異なる運転条件の基準データであっても、室外熱交換器(34)の状態を適切に診断することができる。
続いて、圧縮機(30)の診断について説明する。圧縮機(30)の診断では、まず、圧縮機(30)における冷媒のエクセルギーの変化量を検出する変化量検出ステップが行われる。変化量検出ステップでは、まず、冷媒状態検出部(51)が、圧縮機(30)の入口における冷媒の温度及びエントロピー(図2に示すT−s線図の点A)と、圧縮機(30)の出口における冷媒の温度及びエントロピー(図2に示すT−s線図の点B)と、膨張弁(36)の入口における冷媒の温度及びエントロピー(図2に示すT−s線図の点E)と、膨張弁(36)の出口における冷媒の温度及びエントロピー(図2に示すT−s線図の点G)とを検出する。これらの位置における冷媒の温度及びエントロピーは、室内熱交換器(37)の診断及び室外熱交換器(34)の診断と同様に検出される。
続いて、変化量検出ステップでは、エクセルギー算出部(52)が、圧縮機(30)の出入口における冷媒の温度及びエントロピーと、膨張弁(36)の出入口における冷媒の温度及びエントロピーとを用いて、圧縮機(30)における冷媒のエクセルギーの変化量を表す(a)の領域の面積を算出する。(a)の領域の面積から得られる変化量は、冷媒1kg当たりの値である。エクセルギー算出部(52)は、(a)の領域の面積に冷媒の循環量を掛けて、圧縮機(30)における冷媒のエクセルギーの変化量を単位時間当たりの仕事量(ワット)に換算した値を第5検出値(変化量検出手段(31)の検出値、変化量検出ステップの検出値)として算出する。以上により変化量検出ステップが終了する。
次に、圧縮機(30)において冷媒が放熱する熱量を検出する熱量検出ステップが行われる。熱量検出ステップでは、熱量算出部(53)が、圧縮機(30)の出入口における冷媒のエントロピーに加えて、外気温度センサ(18)の測定値を用いて、圧縮機(30)において冷媒が放熱する熱量を表す(b)の領域の面積を算出する。(b)の領域の面積から得られる熱量は、冷媒1kg当たりの値である。熱量算出部(53)は、(b)の領域の面積に冷媒の循環量を掛けて、圧縮機(30)において冷媒が放熱する熱量を単位時間当たりの仕事量(ワット)に換算した値を第6検出値(熱量検出手段(32)の検出値、熱量検出ステップの検出値)として算出する。以上により熱量検出ステップが終了する。
なお、熱量算出部(53)は、圧縮機(30)において冷媒が放熱する熱量として、点Aと点Bを結ぶ線分の下側の領域の面積を算出するように構成されていてもよい。圧縮機(30)において冷媒が放熱する熱量は、圧縮機(30)の入口から出口までの冷媒の温度変化を圧縮機(30)の入口のエントロピーの値から圧縮機の出口のエントロピーの値までの区間において積分した値になる。
次に、圧縮機(30)の状態を診断する診断ステップが行われる。診断ステップでは、まず、診断部(54)が、第6検出値を第5検出値で除して、「圧縮機(30)における冷媒のエクセルギーの変化量」に対する「圧縮機(30)において冷媒が放熱する熱量」の比率を診断用指標値(圧縮機側指標値)として算出する。診断用指標値は、診断時における「圧縮機(30)の入力電力」に対する「圧縮機(30)における損失量」の比率を表す。
そして、診断部(54)は、圧縮機(30)の診断用基準値の中から、診断時と同じ運転条件の診断用基準値(圧縮機側基準値)、もしくは同じ運転条件の診断用基準値がなければ最も近い運転条件の診断用基準値(圧縮機側基準値)を読み出す。つまり、診断部(54)は、診断時と同じ運転条件又は近い運転条件における正常な状態の「圧縮機(30)の入力電力」に対する「圧縮機(30)における損失量」の比率をメモリから読み出す。
そして、診断部(54)は、診断時における「圧縮機(30)の入力電力」に対する「圧縮機(30)における損失量」の比率を、正常な状態の「圧縮機(30)の入力電力」に対する「圧縮機(30)における損失量」の比率で除した第3演算値(圧縮機側指標値/圧縮機側基準値)を算出する。診断部(54)は、第3演算値が所定の第3判定値を下回る場合には、“圧縮機(30)が劣化していない”と判定し、その第3演算値が第3判定値を上回る場合には、“圧縮機(30)が劣化している”と判定する。なお、第3演算値は、「圧縮機(30)の入力電力」に対する「圧縮機(30)における損失量」の比率について、正常な状態からの変化率を表す。以上により診断ステップが終了する。
