JP5379059B2 - SiC/Si複合材料の製造方法 - Google Patents

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本発明は、SiC/Si複合材料の製造方法に関する。
SiC/Si複合材料は、金属材料に比べて軽量で比剛性が高く、熱膨張が小さいため、半導体製造装置や液晶製造装置などの精密機械の他、さまざまな産業分野で構造材料として使用されている。このSiC/Si複合材料の製造は、SiC粉末を所望の形に成形したプリフォームを所定形状に加工し、次いでプリフォームを加熱して脱脂や焼結等を行った後、プリフォームの孔部に溶融したSiを含浸させるという手順で行われる。
例えば特許文献1には、アスペクト比で3以下の粒子数が全体の60%以上に調整され、平均粒径が1〜20μmの範囲であり且粒度分布において25μm以上の粒径をもつ粒子の割合が3%以下のSiC粉末を用いてSiC充填率が60vol%以上75vol%以下としたSiC/Si複合材料の製造方法が提案されている。また、特許文献2には、SiC粉末を粉砕・分級する手段によって得られた原料粉末を用いる方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1や特許文献2の方法では、SiC充填率を高めて剛性を向上させるには、有機バインダーの添加量を増加させなければならない。これにより有機バインダーの脱脂処理を行った後に残存する炭素量が増えるので、金属シリコンと反応して生成するSiC量も増えて剛性を向上させることができる。しかし、有機バインダーの熱硬化後の強度は非常に高いため、添加量を増やすにつれ加工時間が増加し、コスト高になるという問題点がある。
特開2002−275556号公報 特開平11-171652号公報
上記の方法によって得られるプリフォームは、比較的SiC充填率が低く加工しやすいので加工コストの問題は大きくないが、プリフォームの充填率を高めていくと、より加工が困難になり、コストが増大するため大きな問題となる。
本発明は、高充填率であっても加工コストを抑えられるSiC/Si複合材料の製造方法を提供するものである。
本発明は、以下の(1)、(2)を提供する。
(1)SiC粉末のタップ充填率を68〜76%として、前記SiC粉末をタップした際にできる空隙の容積の25〜100体積%に有機バインダーの添加量を調整して、前記SiC粉末及び前記有機バインダーを含む混合物を準備する工程と、前記混合物を成形してプリフォームとする成形工程と、前記プリフォームを所定雰囲気で脱脂する脱脂工程と、脱脂した後の前記プリフォームに加工を施す加工工程と、Siを浸透させる浸透工程と、を含むSiC/Si複合材料の製造方法。従来、プリフォームの加工は脱脂前に行われていたが、本発明では脱脂した後に行っている。これにより加工が容易になりコストの増大を抑えることができる。
機バインダー量を上記範囲に調整すれば、脱脂割れや加工時の強度不足を防ぐことができる。
発明は、上記のような高充填率のプリフォームに適用することにより大きなコストダウンを図ることができる。
(2)前記SiC粉末は、100μm以上の粒子を60%以上含む(1)記載のSiC/Si複合材料の製造方法。本発明は、粒径の大きいSiC粉末によって構成されたプリフォームに適用することによって大きなコストダウンを図ることができる。
本発明によれば、高充填率であっても加工コストを抑えられるSiC/Si複合材料の製造方法を提供することができる。
以下、本発明のSiC/Si複合材料の製造方法について、更に詳しく説明する。
SiC粉末としては、研磨剤等として使用される比較的粒の粗い市販品を用いることができる。本発明においては、粒度の異なるSiC粉末を組み合わせて用いる。例えば、平均粒径2.0〜40μmの微粉と、平均粒径40〜300μmの粗粉とを組み合わせることによりSiC粉末の充填を高めることができる。
