しかし、空調調和装置のファンモータのような用途においては、欠相異常が生じている状態でモータの運転を続けても長期間に及ばなければ、性能の低下はあるものの空気調和装置が使用できなくなることはまずない。その一方で、性能の低下を甘受するので欠相異常の修理を待つ間も空気調和装置の使用を続けたいという要望がある。
本発明の課題は、インバータ回路で多相モータを駆動する多相モータ駆動方法、多相モータ駆動システム及びヒートポンプ装置において、欠相異常が生じている場合にも多相モータの運転を可能にすることにある。
第1発明に係る多相モータ駆動方法は、検出工程と、選定工程と、駆動工程とを備える。インバータ回路は、ロータ位置に合った多相モータ駆動出力を多相モータに対して出力するが、検出工程においては、このようなインバータ回路の欠相異常を検出する。選定工程においては、検出工程で検出された欠相異常に対応する欠相時多相モータ駆動出力を選定する。駆動工程においては、選定工程で選定された欠相時多相モータ駆動出力を、ロータ位置に合わせてインバータ回路に出力させることにより多相モータを駆動する。
本発明によれば、欠相異常が検出されたときの駆動において、選定工程で選定された欠相時多相モータ駆動出力が、ロータ位置に合わせてインバータ回路から多相モータに出力され、多相モータが駆動される。このように、駆動工程において、欠相異常が発生したときに欠相時多相モータ駆動出力を用いるので、ロータ位置によって多相モータ駆動出力を変化させるインバータ回路を使う場合であっても、欠相異常が生じているときに多相モータを駆動することができる。
また、第1発明に係る多相モータ駆動方法は、駆動工程は始動工程を含み、この始動工程においては、欠相時多相モータ駆動出力によって始動時にトルクを印加できる位置にロータ位置を調整した後に多相モータを始動する。
本発明によれば、欠相異常により正常に駆動できるロータ位置が限られることに対応して、このロータ位置を始動前に調整するので、欠相異常が発生したときにも確実に始動させることができる。
第2発明に係る多相モータ駆動方法は、第1発明の多相モータ駆動方法であって、始動工程は、直流励磁により始動時にトルクを印加できる位置にロータ位置を調整する工程を含む。
本発明によれば、直流励磁が例えばインバータ回路の出力を調整することにより行えるので、始動時のロータ位置の調整が、モータの駆動機構以外の付加機構を設けなくとも簡単に行える。
第3発明に係る多相モータ駆動方法は、第1発明または第2発明の多相モータ駆動方法であって、選定工程は、第1欠相時多相モータ駆動出力を選定する工程または第2欠相時多相モータ駆動出力を選定する工程を含む。第1欠相時多相モータ駆動出力は、欠相時多相モータ駆動出力として、欠相異常が一相の一方アームのみで生じている場合に対応するものである。一方、第2欠相時多相モータ駆動出力は、欠相異常が一相の一方アーム及び一方アームと異なる他の一相の他方アームのみで生じている場合に対応するものである。
本発明によれば、欠相があってもトルクを発生することができる区間が比較的多く残されている、一相の一方アームのみで欠相異常が生じている場合、及び一相の一方アーム及び他の一相の他方アームのみで生じている場合を他の欠相異常と区別して駆動出力を発生させるので、比較的簡単な調整で比較的滑らかな駆動を行わせることができる。
第4発明に係る多相モータ駆動方法は、第1発明または第2発明の多相モータ駆動方法であって、選定工程は、第3欠相時多相モータ駆動出力を選定する工程を含む。第3欠相時多相モータ駆動出力は、欠相異常が同じ相の上アーム及び下アームのみで生じている場合に対応するものである。そして、駆動工程は始動工程を含む。始動工程においては、第3欠相時多相モータ駆動出力によって、始動時にトルクを印加できる位置にロータ位置を調整するのに続けて、調整時の多相モータの慣性運動により始動する。
本発明によれば、ロータ位置の調整に加えて調整時の多相モータの慣性も利用して始動でき、始動後は第3欠相時多相モータ駆動出力により駆動することができるので、モータの駆動機構以外の付加機構を設けなくとも、同相の上アームと下アームが一つずつ欠相している場合にも多相モータの駆動を行うことができる。
第5発明に係る多相モータ駆動方法は、検出工程と、選定工程と、駆動工程とを備える。検出工程においては、多相モータ駆動出力を多相モータに対して出力するインバータ回路の欠相異常を検出する。選定工程においては、検出工程で検出された欠相異常に対応する欠相時多相モータ駆動出力を選定する。駆動工程においては、選定工程で選定された欠相時多相モータ駆動出力を、インバータ回路から出力させることにより多相モータを駆動する。また、選定工程は、第1欠相時多相モータ駆動出力を選定する工程及び第2欠相時多相モータ駆動出力を選定する工程を含む。第1欠相時多相モータ駆動出力は、欠相時多相モータ駆動出力として、欠相異常が一相の一方アームのみで生じている場合に対応するものである。第2欠相時多相モータ駆動出力は、欠相異常が一相の一方アーム及び一方アームと異なる他の一相の他方アームのみで生じている場合に対応するものである。
本発明によれば、欠相異常が検出されたときの駆動において、選定工程で選定された欠相時多相モータ駆動出力がインバータ回路から多相モータに出力され、多相モータが駆動される。このように、欠相異常の発生時の駆動において、欠相時多相モータ駆動出力を用いるので、欠相異常が生じているときに多相モータを駆動することができる。そして、特に、欠相があってもトルクを発生することができる区間が比較的多く残されている、一相の一方アームのみで欠相異常が生じている場合、及び一相の一方アーム及び他の一相の他方アームのみで生じている場合を他の欠相異常と区別して駆動出力を発生させるので、比較的簡単な調整で比較的スムーズな駆動を行わせることができる。
第6発明に係る多相モータ駆動方法は、第1発明から第5発明のいずれかの多相モータ駆動方法であって、選定工程においては、二相通電の多相モータ駆動出力を、欠相時多相モータ駆動出力として選定する。
本発明によれば、多相モータ駆動出力を生成するための従来の回路をそのまま用いながら、適切なトルクを広い区間で発生させることができる。
第7発明に係る多相モータ駆動方法は、第1発明から第5発明のいずれかの多相モータ駆動方法であって、選定工程においては、通電期間のうちの少なくとも一部の区間において、二相通電の多相モータ駆動出力を、欠相時多相モータ駆動出力として選定する。
本発明によれば、一部の区間を二相通電にすることで、欠相異常のためトルクの発生がなかった区間や逆向きのトルクが発生していた区間で正常な向きのトルクを発生させることができる場合があり、その正常な向きのトルクによってモータ回転時の異常な振動などの不具合を緩和することができる。一方、通常の三相通電を行うことができる区間では適切なトルクを発生させることができるので、不具合が発生する区間を少なくして不具合の程度を抑制することができる。
第8発明に係る多相モータ駆動方法は、第6発明または第7発明の多相モータ駆動方法であって、選定工程においては、通常時三相通電の多相モータ駆動出力を、二相通電に切替える。
本発明によれば、トルクを発生することができる区間を広げることができるので、始動の確実性や回転の滑らかさを向上させることができる。
第9発明に係る多相モータ駆動方法は、第1発明から第8発明のいずれかの多相モータ駆動方法であって、欠相時多相モータ駆動出力は、欠相が生じている期間についてインバータ回路に駆動出力を行わせないものである。
本発明によれば、欠相が生じている期間のインバータ回路の出力が不安定になることが多いため、欠相が生じている期間のインバータ回路の駆動出力を制限することにより、インバータ回路の出力を安定させることができる。
また、欠相すなわち故障している相に通電を行わないため、故障状態を更に悪化させることがなく、また、故障の状態を変化させることがないため、安定して多相モータを駆動することができる。
第10発明に係る多相モータ駆動方法は、第1発明から第9発明のいずれかの多相モータ駆動方法であって、検出工程では、少なくとも多相モータの始動前に欠相異常を検出する。
本発明によれば、始動前に欠相異常の検出を行うので、モータ運転の都度、異常の状態に合わせて運転を行うことができる。また、異常状態がなくなった場合に、始動前に異常がなくなったことを検出できるので、始動後速やかに正常運転を行うことができる。
第11発明に係る多相モータ駆動システムは、インバータ回路と、検出手段と、選定手段と、駆動制御手段とを備える。インバータ回路は、ロータ位置に合った多相モータ駆動出力を多相モータに対して出力する。検出手段は、インバータ回路の欠相異常を検出する。選定手段は、検出手段で検出された欠相異常に対応する欠相時多相モータ駆動出力を選定する。駆動制御手段は、選定手段で選定された欠相時多相モータ駆動出力をロータ位置に合わせてインバータ回路に出力させることにより多相モータを駆動する。また、駆動制御手段は、欠相時多相モータ駆動出力によって始動時にトルクを印加できる位置にロータ位置を調整した後に多相モータを始動する。
本発明によれば、欠相異常が検出されたときの駆動において、選定手段で選定された欠相時多相モータ駆動出力が、インバータ回路から多相モータに出力され、多相モータが駆動される。このように、駆動制御手段において、欠相異常が発生したときに欠相時多相モータ駆動出力をインバータ回路に出力させるので、欠相異常が生じているときに多相モータを駆動することができる。
また、欠相異常により正常に駆動できるロータ位置が限られることに対応して、このロータ位置を始動前に調整するので、欠相異常が発生したときにも確実に始動させることができる。
第12発明に係る多相モータ駆動システムは、第11発明の多相モータ駆動システムであって、表示手段をさらに備える。表示手段は、検出手段が欠相異常を検出した旨を表示することができる。
本発明によれば、表示手段によりユーザに欠相異常を報知することができ、ユーザに対して欠相異常の多相モータに関する注意を喚起することができるので、故障修理の依頼を適切かつ迅速に行うことができ、結果として故障修理を迅速に行い、システムを正常状態に早く復帰させることが可能となる。
