JP5375149B2 - 無方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents

無方向性電磁鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、無方向性電磁鋼板、特にタービン発電機や、電気自動車、ハイブリッド自動車の駆動モータ、工作機械用モータなど高速回転機のロータを典型例とする、大きな応力がかかる部品に用いて好適な、高強度で疲労特性に優れ、かつ優れた磁気特性を有する無方向性電磁鋼板およびその製造方法に関するものである。
近年、モータの駆動システムの発達により、駆動電源の周波数制御が可能となり、可変速運転や商用周波数以上での高速回転を行うモータが増加している。このような高速回転を行うモータでは、ロータのような回転体に作用する遠心力は回転半径に比例し、回転速度の2乗に比例して大きくなるため、特に中・大型の高速モータのロータ材としては高強度材が必要となる。
また、近年ハイブリッド自動車の駆動モータやコンプレッサモータなどでの採用が増加している埋め込み磁石型DCインバータ制御モータでは、ロータ外周部にスリットを設けて磁石を埋設している。このためモータの高速回転時の遠心力により、狭いブリッジ部(ロータ外周とスリットの間部など)に応力が集中する。しかも、モータの加減速運転や振動により応力状態が変化するため、ロータに使用されるコア材料には高強度と共に、高い疲労強度が必要となる。
加えて、高速回転モータでは、高周波磁束により渦電流が発生し、モータ効率が低下すると共に、発熱が生じる。この発熱量が多くなると、ロータ内に埋め込まれた磁石が減磁することから、高周波域での鉄損が低いことが求められる。
従って、磁気特性に優れ、かつ疲労特性にも優れた高強度の電磁鋼板がロータ用素材として要望されている。
鋼板の高強度化手法としては、固溶強化、析出強化、結晶粒微細化および複合組織強化などが知られているが、これらの強化手法の多くは磁気特性を劣化させるため、一般的には強度と磁気特性の両立は極めて困難である。
このような状況下にあって、高張力を有する無方向性電磁鋼板について幾つかの提案がなされている。
例えば、特許文献1には、Si含有量を3.5〜7.0%と高め、さらに固溶強化のためにTi,W,Mo,Mn,Ni,Co,Alなどの元素を添加して高強度化を図る方法が提案されている。
また、特許文献2には、上記強化法に加え、仕上焼鈍条件を工夫することにより結晶粒径を0.01〜5.0 mmとして磁気特性を改善する方法が提案されている。
しかしながら、これらの方法を工場生産に適用した場合、熱延後の連続焼鈍工程や、その後の圧延工程などで板破断などのトラブルが生じやすく、歩留り低下やライン停止が余儀なくされるなどの問題があった。
この点、冷間圧延を、板温が数百℃の温間圧延とすれば、板破断は軽減されるものの、温間圧延のための設備対応が必要となること、生産上の制約が大きくなるなど工程管理上の問題も大きい。
また、特許文献3には、Si含有量が2.0〜3.5%の鋼に、MnやNiで固溶強化を図る方法が、特許文献4には、Si含有量が2.0〜4.0%の鋼に対してMnやNiの添加で固溶強化し、さらにNb,Zr,Ti,Vなどの炭窒化物を利用して、高強度と磁気特性の両立を図る技術が提案されている。
しかしながら、これらの手法では、Niなどの高価な元素を多量に添加することや、ヘゲなどの欠陥増加による歩留りの低下で高コストになるという問題があった。また、これらの開示技術で得られた材料の疲労特性については十分な検討がなされていないのが実情である。
さらに、耐疲労特性に着目した高強度電磁鋼板として、特許文献5に、Si含有量が3.3%以下の電磁鋼板の鋼組成に応じて結晶粒径を制御し、350MPa以上の疲労限を達成する技術が開示されている。
しかしながら、この方法では、疲労限の到達レベル自体が低く、昨今の要求レベル、例えば疲労限強度:500 MPa以上を満足するものではなかった。
一方、特許文献6および特許文献7には、鋼板に未再結晶組織を残留させた高強度電磁鋼板が提案されている。これらの方法によれば、熱間圧延後の製造性を維持しつつ比較的容易に高い強度が得られる。
しかしながら、発明者らが、これらの材料について、機械的特性の安定性について評価したところ、特に圧延直角方向での特性ばらつきが大きい傾向にあることが判明した。また、同材料の疲労特性についても評価したところ、平均的には高い疲労強度を示すものの、圧延直角方向の疲労特性はばらつきが大きく、比較的小さい応力でも短時間で破断する場合があることが判明した。このような場合、平均的な疲労強度は高いにも関わらず、モータの限界強度は低く設計する必要が生じる。
上述したとおり、これまでの技術では、高強度を有し、磁気特性や製造性にも優れた無方向性電磁鋼板で、しかも機械強度や疲労特性のばらつきが小さい材料を安価に安定して提供するのは困難なのが実情である。
特開昭60−238421号公報 特開昭62−112723号公報 特開平2−22442号公報 特開平2−8346号公報 特開2001−234303号公報 特開2005−113185号公報 特開2007−186790号公報
本発明は、上記の実情に鑑み開発されたもので、高速回転モータのロータ材料として好適な、安定的に高強度、高疲労特性を有し、かつ磁気特性にも優れた無方向性電磁鋼板を、その有利な製造方法と共に提案することを目的とする。
