以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお説明する順序は以下の通りである。
1.第1の実施の形態
(1−1)パターン形成方法
(1−2)パターン形成装置(第1〜第6のパターン形成装置)
2.第2の実施の形態
(2−1)パターン形成方法
(2−2)パターン形成方法の適用例(薄膜トランジスタの製造方法)
<1.第1の実施の形態>
[(1−1)パターン形成方法]
図1〜図7を参照して本発明の第1の実施の形態に係るパターン形成方法を説明する。
第1の実施の形態のパターン形成方法は、基体にテンプレート構造を形成するテンプレート形成工程と、流動性材料をテンプレート構造に接触させる流動性材料接触工程と、テンプレート構造に対応した流動性材料のパターンを形成する流動性材料パターン形成工程とを含んでいる。以下、詳細に説明する。
(テンプレート形成工程)
最初に、図1〜図4に示したように、基体11にテンプレート構造18を形成する。
まず、図1(A)に示したように基体11上に、例えば、蒸着法などの気相法により親液性材料層12を形成する。基体11としては、例えば、ガラス基板、シリコン基板あるいは石英基板などが挙げられるが、少なくとも親液性材料層12が形成される面(表面)が親液性を有するものであればよい。親液性材料層12は、後述する窪み17の側壁の一部を構成し、窪み17の側壁の親液性を確保することにより、親液性領域16Aを構成するためのものである。親液性材料層12は、親液性材料のうちの1種あるいは2種以上を含むものであり、全体として親液性を示すものであればよい。親液性材料層12の厚さは、後述する窪み17の深さによって任意に設定可能であるが、窪みの深さの1/25以上の厚さを有していればよい。例えば、窪みの深さが500nmであれば、親液性材料層12の厚さは20nm以上あればよい。親液性材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、あるいは銅(Cu)などの貴金属元素を除く金属材料またはそれらの酸化物や、シリコンなどの半金属材料またはそれらの酸化物、窒化物あるいは酸窒化物などが挙げられる。ここでは、ガラス基板からなる基体11上に、蒸着法により、クロムよりなる親液性材料層12を100nmの厚さで形成するものとする。
続いて、図1(B)に示したように親液性材料層12上に、例えば厚さ1.5nmの接着層13を形成する。接着層13は、親液性材料層12と後述する撥液性材料層14との接着性を高めるためのものである。なお、親液性材料層12と撥液性材料層14とが十分に接着可能であるならば、接着層13は設けなくてもよい。接着層13を構成する材料としては、例えば、アミノシランなどのシランカップリング剤などが挙げられる。アミノシランとしては、例えば、3−(2−アミノエチルアミノ)−プロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。接着層13の厚さは、親液性材料層12と撥液性材料層14との十分な接着性が得られれば任意である。接着層13は、例えば、熱CVD(Chemical Vapor Deposition )法などにより形成される。また、その他に、密閉容器内に親液性材料層12が形成された基体11と、アミノシランとを収容し、容器内を120℃で加熱することにより接着層13を形成するようにしてもよい。
続いて、図1(C)に示したように、接着層13上に、例えば、スピンコート法を用いて、フッ素樹脂からなる撥液性材料層14を形成する。詳細には、接着層13上に、スピンコート法によりフッ素樹脂と溶剤とを混合した混合材料を塗布したのち、フッ素樹脂を含む塗布膜を、例えば50℃で30分間乾燥させ、次いで、例えば200℃で1時間焼成する。撥液性材料層14を構成する材料は、後述する撥液性領域を形成することが可能であればフッ素樹脂以外のものであってもよいが、フッ素樹脂としては、例えば、旭硝子株式会社製のCYTOP(CTX−809AP2)などが挙げられる。なお、撥液性材料層14は、PDMS(ポリジメチルシロキサン)等のシリコーン樹脂により構成されていてもよい。ここではCYTOPからなる撥液性材料層14が400nmの厚さで形成されたこととする。そののち、図1(D)に示したように、酸素プラズマによる反応性イオンエッチング(RIE)によって撥液性材料層14の表面を粗化する。これにより、続いて塗布するレジスト材料の塗れ性を高める。
続いて、図2(A),図2(B)に示したように、撥液性材料層14上にレジストパターン15を形成する。図2(A)は、レジストパターン15の平面構成を表し、図2(B)は図2(A)のII(B)−II(B)線における断面構成を表している。具体的には、まず、表面が粗化された撥液性材料層14上に、例えば、スピンコート法によりレジスト材料を塗布して、例えば厚さ1μm程度のレジスト層を形成する。レジスト材料としては、例えば、AZエレクトリックマテリアルズ株式会社製のAZ1500などが挙げられる。こののち、所定のパターンを有するフォトマスクを用いて、レジスト層を選択的に露光し、現像処理をする。これにより、フォトマスクのパターンに対応したレジストパターン15が形成される。ここでは、図2(A),図2(B)に示したように、溝状の開口部を有するレジストパターン15が形成されることとする。
続いて、図3(A),図3(B)に示したように、レジストパターン15をマスクにした、例えば、酸素プラズマによる反応性イオンエッチングによって撥液性材料層14および接着層13を選択的に除去する。これにより、撥液性材料層14および接着層13には、レジストパターン15に対応した形状の開口部が形成され、その開口部内に親液性材料層13が露出する。図3(A)はレジストパターン15および撥液性材料層14の平面構成を表し、図3(B)は図3(A)のIII (B)−III (B)線における断面構成を表している。こののち、レジストパターン15を除去する。