ここで、圧縮機(30)が劣化すると、図6に示すように、T−s線図において圧縮機(30)の入口と圧縮機(30)の出口を結ぶ線分(図6における線分AB)の傾きが小さくなる。そして、「圧縮機(30)の入力電力」と「圧縮機(30)における損失量」では、「圧縮機(30)における損失量」の方が増加率が大きくなる。従って、「圧縮機(30)の入力電力」に対する「圧縮機(30)における損失量」の比率が増加する。そこで、本実施形態1では、圧縮機(30)に対して設定された圧縮機側基準値に対して圧縮機側指標値が所定の割合だけ増加すると、圧縮機(30)が劣化していると判定する。なお、図6(A)は圧縮機(30)が劣化していない状態のT−s線図であり、図6(B)は圧縮機(30)が劣化している状態のT−s線図である。
本実施形態1では、圧縮機(30)が劣化すると、すなわち、圧縮機(30)における損失量が増加すると、どんな運転条件のときでも、図6に示すように、圧縮機(30)の入力電力が増加する。このため、圧縮機(30)における損失量の変化に対して、圧縮機(30)の入力電力がどのように変化するのかによって、圧縮機(30)における損失量の変化が圧縮機(30)の劣化によって引き起こされているかどうかをある程度判断することができる。従って、診断時とは多少異なる運転条件の基準データであっても、圧縮機(30)の状態を適切に診断することができる。
−実施形態1の効果−
本実施形態1では、診断対象機器における損失量を表す検出値と、診断対象機器の動作状態を表す検出値とから得られた診断用指標値を用いて、診断対象機器の状態を診断している。診断対象機器における損失量を表す検出値に加えて、診断対象機器の動作状態を表す検出値を、劣化の判断に用いることによって、診断対象機器に特化した診断を行っている。ここで、診断対象機器における損失量を表す検出値は、冷凍装置(10)の運転条件(例えば、冷媒の凝縮温度、冷媒の蒸発温度、冷凍負荷)に応じて変化する。一方、診断対象機器の動作状態を表す検出値も、冷凍装置(10)の運転条件に応じて変化する。本実施形態1では、冷凍装置(10)の運転条件に応じて変化する2つの検出値から診断用指標値を取得している。このため、「診断対象機器における損失量を表す検出値」と「診断対象機器の動作状態を表す検出値」の一方に対する他方の比率を診断用指標値とすることで、冷凍装置(10)の運転条件による一方の検出値の変化が、冷凍装置(10)の運転条件による他方の検出値の変化により打ち消される。従って、診断用指標値を得る診断時の運転条件と、診断用基準値を得た時の運転条件とが多少違っていても、診断対象機器の状態を適切に診断することが可能であるため、多くの運転条件に対して診断用基準値を準備する必要がなく、診断用基準値の準備手間を軽減することができる。
また、本実施形態1では、「診断対象機器における冷媒のエクセルギーの変化量」と「診断対象機器において冷媒が吸熱又は放熱する熱量」の一方に対する他方の比率が診断用指標値となる。診断用指標値は、無次元化された値となる。このため、冷凍装置(10)の定格能力が異なるもの同士を比較しても、診断用指標値にそれほど差は生じない。従って、冷凍装置(10)の定格能力をそれほど考慮することなく、回路構成機器の状態を診断することができる。例えば、定格能力が異なる冷凍装置(10)の間で、診断用基準値を共通化することができる。
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。本実施形態2は、上記実施形態1と同じ冷媒回路(20)を備えた冷凍装置(10)である。但し、この冷凍装置(10)では、冷房運転においては、圧縮機(30)の運転周波数が、冷凍サイクルの低圧(吸入圧力センサ(46a)の検出値)が一定値になるように制御され、暖房運転においては、圧縮機(30)の運転周波数が、冷凍サイクルの高圧(吐出圧力センサ(46b)の検出値)が一定値になるように制御される。