レ−ザ−回折式粒度分布測定器によるSiC粉末の粒度分布は、100μm以上の粒子を60%以上含む。上記のような粒度配合を行い、かつ所定の粒径以上の粉末を所定範囲で含ませることで充填率を高めることができる。SiC粉末のタップ充填率は、単粒の場合は48〜58%であるが、微粉と粗粉を組み合わせる場合は60〜76%に調整できる。さらに、本発明では100μm以上の粒子を60%以上含むので、タップ充填率を68%以上に高めることができ、このような範囲において極めて大きなコストダウン効果をもたらす。なお、プリフォームにおけるSiC粉末の充填率は、有機バインダー量を本発明の所定量に調整することにより、タップ充填率と同等にすることができる。
有機バインダーとしては熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。熱硬化樹脂の種類は特に限定されず、例えばフェノ−ル樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ジアリルフタレ−ト樹脂、ケイ素樹脂等を適用できる。なかでも、フェノ−ル樹脂は脱脂後の残炭率が高いので好適に用いることができる。なお、有機バインダーは、粉末状のものを用いることが好ましい。例えば、平均粒径1〜100μmの粉末状の樹脂を用いることができる。
有機バインダーの添加量は、SiC粉末をタップした際にできる空隙の容積の25〜100体積%に調整することが好ましい。25体積%未満の添加量ではバインダー量の不足のため脱脂後にプリフォームを加工する際に保形することは出来ない。また、100体積%を超えた場合にはプリフォームの開気孔率が低下し、熱硬化時の有機バインダーの縮重合反応により発生する水の抜け道が非常に少なくなる。このため、脱脂処理の際にプリフォーム中の縮重合水が急激に体積膨張することでクラックが生じることとなる。
SiC/Si複合材料の高剛性化のため、Si浸透時の反応SiCの生成量をさらに増やしたい場合は、有機バインダーにカ−ボン粉末を添加することもできる。カーボン粉末としては、カーボンブラック、カーボンビーズ、コークス粉等を用いることができる。カーボン粉末の形態は、無定形、針状、球状を用いることができるが、高充填させるためには特に球状が好ましい。カーボン粉末の平均粒径は2〜20μmが好ましい。
SiC粉末及び有機バインダーの混合は、乾式、湿式を問わず、種々の方法を採用することができる。十分に混合することで両者が分散し、均質なプリフォームを得ることができる。
混合物の成形方法としては、プレス成形、CIP成形、湿式成形等を用いることができる。なかでも加熱しながら圧力を加える熱プレス成形が好ましい。熱ブレスは、0.5〜20MPaの圧力で、1〜12時間プレスすることが好ましい。また、有機バインダーの熱硬化樹脂の硬化反応により生成する縮合水の蒸気の抜けを妨げないように、上記圧力でプレスを加えた後に、またはプレスを加えながら加熱することが好ましい。このように熱プレスを制御することで、SiC粉末の充填を高めることができる。
上記のように成形しプリフォームを得た後、有機バインダーを脱脂する。脱脂工程の雰囲気は非酸化雰囲気が好ましく、真空中、アルゴンまたは窒素雰囲気中、または減圧下でのアルゴンまたは窒素のパ−シャル圧気流中を採用することができる。なかでも真空雰囲気中または減圧下でのArガスのパ−シャル圧気流中が好ましい。真空圧は1〜100Pa、パ−シャル圧は10〜1000Paとすることが好ましい。脱脂温度は、800〜1200℃が好ましい。昇温速度は30℃/hr以下が好ましい。
本発明では、脱脂後のプリフォームについて加工を行う。脱脂前のプリフォームは有機バインダーを含有しているため非常に強度が高く、加工が困難である。特に100μm以上の粒子を60%以上含み、充填率を高めたプリフォームについては加工し難く大きな問題であった。しかし、これを脱脂すると有機バインダーが炭化されているため、容易に加工することができる。これより加工時間を大幅に短縮することが出来、コストの増大を抑えることができる。脱脂を行った後の加工であるためプリフォームが加工に耐え得る強度を有するかどうか危惧されるが、上記のような粒度配合を行い、かつ所定の粒径以上の粉末を所定範囲で含ませ、さらに有機バインダー量を調整することでプリフォームの充填率を高めると同時に、脱脂後の加工に耐え得る強度を持たせることができる。