さて、発明者らは、上記の課題を解決するために、未再結晶回復組織を活用した高強度無方向性電磁鋼板の機械強度や疲労特性を綿密に検討し、機械強度や疲労強度のばらつきが発生する原因の究明に努めた。
その結果、鋼板中の未再結晶回復組織の存在形態が特性のばらつきに大きな影響を及ぼしていることを見出し、この知見に基づいて、安定した機械強度および疲労特性が得られる鋼板組織形態を明らかにした。さらに、良好な製造性の下で、高強度と低鉄損だけでなく、安定して高い疲労強度を有する高強度無方向性電磁鋼板を得るための、鋼組成および組織形態、さらには組織制御条件を明らかにして、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、
C:0.010%以下、
Si:3.5%超 5.0%以下、
Al:0.5%以下、
P:0.20%以下、
S:0.002%以上 0.005%以下および
N:0.010%以下
を含み、かつMnをS含有量(質量%)との関係で
(5.94×10-5)/(S%)≦ Mn ≦(4.47×10-4)/(S%)
を満足する範囲で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の成分組成からなり、鋼板圧延方向断面(ND−RD断面)における再結晶粒の面積率が30%以上90%以下で、かつ連結した未再結晶粒群の圧延方向長さが1.5mm以下であることを特徴とする無方向性電磁鋼板。
2.質量%で、
C:0.010%以下、
Si:3.5%超 5.0%以下、
Mn:0.5%以下、
P:0.20%以下、
S:0.005%以下および
N:0.0015%以上 0.010%以下
を含み、かつAlをN含有量(質量%)との関係で
(7.31×10-6)/(N%)≦ Al ≦(2.90×10-4)/(N%)
を満足する範囲で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の成分組成からなり、鋼板圧延方向断面(ND−RD断面)における再結晶粒の面積率が30%以上90%以下で、かつ連結した未再結晶粒群の圧延方向長さが1.5mm以下であることを特徴とする無方向性電磁鋼板。
3.質量%で、さらに、Sn,Sb,Cr,NiおよびCuのうちから選んだ1種または2種以上を、
Sn,Sbはそれぞれ0.005%以上 0.1%以下の範囲で、
Cr,Ni,Cuはそれぞれ5.0%以下の範囲で
含有することを特徴とする上記1に記載の無方向性電磁鋼板。
4.質量%で、さらに、Sn,Sb,Ca,REM,Cr,NiおよびCuのうちから選んだ1種または2種以上を、
Sn,Sbはそれぞれ0.005%以上 0.1%以下の範囲で、
Ca,REMはそれぞれ0.01%以下の範囲で、
Cr,Ni,Cuはそれぞれ5.0%以下の範囲で
含有することを特徴とする上記2に記載の無方向性電磁鋼板。
5.前記鋼板圧延方向断面(ND−RD断面)における再結晶粒の平均結晶粒径が30μm以下であることを特徴とする上記1乃至4のいずれかに記載の無方向性電磁鋼板。
6.上記1乃至4のいずれかに記載の成分組成からなるスラブを、スラブ加熱後、熱間圧延し、ついで熱延板焼鈍し、酸洗後、冷間または温間圧延を施したのち、仕上焼鈍を施す一連の工程からなる無方向性電磁鋼板の製造方法において、
スラブ加熱温度を1100℃以上1200℃以下とする、
850〜950℃での熱延板焼鈍により、熱延板焼鈍後の再結晶率を70%以上、かつ再結晶粒の平均結晶粒径を50μm以下に調整する、
冷間または温間圧延における圧下率を83%以上とする、
仕上焼鈍温度を700℃以上800℃以下とする
ことを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
7.上記1乃至4のいずれかに記載の成分組成からなるスラブを、スラブ加熱後、熱間圧延し、ついで熱延板焼鈍し、酸洗後、中間焼鈍を含む2回の冷間または温間圧延を施したのち、仕上焼鈍を施す一連の工程からなる無方向性電磁鋼板の製造方法において、
スラブ加熱温度を1100℃以上1200℃以下とする、
850〜950℃での熱延板焼鈍により、熱延板焼鈍後の再結晶率を50%以上、かつ再結晶粒の平均結晶粒径を80μm以下に調整する、
770〜950℃での中間焼鈍により、中間焼鈍後の再結晶率を50%以上、かつ再結晶粒の平均結晶粒径を120μm以下に調整する、
1回目および2回目の冷間または温間圧延における圧下率をそれぞれ50%以上とする、
仕上焼鈍温度を700℃以上800℃以下とする
ことを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、高強度かつ低鉄損で、しかも安定して高い疲労強度を呈する高強度無方向性電磁鋼板を、良好な製造性の下に得ることができる。
熱延板焼鈍温度と仕上焼鈍温度が引張強さに及ぼす影響を示すグラフである。 未再結晶粒群の圧延方向長さと引張強度の2σとの関係を示すグラフである。 破断繰返し数と最大応力との関係を示すグラフである。 破断繰返し数と最大応力との関係を示すグラフである。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明の基礎となった実験結果を示す。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
