まず、実施例1の拡底杭の構築装置の構成について説明する。
この実施例1の拡底杭の構築装置は、図1に示したように、円筒状のケーシング2と、このケーシング2の下部に装着される拡底バケット1とで主に構成されている。
このケーシング2は、その上端部近傍に接続した全周回転機(図示せず)により、地盤中に回転圧入され、複数本軸方向に連結しながら、拡底杭の構築に必要な掘削孔の長さにして用いられる。
ここで、このケーシング2は、図2に示したように、円筒状の管体部2Aと、管体部2Aの下端に形成された切刃2a,・・・と、管体部2Aの下端部近傍の内側面から外側面まで貫通するように形成された係止部としての係止孔2bとを備えている。
また、この実施例1では、係止孔2bは、ケーシング2の管体部2Aの周方向に等間隔で3つ設けられている。
さらに、ケーシング2の管体部2Aの内側面には、図3に示したように、上方から各係止孔2bに向って先細りするガイド突部2cがそれぞれ形成されている。
この拡底バケット1は、円筒状の本体部1Aと、本体部1Aの直径を拡大させるように開放可能に形成された2枚の拡幅翼部12,12と、拡幅翼部12,12を拡大させるように開放する際には、ケーシング2の係止部としての3つの係止孔2bへ係合され、ケーシング2内から引き抜く際には、係止孔2bとの係合が解除される本体部1Aの上部に設けられたストッパー部3と、吊り手段としてのワイヤーWに接続させるストッパー部3の上部に設けられた吊り部7とを備えている。
まず、ストッパー部3は、図4に示したように、拡底バケット1がケーシング2に挿入されたときに水平方向に相対変位しない不動部としての不動鞘管31と、吊り部7を構成し、ケーシング2の軸方向にスライド可能なスライド部としてのスライド筒71と、不動鞘管31の内部に収容され、その軸方向に移動可能であるとともにケーシング2の係止孔2bに向けて突出可能なピン部32と、スライド筒71とピン部32とを連結するカム部33とを備えている。
また、不動鞘管31は、平面視で、円筒状の支承部34の周囲に周方向に等間隔で3つそれぞれの後端部が固定されており、それぞれの前端部からピン部32が突出可能とされている(図5も参照)。
さらに、スライド筒71は、上面にワイヤーWが接続される吊り手段接続部71cが形成された上部の縮径部71bと、下部の拡径部71aとが一体とされたものである。
また、支承部34の上部に、上側にドーナツ状のフランジ部72aが形成された収容筒72が設けられている。
そして、収容筒72の内部には、スライド筒71の拡径部71aが収容されており、スライド筒71がケーシング2の軸方向にスライド可能とされているとともに、フランジ部72aによりスライド幅が制限されている。
また、スライド筒71の拡径部71aの周囲には、上側カムプレート71dが、不動鞘管31に対応する水平方向に3つ突出して設けられており、収容筒72の周囲には、これらの上側カムプレート71dをスライド筒71のスライドに追従可能とするためのガイド孔72bがそれぞれ設けられている。
さらに、ピン部32の上部には、下側カムプレート32aが、鉛直方向に突出してそれぞれ設けられており、不動鞘管31のそれぞれの上部には、これらの下側カムプレート32aをピン部32の移動に追従可能とするためのガイド孔31aがそれぞれ設けられている。
また、支承部34の周囲には、不動鞘管31の底部を支えるドーナツ状の支承プレート35が設けられている。
さらに、支承プレート35の上面に、一対の山形の支持プレート36,36が、不動鞘管31を挟み込んで垂直に立ち上げられて設けられており、これら一対の支持プレート36,36間の頂部近傍で、内側を向いた内向部371と下側を向いた下向部372とから成るL字形のカム37が、シャフト38により回転可能に支持されている。
そして、カム37の内向部371には、上側カムプレート71dよりも若干幅が広い切り欠き37aが形成され、上側カムプレート71dが切り欠き37aに嵌め込まれており、カム37の下向部372には、下側カムプレート32aよりも若干幅が広い切り欠き37bが形成され、下側カムプレート32aが切り欠き37bに嵌め込まれて、カム部33が構成されている。
また、支承部34の下端部と本体部1Aの上方から延びる伝達軸部14の上端部との間は、連結フランジ16をボルト及びナットで締結することにより接続し固定されている。
