JP5380615B1 - キャリア付銅箔、それを用いた銅張積層板、プリント配線板、プリント回路板、及び、プリント配線板の製造方法 - Google Patents
キャリア付銅箔、それを用いた銅張積層板、プリント配線板、プリント回路板、及び、プリント配線板の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】銅箔キャリアと、銅箔キャリア上に積層された中間層と、中間層上に積層された極薄銅層とを備えたキャリア付銅箔であって、銅箔キャリアの厚みと銅箔キャリアの外側表面の残留応力との積、及び、極薄銅層の厚みと極薄銅層の外側表面の残留応力との積の差が、残留応力が収縮方向のとき正の値、引張方向のとき負の値としたときに、−150(μm・MPa)以上500(μm・MPa)以下であるキャリア付銅箔。
【選択図】なし
Description
本発明に用いることのできるキャリアとしては銅箔を使用する。キャリアは典型的には圧延銅箔や電解銅箔の形態で提供される。一般的には、電解銅箔は硫酸銅めっき浴からチタンやステンレス鋼のドラム上に銅を電解析出して製造され、圧延銅箔は圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。銅箔の材料としてはタフピッチ銅や無酸素銅といった高純度の銅の他、例えばSn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMg等を添加した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン系銅合金のような銅合金も使用可能である。なお、本明細書において用語「銅箔」を単独で用いたときには銅合金箔も含むものとする。
銅箔キャリア上には中間層を設ける。中間層は、銅箔キャリア上に、ニッケル層及びクロメート層がこの順で積層されて構成することができる。ニッケルと銅との接着力はクロムと銅の接着力よりも高いので、極薄銅層を剥離する際に、極薄銅層とクロムとの界面で剥離するようになる。また、中間層のニッケルにはキャリアから銅成分が極薄銅層へと拡散していくのを防ぐバリア効果が期待される。
キャリアとして電解銅箔を使用する場合には、ピンホールを減少させる観点からシャイニー面に中間層を設けることが好ましい。
中間層の上には極薄銅層を設ける。その前に極薄銅層のピンホールを低減させるために中間層のクロム層上に銅−リン合金によるストライクめっきを行ってもよい。ストライクめっきの処理液にはピロリン酸銅めっき液などを用いることができる。このように、銅−リン合金によるストライクめっきを行ったキャリア付銅箔は、中間層表面と極薄銅層表面の両方にリンが存在することとなる。このため、中間層/極薄銅層間で剥離させたとき、中間層及び極薄銅層の表面からリンが検出される。また、ストライクめっきで形成されためっき層は薄くなるため、FIBやTEM等で断面観察をし、中間層上の銅リンめっき層の厚みが0.1μm以下である場合にはストライクめっきであると判定することができる。
中間層の上には極薄銅層を設ける。極薄銅層は、硫酸銅、ピロリン酸銅、スルファミン酸銅、シアン化銅等の電解浴を利用した電気めっきにより形成することができ、一般的な電解銅箔で使用され、高電流密度での銅箔形成が可能であることから硫酸銅浴が好ましい。極薄銅層の厚みは特に制限はないが、一般的にはキャリアよりも薄く、例えば12μm以下、好ましくは1μm以上10μm以下である。典型的には0.5μm以上12μm以下であり、より典型的には2μm以上5μm以下である。
極薄銅層の表面には、例えば絶縁基板との密着性を良好にすること等のために粗化処理を施すことで粗化処理層を設けてもよい。粗化処理は、例えば、銅又は銅合金で粗化粒子を形成することにより行うことができる。粗化処理は微細なものであっても良い。粗化処理層は、銅、ニッケル、りん、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム、コバルト及び亜鉛からなる群から選択されたいずれかの単体又はいずれか1種以上を含む合金からなる層などであってもよい。また、銅又は銅合金で粗化粒子を形成した後、更にニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で二次粒子や三次粒子を設ける粗化処理を行うこともできる。その後に、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で耐熱層または防錆層を形成しても良く、更にその表面にクロメート処理、シランカップリング処理などの処理を施してもよい。