JP5375480B2 - 回転機の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、突極性を有する回転機の端子に直流電源の正極および負極を選択的に接続するスイッチング素子を備える電力変換回路を操作することで前記回転機の制御量を制御するに際し、前記回転機を流れる電流の高調波成分を検出することによって前記回転機の回転角度を推定する回転機の制御装置に関する。
この種の制御装置としては、例えば下記特許文献1に見られるように、3相電動機の推定d軸の正方向および負方向に交互に電圧を印加することで電動機を実際に伝播する電流信号に基づき電動機の電気角を推定するものも提案されている(段落「0038」)。
ただし、上記のように電気角検出用の電圧を印加する場合、この電圧の印加によって可聴周波数帯域のノイズ(騒音)が生じる。このため、騒音が嫌われる状況下にあっては、電動機のセンサレス制御として上記技術を適用することが避けられる傾向にある。
そこで従来、例えば下記非特許文献1に見られるように、モータジェネレータを流れる電流のq軸成分がd軸成分と比較して十分に小さい状況下、電力変換回路(インバータ)の操作状態がゼロベクトルである期間における電流微分値に基づき電気角を推定することも提案されている。
特許第3454212号公報
柴野、久保田、「高調波成分を重畳しないIPMSMの磁極位置推定における応答性に関する考察」、電気学会全国大会、平成21年
ただし、上記非特許文献1に記載の技術では、電動機の制御量を制御するために電動機に流す電流である基本波電流の位相が電気角の推定処理によって制約を受けるという問題がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、回転機を流れる電流の高調波成分を検出することによって前記回転機の回転角度を推定するに際し、回転機の制御量の制御との干渉を抑制することのできる回転機の制御装置を提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
構成1は、突極性を有する回転機の端子に直流電源の正極および負極を選択的に接続するスイッチング素子を備える電力変換回路を操作することで前記回転機の制御量を制御するに際し、前記回転機を流れる電流の高調波成分を検出することによって前記回転機の回転角度を推定する回転機の制御装置において、前記検出される高調波成分の原因となる高調波電圧に応じた前記高調波成分の目標値を算出する目標値算出手段と、前記検出される高調波成分と前記目標値との差を低減するように前記推定対象とされる回転角度を算出する回転角度推定手段とを備えることを特徴とする。
回転機に印加される高調波電圧によって回転機に流れる電流の高調波成分は、高調波電圧に依存する。このため、高調波電圧に応じて高調波成分の目標値を算出することができる。そして、検出される高調波成分と目標値との間に差がある場合には、高調波電圧として認識していたものに誤差があったと考えられる。そして、この誤差は、回転角度の推定誤差によって生じるものである。このため、検出される高調波成分と目標値との差は、回転角度の推定誤差と相関を有する。そしてこの差を小さくするほど回転角度の推定誤差を小さくすることができる。上記発明では、この点に鑑み、回転角度を推定する。
構成2は、構成1において、前記高調波電圧を微少に変化させた場合に想定される前記目標値の微少変化方向であって且つ前記高調波電圧の微少変化をゼロに近づけることで前記目標値の微少変化方向が収束すると想定される方向に対し、該収束すると想定される方向に直交する方向を有する直交方向ベクトルを算出する直交方向ベクトル算出手段を更に備え、前記回転角度推定手段は、前記検出される高調波成分と前記目標値との差ベクトルと前記直交方向ベクトルとの外積値を低減するように前記回転角度を算出することを特徴とする。
上記発明では、検出される高調波成分が目標値に対して進角側にずれているのか遅角側にずれているのかを外積値の符号によって定量化することができる。このため、検出される高調波成分と目標値との差を低減する処理を簡易に行うことができる。
構成3は、構成1または2において、前記検出対象となる高調波成分は、前記回転機の制御量を制御する際に前記電力変換回路の操作状態がゼロベクトルとされる期間に生じる高調波成分であることを特徴とする。
上記電力変換回路を用いて回転機の制御量を制御する場合、ある程度の長さを有するタイムスケールにおいて回転機に印加される平均的な電圧を制御量の制御にとって適切なものとすることができるものの、極短いタイムスケールでは回転機に印加される電圧が不連続的に大きく変化するものとなる。このため、この不連続的な変化を高調波電圧とし、これに応じた高調波電流を検出することが可能となる。特に上記発明では、低回転速度時において比較的長くなる期間であるゼロベクトルとされる期間に生じる高調波成分を用いることで、高調波成分を好適に検出することができる。
構成4は、構成1または2において、前記検出対象となる高調波成分は、前記回転機の制御量を制御する際に前記電力変換回路の操作状態が有効電圧ベクトルとされる期間に生じる高調波成分であることを特徴とする。
上記電力変換回路を用いて回転機の制御量を制御する場合、ある程度の長さを有するタイムスケールにおいて回転機に印加される平均的な電圧を制御量の制御にとって適切なものとすることができるものの、極短いタイムスケールでは回転機に印加される電圧が不連続的に大きく変化するものとなる。このため、この不連続的な変化を高調波電圧とし、これに応じた高調波電流を検出することが可能となる。上記発明では、この点に鑑み、高調波成分を検出する。特に、上記発明では、有効電圧ベクトル期間を用いるために、ゼロベクトルとされる期間が短くなる状況においては、ゼロベクトルとされる期間を用いる場合よりも高調波成分の検出を適切に行うことができる。
