JP5380697B2 - 凹版印刷用インキ - Google Patents

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Description

本発明は、凹版印刷プロセスのための印刷用インキに関し、前記プロセスは彫刻鋼製金型印刷プロセスとも呼ばれる。特に、可溶性ワックスおよびUV硬化性バインダー成分の組み合わせを含む、酸化硬化型インキを開示する。これらのインキは通常の印刷プロセスで印刷でき、印刷後に印刷シートを積み重ねた後に生じ得る、望ましくない裏移りを非常に減少またはなくすことができる。本発明のインキの使用は、裏移りで汚れた印刷シートを減らすという結果をもたらし、印刷物をより高く積み重ねること、より深い彫刻の深さの使用、より挑戦的な凹版デザインの使用、より少ない多孔性の基板上で印刷することを可能とし、標準印刷機での使用が可能であると同時に、より低い印刷版温度の使用の可能性を提供する。
彫刻鋼製金型印刷プロセス、以下凹版印刷プロセスと呼ぶ、では、印刷される模様や画像を運び、80℃代に加熱される輪転彫刻スチール製シリンダーに、一つ以上の鋳型インキシリンダーからインキを供給する。インキを塗った後に、印刷用シリンダーの平面上の余剰インキを、輪転ワイピングシリンダーで拭き取る。印刷用シリンダーの彫刻内の残りのインキを、圧力下で印刷する基板、これはシート状の紙またはプラスチックであり得る、に移し、一方ワイピングシリンダーをワイピング溶液で洗浄する。他のワイピング技術も用いることができ、ペーパーワイピングや布ワイピング(“キャラコ”)などがある。
凹版印刷用インキの特徴の一つは、対応する形状の印刷版を用いて、基板に移されるインキのフィルム厚さを数マイクロメートルから数十マイクロメートルに変えることができることである。このフィルム厚さを変えることができる能力は、凹版印刷プロセスのもっとも望ましい特徴であり、たとえば印刷書類に延性を与え、一つの同じインキを用いて色調変化を生むという、エンボス効果を生むのに使用することができる。
凹版印刷の目立つレリーフは、“裏移り”、インキが一つの印刷シートから、積み重ねの中の次に続く印刷シートの裏面またはウェブ内のエンドレスシートの裏に移ること、の問題を目立たせる。“裏移り”に影響する要因は、印刷用インキの処方、彫刻の深さおよび均一性、印刷条件、印刷基板、一山に積み重ねられたシートの数、印刷と一山の取り扱いの間の時間および、印刷後の印刷した紙の山をどのように扱うか、によって決定される。
“裏移り”は印刷用インキの残余粘着性が原因であり、次のシートの裏の基板表面に接着するものであり、これは印刷シートの山に圧力がかけられた時に悪化する。程度によっては、“裏移り”はその影響を受けた印刷製品を、取り返しがつかないほど悪くする。“裏移り”による印刷物の損失を避けるための伝統的な方法は、全ての印刷シートの間に分離シートを挟むことであるが、これは印刷プロセスの遅延をもたらし、より高価な印刷物ももたらす。
酸化硬化性インキの裏移りを減らすという問題は、当該分野においていくつかの方法で取り組まれてきた。
i) 高分子量の酸化硬化性バインダーを使用すること。
ii) 印刷版上で蒸発し得る、比較的低沸点の溶媒を使用すること。
iii) インキフィルム上に保護層を形成するワックスを使用すること。
iv) インキの残余粘着性を減少し得る、充填剤のバインダーに対する高い比率を使用すること。
v) 印刷インキフィルムの迅速な貫通硬化を確保する、効果的な金属触媒を使用すること。
国際公開第03/066759号パンフレット(および関連する特開2002−38065号公報および特開平1−289878号公報)は、UV硬化性物質を主要成分(約40重量%)を、酸化硬化性アルキド樹脂を第2成分(約5重量%)、光開始剤、および酸化重合触媒とともに含む、2成分系硬化性インキマトリックスを開示する。開示されたインキ組成物は、可溶性ワックスを含まない。
このインキは、印刷操作の後に直ちにUV硬化され、すると、少なくとも表面は即座に乾燥し、結果として裏移りが生じ得ない。よりゆっくりとした、深部の後硬化が、続く数時間および数日の間に酸化重合メカニズムにしたがって行われ、たとえUV不透過性顔料または充填剤の存在下でも、インキの基板への良好な接着を可能とする。
国際公開第03/066759号パンフレットにしたがったインキは、特に、たとえばEPDMゴムを備えた印刷プレスで、UV硬化性インキの印刷用に設計されたものを必要とし、該インキは標準的な酸化重合硬化性の、脂肪性インキの印刷用に備えられた凹版印刷プレス上で印刷できない。
国際公開第01/38445 A1号パンフレットは、ポリマー基板上での凹版印刷用インキの“裏移り”に取り組んでいる。ここで開示されている凹版印刷用インキのバインダーは、脂肪酸残基を有する自己酸化性ポリエステル樹脂、およびガラス転移点が印刷プロセスの間に到達する最高温度以下であるワックス分散液を含む。開示された印刷用インキは、さらに溶媒および顔料を含み、UV照射下で硬化できる。この印刷用インキはアクリル酸塩を全く含まない。
今日使用されている凹版印刷用インキの大部分は、いまだアルキド系、脂肪性インキであり、純粋な酸化乾燥メカニズムにしたがって硬化する。これらは伝統的に炭化水素溶剤を含む。結果として、大部分の印刷工場の印刷機は、これらの伝統的な凹版印刷用インキのアルキド系および炭化水素溶剤系の化学的性質に耐えられるように特に設計されているインキシステム、インキブランケットおよびワイピングシリンダーを備えるが、逆に、これらはより極性のUVインキの化学的性質には耐えることができない。