続いて、図4(A),図4(B)に示したように、撥液性材料層14をマスクにした、例えばウェットエッチングにより親液性材料層12を選択的に除去する。これにより、親液性材料層12に、底面に基体11の親液性表面が露出した開口部が形成される。すなわち、親液性材料層12の開口部の側面および露出した基体11の表面に親液性領域16Aを有する窪み17が形成される。図4(A)は撥液性材料層14および親液性材料層12の平面構成を表し、図4(B)は図4(A)のIV(B)−IV(B)線における断面構成を表している。ここでは親液性材料層12がクロムにより構成されているため、エッチング液として、例えば、長瀬ケムテックス株式会社製のK−4などを用いる。最後に、図1(D)に示した工程において粗化された撥液性材料層14の上面の塗れ性を回復させるために、150℃で10分間の加熱処理を施す。以上により、基体11に、窪み17が形成されると共に、窪み17の底面および側壁の一部に親液性領域16A、窪み17を取り囲む撥液性領域16Bがそれぞれ形成され、テンプレート構造18が完成する。
このテンプレート構造18では、親液性領域16Aの表面自由エネルギーが50mJ/m2 以上、撥液性領域16Bの表面自由エネルギーが30mJ/m2 以下となっている。また、窪み17の深さは、1nm以上10μm以下になっていることが好ましい。高精細なパターンを形成できるからである。
(流動性材料接触工程)
次に、図5(A),図5(B)に示したように、パターンの構成材料となる流動性材料20をテンプレート構造18に接触させる。図5(A)は撥液性材料層14および親液性材料層12に接触した状態の流動性材料20の平面構成を表し、図5(B)は図5(A)のV(B)−V(B)線における断面構成を表している。なお、ここでは流動性材料20をテンプレート構造18の上面の撥液性領域16Bならびに窪み17の底面および側壁を覆うように接触させることとする。
流動性材料20は、パターン形成するためのインクに相当するものであり、全体として流動性を有していれば任意であり、液状であってもよく、スラリ状であってもよく、ペースト状であってもよい。具体的には、形成されたパターンを構成する材料(固形分)が溶剤に溶解あるいは分散されたものであってもよいし、パターンを構成する材料が流動性を有するものであればそのまま用いてもよい。また、流動性材料20としては、1種を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよく、複数種が分離した状態で用いてもよい。
流動性材料20をテンプレート構造18に接触させる方法としては、例えば、流動性材料20をテンプレート構造18に塗布する塗布法、あるいは流動性材料20中にテンプレート構造18を浸漬する浸漬法が挙げられる。塗布法としては、スリットコータやキャピラリーコータを用いた方法や、スピンコート法や、インクジェット法などが挙げられる。
(流動性材料パターン形成工程)
次に、図6(A)〜図6(D)に示したように、テンプレート構造18に流動性材料20が接触した状態の基体11と、親液性表面を有する親液性部材であるスライド部材30とを相対的に移動させ、窪み17の平面形状に対応した流動性材料20のパターンを形成する。詳細には、図6(A)に示したように、スライド部材30と基体11とを相対的に移動させた際に、スライド部材30がテンプレート構造18上面の撥液性領域16B上にある流動性材料20と接触するように、例えば所定の間隔dを有するように配置する。続いて、図6(B)〜図6(D)に示したように、スライド部材30とテンプレート構造18の上面とが所定の間隔dを保った状態で、基体11とスライド部材30とを平行に移動させる。ここでスライド部材30の親液性表面が流動性材料20と親和性が高いため、撥液性領域16B上のスライド部材30と接触した流動性液体20が図6(B)および図6(C)に示したように、スライド部材30の相対的な移動方向に引っ張られる。その一方で、窪み17内部の親液性領域16A上の流動性材料20は、基体11の相対的な移動方向に引っ張られることになる。これにより、図6(D)に示したように、撥液性領域16B上の余分な流動性材料20は、スライド部材30によって除去されると共に、親液性領域16A上の流動性材料20がそのまま残る。よって、窪み17の平面形状に対応した流動性材料20のパターンが形成され、この流動性材料20のパターンが後述するパターン21となる。なお、図6(A)〜図6(D)中のブロック矢印は、基体11およびスライド部材30それぞれの相対的な移動方向を表している。
スライド部材30は、基体11に対して相対的に移動(スライド)して、余分な流動性材料20を除去すると共に、窪み17の平面形状に対応した流動性材料20のパターンを形成するためのものである。スライド部材30は、上記したように親液性表面を有するものであれば、その形状は任意であり、断面が矩形状の板状のものであってもよいし、断面が多角形、円形、半円形あるいは楕円形などの形状の棒状のものであってもよいし、それらの形状を組み合わせたものであってもよい。また、スライド部材30は、表面が親液性であれば筒状であってもよい。スライド部材30の親液性表面の自由エネルギーは、50mJ/m2 以上になっている。スライド部材30を構成する材料としては、例えば、アルミニウムあるいはステンレス鋼などの金属またはそれらの合金や、ガラスや、シリコンなどが挙げられる。
基体11とスライド部材30との間隔dは、スライド部材30がテンプレート構造18と接触せずにテンプレート構造18上の流動性材料20と接触可能であれば任意であるが、0.1μm以上10mm以下であることが好ましい。余分な流動性材料20が効率よく除去され、良好なパターンが高精度に形成されるからである。中でも、間隔dは、1μm以上1mm以下であることが好ましく、5μm以上300μm以下であることが特に好ましい。より高い効果が得られるからである。また、基体11とスライド部材30とを相対的に移動させる際の相対速度は、0.01mm/s以上1000mm/s以下であることが好ましく、0.5mm/s以上100mm/s以下であることが好ましい。良好なパターンがより高精度に形成されるからである。
最後に、窪み17中の流動性材料20を乾燥や焼成することにより、図7(A),図7(B)に示したように、窪み17の平面形状に対応したパターン21が形成される。図7(A)は撥液性材料層14およびパターン21の平面構成を表し、図7(B)は図7(A)のVII(B)−VII(B)線における断面構成を表している。なお、こののち、必要に応じて、親液性材料層12、接着層13および撥液性材料層14を除去してもよい。
本実施の形態のパターン形成方法では、テンプレート構造18として、基体11上に設けられた親液性材料層12および撥液性材料層14に開口部を形成することにより、窪み17の底面および側壁の一部に親液性領域16A、窪み17を取り囲む領域に撥液性領域16Bをそれぞれ形成する。