構成5は、構成4において、前記回転機の制御量を制御すべく前記回転機に印加する指令電圧を算出し、該指令電圧とキャリアとの大小比較に基づき前記電力変換回路を操作するPWM処理手段を備え、前記検出対象となる高調波成分は、前記電力変換回路の操作状態がゼロベクトルとされる一対の期間にはさまれた有効電圧ベクトル期間に生じる高調波成分であることを特徴とする。
上記PWM処理手段による処理がなされる場合、回転機を流れる電流の高調波成分は、有効電圧ベクトル期間における電流の変化とこれに隣接するゼロベクトルとされる期間における電流の変化とが互いに逆であってその変化量が互いに略等しくなる。このため、一対のゼロベクトルとされる期間にはさまれた有効電圧ベクトル期間において生じる高調波電流は、これに引き続くゼロベクトルとされる期間において生じる高調波電流と逆位相の電流となる。一方、ゼロベクトルとされる期間における高調波電圧は、回転機に流れる基本波電流によって簡易に算出可能である。このため、一対のゼロベクトルとされる期間にはさまれる有効電圧ベクトル期間において生じる高調波電流を用いることで、この高調波電流の原因となる高調波電圧を回転機に流れる基本波電流に応じたものとして簡易に把握することができる。
構成6は、構成3〜5のいずれか1つにおいて、前記回転機の制御量の制御に際し前記回転機のトルクに寄与しない電流である無効電流を流す無効電流手段を備えることを特徴とする。
上記発明では、無効電流手段を備えることで、高調波成分を大きくすることができる。
構成7は、構成1〜4のいずれか1つにおいて、前記回転機の制御量を制御すべく前記回転機に印加する指令電圧を算出し、該指令電圧とキャリアとの大小比較に基づき前記電力変換回路を操作するPWM処理手段と、前記電力変換回路の操作状態がゼロベクトルとされる期間に先立って且つこれに隣接する有効電圧ベクトル期間を伸長させ、前記ゼロベクトルとされる期間の後であって且つこれに隣接する有効電圧ベクトル期間を前記伸長させる処理によって生じる平均電圧の変化を補償するように補正する手段とを更に備え、前記補正がなされる際に前記検出対象となる高調波成分は、前記伸長された有効電圧ベクトル期間において生じる高調波成分または前記ゼロベクトルとされる期間から次のゼロベクトルとされる期間までの期間において生じる高調波成分であることを特徴とする。
上記発明では、回転機に印加される平均的な電圧を変更することなく、高調波成分を検出する期間を伸長させることができる。
構成8は、構成1〜7のいずれか1つにおいて、前記目標値算出手段は、前記回転機の制御量を制御するために前記回転機に流す基本波電流を入力として前記目標値を算出することを特徴とする。
上記発明では、目標値を適切に算出することができる。
構成9は、構成1〜8のいずれか1つにおいて、前記回転角度推定手段は、前記検出される高調波成分と前記目標値との差を低減すべく前記回転機の制御量を制御するための演算パラメータとしての回転角度を直接操作することを特徴とする。
構成10は、構成1〜8のいずれか1つにおいて、前記回転角度推定手段は、前記検出される高調波成分と前記目標値との差を低減すべく前記回転機の制御量を制御するための演算パラメータとしての回転速度を直接操作することを特徴とする。
第1の実施形態にかかるシステム構成図。 同実施形態にかかるモータジェネレータの断面構成を示す構成図。 高調波電圧によって実際に伝播する高調波電流を示す図。 高調波電圧によって実際に伝播する高調波電流を示す図。 上記実施形態にかかる角度推定原理を説明するための図。 同実施形態にかかる目標電流の算出手法を説明するための図。 同実施形態にかかる高調波電流の検出タイミングを示すタイムチャート。 第2の実施形態にかかるシステム構成図。 第3の実施形態にかかるシステム構成図。 第4の実施形態にかかる高調波電流の検出タイミングを示すタイムチャート。 第5の実施形態にかかるシステム構成図。 同実施形態にかかる高調波電流の検出タイミングを示すタイムチャート。 第6の実施形態にかかるシステム構成図。
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる回転機の制御装置をハイブリッド車に搭載される回転機の制御装置に適用した第1の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施形態にかかる制御システムの全体構成を示す。
図示されるモータジェネレータ10は、埋め込み磁石同期モータ(IPMSM)である。すなわち、図2に示すように、モータジェネレータ10のロータ10aは、鉄のボディに永久磁石が埋め込まれて構成されている。
先の図1に示されるように、モータジェネレータ10を実際に流れる相電流(U相の実電流iu、V相の実電流ivおよびW相の実電流iw)は、回転座標変換部20によって、回転2次元座標系の電流に変換される。詳しくは、推定d軸方向(γ軸方向)の実電流iγおよび推定q軸方向(δ軸上)の実電流iδに変換される。この変換処理に際しては、推定される電気角θが用いられる。
一方、指令電流設定部22では、モータジェネレータ10に対する制御量(トルク)の指令値(要求トルクTr)に基づき、d軸上での指令電流idrおよびq軸上での指令電流iqrが設定される。そして、d軸上の指令電流idrと実電流iγとの差が偏差算出部24によって算出され、q軸上の指令電流iqrと実電流iδとの差が偏差算出部26によって算出される。そして、電流制御器28では、偏差算出部24,26の出力に基づき、d軸上での指令電圧vdrおよびq軸上での指令電圧vqrが算出される。この算出処理は、基本的には、推定d軸上での実電流id(iγ)の指令電流idrへのフィードバック制御のための操作量、および推定q軸上での実電流iq(iδ)の指令電流iqrへのフィードバック制御のための操作量の算出処理となる。このフィードバック制御は、例えば比例積分制御とすればよい。詳しくは、この際、電気角速度ωを入力とし、非干渉制御や誘起電圧補償処理によるフィードフォワード制御のための操作量が算出され、これとフィードバック制御のための操作量との和として指令電圧vdr,vqrが算出される。