酸化乾燥性アルキドは、UV硬化性インキに比べると、本質的に乾燥が遅く、この結果低い生産性につながるという欠点にも関わらず、環境に優しくない有機溶媒(VOC=揮発性有機成分)の使用の必要性、およびこれらのインキが、乾燥の遅延の結果として“裏移り”を作るという内在性傾向を有する。今度は、これらの主な利点は、酸化乾燥性メカニズムによってもたらされる良好な深部の硬化であり、これは印刷および乾燥製品の良好な物理的および化学的耐性をもたらす。これらを印刷するのに適用される印刷装置もまた、すでにすべての印刷工場に備えられている。
一方、UV硬化性凹版印刷用インキは、迅速でほとんど即座の表面乾燥、待ち時間の解消および高い生産性を可能にするという利点を有している。インキ組成中の揮発性有機組成物の存在を避けることができ、瞬時乾燥に由来して裏移りも生じない。
今度は、UVインキの欠点は、深部の硬化が課題を残していることであり、これは特にインキ内の顔料の充填量が大きい時、および/または、不透過性またはUVスペクトルの高吸収性を有する顔料が存在する場合である。UV硬化性凹版印刷用インキは、さらに伝統的なアルキド系インキより非常に高価であり、さらにより重要なことは、印刷装置が、UV硬化性印刷用インキと接触する、特にゴムまたは他のポリマー物質から成るローラーの、全ての成分の主要な変更を必要とし、これはUVインキの異なる化学的性質に耐えられるように再設計されなければならない。
UV硬化性凹版印刷用インキの化学成分は、アルキド系/炭化水素溶剤系凹版印刷用インキと著しく全く異なる。UV硬化性凹版印刷用インキが、インキシステム、印刷機の印刷ブランケットおよびワイピングシリンダーのアルキド系/炭化水素溶剤系に特化したゴム成分に接触すると、ゴム成分の膨張または収縮の原因となり、次にローラーおよびブランケットの形状を変化させる。これは、印刷の低品質、ローラー寿命の低下とともに、印刷費およびメンテナンス費の上昇をもたらす。
実際には、UV硬化性凹版印刷用インキの印刷を可能とするために、印刷機のローラーは特別な物質から成り、または非極性EPDMゴム(エチレンプロピレンジエンモノマーゴム)のような高耐性組成物によって保護されている。したがって、伝統的なアルキド系凹版印刷用インキからエネルギー硬化性凹版印刷用インキに変更する場合、印刷機に追加コストが生じ、これは一方はより高価なエネルギー硬化性(UV硬化性)凹版印刷用インキ自身が原因であり、他方はUVインキ適合性とするための印刷装置の高価な改修が原因である。両方の技術で印刷する必要のある印刷工にとってのさらなる不利な結果は、印刷用インキの種類(UV硬化性または酸化硬化性のそれぞれ)を変更する時は常に、印刷機のすべての関連する部品を、時間を要する操作で、それに応じて変更しなければならないことである。
したがって、UV硬化性凹版印刷用インキの好ましい裏移り特性と、アルキド系凹版印刷用インキの良好な深部の硬化とを組み合わせたインキで、書類上の印刷インキの高い物理的および化学的耐性をもたらし、印刷施設に設置されている現存の凹版印刷装置と適合性があるもの(たとえば、変更なしに印刷可能)を入手できるようにすることが、非常に望ましい。
本発明の目的は、非常に良好な裏移り耐性および深部の硬化値を有し、酸化硬化性インキように設計された従来の凹版印刷装置で印刷のできる凹版印刷用インキを提供することである。
本発明は、凹版印刷用インキ組成物であって、主要成分として、アルキド樹脂または変性アルキド樹脂のような酸化硬化性物質、および、補助成分としてUV硬化性物質および可溶性ワックスの組み合わせを含み、前記組成物は25℃から80℃、そして10℃の温度サイクリングの後、および硬化放射量のUV光の照射の後、その複雑動的係数が少なくとも50%、好ましくは少なくとも100%であることを特徴とする、凹版印刷用インキに関する。
本発明で使用する温度サイクリングは、従来の凹版印刷プロセスの間のインキ温度の典型的な変化に対応する。印刷操作中の凹版プレートの温度は、伝統的には約80℃に選択され、インキは結果としてそれらの可溶性ワックス成分の融点の範囲に応じて処方される。本発明のインキは、印刷後粘度を上昇させる特定のメカニズムを有し、印刷版温度のより自由な選択を可能とする。特に、温度反応性の成分を含むインキを、60℃またはさらに50℃のような、より低い温度で印刷可能であり、同時に、新たに印刷されたシートの良好な裏移り耐性を有するように処方できる。
本発明によれば、UV光の硬化量とは対応するUVインキの乾燥硬化が可能な量を意味する。
前記の複雑動的係数の上昇は、印刷されたインキがUV照射後にゲル化し、結果として初期の粘着性の多くを失うことを意味する。動的係数はインキのレオロジー挙動の尺度であり、この係数の50%の上昇は裏移り耐性に関して非常に重要である。
特に、本発明に係るインキは、主要物質として、一つの酸化硬化性物質を、印刷用インキ組成物の全重量の20から50重量%の間の量、これはインキに良好な深部の乾燥特性を与える、および、補助成分として、可溶性ワックスを印刷用インキ組成物の全重量の10重量%以下、好ましくは2から5重量%の量と、UV硬化性物質を印刷用インキ組成物の全重量の2から15重量%の間の量との組み合わせを有する。
前記の可溶性ワックスとUV硬化性成分との組み合わせは、裏移りを避けるために、印刷操作後の短時間のUV照射によって、印刷されたインキの表面が安定化することを可能とし、その上、通常の印刷装置において最大印刷スピードで印刷も可能であり、印刷物をより高く積み重ねることが可能である。伝統的な酸化硬化性凹版印刷用インキの良好な深部の硬化および物理的および化学的耐性が維持されている。
本発明のインキは、伝統的な凹版印刷用インキに近い化学的特性を有し、この理由から、従来の凹版印刷用プレス上で印刷でき、印刷用インキに接触する印刷機上のゴム部品を変える必要がない。印刷機に唯一必要なことは、他の標準的な凹版印刷用プレス上に、UV照射ユニットが追加で存在することである。