3.83%Si−0.44%Mn−0.32%Al−0.02%P−0.0019%S−0.0018%C−0.0013%Nからなる鋼スラブを、1150℃で加熱した後、1.7mm厚まで熱延した熱延板に、表1に示す種々の温度で熱延板焼鈍を施した。ついで、酸洗後、板厚:0.35mmに冷間圧延したのち、表1に示す種々の温度で仕上焼鈍した。
Figure 0005375149
これらの試料から圧延直角方向にJIS5号引張試験片を各条件につき10枚ずつ採取して引張試験を行った。
その結果を図1に示す。なお、ばらつきは標準偏差σで評価し、図1中には2σの範囲を示した。
同図に示したとおり、いずれの条件とも引張強さは平均値で700MPa以上と通常の電磁鋼板と比較して非常に高い強度を示したが、製造条件によってばらつきの程度は大きく異なっており、熱延板焼鈍を870℃とした条件4の鋼板のばらつきが最も小さい傾向を示していた。
そこで、これらの試料について、冷延焼鈍板の圧延方向断面を埋め込み研磨して組織観察を行った。
その結果、いずれも再結晶率:55〜70%で、残部は未再結晶組織との混合組織であった。未再結晶部は、正確な判別は困難であるが、元々の熱延焼鈍粒が冷間圧延により展伸した組織がいくつか連なって展伸組織群を形成しているものと思われる。条件4の鋼板は、この未再結晶粒群の圧延方向長さが他の製造条件の鋼板より短い傾向にあることが判明したので、この組織形態の違いが特性ばらつきを抑制する要因ではないかと推察した。
そこで、遡って冷間圧延前の組織を観察したところ、条件1,2は熱延で展伸された圧延組織のままであった。また、条件3〜5は部分再結晶組織であったが、条件3は再結晶率:25%、再結晶部の平均粒径:18μm、条件4は再結晶率:75%、再結晶部の平均粒径:35μm、条件5は再結晶率:90%、再結晶粒の平均粒径:68μmであった。一方、条件6〜8はいずれも再結晶率:100%で、平均粒径はそれぞれ108,145,190μmであった。
従って、条件4のように、熱延板焼鈍後に一定以上の再結晶率を有し、かつ再結晶粒を微細に留めるようにミクロ組織を作り込むことが、特性ばらつきを抑制する重要な要件であると考えた。しかしながら、上述の鋼組成では適正な熱延焼鈍組織を得るための熱延板焼鈍温度範囲が狭い範囲に限られているため、コイル全長にわたって工業的に安定して適正条件で製造するのは困難である。
そこで、熱延板焼鈍により一定の再結晶率を確保しつつ、かつ再結晶粒の成長を安定して抑制するための手段を検討した結果、微量のMnとS、もしくは微量のAlとNを活用した鋼組成とし、かつ製造条件を適切に組み合わせることにより、上記の目的が達成できることを新たに見出した。
また、この熱延焼鈍組織の制御に加えて、冷間圧延条件も適正に制御することも、本発明で目標とする冷延板焼鈍時における組織制御に重要であることも併せて見出し、かかる知見結果に基づいて、磁気特性、機械特性および疲労特性に優れ、しかもかような特性ばらつきの抑制効果が高い未再結晶回復組織を含む高強度電磁鋼板の開発に成功したのである。
さらに、上記の技術思想に基づき、より一層特性を向上する手法として、2回冷延法における適正製造条件も明らかにし、本発明を発展、完成させるに至ったのである。
次に、本発明において、鋼成分を前記の組成範囲に限定した理由について説明する。
本発明では、鋼板組織を制御する析出物として硫化物(MnS)を主に利用する場合と、窒化物(AlN)を主に利用する場合の2とおりがある。
まず、硫化物(MnS)を主に利用する場合について説明する。
C:0.010%以下
Cは、炭化物の析出により強度を高める効果を有するが、本発明の高強度化は主としてSiなどの置換型元素の固溶強化と未再結晶回復組織の利用によって達成するため、必ずしも必須ではない。むしろ、磁気特性を劣化させ、しかも高Si鋼の加工性を低下させる影響が大きいので、Cは0.010%以下に限定する。好ましくは0.005%以下、さらに好ましくは0.003%以下である。
Si:3.5%超 5.0%以下
Siは、鋼の脱酸剤として一般的に用いられる他、電気抵抗を高めて鉄損を低減する効果を有するため、無方向性電磁鋼板を構成する主要元素である。また、無方向性電磁鋼板に添加されるMn,Al,Niなど他の固溶強化元素と比較して高い固溶強化能を有するため、高抗張力化、高疲労強度化、低鉄損化を最もバランス良く両立することができる元素であるので、本発明における固溶強化の主体となる元素とし、3.5%を超えて積極的に添加する。一般的にSi量が増加すると製造性、特に熱延板の曲げ加工性は低下する傾向を示すが、後述するように熱延板の粒径を適正に制御することによって製造が可能になる。しかしながら、Si量が5.0%を超えると抗張力は増加するものの疲労限強度は急激に低下し、またSi量が5.2%の試料では冷間圧延中に亀裂を生じるほど製造性が低下するため、その上限を5.0%とした。望ましくは4.5%以下である。
Al:0.5%以下
Alは、Siと同様、鋼の脱酸剤として一般的に用いられており、電気抵抗を増加して鉄損を低減する効果が大きいため、無方向性電磁鋼板の主要構成元素の一つである。しかしながら、本発明で目的とする高強度を得るためには、Siの方が有利であり、Alの過剰な添加は圧延性の低下をもたらすため、0.5%以下に制限する。