上記指令電圧vdr、vqrは、3相変換部30において、U相の指令電圧vur、V相の指令電圧vvr、およびW相の指令電圧vwrに変換される。これら指令電圧vur、vvr,vwrに基づき、PWM処理部32では、指令電圧vur、vvr,vwrをモータジェネレータ10に印加するためのインバータ34の操作信号が生成される。この処理は、指令電圧vur、vvr,vwrのそれぞれと、キャリアとの大小比較に応じて、インバータ34のスイッチング素子SWをオン操作する信号およびオフ操作する信号を生成する処理である。ここで、キャリアの変動幅は、インバータ34の入力電圧(電源電圧VDC)とされる。このため、この処理は、インバータ34の入力電圧を入力として行われる。ここで、インバータ34は、一対の入力端子とモータジェネレータ10とを選択的に接続するスイッチング素子SWを複数備えて構成されるものであり、スイッチング素子SWの操作によって入力直流電圧から擬似正弦波電圧等の交流出力電圧を生成するものである。本実施形態では、インバータ34は、高電圧バッテリ36の両電極に接続されている。ちなみに、上記電源電圧VDCは、電圧センサ38によって検出される。
次に、本実施形態にかかるモータジェネレータ10の電気角θの取得にかかる処理について説明する。なお、図1には、モータジェネレータ10の回転速度が低い領域における電気角θの取得に関する処理を示しており、高回転速度領域における電気角θの取得に関する処理については記載していない。高回転速度領域においては、例えば誘起電圧に基づき電気角θを推定する手法等を採用すればよい。まずはじめに、電気角θの推定原理について説明する。
<電気角θの推定原理>
本実施形態では、低回転速度領域において、モータジェネレータ10の電気角周波数よりも高周波の電圧(高調波電圧)がモータジェネレータ10に重畳される際にモータジェネレータ10を実際に流れる電流の高周波成分(高調波電流)の検出値に基づき、電気角θを推定する。ここでは、d軸の正方向と高調波電圧ベクトルVhとのなす角度φを「0〜360°」の範囲で様々に設定した場合の高調波電流ベクトルIhの軌跡は、図3の実線となる。図示されるように、高調波電圧ベクトルVhがd軸またはq軸と一致しない限り、高調波電流ベクトルIhは、高調波電圧ベクトルVhに対してd軸方向に偏向する。これは、モータジェネレータ10のd軸インダクタンスLdの方がq軸インダクタンスLqよりも小さいためである。
ここで、上記角度φとともに回転する座標系で見ると、図4に示すように、高調波電圧ベクトルVhの変化に応じて高調波電流ベクトルIhの先端の描く軌跡は円となる(高調波電流軌跡の導出については、明細書最後部の「備考」欄を参照)。詳しくは、高調波電圧ベクトルVhの上記角度φが「180°」変化する間に高調波電流ベクトルIhは、上記円上を一周する。しかも、高調波電圧ベクトルVhの上記角度φに対する高調波電流ベクトルIhの方向は一義的に定まるため、推定される電気角θを用いて検出される高調波電流ベクトルIh=(ihγ、ihδ)が上記一義的に定まる方向からずれている場合には、推定される電気角θに誤差が生じていると考えられる。このため、高調波電圧ベクトルVhを原因として生じると想定される高調波電流ベクトル(目標高調波電流ベクトルIhr=(ihγr、ihδr))と検出される高調波電流ベクトルIh=(ihγ、ihδ)との誤差をゼロとするように電気角θを推定することで、電気角θの推定器を構築することができる。
ただし、図3からもわかるように、電気角θの推定誤差Δθの符号に対して高調波電流ベクトルIhのノルムのずれの方向は一義的に定まらない。すなわち例えば、d軸およびq軸成分がともに正の場合、推定誤差Δθが遅角側のものであるほど、高調波電流ベクトルIhのノルムが大きくなる一方、d軸成分が負であって且つq軸成分が正である場合には、推定誤差Δθが遅角側のものであるほど、高調波電流ベクトルIhのノルムは小さくなる。このため、目標高調波電流ベクトルIhrと検出される高調波電流ベクトルIhとのノルムの差を入力とし、この差をゼロとする手段として推定器を構築する場合には、その処理が煩雑となる。
そこで本実施形態では、図5に示す手法にて推定器を構築する。すなわち、電気角θに誤差がない場合の高調波電流ベクトルである目標高調波電流ベクトルIhrおよび上記円軌跡の交点における円の接線Ltと、検出される高調波電流ベクトルIhおよび目標高調波電流ベクトルIhrの差である誤差ベクトルΔIhとは、誤差ベクトルΔIhのノルムをゼロに近づける際の極限で平行となる。換言すれば、上記接線Ltに直交するベクトルである直交方向ベクトルVnと誤差ベクトルΔIhとは、誤差ベクトルΔIhのノルムをゼロに近づけた際の極限で直交する。このため、直交方向ベクトルVnと誤差ベクトルΔIhとの外積値がゼロとなるように電気角θを算出する手段を構築することで、電気角θを推定する推定器を構築することができる。特に、外積値を用いる場合、電気角θの推定誤差Δθの正負と外積値の符号との関係が、高調波電圧ベクトルVhの角度φに依存しないため、外積値をゼロとする推定器を構築しやすい。なお、上記外積値の符号が角度φに依存しないことについては、明細書最後部の「備考」欄(「誤差ベクトルΔIhと直交方向ベクトルVnとの外積値について」)を参照のこと。