本発明の凹版印刷用インキは、主に酸化硬化性凹版印刷用インキであり、ワックスに加えて、UV硬化性成分を、印刷用インキ組成物の全重量の2から15重量%の間の量、より好ましくは4から8重量%の量含む。印刷操作の直後のUV照射を通じて、印刷されたシートの貯蔵(積み重ね)が可能となるように、印刷されたインキの表面は安定化され、特に望ましくない条件下においても“裏移り”を生じさせない。したがって、印刷物の非常に高い積み重ねが予測できる。
本発明のインキは、しかしながら、印刷工程に続く、短時間のUV照射後では乾燥しない。これは、高い圧力下で、本発明の印刷されてUV照射されたインキが、それでもなお、印刷されてUV照射されたUV硬化性インキが存在しない基板の第2のシートに移るという事実から証明される。本発明のインキの表面および深部の硬化は、伝統的な凹版印刷用インキで知られているように、空気中の酸素の影響下での酸化重合プロセスを介して、印刷操作後の数時間または数日の間に行われる。
酸化硬化性インキの処方は、当業者に公知である。このようなインキは酸化硬化性物質、および酸化重合触媒(ドライヤー)を含む。酸化硬化性物質は、酸化硬化性成分として有用であり、天然または合成由来であり得る。典型的な天然由来の酸化硬化性物質は、亜麻仁油、キリ油、トールオイル、および当業者に公知の他の乾燥性オイルを基礎とするオリゴマーまたはポリマーである。典型的な合成由来の酸化硬化性物質は、当業者に公知なように、たとえば、180℃から240℃における以下の物質の共有濃縮(エステル化)によって得ることができる。
i) 一つ以上のポリカルボン酸、たとえばortho-、iso-、またはter-フタル酸、ortho-テトラヒドロフタル酸、フマル酸、マレイン酸、またはこれらの対応する無水物、
ii) 一つ以上の多価アルコール、たとえばグリコール、トリメチロールエタン(trimethylolethane)、ペンタエリスリトール、ソルビトール、など、および
iii) 一つ以上の脂肪酸、たとえば亜麻仁油、キリ油またはトールオイル脂肪酸。
このような酸化硬化性成分は、本発明に係るインキ内に、好ましくは印刷用インキ組成物の全重量の20から50重量%の間の量、もっとも好ましくは30から45重量%の間の量で存在する。
UV硬化性物質は、UV硬化性成分として有用であり、たとえば、アミノアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、自己光開始性オリゴマーアクリレート、デンドリマーアクリレート、およびこれらの混合物のような、アクリル酸モノマー、オリゴマーまたはポリマーよりなる群から選択することができる。
本発明の凹版印刷用インキは、さらに少なくとも一つの乾燥剤を含み、これはたとえば、酸化重合触媒であって、たとえばコバルト(2+)、バナジル(2+)、マンガン(2+)またはセリウム(3+)のような、多価の金属カチオンを有する長鎖脂肪酸の塩であり得る。前記種類の塩は油溶性であり、したがって脂肪酸アルキル系インキと相溶性である。インキは、さらに深部の硬化を向上させるために、補助乾燥剤としてカルシウムおよび/またはジルコニウムおよび/またはセリウムのセッケンを含む。乾燥剤は通常、印刷用インキ組成物の全重量の5重量%以下、好ましくは1から3重量%の量で存在する。
本発明の凹版印刷用インキは、さらに、UV硬化性成分の重合反応を開始するための、少なくとも一つの光開始剤を含む。光開始剤は、通常、印刷用インキ組成物の全重量の5重量%以下、好ましくは1から3重量%の量で存在する。適切な光開始剤は当業者に公知であり、たとえば、アセトフェノン型、ベンゾフェノン型、α−アミノケトン型、または好ましくはフォスフィンオキシド型である。適切な光開始剤の一つは、Ciba社のIrgacure 819である。
凹版印刷用インキ組成物は、さらに光開始剤安定剤(UV安定剤)を、印刷用インキ組成物の全重量の3%以下、好ましくは0.5〜3%、より好ましくは1.5%含む。
本発明者らは、さらに、一方で、伝統的な凹版印刷用インキにおいて“裏移り”を減少させるとして知られている可溶性ワックス、および、他方で、UV硬化性アクリル酸塩が同時に存在することは、本発明の凹版印刷用インキを印刷操作の直後にUV照射した場合、インキの“裏移り”を劇的で予想できない程度に防止する相乗的効果をもたらすことを見出した。
本発明の凹版印刷用インキは、したがって、さらに、モンタンワックス系物質、たとえば精製モンタンワックス、モンタン酸、モンタンアミド、またはモンタンエステル、変性またはけん化モンタンワックス、またはカルナバワックス、または他の同様の合成長鎖エステルワックスまたはこれらの混合物のような、少なくとも一つの可溶性ワックスを含む。可溶性ワックスは、本発明の凹版印刷用インキ中に、印刷用インキ組成物の全重量の10重量%以下、好ましくは1から10重量%の間、より好ましくは1から5重量%の間、さらにより好ましくは2から5重量%の間の量が存在する。
本発明の中において、可溶性ワックスは、ワックスまたはワックス混合物で、純製品の融点または融解範囲が、50から120℃の間、好ましくは55から100℃の間、より好ましくは60から85℃の間のものに言及する。印刷用インキ組成物中、ワックスの対応する融点または融解範囲は、他の成分の存在のため低くなる。
凹版印刷用インキは、さらにインキの色を与える顔料、たとえば粘度調節のための充填剤、乳化剤、溶媒、およびセキュリティまたは法医学的目的のための特別な添加剤および/またはマーカーなどの他の成分を含む。
発明の詳細な説明
本発明の凹版印刷用インキは、少なくとも一つの酸化硬化性主要物質を、印刷用インキ組成物の全重量の20から50重量%の間の量と、少なくとも一つのUV硬化性物質を、印刷用インキ組成物の全重量の2から15重量%の間の量と、少なくとも一つの酸化重合型ドライヤーと、少なくとも一つの光開始剤と、および少なくとも一つの可溶性ワックスを、印刷用インキ組成物の全重量の10重量%以下含む。任意で顔料、充填剤、添加剤および溶媒、およびUV硬化部分の安定剤が存在してもよい。