P:0.20%以下
Pは、比較的少量の添加でも大幅な固溶強化能が得られるため、高強度化に極めて有効であるが、過剰な添加は偏析による脆化により粒界割れや圧延性の低下をもたらすので、P量は0.20%以下に制限する。
N:0.010%以下
Nは、前述したCと同様、磁気特性を劣化させるので0.010%以下に制限する。
S:0.002%以上 0.005%以下
Sは、後述するMnと共に本発明において重要な元素である。無方向性電磁鋼板においてSは一般的に、MnSなどの硫化物を形成し磁壁移動の妨げになるだけでなく、結晶粒成長を阻害することで磁気特性を劣化する有害元素であるため、極力低減することが望ましい元素である。しかしながら、本発明では、Mn,Sの含有量と製造条件によりMnSの生成を適切に制御することで、強度や疲労特性のばらつきを抑制して安定的に高強度で低鉄損な無方向性電磁鋼板を得るための、熱延焼鈍板組織、中間焼鈍組織、仕上焼鈍組織を得ることが可能である。本発明においてMnSを活用してこの効果を得るためには、0.002%以上のSが必要である。一方、S量が0.005%を超えると、本発明の製造方法によってもMnSの析出サイズ、分布が不適正となり、好適な鋼板組織に制御することが難しくなるため、その上限を0.005%以下とする。
Mn:S量との関係で、(5.94×10-5)/(S%)≦ Mn ≦(4.47×10-4)/(S%)を満足する範囲
本発明においてMnSを活用する場合、MnSの析出を制御し、鋼板組織を制御する上で、Mn量とS量の関係は関係は極めて重要である。
熱延板焼鈍後組織の再結晶率を確保し、かつ再結晶粒の成長を安定して抑制するためには、熱延工程においてスラブ加熱中のMnSの析出を抑制しつつ、かつ熱延板焼鈍中に均一微細に析出した状態とすることが重要である。そのため、Mnの上限をS含有量(質量%)との関係において(4.47×10-4)/(S%)以下とする。これを超えるとスラブ加熱中にMnSの析出量が増加するため、析出サイズが粗大になる。粗大なMnSが析出すると組織制御に有効な微細MnS量が減少するだけでなく、この粗大MnSは熱延で圧延方向に伸びた形態となるため疲労の伝播経路となりやすく、疲労強度の低下、ばらつきの増加の要因ともなる。一方、Mn量が少なすぎると、熱延板焼鈍中におけるMnSの析出量が減少し、再結晶粒の成長を抑制する効果が望めなくなるため、その下限を(5.94×10-5)/(S%)とする。好ましくは(7.99×10-5)/(S%)≦ Mn ≦(3.51×10-4)/(S%)の範囲である。
次に、窒化物(AlN)を主に利用する場合について説明する。
Al:N量との関係で、(7.31×10-6)/(N%)≦ Al ≦(2.90×10-4)/(N%)を満足する範囲
本発明においてAlNを活用する場合、AlNの析出を制御し、鋼板組織を制御する上で、Al量とN量の関係は極めて重要である。
熱延板焼鈍後の再結晶率を確保し、同時に再結晶粒の成長を抑制するためには、熱延工程においてスラブ加熱時のAlNの析出を抑制して固溶Nを残し、熱延板焼鈍中に固溶NをAlNとして微細に析出した状態にすることが重要である。そのため、Al量は、N含有量(質量%)との関係で(7.31×10-6)/(N%)≦ Al ≦(2.90×10-4)/(N%)の範囲に制御する。Al量が本範囲の上限を超えると、スラブ鋳造後の冷却過程および熱延時スラブ加熱中にAlNが析出し成長粗大化するため、熱延板焼鈍時の再結晶粒成長抑制力が不足する。一方、Al量が本範囲の下限を下回ると、熱延板焼鈍中に析出する微細AlN量が不足し、再結晶粒が成長しやすくなるため、安定した組織制御が難しくなる。好ましくは(1.40×10-5)/(N%)≦ Al ≦(1.21×10-4)/(N%)の範囲である。
N:0.0015%以上 0.010%以下
Nは、上記したAlとの関係において重要な元素である。Nは、鋼中に固溶あるいはAlNとして析出するが、このAlNの析出を適切に制御することにより、熱延板焼鈍後組織の再結晶率を確保し、かつ再結晶粒の成長を抑制することができる。本発明においてAlNを活用してこの効果を得るためには0.0015%以上のNが必要である。一方、N量が0.010%を超えると、AlNの析出が過多となったり、共存するAlが少ない場合にはSi3N4が析出して熱延板の靭性が低下し、板破断など製造性や磁気特性を劣化させるので上限を0.010%以下とする。好ましくは0.0025%以上 0.0050%以下の範囲である。
Mn:0.5%以下
AlNを活用する場合においても、Mnは、Siと同様に、電気抵抗を高めて鉄損を低減する効果があるだけでなく、鋼を固溶強化する作用も有するため、添加することができる。しかしながら、その効果はSiよりも小さいため、本発明の目的とする高強度かつ低鉄損を得るためにはSiの方が有利である。また、Mn量が過剰になると、MnSといった硫化物がスラブ鋳造、熱延時のスラブ再加熱の際に粗大に析出するようになる。かかる粗大析出物は熱延工程で圧延方向に展伸した形態となるため、疲労亀裂の伝播経路となりやすく、疲労強度の低下や特性ばらつきの要因となる。以上の観点から、Mn添加量は0.5%以下とする。
S:0.005%以下
AlNを活用する場合においても、S量が0.005%を超えると、粗大なMnSの析出が増加し、疲労強度の低下や特性ばらつきの増加要因となり、好適な鋼板組織に制御することが難しくなるため、その上限を0.005%以下とする。