さらに、明細書最後部の「備考」欄における上述した「高調波電流軌跡の導出」からわかるように、この直交方向ベクトルVnを規格化されたベクトルとすると、これは、高調波電圧ベクトルVhの上記角度φによって、(cos(−φ)、sin(−φ))となるため、高調波電圧ベクトルVhから算出可能である。このため、高調波電圧ベクトルVhを与えた際の目標高調波電流ベクトルIhを算出できれば、推定器を構築できることがわかる。次に、高調波電圧ベクトルVhと目標高調波電流ベクトルIhとの与え方について説明する。
本実施形態では、モータジェネレータ10の制御量を制御するために印加する電圧に別途高調波電圧を重畳する処理を行わない。代わりに、インバータ34の出力電圧に必然的に生じる高調波電圧を利用する。すなわち、上述したように、インバータ34は直流電源の正極および負極とモータジェネレータ10の各端子とを選択的に接続することで擬似正弦波状の電圧を生成するものである。このため、モータジェネレータ10に印加される電圧を微視的なタイムスケールで見ると、直流電源の正極および負極との接続の切替に伴って電気角周波数よりも周波数の高い高調波成分の電圧(高調波電圧)が印加される。本実施形態では、この高調波電圧を電気角θの推定のために用いる。すなわち、高調波電圧に起因してモータジェネレータ10に実際に流れる電流には、電気角速度よりも周波数の高い高調波成分(高調波電流)が含まれるため、この高調波電流を検出することで、電気角θを推定する。
ここで、高調波電圧のベクトルである高調波電圧ベクトルVh=(vhd、vhq)と、高調波電流のベクトルである高調波電流ベクトルIh=(ihd,ihq)とを用いると、モータジェネレータ10の電圧方程式は、以下の式(c1)となる。
ただし、上記の式(c1)では、d軸のインダクタンスLd、q軸のインダクタンスLq,電気子鎖交磁束定数Φ、微分演算子p、および抵抗Rを用いている。ここで、上記原理に基づく電気角θの推定が低回転速度領域に限られることから、電気角速度ωの項は無視でき、また、モータジェネレータ10を流れる電流のうち高調波電流以外の部分(基本波電流)の時間微分値も小さいと考えられることからこれを無視すると以下の式(c2)を得る。
上記の式(c2)によれば、高調波電圧ベクトルVhと高調波電流ベクトルIhとの関係が以下の式(c3)となることがわかる。
このため、インバータ34のスイッチングによって生じる高調波電圧ベクトルVhを特定することができれば、上記の式(c3)を用いて目標高調波電流ベクトルIhrを算出することができる。
ここで、本実施形態では、特にインバータ34の操作状態がゼロベクトルとされることによってモータジェネレータ10に印加される高調波電圧を用いる。ここでゼロベクトルとは、モータジェネレータ10の全相が直流電源の正極側または負極側に接続される状態である。この場合、上記の式(c2)において、左辺はゼロとなる。ここで、上記の式(c3)に鑑みれば、高調波電圧ベクトルVhが以下の式(c4)に示すように、基本波電流によって表現できることがわかる。
すなわち、図6に示すように、高調波電圧ベクトルVhは、基本波電流ベクトルと逆方向のベクトルとなる。以上の原理に基づき、先の図1に示した推定器によって電気角θが推定される。
<電気角θの推定処理>
先の図1に示す高調波電流検出部40は、インバータ34の操作状態がゼロベクトルとされる期間において、回転座標変換部20の出力する実電流iγ、iδの高調波成分を抽出する。すなわち、図7に示すように、ゼロベクトルV0とされる期間や、ゼロベクトルV7とされる期間における各相の電流の変動量の回転座標成分を抽出する。一方、目標高調波電流生成部42では、指令電流idr,iqrを基本波電流として用いて、目標高調波電流ベクトルIhrを算出する。すなわち、上記の式(c4)を用いて基本波電流から高調波電圧ベクトルVhを算出し、上記の式(c3)を用いて高調波電圧ベクトルVhから高調波電流ベクトルIhを算出する。偏差算出部44では、目標高調波電流ihγrと高調波電流ihγとの差を算出し、偏差算出部46では、目標高調波電流ihδrと高調波電流ihδとの差を算出する。
直交方向ベクトル生成部48では、指令電流idr,iqrを基本波電流として用いて、上記の式(c4)から高調波電圧ベクトルVhを算出し、これに基づき角度φを算出することで直交方向ベクトルVnを算出する。外積演算部50では、偏差算出部44,46によって算出された誤差ベクトルΔIhと直交方向ベクトルVnとの外積値を算出する。位置推定器52では、外積値を入力としてこれをゼロにフィードバック制御するための操作量として電気角θを算出する。一方、速度算出部56では、電気角θの微分演算によって電気角速度ωを算出する。
詳しくは、上記位置推定器52では、外積値を入力とする比例要素および積分要素を備えて電気角θを推定する。この際、推定処理周期の間の電気角θの変化を補償する処理を行う。すなわち、位置推定器52は、以下の式(c5)の演算を行う手段である。
ただし、ωlpfは、速度算出部56の出力する電気角速度ωをローパスフィルタ処理した値であることを示している。
こうして推定された電気角θや電気角速度ωが、モータジェネレータ10の制御量の制御のための演算に用いられる演算パラメータとなる。すなわち、上述したように、推定された電気角θは、座標変換演算等に用いられるパラメータとされ、推定された電気角ωは、非干渉制御や誘起電圧補償処理の演算や電気角θの演算に用いられるパラメータとされる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)目標高調波電流ベクトルIhrと検出される高調波電流ベクトルIhとの誤差ベクトルΔIhと、直交方向ベクトルVnとの外積値を低減するように電気角θを算出した。これにより、角度推定器の処理を簡素化することができる。