さらに、支承プレート35と連結フランジ16との間は、補強プレート17A,17Bとで補強されている。
また、支持プレート36の外側面には、図5に示したように、拡底バケット1をスムーズにケーシング2内へ挿入したり、ケーシング2内から引き抜いたりできるように、サスペンション18aを有するガイドローラ18がそれぞれ設けられている。
なお、図4では、カム部33の説明を分かり易くするために、ガイドローラ18の記載を省略した。
こうして、図2に示したように、ケーシング2を地盤に回転圧入しつつ、ケーシング2内の土砂を図示省略のハンマーグラブによって掘削し排土して、所定の深さまでケーシング2を建て込む。
そして、ケーシング2を、所要長引き上げた後、拡底バケット1を、図6に示したように、ケーシング2内へワイヤーWにより吊り下げ挿入すると、図7に示したように、不動鞘管31の先端がガイド突部2cによりその先細りした部分までガイドされ、ワイヤーWの張力がなくなり、カム部33が作動して係止孔2bへ向ってピン部32が突出して嵌合されて、拡底バケット1がケーシング2の下部に装着される。
その後、拡底杭の拡底部の掘削が済み、拡底バケット1を、図8に示したように、ケーシング2内から拡底バケット1をワイヤーWにより吊り上げると、カム部33が作動して係止孔2bに嵌合されていたピン部32が不動鞘管31の内部に収容されて、拡底バケット1をケーシング2内からスムーズに吊り上げやすい状態となる。
一方、拡底バケット1の本体部1Aは、図6に示したように、ケーシング2内に挿入できる程度の直径に形成されており、上部に円環状のスタビライザー4が配置されている。
また、拡幅翼部12,12は、図6及び図7に示したように、拡底バケット1を吊り下げる際には、閉鎖されて円筒状の本体部1Aの側面の一部を形成し、図1に示したように、ケーシング2が再度回転圧入されたときに開放されて掘削壁面6を切削して拡幅する。
さらに、拡幅翼部12,12は、拡底バケット1を回収するために、吊り上げる際には、図8に示したように、閉鎖されて円筒状の本体部1Aの側面の一部を形成する。
この拡幅翼部12は、図1に示すように下端付近に幅が略一定の等幅部12aが形成されるとともに、それより上方は先細りする三角形状の三角状部12bが形成されて、図9に示したように、平面視円弧状に形成されている。
この等幅部12aは、例えば500mm程度の高さに形成され、この等幅部12aによって切削された部分が厚さ500mm程度の拡底杭の底板となる。
また、この拡幅翼部12の側端部には、図1に示したように、側端部の延設方向に間隔を置いて複数のローラビット121,・・・が設けられている。
このローラビット121は、図10(a)に示したように、算盤の珠状のビット部121aが側端部に固定された軸121bを中心に回転するように取り付けられている。
さらに、このようなローラビット121,・・・と固定ビット122とによって切削された掘削壁面6は、図10(a)に示すように凹凸となる場合があるので、掘削壁面6を面一に形成したい場合は、一旦、拡底バケット1を引き上げてローラビット121,・・・が固定された掘削刃を着脱部124から外し、代わりに図10(b)に示すような板状の切削板刃部123を、着脱部124を介して拡幅翼部12の側端部に固定して再度掘削壁面6を掘削する。
また、このローラビット121とローラビット121との間には、ローラビット121よりも側方への突出量の少ない固定ビット122が複数固着されている。
すなわち、このローラビット121は固定ビット122よりも外側に突出しており、ローラビット121が掘削壁面6に先に当接して地盤が溝状に切削される。
また、このローラビット121は、軸121bを中心に回転するので、硬い地盤に当接した際には回転することによって過大な応力の発生を抑えることができる。
なお、本体部1Aには、図1に示したように、拡幅翼部12,12を閉じた際にローラビット121,・・・や固定ビット122,・・・を収容できるような切欠部11aが形成されている。
そして、この拡幅翼部12の下方の内側面には、連結部材141の下端が固定されており、その連結部材141を介して作用する力によって拡幅翼部12が開閉する。
すなわち、本体部1Aの内部には、図1及び図4に示したように、支承部34の下端部が接続される伝達軸部14が収容されていて、この伝達軸部14の下端に連結部材141の上端がユニバーサルジョイント構造で屈曲自在に連結される。