上述したとおり、AlNを活用する場合には、Al,N,MnおよびS量を上記の範囲に制御する必要があるが、その他の成分、すなわちC,Si,P量については、MnSを活用する場合と同じでよい。
なお、上記した成分組成範囲については、MnSを活用する場合またはAlNを活用する場合の少なくともいずれかの成分系を満たしていればよい。
以上、MnSを活用する場合およびAlNを活用する場合における必須成分および抑制成分について説明したが、本発明では、その他、無方向性電磁鋼板の磁気特性向上や高強度化のために以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
Sn,Sb:0.005%以上 0.1%以下
Sn,Sbはいずれも、無方向性電磁鋼板の集合組織を改善し磁気特性を高める効果を有するが、その効果を得るには、Sb,Snを単独添加または複合添加するいずれの場合も0.005%以上添加する必要がある。一方、過剰に添加すると鋼が脆化し、鋼板製造中の板破断やヘゲが増加するため、Sn,Sbは単独添加または複合添加いずれの場合も0.1%以下とする。
Ca,REM:0.01%以下
AlNを活用する場合には、Ca,REMは鋼中でSを固定することで鋼の加工性、磁気特性を改善する効果を有する。ただし、0.01%を超えて添加してもその効果は飽和し、コスト高ともなるので、上限はそれぞれ0.01%とする。
一方、MnSを活用する場合には、Ca,REMは高温で硫化物を生成してMnSの形成を阻害するため、Ca,REMは添加しない。好ましくはそれぞれ1ppm以下に制御することである。
Cr:5.0%以下
Crは、鋼の電気抵抗増加に有効であり、特にSiとの複合添加によって、Si,Crをそれぞれ単独で添加したときよりも効果的に電気抵抗を高め鉄損を改善する効果、高Si鋼の製造性を改善する効果、鋼板の耐食性を高める効果を有するため、必要に応じて添加することができる。しかしながら、過剰の添加はコストアップとなり、その効果も飽和に達するので、Crは5.0%以下で添加するものとする。
Ni:5.0%以下
固溶強化および高電気抵抗化に寄与する多くの元素が、その添加により飽和磁束密度の低下を招くのに対し、Niは飽和磁束密度を低下することなく固溶強化による強度向上および高電気抵抗化による鉄損低減が可能な元素である。従って、本発明においては必要に応じ添加するが、Niは高価な元素であり過剰な添加はコスト高を招くことから、Niは5.0%以下で添加するものとする。
Cu:5.0%以下
Cuは、固溶強化元素として有用であり、また特に500℃程度の温度で時効処理を施すことにより微細なCu析出相を形成して鋼の強化に寄与するので、必要に応じて添加することができる。しかしながら、過剰な添加は鋼を脆化させるおそれがあるため、Cuは5.0%以下で添加するものとする。
次に、本発明における鋼板組織形態の限定理由について述べる。
本発明の高強度無方向性電磁鋼板は、再結晶粒と未再結晶粒の混合組織で構成されるが、この組織を適正に制御し、未再結晶粒群を適度に分散させることが重要である。
まず、再結晶粒の面積率を、鋼板圧延方向断面(ND−RD断面)組織において30%以上90%以下の範囲に制御する必要がある。再結晶面積率が30%未満では、後述するように本発明に従う熱延焼鈍組織制御を施しても、仕上焼鈍後の未再結晶粒は相互に連結している状態となり、必要な分散状態が形成されない。一方、再結晶率が90%を超えると、従来の無方向性電磁鋼板と比較して十分に優位な強度が得られなくなる。
また、連結した未再結晶粒群の圧延方向長さを1.5mm以下とすることも重要である。ここで、連結した未再結晶粒群とは、異なる熱延粒および/または異なる熱延焼鈍粒が冷間圧延により展伸した組織がいくつか連なって展伸組織を形成している未再結晶粒の固まりを意味し、圧延方向断面組織を観察し、10群以上の未再結晶粒群の圧延方向長さを測定した平均値で規定する。この未再結晶群長さを1.5mm以下に抑制することで、特に圧延直角方向の機械強度および疲労強度のばらつきを低減し、安定的に高強度・高疲労特性を有する材料を製造することが可能となる。
この理由については、必ずしも明らかではないが、未再結晶の圧延展伸組織が亀裂の伝播経路として影響することが考えられる。
すなわち、この未再結晶組織は、板厚方向に圧縮、圧延方向と圧延直角方向に展伸した組織であるが、圧延直角方向よりも圧延平行方向へ長く伸びた組織であり、形状異方性が大きい。従って、特に圧延直角方向の引張応力により亀裂が発生した場合、この未再結晶の圧延展伸組織境界に沿って、圧延方向に亀裂伝播が容易に進行しやすくなり、破壊に至りやすい場合が増加するものと考えられる。従って、かかる未再結晶組織群を分断することで亀裂伝播を抑制することができ、安定した引張強度および疲労特性が得られると考えられる。
連結した未再結晶粒群の圧延方向長さが上記の範囲であれば、必要とする強度レベルに応じて再結晶比率は30〜90%の範囲で適宜調整することができる。すなわち、必要な強度レベルが高ければ再結晶率を低くし、一方磁気特性が重視される場合には、再結晶率を高めるように調整することができる。強度レベルは主として未再結晶組織比率に依存するが、再結晶粒も細粒の方が強度を高める上で有利であり、再結晶粒の平均結晶粒径を30μm以下とすることが望ましい。
