JP4510559B2 - 高強度電磁鋼板とその製造方法および加工方法 - Google Patents

高強度電磁鋼板とその製造方法および加工方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4510559B2
JP4510559B2 JP2004258211A JP2004258211A JP4510559B2 JP 4510559 B2 JP4510559 B2 JP 4510559B2 JP 2004258211 A JP2004258211 A JP 2004258211A JP 2004258211 A JP2004258211 A JP 2004258211A JP 4510559 B2 JP4510559 B2 JP 4510559B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
steel sheet
strength
electrical steel
steel
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2004258211A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006070348A (ja
Inventor
英邦 村上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2004258211A priority Critical patent/JP4510559B2/ja
Publication of JP2006070348A publication Critical patent/JP2006070348A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4510559B2 publication Critical patent/JP4510559B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Description

本発明は、高強度電磁鋼板、特に高強度無方向性電磁鋼板に係わり、高速回転機用の低鉄損、かつ高磁束密度で強度の高い磁性材料および電磁開閉器用の耐摩耗性に優れた磁性材料とその製造方法に関する。
従来、ローター(回転子)用材料には積層された電磁鋼板が用いられてきたが、最近、高速回転やローター径の大型化が要求される用途では、ローターに加わる遠心力が、電磁鋼板の強度を上回る可能性が出てきた。さらにローターに磁石を組み込む構造のモーターも多くなっており、回転数はそれほど高くなくともローターの回転中にローター材料自身に加わる荷重は大きなものとなっており、疲労強度の面でも材料の強さが問題となることが多くなっている。
また、電磁開閉器はその用途上、使用するにつれて接触面が摩耗するため、電磁特性だけでなく耐摩耗性の優れた磁性材料が望まれる。
このようなニーズに対応して、最近では強度が高い無方向性電磁鋼板について検討され、いくつか提案されている。例えば、特許文献1や特許文献2では、Si含有量を高め、さらにMn,Ni,Mo,Crなどの固溶体強化成分の1種または2種以上を含有させたスラブを素材とすることが提案されているが、圧延時に板破断の発生が頻発する恐れがあり、生産性の低下、歩留りの低下をもたらすなど改善の余地があり、しかもNiやMo,Crを多量に含有しているために極めて高価な材料となる。
さらに、特許文献3では、2.5%以上のSiを含有する溶鋼から、急冷凝固法により高強度無方向性鋼板を製造することを開示している。また、特許文献4では、2.5%以上の高Si鋼を2.0%以下の低Si鋼で包むことにより圧延性の改善を図ることを開示している。これらの提案は何れもプロセスが特殊であるために、通常の電磁鋼板の製造設備では製造できず、工業的に生産することが難しいと考えられる。
特開平1−162748号公報 特開昭61−84360号公報 特開昭61−87848号公報 特開平8−41601号公報
以上のように、高強度の電磁鋼板について多くの提案がなされているが、必要な磁気特性を確保しつつ、通常の電磁鋼板製造設備を用いて、工業的に安定して製造するまでに到っていないというのが実情である。このような中で本発明者は鋼板中に加工組織を残存させた高強度電磁鋼板について特願2003−347084号で特許出願を行った。
加工組織を残存させる一つの手段として冷延後の焼鈍を再結晶が完全に起きない低温で行うことがあるが、一般的な電磁鋼板は再結晶させることが前提となっているため、このような低い温度での焼鈍を行うには炉温度の切り替えが必要であり、一般材との温度差が比較的大きいため、温度調整に時間を要するため生産の阻害要因となる場合がある。
また、焼鈍雰囲気によってはこのような中途半端な温度では未燃焼の雰囲気ガスが発生し、これが炉から漏れ出した場合これを吸引した作業者の安全を損ねたり、最悪の場合、炉内で爆発する恐れも否定できない。そのため加工組織を利用する高強度電磁鋼板において一般材と同程度の高温での焼鈍時にいかに加工組織を残存させられるかが課題として挙げられている。
本発明は、抗張力(TS)が600MPa以上の高強度で、耐摩耗性を有するとともに、特に高速で回転するモーターなど高い周波数の磁場下で使用される際に磁束密度(B50)や鉄損など優れた磁気特性を兼ね備えた高強度無方向性電磁鋼板を例えば冷間圧延性や焼鈍作業性など通常の電磁鋼板と変わることなく、安定してオンラインで製造することを目的とする。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その手段は以下のとおりである。
1)鋼板組織に加工組織を存在させ転位強化により高強度化を図る。
2)冷延後の焼鈍温度があまりにも低くならないように、鋼板の再結晶温度を上昇させ、通常の鋼板と同程度の温度で焼鈍を行っても加工組織が残存するような成分とする。
3)上記の再結晶温度をさらに上昇させるため再結晶が完了するまでの熱履歴により鋼中に微細な析出物を形成させる。
4)再結晶を遅延させるために利用する元素および析出物が磁気特性を阻害しないように制御する。
また、本発明における上記技術的手段の具体的要旨は次のとおりである。