一方、従来のパターン形成方法(比較例1)では、図24に示したように、テンプレート構造100として、基板に、窪みの底面にだけ親液性領域100A、窪みの側壁全面および窪みを取り囲む上面に撥液性領域100Bを形成して用いている。このテンプレート構造100に液状材料をその窪みの内部を覆うように接触させたのち、親液性表面を有する部材(親液性部材)と基板とを相対的に移動させて、撥液性領域100B上の余分な液状材料を除去することにより、パターンを形成する。ところが、親液性部材と基板とを相対的に移動させた際に、窪み側壁全面が撥液性を示すため、窪み中の液体材料110の移動方向とは逆側(基板の移動方向側)の窪み側壁に液体材料110がはじかれ、窪み底面の一部が露出し、隙間領域200が生じやすくなる。さらに、余分な液体材料110が除去されたのちに、窪み側壁の撥液性領域100Bと接触していた液体材料110がはじかれて、親液性領域100Aの中心部分に移動しようとすることによっても隙間領域200が生じやすくなる。これにより、図25(A),図25(B)に示したように、窪みの底面の一部(隙間領域200)が露出した状態で、パターン120が形成されやすくなるため、窪みの平面形状に対応したパターンを精度よく形成することが難しい。
また、他の従来のパターン形成方法(比較例2)としては、上記のように窪みを持たないテンプレート構造を用いるものもある。具体的には、基板表面に親液性領域と撥液性領域とを隣接して設けたテンプレート構造上に液状材料を塗布などにより接触させ、こののち基板と親液性部材とを相対的に移動させて撥液性領域上の余分な液状材料を除去し、液状材料のパターンを形成する。このパターン形成方法によっても上記した比較例1の方法と同様に、親液性領域の形状に対応した形状のパターンを得ることが難しい。
これに対して、本実施の形態のパターン形成方法では、窪み17の側壁の一部にも親液性領域16Aを設けるようにした。これにより、基体11とスライド部材30とを相対的に移動させても、窪み17内では、図8に示したように、基体11の移動方向と順方向側の側壁の親液性領域16Aと流動性材料20との接触状態が維持されたまま、余分な流動性材料20が除去される。よって、流動性材料充填工程において窪み17の底面が露出しにくくなるため、窪み17の平面形状に対応したパターン21が形成される。従って、高精細なパターンを高精度に形成することができる。特に、基体11に、上記したテンプレート形成工程によりテンプレート構造18を形成するようにしたので、高精細なテンプレートパターンを形成することができる。
なお、上記したパターン形成方法では、単層構造を有するパターン21を形成する場合について説明したが、複数の層を有する積層構造をもつパターンを形成するようにしてもよい。この場合、例えば、上記した流動性材料接触工程および流動性材料パターン形成工程の一連の工程を繰り返す、あるいは流動性材料接触工程、流動性材料パターン形成工程および乾燥焼成工程の一連の工程を繰り返す。これにより、積層構造をもつパターンを高精度に形成することができる。但し、流動性材料接触工程および流動性材料パターン形成工程の一連の工程を繰り返して積層構造をもつパターン21を形成する場合には、積層構造の各層を構成する各流動性材料20として、互いに相溶性がなく、窪み17内で分離した状態を維持できるものを用いる。このように浸漬法により積層構造を有するパターン21を形成する場合には、例えば、以下のようにする。まず、スライド部材30を、分離した各流動性材料20のうち隣り合う流動性材料の界面および外部と外部に接触する流動性材料との界面にそれぞれ固定する。各流動性材料20中にテンプレート構造18を順次通過させることにより、各流動性材料20中にテンプレート構造18を浸漬したのち、引き上げると共に、スライド部材30と基体11を相対的に移動させる。これにより、窪み17に各流動性材料20が通過順に積層され、流動性材料20のパターンが形成される。
また、上記したパターン形成方法では、流動性材料接触工程において、流動性材料20がテンプレート構造18の親液性領域16Aおよび撥液性領域16Bを覆うように接触する場合について説明したが、撥液性領域16Bにだけ、流動性材料20が接触していてもよい。この場合においても、上記した流動性材料パターン形成工程と同様に、基体11とスライド部材30とを、スライド部材30がテンプレート構造18上面の撥液性領域16B上にある流動性材料20と接触するように、相対的に移動させる。但し、この際、スライド部材30の相対的な移動方向において、スライド部材30と窪み17との間の撥液性領域16B上に流動性材料20があるように、基体11とスライド部材30とを平行に移動させる。これにより、撥液性領域16B上の流動性材料20が全体的にスライド部材30によって押し出されると共に引っ張れるように撥液性領域16B上を移動して、窪み17に充填される。ここでも余分な流動性材料20はスライド部材30によって除去される。よって、窪み17の平面形状に対応した流動性材料20のパターンが形成される。
次に、上記したパターン形成方法を用いたパターン形成装置について説明する。なお、以下では、上記したパターン形成方法と共通の構成要素については、同一の符号を付して説明は適宜省略する。
[(1−2)パターン形成装置]
(第1のパターン形成装置)
図9は第1のパターン形成装置の断面構成を表している。第1のパターン形成装置は、テンプレート構造18を有する基体11を保持するための保持手段(図示せず)と、スリットコータ51と、スライド部材30と、基体11を移動させる移動手段(図示せず)とを備えている。
基体11は、上記したテンプレート形成工程によりテンプレート構造18が形成されている。ここでは基体11は、窪み17が複数形成されたテンプレート構造18を備え、移動手段である移動ステージ(図示せず)上に保持されている。基体11の保持手段は任意であり、ここではこの保持手段により窪み17の開口が上側を向いて保持されている。
スリットコータ51は、テンプレート構造18に流動性材料20を塗布するための塗布手段であり、流動性材料20の流路であるスリット部51Aを有している。スリットコータ51は、スリット部51A先端の吐出口が、窪み17の開口と対向すると共に、テンプレート構造18の上面と所定の間隔を有するように配置され、これによりスリットコータ51が移動する基体11と接触しないようになっている。
スライド部材30は、スリットコータ51に対して基体11の移動方向における下流側(進行方向側)に配置され、上記したパターン形成方法における基体11とスライド部材30との間隔を保つように固定されている。