酸化硬化性成分は、アルキド樹脂、および、合成または天然由来の変性アルキド樹脂、特にフェノール変性アルキド樹脂、エポキシ変性アルキド樹脂、ウレタン変性アルキド樹脂、シリコーン変性アルキド樹脂、アクリル変性アルキド樹脂、ビニル変性アルキド樹脂、中和酸アルキド、および乾性植物油よりなる群から選択することができる。典型的な合成由来の酸化硬化性物質は、一つ以上のカルボン酸または酸誘導体、たとえば無水物および/またはそれらの水素添加同等物、および一つ以上の天然由来の不飽和脂肪酸で一つ以上のポリオールを有するもの、たとえばエチレングリコール、グリセロール、ペンタエリスリトールなど、の混合物のエステル化によって得られたアルキド樹脂である。このようなアルキド樹脂の例は、EP 0 340 163 B1に開示されており、関係する内容、特に実施例IIおよびIIIを、本明細書は引用して組み入れる。
酸化硬化性物質は、印刷用インキ組成物の全重量の20から50重量%、好ましくは25から40重量%、およびもっとも好ましくは30から35重量%の間の量で存在する。
乾燥剤(ドライヤー)、たとえば酸化重合触媒を、空気中の酸素の影響下でアルキドの深部硬化を促進するために加える。前記ドライヤーは、典型的にオイル系印刷用インキ媒体に可溶な遷移金属塩に基づく。番号が23から29の化学元素のイオンは、特定の他の化学元素と同様に、潜在的にドライヤーに有用である。特に好ましいものは、カルボン酸コバルトおよびカルボン酸マンガンの組み合わせ、またはカルボン酸コバルト、カルボン酸マンガンおよびカルボン酸ジルコニウムの組み合わせであり、前記カルボン酸塩は長鎖カルボン酸アニオンである。特に好ましくは、炭化水素溶媒中のオクチル酸コバルト(II)、オクチル酸マンガン(II)およびオクチル酸ジルコン(IV)である。他の適切なドライヤーは、同じ出願人の、ともに係属中の特許出願EP07112020.8に開示されている。ドライヤーは、印刷用インキ組成物の全重量の5重量%以下、好ましくは0.5〜5重量%、およびより好ましくは1から3重量%の量が存在する。
UV硬化性成分は、好ましくはアクリル酸塩、モノマーまたは好ましくはオリゴマーまたはポリマーである。前記アクリル酸塩は、アミノアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、自己光開始性オリゴマーアクリレート、デンドリマーアクリレート、およびこれらの混合物よりなる群から選択される。適切なUV硬化性成分の例を、表1に示す。
Figure 0005380697
UV硬化性成分は、好ましくは、印刷用インキ組成物の全重量の2から15重量%、好ましくは4から8重量%、もっとも好ましくは5から7重量%の量が存在する。
本発明の凹版印刷用インキは、さらに少なくとも一つの光開始剤を含む。前記光開始剤は、典型的に、印刷用インキ組成物の全重量の5重量%以下、好ましくは0.5から5重量%、より好ましくは1から3重量%、およびもっとも好ましくは1から2重量%が存在する。
適切な光開始剤は、α−アミノケトン(たとえば、Irgacure 369、Irgacure 907)、α−ヒドロキシケトン(たとえば、Irgacure 2959)、フォスフィンオキシド(たとえば、Irgacure 819)、チオキサントン(たとえば、ITX)、オリゴマーチオキサントン(たとえば、Genopol TX-1)、オリゴマーアミノ安息香酸(たとえば、Genopol AB-1)、オリゴマーベンゾフェノン(たとえば、Genopol BP-1)よりなる群から選択できる。これらの種類の光開始剤は、当業者に公知であり、これらはUV照射によって遊離ラジカルを生み、アクリル酸塩のようなUV硬化性成分のラジカル重合反応を開始させる。
本発明を実施するのに適切な可溶性ワックスは、精製モンタンワックス、モンタン酸、モンタンアミド、モンタンエステル、または変性またはけん化モンタンワックス、カルナバワックス、長鎖エステルワックス、およびこれらの混合物よりなる群から選択することができる。適切なワックスの例を表2に示す。本発明を実施するのに適切な可溶性ワックスの融点または融解範囲は、50から120℃の間、好ましくは55から100℃の間、より好ましくは60から85℃の間である。
Figure 0005380697
*示された融点は、純ワックスの供給者によって提供されている。
リコワックス(Licowax)はクラリアント社から供給される。
PrintwaxはToglizのDEUREX GmbH社から供給される。
パラフィン、ポリプロピレン、ポリエチレンアミンまたはPETワックスなどのような他の種類のワックスを、本発明の印刷用インキ組成物に、印刷直後のUV照射下の可溶性ワックスおよびアクリレートの同時存在によって示される裏移りに対する相乗効果を阻害することなく、さらに含めることができる。これらは、当業者に公知なように、凹版印刷用インキの他の特性、たとえば耐摩耗性またはレオロジー挙動、を調節するために使用することができる。
本発明の更なる観点において、光開始剤安定剤(UV安定剤)もまたインキに含めることができる。このような光開始剤安定剤は当業者に公知である。有用な安定剤は、たとえばKromachem社製のFlorstab UV-1、およびRahn社製のGenorad 16である。
前記光開始剤安定剤は、印刷用インキの全重量の、3%以下、好ましくは0.5から3%、より好ましくは1から2%の量、もっとも好ましくは1.5%の量含まれる。