−コントローラの動作−
暖房運転中に室外熱交換器(34)の状態を診断する動作について説明する。なお、冷凍運転中に室外熱交換器(34)の状態を診断する動作については、上記実施形態1と同じであるため、説明は省略する。
暖房運転中の室外熱交換器(34)の診断では、まず、室外熱交換器(34)における冷媒のエクセルギーの変化量を検出する変化量検出ステップが行われる。変化量検出ステップでは、まず、冷媒状態検出部(51)が、室外熱交換器(34)の入口(膨張弁(36)の出口)における冷媒の温度及びエントロピーと、室外熱交換器(34)の出口(圧縮機(30)の入口)における冷媒の温度及びエントロピーとを検出する。
冷媒状態検出部(51)は、室外液温度センサ(45d)の測定値を室外熱交換器(34)の入口における冷媒の温度として検出する。冷媒状態検出部(51)は、室外液温度センサ(45d)の測定値及び吸入圧力センサ(46a)の測定値を用いて、室外熱交換器(34)の入口における冷媒のエントロピーを算出する。室外熱交換器(34)の入口の冷媒のエントロピーの算出では、室外熱交換器(34)の入口の圧力が圧縮機(30)の入口の圧力に等しいものとみなして、吸入圧力センサ(46a)の測定値が用いられる。また、暖房運転中は室外熱交換器(34)の入口の冷媒が気液二相状態になるため、冷媒の温度及び圧力からエントロピーを算出できるように、室外熱交換器(34)の入口の冷媒のエンタルピーが、室内熱交換器(37)の出口の冷媒のエンタルピーに等しいものと仮定している。これにより、図2に示すT−s線図の点Gの座標値が得られる。
また、冷媒状態検出部(51)は、吸入温度センサ(45a)の測定値を室外熱交換器(34)の出口における冷媒の温度として検出する。また、冷媒状態検出部(51)は、吸入温度センサ(45a)の測定値及び吸入圧力センサ(46a)の測定値を用いて、室外熱交換器(34)の出口における冷媒のエントロピーを算出する。これにより、図2に示すT−s線図の点Aの座標値が得られる。以上により第1ステップが終了する。
続いて、変化量検出ステップでは、エクセルギー算出部(52)が、室外熱交換器(34)の出入口における冷媒の温度及びエントロピーに加えて、室外温度センサ(18)の測定値Tcを用いて、室外熱交換器(34)における冷媒のエクセルギーの変化量を表す(e)の領域の面積を算出する。(e)の領域の面積から得られる変化量は、冷媒1kg当たりの値である。エクセルギー算出部(52)は、(e)の領域の面積に冷媒の循環量を掛けて、室外熱交換器(34)における冷媒のエクセルギーの変化量を単位時間当たりの仕事量(ワット)に換算した値を、第7検出値(変化量検出手段(31)の検出値、変化量検出ステップの検出値)として算出する。以上により変化量検出ステップが終了する。
次に、室外熱交換器(34)において冷媒が吸熱する熱量を検出する熱量検出ステップが行われる。熱量検出ステップでは、熱量算出部(53)が、室外熱交換器(34)の出入口における冷媒の温度及びエントロピーを用いて、室外熱交換器(34)において冷媒が吸熱する熱量を表す(g)の領域の面積を算出する。(g)の領域の面積から得られる熱量は、冷媒1kg当たりの値である。熱量算出部(53)は、(g)の領域の面積に冷媒の循環量を掛けて、室外熱交換器(34)において冷媒が吸熱する熱量を単位時間当たりの仕事量(ワット)に換算した値を、第8検出値(熱量検出手段(32)の検出値、熱量検出ステップの検出値)として算出する。以上により熱量検出ステップが終了する。
次に、室外熱交換器(34)の状態を診断する診断ステップが行われる。診断ステップでは、診断部(54)が、第7検出値を第8検出値で除して、「室外熱交換器(34)において冷媒が吸熱する熱量」に対する「室外熱交換器(34)における冷媒のエクセルギーの変化量」の比率を診断用指標値(蒸発側指標値)として算出する。診断用指標値は、診断時における「室外熱交換器(34)における吸熱量」に対する「室外熱交換器(34)における損失量」の比率を表す。