次に、本発明に従う製造方法および中間組織の限定理由について述べる。
本発明の高強度無方向性電磁鋼板の製造工程は、一般の無方向性電磁鋼板に適用されている工程および設備を用いて実施することができる。
例えば、転炉あるいは電気炉などで所定の成分組成に溶製された鋼を、脱ガス設備で二次精錬し、連続鋳造または造塊後の分塊圧延により鋼スラブとしたのち、熱間圧延、熱延板焼鈍、酸洗、冷間または温間圧延、仕上焼鈍および絶縁被膜塗布焼き付けといった工程である。
ここで、所望の鋼組織を得るために、製造条件を以下に述べるように制御することが必要である。
すなわち、まず、熱間圧延に際してスラブ加熱温度を1100℃以上1200℃以下とし、Mn,Sを適切な固溶状態とする、もしくはN,Alを必要量固溶させる。スラブ加熱温度が1100℃未満では、MnSを利用する場合、スラブ加熱時にMnSの粗大析出が増加するため熱延焼鈍時の粒成長抑制作用が不十分となる。また、AlNを利用する場合、スラブ加熱中にAlNが析出後粗大化し、固溶N量も減少するため熱延焼鈍時の粒成長抑制作用が不十分となる。一方、スラブ加熱温度が高温となると、エネルギーロスが大きくなり不経済となるだけでなく、スラブの高温強度が低下してスラブ垂れなど製造上のトラブルが発生しやすくなるため、1200℃以下に制限する。
以下、熱延板焼鈍後、冷間/温間圧延、仕上焼鈍を施す無方向性電磁鋼板の製造工程(いわゆる1回冷延法)での限定理由を述べる。
本発明に従う仕上焼鈍後組織を得るには、熱延板焼鈍後の組織を、再結晶率:70%以上でかつ再結晶粒の平均粒径:50μm以下にする必要がある。
上記の鋼組織とするには、熱延板焼鈍における焼鈍温度および焼鈍時間を適切に制御する必要がある。しかしながら、適正な焼鈍条件は、鋼組成およびスラブ加熱温度により異なるため、この焼鈍条件を一義的に定めることは難しい。
そこで、本発明では、鋼組成およびスラブ加熱温度を考慮した熱延板焼鈍条件を定め、かかる条件内で適切な熱延板焼鈍を行うことにより、熱延板焼鈍後の再結晶率が70%以上でかつ再結晶粒の平均粒径が50μm以下の熱延焼鈍組織を形成するものとした。
ここに、上記した熱延板焼鈍における焼鈍温度は850〜950℃である。
というのは、焼鈍温度が850℃未満であると、熱延板焼鈍後に70%以上の再結晶率を安定的に得ることが難しく、一方焼鈍温度が950℃超になると、本発明の鋼組成によっても熱延板焼鈍後の平均再結晶粒径が50μm を超える場合が生じるようになるからである。
なお、70%以上の再結晶率を安定的に得る観点からは、焼鈍時間は10秒以上で、また平均再結晶粒径を50μm以下とする観点からは、焼鈍時間は10分以内で調整することが好ましい。
次に、冷間または温間圧延を施すが、このときの圧下率は83%以上とする必要がある。というのは、圧下率が83%に満たないと、引き続く仕上焼鈍の際に必要となる再結晶核の量が不足するため、未再結晶組織の分散状態を適正に制御しにくくなるからである。
これらの焼鈍後組織と圧下率の条件を共に満たすことにより、引き続く仕上焼鈍での未再結晶組織の分散状態を適正に制御することが可能となる。これは、中間組織を微細化し、圧延加工で十分な歪みを導入することにより、仕上焼鈍における再結晶核が分散、増加するためであると推定される。
ついで、仕上焼鈍を施すが、この際の焼鈍温度は700℃以上800℃以下とする必要がある。というのは、焼鈍温度が700℃未満では再結晶が十分に進行せず磁気特性が大幅に劣化する場合があることに加え、連続焼鈍における板形状の矯正効果が十分に発揮されず、一方800℃を超えると未再結晶組織が消失し、強度低下の原因となるからである。
以上、熱延板焼鈍後、1回の温間または冷間圧延で最終板厚とする、いわゆる1回冷延法を適用した場合について説明したが、次に温間または冷間圧延を中間焼鈍を挟んで2回施す、いわゆる2回冷延法を適用する場合における適正な中間焼鈍組織について述べる。
2回冷延法は、1回冷延法と比べると生産性の観点からは不利であるが、素材の強度が高く1回圧延法では圧延機の能力を超える場合や、磁気特性の一層の向上を図る場合などに用いて好適な方法である。
この2回冷延法においては、中間焼鈍により組織の分断、調整を行える余地が増えるため、各工程での条件を緩和することができる。
具体的には、熱延板焼鈍後の再結晶率は50%以上とし、熱延板焼鈍後における平均結晶粒径は80μm以下とすればよい。
また、中間焼鈍後の再結晶率は50%以上かつ平均再結晶粒径は120μm以下とすればよい。
なお、中間焼鈍後の組織を、上記の鋼組織とするには、中間焼鈍における焼鈍温度および焼鈍時間を適切に制御する必要がある。しかしながら、前述した熱延板焼鈍の場合と同様、適正な焼鈍条件は、鋼組成およびスラブ加熱温度により異なるため、この焼鈍条件を一義的に定めることは難しい。
そこで、本発明では、中間焼鈍の場合にも、鋼組成およびスラブ加熱温度を考慮した焼鈍条件を定め、かかる条件内で適切な中間焼鈍を行うことにより、中間焼鈍後の再結晶率が50%以上でかつ再結晶粒の平均粒径が120μm以下の中間焼鈍組織を形成するものとした。
ここに、上記した中間焼鈍における好適焼鈍温度は770〜950℃である。