UV安定剤の存在は、印刷プロセスの前、および放射線硬化前のインキの調製または取り扱い中の早期重合の防止に役立つ。さらに、UV安定剤は、印刷用インキに、より長い保管期間を与える。
本発明の凹版印刷用インキは、さらに顔料、フィラー、および無機溶媒を含むことができる。凹版印刷用インキ組成物の顔料含有量は、一般的に、印刷用インキの全重量の3から30%の間の量、より一般的には5から15%の間の量である。凹版印刷用インキの使用に適切な顔料は、当業者に公知である。
本発明のさらなる観点において、印刷用インキ組成物中の充填剤含有量は、印刷用インキの全重量の5から50%とすることができる。充填剤はたとえば天然由来である、チョーク、カオリン、剥離マイカ、またはタルクなど、または合成由来の、沈降炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、アエロジル、二酸化チタンなど、またはこれらのいくつかの混合物である。
本発明を具体化するための適切な溶媒は、直鎖または分枝有機炭化水素溶媒で、鎖長がC10からC15であって、沸点が180から290℃であり、PKW 1/3、PKW 4/7 AF、PKWF 6/9 neuまたはPKW 6/9 AF(たとえばHalterman社製)、および脂肪酸エステルなどである。含酸素または極性溶媒、たとえばグリコールエステル、を補助溶媒として加えることができる。
インキの粘度を無機溶媒および添加剤、たとえばアエロジルを用いて、コーンプレートジオメトリー上で1000s-1および40℃で測定した値が、約1から40Pa・s、好ましくは約3から25Pa・s、より好ましくは6から15Pa・sとなるように調節する。
本発明の凹版印刷用インキは、好ましくは下記の工程を含む以下のプロセスで準備される。
a)好ましくは3本ロールミルで、少なくとも一つのアルキド樹脂のような酸化重合硬化性物質と、少なくとも一つのアクリル酸塩のようなUV硬化性物質と、少なくとも一つの可溶性ワックスと、任意で充填剤および溶媒とを、均一な分散系を得るために、一緒にすりつぶす工程と、
b)好ましくは3本ロールミルで、少なくとも一つのアルキド樹脂のような酸化重合硬化性物質と、少なくとも一つの顔料と、任意で充填剤および溶媒とを、均一な分散系を得るために、一緒にすりつぶす工程と、
c)工程a)の分散系と、工程b)の分散系と、酸化型ドライヤー(乾燥剤)と、光開始剤と、任意で光開始剤安定剤とを、本発明の印刷用インキを得るために、一緒に混合してすりつぶす工程。
UV硬化性アクリル酸塩および顔料とのそれぞれのもっとも優れた相溶性を確保するために、工程a)でアルキド樹脂のような、第一の酸化重合硬化性物質を用い、工程b)でアルキド樹脂のような、第2の異なる酸化重合硬化性物質を用いることができる。
印刷用インキ成分の混合中に、温度が50℃を超えないように注意を払わなければならない。なぜなら、アクリル酸成分のようなUV硬化性成分は、早期重合反応を起こし、インキがさらなる適用に役立たなくなるからである。この理由のため、インキ成分の混合は、ボールミル混合装置よりも、オープン3本ロールシステムで行うことが好ましい。
当業者に理解されるように、本発明に係るインキの製造は、示されたプロセスに制限されるものではないが、示された方法は印刷用インキの調節できない加熱を防止し、そのため、インキ製造ステップ中のアクリル酸成分の早期および調節できない重合に対するかなりの保証を提供することができる。
本発明者らは、凹版印刷用インキによって示される“裏移り”と、凝集力または結合力とも呼ばれることもあり、適用されたコーティング層の分離(フィルム分解)に必要である力と考えられうる、該インキの内部構造特性との内在的関係が存在することを発見した。
複雑動的係数G*は、インキの前記凝集力のための測定であり、以下のように定義される:
*=G′+iG′′
ここで、G′は弾性係数(貯蔵係数とも呼ぶ)、およびG′′は塑性または粘性係数(損失係数とも呼ぶ)である。
本発明者らは驚くべきことに、可溶性ワックスと適度な量のUV硬化性アクリル酸塩オリゴマーが同時に存在することは、温度サイクリングに続いて、インキをUV光に曝した後のG*を非常に上昇させることを見出した。換言すると、インキの内部凝集力の上昇は、インキの“裏移り”傾向を非常に減少させるという結果につながる。
可溶性ワックスおよびUV硬化性成分とが同時に存在するため、インキの温度サイクリングを含む印刷操作に続いて、印刷された本発明の凹版インキをUV光で照射した後、“裏移り”はもはや観察されず、これはUV照射されたUV硬化性インキのようであった。UV硬化性インキと比較して、本発明のインキは、しかしながら、UV照射後には“乾燥”せず、続く数時間および数日の間の酸化重合を通じてのみ乾燥する。本発明のインキは、主要な部分として、良好な深部の乾燥および長期の機械抵抗および耐化学性を有する酸化硬化性凹版インキのままであり、それは、脂肪性アルキド樹脂の印刷のために設計されたゴム部品を備え、UV照射ユニットが印刷プレス上に存在する、標準的な印刷装置を用いて印刷できる。
ここでUV放射は、伝統的な水銀UVランプ、エレクトロンレス(electron-less)電球ランプ、パルスUVランプ、UV光発光ダイオード(UV-LED's)などのような、UV−A、UV−Bおよび/またはUV−C放射可能なものによって発生させることができる。
本発明に係る凹版印刷用インキを用いた凹版印刷の方法は、a)インキを基板上に凹版印刷し、ここでインキの温度を室温から印刷版の温度、そして室温に戻すサイクリングを行う工程と、b)印刷操作後に印刷後の書類をUV放射下に置く工程と、c)印刷されたインキを酸化硬化させるために、印刷後の書類を数日間保管する工程とを含む。
本発明によれば、室温とは25℃を意味する。印刷版の温度は、上述の通り、典型的には80℃であるが、特定のインキでは50℃の低さであり得る。