移動手段は、基体11を保持した状態で、テンプレート構造18の上面と、スリットコータ51の吐出口およびスライド部材30との間に所定の間隔を保ちながら、基体11を所定の方向に、所定の速度で移動させるものである。ここでの移動手段は任意であるが、移動ステージ(図示せず)とする。基体11の移動速度は、0.01mm/s以上1000mm/s以下であることが好ましい。良好なパターンが高精度に形成されるからである。
基体11(テンプレート構造18の上面)とスライド部材30との間隔は、上記したパターン形成方法と同様である。
このパターン形成装置では、基体11は、テンプレート構造18の上面がスリットコータ51の吐出口およびスライド部材30と対向するように移動ステージ上に保持され、移動ステージによりスリットコータ51側からスライド部材30側に移動される。ここで、スリットコータ51は、スリット部51Aを介して吐出口から流動性材料20を吐出することにより、流動性材料20を移動している基体11のテンプレート構造18に塗布する。流動性材料20が塗布されたテンプレート構造18の塗布領域は、移動ステージによりスライド部材30側に移動されると、テンプレート構造18上の流動性材料20とスライド部材30とが接触し、余分な流動性材料20が除去され、窪み17の平面形状に対応した流動性材料20のパターンが形成される。こののち、必要に応じて、窪み17中の流動性材料20を乾燥あるいは焼成し、パターン21(ここでは図示せず)が形成される。
このように第1のパターン形成装置では、保持手段が保持した基体11を、スリットコータ51により塗布された流動性材料20が窪み17の平面形状に対応したパターンを形成するようにスライド部材30に対して移動させる。基体11には、テンプレート構造18として窪み17の底面および側壁の一部に親液性領域16A、窪み17を取り囲む領域に撥液性領域16Bがそれぞれ設けられているので、高精細なパターンを高精度に形成することができる。この他の作用効果については、上記したパターン形成方法と同様である。
なお、上記のパターン形成装置では、基体11を保持すると共に、移動手段としての移動ステージを用いて、塗布手段およびスライド部材30に対して基体11を移動させたが、基体11を固定し、塗布手段およびスライド部材30を移動させてもよい。この場合の塗布手段およびスライド部材30の配置は、相対的に図9に示した配置となるように維持しながら、塗布手段およびスライド部材30を移動させる。この場合においても、上記のパターン形成装置と同様の作用効果が得られる。
また、上記のパターン形成装置では、スライド部材30として、断面が矩形状のものを用いたが、他の形状を有するものを用いてもよい。例えば、図10に示したように基体11と対向する面が丸みを帯びた形状のものや、図11に示したように断面が円形状のもの等であってもよい。また、図12に示したように、親液性部材として、外周面に親液性表面31Aを設けたローラ31を用いてもよい。この場合には、ローラ31は、回転軸31Bを中心として親液性表面31Aが回転しながら、テンプレート構造18上の余分な流動性材料20を除去すると共に、窪み17に流動性材料20を充填する。これらのことは、以下で説明するパターン形成装置についても同様であり、同様の作用効果が得られる。
(第2のパターン形成装置)
図13は第2のパターン形成装置の断面構成を表している。第2のパターン形成装置は、塗布手段としてスリットコータ51に代えて、キャピラリーコータ52を用いると共に、塗布手段、スライド部材30および基体11の相対的な位置を変えずに、それぞれの上下を反転させたことを除き、第1のパターン形成装置と同様の構成を有している。
基体11の保持手段は任意であり、ここでは保持手段により窪み17の開口がキャピラリーコータ52の吐出口と対向するように、下側を向いて保持されている。
キャピラリーコータ52は、流動性材料20を、毛細管現象によりキャピラリー部52Aの先端から吐出し、テンプレート構造18に対して塗布するものである。このため、キャピラリーコータ52は、キャピラリー部52A先端の吐出口が上側を向くように配置されている。また、キャピラリーコータ52は、その吐出口が、窪み17の開口と対向すると共に、テンプレート構造18の上面と所定の間隔を有するように配置され、これによりキャピラリーコータ52が基体11と接触しないようになっている。
このパターン形成装置では、基体11は、テンプレート構造18の窪み17の開口がキャピラリーコータ52の吐出口およびスライド部材30と対向するように移動ステージに保持され、キャピラリーコータ52側からスライド部材30側に移動される。ここで、キャピラリーコータ52は、流動性材料20を、毛細管現象によりキャピラリー部52Aを介して吐出口から吐出する。吐出された流動性材料20は、キャピラリーコータ52の吐出口とテンプレート構造18とが所定の間隔で配置されているため、移動している基体11のテンプレート構造18に塗布される。流動性材料20が塗布されたテンプレート構造18の塗布領域は、移動ステージによりスライド部材30側に移動される。これにより、塗布領域におけるテンプレート構造18上の流動性材料20とスライド部材30とが接触し、余分な流動性材料20が除去され、窪み17の平面形状に対応した流動性材料20のパターンが形成される。こののち、必要に応じて、窪み17中の流動性材料20を乾燥あるいは焼成し、パターン21(ここでは図示せず)が形成される。
このように第2のパターン形成装置では、保持手段が保持した基体11を、キャピラリーコータ52により塗布された流動性材料20が窪み17の平面形状に対応したパターンとなるようにスライド部材30に対して移動させる。基体11には、テンプレート構造18として、窪み17の底面および側壁の一部に親液性領域16A、窪み17を取り囲む領域に撥液性領域18がそれぞれ設けられているので、高精細なパターンを高精度に形成することができる。この他の作用効果については、上記したパターン形成方法および第1のパターン形成装置と同様である。
(第3のパターン形成装置)
図14は第3のパターン形成装置の断面構成を有している。第3のパターン形成装置は、流動性材料20を収容する容器60と、基体11を保持する保持手段(図示せず)と、基体11を流動性材料20中に浸漬したのち、引き上げる搬送手段(図示せず)と、スライド部材30とを備えている。