第13発明に係る多相モータ駆動システムは、第12発明の多相モータ駆動システムであって、指示受付手段をさらに備える。指示受付手段は、駆動制御手段に対する動作実行指示を受け付けることができる。この動作実行指示は、欠相異常の発生時において多相モータを駆動させる指示をするためのものである。
本発明によれば、欠相異常が生じていて駆動可能なときには、性能の低下をユーザの意思により甘受しながらシステムを動かしつづけることが可能となり、また、他の要因との関係や、騒音・振動が許容できないなどの理由で多相モータを停止したい場合に、指示受付手段により多相モータの駆動を止めさせて多相モータを停止することができる。
第14発明に係るヒートポンプ装置は、ファンモータと、インバータ回路と、検出手段と、選定手段と、駆動制御手段とを備える。ファンモータは、ファンを回転させる多相のモータである。インバータ回路は、ファンモータのロータ位置に合ったファンモータ駆動出力をファンモータに対して出力する。検出手段は、インバータ回路の欠相異常を検出する。選定手段は、検出手段で検出された欠相異常に対応する欠相時ファンモータ駆動出力を選定する。駆動制御手段は、選定手段で選定された欠相時ファンモータ駆動出力をロータ位置に合わせてインバータ回路に出力させることによりファンモータを駆動する。また、駆動制御手段は、欠相時多相モータ駆動出力によって始動時にトルクを印加できる位置にロータ位置を調整した後にファンモータを始動する。
本発明によれば、欠相異常が検出されたときの駆動において、選定手段で選定された欠相時ファンモータ駆動出力が、インバータ回路からファンモータに出力され、ファンモータが駆動される。このように、駆動制御手段において、欠相異常が発生したときに欠相時ファンモータ駆動出力をインバータ回路に出力させるので、欠相異常が生じているときにファンモータを駆動することができる。それにより、欠相異常が生じているときでもファンモータの送風を行わせることができるので、ファンモータを停止させてしまう場合に比べてヒートポンプ装置の能力低下を抑えてヒートポンプ装置の運転が可能になる。
また、欠相異常により正常に駆動できるロータ位置が限られることに対応して、このロータ位置を始動前に調整するので、欠相異常が発生したときにも確実に始動させることができる。
第15発明に係るヒートポンプ装置は、第14発明のヒートポンプ装置であって、表示手段をさらに備える。表示手段は、検出手段が欠相異常を検出した旨を表示することができる。
本発明によれば、表示手段によりヒートポンプ装置のユーザに欠相異常を報知することができ、ユーザに対して欠相異常のヒートポンプの使用に関する注意を喚起することができるので、故障修理の依頼を適切かつ迅速に行うことができ、結果として故障修理を迅速に行い、システムを正常状態に早く復帰させることが可能となる。
第16発明に係るヒートポンプ装置は、第15発明のヒートポンプ装置であって、指示受付手段をさらに備える。指示受付手段は、駆動制御手段に対する動作実行指示を受け付けることができる。この動作実行指示は、欠相時においてファンモータを駆動させる指示をするためのものである。
本発明によれば、欠相異常が生じていて駆動可能なときには、性能の低下をユーザの意思により甘受しながらシステムを動かしつづけることが可能となり、また、他の要因との関係や、騒音・振動が許容できないなどの理由でファンモータを停止したい場合に、指示受付手段によりファンモータの駆動を止めさせてファンモータを停止することができる。
第1発明に係る多相モータ駆動方法では、欠相異常が発生したときでも、ロータ位置に合わせて多相モータ駆動出力を変えるインバータ回路を用いて、多相モータを駆動することができ、欠相異常の発生時でも多相モータを駆動したい場合に対応することができる。
また、欠相異常が発生したときに始動が確実に行え、欠相異常の発生時の多相モータの使い勝手がよくなる。
第2発明に係る多相モータ駆動方法では、始動時のロータ位置の調整が簡単に行え、欠相異常が発生したときの始動が行い易くなる。
第3発明に係る多相モータ駆動方法では、比較的簡単な調整で比較的滑らかな駆動を行わせることができるので、欠相が生じている場合の多相モータの性能低下を抑えることができる。
第4発明に係る多相モータ駆動方法では、欠相異常が発生したときに多相モータを駆動することができるケースを増やすことができる。
第5発明に係る多相モータ駆動方法では、欠相異常が発生したときでも多相モータ駆動出力を変えるインバータ回路を用いて比較的簡単な調整で比較的滑らかな駆動を行わせることができるので、欠相が生じている場合でも多相モータを駆動したい場合に対応して、多相モータの性能低下を抑えつつ多相モータの駆動を行うことができる。
第6発明に係る多相モータ駆動方法では、欠相異常の発生時に適切なトルクを広い区間で発生させて多相モータを簡単に駆動することができ、欠相異常の発生時でも多相モータを駆動したい場合に簡単に対応することができる。
第7発明に係る多相モータ駆動方法では、欠相異常の発生時に駆動される多相モータの回転の不具合が緩和され、欠相異常の発生時に多相モータを使い易くなる。
第8発明に係る多相モータ駆動方法では、欠相異常の発生時における始動の確実性や回転の滑らかさが向上し、欠相異常の発生時に多相モータを使い易くなる。
第9発明に係る多相モータ駆動方法では、欠相異常の発生時におけるインバータ回路の出力を安定させ、欠相異常の発生時のインバータ回路出力の不安定さに起因する不具合を除くことができ、また故障状態の変化や悪化を防止でき、欠相異常の発生時に多相モータを使い易くする。
第10発明に係る多相モータ駆動方法では、運転開始から異常状態にあわせて最適な運転を行うことが可能になる。また、異常状態がなくなった場合に、速やかに正常運転を行うことができる。
第11発明に係る多相モータ駆動システムでは、欠相異常が発生したときでも、ロータ位置に合わせて多相モータ駆動出力を変えるインバータ回路を用いて、多相モータを駆動することができ、欠相異常の発生時でもこのような多相モータを駆動したい場合に対応することができるようになる。また、欠相異常が発生したときに始動が確実に行え、欠相異常の発生時の多相モータの使い勝手がよくなる。
第12発明に係る多相モータ駆動システムでは、表示手段によりユーザに対して欠相異常の発生時の多相モータ駆動の注意を促し、故障修理の依頼、故障修理及び正常状態への復帰などの欠相異常の発生時の多相モータ駆動に伴う対処を迅速に行わせることができる。
第13発明に係る多相モータ駆動システムでは、指示受付手段により、多相モータ駆動システムの外部から欠相異常の発生時の多相モータ駆動を停止させることができ、欠相異常の発生時の多相モータ駆動における対処の手段を増やすことができる。
第14発明に係るヒートポンプ装置では、欠相異常が発生したときでも、ファンモータを駆動することができ、欠相異常の発生時でもこのようなファンモータを駆動したい場合に対応することができるようになる。また、欠相異常が発生したときに始動が確実に行え、欠相異常の発生時のヒートポンプ装置の使い勝手がよくなる。
第15発明に係るヒートポンプ装置では、表示手段によりユーザに対して欠相異常の発生時の多相モータ駆動の注意を促し、故障修理の依頼、故障修理及び正常状態への復帰などの欠相異常の発生時の多相モータ駆動に伴う対処を迅速に行わせることができる。
第16発明に係るヒートポンプ装置では、指示受付手段により、多相モータ駆動システムの外部から欠相異常の発生時の多相モータ駆動を停止させることができ、欠相異常の発生時の多相モータ駆動における対処の手段を増やすことができる。
以下、本発明の一実施形態に係るヒートポンプ装置として、空気調和装置を例に上げて説明する。
<空気調和装置の概要>
図1は、本発明の一実施形態に係る空気調和装置の構成の概略を示す図である。図1の空気調和装置1は、室外機101と室内機102とを備えて構成される。室外機101には、圧縮機103、四路切換弁104、室外熱交換器105、電動弁106、アキュムレータ107及び室外ファン108等が設けられており、室内機102には、室内熱交換器109及び室内ファン110などが設けられている。ここでは、室外機101及び室内機102のいずれか一方が熱源ユニットに相当し、熱源ユニットは、他ユニットとの間で熱の遣り取りを行って熱の利用を行うものである。
空気調和装置1において、室外機101と室内機102とが配管111で接続されることにより、冷媒の循環する冷媒回路が構成されている。圧縮機103の吐出側には四路切換弁104が設けられている。四路切換弁104は、冷房時には実線で示した接続になり、暖房時には破線で示した接続になることによって、冷房時と暖房時の冷媒の流れる方向を切り換える。圧縮機103から吐出された冷媒は、四路切換弁104の一方の入口から入り、冷房時には四路切換弁104の一方の出口から室外熱交換器105に供給され、暖房時には四路切換弁104の他方の出口から室内熱交換器109に供給される。四路切換弁104の残りの一つの入口には、アキュムレータ107が接続されている。アキュムレータ107に戻ってくる冷媒は、四路切換弁104によって、冷房時には室内熱交換器109から供給され、暖房時には室外熱交換器105から供給される。
室外熱交換器105は、四路切換弁104と接続されていない方の出入口が電動弁106に接続されている。電動弁106は、室外熱交換器105と接続されていない方の出入口が室内熱交換器109に接続されている。
暖房時には、室外機101の室外熱交換器105で室外の熱を取り込んだ冷媒が室内機102の室内熱交換器109に流れ、冷媒は室内機102の室内熱交換器109で室内空気に熱を放出する。そして、熱を放出して冷えた冷媒が室内熱交換器109から室外熱交換器105に戻る。逆に、冷房時には、室外機101の室外熱交換器105で室外へ熱を放出して冷えた冷媒が室内機102の室内熱交換器109に流れ、冷媒は室内熱交換器109で熱を取り込むことにより室内空気から熱を奪う。室内熱交換器109で熱を奪って温度が上昇した冷媒が再び室外熱交換器105に戻る。