また、伝達軸部14は、上端が開口された筒状のガイド筒15に収容され、本体部1Aの上下方向(軸方向)に移動可能となるように構成されている。
このガイド筒15の外周面の上部及び下部には、取付板151,・・・の一側がそれぞれ溶接などで固着され、取付板151,・・・の他側は本体部1Aの内側面に固着されている。
さらに、このガイド筒15の対向する周面部には、長円状のスライド溝152,152がガイド筒15の長手方向に延設されており、そのスライド溝152,152から伝達軸部14と連結部材141とを連結させる連結部としての連結バー142が突出される。
この連結バー142は、図11(図1のA−A線矢視拡大断面)に示したように、円筒管状の伝達軸部14の下端付近の軸直交方向に貫通させた孔に嵌め込まれた補強管14aに挿通される。
この連結バー142の両端は、スライド溝152,152から突出されて、その突出した両端部には円筒状の補強カバー142a,142aがそれぞれ装着される。
そして、ケーシング2を図11のR方向に回転させると伝達軸部14に回転力が伝達されて伝達軸部14が回転し、それに伴って回転する連結バー142に取り付けられた補強カバー142a,142aがガイド筒15を押し動かして回転させ、ガイド筒15に取り付けられた取付板151,・・・を介して伝達された回転力によって本体部1Aが回転する。
この補強カバー142a,142aには、反対方向に延設された連結部材141,141の上端がそれぞれ屈曲自在に固定されている。
また、連結部材141の下端は、図1に示したように、拡幅翼部12の内側面に取り付けられた固定部141aに屈曲自在に連結されている。
このように構成された拡底バケット1は、図6〜図8に示したように、本体部1Aに対して伝達軸部14が引き上げられた状態のときには、連結バー142の補強カバー142aがスライド溝152の上端に位置し、連結部材141が起立して拡幅翼部12,12が閉鎖されている。
この状態から伝達軸部14が下方に移動すると、補強カバー142aがスライド溝152に沿って下降するとともに、連結部材141の上下のユニバーサルジョイントが屈曲することによって連結部材141が傾斜して、拡幅翼部12,12が側方に押し出されて開放されることになる(図1を参照)。
図9は、拡幅翼部12,12の動きを説明するために、一方の拡幅翼部12が開放し、他方の拡幅翼部12が閉鎖した状態を平面図に示したものであるが、実際にはこのような状態になることはなく、拡幅翼部12,12は同時に開閉する。
この図9に示されているように、拡幅翼部12によって拡幅前の直径と略同程度の幅の環状の拡幅部、言い換えれば3倍近い直径の最大拡底部120を形成することができる。
また、本体部1Aの内部には、拡幅翼部12を閉じた際に内部に入り込み過ぎないように、閉翼ストッパー125が設けられており、この閉翼ストッパー125に拡幅翼部12の側端部付近の内周面を当接させることで所定の位置に拡幅翼部12を停止させる。
さらに、拡幅翼部12の内周面に取り付けられた固定部141aには、屈曲自在に連結部材141の下端が連結されることになるが、図9に示したように、拡幅翼部12が開放しているときと閉鎖しているときとでは連結部材141の延伸方向が変わることになる。
また、本体部1Aの下端には、図1に示したように、拡幅翼部12,12よりも下方に突出部13が形成されている。例えば、3m程度の高さの拡底バケット1に対して200mm〜600mm程度の高さの突出部13を設ける。
さらに、この突出部13には円錐状の蓋部131が開閉自在に取り付けられており、この蓋部131を開くことによって本体部1Aの内部に溜まった掘削土砂を排出可能とされている。
次に、実施例1の拡底杭の構築方法について説明する。
まず、ケーシング2を、図2に示したように、その上端部近傍に接続した図示省略の全周回転機により、地盤中に回転圧入しつつ、ケーシング2内の土砂を図示省略のハンマーグラブによって掘削し排土し、複数本軸方向に連結しながら、拡底杭の構築に必要な掘削孔の長さにして建て込む。
続いて、ケーシング2を、所要長引き上げ、拡底バケット1を、図6に示したように、ケーシング2内にワイヤーWにより吊り下げて挿入すると、図7に示したように、ケーシング2の係止孔2bにストッパー部3のピン部32が嵌め込まれて、ケーシング2の下部に、拡底バケット1が装着される。