容器60は、基体11を搬送(搬入および搬出)するための開口を上側に有し、基体11全体を浸漬するための所定量の流動性材料20を収容している。また、容器60中には、スライド部材30が流動性材料20の外部との界面22に、その一部が浸るように固定されている。
基体11は、第1のパターン形成装置で説明した基体11と同様の構成を有し、ここでは搬送手段により保持されている。
搬送手段は、基体11を、その面内方向に移動させながら、容器60中の流動性材料20に浸漬すると共に、基体11のテンプレート構造18上面がスライド部材30と所定の間隔を保ちながら引き上げて搬送するものである。ここでの搬送手段は、基体11を保持する保持手段を備え、保持手段は、基体11を搬送する際に、基体11の窪み17の開口が容器60内のスライド部材30と対向するように保持している。
スライド部材30は、容器60中の流動性材料20と外部との界面22に、その一部が流動性材料20に浸るように固定されている。具体的には、例えば板状のスライド部材30は、その長手方向が流動性材料20の界面22に対して平行になるよう延在すると共に、その一部が流動性材料20に浸り、その他の一部が外部に露出した状態で固定されている。ここでのスライド部材30は、テンプレート構造18の上面と対向する親液性表面が平面を有しているものが好ましい。基体11を引き上げる際に、毛細管現象により、スライド部材30とテンプレート構造18との間が流動性材料20により満たされるため、効率よく窪み17の平面形状に対応した流動性材料20のパターンが形成されるからである。
このパターン形成装置では、保持された基体11は、搬送手段により容器60中の流動性材料20に浸漬されると、流動性材料20がテンプレート構造18に接触する。こののち、基体11を流動性材料20中から引き上げると、界面22に固定されたスライド部材30とテンプレート構造18とが所定の間隔を保持しながら基体11が移動する。これにより、テンプレート構造18上において余分な流動性材料20が除去され、窪み17の平面形状に対応した流動性材料20のパターンが形成される。こののち、必要に応じて、窪み17中の流動性材料20を乾燥あるいは焼成し、パターン21(ここでは図示せず)が形成される。
このように第3のパターン形成装置では、基体11を容器60内の流動性材料20中に浸漬したのち、引き上げると共にスライド部材30に対して移動させて、窪み17に流動性材料20を充填する。基体11には、テンプレート構造18として、窪み17の底面および側壁の一部に親液性領域16A、窪み17を取り囲む領域に撥液性領域18がそれぞれ設けられているので、高精細なパターンを高精度に形成することができる。この他の作用効果については、上記したパターン形成方法と同様である。
(第4のパターン形成装置)
図15は第4のパターン形成装置の断面構成を表している。第4のパターン形成装置は、容器60の構成、容器60中の流動性材料20の構成が異なると共に複数のスライド部材30を設けたことを除き、第3のパターン形成装置と同様の構成を有している。
容器60は、基体11を搬出するための開口を上側に有すると共に、開口と対向する底面に基体11を搬入するための基板投入口61を有している。容器60には、基板投入口61側に流動性材料20A、上部開口側に流動性材料20Bが、それぞれ分離した状態で存在すると共に、流動性材料20Aと流動性材料20Bとの間に界面22A、流動性材料20Bと外部との間に界面22Bとを有して収容されている。すなわち、流動性材料20A,20Bは容器60の深さ方向に分離した状態で収容されている。これらの流動性材料20A,20Bは、互いに異なる比重を有し、かつ互いに相溶性がないものにより構成されている。ここでは、流動性材料20Aにおいて流動性材料20Bよりも比重が大きくなっている。また、容器60中には、スライド部材30A,30Bが流動性材料20Aと流動性材料20Bとの界面22A、流動性材料20Bと外部と界面22Bにそれぞれ固定されている。
基板投入口61は、基体11が容器60中の流動性材料20中に移動する際の入り口となる部分であり、一対のローラ61A,61Bを有している。これらのローラ61A,61Bは、互いに接すると共に回転軸が平行になるように設けられている。ローラ61A,61Bは、基体11が容器60中の流動性材料20中に移動する際に、基体11を挟み込み、それぞれが回転することにより基体11を移動させると共に、容器60から外部へ流動性材料30が漏れないようにするものである。
搬送手段は、基体11を、その面内方向に移動させながら、容器60の基板投入口61から流動性材料20Aに浸漬すると共に、基体11のテンプレート構造18上面がスライド部材30A,30Bと所定の間隔を保ちながら引き上げて搬送するものである。ここでの搬送手段は、基体11を保持する保持手段を備え、保持手段は、基体11を搬送する際に、基体11の窪み17の開口が容器60内のスライド部材30A,30Bと対向するように保持している。
スライド部材30Aは、容器60中の流動性材料20Aと流動性材料20Bとの界面22Aに対して、平行になるよう延在すると共に、その一部が流動性材料20Aに浸り、その他の一部が流動性材料20Aに浸った状態で固定されている。また、スライド部材30Bは、第3のパターン形成装置におけるスライド部材30と同様に固定されている。ここでのスライド部材30A,30Bは、テンプレート構造18の上面と対向する親液性表面が平面を有しているものが好ましい。第3のパターン形成装置におけるスライド部材30と同様の理由からである。
このパターン形成装置では、保持された基体11は、搬送手段により容器60の基板投入口61から流動性材料20Aに浸漬されると、流動性材料20Aがテンプレート構造18に接触する。こののち、基体11が流動性材料20Aを通過して流動性材料20B中に移動すると、基体11が界面22Aに固定されたスライド部材30Aと所定の間隔に保持しながら移動する。これにより、テンプレート構造18上において余分な流動性材料20Aが除去され、窪み17の平面形状に対応した流動性材料20Aのパターンが形成される。次いで、基体11が流動性材料20Bから引き上げられると、基体11が界面22Bに固定されたスライド部材30Bとテンプレート構造18との間隔を所定の距離に保持しながら基体11が移動する。これにより、テンプレート構造18上において余分な流動性材料20Bが除去されると共に窪み17中の流動性材料20Aの上に流動性材料20Bのパターンが形成される。こののち、必要に応じて、窪み17中の流動性材料20A,20Bを乾燥あるいは焼成し、二層構造を有するパターン21(ここでは図示せず)が形成される。