室外熱交換器105や室内熱交換器109において熱交換が行われる室外空気や室内空気の気流を室外ファン108や室内ファン110が発生させるのであるが、これら室外ファン108や室内ファン110に接続されているファンモータ108a,110aの駆動装置において欠相異常が発生すると、ファンモータ108a,110aの回転数が低下したり、騒音を発生したり、ファンモータ108a,110aが停止したりする不具合を生じる。ファンモータ108a,110aの回転数が低下したり停止したりすると、空気の流れが減少して熱交換の効率が悪くなるので、従来は空気調和装置1から外部に対して異常を報知して空気調和装置1の運転を停止する処置が取られていた。
欠相異常により室外ファン108や室内ファン110が停止すると、熱交換の効率が極端に低下するため、空気調和装置1の本来の機能を果たさなくなり、電力消費が大きくなったり、冷媒圧力が高くなりすぎたりすることから空気調和装置1を停止すべきであり、従来と同様に空気調和装置の運転を停止する。そして、空気調和装置1からユーザに対して欠相異常を報知する。しかし、欠相異常によってファンモータ108a,110aの回転数の低下が生じて熱交換の性能が落ちたとしても、室外熱交換器105や室内熱交換器109において空気と冷媒が分離されているのであれば、欠相異常のみが室外機101と室内機102の冷媒回路に支障を生じさせる主要な要因となることはなく、空気調和装置1の性能は低下するものの、室外ファン108や室内ファン110が回転していれば空気調和の機能を発揮させることができる。なおこのとき、ファンモータ108a,110aやファン108,110、製品の筐体などから発生する騒音・振動は増加するが、増加の度合いが実用上差し支えないレベルであれば、運転し続けることに何ら問題はない。
そこで、ファンモータ108a,110aにおいて欠相異常が生じていても室外ファン108や室内ファン110を回転させることができる場合には、修理が完了するまで欠相異常が生じたままで空気調和装置1の運転を行う。それにより、欠相時に空気調和装置1が停止してユーザに不快感を与える期間を減らすことができる。このように、欠相異常の状態の違いにより室外ファン108や室内ファン110に対する制御が異なるため、欠相異常の状態を特定して欠相時においてファンモータ108a,110aを制御する機能がファンモータ駆動システムに設けられている。
<ファンモータ駆動システムの欠相異常>
本発明のファンモータ駆動システムを説明するのに先立ち、ファンモータ駆動システムの欠相異常について説明する。図13に、従来のブラシレスDCモータとその駆動システムの主要部の回路図を示す。図13に示されているファン80は、図1で説明した室外ファン108や室内ファン110などである。このファン80を回転させるための動力を発生するファンモータが、ブラシレスDCモータ30である。このブラシレスDCモータ30は、ファンモータ駆動システム200により駆動される。なお、以下の説明において、ブラシレスDCモータ30を単にモータ30と略して記載する場合がある。
ファンモータ駆動システム200は、一つのドライバ集積回路20上に形成されているインバータ回路3とゲートドライブ回路5、整流回路21及び、モータ制御部222を構成する駆動信号作成部6と回転数制御部7と回転数演算部8を備えている。インバータ回路3は、モータ30に駆動電圧Vu,Vv,Vwを供給する。整流回路21は、インバータ回路3に直流電圧を供給する。ゲートドライブ回路5は、その出力により、駆動電圧Vu,Vv,Vwを生成するためにインバータ回路3のスイッチング素子をオン・オフさせる。駆動信号作成部6は、ゲートドライブ回路5の出力を制御するための6つのゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzを作成する。回転数制御部7は、駆動信号作成部6に出力するデューティ指令D*によりモータ30の回転数を制御する。回転数演算部8は、モータ30の現在回転数vmを演算により算出して回転数制御部7に出力する。
ファンモータ駆動システム200により駆動されるブラシレスDCモータ30は、ロータ31とステータ32とホールセンサ33a,33b,33cを備えている。ステータ32は、電機子コイルLu,Lv,Lwの一端を中性点nで共通に接続してなるスター結線を有している。ロータ31は、永久磁石を含み、この永久磁石とともに回転軸を中心にステータ32に対して相対的に回転する。ホールセンサ33a,33b,33cは、ステータ32に対するロータ31の位置を永久磁石の磁束に基づいて検出する。
インバータ回路3は、これら電機子コイルLu,Lv,Lwの他端に接続されている上アームのスイッチング素子3u1,3v1,3w1及び下アームのスイッチング素子3u2,3v2,3w2からなる。このインバータ回路3は、上アームのスイッチング素子3u1,3v1,3w1がオン状態になると、それぞれのスイッチング素子3u1,3v1,3w1を介して電機子コイルLu,Lv,Lwの他端を整流回路21の高電圧側に接続する。また、このインバータ回路3は、下アームのスイッチング素子3u2,3v2,3w2がオン状態になると、それぞれのスイッチング素子3u2,3v2,3w2を介して電機子コイルLu,Lv,Lwの他端を整流回路21の低電圧側に接続する。
ブラシレスDCモータ30を回転させるためには、ロータ31とステータ32の相対的な位置関係に応じて、ステータ32に与える電圧を変化させる必要がある。そのために、ステータ32に対するロータ31の位置を検出する必要があり、ここでは、ロータ31の位置がホールセンサ33a,33b,33cで検出され、ホールセンサ33a,33b,33cからファンモータ駆動システム2に対してロータ位置検出信号としてホールセンサ信号Hu,Hv,Hwが出力される。
このホールセンサ信号Hu,Hv,Hwを受けたファンモータ駆動システム200のモータ制御部222は、ロータ31の位置に合わせてインバータ回路3の上アームのスイッチング素子3u1,3v1,3w1と下アームのスイッチング素子3u2,3v2,3w2のオン・オフをゲートドライブ回路5の出力によって切り換えることにより、整流回路21から供給される直流電圧を変換して、U相、V相、W相の三相について駆動電圧Vu,Vv,Vwを発生させる。そのために、モータ制御部222の駆動信号作成部6は、6つのスイッチング素子3u1,3v1,3w1,3u2,3v2,3w2を切り換えるタイミングを、これらの素子を駆動するゲートドライブ回路5に対して出力する6つのゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzによって与える。
これらゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzを、駆動信号作成部6は、ロータ31の位置を特定するホールセンサ信号Hu,Hv,Hwと回転数を制御するためのデューティ指令D*に基づいて作成する。また、モータ制御部222は回転数制御部7及び回転数演算部8を備えており、回転数制御部7は、デューティ指令D*を、ホールセンサ信号Hu,Hv,Hwから回転数演算部8が算出した現在回転数vmと外部から入力された回転数指示信号v*とに基づいて生成して駆動信号作成部6に与える。なお、整流回路21には交流電源90が接続される。
図14及び図15は、三相通電(180度通電方式)の場合のロータ位置(電気角1周期分)とインバータ回路の出力電圧との関係を説明するための図である。図14はファンモータ駆動システムが正常な状態を示しており、図15はファンモータ駆動システムがU相上アームで欠相を生じている状態を示している。U相上アームにおいて欠相が生じる例として、スイッチング素子3u1自身が故障している場合や、適切なゲート信号が出力されないためにスイッチング素子3u1が誤動作を起こしている場合などがあげられる。例えば、U相上アームのスイッチング素子3u1をオン状態にするゲート信号Guが出力されているにもかかわらず、スイッチング素子3u1がオフ状態を保つようなオープン故障などがある。
図14(a)及び図15(a)は、ステータ32の電機子コイルLu,Lv,Lwに誘起される誘起電圧Vun,Vvn,Vwnの電圧波形を、中性点nを基準として示す図である。図14(b)及び図15(b)は、ロータ位置を検出するホールセンサ信号Hu,Hv,Hwの出力波形を示す図である。図14(c)及び図15(c)は、ホールセンサ信号Hu,Hv,Hwと、それらの信号より決定する電気角60度毎のロータ位置を表す位置信号モードとの関係を示す図である。図14(d)及び図15(d)は、インバータ回路3のゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy、Gzの波形を示す図である。図14(e)及び図15(e)は、インバータ回路3の出力電圧Vu,Vv,Vwの出力波形を示す図である。なお、モータ30において、正回転方向は反時計回り(CCW)として説明する。
本実施形態では、下アームのスイッチング素子をチョッピング(PWM制御)させる方式を例として示しており、下アームのゲート信号Gx〜Gzは、通電する位置信号モードの区間において、高い周波数(例えば数kHz〜20kHz程度)でチョッピングしている。図に示した下アームのゲート信号は、簡単のためチョッピングの状態が低い周波数で示されているが、実際の出力波形は高い周波数でチョッピングされている。また、これらの図において、出力電圧波形は簡単のためチョッピングの状態は示していないが、実際の出力波形はチョッピング(PWM)された波形である。
図14(a)及び図15(a)と図14(b)及び図15(b)とを比較して分かるように、正回転時において、ホールセンサ信号Hu,Hv,Hwはステータ32の誘起電圧Vun,Vvn,Vwnに対して極性が逆になり、ホールセンサ信号Hu,Hv,Hwは誘起電圧Vun,Vvn,Vwnに対して位相が30度進む。また、図14(a)及び図15(a)と図14(d)及び図15(d)とを比較して分かるように、正回転時において、インバータ回路3の各相の出力電圧Vu,Vv,Vwはステータ32の誘起電圧Vun,Vvn,Vwnに対して位相が30度進む。