続いて、ケーシング2を、図1に示したように、回転圧入しつつ、拡底バケット1の拡幅翼部12,12を本体部1Aの直径を拡大させるように開放させながらケーシング2で囲まれていない空間部の掘削壁面6から周囲地盤を掘削して拡底杭の拡底部の部分の空間を形成する。
続いて、拡底バケット1を、図8に示したように、ケーシング2内から拡底バケット1をワイヤーWにより吊り上げて、ケーシング2の上部から拡底バケット1を取り出す。
最後に、図示は省略したが、鉄筋籠を建て込んだ後、トレミーによりコンクリートを打ち込み、このコンクリートの打ち込みに伴いケーシング2及びトレミーを引き抜き回収する。
そして、コンクリートを養生して固化させることで、拡底杭が構築される。
次に、この実施例1の作用効果について説明する。
このような実施例1の拡底バケット1は、下端部に切刃2aが形成されているとともに、下端部近傍の内側面に係止部としての係止孔2bが形成された円筒状のケーシング2の下部に装着される拡底バケットである。
そして、円筒状の本体部1Aと、本体部1Aの直径を拡大させるように開放可能に形成された拡幅翼部12,12と、拡幅翼部12,12を拡大させるように開放する際には、ケーシング2の係止孔2bへ係合され、ケーシング2内から引き抜く際には、係止孔2bとの係合が解除される本体部1Aの上部に設けられたストッパー部3とを備えた構成とされている。
こうした構成なので、油圧制御などの複雑な構成を要さずに、拡底部を形成するための掘削に必要な反力をケーシング2からとることができるため、従来技術に比して、施工性が良く、故障する可能性が低く、そのうえ、安価に実施することができる。
ここで、ストッパー部3の上部には、吊り手段としてのワイヤーWに接続させる吊り部7が設けられており、ストッパー部3は、係止部としての係止孔2bに係合されたときにケーシング2に対して相対変位を生じない不動部としての不動鞘管31と、吊り部7に設けられ、ケーシング2の軸方向にスライド可能なスライド部としてのスライド筒71と、不動鞘管31に対してその軸方向に移動可能であるとともに係止孔2bに向けて突出可能なピン部32と、スライド筒71とピン部32とを連結するカム部33とを備え、吊り部7をケーシング2の軸方向に移動させるとカム部33が作動する。
このため、油圧制御などの複雑な構成を要さずに、拡底部を形成するための掘削に必要な反力をケーシング2からとることができる構造を、簡易且つ安価に実現することができる。
また、本体部1Aの内部には、ケーシング2からの力を、ストッパー部3を介して受ける伝達軸部14が本体部1Aの上下方向に移動可能に配設されるとともに、伝達軸部14に屈曲自在に連結された連結部材141の下端が拡幅翼部12,12に接続されている。
このため、拡幅翼部12,12を拡大させるように開放する構造についても、油圧制御などの複雑な構成を要しない簡易且つ安価なものとすることができる。
さらに、拡幅翼部12,12よりも下方の本体部1Aの下端には突出部13が形成されている。
このため、拡幅翼部12,12を拡大させるように開放する際に、地盤の反力が本体部1Aに大きく作用しても、突出部13によって地盤に拘束されて下端の位置がぶれないため、一方に片寄ることなく所望の正確な形状に拡底部を形成していくことができる。
このような実施例1のケーシング2は、上記した拡底バケット1が、その下部に装着されるケーシングである。
そして、円筒状の管体部2Aと、管体部2Aの下端部に形成される切刃2aと、管体部2Aの下端部近傍の内側面に形成される係止部としての係止孔2bとを備えた構成とされている。
こうした構成なので、拡底バケット1は、ストッパー部3が係止孔2bに係合されることにより、拡底部を形成するための掘削に必要な反力をとることができる。
ここで、管体部2Aの内側面には、上方から係止部としての係止孔2bに向って先細りするガイド突部2cが形成されている。
このため、拡底バケット1のストッパー部3が係止孔2bに係合されるように位置合わせするための特別な操作を行わなくても、ガイド突部2cにガイドされて、ストッパー部3は係止孔2bに係合されるようにすることができる。
また、ケーシング2は、複数本連結して用いるので、最下部のものだけを、こうした構成とすればよいため、全体からすれば、拡底杭の構築のコスト削減に寄与する。