(1)質量%で、C:0.060%以下、Si:0.2〜3.5%、Mn:0.05〜3.0%、P:0.30%以下、S:0.040%以下、Al:2.50%以下、Cu:0.1〜8.0%、N:0.020%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ、鋼板内部に再結晶組織に蚕食されていない領域あるいは再結晶組織をさらに加工することで得られる組織である加工組織が断面観察における面積率で1%以上残存し、抗張力(TS)が600MPa以上であることを特徴とする電磁鋼板。
)質量%で、C:0.060%以下、Si:0.2〜3.5%、Mn:0.05〜3.0%、P:0.30%以下、S:0.040%以下、Al:2.50%以下、Cu:0.1〜8.0%、Nb:0.03〜8.0%、N:0.020%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ、鋼板内部に再結晶組織に蚕食されていない領域あるいは再結晶組織をさらに加工することで得られる組織である加工組織が断面観察における面積率で1%以上残存し、抗張力(TS)が600MPa以上であることを特徴とする電磁鋼板。
)鋼板内部にCuからなる金属相を含有することを特徴とする(1)または)に記載の電磁鋼板。
)鋼板内部の金属元素がNbの炭化物または窒化物を含有することを特徴とする(2)に記載の電磁鋼板。
)鋼成分が質量%でさらに、Ti:1.0%以下、B:0.010%以下、Ni:5.0%以下、Cr:15.0%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)〜()のいずれかの項に記載の電磁鋼板。
)前記鋼板内部の加工組織における平均転位密度が1exp13/m2以上である(1)〜()のいずれかの項に記載の電磁鋼板。
)(1)〜()のいずれかの項に記載の電磁鋼板を製造するに際し、最終の冷間加工工程において、引張強度が50MPa以上上昇する加工を付与した後、熱処理前後の引張強度の低下代が600MPa以上となるような熱処理を施さないことを特徴とする電磁鋼板の製造方法。
)最終の冷間加工工程において5%以上の歪を付与することを特徴とする()記載の電磁鋼板の製造方法。
)最終の冷間加工後の熱処理として、1000℃以上で30秒以上保持するような熱処理を施さないことを特徴とする(7)または(8)に記載の電磁鋼板の製造方法。
10)最終の冷間加工後の熱処理として、950℃を超えない温度域で30秒以上保持する熱処理を行うことを特徴とする(7)または(8)に記載の電磁鋼板の製造方法。
(11)(1)〜()のいずれかの項に記載の電磁鋼板を部品として加工した後、鋼板中の加工組織が消失するような熱処理を施さないことを特徴とする電磁鋼板の加工方法。
本発明によれば、硬質で磁気特性の優れた高強度電磁鋼板を安定して製造することができる。すなわち本発明は固溶強化、析出強化のために用いられる添加元素が比較的低くても目的とする強度を得ることができることから、冷延性が向上し、冷間圧延工程の生産性が向上するとともに、通常操業範囲内での焼鈍が可能となるため、焼鈍工程の作業性も向上する。また、焼鈍後に再冷延を行うことにより、従来では製造が困難であった極薄材料を簡単に生産することも可能となる。
以上により、強度、疲労強度、耐磨耗性の確保が可能となるため、超高速回転モーターやローターに磁石を組み込んだモーターおよび電磁開閉器用材料の高効率化、小型化、超寿命化などが達成される。
本発明者らは、前記目的を達成すべく種々実験し検討を重ねてきた。即ち本発明は、C:0.060%以下、Si:0.5〜3.5%、Mn:0.05〜3.0%、P:0.30%以下、S:0.040%以下、Al:2.50%以下、N:0.020%以下を含有する鋼板であって、さらにCu:0.1〜8.0%、さらにはNb:0.05〜8.0%を含有し固溶Cu固溶Nb、さらには鋼板内に生成させた微細なCuからなる金属相Nb炭・窒化物等により冷延後焼鈍時の再結晶を遅延させ通常程度の製造工程条件においても電磁鋼板内に加工組織を残存・生成させることにより、作業性などのトラブルを起こすことなく高生産性にて高強度でかつ磁気特性の優れた電磁鋼板を得るものである。
先ず、本発明による高強度電磁鋼板の成分組成について説明する。
Cは磁気特性を劣化させるので0.060%以下とする。高強度化、特に降伏応力の上昇や温間強度、クリープ強度の向上、温間での疲労特性を向上させる観点から、またNb含有鋼の場合にはNbCにより再結晶を遅延させる効果も有することから、好ましくは0.0031〜0.0301%、さらに好ましくは0.0051〜0.0221%、さらに好ましくは0.0071〜0.0181%、さらに好ましくは0.0081〜0.0151%である。
Cによる上述のような効果が特に重要視されない場合には、スラブの段階までは脱酸効率の観点からより高いCを含有させておき、コイルとした後の脱炭焼鈍によりCを減じることも可能である。含有量を0.010%程度以下まで低減する場合には製造コストの観点からは溶鋼段階で脱ガス設備によりC量を低減しておくことが有利である。特に0.0020%以下とすれば鉄損低減の効果が著しく、高強度化のために炭化物等の非金属析出物を必須としない本発明鋼においては0.0015%以下としても高強度化が可能であり、さらに0.0010%以下としても十分な高強度化が可能である。
Siは鋼の固有抵抗を高めて渦電流を減らし、鉄損を低下せしめるとともに、抗張力を高めるが、添加量が0.2%未満ではその効果が小さい。好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは1.5%以上、さらに好ましくは2.0%以上、さらに好ましくは2.5%以上とする。一般に高周波磁場下で用いられる場合には渦電流による損失が大きくなるが、加工組織を含有する本発明鋼においても特にこの渦電流損失を抑制するため、Si含有量を高めることが有効である。ただし3.5%を超えると鋼を脆化させ、さらに製品の磁束密度を低下させるため3.5%以下とする。脆化の懸念をさらに小さくするには3.2%以下が好ましく、2.8%以下であれば他の元素量との兼ね合いもあるが脆化に関してはほとんど考慮する必要がなくなる。
Mnは鋼の強度を高めるため積極的に添加してもよいが、高強度化の主たる手段として微細金属相を活用する本発明鋼ではこの目的のためには特に必要としない。固有抵抗を高め渦電流損失を低減させることで鉄損を低減させる目的で添加するが、過剰な添加は磁束密度を低下させるので、0.05〜3.0%とする。0.05〜3.0%とする。好ましくは0.5%〜2.5%、さらに好ましくは0.8%〜2.0%である。