というのは、焼鈍温度が770℃未満であると、中間焼鈍後の再結晶率を50%以上にし難くなり、一方焼鈍温度が950℃超になると、再結晶粒が粗大化し、平均粒径が120μm を超える場合が生じることがあり、また経済的にも不利だからである。
なお、平均粒径を120μm以下とする観点からは、焼鈍時間は180秒以内で調整することが好ましい。
また、2回冷延法においては、1回目および2回目の冷間または温間圧延の圧下率をそれぞれ50%以上とすればよい。
なお、仕上焼鈍温度を700℃以上 800℃以下とすることは同じである。
上記した仕上焼鈍後、鉄損を低減するために鋼板の表面に絶縁コーティングを施すことが有利である。この際、良好な打抜き性を確保するためには、樹脂を含有する有機コーティングが望ましく、一方溶接性を重視する場合には半有機や無機コーティングを適用することが望ましい。
実施例1
表2に示す成分組成になる鋼スラブを、表3−1,表3−2に示す条件で、スラブ加熱、熱間圧延、熱延板焼鈍を施し、酸洗後、板厚:0.35mmまで冷間圧延を施したのち、仕上焼鈍を行った。
その際、冷間圧延前(熱延板焼鈍を行ったものは焼鈍後)および仕上焼鈍後の試料について、鋼板の圧延方向断面(ND−RD断面)を研磨、エッチングして光学顕微鏡で観察し、再結晶率(面積率)および求積法により再結晶粒の平均粒径(公称粒径)を求めた。さらに、仕上焼鈍後の圧延方向の断面組織について、未再結晶群の圧延方向長さを10群以上測定し、その平均値を算出した。
得られた無方向性電磁鋼板から、磁気特性は圧延方向および圧延直角方向にエプスタイン試験片を切り出し、磁気特性を測定した。磁気特性はL+C特性で評価した。
また、圧延直角方向にJIS5号引張試験片を各条件毎に10枚ずつ採取し、引張試験を行って引張強度(TS)の平均値とばらつきを調査した。
得られた結果を表3−1,表3−2に併記する。なお、ばらつきは標準偏差σで評価し、表3−1,表3−2には2σで示した。ここに、2σが25 MPa以内であれば、ばらつきは小さいといえる。
また、これらの試料の、展伸した未再結晶粒群の圧延方向長さと引張強度の2σとの関係について調べた結果を図2に示す。
Figure 0005375149
Figure 0005375149
Figure 0005375149
表3に示したとおり、鋼組成のうちMn量およびAl量が本発明の範囲を外れる鋼種Xを用いたNo.1〜8は、主として熱延板焼鈍温度を変化させたものであるが、TS平均値は700MPa以上と通常の電磁鋼板と比較して非常に高い強度を示すものの、TSのばらつきが大きい。これに対し、本発明の組成を満足する鋼種YおよびZより製造し、本発明の組織を満足する鋼板(発明例)はいずれも、TSの平均値は700MPa以上で、しかもTSのばらつきも2σ値で25 MPa以内と極めて安定した特性を示している。
図2に示した、圧延方向断面の組織観察より求めた未再結晶粒群の長さと引張強さの標準偏差2σの関係から明らかなように、未再結晶粒群の長さが1.5mmより短い場合にはばらつきが大幅に低減している。
さらに、図3に、鋼種XのNo.2、鋼種YのNo.12,16について調査した疲労試験結果を、また図4には、鋼種XのNo.6、鋼種ZのNo.29について調査した疲労試験結果を示す。ここで、疲労試験は、応力比:0.1の引張−引張モードとし、周波数:20Hzで評価した。
図3では、本発明の成分、組織を満たすNo.12(鋼種Y)は、ばらつきの小さい安定したS−Nカーブが得られたのに対し、本発明の範囲外であるNo.2(鋼種X)、No.16(鋼種Y)は、ばらつきが大きい結果となっており、また図4では、本発明の成分、組織を満たすNo.29(鋼Z)はばらつきの小さい安定したS−Nカーブが得られたのに対し、本発明の範囲外であるNo.6(鋼X)はばらつきが大きい結果となっている。
実施例2
表4に示す成分組成になる鋼スラブを、表5に示す種々の条件で板厚:0.30mmまで冷間圧延したのち、仕上焼鈍を施して、無方向性電磁鋼板を製造した。この際、鋼種FおよびPは冷間圧延中に割れが発生したため、以降の処理を中止した。
その他の無方向性電磁鋼板について、磁気特性(L+C特性)と引張強度(TS)の平均値およびそのばらつきについて調査した結果を表5に併記する。なお、評価は実施例1と同様の方法で行った。また、冷間圧延前(熱延板焼鈍を行ったものは焼鈍後)および仕上焼鈍後の試料についての焼鈍後の再結晶率および再結晶粒の平均粒径の測定、ならびに仕上焼鈍後の未再結晶群の圧延方向長さの測定は、実施例1と同様の方法で行った。
Figure 0005375149
Figure 0005375149
表5から明らかなように、本発明の成分組成および鋼組織を満足する発明例はいずれも、TSのばらつきが非常に小さく、安定した特性を示している。
実施例3
表4に示した鋼種I,JおよびNの組成になる鋼スラブを、表6に示す2回冷延法の条件で板厚0.35mmまで冷間圧延したのち、仕上焼鈍を施して、無方向性電磁鋼板を製造した。なお、各焼鈍後の再結晶率および再結晶粒の平均粒径の測定、ならびに仕上焼鈍後の未再結晶群の圧延方向長さの測定は、実施例1と同様の方法で行った。
かくして得られた無方向性電磁鋼板の、磁気特性(L+C特性)と引張強度(TS)の平均値およびそのばらつきについて調査した結果を表7に示す。なお、評価は実施例1と同様の方法で行った。
Figure 0005375149
Figure 0005375149