(2)モータジェネレータ10の制御量の制御によってインバータ34の操作状態がゼロベクトルとされる期間に生じるモータジェネレータ10を流れる電流の高調波成分を用いた。このように、低回転速度時において比較的長くなる期間であるゼロベクトル期間に生じる高調波成分を用いることで、高調波成分を好適に検出することができる。
(3)モータジェネレータ10の制御量を制御するためにモータジェネレータ10に流す基本波電流を入力として目標高調波電流ベクトルIhrを算出した。これにより、目標高調波電流ベクトルIhrを適切に算出することができる。特に、ゼロベクトル期間における高調波電圧ベクトルVhと基本波電流とは逆方向であるため、目標高調波電流ベクトルIhrの算出が容易である。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図8に、本実施形態のシステム構成を示す。なお、図8において、先の図1に示した処理や部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
本実施形態では、目標高調波電流ベクトルIhrや、直交方向ベクトルVnを、モータジェネレータ10を流れる実電流の基本波成分に基づき算出する。すなわち、目標高調波電流生成部42や直交方向ベクトル生成部48では、回転座標変換部20の出力する実電流iγ、iδを入力として、目標高調波電流ベクトルIhrや直交方向ベクトルVnを算出する。この際、実電流iγ、iδの基本波成分を抽出する処理が行われる。これは、ローパスフィルタ等によって実行することができる。
以上説明した本実施形態によっても、先の第1の実施形態の上記各効果に準じた効果を得ることができる。
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図9に、本実施形態のシステム構成を示す。なお、図9において、先の図1に示した処理や部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
本実施形態では、高調波電流ベクトルIhのノルムが小さい場合、これを電気角θの推定精度を確保するうえで要求される大きさまで増大させるべく、モータジェネレータ10に、トルクの生成に寄与しない電流(無効電流)を流す処理を行う。
すなわち、無効電流指令生成部60では、高調波電流検出部40の出力する高調波電流ihγ、ihδを入力とし、これらが小さい場合に、モータジェネレータ10に対する指令電流に無効電流を重畳する。詳しくは、加算部62にd軸電流の補正量を出力することで、指令電流設定部22によって設定された指令電流idrを補正するとともに、加算部63にq軸電流の補正量を出力することで、指令電流設定部22によって設定された指令電流iqrを補正する。これにより、モータジェネレータ10のトルクを要求トルクTrに制御しつつも、モータジェネレータ10を流れる電流を、指令電流設定部22によって設定される電流よりも大きくすることができる。
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)〜(3)の効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
(4)高調波電流ベクトルIhのノルムが小さい場合、モータジェネレータ10の制御量の制御に際しモータジェネレータ10のトルクに寄与しない電流である無効電流を流した。これにより、高調波電流ベクトルIhのノルムを増大させることができる。
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図10に、本実施形態にかかる高調波電流の検出タイミングを示す。図示されるように、本実施形態では、隣接する一対のゼロベクトルの間の有効電圧ベクトル期間における電流の変動量によって、高調波電流を検出する。この電流の変化は、その大きさが隣接するゼロベクトル期間におけるものと等しく、その変化方向が隣接するベクトル期間におけるものとは逆となる。このため、この期間における高調波電流ベクトルは、隣接するゼロベクトル期間における高調波電流ベクトルと逆位相のベクトルとなると考えられる。したがって、この際に重畳される高調波電圧ベクトルVhを、上記の式(c4)の符号を逆にしたものとすることで、上記第1の実施形態と同様の処理によって、電気角θを推定することができる。
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)、(3)の効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
(5)モータジェネレータ10の制御量を制御する際にインバータ34の操作状態が有効電圧ベクトルとされる期間に生じる高調波電流を検出した。これにより、ゼロベクトル期間が短くなる状況においては、ゼロベクトル期間を用いる場合よりも高調波電流の検出を適切に行うことができる。
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図11に、本実施形態のシステム構成を示す。なお、図11において、先の図1に示した処理や部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
本実施形態では、高調波電流ベクトルIhのノルムが小さい場合、これを電気角θの推定精度を確保するうえで要求される大きさまで増大させるべく、モータジェネレータ10に印加される電圧の平均値を指令電圧vdr、vqrに応じたものに維持しつつも、モータジェネレータ10に印加される電圧の変動量を微視的なスケールで増大させる処理を行う。