図14(c)に示すように、電気角−30度から150度の間、U相上アーム(スイッチング素子3u1)をオン状態にするゲート信号Guが出力されている。にもかかわらず、図15(d)を図14(d)と比較して分かるように、U相上アームの欠相により正常なU相の出力電圧Vuが出力されず、U相の出力電圧Vuが例えば0になる。そのため、電気角−30度から150度に対応する区間で、区間In5のインバータ回路3の出力電圧は本来出力すべき電圧に対して位相が30度遅れるとともに出力の大きさが(√3)/2倍になり、区間In6の出力電圧は出力されず、区間In7の出力電圧は本来出力すべき電圧に対して位相が30度進むとともに出力が(√3)/2倍になる。なお、(√3)の表現は、括弧の中の数字の平方根、この場合は3の平方根を表している。
上述の通常状態とU相上アーム欠相状態との三相通電におけるインバータ回路3の出力の違いを図16に示す。図16(a)は正常状態のインバータ回路3の出力を空間電圧ベクトルで示したものであり、図16(b)はU相上アーム欠相状態のインバータ回路3の出力を空間電圧ベクトルで示したものである。図16において、UVWは通電相を表示しており、バーなしは上アームであることを、また、バーは下アームであることを示している。図16(a)に示すように、正常状態では、UVWを上アームと下アームの組み合わせで構成した6つのベクトルと、全て上アームもしくは全て下アームとする2つのゼロベクトルにより電圧出力を行うが、ゼロベクトルを除いたこれら6つのベクトルは点対称な形状をしていて欠けているところは存在しない。しかし、図16(b)に示すように、U相上アーム欠相状態では、6つのベクトルのうちの3つが欠けるため、電気角180度分に相当する範囲でしか正常な出力電圧をインバータ回路3が発生できない。
図16(b)のインバータ回路3の出力電圧のような欠相時の出力電圧でファン80の運転を行うと、各相の印加電圧が不平衡になって、各相電流の不平衡が発生する。また、モータ始動時のロータ31の位置によっては、欠相している相との関係でトルクを発生させることができないためにファン80が動かなくなることがある。また、始動できたとしても、ロータ31の位置との関係で、本来出力すべき方向とは逆方向のトルクを発生する期間が生じ、出力トルクリップルが発生する。このようなことが原因で、電流増加、騒音や振動の増大、及び動作の不安定を引き起こす。
ここまでは、三相通電の場合について説明したが、二相通電(120度通電方式)の場合であっても同様である。図17は二相通電の場合の正常状態におけるロータとインバータ回路の出力電圧との関係を説明するための図である。図17(a)は、中性点nを基準としたステータの誘起電圧Vun,Vvn,Vwnの電圧波形を示す図である。図17(b)は、ロータ位置を検出するホールセンサ信号Hu,Hv,Hwの出力波形を示す図である。図17(c)は、ホールセンサ信号Hu,Hv,Hwと位置信号モードとの関係を示す図である。図17(d)は、インバータ回路3のゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy、Gzの波形を示す図である。図17(e)は、インバータ回路3の出力電圧Vu,Vv,Vwの出力波形を示す図である。図17において、正回転時において、ホールセンサ信号Hu,Hv,Hwの極性がステータ32の誘起電圧Vun,Vvn,Vwnに対して逆になり、ホールセンサ信号Hu,Hv,Hwの位相が誘起電圧Vun,Vvn,Vwnに対して30度進む点については、図14に示した三相通電の場合と同様である。この場合は出力電圧Vu,Vv,Vwの位相は誘起電圧と同相で有り、三相通電の場合とは異なる。ここで、出力電圧と誘起電圧の位相の関係は、ホールセンサの取付位置で調整が可能で有り、また、出力電圧を位相制御することによっても調整可能であるため、本発明の実施形態の説明においては、特に位相にこだわる必要はない。
ところで、二相通電においてもU相上アームで欠相が生じて、スイッチング素子3u1に対して図17(d)のゲート信号Guがないのと同じ状態になった場合には、電気角30度から150度の間の図17(d)の二点鎖線で示したような状態となる。その場合、図17(e)のU相の波形の二点鎖線で示した出力電圧Vuが出力される。
また、図18(a)は、二相通電の場合の正常状態のインバータ回路3の出力を便宜的に空間電圧ベクトルで示した図であり、図18(b)は、二相通電の場合のU相上アーム欠相状態のインバータ回路3の出力を空間電圧ベクトルで示した図である。二相通電の場合も、図18(a)と図18(b)とを比較して分かるように、各相電流の不平衡が発生する。しかし、U相上アームの欠相によって正常な出力電圧をインバータ回路3が出力できないのは電気角120度分に相当する範囲であり、三相通電の場合と比べて、正常な電圧を出力できる範囲は広くなる。
<ファンモータ駆動システム>
図2は、ファンモータを駆動するためのファンモータ駆動システムを説明するためのブロック図である。ファンモータ駆動システム2は、インバータ回路3とゲートドライブ回路を含むドライバ集積回路20と整流回路21とモータ制御部22からなる。
図2に示すファンモータ駆動システム2が、図13に示したファンモータ駆動システム200と異なるのは、モータ制御部22とモータ制御部222の構成の違いであり、その他の構成は同じである。そのため、図13で既に説明したインバータ回路3及びゲートドライブ回路5の説明と整流回路21の説明は省略してモータ制御部22について説明する。
なお、欠相異常が発生していない通常の動作においては、モータ制御部22はモータ制御部222と同じ動作を行う。つまり、駆動信号作成部6Aは、駆動信号選定部10からホールセンサ信号Hu,Hv,Hwとデューティ指令D*を変更せずにそのまま与えられ、駆動信号作成部6と同様の動作で従来と同様のゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzを出力する。そのため、駆動信号作成部6Aは、駆動信号作成部6と同様の機能を持ち、それに加えて欠相時のゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzを作成するための機能を持っている。
<ファンモータ駆動システムのモータ制御部>
モータ制御部22は、回転数制御部7と回転数演算部8に加え、欠相異常検出部9と駆動信号選定部10と駆動信号作成部6Aと指示受付部11と表示部12とを備えている。回転数制御部7及び回転数演算8は、従来と同様の回路で構成され、回転数制御部7は、駆動信号作成部6に与えるデューティ指令D*を、モータ30の現在の回転数vmと外部から入力された回転数指示信号v*とに基づいて生成する。回転数演算部8は、ホールセンサ信号Hu,Hv,Hwからモータ30の回転数vmを算出して回転数制御部7に出力する。
欠相異常検出部9は、インバータ回路3の欠相異常の有無と欠相箇所を検出する。欠相異常検出部9における欠相異常の検出は、適切な時期に行われ、空気調和装置1の運転開始時、運転中、または運転停止後に行われてもよく、ファン80の回転前、回転中または回転停止後に行われてもよいが、望ましくは、ファン80の回転前に行われるのが最も効果的である。ファン80の回転前に欠相異常検出を行うことにより、モータ運転の都度、異常の状態に合わせて最適な運転を行うことが可能となる。このとき、欠相アームには通電しないことによって異常状態を変えず、駆動出力を同じ状態で運転し続けることにより、安定した運転を行うことができる。また、ファン80の回転前に欠相異常検出を行えば、異常状態が解消された場合にも、速やかに正常運転を行うことができる。欠相異常検出部9は、その検出において、ゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzに対してインバータ回路3が適切な出力電圧Vu,Vv,Vwを発生できているかを検出することになるが、その検出は直接的なものでなく間接的な場合も含まれる。例えば、個々のスイッチング素子3u1,3v1,3w1,3u2,3v2,3w2の故障検出やインバータ回路3の出力インピーダンスの測定などからでも、欠相異常が発生していることと、どの相のどのアームが欠相しているかの欠相異常の状態を特定することができればよい。また、全ての欠相異常を特定する必要はなく、少なくとも欠相時の駆動の対象となる欠相異常の状態を特定する。
駆動信号選定部10は、欠相異常検出部9の検出結果である欠相異常の有無及び種類に応じて駆動信号の出力波形を選択する。駆動信号選定部10は、例えばCPU(Central Processing Unit)とROM(Read Only Memory)などで構成でき、予めROMに、欠相異常の状態とその時のゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzの組み合わせを示すテーブルなどを記憶させておくことで、欠相時の指令を駆動信号作成部6Aに対して出力できる。また、駆動信号選定部10は、欠相異常の状態が駆動可能なものか否かを判断する機能を有しており、判断すべき欠相異常の状態が限られているので、例えば欠相異常の状態と動作可否の関係をROMに記憶させておくことによってこのような機能を持たせることができる。さらに、欠相時に駆動をさせるか否かを指示する信号Od1に応じて駆動信号作成部6Aの機能を停止させる機能も駆動信号選定部10が有しているが、このような機能は例えば簡単な論理回路で構成できる。
駆動信号作成部6Aは、駆動信号選定部10からの指令に応じてゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzを作成してゲートドライブ回路5に対して出力する。後ほど説明するが、駆動信号作成部6Aが作成するゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzについて、通常時と欠相時の違いには、スイッチング素子をオンする信号を出力するタイミングの変更で対応できる。そのため、従来の駆動信号作成部6のゲート信号出力タイミングを発生する部分を変更することで駆動信号作成部6Aを構成することができる。また、通常時と欠相時において、ゲート信号Gx,Gy,Gzのパルス幅やデューティ比を変えることもでき、その場合には駆動信号作成部6Aは従来の駆動信号作成部6とは異なるパルス幅やデューティ比を発生する構成を付加する。先に述べたように、欠相異常時には正常時よりも電圧出力期間が狭くなるため、所定回転数で同じトルクを出力するためには、パルス幅やデューティ比を正常時よりも大きくする必要があるが、この構成を付加することにより、正常時と変わらない回転数応答性を得ることも可能となる。指示受付部11は、欠相異常が生じたときにブラシレスDCモータ30の駆動を行うか、行わないかを指示する信号Co1を外部から受付けて、駆動信号選定部10に対して、モータ30の駆動に関する指令Od1を出力する。指示受付部11が出力する信号Od1は、欠相異常の発生に対して駆動の可否を指示する信号だけでなく、欠相異常の状態ごとに駆動の可否を指示する信号を含んでいてもよい。表示部12は、欠相異常の有無と種類のいずれかもしくは両方に関する情報を駆動信号選定部10から受け取り、外部に対してそれらの情報を表示する。