このように第4のパターン形成装置では、基体11を、容器60内において深さ方向で分離した状態の流動性材料20A,20Bに浸漬したのち、引き上げると共にスライド部材30A,30Bに対して移動させて、窪み17内に流動性材料20A,20Bのパターンを形成する。基体11には、テンプレート構造18として窪み17の底面および側壁の一部に親液性領域16A、窪み17を取り囲む領域に撥液性領域18がそれぞれ設けられているので、高精細なパターンを高精度に形成することができる。その上、二層構造のパターンを良好に形成することができる。この他の作用効果については、上記したパターン形成方法および第3のパターン形成装置と同様である。
(第5のパターン形成装置)
図16は第5のパターン形成装置の断面構成を表している。第5のパターン形成装置は、容器60とその中の流動性材料20およびスライド部材30の構成が異なることを除き、第3および第4のパターン形成装置と同様の構成を有している。
容器60は、その上側に基体11を搬入するための開口と搬出するための開口と共にそれらの開口の間に設けられた仕切り板62を有し、かつ容器60の深さ方向および水平方向に分離した状態の流動性材料20A,20Bを収容している。容器60中の流動性材料20A,20Bは、互いに異なる比重を有し、かつ互いに相溶性がないものにより構成され、ここでは流動性材料20Aにおいて流動性材料20Bよりも比重が大きくなっている。このため、容器60中では、流動性材料20A,20Bは、深さ方向にそれらの比重の差により分離され、水平方向に仕切り板62により分離されている。仕切り板62は、容器60上面から中程までの間に、その下端が流動性材料20Aと流動性材料20Bとの深さ方向の界面22Aよりも下側になるように設けられている。また、容器60中には、スライド部材30A,30Bが流動性材料20Aと流動性材料20Bとの深さ方向の界面22A、流動性材料20Bと外部との界面22Bにそれぞれ固定されている。
搬送手段は、以下の経路を通るように基体11を搬送するものである。まず、基体11を、その面内方向に移動させながら容器60の流動性材料20Aが外部と接している開口側から流動性材料20Aに浸漬する。次いで、流動性材料20Aに浸漬された状態の基体11を仕切り板62と容器60底面との間を通過させる。そののち、基体11の面内方向に移動させながら流動性材料20A,20Bの深さ方向の界面22A、流動性材料20Bと外部との界面22Bをこの順で通過させると共に、テンプレート構造18上面がスライド部材30A,30Bと所定の間隔を保ちながら引き上げる。ここでの搬送手段は、基体11を保持する保持手段を備え、保持手段は、基体11を搬送する際に、基体11の窪み17の開口が容器60内のスライド部材30A,30Bと対向するように保持している。
スライド部材30A,30Bは、第4のパターン形成装置におけるスライド部材30A,30Bと同様の構成を有すると共に、同様に固定されている。
このパターン形成装置では、保持された基体11は、搬送手段により容器60の流動性材料20Aが外部と接している開口側から流動性材料20Aに浸漬されると、流動性材料20Aがテンプレート構造18に接触する。基体11が仕切り板62の下を通過したのち、基体11が流動性材料20Aを通過し、流動性材料20B中に移動すると、界面22Aに固定されたスライド部材30Aとテンプレート構造18とが所定の間隔を保持しながら基体11が移動する。これにより、テンプレート構造18上において余分な流動性材料20Aが除去され、窪み17の平面形状に対応した流動性材料20Aのパターンが形成される。次いで、基体11が流動性材料20Bから引き上げられると、界面22Bに固定されたスライド部材30Bとテンプレート構造18とが所定の間隔を保持しながら基体11が移動する。これにより、テンプレート構造18上において余分な流動性材料20Bが除去され、窪み17中の流動性材料20Aのパターンの上に流動性材料20Bのパターンが形成される。こののち、必要に応じて、窪み17中の流動性材料20A,20Bを乾燥あるいは焼成し、二層構造を有するパターン21(ここでは図示せず)が形成される。
このように第5のパターン形成装置では、基体11を、容器60内で深さ方向および水平方向に分離した状態の流動性材料20A,20Bに浸漬したのち、引き上げると共にと共にスライド部材30A,30Bに対して移動させて、窪み17の平面形状に対応した流動性材料20A,20Bのパターンを形成する。基体11には、テンプレート構造18として、窪み17の底面および側壁の一部に親液性領域16A、窪み17を取り囲む撥液性領域18がそれぞれ設けられているので、高精細なパターンを高精度に形成することができる。この他の作用効果については、上記したパターン形成方法および第3および第4のパターン形成装置と同様である。
(第6のパターン形成装置)
図17は第6のパターン形成装置の断面構成を表している。第6のパターン形成装置は、スライド部材30Bの配置および基体11の搬送経路が異なることを除き、第5のパターン形成装置と同様の構成を有している。
スライド部材30Bは、流動性材料20と外部との界面22Cに、その一部が外部と接するように固定されている。
搬送手段は、以下の経路を通るように基体11を搬送する。まず、基体11を、その面内方向に移動させながら容器60の流動性材料20Bが外部と接している開口側から流動性材料20Bに浸漬する。次いで、テンプレート構造18上面がスライド部材30A,30Bと所定の間隔を保つようにしながら、基体11を流動性材料20Bと流動性材料20Aとの深さ方向の界面22Aを通過させ、流動性材料20Aに移動させる。基体11を仕切り板62と容器60底面との間を通過させたのち、基体11の面内方向に移動させながら流動性材料20Aと外部との界面22Cを通過させると共に、基体11のテンプレート構造18上面がスライド部材30A,30Bと所定の間隔を保ちながら引き上げる。ここでの搬送手段は、基体11を保持する保持手段を備え、保持手段は、基体11を搬送する際に、基体11の窪み17の開口が容器60内のスライド部材30A,30Bと対向するように保持している。