そして、診断部(54)は、蒸発器として動作するときの室外熱交換器(34)の診断用基準値の中から、診断時と同じ運転条件の診断用基準値(蒸発側基準値)、もしくは同じ運転条件の診断用基準値がなければ最も近い運転条件の診断用基準値(蒸発側基準値)をメモリから読み出す。つまり、診断部(54)は、診断時と同じ運転条件又は近い運転条件における正常な状態の「室外熱交換器(34)における吸熱量」に対する「室外熱交換器(34)における損失量」の比率を読み出す。
そして、診断部(54)は、診断時における「室外熱交換器(34)における吸熱量」に対する「室外熱交換器(34)における損失量」の比率を、正常な状態の「室外熱交換器(34)における吸熱量」に対する「室外熱交換器(34)における損失量」の比率で除した第4演算値(蒸発側指標値/蒸発側基準値)を算出する。診断部(54)は、第4演算値が所定の第4判定値を下回る場合には、“室外熱交換器(34)は劣化していない”と判定し、その第4演算値が第4判定値を上回る場合には、“室外熱交換器(34)は劣化している”と判定する。以上により診断ステップが終了する。
《発明の実施形態3》
本発明の実施形態3について説明する。本実施形態3は、上記実施形態1と同じ冷媒回路(20)を備えた冷凍装置(10)である。但し、冷凍装置(10)は、冷媒回路(20)を構成する配管を覆う断熱材を備えている(図示省略)。この冷凍装置(10)のコントローラ(50)は、断熱材の状態を診断する。
具体的に、断熱材は、圧縮機(30)から吐出された高圧ガス冷媒が流れる高圧ガス配管に設けられている。より具体的に、冷房運転及び暖房運転において高圧ガス冷媒が流れる圧縮機(30)の出口と四路切換弁(33)の第1ポート(P1)とを結ぶ吐出管(40)と、冷房運転において高圧ガス冷媒が流れる四路切換弁(33)の第4ポート(P4)と室外熱交換器(34)とを結ぶ配管と、暖房運転において高圧ガス冷媒が流れる四路切換弁(33)の第2ポート(P2)と室内熱交換器(37)とを結ぶ配管とが、断熱材によって覆われている。
以下では、冷房運転時に高圧ガス冷媒が流れる配管(圧縮機(30)の出口から室外熱交換器(34)に至るまでの配管)を診断対象の断熱配管として、該断熱配管の断熱材の診断について説明する。
断熱材の診断では、まず、圧縮機(30)における冷媒のエクセルギーの変化量を検出する変化量検出ステップが行われる。変化量検出ステップでは、上記実施形態1と同様に、エクセルギー算出部(52)が、圧縮機(30)の出入口における冷媒の温度及びエントロピーと、膨張弁(36)の出入口における冷媒の温度及びエントロピーとを用いて、(a)の領域の面積を算出する。エクセルギー算出部(52)は、(a)の領域の面積に冷媒の循環量を掛けて、圧縮機(30)における冷媒のエクセルギーの変化量を単位時間当たりの仕事量(ワット)に換算した値を、第9検出値(変化量検出手段(31)の検出値、変化量検出ステップの検出値)として算出する。以上により変化量検出ステップが終了する。
次に、診断対象の断熱配管において冷媒が放熱する熱量を検出する熱量検出ステップが行われる。熱量検出ステップでは、冷媒状態検出部(51)が、各温度センサ(45)の測定値及び各圧力センサ(46)の測定値を用いて、室外熱交換器(34)の入口における冷媒の温度及びエントロピー(図7における点Nの座標値)を検出する。点Nは、点Bを通る等圧線上において、冷媒の温度が室外ガス温度センサ(45c)の計測値になる点である。
続いて、熱量検出ステップでは、熱量算出部(53)が、圧縮機(30)の出口における冷媒の温度及びエントロピーと、室外熱交換器(34)の入口における冷媒の温度及びエントロピーとを用いて、図7に示す(h)の領域の面積を算出する。(h)の領域の面積は、診断対象の断熱配管において冷媒が放熱する熱量、つまり診断対象の断熱配管における放熱量を表している。(h)の領域の面積は、診断対象の断熱配管における熱ロスの大きさを表しているとも言える。熱量算出部(53)は、(h)の領域の面積に冷媒の循環量を掛けて、診断対象の断熱配管において冷媒が放熱する熱量を単位時間当たりの仕事量(ワット)に換算した値を、第10検出値(熱量検出手段(32)の検出値、熱量検出ステップの検出値)として算出する。以上により熱量検出ステップが終了する。