または粗化処理を行わずに、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で耐熱層又は防錆層を形成し、さらにその表面にクロメート処理、シランカップリング処理などの処理を施してもよい。すなわち、粗化処理層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を形成してもよく、極薄銅層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を形成してもよい。なお、上述の耐熱層、防錆層、クロメート処理層、シランカップリング処理層はそれぞれ複数の層で形成されてもよい(例えば2層以上、3層以上など)。
このようにして、銅箔キャリアと、銅箔キャリア上に形成された中間層と、中間層の上に積層された極薄銅層とを備えたキャリア付銅箔が製造される。キャリア付銅箔自体の使用方法は当業者に周知であるが、例えば極薄銅層の表面を紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の絶縁基板に貼り合わせて熱圧着後にキャリアを剥がし、絶縁基板に接着した極薄銅層を目的とする導体パターンにエッチングし、最終的にプリント配線板を製造することができる。本発明に係るキャリア付銅箔の場合、剥離箇所は主として中間層と極薄銅層の界面である。また、更に、プリント配線板に電子部品類を搭載することで、プリント回路板が完成する。以下に、本発明に係るキャリア付き銅箔を用いたプリント配線板の製造工程の例を幾つか示す。
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチングにより除去することにより露出した前記樹脂にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチングにより除去することにより露出した前記樹脂の表面について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層及び極薄銅層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層表面にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストを設けた後に、電解めっきにより回路を形成する工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストを除去することにより露出した極薄銅層をフラッシュエッチングにより除去する工程、
を含む。
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層及び極薄銅層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について触媒核を付与する工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記触媒核を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
前記極薄銅層および前記触媒核を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して露出した前記絶縁基板表面に、ソルダレジストまたはメッキレジストを設ける工程、
前記ソルダレジストまたはメッキレジストが設けられていない領域に無電解めっき層を設ける工程、
を含む。
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の表面に、電解めっき層を設ける工程、
前記電解めっき層または/および前記極薄銅層の表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記無電解めっき層および前記電解めっき層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
を含む。
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の表面にマスクを形成する工程、
マスクが形成されていない前記無電解めっき層の表面に電解めっき層を設ける工程、
前記電解めっき層または/および前記極薄銅層の表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記無電解めっき層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