開示された凹版インキの特徴は、標準的な凹版プレスを、より効率的および多用途性に稼働させる印刷業者に、素晴らしい利点をもたらす。これらの改善点は、可溶性ワックスおよびUV硬化性アクリル酸塩の両者が少量入った、印刷されたインキの“裏移り”蛍光への相乗効果を通じてもたらされる。
本発明は、ここで、非制限的な例および図面を参照して、より詳細に説明される。
図1は、温度サイクリング(25℃−80℃−25℃)後に測定された、実験的に測定された複雑動的係数(G*、Pa)の、先行技術の4つの異なる凹版インキで、それぞれ可溶性ワックス成分を有しないもの、および、有するものの、実験的に測定された“裏移り”抵抗値(以下に示される方法によって、1(悪い)から6(優)の間の実験的尺度で決定される)に対するプロットを示す。 図2a−cは、下記の実施例1および比較例1から3の印刷後の裏移りを防止するための、凹版インキ中の可溶性ワックスおよびUV硬化性アクリル酸塩の同時存在の相乗効果を示す。詳細には、図2aは、実験的に測定された裏移り値、対、複雑動的係数G*=G′+iG′′[Pa、絶対値として]のプロットを示す。 図2bは、裏移り値、対、弾性成分G′[G*の実体部分、貯蔵係数とも呼ぶ]のプロットを示す。 図2cは、裏移り値、対、塑性または粘性成分G′′[G*の虚数部分、損失係数とも呼ぶ]のプロットを示す。 図3は、インキの裏移りおよび乾燥特性を評価するために用いた、凹版印刷試験画像を示す(図4a−dに示す)。 図4a−dは、実施例1および比較例1に例示されるように、UV硬化性成分及び可溶性ワックスの裏移り特性に対する共同的効果を示す。
実施例1:本発明のインキ(“変性 30”)
本発明に係る凹版インキを以下のように調製した(量は、最終インキ組成物に対する重量%で示す):
インキの第1成分を、下記の成分を混合して、当業者に公知の、伝統的な3本ロールミル(Buhler社製 SDY-200)で、均一な分散液を形成するためにすりつぶして調製した:
Figure 0005380697
インキの第2成分を、下記の成分を混合して、3本ロールミル(Buhler社製 SDY-200)で、均一な分散液を形成するためにすりつぶして調製した:
Figure 0005380697
最終インキを、上記のパートIおよびパートIIを、下記の追加成分とともに3本ロールミルで混合して調製した:
Figure 0005380697
最終インキの粘度を、無機溶媒および添加剤、たとえばアエロジルを用いて、コーンプレートジオメトリー上で1000s-1および40℃で測定した値が、約1から40Pa・s、好ましくは約3から25Pa・s、より好ましくは約6から15Pa・sとなるように調節した。
比較例1:(“変性 30 ワックスなし”)
パートIで可溶性ワックスを加えない以外は、上記実施例1で記載されたようにインキを調整した。代わりに、無機充填剤(Specialty Minerals社製のSturcal L)の量を、可溶性ワックスの不足分を補うために、29.5重量%(最終インキ組成物に基づき)まで増やした。
比較例2:(“標準”)
UV硬化性樹脂が存在しない以外は、実施例1で示されたようにインキを調製した。
インキの第1成分を、下記の成分を混合して、3本ロールミルで、均一な分散液を形成するためにすりつぶして調製した(量は、最終インキ組成物に対する重量%で示す):
Figure 0005380697
インキの第2成分を、下記の成分を混合して、3本ロールミルで、均一な分散液を形成するためにすりつぶして調製した(パートIIのアルキド樹脂および充填剤の量を、最終インキ中のUV光開始剤およびUV安定剤の不足を補うために増やした):
Figure 0005380697
最終インキを、上記のパートIおよびパートIIを、下記の追加成分とともに3本ロールミルで混合して調製した:
Figure 0005380697
最終インキの粘度を、無機溶媒および添加剤、たとえばアエロジルを用いて、コーンプレートジオメトリー上で1000s-1および40℃で測定した値が、約1から40Pa・s、好ましくは約3から25Pa・s、より好ましくは約6から15Pa・sとなるように調節した。
比較例3:(“標準 ワックスなし”)
パートIで可溶性ワックスを加えない以外は、上記比較例2で記載されたようにインキを調整した。代わりに、無機充填剤(Specialty Minerals社製のSturcal L)の量を、可溶性ワックスの不足分を補うために、29.5重量%(最終インキ組成物に基づき)まで増やした。
測定
裏移り抵抗値を以下のように測定した:10枚の凹版印刷物を、細かい、中程度および深い彫刻を有する、標準的な加熱凹版プレートを用いて、例示されたインキを有する試験プレス上で、紙幣用用紙(175×145mm)上に作製した。10枚の印刷されたシートを、それぞれの上に、それらの間に10枚の白紙の間紙を挟んで積み重ね、2kgのおもりを、積み重ねた山の上に置いた。24時間後、山を分離し、間紙への裏移りを、統計的基礎において、それぞれの間紙を参照裏移りシートの尺度と比較して評価した。1(悪い)から6(優)までの値は各シートに帰属し、10枚のシートの平均値を、問題のインキの裏移りの代表とみなした。
参照裏移りシートは、完全転写(裏移り値1)から転写全くなし(裏移り値6)までの、測光目盛りの線系列上の標準凹版画像(図3)を示す。実用的なインキの裏移り値は、6付近でなければならない。
問題のインキの複雑動的係数G*(Paにおいて)をTA Instruments社製のAR1000レオメータで、25℃、コーン4度、直径2cm、周波数1Hzの振動モードで測定した。