このような実施例1の拡底杭の構築方法は、上記した拡底バケット1と、上記したケーシング2とを用いて、拡底杭を構築する拡底杭の構築方法である。
そして、ケーシング2により地盤を掘削しつつ、ケーシング2内の土砂を除去する工程と、ケーシング2内に、拡底バケット1を、ケーシング2の上部から吊り手段としてのワイヤーWにより吊り下げて挿入する工程と、所要長引き上げられたケーシング2の係止部としての係止孔2bにストッパー部3を係合させ、ケーシング2の下部に、拡底バケット1を装着する工程と、ケーシング2を回転圧入しつつ、拡底バケット1の拡幅翼部12,12を本体部1Aの直径を拡大させるように開放させながらケーシング2で囲まれていない空間部の周囲地盤を掘削する工程と、ケーシング2内から拡底バケット1をワイヤーWにより吊り上げて、ケーシング2の上部から拡底バケット1を取り出す工程とを備えた構成とされている。
こうした構成なので、上記した拡底バケット1と、上記したケーシング2とを用いるため、従来技術に比して、短い工期で、且つ低コストで、高品質の拡底杭を構築することができる。
次に、実施例3について説明する。なお、上記実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
まず、実施例3の拡底杭の構築装置の構成について説明する。
この実施例3の拡底杭の構築装置は、図13に示したように、円筒状のケーシング20と、このケーシング20の上部で装着される拡底バケット10とで主に構成されている。
このケーシング20は、その上端部近傍に接続した全周回転機(図示せず)により、地盤中に回転圧入され、複数本軸方向に連結しながら、拡底杭の構築に必要な掘削孔の長さにして用いられる。
ここで、このケーシング20は、図14に示したように、円筒状の管体部20Aと、管体部20Aの下端に形成された切刃2a,・・・と、管体部20Aの上端部に固定されたL形部材20aにより上方に鉤状に突出して形成された係止部としての係止切り欠き20bとを備えている。
また、この実施例3では、係止切り欠き20bは、図15に示したように、ケーシング20の管体部20Aの周方向に等間隔で4つ設けられている。
この拡底バケット10は、図16に示したように、円筒状の本体部1Aと、本体部1Aの直径を拡大させるように開放可能に形成された2枚の拡幅翼部12,12と、拡幅翼部12,12を拡大させるように開放する際には、ケーシング20の4つの係止切り欠き20bへ係合され、ケーシング20内から引き抜く際には、係止切り欠き20bとの係合が解除される本体部1Aの上部のケリーバ装置19に設けられたストッパー部30とを備えている。
まず、ストッパー部30は、図15及び図16に示したように、本体部1Aの上方から延びる伝達軸部14の上端部とピン21によりインナーケリーバ19Aの下端部が着脱可能に連結されたケリーバ装置19のアウターケリーバ19Bの上端部近傍の外周面からその径方向に突設されたケーシング20の係止切り欠き20bと係合可能なスットパーバー30Aを備えている。
ここで、ケリーバ装置19は、アウターケリーバ19B内にインナーケリーバ19Aが伸縮自在に収納されている。
また、スットパーバー30Aは、平面視で、アウターケリーバ19Bの上端部近傍の外周面の周方向等間隔の4つの位置に、径方向を向くようにそれぞれ突設されており、ケーシング20の4つの係止切り欠き20bとそれぞれ係合可能とされている(図15を参照)。
さらに、ケリーバ装置19の中空部内では、図16に示したように、インナーケリーバ19Aの上端部に、吊り手段としてのワイヤーWに接続させる吊り部70が設けられており、ワイヤーWの吊り上げ、吊り下げにより、ケリーバ装置19の長さが伸縮可能とされ、インナーケリーバ19Aの下端部に連結された本体部1Aもこれに追従して、吊り上げ、吊り下げがなされる。
こうして、まずは、図14に示したように、ケーシング20を地盤に回転圧入しつつ、ケーシング20内の土砂を図示省略のハンマーグラブによって掘削し排土して、所定の深さまでケーシング20を建て込む。
そして、ケーシング20を、所要長引き上げた後、拡底バケット10を、図16に示したように、ケーシング20内へワイヤーWにより吊り下げ挿入すると、ストッパーバー30Aがケーシング20の上端部に載置される。