次に、モータ制御部22の動作について、図3に示すフローに沿って説明する。欠相異常を検出するタイミングになると(ステップS1)、ステップS2に進み、欠相異常検出部9において欠相異常の検出を行う。欠相異常を検出するタイミングは、例えば、ファン80の運転開始時に欠相異常を検出するなど、空気調和装置1の運用上適切な時期に設定される。
欠相異常が発生している場合には、欠相異常検出部9から駆動信号選定部10に欠相異常の検出と検出された欠相異常の状態とを示す信号が出力されることにより、駆動信号選定部10において、欠相異常が検出されたと判断される(ステップS3)。
駆動信号選定部10は、ステップS3において欠相異常が検出されたと判断すると、欠相異常検出部9の出力から、ステップS4及びステップS5の判断を続けて行う。ステップS4では、欠相異常の状態がモータ駆動可能なものか否かを駆動信号選定部10が判別する。例えば、三相のブラシレスDCモータ30の場合には異なる相の片側アームが2つ以上欠相している場合には、回転させることができないため駆動信号選定部10が駆動不可能と判断し、片側アームの欠相が1つ以内であれば、駆動信号選定部10が駆動可能と判断する。
ステップS4で駆動可能な欠相異常と判断された後、ステップS5において、駆動信号選定部10は、指示受付部11からの指令Od1に基づいて欠相時にブラシレスDCモータ30の駆動を行うか否かを決定する。
ステップS5を終了して、欠相異常が駆動可能なものと判断されて欠相時に駆動を停止する指示がない場合には、駆動信号選定部10から表示部12に対して異常表示をするための信号が出力される。それにより、表示部12は、例えば、欠相異常が生じているがファン80の運転を継続する内容の情報と共に、欠相異常の状態を表示する。
次に、駆動信号選定部10は、ステップS7において、欠相時の駆動信号の選定を欠相異常の状態に応じて行う。駆動信号選定部10における具体的な欠相時ファンモータ駆動出力の選定については後述する。
ステップS8において、始動時のロータ31の位置を調整するため駆動信号選定部10からの出力により駆動信号作成部6Aは始動時のゲート信号をGu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzを作成してゲートドライブ回路5に対して出力する。それにより、ロータ31が、欠相があってもトルクを発生できる位置に移動され、始動時においてロータ31にトルクを加えて回転を始めさせることができる。
ステップS9において、モータ30を駆動するため、駆動信号選定部10からの出力により駆動信号作成部6Aがゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzを作成してゲートドライブ回路5に対して出力する。なお、駆動信号作成部6Aにおける駆動信号の作成については後ほど駆動信号選定部10の欠相時ファンモータ駆動出力の説明とともに行う。
最初のステップS1で欠相異常の検出タイミングではないと判断された場合には、駆動信号の状態を継続する(ステップS10)。すなわち、ある選定された駆動信号に基づいて出力を行ってモータ30を駆動している場合には、そのまま出力を継続し、また、駆動を停止している場合には、そのまま停止し続ける。ステップS3で、欠相異常の検出タイミングではないと判断された場合や欠相異常が検出されなかった場合には、ステップS11に進み、通常のファンモータ駆動出力が行われる。このとき、駆動信号選定部10は、駆動信号作成部6Aに欠相異常が生じていないことを通知して通常の動作を行う状態にするとともに、ホールセンサ33a,33b,33cから入力されたホールセンサ信号Hu,Hv,Hwと回転数制御部7から入力されたデューティ指令D*をそのまま駆動信号作成部6Aに対して出力する。この場合、駆動信号作成部6Aは、従来の駆動信号作成部6と同様にゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzを作成する。ステップS11の処理が終了すると、最初のステップS1に戻り、再び適切なタイミングで欠相異常の検出を行う。
また、ステップS4で欠相異常の状態が駆動不可能なものと判断された場合及び、ステップS5で欠相時に駆動を停止するという指令がある場合には、ステップS12に進み、駆動信号選定部10から駆動信号作成部6Aに対してブラシレスDCモータ30の駆動を行わせないようなゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzの作成を指示する制御信号が出力される。それにより、駆動信号作成部6Aは、例えば欠相異常が生じている期間はスイッチング素子3u1,3v1,3w1,3u2,3v2,3w2をオフ状態にするゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzを出力する。これは欠相異常によりスイッチング素子3u1,3v1,3w1,3u2,3v2,3w2の動作が不安定になることによって、インバータ回路3からモータ30に対して異常な電圧を出力させないためである。次に、ステップS13に進み、駆動信号選定部10から表示部12に対して異常表示をするための信号が出力される。それにより、表示部12は、欠相異常が生じていることと共に、欠相異常の状態を表示する。
なお、説明を簡単にするために、各ステップが順次行われるような説明を行ったが、例えば、ステップS3とステップS4とステップS5、ステップS6とステップS7、及びステップS11とステップS12などは同時に行ってもよく、また順序が逆であってもよい。また、ステップS1では、ブラシレスDCモータ30の駆動とは別に欠相異常の検出を行うタイミングを設ける場合の説明を行ったが、検出方法によってはモータ30を回転させながら欠相異常の検出を行える場合もあるので、モータ30の駆動と並行して欠相異常の検出を行ってもよい。また、ステップS6,S13の異常表示は、ステップS4の直後に行ってもよい。
<欠相時のモータ駆動の具体例>
以下の説明において、欠相異常とは、インバータ回路のスイッチング素子が本来オン状態になるべきときにオン状態にならない異常である。また、図2に示した三相のブラシレスDCモータ30をインバータ回路3で駆動するような構成の場合、異なる相の片側アームが二相以上欠相している場合はモータ30の駆動ができないことから、駆動信号選定部10において欠相時ファンモータ駆動出力を選定するために区別する必要があるのは、上アームの欠相が一相以下でかつ下アームの欠相も一相以下の場合である。そのため、U相、V相、W相の区別をしなければ、一相の上アームまたは下アームのみに欠相が生じている場合、同じ相の上アームと下アームにのみ欠相が生じている場合、及び一相の上アームまたは下アームと他の一相の下アームまたは上アームに欠相を生じている場合の3つのパターンになる。これら3つのパターンにおいて、U相、V相、W相の違いがあっても欠相異常への対応方法は同じであるため、以下の説明ではU相及びU相とV相が欠相となった場合を例に3つのパターンへの対応について説明する。
(U相上アームの欠相)
図4は、U相上アームに欠相が生じている場合に、三相ブラシレスDCモータに二相通電を行ったときのブラシレスDCモータを動作させるための信号及び電圧を説明するためのタイミングチャートである。図4において、横軸はロータ位置を電気角で示したものである。図4(a)には、正常時にステータ32の電機子コイルLu,Lv,Lwに誘起される誘起電圧Vun,Vvn,Vwnが示されている。図4(b)には、ホールセンサ33a,33b,33cから出力されるホールセンサ信号Hu,Hv,Hwが示されている。図4(c)には、ホールセンサ信号Hu,Hv,Hwと位置信号モードが示されている。図4(d)には、U相上アームの欠相時にモータ30を駆動するために駆動信号作成部6Aから出力されるゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzが示されている。図4(e)には、図4(d)に示す駆動信号作成部6Aの出力に対応してインバータ回路3から出力される電圧の出力波形が示されている。
U相上アームに欠相が生じているため、電気角で30度から150度の区間In1は、インバータ回路3のU相の出力が正常な値にならない。そのため、電気角で30度から150度の区間In1でスイッチング素子3u1をオフ状態にするゲート信号Guを出力している(図4(d)参照)。それにより、30度から150度の区間In1は、図4(e)に示すように、インバータ回路3のU相、V相、W相全ての出力電圧が0になる。それにより、欠相異常が生じている区間でもインバータ回路3の出力電圧を安定させてブラシレスDCモータ30の駆動を行うことができる。
通常時に二相通電を行っている場合には、U相上アームに欠相が生じているという信号を欠相異常検出部9から駆動信号選定部10が受け取ると、駆動信号作成部6Aに対して駆動信号選定部10は、デューティ指令D*とホールセンサ信号Hu,Hv,Hwをそのまま駆動信号作成部6Aに対して出力する。さらに、駆動信号選定部10は、全区間でスイッチング素子3u1をオフ状態にするようなゲート信号Guを出力するよう、駆動信号作成部6Aに指令を出す。それにより、駆動信号作成部6Aは、区間In1においてスイッチング素子3u1をオフ状態にするとともに、その他の区間やその他のスイッチング素子に対しては通常と同じようなゲート信号を出力させることができる。それにより、図4(d)に示すゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzを出力することができる。