すなわち、外乱高調波電圧生成部64では、高調波電流検出部40の出力する高調波電流ihγ、ihδを入力とし、これらが小さい場合に、モータジェネレータ10に印加すべき指令電圧vdr、vqrを補正する補正量vhγ、vhδを算出する。そして、補正部66,68では、指令電圧vdr、vqrを外乱高調波電圧生成部64によって生成される補正量vhγ、vhδによって補正する。詳しくは、この補正は、図12に示すように、PWM処理における1キャリア周期単位で行われる。なお、図12(a)、図12(b)、図12(c)において、U,V,Wは、U相、V相およびW相の指令電圧についての補正後の値(電流制御器28の出力の補正後の値)とキャリアとを示している。また、電流制御器28の出力は、キャリアの1周期毎に更新されるものとする。
ここで、図12(a)、図12(b)、図12(c)は、順に高調波電流の増大量が大きくなる処理を示す。図示されるように、図12(a)では、任意のゼロベクトルV7期間に先立つ有効電圧ベクトルV1,V2期間を拡大する代わりに、この拡大を補償するように、ゼロベクトルV7期間に続く有効電圧ベクトルV1,V2期間を縮小する。これは、キャリアの半周期毎に、指令電圧vur,vvr,vwrの補正値を逆符号且つ同一量とすることで行うことができる。これにより、インバータIVの出力電圧の平均値を、指令電圧vur,vvr,vwrを適切に模擬したものに維持しつつも、有効電圧ベクトルV1,V2の期間T2を拡大することができ、ひいてはこの間の電流変化量を拡大することができる。そして、この電流変化量と同量の変化であって且つ変化方向が逆の変化は、期間T2に引き続くゼロベクトルV7から次のゼロベクトルV0までの期間T1によって生じることとなる。このため、期間T1の両端において生じる高調波電流を検出することで上記第1の実施形態の要領で電気角θを推定したり、期間T2の両端において生じる高調波電流を検出することで上記第4の実施形態の要領で電気角θを推定したりすることができる。
図12(b)は、任意のゼロベクトルV7期間に先立つ有効電圧ベクトルV1,V2期間の拡大量が大きいために、ゼロベクトルV7期間に続く有効電圧ベクトルV1,V2期間がゼロとなった場合を示す。この場合も、拡大された有効電圧ベクトルV1,V2期間T2の両端において生じる高調波電流を検出することで上記第4の実施形態の要領で電気角θを推定したり、これに隣接するゼロベクトルV7,V0期間T1の両端において生じる高調波電流を検出することで上記第1の実施形態の要領で電気角θを推定したりすることができる。
図12(c)は、任意のゼロベクトルV7期間に先立つ有効電圧ベクトルV1,V2期間の拡大量が大きいために、ゼロベクトルV7期間に続く有効電圧ベクトルV1,V2期間の縮小によっては、上記拡大を補償することができない場合を示している。このため、ゼロベクトルV7期間に引き続く期間として、有効電圧ベクトルV1,V2とは、各相のスイッチング状態を逆転させた有効電圧ベクトルV4,V5を設けている。この場合であっても、拡大された有効電圧ベクトルV1,V2期間T2の両端や、これに隣接するゼロベクトルV7、有効電圧ベクトルV4,V5およびゼロベクトルV0の期間T1の両端において生じる高調波電流を検出することで、上記第1、4の実施形態の要領で電気角θを推定することができる。
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)〜(3)の効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
(6)ゼロベクトルとされる期間に先立って且つこれに隣接する有効電圧ベクトル期間を伸長させ、ゼロベクトル期間の後であって且つこれに隣接する有効電圧ベクトル期間を前記伸長させる処理によって生じる平均電圧の変化を補償するように補正した。これにより、モータジェネレータ10に印加される平均的な電圧を変更することなく、高調波電流を検出する期間を伸長させることができる。
(第6の実施形態)
以下、第6の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図13に、本実施形態のシステム構成を示す。なお、図13において、先の図1に示した処理や部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
本実施形態では、外積演算部50の出力する外積値をゼロにフィードバック制御するための直接の操作量を、モータジェネレータ10の制御量の制御のための演算に用いるパラメータとしての電気角速度ωとする。そして、この電気角速度ωから電気角θを算出する。
すなわち、速度推定器70では、外積演算部50から出力される外積値を入力としてこれをゼロにフィードバック制御すべく電気角速度ωを操作する。これは、上記第1の実施形態同様、外積値を入力とする比例要素及び積分要素の和を算出する処理とすればよい。ただし、上記第1の実施形態におけるものとは、そのゲインを相違させる。そして、速度推定器70によって推定された電気角速度ωを入力とし、積分器72によって、電気角θを算出する。
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
<高調波電流ベクトルIhおよび高調波電圧ベクトルVhについて>
有効電圧ベクトル期間において生じる高調波電流としては、上記第4の実施形態において例示したように一対のゼロベクトル期間によってはさまれる有効電圧ベクトル期間において生じるものに限らない。例えば先の図10における単一の有効電圧ベクトル期間(電圧ベクトルV1または電圧ベクトルV2)に生じるものであってもよい。この場合、高調波電圧ベクトルVhは、上記単一の有効電圧ベクトルから抵抗Rにおける基本波電流による電圧降下ベクトル(上記の式(c2)の右辺第1項)を減算したベクトルとして算出可能である。
また、上記第1〜4、6の実施形態において、高調波電流の検出期間としては、有効電圧ベクトル期間とゼロベクトル期間とのいずれかに特定するものにも限らない。例えば回転速度が低い領域ではゼロベクトル期間を用いて且つ回転速度が高い領域では有効電圧ベクトル期間に切り替えてもよい。