を含む。
1.キャリア付銅箔の製造
銅箔キャリアとして、表1に記載の厚さの長尺の電解銅箔(JX日鉱日石金属社製、JTC(製品名)、厚み12μm、18μm、70μm)及び圧延銅箔(JX日鉱日石金属社製、C1100(製品名)、厚み18μm)を用意した。
各銅箔は、キャリア付銅箔となった時に外側となる面の残留応力は−30MPa以上30MPa以下の範囲に調節した。ここで、残留応力が正の値の場合は収縮応力、負の値の場合は引張応力を表す。銅箔キャリアとして電解銅箔を用いる場合、電解浴組成と電解条件を最適化することで、表層の残留応力を、後述する極薄銅層外側表面の残留応力の範囲に合わせて任意の範囲に調節することができる。下記の電解浴組成及び電解条件を用いてステンレス鋼製の電解ドラム上に電解銅箔を製箔した。なお、電解液の流速を高くすると銅箔の残留応力は収縮方向に働く(収縮応力が働きやすい)傾向にあり、電解液の流速を低くすると銅箔の残留応力は引張方向に働く(引張応力が働きやすい)傾向にある。また、電流密度を高くすると銅箔の残留応力は収縮方向に働く(収縮応力が働きやすい)傾向にあり、電流密度を低くすると銅箔の残留応力は引張方向に働く(引張応力が働きやすい)傾向にある。また、電解液の添加剤(例えば、Clやニカワ等)を添加することによっても、残留応力を調整することができる。
Cu:80〜120g/L
H2SO4:80〜120g/L
Cl:20〜80mg/L(実施例5、比較例1)
ニカワ:0.1〜6.0mg/L(実施例1、2、5、6、7、8、比較例1)
液温:55〜65℃
電流密度:100A/dm2
電解液流速:1.5m/秒
この銅箔のシャイニー面に対して、以下の条件でロール・トウ・ロール型の連続ラインでキャリア表面及び極薄銅層側について順に以下の条件で表1に記載の中間層形成処理を行った。キャリア表面側と極薄銅層側との処理工程の間には、水洗及び酸洗を行った。ライン張力は、表1に記載のものとした。
硫酸ニッケル:250〜300g/L
塩化ニッケル:35〜45g/L
酢酸ニッケル:10〜20g/L
クエン酸三ナトリウム:15〜30g/L
光沢剤:サッカリン、ブチンジオール等
ドデシル硫酸ナトリウム:30〜100ppm
ZnSO4:0.05〜5g/L
pH:4〜6
浴温:50〜70℃
電流密度:3〜15A/dm2
硫酸ニッケル:250〜300g/L
塩化ニッケル:35〜45g/L
酢酸ニッケル:10〜20g/L
クエン酸三ナトリウム:15〜30g/L
光沢剤:サッカリン、ブチンジオール等
ドデシル硫酸ナトリウム:30〜100ppm
pH:4〜6
浴温:50〜70℃
電流密度:3〜15A/dm2
液組成:重クロム酸カリウム1〜10g/L、亜鉛0〜5g/L
pH:3〜4
液温:50〜60℃
電流密度:0.1〜2.6A/dm2
クーロン量:0.5〜30As/dm2
液組成:重クロム酸カリウム1〜10g/L、亜鉛0〜5g/L
pH:3〜4
液温:50〜60℃
浸漬時間:1〜20秒
・極薄銅層
銅濃度:30〜120g/L
H2SO4濃度:20〜120g/L
塩化物イオン濃度:20〜80mg/L
電解液温度:20〜80℃
電流密度:10〜100A/dm2
・粗化処理
Cu: 10〜20g/L
Co: 1〜10g/L
Ni: 1〜10g/L
pH: 1〜4
温度: 40〜50℃
電流密度Dk : 20〜30A/dm2
時間: 1〜5秒
Cu付着量:15〜40mg/dm2
Co付着量:100〜3000μg/dm2
Ni付着量:100〜1000μg/dm2
・防錆処理
Zn:0〜20g/L
Ni:0〜5g/L
pH:3.5
温度:40℃
電流密度Dk :0〜1.7A/dm2
時間:1秒
Zn付着量:5〜250μg/dm2
Ni付着量:5〜300μg/dm2
・クロメート処理
K2Cr2O7
(Na2Cr2O7或いはCrO3):2〜10g/L
NaOH或いはKOH:10〜50g/L
ZnO或いはZnSO47H2O:0.05〜10g/L
pH:7〜13
浴温:20〜80℃
電流密度 0.05〜5A/dm2
時間:5〜30秒
Cr付着量:10〜150μg/dm2
・シランカップリング処理
ビニルトリエトキシシラン水溶液
(ビニルトリエトキシシラン濃度:0.1〜1.4wt%)
pH:4〜5
時間:5〜30秒
比較例1は、銅箔キャリアの製箔電流密度を60A/dm2とし、中間層を形成せずに極薄銅層を形成した以外は、実施例2と同一の条件でキャリア付銅箔を製作した。比較例2、3はキャリアである圧延銅箔製造時の最終冷間圧延での圧延加工度をそれぞれ85%、70%とし、最終冷間圧延での最終パスの圧延加工度をそれぞれ10%、20%とし、最終冷間圧延の最終パスに使用した圧延ロールの直径をそれぞれ100mm、120mmとし、中間層として比較例2ではNiめっきを、比較例3ではNi-Znめっきと電解クロメート処理を行った以外は、実施例3と同一の条件でキャリア付銅箔を製作した。