次に、診断対象の断熱配管の断熱材の状態を診断する診断ステップが行われる。診断ステップでは、まず、診断部(54)が、第10検出値を第9検出値で除して、「圧縮機(30)における冷媒のエクセルギーの変化量」に対する「診断対象の断熱配管において冷媒が放熱する熱量」の比率を診断用指標値(断熱材側指標値)として算出する。診断用指標値は、診断時における「圧縮機(30)の入力電力」に対する「診断対象の断熱配管における放熱量(熱ロスの大きさ)」の比率を表す。
ここで、診断部(54)のメモリには、診断対象の断熱配管に対して、断熱材が正常な状態のときを基準にして作成した診断用基準値が記憶されている。メモリには、診断対象の断熱配管について、様々な運転条件に対応する複数の診断用基準値が記憶されている。診断部(54)は、診断対象の断熱配管に対して設定された診断用基準値の中から、診断時と同じ運転条件の診断用基準値(断熱材側基準値)、もしくは同じ運転条件の診断用基準値がなければ最も近い運転条件の診断用基準値(断熱材側基準値)をメモリから読み出す。つまり、診断部(54)は、診断時と同じ運転条件又は近い運転条件における、断熱材が正常な状態の「圧縮機(30)の入力電力」に対する「診断対象の断熱配管における放熱量」の比率を読み出す。
そして、診断部(54)は、診断時における「圧縮機(30)の入力電力」に対する「診断対象の断熱配管における放熱量」の比率を、正常な状態の「圧縮機(30)の入力電力」に対する「診断対象の断熱配管における放熱量」の比率で除した第5演算値(断熱材側指標値/断熱材側基準値)を算出する。診断部(54)は、第5演算値が所定の第5判定値を下回る場合には、“診断対象の断熱配管の断熱材が劣化していない”と判定し、第5演算値が第5判定値を上回る場合には、“診断対象の断熱配管の断熱材が劣化している”と判定する。なお、第5演算値は、「圧縮機(30)の入力電力」に対する「診断対象の断熱配管における放熱量」の比率について、正常な状態からの変化率を表す。以上により診断ステップが終了する。
なお、圧縮機(30)における冷媒のエクセルギーの変化量の代わりに、診断対象の断熱配管における冷媒のエクセルギーの変化量を第9検出値としてしてもよい。診断対象の断熱配管における冷媒のエクセルギーの変化量は、図7における(i)の領域の面積により表される。この場合は、「診断対象の断熱配管における冷媒のエクセルギーの変化量」に対する「診断対象の断熱配管において冷媒が放熱する熱量」の比率が診断用指標値となる。診断用指標値は、「診断対象の断熱配管における摩擦損失」に対する「診断対象の断熱配管における放熱量」の比率を表す。
本実施形態3では、診断用指標値が、「断熱配管又は圧縮機(30)における冷媒のエクセルギーの変化量」と、「断熱配管において冷媒が放熱する熱量」とから得られる。ここで、圧縮機(30)における冷媒のエクセルギーの変化量は、圧縮機(30)の入力電力を表す。また、断熱配管における冷媒のエクセルギーの変化量は、断熱配管における損失量(摩擦損失の大きさ)を表す。断熱配管における冷媒のエクセルギーの変化量は、圧縮機(30)の入力電力が大きくなるほど大きくなる。また、断熱配管において冷媒が放熱する熱量は、断熱配管における熱ロスを表す。本実施形態3では、圧縮機(30)の入力電力、又は圧縮機(30)の入力電力に比例する断熱配管における損失量を表す検出値と、断熱配管における熱ロスを表す検出値とから得られた診断用指標値を用いて、断熱配管の断熱材の状態が診断される。