この状態で、ケーシング20を回転させると、ストッパーバー30Aの先端が係止切り欠き20bに嵌合されて、拡底バケット10がケーシング20の上部で装着される。
また、ケーシング20を回転圧入しているときは、ケリーバ装置19のインナーケリーバ19Aとアウターケリーバ19Bとは、その継手部分の凹凸の摩擦力で固定状態となっているため、ケリーバ装置19の軸方向に押圧力を伝達することができる。
なお、係止切り欠き20bは、ストッパーバー30Aの先端が嵌合したときに、上側に例えば100mm程度の若干の隙間ができる大きさとされている。ここで、拡底バケット10が掘削孔の孔底に達している状態でケーシング20を回転させると、ケーシング20のみが圧入して、ストッパーバー30Aの先端が係止切り欠き20b内で浮き上がったように見える。この状態となれば、拡底バケット10の本体部1Aが掘削孔の孔底に達したことを確認できる。
さらに、ケーシング20を回転圧入させると、ストッパーバー30AがL形部材20aにより押し下げられ、ケリーバ装置19を介して、伝達軸部14へ押圧力が伝達されて、拡底バケット10の本体部1Aの拡幅翼部12,12が拡大され、拡底杭の拡底部の掘削がなされる。
その後、拡底杭の拡底部の掘削が済み、拡底バケット10を、図17に示したように、ケーシング20内から拡底バケット10をワイヤーWにより吊り上げると、アウターケリーバ19B内にインナーケリーバ19Aが収納されて、拡底バケット10は、ケーシング20内からスムーズに吊り上げやすいコンパクトな状態となる。
次に、実施例3の拡底杭の構築方法について説明する。
まず、ケーシング20を、図14に示したように、その上端部近傍に接続した図示省略の全周回転機により、地盤中に回転圧入しつつ、ケーシング20内の土砂を図示省略のハンマーグラブによって掘削し排土し、複数本軸方向に連結しながら、拡底杭の構築に必要な掘削孔の長さにして建て込む。
続いて、ケーシング20を、所要長引き上げ、拡底バケット10を、図16に示したように、ケーシング20内にワイヤーWにより吊り下げて挿入すると、ケーシング20の係止切り欠き20bにストッパー部30のストッパーバー30Aが嵌め込まれて、ケーシング20の上部で、拡底バケット10が装着される。
続いて、ケーシング20を、図13に示したように、回転圧入しつつ、拡底バケット10の拡幅翼部12,12を本体部1Aの直径を拡大させるように開放させながらケーシング20で囲まれていない空間部の掘削壁面6から周囲地盤を掘削して拡底杭の拡底部の部分の空間を形成する。
続いて、拡底バケット10を、図17に示したように、ケーシング20内から拡底バケット10をワイヤーWにより吊り上げて、ケーシング20の上部から拡底バケット10を取り出す。
最後に、図示は省略したが、鉄筋籠を建て込んだ後、トレミーによりコンクリートを打ち込み、このコンクリートの打ち込みに伴いケーシング20及びトレミーを引き抜き回収する。
そして、コンクリートを養生して固化させることで、拡底杭が構築される。
次に、この実施例3の作用効果について説明する。
このような実施例3の拡底バケット10は、下端部に切刃2aが形成されているとともに、上端部に係止部としての係止切り欠き20bが形成された円筒状のケーシング20の上部で装着される拡底バケットである。
そして、円筒状の本体部1Aと、本体部1Aの直径を拡大させるように開放可能に形成された拡幅翼部12,12と、拡幅翼部12,12を拡大させるように開放する際には、ケーシング20の係止切り欠き20bへ係合され、ケーシング20内から引き抜く際には、係止切り欠き20bとの係合が解除される本体部1Aの上部に設けられたストッパー部30とを備えた構成とされている。
こうした構成なので、実施例1の拡底バケット1と同様、油圧制御などの複雑な構成を要さずに、拡底部を形成するための掘削に必要な反力をケーシング2からとることができるため、従来技術に比して、施工性が良く、故障する可能性が低く、そのうえ、安価に実施することができる。
ここで、本体部1Aの上部には、アウターケリーバ19B内にインナーケリーバ19Aが伸縮自在に収納されたケリーバ装置19のインナーケリーバ19Aの下端部が連結され、ケリーバ装置19の中空部内でインナーケリーバ19Aの上端部に、吊り手段としてのワイヤーWに接続させる吊り部70が設けられている。