第6のパターン形成装置では、保持された基体11は、搬送手段により容器60の流動性材料20Bが外部と接している開口側から流動性材料20Bに浸漬されると、流動性材料20Bがテンプレート構造18に接触する。そののち、基体11が流動性材料20Bを通過して流動性材料20A中に移動すると、界面22Aに固定されたスライド部材30Aとテンプレート構造18とが所定の間隔を保持しながら基体11が移動する。これにより、テンプレート構造18上において余分な流動性材料20Bが除去され、窪み17の平面形状に対応した流動性材料20Bのパターンが形成される。基体11が仕切り板62と容器60底面との間を通過したのち、基体11が流動性材料20Bから引き上げられると、界面22Cに固定されたスライド部材30Bとテンプレート構造18とが所定の間隔を保持しながら基体11が移動する。これにより、テンプレート構造18上において余分な流動性材料20Aが除去されると共に窪み17中の流動性材料20Bのパターンの上に流動性材料20Aのパターンが形成される。こののち、必要に応じて、窪み17中の流動性材料20A,20Bを乾燥あるいは焼成し、二層構造を有するパターン21(ここでは図示せず)が形成される。よって、第6のパターン形成装置では、第5のパターン形成装置と同様の作用効果が得られる。
<2.第2の実施の形態>
[(2−1)パターン形成方法]
図18〜図21を参照して本発明の第2の実施の形態に係るパターン形成方法を説明する。
第2の実施の形態のパターン形成方法は、テンプレート形成工程を除き、第1の実施の形態のパターン形成方法と同様である。以下、テンプレート形成工程について詳細に説明する。
(テンプレート形成工程)
まず、図18(A)に示したように基体11A上に、例えば厚さ1.5nmの接着層13を第1の実施の形態のパターン形成方法と同様にして形成する。基体11Aとしては、例えば、ガラス基板、シリコン基板あるいは石英基板などが挙げられるが、後述するように選択的に一部が除去される少なくとも最上層が上記した親液性材料により構成されていればよい。接着層13を構成する材料および接着層13の形成方法としては、第1の実施の形態において説明したものと同様のものが挙げられる。なお、ここでは基体11Aとしてガラス基板を用いるものとする。また、ここでの接着層13は、基体11Aと後述する撥液性材料層14との接着性を高めるためのものであり、基体11Aと撥液性材料層14とが十分に接着可能であるならば、接着層13は設けなくてもよい。
続いて、図18(B)に示したように、接着層13上に、第1の実施の形態と同様にして、フッ素樹脂からなる撥液性材料層14を形成する。ここでは、CYTOPからなる撥液性材料層14を400nmの厚さで形成するものとする。そののち、図18(C)に示したように、例えば酸素プラズマによる反応性イオンエッチングによって撥液性材料層14の表面を粗化する。
続いて、図19(A),図19(B)に示したように、撥液性材料層14上に、第1の実施の形態と同様にしてレジストパターン15を形成する。図19(A)はレジストパターン15の平面構成を表し、図19(B)は図19(A)のXIX(B)−XIX(B)線における断面構成を表している。
続いて、図20(A),図20(B)に示したように、レジストパターン15をマスクにした、例えば、酸素プラズマによる反応性イオンエッチングによって撥液性材料層14および接着層13を選択的に除去する。図20(A)はレジストパターン15の平面構成を表し、図20(B)は図20(A)のXX(B)−XX(B)線における断面構成を表している。これにより、撥液性材料層14および接着層13には、レジストパターン15に対応した形状の開口部が形成され、その開口部内に基体11Aの表面が露出する。こののち、レジストパターン15を除去する。
続いて、図21(A),図21(B)に示したように、撥液性材料層14をマスクにした、例えばウェットエッチングにより、基体11Aの一部を溝状に除去する。これにより、基体11Aの除去された溝状部分の側壁および底面に親液性領域16Aを有する窪み17Aが形成される。ここでは基体11Aとしてガラス基板を用いているため、エッチング液としては、例えばフッ酸などを用いる。最後に、図18(C)に示した工程において粗化された撥液性材料層14の上面の塗れ性を回復させるために、撥液性材料層14に対して、加熱処理(例えば150℃程度、10分間)を施す。以上により、基体11Aに、窪み17Aを形成すると共に、窪み17Aの底面および側壁の一部に親液性領域16A、窪み17Aを取り囲む領域に撥液性領域16Bがそれぞれ形成され、テンプレート構造18Aが完成する。
このテンプレート構造18Aでは、親液性領域16Aの表面自由エネルギーが50mJ/m2 以上、撥液性領域16Bの表面自由エネルギーが30mJ/m2 以下となっている。また、窪み17Aの深さは、1nm以上10μm以下になっていることが好ましい。高精細なパターンを良好に形成できるからである。
本実施の形態のパターン形成方法では、テンプレート構造18Aとして、基体11Aの一部を選択的に除去することにより、基体11Aに、窪み17Aの底面および側壁の一部に親液性領域16A、窪み17Aを取り囲む領域に撥液性領域16Bをそれぞれ形成した。このため、流動性材料20がテンプレート構造18Aに接触した基体11Aとスライド部材30とを相対的に移動させても、窪み17A側壁において、親液性領域16Aと流動性材料20との接触状態が維持されたまま、余分な流動性材料20が除去される。これにより、流動性材料パターン形成工程において窪み17Aの底面が露出しにくくなり、窪み17Aの平面形状に対応した形状のパターンが形成される。よって、高精細なパターンを高精度に形成することができる。特に、上記したテンプレート形成工程によりテンプレート構造18Aを形成するようにしたので、高精細なテンプレートパターンを形成することができる。その他の作用効果については、第1の実施の形態のパターン形成方法と同様である。
本実施の形態のパターン形成方法を用いたパターン形成装置としては、例えば、上記した第1〜第6のパターン形成装置が挙げられ、同様の作用効果が得られる。
続いて、本実施の形態のパターン形成方法の適用例について説明する。本実施の形態のパターン形成方法は、例えば薄膜トランジスタ(TFT)の製造方法に用いることができる。
[(2−2)パターン形成方法の適用例(薄膜トランジスタの製造方法)]
図22および図23を参照してボトムゲート型の薄膜トランジスタの製造方法を説明する。