診断対象の断熱配管の断熱材が劣化すると、図7に示すように、診断対象の断熱配管における放熱量が増大する。一方で、診断対象の断熱配管における放熱量は、該断熱配管における冷媒流量が増加しても増大する。診断対象の断熱配管における冷媒流量は圧縮機の入力電力に比例するため、圧縮機の入力電力が増大しても、診断対象の断熱配管における放熱量は増大する。圧縮機の入力電力は、冷凍装置(10)の運転条件(例えば、冷凍負荷)に応じて変化する。従って、「圧縮機(30)の入力電力」に対する「診断対象の断熱配管における放熱量」の比率を診断用指標値とすることで、冷凍装置(10)の運転条件による一方の検出値の変化が、冷凍装置(10)の運転条件による他方の検出値の変化により打ち消される。なお、図7(A)は断熱材が劣化していない状態のT−s線図であり、図7(B)は断熱材が劣化している状態のT−s線図である。
−実施形態3の効果−
本実施形態3では、「圧縮機(30)の入力電力を表す検出値」に対する「診断対象の断熱配管における熱ロスを表す検出値」の比率を診断用指標値として、断熱配管の断熱材の状態を診断している。このため、冷凍装置(10)の運転条件による一方の検出値の変化が、冷凍装置(10)の運転条件による他方の検出値の変化により打ち消される。従って、診断用指標値を得る診断時の運転条件と、診断用基準値を得た時の運転条件とが多少違っていても、断熱配管の断熱材の状態を適切に診断することが可能であるため、多くの運転条件に対して診断用基準値を準備する必要がなく、診断用基準値の準備手間を軽減することができる。
《その他の実施形態》
上記実施形態は、以下の変形例のように構成してもよい。
−第1変形例−
上記実施形態について、診断部(54)が、室外熱交換器(34)の診断時における室外ファン(12)の送風量を用いて、該室外熱交換器(34)の診断に用いる診断用指標値又は診断用基準値を補正してもよいし、室内熱交換器(37)の診断時における室内ファン(14)の送風量を用いて、該室内熱交換器(37)の診断に用いる診断用指標値又は診断用基準値を補正してもよい。以下では、冷房運転時の室外熱交換器(34)の診断に用いる診断用基準値を凝縮側基準値として、冷房運転時の室外熱交換器(34)の診断に用いる凝縮側指標値の補正方法について説明する。
診断ステップにおいて、診断部(54)は、診断時の室外ファン(12)の送風量VOL(fan)(以下、「診断時送風量」という。)と、凝縮側基準値を作成した際の凝縮器用のファンの送風量VOL(fan_b)(以下、「基準送風量」という。)とを用いて、凝縮側指標値を補正する。第1変形例では、診断部(54)が、診断時送風量と基準送風量に加えて、室外熱交換器(34)の伝熱面積A(air)(以下、「診断時伝熱面積」という。)と、凝縮側基準値を作成した際の凝縮器の伝熱面積A(air_b)(以下、「基準伝熱面積」という。)とを用いて、凝縮側指標値を補正する。具体的に、診断部(54)は、下記の式1−式2を用いて、補正後の凝縮側指標値を算出する。
式1:OH’=OH×[VOL(fan_b)/VOL(fan)]K×{A(air_b)/A(air)}(1-K)
式2:VOL(fan)/VOL(fan_b)={RPM(fan)/RPM(fan_b)}×{φ(fan)/φ(fan_b)}3
上記式1において、OHは、補正前の凝縮側指標値を表している。OH’は、補正後の凝縮側指標値を表している。VOL(fan)は、上記診断時送風量[m3/min]を表している。VOL(fan_b)は、上記基準送風量[m3/min]を表している。A(air)は、上記診断時伝熱面積[m3]を表している。A(air_b)は、上記基準伝熱面積[m3]を表している。Kは係数である。
上記式2において、RPM(fan)は、診断時の室外ファン(12)のファンステップに対応する回転数[rpm](以下、「診断時回転数」という。)を表している。RPM(fan_b)は、凝縮側基準値を作成した際の凝縮器用のファンの回転数[rpm](以下、「基準回転数」という。)を表している。φ(fan)は、室外ファン(12)の羽根の外径[m](以下、「診断時羽根外径」という。)を表している。φ(fan_b)は、凝縮側基準値を作成した際の凝縮器用のファンの羽根の外径[m](以下、「基準羽根外径」という。)を表している。