上記のようにして得られたキャリア付銅箔について、以下の方法で各種の評価を実施した。結果を表1に示す。
FIB−SIMを用いて極薄銅層の断面を観察し、結晶粒を取り囲む最小円の直径を結晶粒径とし、観察視野に存在する全て結晶粒について測定を行った。(具体的には写真撮影を行って、当該写真に基づいて測定した。)なお、FIB−SIMを用いた極薄銅層の断面観察は、収束イオンビーム(FIB)で断面が露出するように加工し、この断面を走査イオン顕微鏡(SIM)で観察することにより行われる。そして、20個以上の結晶粒径の平均値を平均結晶粒径とした。観察視野に20個以上の結晶粒が存在しない場合には、結晶粒径の測定を行った結晶粒の数が20個以上となるまで観察視野を増やして測定を行った。なお、FIB−SIMを用いて極薄銅層の断面を観察する際の倍率は特に限定はされず、結晶粒を観察できる倍率であればよい。例えば、2500〜40000倍の倍率で結晶粒径を測定することができる。
ニッケル(Ni)付着量は、サンプルを濃度20質量%の硝酸で溶解してICP発光分析によって測定し、クロム(Cr)付着量、及び、亜鉛(Zn)付着量はサンプルを濃度7質量%の塩酸にて溶解して、原子吸光法により定量分析を行うことで測定した。
銅箔キャリア外側表面及び極薄銅層外側表面の残留応力は、X線回折法により測定した。この方法では、測定対象の銅層を構成する多数の結晶の格子面間隔測定値と、既知である無応力状態で測定された銅の格子面間隔及び銅の弾性定数及びポアソン比から、銅層表面の残留応力を求める。
本件では、残留応力の測定は株式会社リガク製X線回折装置RINT2100を用いて行った。回折角の校正は標準Si結晶を用いて行った。また、残留応力の計算は株式会社リガク製X線回折装置RINT2100に付属の計算ソフトを用いて、回折ピークトップの測定値を用いて行った。
X線の侵入深さは通常数μm〜10μm程度であるため、測定面表層からこの侵入深さ範囲でのX線減衰の影響を加味した平均的な格子面間隔及び残留応力が求められる。キャリア付銅箔において銅箔キャリア及び極薄銅層の厚みはX線侵入深さとほぼ同等かそれ以上であるから、測定された残留応力は銅箔キャリア及び極薄銅層の表層の残留応力を表すものと考えて差し支えない。なお、極薄銅層外側表面に粗化処理、耐熱処理、防錆処理、クロメート処理、シランカップリング処理などの表面処理を行った場合には、当該表面処理をした後に(当該表面処理層の上から)残留応力の測定を行った。また、銅箔キャリア外側表面に粗化処理、耐熱処理、防錆処理、クロメート処理、シランカップリング処理などの表面処理をした場合には、当該表面処理をした後に(当該表面処理層の上から)残留応力の測定を行うことが好ましい。
反り量は、キャリア付銅箔を10cm角のシート状に切り出して極薄銅層側を上にして水平面上に24時間以上静置した後、シート4隅角部の水平面からの浮き上がり高さの最大値を測定した。シート四隅角部が浮き上がらず、下方向に反っている場合、極薄銅層側を下にして置いてシート四隅角部の浮き上がり高さの最大値を測定した。
実施例1〜8は、銅箔キャリアの厚みと銅箔キャリアの外側表面の残留応力との積、及び、前記極薄銅層の厚みと極薄銅層の外側表面の残留応力との積の差が、いずれも−150(μm・MPa)以上500(μm・MPa)以下であった。このため、いずれも良好に銅箔の反りが抑制された。
比較例1〜3は、銅箔キャリアの厚みと銅箔キャリアの外側表面の残留応力との積、及び、前記極薄銅層の厚みと極薄銅層の外側表面の残留応力との積の差が、いずれも−150(μm・MPa)以上500(μm・MPa)以下の範囲外であった。このため、いずれも銅箔の反り量の最大値が10mmを超えており、銅箔の反りが抑制されていないことがわかる。
なお、実施例3のキャリア付銅箔について195℃で6時間加熱した後に残留応力の測定を行った。その結果、銅箔キャリアの外側表面の残留応力、極薄銅層の外側表面の残留応力共に0MPaとなった。そのため、銅箔キャリアの厚みと銅箔キャリアの外側表面の残留応力との積、及び、前記極薄銅層の厚みと極薄銅層の外側表面の残留応力との積の差は0MPaとなった。また、当該加熱後の極薄銅層の平均結晶粒径は16.1μmであった。
Claims (20)
- 銅箔キャリアと、銅箔キャリア上に積層された中間層と、中間層上に積層された極薄銅層とを備えたキャリア付銅箔であって、