Pは抗張力を高める効果の著しい元素であるが、上記のMnと同様、本発明鋼ではあえて添加する必要はない。0.3%を超えると脆化が激しく、工業的規模での熱延、冷延等の処理が困難になるため、上限を0.30%とする。好ましくは0.20%以下、さらに好ましくは0.15%以下である。
Sは本発明鋼で必須の元素であるCuと結合し易く、本発明で重要となるCuを主体とする金属相の形成挙動に影響を及ぼし、強化効率を低下させる場合がある。また生成された硫化物は磁気特性、特に鉄損を劣化させる場合があるので、Sの含有量はできるだけ低いことが好ましく、0.0040%以下と限定する。好ましくは0.0020%以下、さらに好ましくは0.0010%以下である。
Alは通常、脱酸剤として添加されるが、Alの添加を抑えSiにより脱酸を図ることも可能である。Al量が0.005%程度以下のSi脱酸鋼ではAlNが生成しないため、鉄損を低減する効果もある。逆に積極的に添加しAlNの粗大化を促進するとともに固有抵抗増加により鉄損を低減させることもできるが、2.50%を超えると脆化が問題になるため、2.50%以下とする。
Cuは本発明では重要な元素である。固溶Cuとしてのみならず、鋼板中にCuを主体とする金属相(以降、本明細書では「Cu金属相」と記述)を形成させ、鋼板の再結晶を遅延させるために活用される。また微細なCu金属相により磁気特性に悪影響を及ぼさない範囲で高強度化を図る効果も有する。この範囲として0.1〜8.0%に限定する。好ましくは0.8〜4.0%である。
Cuの含有量が低いと再結晶遅延効果が小さくなるとともに、再結晶遅延効果を得るための熱処理条件が狭い範囲に限定され、製造条件の管理、生産調整の自由度が小さくなる。一方、Cuの含有量が過度に高いと磁気特性への影響が大きくなり、特に鉄損の上昇が著しくなる。特に鋼への固溶限を超え固溶Cuとして存在するCuは再結晶遅延効果においてCu金属相に比較して効率が悪く、また磁気特性劣化への影響も大きくなる。また過剰なCuは、例えば熱延中に高温で比較的粗大なCu金属相を形成するなど、好ましくない段階で金属相が生成するため、その後の微細な金属相の形成に好ましくない働きをしたり、磁気特性に悪影響を及ぼす場合もある。特に好ましい範囲は1.0〜2.9%である。さらに好ましくは1.3〜2.4%、さらに好ましくは1.5〜2.0%である。
NbもCu同様、本発明では重要な元素である。固溶Nbとしてのみならず、鋼板中にNbの主として炭・窒化物(以降、本明細書では「Nb析出物」と記述)を形成させ、鋼板の再結晶を遅延させるために活用される。また微細なNb析出物により磁気特性に悪影響を及ぼさない範囲で高強度化を図る効果も有する。この範囲として0.05〜8.0%に限定する。好ましくは0.08〜2.0%である。
Nbの含有量が低いと再結晶遅延効果が小さくなるとともに再結晶遅延効果を得るための熱処理条件が狭い範囲に限定され、製造条件の管理、生産調整の自由度が小さくなる。一方、Nbの含有量が過度に高いと磁気特性への影響が大きくなり、特に鉄損の上昇が著しくなる。特に鋼への固溶限を超え固溶Nbとして存在するNbは、Cuよりさらに磁気特性劣化への影響が大きく好ましくない。また、C、N含有量にもよるが、過剰なNbは熱履歴によっては鋼中に過剰なNb析出物を形成し、再結晶を遅延させるもののCu金属相よりも磁気特性劣化要因となりやすい。また例えば、熱延中などに高温で比較的粗大なNb析出物を形成した場合には、再結晶遅延効果が小さくなるばかりか、磁気特性への悪影響が大きくなる場合もある。特に好ましい範囲は0.1〜1.5%である。さらに好ましくは0.12〜1.0%、さらに好ましくは0.15〜0.8%である。
NはCと同様、磁気特性を劣化させるので0.040%以下とする。Alが0.005%程度以下のSi脱酸鋼ではCと同様に高強度化、特に降伏応力の上昇や温間強度、クリープ強度の向上、温間での疲労特性を向上させ、またNb含有鋼の場合にはNbNにより再結晶を遅延させる効果も有する他に、集合組織改善の観点から有効な元素である。この観点からは好ましくは0.0031〜0.0301%、さらに好ましくは0.0051〜0.0221%、さらに好ましくは0.0071〜0.0181%、さらに好ましくは0.0081〜0.0151%である。
Alが0.010%程度以上の場合には多量のNを含有させることで微細なAlNを形成し再結晶遅延効果を高めることが可能であるが、本発明の主たる機構であるCu金属相に比較すると再結晶遅延の効率が悪く、また磁気特性への悪影響も比較的大きいため、あえて添加する必要はない。Al脱酸鋼においては0.0040%以下とすべきで、窒化物による強度上昇や再結晶遅延効果を期待しない本発明鋼では低いほど好ましく、0.0027%以下とすれば磁気時効やAl含有鋼でのAlNによる特性劣化の抑制効果は顕著で、さらに好ましくは0.0022%、さらに好ましくは0.0015%以下とする。
その他、従来技術における高強度電磁鋼板で高強度化のために利用されている殆どの元素は、添加コストが問題視されるだけではなく磁気特性に少なからず悪影響を及ぼすため、あえて添加する必要はない。また本発明鋼で特徴的なCuやNbと同様に再結晶を遅延させる効果を有するが、効率が良くない。あえて添加する場合には再結晶遅延効果、高強度化効果、コスト上昇と磁気特性劣化との兼ね合いから、Ti,B,Ni,Crの1種または2種以上を添加するが、その添加量は、Ti:1.0%以下、B:0.010%以下、Ni:5.0%以下、Cr:15.0%以下程度とする。
Tiは鋼板中で炭化物、窒化物または硫化物等の微細な析出物を形成し、高強度化に効果を有する元素ではあるが、Nbに比較するとその効果は小さい割に、鉄損を劣化させる傾向が強い。また冷延後の焼鈍工程において部分再結晶組織とする場合には、磁束密度向上には不利な{111}方位への集積を促進する効果が強いため、本発明鋼ではむしろ有害な元素ともなる。このため上限をそれぞれ1.0%とする。好ましくは0.50%以下、さらに好ましくは0.30%以下で、全く添加することなく不可避的に混入する0.0050%以下とすることで良好な鉄損を得ることが可能となる。
Bは結晶粒界に偏折し、Pの粒界偏折による脆化を抑制する効果があるが、本発明鋼では従来の固溶強化主体の高強度電磁鋼板のように脆化が特に問題とはならないことから、この目的での添加は重要ではない。むしろ固溶Bによる再結晶温度への影響により再結晶を遅延させる目的で添加する。0.010%を超えると著しく脆化するため、上限を0.010%とする。