プリフォ−ムにSiを浸透させる方法としては、例えば、融点以上の温度に加熱され溶融したSiをプリフォームと接触させる方法を採用することができる。溶融したSiとプリフォーム中の炭素が反応してSiCを生成する。浸透工程の雰囲気は、非酸化雰囲気が好ましく、真空中、アルゴン、または窒素雰囲気を採用することができる。なかでも真空またはアルゴン雰囲気中が望ましい。真空雰囲気の場合圧力は1〜100Paが好ましい。
浸透温度は、1450〜1600℃とすることができる。このような範囲であれば、Siが十分に溶融するので浸透が進行し、またSiの揮発による不良も生じ難い。
以下、本発明の試験例を具体的に挙げ、本発明をより詳細に説明する。
市販のSiC粉末とフェノ−ル樹脂(脱脂後の不揮発分50%)とを混合して原料粉末を作製した。フェノール樹脂量を上記SiC粉末をタップした際にできる空隙の容積に対して所定量に調整したものを用意した。原料粉末を金型に充填して熱プレス成形(150℃−12hr、3MPa)し、プリフォームを得た。熱プレス成形は、上記圧力でプレスを加えた後に、またはプレスを加えながら加熱した。得られたプリフォームを、減圧下でのArガスのパ−シャル圧気流中(100Pa)、250℃以降を27℃/Hrで昇温し、1000℃で脱脂した。なお、作製No.1〜7のSiC粉末は、平均粒径15μmの微粉と、平均粒径200μmの粗粉とを組み合わせて作製し、作製No.8については、微粉のみで作製した。
上記により得られたプリフォームを用いて脱脂前後の加工性試験を実施した。加工性試験は、マシニング加工(ダイヤモンド電着工具、#40−φ20×10mm、3000rpm)において、主軸に一定の負荷がかかるようにして切込速度を調整して切削した場合に所定量切り込むまでにかかった時間を調べた。また、切込速度を10mm/minとして急速に切り込んで切削したときに、加工できるかどうか調べた。急速切込の評価は、主軸負荷が所定の基準値を超えたもの、またはプリフォームが割れたものを×、切込できたものを○とした。SiC粉末の粒度分布は、レ−ザ−回折式粒度分布測定器によって測定した。結果を表1に示す。粒度分布について表1では、100μm以上の体積百分率を「100μm≦」と示した。なお、タップ充填率は、メスシリンダーにSiC粉末を投入し、100回タッピングを行った後、体積を計量し、SiC粉末の真比重を3.2g/cmとして算出した。
Figure 0005379059
本発明の製造方法に従った作製No.2〜4及び6では、脱脂前に比べて脱脂後のプリフォームの加工が容易になり、4〜8倍の速度で切削加工が可能であった。また、脱脂前のプリフォームでは加工できない速さで切り込んでも不具合なく加工が可能であった。なお、作製No.2〜4及び6の加工前のプリフォームについて、アルキメデス法により求めた気孔率並びに、SiC粉末及び有機バインダーの比重からSiC充填率を算出したところタップ充填率と同等であった。
一方、有機バインダー量の少ない作製No.1では、脱脂前のプリフォームでも強度が弱く加工は困難であった。また、有機バインダー量の多い作製No.5では、脱脂割れが生じた。タップ充填率の低い作製No.7及び作製No.8では、脱脂後のプリフォームが脆く加工が困難であった。
作製No.2〜4及び6の脱脂後に加工を施したプリフォ−ムについて、Ar雰囲気中で1645℃の温度で24時間保持し、Siを浸透させることによりSiC/Si複合材料が得られた。

Claims (2)

  1. SiC粉末のタップ充填率を68〜76%として、前記SiC粉末をタップした際にできる空隙の容積の25〜100体積%に有機バインダーの添加量を調整して、前記SiC粉末及び前記有機バインダーを含む混合物を準備する工程と、前記混合物を成形してプリフォームとする成形工程と、前記プリフォームを所定雰囲気で脱脂する脱脂工程と、脱脂した後の前記プリフォームに加工を施す加工工程と、Siを浸透させる浸透工程と、を含むSiC/Si複合材料の製造方法。
  2. 前記SiC粉末は、100μm以上の粒子を60%以上含む請求項1記載のSiC/Si複合材料の製造方法。
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