診断部(54)には、診断時伝熱面積A(air)と、基準伝熱面積A(air_b)と、基準回転数RPM(fan_b)と、診断時羽根外径φ(fan)と、基準羽根外径φ(fan_b)とが、予め記憶されている。また、診断部(54)は、診断時回転数RPM(fan)を検出する。診断部(54)は、これらの値(A(air),A(air_b),RPM(fan),RPM(fan_b),φ(fan),φ(fan_b))を式1−式2に代入することによって、補正後の凝縮側指標値OH’を算出する。
そして、診断部(54)は、診断部(54)は、補正後の凝縮側指標値OH’を凝縮側基準値で除した第1演算値が所定の第1判定値を下回る場合には、“室外熱交換器(34)が劣化していない”と判定し、その第1演算値が第1判定値を上回る場合には、“室外熱交換器(34)が劣化している”と判定する。
第1変形例では、基準送風量に対して診断時送風量が大きいほど、補正後の凝縮側指標値は小さくなる。つまり、基準回転数に対して診断時回転数が大きいほど、補正後の凝縮側指標値は小さくなる。基準羽根外径に対して診断時羽根外径が大きいほど、補正後の凝縮側指標値は小さくなる。
第1変形例では、診断対象の熱交換器(34,37)の状態の診断に、診断時の送風機(12,14)の送風量が反映される。従って、診断時送風量が基準送風量と相違する場合であっても、診断対象の熱交換器(34,37)の状態を正確に診断することができる。診断時回転数が基準回転数と相違する場合であっても、診断対象の熱交換器(34,37)の状態を正確に診断することができる。診断時羽根外径が基準羽根外径と相違する場合であっても、診断対象の熱交換器(34,37)の状態を正確に診断することができる。
なお、凝縮側指標値ではなく、凝縮側基準値を補正してもよい。その場合は、基準送風量に対して診断時送風量が大きいほど、補正前の凝縮側基準値が小さな値に補正される。
−第2変形例−
上記実施形態ついて、圧縮機(30)の診断に、「圧縮機(30)に入力される電流の推定値Ia」に対する「圧縮機(30)に入力される電流の実測値Im」の比率(Im/Ia)を併用してもよい。圧縮機(30)に入力される電流値は、判定用物理量に相当する。第2変形例では、圧縮機(30)の診断に、「判定用物理量の推定値」に対する「判定用物理量の実測値」の比率が併用される。なお、推定値は、冷凍装置(10)の運転状態から推定される値である。
なお、圧縮機(30)は、ピストンとシリンダとにより形成した圧縮室で流体を圧縮する回転式の流体機械と、該流体機械のピストンを駆動するモータとを備えている。圧縮機(30)では、電流がモータに入力される。
診断部(54)には、「圧縮機(30)に入力される電流の推定値Ia」を算出するための関数f1(R,T1,T2)が予め設定されている。f1において、Rは圧縮機(30)の回転数[rpm]、T1は蒸発器(34,37)における冷媒の蒸発温度[℃]、T2は凝縮器(34,37)における冷媒の凝縮温度[℃]をそれぞれ表している。
診断ステップにおいて、診断部(54)は、例えば冷房運転中に、圧縮機(30)の回転数Rと、室内熱交換器(37)における冷媒の蒸発温度T1と、室外熱交換器(34)における冷媒の凝縮温度T2とをそれぞれ検出する。そして、診断部(54)は、検出した値(R,T1,T2)を上記関数f1(R,T1,T2)に代入することによって、「圧縮機(30)に入力される電流の推定値Ia」を算出する。
また、冷凍装置(10)には、圧縮機(30)に入力される電流値を測定する電流計が設けられている。診断部(54)は、上記電流計の計測値を、「圧縮機(30)に入力される電流の実測値Im」として取得する。
そして、診断部(54)は、上記第3演算値(圧縮機側指標値/圧縮機側基準値)が所定の第3判定値を上回るという第1判定条件と、「圧縮機(30)に入力される電流の推定値Ia」に対する「圧縮機(30)に入力される電流の実測値Im」の比率(Im/Ia)が所定の電流用判定値(補助基準値)を上回るという第2判定条件との少なくとも一方が成立すれば、“圧縮機(30)が劣化又は故障している”と判定する。診断部(54)は、第1判定条件と第2判定条件が両方とも成立しない場合は、圧縮機(30)が劣化又は故障していない”と判定する。