Niは本発明鋼で非常に重要な元素であるCuによる熱延時の表面荒れ(Cuヘゲ)の防止に有効であることが知られており、この目的を兼ねて積極的に添加することもできる。また、磁気特性への悪影響が比較的小さく、かつ高強度化にも効果が認められるため、高強度電磁鋼板では使用されることが多い元素である。また、耐食性の向上にも有効であるが、添加コストや磁気特性への悪影響を考え上限を5.0%とすることが好ましい。
Crは耐食性の向上や、高周波域での磁気特性向上のため添加される元素であるが、やはり添加コストや磁気特性への悪影響を考え上限を15.0%とすることが好ましい。
また、その他の微量元素については、鉱石やスクラップなどから不可避的に含まれる程度の量に加え、公知の様々な目的で添加しても本発明の効果は何ら損なわれるものではない。また、量は少なくとも微細な炭化物、硫化物、窒化物、酸化物等を形成し、少なからざる再結晶遅延効果を示す元素もあるが、これらの微細な析出物は磁気特性への悪影響も大きく、また本発明鋼ではCuやNbにより十分な再結晶遅延効果が得られるため、これらの元素をあえて添加する必要もない。これらの微量元素についての不可避的な含有量は通常、各元素とも0.005%以下程度であるが、本明細書で記述していない様々な目的で0.01%程度以上に添加することも可能である。この場合もコストや磁気特性の兼ね合いから、Mo,W,Sn,Sb,Mg,Ca,Ce,Coの1種または2種以上を合計で0.5%以下とする。
前記成分を含む鋼は、通常の電磁鋼板と同様に転炉で溶製され、連続鋳造でスラブとされ、ついで熱間圧延、熱延板焼鈍、冷間圧延、仕上焼鈍などの工程で製造される。これらの工程に加え絶縁皮膜の形成や脱炭工程などを経ることも本発明の効果を何ら損なうものではない。また、通常の工程ではなく急冷凝固法による薄帯の製造や熱延工程を省略する薄スラブ、連続鋳造法などの工程によって製造しても問題ない。
本発明では本発明で「加工組織」と呼ぶ特別な組織を鋼板内に形成することが必要である。本発明における「加工組織」とは、通常の電磁鋼板で鋼板のほぼ全量を占めている「再結晶組織」と区別したものである。一般的には冷延加工等により鋼板内に蓄積された歪が十分に消失していない組織を指す。より具体的には、冷延した鋼板を焼鈍する過程において、冷延で変形され高密度の転位を含有した組織が、焼鈍工程での高温保持により発生する転位密度が低い組織(「再結晶組織」)に蚕食されることで再結晶が進行するが、この「再結晶組織」に蚕食されていない領域を「加工組織」とする。この加工組織は、一般には焼鈍中にいわゆる回復等により転位密度は低くなっているが、再結晶組織ほどには低くなっておらず、歪の分布としては「加工組織」と「再結晶組織」で不均一な状況となっている。また、「加工組織」は、再結晶組織をさらに加工することでも得ることができる。この場合は全体的に見れば組織に均一な歪が残存した状態となる。本発明ではこの加工組織を活用することで目的とする高強度化を図るものである。
本発明が対象とする鋼板は600MPa以上の引張強度を有するものとする。引張強度がこれより低い程度の鋼板であれば通常のSi、Mn等の固溶元素を主体として強化し、組織的には完全に再結晶組織で占められている鋼板でも、生産性をそれほど劣化させず製造することが可能であり、その材料の方が磁気特性的には顕著に優れたものが得られるためである。本発明は通常の固溶強化を主体として、生産性を劣化させずに製造が不可能な高強度の材料に限定する。本発明のメリットをより大きく享受するには、好ましくは650MPa以上の鋼板に適用されるべきで、さらに好ましくは700MPa以上、さらに好ましくは800MPa以上の鋼板を対象とし、現在は全く製造されたことがない900MPa以上の鋼板も製造可能であり、さらに従来では想像もされていない1000MPa以上の鋼板でも高生産性で製造することが可能になる。
この加工組織は鋼板の断面組織観察における面積率で1%以上存在するものとする。断面組織観察は本発明においては断面の一辺が鋼板圧延方向、もう一辺が鋼板板厚方向となる断面で行うものとする。通常の鋼板で行われるナイタール等の薬品を用い、エッチングにより組織を現出させる方法を用いるが、特に観察方法に限定されるものではなく、再結晶組織と加工組織を区別できる手法であればよい。
加工組織の面積率が1%以下では高強度化の効果が小さくなる。加工組織が実質的に0%の場合は通常の鋼板そのものであり、0〜1%の範囲に制御することは高強度化の効果が小さい割には焼鈍の温度制御等を非常に厳格にする必要があり現実的ではない。実際には必要とする強度レベルを得るように加工組織の面積率を制御するが、好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上である。実質的に再結晶組織が観察されない加工組織100%としても何ら問題はない。この場合はまったく焼鈍しないいわゆるフルハードの状態か、または焼鈍を行うが再結晶開始以前の回復組織の状況となる。
必要とする強度と磁気特性に応じて組織の調整を行うが、この調整は鋼成分、熱延履歴、冷延率、焼鈍温度、焼鈍時間や加熱速度、冷却速度等により行うことが可能で、当業者であれば数度の試行により何ら問題なく行うことが可能なものである。または、焼鈍を行って再結晶組織が全量を占めている鋼板に、再冷延等により歪を付与することで加工組織を形成することも可能である。この場合は通常、歪は巨視的に均一に付与されるため、組織の全量が加工組織となり加工組織100%に相当する。この場合は加工前の鋼成分、熱履歴、特性等を考慮し加工量により強度、磁気特性が制御されるが、これも当業者であれば数度の試行により何ら問題なく行うことが可能なものである。
再冷延等により加工組織を新たに形成した場合、加工量が低いと上述の組織観察法では明確に加工組織の存在を示すことが困難な場合があるが、発明の効果を十分に得る目安として断面組織観察における(板厚方向の結晶粒の大きさ)/(圧延方向の結晶粒の大きさ)を用いても良く、この値を0.9以下とする。0.8以下であれば高強度化の効果が明確に得られ、好ましくは0.7以下、さらに好ましくは0.6以下、さらに好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.3以下である。ただし、この値が過剰に低くなると、磁気特性の劣化が顕著となるので注意が必要である。