<インバータIVの操作信号の生成処理について>
インバータIVの操作信号を生成する処理としては、指令電圧vur,vvr,vwrとキャリアとの大小比較に基づくものに限らない。例えば指令電圧vur,vvr,vwrを2相変調したものとキャリアとの大小比較に基づくものであってもよい。
さらに、PWM制御を行うものに限らず、例えば特開2008−228419号公報等に記載されているようにモデル予測制御を行うものであってもよい。この場合であっても、ゼロベクトル期間に生じる高調波電流Ihを用いるなら、上記第1の実施形態の要領で電気角θを推定することができる。また、有効電圧ベクトル期間において生じる高調波電流ベクトルIhを用いる場合、上述したように、高調波電圧ベクトルVhを、上記有効電圧ベクトルから抵抗Rにおける基本波電流による電圧降下ベクトルを減算したベクトルとして算出すればよい。
また例えば、モータジェネレータ10の制御量の制御のための電圧にd軸方向に高調波電圧を重畳するようにインバータIVの操作信号を生成する従来手法において、本発明の推定器を用いることも有効である。
<電気角等の推定器について>
電気角θや電気角速度ω等の角度相関パラメータの推定器としては、外積値の比例積分制御器に限らず、例えば2重積分制御器を更に備えてもよい。
また、高調波電流ベクトルIhを目標高調波電流ベクトルIhrにフィードバック制御するための単一の閉ループによって推定器を構成するものに限らない。例えば、高調波電圧ベクトルVhがd軸方向に一致する場合に限って、高調波電圧ベクトルVhと高調波電流ベクトルIhとの外積値をゼロにフィードバック制御する第2の閉ループを備えてもよい。この第2の閉ループは、目標高調波電流ベクトルIhrの利用に伴うモデル誤差が存在しないメリットがある。このため、この第2の閉ループを、上記モデル誤差の学習補正手段としてもよい。
さらに、角度相関パラメータの推定のための入力となる誤差パラメータとしては、外積値に限らない。例えば、高調波電流ベクトルIhと目標高調波電流ベクトルIhrとのノルムの大小関係を示す量を入力パラメータとしてもよい。この場合であっても、例えば、d軸電流を負として且つ、q軸電流を力行時には正、回生時には負とする制御に限定するなら、力行制御であるか回生制御であるかに応じて、推定器のゲインを適宜設定することができる。これは、例えば力行時において、高調波電流ベクトルIhのノルムが目標高調波電流ベクトルIhrのノルムよりも大きい場合に電気角θに進角側の誤差があり、小さい場合に電気角θに遅角側の誤差があると判断できるからである。
<目標高調波電流ベクトルIhrについて>
目標高調波電流ベクトルIhrと高調波電圧ベクトルVhとの関係を定めたマップを用意し、これを用いて高調波電圧ベクトルVhから目標高調波電流ベクトルIhrを算出するようにしてもよい。この際、マップは、予め記憶しておくことが望ましい。ただし、推定誤差Δθがない場合に検出される高調波電流ベクトルIhによってこの記憶値を更新(学習補正)するようにしてもよい。
<その他>
・上記第2、4〜6の実施形態において、上記第3の実施形態のように、無効電流指令生成部60を備えてもよい。
・上記第2,3,6の実施形態において、上記第4の実施形態によるように、有効電圧ベクトル期間において高調波電流を検出してもよい。
・上記第2〜4、6の実施形態において、上記第5の実施形態によるように、外乱高調波電圧生成部64を備えてもよい。
・上記第2〜5の実施形態において、上記第6の実施形態によるように、直接の推定対象とされる角度相関パラメータを電気角速度ωとしてもよい。
・構造上、突極性を有する電動機としては、上記モータジェネレータ10に限らない。例えば同期リラクタンスモータ(SynRM)でもよい。
・上記各実施形態では、ハイブリッド車に本発明にかかる制御装置を適用したが、これに限らず、例えば電気自動車に適用してもよい。更には内燃機関を動力源とする車両におけるパワーステアリング等の動力伝達手段としての電動機の制御装置に本発明の制御装置を適用してもよい。
(***備考***)
<1.高調波電流軌跡の導出について>
上記の式(c3)において、高調波電圧ベクトルVhのノルムVha、d軸の正方向とのなす角度φ、高調波電圧の重畳時間Δtを用いると、以下の式(c6)を得る。
ここで、原点からの距離X、高調波電流ベクトルIhのノルムIha、高調波電圧ベクトルVhと高調波電流ベクトルIhとのなす角度ψとを用いると、高調波電圧ベクトルVhとともに角度φで回転して且つ、原点との距離がXである点から見た高調波電流(ihd,ihq)の軌跡は以下の式(c7)となる。
上記Xを特定の値とした場合に上記の式(c7)が円となることを示すことができれば、原点からXの距離にあって角度φで動く点から見て高調波電流軌跡が円となることを示すことができたこととなる。これを示す容易な方法は、実際に上記軌跡が円となると仮定して算出されたXを用いることである。換言すれば、先の図3からわかるように、高調波電圧ベクトルVhがd軸方向である場合の高調波電流ベクトルIhのノルムと、高調波電圧ベクトルVhがq軸方向である場合の高調波電流ベクトルIhのノルムとの平均値をXとすることである。この場合のXは、以下の式(c8)となる。
上記の式(c8)および式(c6)を上記の式(c7)に代入して整理すると、以下の式(c9)を得る。
上記の式(c9)によれば、高調波電流の軌跡が半径「vhaΔt(Lq−Ld)/2LdLq」の円であることがわかる。また、高調波電圧ベクトルVhが角度φのとき、円の中心から高調波電流ベクトルIhの先端に向かうベクトルの方向が(cosφ、−sinφ)=(cosφ、sin(−φ))であることがわかる。これは、上記直交方向ベクトルVnに他ならない。
<誤差ベクトルΔIhと直交方向ベクトルVnとの外積について>