第2変形例では、診断用指標値と診断用基準値とを比較した結果、診断対象の圧縮機(30)が正常であると判定できる場合であっても、「圧縮機(30)に入力される電流の推定値Ia」に対する「圧縮機(30)に入力される電流の実測値Im」の比率が電流用判定値を上回る場合は、圧縮機(30)が劣化又は故障していると判定される。
なお、圧縮機(30)の診断に、「圧縮機(30)に入力される電流の推定値Ia」に対する「圧縮機(30)に入力される電流の実測値Im」の比率(Im/Ia)の代わりに、「圧縮機(30)の入力電力の推定値Wa」に対する「圧縮機(30)の入力電力の実測値Wm」の比率(Wm/Wa)を使用してもよい。
この場合、圧縮機(30)の入力電力が判定用物理量に相当する。診断部(54)には、「圧縮機(30)の入力電力の推定値Wa」を算出するための関数f2(R,T1,T2)が予め設定され、診断部(54)は、関数f2を用いて、「圧縮機(30)の入力電力の推定値Wa」を算出する。そして、診断部(54)は、上記第1判定条件と、「圧縮機(30)の入力電力の推定値Wa」に対する「圧縮機(30)の入力電力の実測値Wm」の比率(Wm/Wa)が所定の電力用判定値(補助判定値)を上回るという第3判定条件との少なくとも一方が成立する場合に、圧縮機(30)が劣化又は故障している”と判定する。第2変形例では、診断用指標値と診断用基準値とを比較した結果、診断対象の圧縮機(30)が正常であると判定できる場合であっても、「圧縮機(30)の入力電力の推定値Wa」に対する「圧縮機(30)の入力電力の実測値Wm」の比率が電力用判定値を上回る場合は、圧縮機(30)が劣化又は故障していると判定される。
−第3変形例−
上記実施形態について、冷凍装置の診断装置(50)が、冷凍装置(10)とは離れた位置に設置されていてもよい。冷凍装置の診断装置(50)は、例えばネットワーク回線を通じて、冷凍装置(10)に設けられた制御基板に接続される。冷凍装置の診断装置(50)には、制御基板を介して、冷凍装置(10)に設けられた全ての温度センサ(16-19,45,63)と圧力センサ(46)の計測値が入力される。
この場合、冷凍装置の診断装置(50)を、診断部(54)を設けない構成にしてもよい。その場合は、冷凍装置の診断装置(50)は、表示手段(55)を構成するモニタを備える。モニタには、診断対象機器の状態又は断熱配管の断熱材の状態を診断するための情報として、診断用指標値に基づく情報(診断用指標値や診断用指標値をグラフ化した画像)を表示する。これにより、モニタを見た冷凍装置(10)の管理者が、遠隔監視により、診断対象機器の状態や断熱配管の断熱材の状態を診断することが可能となる。
−第4変形例−
上記実施形態について、室外ユニット(11)に対して複数台の室内ユニット(13)が接続されたマルチタイプの空気調和装置(10)であってもよい。この場合、室内回路(22)毎に、膨脹弁が設けられる。T−s線図は、室内ユニット(13)毎に作成される。T−s線図は、図2と同様のものが作成される。そして、上記実施形態と同様に、T−s線図の各領域の面積から得られた診断用指標値を用いて、各室内ユニット(13)の室内熱交換器(37)の劣化状態や、圧縮機(30)の劣化状態が診断される。
−第5変形例−
上記実施形態について、冷凍装置(10)が、空気調和装置(10)だけでなく、食品を冷蔵又は冷凍するための庫内を冷却する冷凍装置(10)、室内の冷暖房と庫内の冷却とを行う冷凍装置(10)、熱交換器を流通する冷媒の熱を吸着剤の加熱又は冷却に用いる調湿機能付きの冷凍装置(10)、或いは、高圧冷媒により水を加熱する給湯機能を有する冷凍装置(10)であってもよい。
−第6変形例−
上記実施形態について、冷凍装置(10)が、冷凍サイクルの高圧が冷媒の臨界圧力よりも高い値に設定される超臨界サイクルを行うように構成されていてもよい。この場合、冷凍サイクルの高圧が冷媒の臨界圧力よりも低い値に設定される通常の冷凍サイクルでは凝縮器となる熱交換器が、放熱器(ガスクーラ)として動作する。冷媒としては、例えば二酸化炭素が用いられる。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。