以上で述べた「加工組織」の効果は、「加工組織」中の転位密度によって評価することも可能である。加工組織における平均転位密度が1exp13/m2以上、さらに好ましくは3exp13/m2以上、さらに好ましくは1exp14/m2以上、さらに好ましくは3exp14/m2以上である。この転位密度は透過型電子顕微鏡等により計測される。鋼板全量が再結晶組織である通常の電磁鋼板においては、平均転位密度が1exp12/m2程度以下であることから、加工組織の分別には十分な差として10倍以上としている。
以上のような加工組織は、加工組織を形成させる冷延等の加工工程と、加工組織を消失させる焼鈍工程を最適に制御することで最終製品に残存させる。
製造工程のある時点で相当量存在させた加工組織を、熱処理を全く行わない、もしくはそれに続く工程で完全に消失させずに最終製品に残存させる場合を想定すると、加工組織を形成する加工工程は、付与された歪量が5%以上、または加工工程による材料の引張強度の上昇量が50MPa以上であるものとする必要がある。また熱処理工程は、熱処理による材料の引張強度の低下代が600MPaを超えない、または1000℃以上で30秒以上保持しないものとする必要がある。
付与する歪量は5%未満では強度の上昇が小さい割に磁気特性の劣化が大きくメリットが得られない。歪量は好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上、通常の電磁鋼板で熱延後、焼鈍の前に行われる冷延程度の70%以上の冷間圧延を行うことも高強度化の点で本発明のメリットを最大に得ることが可能となる。
同様に引張強度の上昇が50MPaより低いような加工ではメリットが得られない。好ましくは100MPa以上、さらに好ましくは200MPa以上、さらに好ましくは300MPa以上、さらに好ましくは400MPa以上である。
以上の加工は通常、冷間圧延で行われるが、歪量または材質の変化が本発明の規定内であればこれにこだわる必要はなく、温間圧延、加工組織が消失しない程度の熱間圧延、さらには張力を付与することによる引張変形、レベラー等による曲げ変形、ショットブラストや鍛造など方法は問わない。むしろ歪の付与の方法により、転位構造が後述する本発明にとって好ましいものに変化させられるため、さらなる特性の向上も可能である。
加工に引き続く熱処理工程は、完全な再結晶組織にしてしまっては、本発明の特徴である加工組織の残存による高強度化のメリットを得ることができないため、熱処理による材料の引張強度の低下代が600MPaを超えないものとする。好ましくは500MPaを超えないことであるが、焼鈍を全く行わずいわゆるフルハードとした場合は、回復域とは言え焼鈍を行ったものより磁気特性が劣るので、低温域でも熱処理を行ってある程度は軟化させた方が、強度−磁気特性バランスの面からは好ましい。この観点から焼鈍による引張強度の低下代は好ましくは100〜400MPa、さらに好ましくは150〜300MPaで高い強度と良好な磁気特性を維持することが可能となる。
またこの時の熱履歴としては、1000℃以上で30秒以上保持しないことが好ましく、これを超えるとCuまたはNbにより再結晶を抑制している本発明鋼と言えども、本発明の特徴である高強度化のメリットが失われる。好ましくは950℃を超えない温度、さらに好ましくは900℃を超えない温度とするが、一方で通常の電磁鋼板とは大きく異なる温度で焼鈍を行うことは炉温の大幅な変更が必要で、作業性の低下を招くばかりでなく、未燃焼ガスの発生により前述のように安全性にも問題を生ずる場合がある。本発明では極低温焼鈍に起因するこれらの課題を解決することが目的の一つであるため、焼鈍温度の下限を設定する。この観点から好ましくは550℃以上、さらに好ましくは600℃以上、さらに好ましくは650℃以上、さらに好ましくは700℃以上で、例えば高Si系材料でCuを適量添加することで、通常の低Si系材料が焼鈍される750〜800℃程度の温度でも全く再結晶しない完全回復組織である発明鋼を得ることができる。
焼鈍時間は焼鈍の効果を及ぼすためには少なくとも30秒は必要である。低温となるほど完全再結晶までの時間が長くなるため、焼鈍時間により加工組織の消失量の調節が容易となる。好ましい焼鈍時間は成分や熱処理までの製造履歴等に依存するため一義的に明示はできないが、目安は950℃であれば5分以内、850℃であれば1時間以内、800℃であれば5時間以内、700℃であれば10時間程度である。当業者であれば数度の試行により何ら問題なく発明の効果を享受できる条件を見出すことが可能なものである。
また、通常の再結晶焼鈍またはそれより低温で焼鈍を行い、通常の鋼板のような完全再結晶組織または部分再結晶や回復組織とした後、再冷延を行い、最終製品に加工組織を残存させることも可能である。この場合の加工条件も上述と同様に付与する歪量が5%以上または加工工程による材料の引張強度の上昇量が50MPa以上であるものとする。好ましい範囲も同様である。このように焼鈍工程である程度軟質化した材料をさらに再冷延で硬質化する場合には簡単に材料の薄手化が可能となり、従来難製造材であった極薄電磁鋼板の生産性も向上する。本発明によるこのような超極薄電磁鋼板は、特に高周波磁場下で使用される場合の渦電流損失を抑制できるため、鉄損低減に有効となるというメリットもある。
なお現状でも本発明の一方法のように再結晶焼鈍を行った鋼板に1〜20%程度のスキンパス圧延を行い製品として出荷されている電磁鋼板、いわゆるセミプロセス電磁鋼板がある。これはスキンパスを施した板が製品として出荷され、モーターメーカーでモーターの部品として加工された後、再結晶が十分に起きるような条件で焼鈍を行い、歪誘起粒成長を起こさせることで粗大な再結晶組織を得、磁気特性の改善を図る手段で、スキンパス法とよばれることもあるが、この方法においては部材としての使用時には加工組織を残存させることはない。
本発明は本質的にこの鋼板および方法とは異なっており、電気機器の部品として加工した後には基本的には熱処理は行わない。鋼板の接着や表面制御等で何らかの熱処理を行う場合にも本発明で規定する加工組織が消失せず、本発明の規定内にとどまるものに限定する。これは加工組織が消失または本発明の規定範囲から外れると、実モーターとして使用している状況で必要となる鋼板の特に強度が不足することになるからである。この熱処理の温度の目安は、上述の鋼板焼鈍工程における温度条件と同一である。最適な条件は鋼板を製造する当業者の協力の下で、または協力がなくとも通常の電気機器の製造者であれば数度の試行により何ら問題なく発明の効果を享受できる条件を見出すことが可能なものである。