表6に示したとおり、熱延板焼鈍後および中間焼鈍後の再結晶率が不足しているNo.63および中間焼鈍後の再結晶率が不足しているNo.70、二次冷延圧下率が不足しているNo.71、中間焼鈍後の再結晶率および二次冷延圧下率が不足しているNo.66はいずれも、仕上焼鈍後の未再結晶群長さが長く、TSのばらつきが大きかった。
これに対し、本発明の製造条件、鋼組織を満足する発明例はいずれも、表7示したとおり、TSのばらつきが非常に小さく、安定した特性を示している。
本発明によれば、磁気特性に優れるのはいうまでもなく、強度特性に優れしかもそのばらつきが小さい高強度無方向性電磁鋼板を、安定して得ることができ、高速回転モータのロータ材料などの用途に好適に適用することができる。

Claims (7)

  1. 質量%で、
    C:0.010%以下、
    Si:3.5%超 5.0%以下、
    Al:0.5%以下、
    P:0.20%以下、
    S:0.002%以上 0.005%以下および
    N:0.010%以下
    を含み、かつMnをS含有量(質量%)との関係で
    (5.94×10-5)/(S%)≦ Mn ≦(4.47×10-4)/(S%)
    を満足する範囲で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の成分組成からなり、鋼板圧延方向断面(ND−RD断面)における再結晶粒の面積率が30%以上90%以下で、かつ連結した未再結晶粒群の圧延方向長さが1.5mm以下であることを特徴とする無方向性電磁鋼板。
  2. 質量%で、
    C:0.010%以下、
    Si:3.5%超 5.0%以下、
    Mn:0.5%以下、
    P:0.20%以下、
    S:0.005%以下および
    N:0.0015%以上 0.010%以下
    を含み、かつAlをN含有量(質量%)との関係で
    (7.31×10-6)/(N%)≦ Al ≦(2.90×10-4)/(N%)
    を満足する範囲で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の成分組成からなり、鋼板圧延方向断面(ND−RD断面)における再結晶粒の面積率が30%以上90%以下で、かつ連結した未再結晶粒群の圧延方向長さが1.5mm以下であることを特徴とする無方向性電磁鋼板。
  3. 質量%で、さらに、Sn,Sb,Cr,NiおよびCuのうちから選んだ1種または2種以上を、
    Sn,Sbはそれぞれ0.005%以上 0.1%以下の範囲で、
    Cr,Ni,Cuはそれぞれ5.0%以下の範囲で
    含有することを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
  4. 質量%で、さらに、Sn,Sb,Ca,REM,Cr,NiおよびCuのうちから選んだ1種または2種以上を、
    Sn,Sbはそれぞれ0.005%以上 0.1%以下の範囲で、
    Ca,REMはそれぞれ0.01%以下の範囲で、
    Cr,Ni,Cuはそれぞれ5.0%以下の範囲で
    含有することを特徴とする請求項2に記載の無方向性電磁鋼板。
  5. 前記鋼板圧延方向断面(ND−RD断面)における再結晶粒の平均結晶粒径が30μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の無方向性電磁鋼板。
  6. 請求項1乃至4のいずれかに記載の成分組成からなるスラブを、スラブ加熱後、熱間圧延し、ついで熱延板焼鈍し、酸洗後、冷間または温間圧延を施したのち、仕上焼鈍を施す一連の工程からなる無方向性電磁鋼板の製造方法において、
    スラブ加熱温度を1100℃以上1200℃以下とする、
    850〜950℃での熱延板焼鈍により、熱延板焼鈍後の再結晶率を70%以上、かつ再結晶粒の平均結晶粒径を50μm以下に調整する、
    冷間または温間圧延における圧下率を83%以上とする、
    仕上焼鈍温度を700℃以上800℃以下とする
    ことを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
  7. 請求項1乃至4のいずれかに記載の成分組成からなるスラブを、スラブ加熱後、熱間圧延し、ついで熱延板焼鈍し、酸洗後、中間焼鈍を含む2回の冷間または温間圧延を施したのち、仕上焼鈍を施す一連の工程からなる無方向性電磁鋼板の製造方法において、
    スラブ加熱温度を1100℃以上1200℃以下とする、
    850〜950℃での熱延板焼鈍により、熱延板焼鈍後の再結晶率を50%以上、かつ再結晶粒の平均結晶粒径を80μm以下に調整する、
    770〜950℃での中間焼鈍により、中間焼鈍後の再結晶率を50%以上、かつ再結晶粒の平均結晶粒径を120μm以下に調整する、
    1回目および2回目の冷間または温間圧延における圧下率をそれぞれ50%以上とする、
    仕上焼鈍温度を700℃以上800℃以下とする
    ことを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
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