図1には、実験的に測定された複雑動的係数(G*、Pa)の、裏移り抵抗値(上記で測定される)に対するプロットが示される。図1は、比較例2(“標準”)および比較例3(“標準 ワックスなし”)に示されるように処方された凹版インキで、可溶性ワックスの種類および量、および溶媒内容に関して変化させたものに言及する。これらのインキはUV硬化性成分を含有しない。左側の4つのインキは、比較例3(たとえば、ワックスなしのインキ)に対応する。グラフの右側の4つのインキは比較例2に対応し、異なる種類および濃度の可溶性ワックスを含む。第1セットの複雑動的係数値を、新たに調製されたインキ(さもなければ上述の通り)(図1の三角点)で測定した。第2セットの裏移り抵抗値および複雑動的係数値を、同じインキを、インキの温度を80℃まで上昇させ(たとえば印刷版の温度)、再び25℃まで冷却する温度サイクルの後で測定した。四角点のみが、一組の(動的係数/裏移り)値を示し、温度サイクルがされていないインキに対応する三角点は、印刷前の対応するインキの動的係数のみを示し、裏移り抵抗値に関して四角点から推定された。裏移り値を測定するために、インキは顕著に印刷されなければならず、そのため温度サイクリングを通過することが必須である。
図1を見ると、可溶性ワックスなしのインキ(左側の点)は、温度サイクリング後にG*が僅かにだけ上昇していることがわかる。これらのインキは、印刷後に粘着性を維持し、これに対応して、これらの低い裏移り抵抗値で示されるように、裏移りを生じる。可溶性ワックスを有するインキ(右側の点)は、温度サイクリング後に大きなG*の上昇を示す。これらのインキは印刷後すぐに粘着性を失い、これに対応して、これらの高い裏移り値で示されるように、裏移りを防止する。
加熱/冷却サイクル後の複雑動的係数の観察された上昇は、印刷後のインキ内部の構造変化の指標である。温度サイクリング後に、複雑動的係数G*の大きな上昇を示すインキ(たとえば、可溶性ワックスを含むグラフの右側のインキのグループ)は、複雑動的係数の小さな上昇を示すインキ(たとえば、可溶性ワックスを含まないグラフの左側のインキのグループ)に比べて、高い裏移り抵抗値を有することがわかる。
図2は、印刷後の裏移りを防止するための、凹版インキ中の可溶性ワックスおよびUV硬化性アクリル酸塩の組み合わせの相乗効果を示す。実施例1および比較例1から3のインキを以下のように適用した:問題のインキの15マイクロメートル厚みの層を、SHINNアプリケーターを用いて、80℃に予熱されたガラスプレート上に適用した。ガラスプレートをさらに10秒間オーブン内で80℃に置き、その後再び25℃に冷却した。示された場合は、ガラスプレートをUV照射(1パス、50m/min、150W/cm、2UVランプ)、この処理を“2×100UV”と指定する、にその後曝した。続いて、インキ層をガラスプレートからスパチュラを用いて引っ掻いて剥がし、AR1000レオメータで測定した。
図2aは、実験的に測定された裏移り値、対、複雑動的係数G*[絶対値としてのPaにおける]のプロットを示す。
図2bは、裏移り値、対、測定された複雑動的係数G*の弾性成分G′[G*の実体部分、貯蔵係数とも呼ぶ]のプロットを示す。
図2cは、裏移り値、対、測定された複雑動的係数G*の塑性または粘性成分G′′[G*の虚数部分、損失係数とも呼ぶ]のプロットを示す。
実施例1のインキ、ワックスおよびUV硬化性アクリル酸塩を含み、上記の温度サイクル、続いてUV照射を受けたもの(“変性 30+2×100 UV”)、は、すべての調査されたインキの中で、もっとも高い複雑動的係数G*値を有し、もっとも良好な裏移り抵抗値ももたらした。裏移り特性は、さらに同様に複雑動的係数の両方の成分、たとえば弾性係数(G′)および塑性係数(G′′)と関係し、後者は複雑動的係数へのより重要な寄与因子である。特に、上記の温度サイクル後の裏移り抵抗値の予期し得ない上昇が、実施例1のインキで観察された。この上昇は、他の試験されたインキの裏移り抵抗値の関連する上昇をはるかに超えた。
図2aから推測されるように、本発明のインキのUV照射は複雑動的係数G*の2倍以上の上昇をもたらす。ワックスなしの同じインキにおいても、複雑動的係数G*の約2倍の上昇が観察された。一方、ワックスあり、またはなしの標準インキでは、UV照射は複雑動的係数G*に何ら顕著な効果を示さなかった。
ワックスおよびUV硬化性アクリル酸塩の裏移り防止における共同的効果を以下のように評価した:図3は、インキの裏移りおよび乾燥特性を評価するために用いた、凹版印刷試験画像を示す。この試験用凹版プレートは、浅い(顔および髪の部分の細かい線のパターン)彫刻から、中程度の深さ(帽子の部分)の彫刻、深い(SICPAギロシェ)彫刻までに変化する、異なる彫刻深さを有する。深い彫刻は、裏移り特性を評価するために印刷された画像上の、もっとも精度が高い部分を生じる。後者を、紙のシートで覆われた新しい印刷物に24時間2キロのおもしをして、その後印刷物から紙のシートを分離して評価した。裏移り画像は印刷画像と反転している。
図4a−dは、UV成分及び可溶性ワックスのインキの裏移り特性に対する共同的効果を示す。実施例1のインキは、図4bおよび4dの事例に用いられ、一方、図4aおよび4cの事例には、比較例1(たとえば、可溶性ワックス(カルナバワックス)が5%無機充填剤に置換された)のインキが用いられた。図4cおよび4dに示された事例では、上述のUV照射が行われ、一方、図4aおよび4bに示された事例では、UV照射は行われなかった。
UV照射なしおよびワックスなしの時は(図4a、比較例1)、裏移りの記録が悪かった(5.44)。可溶性ワックスの存在は(図4b、実施例1)、すでに裏移りの記録を非常に向上させた(5.60)。ワックスなしでのUV照射は(図4c、比較例1)、同様の結果となった(5.66)。可溶性ワックスが存在し、UV照射後では、裏移りは完全になかった(図4d、実施例1)(記録5.90)。

Claims (15)