なお、厳密には通常の電磁鋼板においても様々な部材として使用するにはメーカー等において剪断やかしめ等の加工が行われ、これにより鋼板中に導入された歪が少なからず残存し、部材特性に影響を及ぼすことが知られている。このような歪は鋼板の加工部位のみに入るもので、本発明で鋼板全面に意識的に残存させる歪とは異なり、部材全体としての高強度化にはほとんど寄与しないものである。
本発明のように材料中に加工組織を残存させても良好な磁気特性を維持できる原因には明確ではないが、以下のように考えられる。従来、加工組織は磁気特性を大きく劣化させるものとして材料の高強度化の手段としては顧みられず、高強度化は結晶粒微細化、固溶強化、析出強化等により行われてきた。しかし、材料の高強度化への要求は高まる一方であり、従来の高強度化手段は顕著に磁気特性を劣化させるような条件の領域にまで踏み込まざるを得なくなっており、このような状況で改めて加工組織を活用した高強度化手段を見た場合、それほど不利な方法とは言えなくなっていることが一面ではあると思われる。
また従来、加工組織の影響は材料に冷間加工を施し、歪量が比較的小さい範囲でのみ検討されていた。このような条件では材料中の転位構造は比較的均一で、いわゆるセル構造や回復組織のような比較的安定な転位配置を形成したものとはなっていなかったと予想される。この程度の加工量では高強度化手段としては全く魅力がないものであったうえに、このような転位構造では転位は磁壁移動の障害としかならず磁気特性の劣化は著しく、実用化されなかったものと思われる。
一方、本発明のように比較的高歪量の冷間加工を行った場合や、焼鈍により回復した加工組織においては、転位は比較的安定なセル構造を形成している。セルの大きさは通常直径1μm以下で0.1μm程度にもなっており、セルの境界は転位で形成されており、隣接するセルとの結晶方位差が小さいことを除けば一般の結晶粒と同様の構造を有しており、一種の超微細結晶粒と見ることが可能で磁壁移動の障害とはなりにくくなったものと考えられる。またこのような超微細結晶粒は強度も高く、加工が必要な場合の延性もそれなりに有しており、強度と磁性のバランスを考えると十分に実用化が可能なレベルにあると考える。
また、加工組織が存在する本発明鋼においても鉄損において特に渦電流損失の寄与が大きくなる高周波磁場下で使用されるような用途においては、Si,Mn,Al,Cr,Ni等の添加は重要なものであり、加工硬化挙動や再結晶挙動などの転位挙動に大きな影響を及ぼすため、電磁鋼板をベースとした転位強化鋼の開発は、自動車や容器等に用いられるいわゆる加工用普通鋼におけるものとは全く異なった意味を有する。
次に本発明で特徴的に存在する可能性があるCu金属相またはNb析出物について説明する。本発明ではCu金属相またはNb析出物は冷延後の焼鈍時の再結晶を抑制する効果があるので、本発明でこれを積極的に利用することも可能であるが、同時に固溶Cuまたは固溶Nbに比べると磁気特性を劣化させる場合もある。Cu金属相またはNb析出物を利用する場合は、遅くともこの再結晶が完了するまでに鋼中に存在している必要がある。冷延前の熱履歴を制御して形成することも可能であるし、冷延後の焼鈍時に再結晶が完了する前の加熱工程で形成することも可能である。
本発明ではこの析出物形態を精緻に制御するための熱履歴は特に限定するものではなく、本発明で規定している再結晶を制御するための熱履歴において、鋼成分によっては何がしかのCu金属相またはNb析出物が生成し、有効な寄与をするものである。これらのCu金属相またはNb析出物の析出挙動については一般的に知られている知見と大きく変わるものではなく、通常の技術レベルを有する当業者であれば数度の試行の後、適当な範囲に制御可能なものである。
本発明者はすでに電磁鋼板中にCu金属相を形成し高強度化を図る技術を出願しているが、Cu金属相に関してはこの出願との組合わせを行うことは本発明の効果を何ら損なうものではない。特に限定するものではないが、本発明鋼中に存在させるCu金属相またはNb析出物の直径は0.20μm以下程度である。これを超えると再結晶遅延の効率が低下し、多量の金属相が必要となるだけでなく磁気特性への悪影響が大きくなる。また同様に特に限定するものではないが、Cu金属相またはNb析出物の数密度はCu、NbやC含有量と析出相のサイズとの関係で取りうる範囲に制限はあるが、20個/μm3以上程度である。
なお、本発明の効果は通常電磁鋼板の表面に形成される表面皮膜の有無および種類によらず、さらに製造工程にはよらないため無方向性または方向性の電磁鋼板に適用できる。特に本発明鋼は特性の面内異方性において従来の再結晶組織による鋼板とは大きく異なった特徴を付与することができる。磁束密度について見ると、冷延ままのフルハードの状態ではコイルの圧延方向から45°方向(D方向)の特性が圧延方向(L方向)またはコイル幅方向(C方向)の特性より高いものとなっている。通常の再結晶組織を有する電磁鋼板ではほとんどの場合、D方向の特性はLまたはC方向の特性より低くなっていることを考えると、再結晶・回復の程度を適当に調整し中間的な再結晶段階に制御することにより、面内異方性がほとんどない鋼板を得ることが容易に可能となる。面内異方性がほとんどないことは回転機等、用途によっては非常に好ましい特性を発揮できる特徴を有する鋼板である。
用途も特に限定されるものではなく、家電または自動車等で用いられるモーターのローター用途の他、強度と磁気特性が求められる全ての用途に適用される。
表1に成分を有する200mm厚の鋼片から、表2、表3(表2のつづき)に示す製造条件で製品板を製造した。一部の材料についてはモーター製造メーカーでの熱処理を想定した熱処理(ユーザー焼鈍)を行った。これらについて、JIS5号試験片による機械的特性、および55mm角のSST試験による鉄損W10/400と磁束密度B25で特性を評価した。機械的特性および磁気特性ともコイルの圧延方向、45°方向およびその直角方向について、以下の式で平均値を求めた。
X=(X0+2×X45+X90)/4
ここで、X0、X45、X90はコイルの圧延方向、45°方向およびその直角方向の特性である。
結果を表2、表3に示す。結果から明らかなように、本発明の条件にて製造した材料は硬質で、さらに磁気特性も優れている。
なお10番の例は、鋼板としては開発鋼の例であるが、部材としての使用を想定したモーター製造メーカー相当の熱処理により、完全に再結晶が起きてしまった場合である。このような使用法が想定される用途においては本発明で重要な高強度化という目的を達成するための特性は消失してしまうので注意が必要である。
Figure 0004510559
Figure 0004510559
Figure 0004510559