前記銅箔キャリアの厚みと銅箔キャリアの外側表面の残留応力との積、及び、前記極薄銅層の厚みと極薄銅層の外側表面の残留応力との積の差が、残留応力が収縮方向のとき正の値、引張方向のとき負の値としたときに、−150(μm・MPa)以上500(μm・MPa)以下であり、前記極薄銅層の平均結晶粒径が15μm未満であるキャリア付銅箔。 - 銅箔キャリアと、銅箔キャリア上に積層された中間層と、中間層上に積層された極薄銅層とを備えたキャリア付銅箔であって、
前記銅箔キャリアの厚みと銅箔キャリアの外側表面の残留応力との積、及び、前記極薄銅層の厚みと極薄銅層の外側表面の残留応力との積の差が、残留応力が収縮方向のとき正の値、引張方向のとき負の値としたときに、−150(μm・MPa)以上500(μm・MPa)以下(0(μm・MPa)である場合を除く)であるキャリア付銅箔。 - 前記銅箔キャリアの厚みと銅箔キャリアの外側表面の残留応力との積、及び、前記極薄銅層の厚みと極薄銅層の外側表面の残留応力との積の差が、−100(μm・MPa)以上320(μm・MPa)以下(0(μm・MPa)である場合を除く)である請求項1又は2に記載のキャリア付銅箔。
- 前記銅箔キャリアの厚みと銅箔キャリアの外側表面の残留応力との積、及び、前記極薄銅層の厚みと極薄銅層の外側表面の残留応力との積の差が、−50(μm・MPa)以上320(μm・MPa)以下(0(μm・MPa)である場合を除く)である請求項3に記載のキャリア付銅箔。
- 前記銅箔キャリアが電解銅箔又は圧延銅箔からなる請求項1〜4のいずれかに記載のキャリア付銅箔。
- 前記中間層は、銅箔キャリアとの界面に接しているNi層と極薄銅層との界面に接しているCr層とで構成され、前記中間層におけるNiの付着量が1μg/dm2以上40000μg/dm2以下であり、前記中間層におけるCrの付着量が1μg/dm2以上100μg/dm2以下であり、前記中間層には更に1μg/dm2以上70μg/dm2以下の付着量でZnが存在する請求項1〜5のいずれかに記載のキャリア付銅箔。
- 前記極薄銅層の厚みが1μm以上10μm以下である請求項1〜6のいずれかに記載のキャリア付銅箔。
- 前記極薄銅層表面に粗化処理層を有する請求項1〜7のいずれかに記載のキャリア付銅箔。
- 前記粗化処理層の表面に、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する請求項8に記載のキャリア付銅箔。
- 前記防錆層が、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛から選択される1つ以上の元素を含む請求項9に記載のキャリア付銅箔。
- 前記防錆層が、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛から選択される1つ以上の元素からなる請求項9に記載のキャリア付銅箔。
- 前記粗化処理層の上に前記防錆層を有する請求項9〜11のいずれかに記載のキャリア付銅箔。
- 前記防錆層の上に前記クロメート処理層を有する請求項9〜12のいずれかに記載のキャリア付銅箔。
- 前記クロメート処理層の上に前記シランカップリング処理層を有する請求項9〜13のいずれかに記載のキャリア付銅箔。
- 前記極薄銅層の表面に、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する請求項1〜14のいずれかに記載のキャリア付銅箔。
- 前記キャリア付銅箔を10cm角のシート状に切り出して水平面上に静置した時のシート四隅角部の水平面からの浮き上がり高さの最大値が10mm以下である請求項1〜15のいずれかに記載のキャリア付銅箔。
- 請求項1〜16のいずれかに記載のキャリア付銅箔を用いて製造した銅張積層板。
- 請求項1〜16のいずれかに記載のキャリア付銅箔を用いて製造したプリント配線板。
- 請求項1〜16のいずれかに記載のキャリア付銅箔を用いて製造したプリント回路板。
- 請求項1〜16のいずれかに記載のキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔の銅箔キャリアを剥がす工程を経て銅張積層板を形成し、
その後、セミアディティブ法、サブトラクティブ法、パートリーアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法のいずれかの方法によって、回路を形成する工程を含むプリント配線板の製造方法。
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