  1. 凹版印刷用インキ組成物であって、アルキド樹脂、および、合成または天然由来の変性アルキド樹脂よりなる群から選択される少なくとも一つの酸化硬化性主要物質を、印刷用インキ組成物の全重量の20から50重量%の間の量と、少なくとも一つのUV硬化性アクリレートを、印刷用インキ組成物の全重量の2から15重量%の間の量と、融点または融解範囲が、50から120℃の間である少なくとも一つの可溶性ワックスを、印刷用インキ組成物の全重量の10重量%以下と、少なくとも一つの酸化重合型ドライヤーと、少なくとも一つの光開始剤とを含む、凹版印刷用インキ組成物。
  2. コーンプレートジオメトリー上で1000s−1および40℃で測定した粘度が、約1から40Pa・sの範囲である、請求項1に記載の凹版印刷用インキ組成物。
  3. 前記酸化硬化性アルキド樹脂、および、合成または天然由来の変性アルキド樹脂は、フェノール変性アルキド樹脂、エポキシ変性アルキド樹脂、ウレタン変性アルキド樹脂、シリコーン変性アルキド樹脂、アクリル変性アルキド樹脂、およびビニル変性アルキド樹脂、および中和酸アルキドよりなる群から選択される、請求項1または2に記載の凹版印刷用インキ組成物。
  4. 前記UV硬化性アクリレートは、アミノアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、自己光開始性オリゴマーアクリレート、デンドリマーアクリレート、およびこれらの混合物よりなる群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の凹版印刷用インキ組成物。
  5. 前記可溶性ワックスは、精製モンタンワックス、モンタン酸、モンタンアミド、モンタンエステル、または変性またはけん化モンタンワックス、カルナバワックス、長鎖エステルワックス、およびこれらの混合物よりなる群から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の凹版印刷用インキ組成物。
  6. 前記酸化重合型ドライヤーが遷移金属塩および印刷用インキに可溶性の他の化学元素を基礎とする、請求項1〜5のいずれかに記載の凹版印刷用インキ組成物。
  7. 前記ドライヤーが、前記印刷用インキ組成物の全重量の、5重量%以下で存在する、請求項1〜6のいずれかに記載の凹版印刷用インキ組成物。
  8. 前記光開始剤が、α−アミノケトン、α−ヒドロキシケトン、フォスフィンオキシド、チオキサントン、オリゴマーチオキサントン、オリゴマーアミノ安息香酸、およびオリゴマーベンゾフェノンよりなる群から選ばれる、請求項1〜7のいずれかに記載の凹版印刷用インキ組成物。
  9. 前記光開始剤が、前記印刷用インキの重量の5%以下で、前記インキ内に含まれる、請求項8に記載の凹版印刷用インキ組成物。
  10. さらに、光開始剤安定剤を、前記印刷用インキ組成物の全重量の、3%以下の量で含む、請求項1〜9のいずれかに記載の凹版印刷用インキ組成物。
  11. a)3本ロールミルで、アルキド樹脂、および、合成または天然由来の変性アルキド樹脂よりなる群から選択される少なくとも一つの酸化重合硬化性物質と、少なくとも一つのUV硬化性アクリレートと、融点または融解範囲が、50から120℃の間である少なくとも一つの可溶性ワックスとを、均一な分散系を得るために、一緒にすりつぶす工程と、
    b)3本ロールミルで、アルキド樹脂、および、合成または天然由来の変性アルキド樹脂よりなる群から選択される少なくとも一つの酸化重合硬化性物質と、少なくとも一つの顔料とを、均一な分散系を得るために、一緒にすりつぶす工程と、
    c)工程a)の分散系と、工程b)の分散系と、酸化型ドライヤーと、光開始剤とを、本発明の印刷用インキを得るために、一緒に混合してすりつぶす工程とを含み、
    前記酸化硬化性主要物質が、前記印刷用インキの全重量の20から50重量%の間の量で存在し、前記UV硬化性物質が、前記印刷用インキの全重量の2から15重量%の間の量で存在し、前記可溶性ワックスが、前記印刷用インキの全重量の10重量%以下で存在する、請求項1から10のいずれかに記載の凹版印刷用インキ組成物の製造プロセス。
  12. UV硬化性アクリレートおよび顔料との相溶性をそれぞれ確保するために、工程a)で第一の酸化重合硬化性アルキド樹脂を用い、工程b)で第2の異なる酸化重合硬化性アルキド樹脂を用いる、請求項11に記載のプロセス。
  13. セキュリティー書類または価値のある書類、特にパスポート、身分証明書類、運転免許、紙幣、株券、税のバンデロール(tax banderole)、印紙、およびセキュリティラベルを印刷するための、請求項1から10のいずれかに記載の凹版印刷用インキ組成物の使用。
  14. a)インキの温度を室温から印刷版温度および室温に戻して循環させて、前記インキを基板に凹版印刷する工程と、
    b)前記印刷操作の後に続いて、印刷された書類にUV放射を受けさせる工程と、
    c)酸化硬化を可能とするために、前記印刷された書類を数日間保管する工程とを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の凹版印刷用インキを使用する凹版印刷方法。
  15. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の凹版印刷用インキ組成物で作製された印、好ましくは請求項14に記載の方法で作製された印を含む、セキュリティ書類または価値のある書類、特にパスポート、身分証明書、運転免許、紙幣、株券、税のバンデロール(tax banderole)、印紙、またはセキュリティラベル。
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