ブラシレスDCモータ30が回転しているときに図4に示す状態になった場合には、モータ30にファン80が取り付けられているので、ファン80の慣性運動により電気角30度から150度の区間In1でトルクがなくてもモータ30が回転を続けることから、モータ30はU相上アームに欠相が生じていてもファン80を駆動させ続けることができる。
図15に示したように、通常時に三相通電を行っている場合には、U相上アームの欠相によって出力電圧を発生できない区間が電気角で180度になるため、回転させ続けることが難しくなる。そこで、通常時に三相通電を行っている場合には、欠相時に二相通電になるよう、ゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzの出力を図4(e)に示すように切り換える。そのために、駆動信号作成部6Aは、正常時は三相通電を行い、欠相時に二相通電を行うような機能を有しており、駆動信号選定部10からの指示によって三相通電と二相通電の切換を行う。
また、通常時に三相通電を行っている場合、欠相異常が生じたときに全体を二相通電に切替えるのではなく、一部の区間だけ二相通電に切替えるようにしてもよい。図5は、一部の区間だけ二相通電に切替える場合の動作を説明するためのタイミングチャートである。図5(a)、図5(b)及び図5(c)に示されている図は、図4(a)、図4(b)及び図4(c)に示されている図と同じであるので説明を省略する。図5(d)には、U相上アームの欠相時にモータ30を駆動するために駆動信号作成部6Aから出力されるゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzが示されている。また、図5(e)には、図5(d)に示す駆動信号作成部6Aの出力に対応してインバータ回路3から出力される電圧の出力波形が示されている。
通常状態で三相通電を行う場合において、U相上アームに欠相が生じているため、電気角で−30度から150度の区間In11,In12,In13は、インバータ回路3のU相上アームの出力が正常な値にならない。そこで、電気角で−30度から0度の区間In11においては、ゲート信号Guとしてスイッチング素子3u1がオフ状態になる信号を出力するとともに、ゲート信号Gv,Gzとしてスイッチング素子3v1,3w2がオン状態になる信号を出力する。それにより、区間In11はV相とW相の2相で通電する。このときインバータ回路3の出力は、出力電圧Vv,バーVwのベクトルで与えられ、図16に示すように出力電圧バーVu,Vv,バーVwのベクトルに比べて30度位相が進んでいるので、半時計回りにトルクを発生することができる。また、電気角で120度から150度の区間In13においては、ゲート信号Gw,Gyとしてスイッチング素子3v2,3w1がオン状態になる信号を出力する。このときもゲート信号Guはスイッチング素子3u1をオフ状態にする信号を出力する。それにより、区間In13はV相とW相で通電する。このときのインバータ回路3の出力は、出力電圧バーVv,Vwのベクトルで与えられ、出力電圧バーVu,バーVv,Vwのベクトルに対し30度位相が遅れているので、半時計回りにトルクを発生することができる。また、区間In12では半時計回りのトルクを発生する出力電圧の組み合わせがないため、出力電圧を発生させない。それにより、電気角0度から120度の区間In12では、図5(e)に示すように、インバータ回路3のU相、V相、W相全ての出力電圧が0になる。その結果、電気角で120度から360度の区間で半時計回りのトルクを発生することができ、三相通電の場合に比べてモータ30の回転を維持し易くなる。
二相通電と三相通電とを組み合わせる場合において、図2に示すファンモータ駆動システム2において、駆動信号選定部10は、全区間でスイッチング素子3u1がオフ状態にするようなゲート信号Guを出力するよう、駆動信号作成部6Aに指令を出す。また、0度から30度の区間では、スイッチング素子3v1をオフ状態にするゲート信号Gvを出力し、90度から120度の区間では、スイッチング素子3w1をオフ状態にするゲート信号Gwを出力するよう、駆動信号作成部6Aに対して指令を出す。それにより、駆動信号作成部6Aは、図5(c)に示すゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzを出力することができる。
ブラシレスDCモータ30が回転しているときに図5に示す状態になった場合には、ファン80の慣性運動により電気角0度から120度の区間In12で回転を続け、モータ30はU相上アームに欠相が生じていても回転を続けることができる。
次に、U相上アームに欠相異常が生じている場合のブラシレスDCモータ30の始動について説明する。図6は、始動時におけるロータ位置の固定について説明するためのタイミングチャートである。図6(a)には、正常時に電機子コイルLu,Lv,Lwに誘起される誘起電圧が示されている。図6(b)には、ホールセンサ33a,33b,33cから出力されるホールセンサ信号Hu,Hv,Hwが示されている。図4(c)には、ホールセンサ信号Hu,Hv,Hwと位置信号モード及び直流励磁相との関係が示されている。図6(c)において、例えば、「U+」はU相上アームをオンすることをあらわしており、「U−」はU相下アームをオンすることを表している。
既に説明したように、U相上アームが欠相しているときには、電気角30度から150度の区間In1では、トルクを発生することができない。また、電気角105度から255度の位置Po1にロータ31を固定するための直流励磁相は、U相上アームの欠相によりインバータ回路3が出力できない。そのため、ロータ31を固定でき、かつ始動時にトルクを印加できる位置は、電気角で255度から15度までの位置Po2に限られる。その中でも、固定後にトルクを長く与えられる位置Po3が好ましい。位置Po3に固定した場合には、285度から30度までの位置Po4でトルクを与える。
V相下アームとW相上アームをオンすることにより、位置Po3にロータ31を固定することができる。V相下アームとW相上アームがオンするのは、図4に示すように、位置信号モードが「2」のときである。従って、U相上アームに欠相が生じているときの始動時においては、駆動信号選定部10は、ホールセンサ信号Hu,Hvを「1」、Hwを「0」として駆動信号作成部6Aに出力し、ロータ固定に十分な期間だけ位置信号モード「2」に対応するゲート信号が駆動信号作成部6Aからゲートドライブ回路5に出力されるように制御する。なお、例えばホールセンサ信号の位置信号モードが「1」のところでロータ31が停止しているときには、V相上アームとW相下アームをオンし、続いてU相下アームとV相上アームをオンし、さらにU相下アームとW相上アームをオンして徐々に270度に近づけてからV相下アームとW相上アームをオンしてもよい。なお、直流励磁時にもチョッピングを行うことにより、電流が徐々に流れるため、スイッチング素子へのダメージを小さくすることができる。
ロータ31を位置Po3に固定した後は、位置信号モードに応じて二相通電を行う。まず、U相下アームとW相上アームをオンすることによりファン80にトルクを与えて回転させ始める。このようにして、ブラシレスDCモータ30が回転を始めれば、既に説明したように図4に示すゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzを与えてインバータ回路3によるモータ30の駆動を継続する。
(U相上アーム及びV相下アームの欠相)
図7は、U相上アーム及びV相下アームに欠相が生じている場合に、ブラシレスDCモータに二相通電を行ったときのブラシレスDCモータを動作させるための信号及び電圧を説明するためのタイミングチャートである。図7(a)、図7(b)及び図7(c)に示されている図は、図4(a)、図4(b)及び図4(c)に示されている図と同じであるので説明を省略する。図7(d)には、U相上アーム及びV相下アームの欠相時にモータ30を駆動するために駆動信号作成部6Aから出力されるゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzが示されている。図7(e)には、図7(d)に示す駆動信号作成部6Aの出力に応じてインバータ回路3から出力される電圧の出力波形が示されている。
U相上アーム及びV相下アームに欠相が生じているため、30度から210度の区間In2は、インバータ回路3のU相とV相の出力が正常な値にならない。そのため、30度から210度の区間In2でスイッチング素子3u1,3v2をオフ状態にするゲート信号Gu,Gyを出力している(図7(d)参照)。それにより、30度から210度の区間In2は、図7(e)に示すように、インバータ回路3のU相、V相、W相全ての出力電圧が0になる。
通常時に二相通電を行っている場合には、U相上アーム及びV相下アームに欠相が生じているという信号を欠相異常検出部9から駆動信号選定部10が受け取ると、駆動信号選定部10は、駆動信号作成部6Aに対してデューティ指令D*とホールセンサ信号Hu,Hv,Hwをそのまま駆動信号作成部6Aに対して出力する。さらに、駆動信号選定部10は、全区間でスイッチング素子3u1,3v2をオフ状態にするようなゲート信号Gu,Gyを出力するよう、駆動信号作成部6Aに指令を出す。それにより、駆動信号作成部6Aは、図7(d)に示すゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzを出力することができる。
通常時に三相通電を行っている場合に、U相上アーム及びV相下アームに欠相異常が生じたとき、二相通電に切り換えるのは、U相上アームに欠相異常が生じたときと同様である。
次に、U相上アーム及びV相下アームに欠相異常が生じている場合のブラシレスDCモータ30の始動について説明する。図8は、始動時におけるロータ位置の固定について説明するためのタイミングチャートである。図8(a)には、正常時に電機子コイルLu,Lv,Lwに誘起される誘起電圧が示されている。図8(b)には、ホールセンサ33a,33b,33cから出力されるホールセンサ信号Hu,Hv,Hwが示されている。図8(c)には、ホールセンサ信号Hu,Hv,Hwと位置信号モード及び直流励磁相との関係が示されている。