まず、図22(A)に示したように、ガラス基板41上に、例えば厚さ200nmのクロムよりなるゲート電極42を形成する。具体的には、ガラス基板41の一面に、例えば、スパッタリング法により厚さ200nmのクロムよりなる膜を形成し、そののち、例えばフォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いてクロムよりなる膜を所定の形状にする。
続いて、図22(B)に示したようにゲート電極42を覆うように、ガラス基板41上に、例えばプラズマCVD法により窒化シリコンからなる厚さ500nmのゲート絶縁膜43を形成する。なお、ゲート絶縁膜43が上記した基体11Aあるいはその親液性材料からなる最上層に対応する。
続いて、図22(C)に示したように、窪み46を有するテンプレート構造を形成する。具体的には、まず、ゲート絶縁膜43上に、例えばCYTOPなどのフッ素樹脂からなる厚さ300nmの撥液性材料層44を形成し、そののち、酸素プラズマによる反応性イオンエッチングによって撥液性材料層44の表面を粗化する。次いで、撥液性材料層44上に、ゲート電極42と対向する開口部を有するレジストパターンを形成する。続いて、このレジストパターンをマスクにした、例えば酸素プラズマによる反応性イオンエッチングによって、撥液性材料層44を選択的に除去する。これにより、撥液性材料層44にゲート電極42と対向した開口部が形成され、この開口部内にゲート絶縁膜43の表面が露出する。続いて、レジストパターンをマスクにした、CF4 、酸素およびアルゴンからなるプラズマによって、ゲート絶縁膜43を、例えば200nmの深さまで溝状に除去する。これにより、ゲート絶縁膜43の除去された溝状部分の側壁および底面に親液性領域45Aを有する窪み46が形成される。最後に、レジストパターンを除去したのち、撥液性材料層44の粗化された上面の塗れ性を回復させるために、撥液性材料層44に対して、加熱処理(例えば150℃程度、10分間)を施す。これにより、窪み46の底面および側壁の一部に親液性領域45A、窪み46を取り囲む領域に撥液性領域45Bがそれぞれ形成されたテンプレート構造が完成する。
次に、図22(D)に示したように、窪み46に半導体層47を形成する。具体的には、例えば、流動性材料としてシクロペンタシラン含む液体シリコン材料を用いて、上記のパターン形成方法の流動性材料接触工程および流動性材料パターン形成工程と同様の手順を経ることにより、窪み46の平面形状に対応した液体シリコン材料のパターンを形成する。こののち、400℃、1時間加熱処理を施し、厚さ200nmのアモルファスシリコンからなる半導体層47が形成される。
続いて、図23(A)に示したように、半導体層47上に、例えば、プラズマCVD法によりリンがドープされたアモルファスシリコンからなる厚さ50nmのn型半導体層48を形成する。そののち酸素プラズマによる反応性イオンエッチングによって撥液性材料層44を除去する。
続いて、図23(B)に示したように、n型半導体層48の一部およびゲート絶縁膜43を覆う一対のソースドレイン電極49を形成する。具体的には、n型半導体層48およびゲート絶縁膜43を覆うように、スパッタリング法により厚さ200nmのクロム膜を形成し、そののち、例えばフォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いてクロムよりなる膜を所定の形状にする。
最後に、一対のソースドレイン電極49の間に露出したn型半導体層48を、CF4 、酸素およびアルゴンからなるプラズマによって除去することによりチャネル領域を形成する。これにより、図23(C)に示したボトムゲート型の薄膜トランジスタが完成する。
この薄膜トランジスタの製造方法では、テンプレート構造として、ゲート絶縁膜43の一部を選択的に除去して、ゲート電極42と対向するように、窪み46を形成すると共に、窪み46の底面および側壁の一部に親液性領域45A、窪み46を取り囲む撥液性領域45Bをそれぞれ形成した。そののち、上記したパターン形成方法の流動性材料接触工程および流動性材料パターン形成工程と同様の手順を経て半導体層47をパターニングした。これにより、窪み46の平面形状に対応した形状の半導体層47が形成される。すなわち、高精細な半導体層47を高精度に形成することができる。特に、上記したテンプレート形成工程によりテンプレート構造を形成するようにしたので、高精細な半導体層47のパターンを形成することができる。その他の作用効果については、上記したパターン形成方法と同様である。
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記した実施の形態において説明した態様に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記した実施の形態では、パターン形成方法の適用例として、ボトムゲート型の薄膜トランジスタの製造方法を例に挙げて説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。本発明のパターン形成方法は、液晶表示素子、有機電界発光素子あるいはフォトセンサなどの電子デバイスまたはそれを用いた装置などの電子機器の製造方法や、光散乱シートあるいはマイクロレンズなどの光学材料の製造方法についても、同様に適用可能である。具体的には、各種電子デバイスの電極パターン、プリント回路基板の電極パターン、光散乱シートの散乱層パターン、マイクロレンズパターン、各種の電子デバイスの電極パターン、トランジスタの絶縁層パターン、塗布型半導体のパターン、有機電界発光材料のパターン、あるいは保護膜パターンなどである。
また、上記した実施の形態では、溝状の形状を有する開口部を持ったレジストパターンを形成し、その開口部の形状に対応した窪みを有するテンプレート構造を備えた基体を形成するようにしたが、その他の形状の開口部を有するレジストパターンを形成し、その開口部の形状に対応した窪みを有するテンプレート構造を備えた基体を形成するようにしてもよい。この形状としては、例えば、円形や多角形などが挙げられる。その場合においても、その形状に対応した窪みを有するテンプレート構造を用いて、それに対応したパターンを形成することができる。また、上記した実施の形態では、窪みの形状を、その平面形状が長さよりも幅のほうが狭くかつ直線状に延在する矩形のものとし、その断面形状が矩形のものとしたが、それに限られるものではない。例えば、窪みの形状としては、その平面形状が曲線状となっているものでもよいし、その幅が一定ではないものでもよい。また、その断面形状も台形となっているものでもよいし、曲線を含む輪郭を有するものでもよい。