Claims (11)

  1. 質量%で、C:0.060%以下、Si:0.2〜3.5%、Mn:0.05〜3.0%、P:0.30%以下、S:0.040%以下、Al:2.50%以下、Cu:0.1〜8.0%、N:0.020%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ、鋼板内部に再結晶組織に蚕食されていない領域あるいは再結晶組織をさらに加工することで得られる組織である加工組織が断面観察における面積率で1%以上残存し、抗張力(TS)が600MPa以上であることを特徴とする電磁鋼板。
  2. 質量%で、C:0.060%以下、Si:0.2〜3.5%、Mn:0.05〜3.0%、P:0.30%以下、S:0.040%以下、Al:2.50%以下、Cu:0.1〜8.0%、Nb:0.03〜8.0%、N:0.020%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ、鋼板内部に再結晶組織に蚕食されていない領域あるいは再結晶組織をさらに加工することで得られる組織である加工組織が断面観察における面積率で1%以上残存し、抗張力(TS)が600MPa以上であることを特徴とする電磁鋼板。
  3. 鋼板内部にCuからなる金属相を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の電磁鋼板。
  4. 鋼板内部の金属元素がNbの炭化物または窒化物を含有することを特徴とする請求項2に記載の電磁鋼板。
  5. 鋼成分が質量%でさらに、Ti:1.0%以下、B:0.010%以下、Ni:5.0%以下、Cr:15.0%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかの項に記載の電磁鋼板。
  6. 前記鋼板内部の加工組織における平均転位密度が1exp13/m2以上である請求項1〜のいずれかの項に記載の電磁鋼板。
  7. 請求項1〜のいずれかの項に記載の電磁鋼板を製造するに際し、最終の冷間加工工程において、引張強度が50MPa以上上昇する加工を付与した後、熱処理前後の引張強度の低下代が600MPa以上となるような熱処理を施さないことを特徴とする電磁鋼板の製造方法。
  8. 最終の冷間加工工程において5%以上の歪を付与することを特徴とする請求項記載の電磁鋼板の製造方法。
  9. 最終の冷間加工後の熱処理として、1000℃以上で30秒以上保持するような熱処理を施さないことを特徴とする請求項7または8に記載の電磁鋼板の製造方法。
  10. 最終の冷間加工後の熱処理として、950℃を超えない温度域で30秒以上保持する熱処理を行うことを特徴とする請求項7または8に記載の電磁鋼板の製造方法。
  11. 請求項1〜のいずれかの項に記載の電磁鋼板を部品として加工した後、鋼板中の加工組織が消失するような熱処理を施さないことを特徴とする電磁鋼板の加工方法。
JP2004258211A 2004-09-06 2004-09-06 高強度電磁鋼板とその製造方法および加工方法 Active JP4510559B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004258211A JP4510559B2 (ja) 2004-09-06 2004-09-06 高強度電磁鋼板とその製造方法および加工方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004258211A JP4510559B2 (ja) 2004-09-06 2004-09-06 高強度電磁鋼板とその製造方法および加工方法