推定される電気角θに誤差Δθがある場合、検出される高調波電流ベクトルIhは、上記「高調波電流軌跡の導出について」の冒頭の式(c6)から、以下の式(c10)にて表現される。
上記高調波電流ベクトルIhを、推定dq軸(γδ軸)成分で表現すると、以下の式(c11)となる。
一方、目標高調波電流ベクトルIhrを、推定dq軸(γδ軸)成分で表現すると、以下の式(c12)となる。
以上から、誤差ベクトルΔIhと直交方向ベクトルVnとの外積値は、以下の式(c13)となる。
これは、推定誤差Δθの符号と外積値の符号との間の関係が、角度φに依存しないことを意味する。
10…モータジェネレータ(突極性を有する回転機の一実施形態)、34…インバータ(電力変換回路の一実施形態)、42…目標高調波電流生成部(目標値算出手段の一実施形態)。

Claims (8)

  1. 突極性を有する回転機の端子に直流電源の正極および負極を選択的に接続するスイッチング素子を備える電力変換回路を操作することで前記回転機の制御量を制御するに際し、前記回転機を流れる電流の高調波成分を検出することによって前記回転機の回転角度を推定する回転機の制御装置において、
    前記検出される高調波成分の原因となる高調波電圧に応じた前記高調波成分の目標値を、前記高調波電圧を入力として、前記高調波電圧及び前記高調波成分の関係式を用いて算出する目標値算出手段と、
    前記高調波電圧を微少に変化させた場合に想定される前記目標値の微少変化方向であって且つ前記高調波電圧の微少変化をゼロに近づけることで前記目標値の微少変化方向が収束すると想定される方向に対し、該収束すると想定される方向に直交する方向を有する直交方向ベクトルを算出する直交方向ベクトル算出手段と、
    前記回転角度を操作量として、前記検出される高調波成分及び前記目標値の差ベクトルと前記直交方向ベクトルとの外積値をゼロにフィードバック制御するように、前記推定対象とされる前記回転角度を算出する回転角度推定手段とを備えることを特徴とする回転機の制御装置。
  2. 突極性を有する回転機の端子に直流電源の正極および負極を選択的に接続するスイッチング素子を備える電力変換回路を操作することで前記回転機の制御量を制御するに際し、前記回転機を流れる電流の高調波成分を検出することによって前記回転機の回転角度を推定する回転機の制御装置において、
    前記検出される高調波成分の原因となる高調波電圧に応じた前記高調波成分の目標値を、前記高調波電圧を入力として、前記高調波電圧及び前記高調波成分の関係式を用いて算出する目標値算出手段と、
    前記高調波電圧を微少に変化させた場合に想定される前記目標値の微少変化方向であって且つ前記高調波電圧の微少変化をゼロに近づけることで前記目標値の微少変化方向が収束すると想定される方向に対し、該収束すると想定される方向に直交する方向を有する直交方向ベクトルを算出する直交方向ベクトル算出手段と、
    前記回転機の回転速度を操作量として、前記検出される高調波成分及び前記目標値の差ベクトルと前記直交方向ベクトルとの外積値をゼロにフィードバック制御するように、前記回転速度を算出する回転速度推定手段と、
    前記回転速度推定手段によって算出された前記回転速度の積分により、前記推定対象とされる前記回転角度を算出する回転角度推定手段とを備えることを特徴とする回転機の制御装置。
  3. 前記検出対象となる高調波成分は、前記回転機の制御量を制御する際に前記電力変換回路の操作状態がゼロベクトルとされる期間に生じる高調波成分であることを特徴とする請求項1または2記載の回転機の制御装置。
  4. 前記検出対象となる高調波成分は、前記回転機の制御量を制御する際に前記電力変換回路の操作状態が有効電圧ベクトルとされる期間に生じる高調波成分であることを特徴とする請求項1または2記載の回転機の制御装置。
  5. 前記回転機の制御量を制御すべく前記回転機に印加する指令電圧を算出し、該指令電圧とキャリアとの大小比較に基づき前記電力変換回路を操作するPWM処理手段を備え、
    前記検出対象となる高調波成分は、前記電力変換回路の操作状態がゼロベクトルとされる一対の期間にはさまれた有効電圧ベクトル期間に生じる高調波成分であることを特徴とする請求項4記載の回転機の制御装置。
  6. 前記回転機の制御量の制御に際し前記回転機のトルクに寄与しない電流である無効電流を流す無効電流手段を備えることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
  7. 前記回転機の制御量を制御すべく前記回転機に印加する指令電圧を算出し、該指令電圧とキャリアとの大小比較に基づき前記電力変換回路を操作するPWM処理手段と、
    前記電力変換回路の操作状態がゼロベクトルとされる期間に先立って且つこれに隣接する有効電圧ベクトル期間を伸長させ、前記ゼロベクトルとされる期間の後であって且つこれに隣接する有効電圧ベクトル期間を前記伸長させる処理によって生じる平均電圧の変化を補償するように補正する手段とを更に備え、
    前記補正がなされる際に前記検出対象となる高調波成分は、前記伸長された有効電圧ベクトル期間において生じる高調波成分または前記ゼロベクトルとされる期間から次のゼロベクトルとされる期間までの期間において生じる高調波成分であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
  8. 前記目標値算出手段は、前記回転機の制御量を制御するために前記回転機に流す基本波電流を入力として前記目標値を算出することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
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