既に説明したように、U相上アーム及びV相下アームが欠相しているときには、電気角30度から210度の区間In2では、トルクを発生することができない。また、電気角105度から315度の位置Po5にロータ31を固定するための直流励磁相は、U相上アーム及びV相下アームの欠相によりインバータ回路3が出力できない。そのため、ロータ31を固定でき、かつ始動時にトルクを印加できる位置は、電気角で315度から15度までの位置Po6に限られる。その中でも、固定後にトルクを長く与えられる位置Po7が好ましい。位置Po7に固定した場合には、355度から30度までの位置Po8でトルクを与える。
位置Po7にロータ31を固定するためには、図8に示すように、U相下アームとW相上アームをオンする必要がある。U相下アームとW相上アームがオンするのは、図7に示すように、位置信号モードが「3」のときである。従って、U相上アームとV相下アームに欠相が生じているときの始動時においては、駆動信号選定部10は、ホールセンサ信号Huを「1」、Hv,Hwを「0」として駆動信号作成部6Aに出力し、ロータ固定に十分な期間だけ位置信号モード「3」に対応するゲート信号が駆動信号作成部6Aからゲートドライブ回路5に出力されるように制御する。なお、例えばホールセンサ信号の位置信号モードが「1」または「2」のところでロータ31が停止しているときには、V相上アームとW相下アームをオンし、続いてU相下アームとV相上アームをオンして徐々に330度に近づけてからV相下アームとW相上アームをオンしてもよい。
ロータ31を位置Po7に固定した後、U相下アームとV相上アームとW相上アームのオンすることによりファン80にトルクを与える。このようにして、ブラシレスDCモータ30が回転を始めれば、既に説明したように図7に示すゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzを与えてインバータ回路3によるモータ30の駆動を継続する。
(U相上アーム及びU相下アームの欠相)
図9は、U相上アーム及び下アームに欠相が生じている場合に、ブラシレスDCモータに二相通電を行ったときのブラシレスDCモータを動作させるための信号及び電圧を説明するためのタイミングチャートである。図9(a)、図9(b)及び図9(c)に示されている図は、図4(a)、図4(b)及び図4(c)に示されている図と同じであるので説明を省略する。図9(d)には、U相の上下アームの欠相時にモータ30を駆動するために駆動信号作成部6Aから出力されるゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzが示されている。図9(e)には、図9(d)に示す駆動信号作成部6Aの出力に応じてインバータ回路3から出力される電圧の出力波形が示されている。
U相上アーム及び下アームに欠相が生じているため、30度から150度の区間In3及び210度から330度の区間In4は、インバータ回路3のU相の出力が正常な値にならない。そのため、30度から150度の区間In3及び210度から330度の区間In4でスイッチング素子3u1,3u2をオフ状態にするゲート信号Gu,Gxを出力している(図9(d)参照)。それにより、30度から150度の区間In3及び210度から330度の区間In4は、図9(e)に示すように、インバータ回路3のU相、V相、W相全ての出力電圧が0になる。
通常時に二相通電を行っている場合には、U相上アーム及び下アームに欠相が生じているという信号を欠相異常検出部9から駆動信号選定部10が受け取ると、駆動信号選定部10は、駆動信号作成部6Aに対してデューティ指令D*とホールセンサ信号Hu,Hv,Hwをそのまま駆動信号作成部6Aに対して出力する。さらに、駆動信号選定部10は、全区間でスイッチング素子3u1,3u2をオフ状態にするようなゲート信号Gu,Gxを出力するよう、駆動信号作成部6Aに指令を出す。それにより、駆動信号作成部6Aは、図9(d)に示すゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzを出力することができる。
ブラシレスDCモータ30が回転しているときに図9に示す状態になった場合には、モータ30にファン80が取り付けられているので、ファン80の慣性運動により30度から150度の区間In3及び210度から330度の区間In4では回転を続けることから、モータ30はU相上アーム及び下アームに欠相が生じていることにより出力は小さくなるものの回転を続けることはできる。
通常時に三相通電を行っている場合に、U相上アーム及び下アームに欠相異常が生じたとき、二相通電に切り換えるのは、U相上アームに欠相異常が生じたときと同様である。
次に、U相上アーム及び下アームに欠相異常が生じている場合のブラシレスDCモータ30の始動について説明する。図10は、始動時におけるロータ位置の固定について説明するためのタイミングチャートである。図10(a)には、正常時に電機子コイルLu,Lv,Lwに誘起される誘起電圧が示されている。図10(b)には、ホールセンサ33a,33b,33cから出力されるホールセンサ信号Hu,Hv,Hwが示されている。図10(c)には、ホールセンサ信号Hu,Hv,Hwと位置信号モード及び直流励磁相との関係が示されている。
既に説明したように、U相上アーム及び下アームが欠相しているときには、30度から150度の区間In3及び210度から330度の区間In4では、トルクを発生することができない。また、105度から255度の位置Po9及び285度から75度の位置Po10にロータ31を固定するための直流励磁相は、U相上アーム及び下アームの欠相によりインバータ回路3が出力できない。そのため、ロータ31を固定でき、かつ始動時にトルクを印加できる位置は存在しない。そのため、U相上アームのみで欠相を生じていた際に行ったロータ31の位置調整と、その後のロータ31へのトルクの付与を、ロータ及び負荷の慣性を利用してロータ31を動かしながら行わなければならない。
まず、ロータ31の停止位置を特定する。例えば、ロータ停止位置が330度から30度の区間にあれば、位置信号モードが「5」として検出される。この位置にあるロータ31を正しく回転させるために、V相上アームとW相下アームをオンして90度の方に向かってブラシレスDCモータ30を回転させる。そして、ホールセンサ信号Hwがローレベルになった瞬間にV相上アームとW相下アームをオフすることにより、ロータ位置の調整を行い、その後は慣性を利用してロータ31をトルク出力可能な位置信号モードとなる箇所(この場合は位置信号モード2の位置)まで移動させる。従って、U相上アームと下アームに欠相が生じているときの始動時においては、駆動信号選定部10は、位置信号モードが「4」、「5」、「0」のときはホールセンサ信号Huを「0」、Hv,Hwを「1」に変えて駆動信号作成部6Aに出力し、ホールセンサ信号Hwがハイレベルからローレベルに変わった瞬間に、V相上アームとW相下アームをオフするようゲート信号Gv,Gzを出力する。また、駆動信号選定部10は、位置信号モードが「1」、「2」、「3」のときはホールセンサ信号Huを「1」、Hv,Hwを「0」に変えて駆動信号作成部6Aに出力し、ホールセンサ信号Hwがローレベルからハイレベルに変わった瞬間に、V相下アームとW相上アームをオフするようゲート信号Gw,Gyを出力する。このようにして、ブラシレスDCモータ30が回転を始めれば、既に説明したように図9に示すゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzを与えてインバータ回路3によるモータ30の駆動を継続する。
上記いずれの欠相の場合においても、トルク出力しない区間が存在するため、ファンモータのような慣性の大きなモータ駆動装置において、特に有効である。
<欠相異常検出部>
欠相異常検出部9の構成の一例について図11を用いて説明する。図11に示すファンモータ駆動システム2には、上アーム側のゲートドライブ回路5のためにブートストラップキャパシタ41,42,43が設けられている。ゲートドライブ回路5は、上アームのスイッチング素子3u1,3v1,3w1を駆動するドライバ51,52,53と、下アームのスイッチング素子3u2,3v2,3w2を駆動するドライバ54,55,56とを備えている。ブートストラップキャパシタ41,42,43は、ドライバ51,52,53にスイッチング素子3u1,3v1,3w1を駆動する電圧を供給する。
ブートストラップキャパシタ41,42,43は、電源VDから抵抗47,48,49とダイオード44,45,46を介して電圧が供給される。ブートストラップキャパシタ41,42,43の一方端は、それぞれインバータ回路3のU相、V相、W相の出力端に接続され、他方端はそれぞれダイオード44,45,46のアノードとドライバ51,52,53に接続されている。
図11において、欠相異常検出部9は、下アームのスイッチング素子3u2,3v2,3w2を接地する抵抗9aと抵抗9aの電圧を検出する電圧検出部9bからなる。欠相異常検出部9を用いて行う欠相異常の検出は、抵抗9aにおける電流検出のために、ブラシレスDCモータ30を駆動する際にスイッチング素子3u1,3v1,3w1,3u2,3v2,3w2がオン・オフを繰り返す間隔よりもスイッチング素子のオンの期間を長くとる必要がある。そのため、欠相異常の検出は、ファン80の運転前のタイミングで行われる。
欠相異常検出部9において、検出される故障箇所と電流検出の関係を図12に示す。図12において、故障の箇所を表す欄における×と○はそれぞれ欠相異常の有無を示し、電流検出を表す欄における○と×はそれぞれ抵抗9aに流れる電流の有無を示している。また、スイッチング態様を表す欄の○と×はスイッチング素子のオン・オフを示している。
1回の欠相異常の検出において、6通りのスイッチング態様を全て行う。欠相異常の検出工程において、6通りのスイッチング態様全てで電流が検出されれば、欠相異常は発生していないと判断できる。また、例えば、スイッチング素子3u1,3v1,3w1,3u2,3v2,3w2を、オフ、オフ、オン、オン、オン、オフしたときのみ、電流が検出されなければ、W相上アームのみで欠相異常が発生していることが分かる。さらに、図12には記載していないが、6通りのスイッチング態様全てで電流が検出されなければ、3つ以上のアームで欠相異常が生じていることになる。この場合は、片側のアームの二相以上で欠相が生じていることになるからブラシレスDCモータ30を駆動できないので、欠相以上の態様を詳しく検出するまでもなく、既に説明したようにモータ30を停止する処置を行う。