そして、ストッパー部30は、ケーシング20の係止切り欠き20bに係合されるケリーバ装置19のアウターケリーバ19Bの外周面からその径方向に突設されたストッパーバー30Aを備えている。
このため、油圧制御などの複雑な構成を要さずに、拡底部を形成するための掘削に必要な反力をケーシング20からとることができる構造を、簡易且つ安価に実現することができる。
このような実施例3のケーシング20は、上記した拡底バケット10が、その上部で装着されるケーシングである。
そして、円筒状の管体部2Aと、管体部2Aの上端部に上方に鉤状に突出したL形部材20aにより形成される係止部としての係止切り欠き20bとを備えた構成とされている。
こうした構成なので、拡底バケット10は、ストッパー部30のストッパーバー30Aが係止切り欠き20bに係合されることにより、拡底部を形成するための掘削に必要な反力をとることができる。
ここで、ケーシング20は、複数本連結して用いるので、最上部のものだけを、こうした構成とすればよいため、全体からすれば、拡底杭の構築のコスト削減に寄与する。
このような実施例3の拡底杭の構築方法は、上記した拡底バケット10と、上記したケーシング20とを用いて、拡底杭を構築する拡底杭の構築方法である。
そして、ケーシング20により地盤を掘削しつつ、ケーシング20内の土砂を除去する工程と、ケーシング20内に、拡底バケット10を、ケーシング20の上部から吊り手段としてのワイヤーWにより吊り下げて挿入する工程と、所要長引き上げられたケーシング20を回転圧入しつつ、ケーシング20の係止部としての係止切り欠き20bにストッパー部30のストッパーバー30Aが係合されて、ケーシング20の上部で装着された拡底バケット10の拡幅翼部12,12を本体部1Aの直径を拡大させるように開放させながらケーシング20で囲まれていない空間部の周囲地盤を掘削する工程と、ケーシング20内から拡底バケット10をワイヤーWにより吊り上げて、ケーシング20の上部から拡底バケット10を取り出す工程とを備えた構成とされている。
こうした構成なので、上記した拡底バケット10と、上記したケーシング20とを用いるため、従来技術に比して、短い工期で、且つ低コストで、高品質の拡底杭を構築することができる。
なお、他の構成及び作用効果については、上記実施例1と略同様であるので説明を省略する。
以上、図面を参照して、本発明を実施するための実施の形態について実施例1〜3をもとに詳述してきたが、具体的な構成は、上記した実施例1〜3に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
例えば、上記実施例1,2では、ケーシング2に設けられる係止部を、係止孔2bとして実施したが、これに限定されず、ケーシング2の外側面まで貫通しない係止穴として実施してもよい。具体的には、ケーシング2は、通常、内管と外管とから成る二重構造となっているので、内管のみに貫通孔を設け、この係止穴を形成すればよい。
また、上記実施例1〜3では、拡幅翼部12の外側傾斜部分を略直線状にして実施したが、これに限定されず、円弧状などで実施してもよい。
さらに、上記実施例3では、ケーシング20の上方に鉤状に突出して形成された係止部としての係止切り欠き20bを設けるために、L形部材20aを用いて実施したが、これに限定されず、係止切り欠き20bを設けることができる形状の部材を用いて実施すればよい。
また、上記実施例3では、説明を簡単にするために、ケリーバ装置19は、インナーケリーバ19Aとアウターケリーバ19Bのみから成るものを用いて実施したが、これに限定されず、より深くまで拡底杭を構築する場合は、アウターケリーバが複数有るものが用いられる。
さらに、上記実施例1の拡底杭の構築方法では、ケーシング2を引き上げてから、拡底バケット1をケーシング2内に挿入することで、ケーシング2の下部に拡底バケット1を装着したが、これに限定されない。
すなわち、拡底バケット1をケーシング2内に挿入しておき、ケーシング2を引き上げることで、ケーシング2の下部に拡底バケット1を装着してもよい。
また、上記実施例3の拡底杭の構築方法では、ケーシング20を引き上げてから、拡底バケット10をケーシング20内に挿入して、拡底部の掘削を行ったが、これに限定されない。
すなわち、拡底バケット10をケーシング20内に挿入しておき、この状態でケーシング20を引き上げてから、拡底部の掘削を行ってもよい。