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010026598A Division JP5445194B2 (ja) 2010-02-09 2010-02-09 高強度電磁鋼板の製造方法および加工方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006070348A JP2006070348A (ja) 2006-03-16
JP4510559B2 true JP4510559B2 (ja) 2010-07-28

Family

ID=36151278

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004258211A Active JP4510559B2 (ja) 2004-09-06 2004-09-06 高強度電磁鋼板とその製造方法および加工方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4510559B2 (ja)

Families Citing this family (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4779474B2 (ja) * 2005-07-07 2011-09-28 住友金属工業株式会社 回転子用無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP4710465B2 (ja) * 2005-07-25 2011-06-29 住友金属工業株式会社 回転子用無方向性電磁鋼板の製造方法
JP4710458B2 (ja) * 2005-07-19 2011-06-29 住友金属工業株式会社 回転子用無方向性電磁鋼板の製造方法
WO2007007423A1 (ja) 2005-07-07 2007-01-18 Sumitomo Metal Industries, Ltd. 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP4586669B2 (ja) * 2005-08-01 2010-11-24 住友金属工業株式会社 回転子用無方向性電磁鋼板の製造方法
CN101466851B (zh) 2006-06-16 2012-08-22 新日本制铁株式会社 高强度电磁钢板的制造方法
JP5194535B2 (ja) * 2006-07-26 2013-05-08 新日鐵住金株式会社 高強度無方向性電磁鋼板
JP5375149B2 (ja) * 2008-09-11 2013-12-25 Jfeスチール株式会社 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP5333415B2 (ja) * 2010-11-08 2013-11-06 新日鐵住金株式会社 回転子用無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP5884153B2 (ja) * 2010-12-28 2016-03-15 Jfeスチール株式会社 高強度電磁鋼板およびその製造方法
CN102134678B (zh) * 2011-02-25 2012-12-12 华北电力大学 一种用于节能电机的铜铁合金材料及其制备方法
JP6586815B2 (ja) * 2015-08-14 2019-10-09 日本製鉄株式会社 鉄損に優れた無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP6606988B2 (ja) * 2015-11-12 2019-11-20 日本製鉄株式会社 回転子用無方向性電磁鋼板およびその製造方法

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0686625B2 (ja) * 1987-03-11 1994-11-02 新日本製鐵株式会社 高抗張力無方向性電磁鋼板の製造方法
JP2004084053A (ja) * 2002-06-26 2004-03-18 Nippon Steel Corp 磁気特性の著しく優れた電磁鋼板とその製造方法
JP2006009048A (ja) * 2004-06-22 2006-01-12 Sumitomo Metal Ind Ltd 回転子用無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2006070296A (ja) * 2004-08-31 2006-03-16 Sumitomo Metal Ind Ltd 回転子用無方向性電磁鋼板およびその製造方法

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0686625B2 (ja) * 1987-03-11 1994-11-02 新日本製鐵株式会社 高抗張力無方向性電磁鋼板の製造方法
JP2004084053A (ja) * 2002-06-26 2004-03-18 Nippon Steel Corp 磁気特性の著しく優れた電磁鋼板とその製造方法
JP2006009048A (ja) * 2004-06-22 2006-01-12 Sumitomo Metal Ind Ltd 回転子用無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2006070296A (ja) * 2004-08-31 2006-03-16 Sumitomo Metal Ind Ltd 回転子用無方向性電磁鋼板およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2006070348A (ja) 2006-03-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4546713B2 (ja) 磁気特性に優れた高強度電磁鋼板の最終製品とその使用方法および製造方法
JP5000136B2 (ja) 高強度電磁鋼板およびその形状加工部品とそれらの製造方法
EP2031079B1 (en) High-strength electromagnetic steel sheet and process for producing the same
RU2398894C1 (ru) Лист высокопрочной электротехнической стали и способ его производства
KR101011965B1 (ko) 고강도 무방향성 전자 강판 및 그 제조 방법
JP5223190B2 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP4469268B2 (ja) 高強度電磁鋼板の製造方法
JP5267747B2 (ja) 高強度無方向性電磁鋼板
JP2004084053A (ja) 磁気特性の著しく優れた電磁鋼板とその製造方法
JP5028992B2 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2007039721A (ja) 回転子用無方向性電磁鋼板の製造方法
JP4833523B2 (ja) 電磁鋼板とその製造方法
WO2004050934A1 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP4510559B2 (ja) 高強度電磁鋼板とその製造方法および加工方法
JP4414727B2 (ja) 磁気特性、耐変形性の優れた電磁鋼板とその製造方法
JP5445194B2 (ja) 高強度電磁鋼板の製造方法および加工方法
JP5397252B2 (ja) 電磁鋼板とその製造方法
JP4157454B2 (ja) 高強度電磁鋼板とその製造方法
JP6801464B2 (ja) 無方向性電磁鋼板
JP5130637B2 (ja) 高強度無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP4932782B2 (ja) 電磁鋼板、それを使用した電気部品及びそれらの製造方法
JP6852965B2 (ja) 電磁鋼板とその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060905

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20080306

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080318

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080513

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080519

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20091110

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100209

A911 Transfer of reconsideration by examiner before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20100312

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100420

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100430

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130514

Year of fee payment: 3

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 4510559

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130514

Year of fee payment: 3

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130514

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140514

Year of fee payment: 4

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350