<変形例>
(a)
上記実施形態では、欠相異常検出部9の一例を図11に示したが、欠相異常検出部9の構成は図11に示す態様に限られるものではなく、他の構成を用いることができる。
(b)
上記実施形態によるファンモータ駆動システム2は、一相の一方アームのみで欠相が生じている場合、一相の上アームと他相の下アームで欠相が生じている場合、及び同じ相の上アームと下アームで欠相が生じている場合の全てにおいてブラシレスDCモータ30を駆動する態様のものを示したが、例えば、一相の一方アームのみで欠相が生じている場合及び、異なる二相の上アームと下アームで欠相が生じている場合のみ駆動するように構成してもよい。どのような状態の欠相異常のときにモータ30の駆動を行うかは、システム性能の低下度合や騒音・振動の大きさなどの具体的な場面において適宜選択して設計される。
(c)
上記実施形態においては、表示部12がファンモータ駆動システム2に内蔵されている場合について説明したが、表示部12は、必ずしもファンモータ駆動システム2と一体に設けられる必要はなく、表示部12をファンモータ駆動システム2の外部に設け、ファンモータ駆動システム2からは表示のための情報を送信するようにしてもよい。例えば、室内機102のリモートコントローラなど付属機器の液晶画面であってもよい。あるいは、表示部12として、空気調和装置1を遠隔管理する遠隔管理装置がある場合には、遠隔管理装置の画面を用いることもできる。
(d)
上記実施形態においては、欠相異常検出部9と、駆動信号選定部10と、駆動信号作成部6Aとを別のブロックで示したが、これらを適宜組み合わせて、欠相異常を検出する機能と、駆動信号を選定する機能と、駆動信号を作成してインバータ回路3を制御する機能とを一つの回路で実現してもよい。
(e)
上記実施形態においては、ファンモータ駆動システム2の用途として空気調和装置の熱源ユニットについて、図1に示す空気調和装置1の室外ファン108と室内ファン110を駆動するブラシレスDCモータのファンモータ駆動システム2を例にあげて説明したが、他のヒートポンプ装置にも適用することができる。例えば、給湯器の熱源ユニットで使用されるファンモータの駆動にファンモータ駆動システム2を用いることができる。また、ポンプなどのファンモータ以外のモータの駆動システムとして熱源ユニットで用いられるブラシレスDCモータなどの駆動にも適用することができる。
(f)
モータはブラシレスDCモータでなく、インバータ回路で駆動される誘導電動機でもよい。誘導電動機を駆動する場合には、ロータの位置に合わせて欠相時モータ駆動出力を出力する必要はなく、例えば出力電圧と出力周波数の比を一定に制御する、いわゆるV/f制御を行うことによって、安定した駆動を行うことができる。なお、モータが誘導電動機の場合も、通常時と欠相時においてゲート信号Gx,Gy,Gzのパルス幅やデューティ比を変えることによって、出力電圧を同等とし、正常時と同等の回転数応答性や効率・力率を得ることが可能となる。
(g)
上記実施形態においては、インバータ回路とゲートドライブ回路が一つのドライバ集積回路20上に形成されている例を示したが、一つのドライバ集積回路上に形成されている必要はない。
<特徴>
(1)
ファンモータ駆動システム2(多相モータ駆動システム)は、図2に示すように、インバータ回路3と、欠相異常検出部9(検出手段)と、駆動信号選定部10(選定手段)と、駆動信号作成部6A(駆動制御手段)とを備えている。このファンモータ駆動システム2は、図3に示すフローチャートに沿って欠相異常が発生しているときに、ブラシレスDCモータ30を駆動してファン80を回転させることができる。
すなわち、ステップS2(検出工程)において、欠相異常検出部9は、ゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzに対してインバータ回路3が適切な出力電圧Vu,Vv,Vwを発生できているかチェックすることにより、欠相異常の検出を行う。この場合の出力電圧Vu,Vv,Vwの発生チェックは、直接測定する必要はなく、欠相異常を示す間接的な事象から検出してもよい。
駆動信号選定部10は、ステップS7(選定工程)において、駆動信号作成部6Aからどのようなゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzを出力させるかを選定する。U相、V相、W相のいずれの相で欠相異常が発生しているか、また発生しているのは上アームか下アームかなどの欠相異常の有無や状態に応じて、予め準備されているゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzの波形の中から適切な波形を選び出す。駆動信号選定部10が選定してインバータ回路3に出力させる欠相時多相モータ駆動出力としては、図4(e)及び図5(e)に示した第1欠相時多相モータ駆動出力と、図7(e)に示した第2欠相時多相モータ駆動出力と、図9(e)に示した第3欠相時多相モータ駆動出力とがある。
そして、ステップS9(駆動工程)において、駆動信号作成部6Aが出力するゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzに応じてゲートドライブ回路5が、インバータ回路3のスイッチング素子3u1,3v1,3w1,3u2,3v2,3w2に対して、オン・オフさせる出力を与える。このとき、ゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzに応じて出力されるインバータ回路3の出力電圧Vu,Vv,Vwが欠相時多相モータ駆動出力になる。このように、欠相異常が発生しているときの欠相時多相モータ駆動出力をインバータ回路3がブラシレスDCモータ30に出力できるので、欠相があってもモータ30を駆動することができる。それにより、空気調和装置1に空気調和の動作を行わせることができる。
特に、一相の一方アーム(例えばU相上アーム)のみで欠相が生じている場合、及び一相の一方アームと他相の他方アーム(例えばU相上アームとV相下アーム)のみで欠相が生じている場合を、欠相時に駆動する対象として選定することで、欠相時のモータ30の駆動が容易になる。
(2)
通常は、モータ30が停止している状態で欠相異常を検出するので、モータ30の始動が必要になる。モータ30が回転している状態で欠相異常が検出された場合には始動工程を省くことができる。そのための判別工程をステップS8の前に設けることもできる。上記実施形態においては、停止時に欠相異常検出部9が欠相異常を検出するので、ステップS8(始動工程)において、始動を行うためのロータ位置の調整を行う。ロータ31の位置の調整は、図6及び図8に示したように、トルクを発生できるロータ固定位置に対応する位置信号モードを駆動信号選定部10が駆動信号作成部6Aに出力することにより、前述のロータ固定位置にロータ31が調整されるような直流励磁が行われる。
しかし、欠相異常の状態により、始動時にトルクを発生できる位置に固定できないときには、図10を用いて説明したように、直流励磁によりロータ31を動かしてロータ31の慣性運動からロータ31の回転につなげる。それにより、3相のブラシレスDCモータ30において同じ相の上下アームに欠相が生じている場合などにおいてもファン80を回転させることができる。
なお、上記実施形態では二相通電について説明したが、三相通電においても同様に直流励磁により、ロータ位置の固定が可能である。
(3)
駆動信号選定部10は、ブラシレスDCモータ30が通常時に三相通電で回転する場合に、欠相時が生じたときに、駆動信号作成部6Aから二相通電のゲート信号Gu,Gv,Gw,Gx,Gy,Gzをゲートドライブ回路5に出力させる。そのため、駆動信号作成部6Aは二相通電に対応で切る回路への切換を行えるよう構成されている。それにより、トルクを発生することができる区間が広がってモータ30の駆動が容易になるとともにモータ30の欠相異常による振動を抑制することができる。
また、駆動信号作成部6Aの二相通電への切換は、全ての区間でなく、一部だけ行うようにして、二相通電を行う区間と三相通電を行う区間を並存させることもできる。三相通電の区間ではファンモータ駆動システム2から本来の適切なトルクがモータ30に与えられるので、不具合が発生する区間を制限して、欠相異常により生じる不具合を抑制することができる。
また、出力電圧の電圧変化を滑らかにするため、三相通電と二相通電とを交互に行ってもよい。さらに、三相通電の場合には、正弦波変調の三相通電であってもよい。デューティ(パルス幅)は電気角360度区間において一定である必要はなく、例えば電気角に応じて可変とすることにより、同様の効果が得られる。
(4)
駆動信号選定部10は、ステップS6やステップS13において表示部12を使ってユーザに対し、欠相異常に関する情報を報知することができる。それにより、ユーザに欠相異常を警告して対処を促すことができる。この表示部12で行う報知は、視覚だけでなく音などの聴覚に対して行うものも含まれ、ユーザに欠相異常が発生していることを認知させる目的が達せられるものであればよい。また、報知するのは欠相異常の発生だけでなく、その状態やファンモータ駆動システム2の対応状況などの関連情報も含まれる。
(5)
指示受付部11は、欠相異常が生じたときにモータ30の駆動を行うか否かを指示する信号Co1を外部から受付けて、駆動信号選定部10に対してモータ30の駆動に関する指令Od1を出力する。それにより、ステップS5で駆動信号選定部10は、欠相時にモータ30を駆動するか否かを判別することができる。一律に所定の状態の欠相異常の場合に駆動すると、ユーザの要望にこたえられないことがあり、また他の故障と複合的に発生している場合にモータ30を回転させない方がよい場合などに対応できなくなる。指示受付部11を設けることで、欠相時のモータ30の駆動における対処の手段を増やすことができる。