JP5373259B2 - N−アルキルボラジンの製造方法 - Google Patents

N−アルキルボラジンの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、N−アルキルボラジンの製造方法に関する。N−アルキルボラジンは、例えば、半導体用層間絶縁膜、バリアメタル層、エッチストッパー層を形成するために用いられる。
情報機器の高性能化に伴い、LSIのデザインルールは、年々微細になっている。微細なデザインルールのLSI製造においては、LSIを構成する材料も高性能で、微細なLSI上でも機能を果たすものでなければならない。
例えば、LSI中の層間絶縁膜に用いられる材料に関していえば、高い誘電率は信号遅延の原因となる。微細なLSIにおいては、この信号遅延の影響が特に大きい。このため、層間絶縁膜として用いられ得る、新たな低誘電材料の開発が所望されていた。また、層間絶縁膜として使用されるためには、誘電率が低いだけでなく、耐湿性、耐熱性、機械的強度などの特性にも優れている必要がある。
かような要望に応えるものとして、分子内にボラジン環骨格を有するボラジン化合物が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。ボラジン環骨格を有するボラジン化合物は分子分極率が小さいため、形成される被膜は低誘電率である。その上、形成される被膜は、耐熱性にも優れる。
特開2000−340689号公報 特開2003−119289号公報
ボラジン化合物の1つとして、ボラジン環を構成する窒素原子がアルキル基と結合しているN−アルキルボラジンがある。N−アルキルボラジンは、それ自体が半導体用層間絶縁膜などの原料として用いられうる。また、他のボラジン化合物を製造する際の中間体ともなる。例えば、N−アルキルボラジンのホウ素に結合している水素原子をアルキル基で置換することによって、ヘキサアルキルボラジンが製造される。 ここで、N−アルキルボラジンが、例えば上述したような半導体用層間絶縁膜として用いられる場合には、用いられるN−アルキルボラジン中の不純物は少ないほど好ましい。例えば半導体の層間絶縁膜として用いる場合に、用いられるN−アルキルボラジン中の不純物が多すぎると、得られる層間絶縁膜等の性能が低下してしまう虞がある。
不純物の除去を目的として、合成の終了後に蒸留精製が行われることが一般的である。ところが、N−アルキルボラジン中に、N−アルキルボラジンとの沸点差の小さい不純物が含まれている場合、このような不純物を蒸留によって分離することは非常に困難であり、そのために生成物の高純度化が困難であった。
そこで、本発明の目的は、N−アルキルボラジンに含まれる、N−アルキルボラジンと沸点差の小さい不純物の含有量を効率的に低減させる手段を提供することである。また本発明の目的は、純度が非常に高いN−アルキルボラジンを提供することである。
本発明者らは、上記の課題に鑑み、合成されたN−アルキルボラジンに含まれる不純物を検討した。その過程で、N−アルキルボラジンとの沸点差の小さい不純物には、反応用溶媒中に含まれる成分に由来する不純物が一定量含まれることを見出した。また、本発明者らは、N−アルキルボラジンの合成において、N−アルキルボラジンとの沸点差の小さい不純物の含有量が低減された溶媒を反応用溶媒として用いることで、上記不純物の含有量が少ないN−アルキルボラジンが製造され、純度が向上しうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、ABH(Aは、リチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子である)で表される水素化ホウ素アルカリと、(RNHX(Rはアルキル基であり、Xは硫酸基またはハロゲン原子であり、nは1または2である)で表されるアミン塩とを、反応用溶媒中で反応させてN−アルキルボラジンを合成する段階を含み、前記反応用溶媒として、前記N−アルキルボラジンの沸点±35℃の範囲に沸点を有する有機物の含有量が500質量ppm以下の溶媒を使用し、有機溶媒を蒸留によって精製することにより前記反応用溶媒を得る段階をさらに含む、N−アルキルボラジンの製造方法である。
本発明によって、高純度のN−アルキルボラジンが得られる。高純度のN−アルキルボラジンを用いることにより、N−アルキルボラジンを用いて製造される層間絶縁膜などの特性を向上させることができる。
本発明の第1は、ABH(Aは、リチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子である)で表される水素化ホウ素アルカリと、(RNHX(Rはアルキル基であり、Xは硫酸基またはハロゲン原子であり、nは1または2である)で表されるアミン塩とを、反応用溶媒中で反応させてN−アルキルボラジンを合成する段階を含み、前記反応用溶媒として、前記N−アルキルボラジンの沸点±35℃の範囲に沸点を有する有機物の含有量が500質量ppm以下の溶媒を使用する、N−アルキルボラジンの製造方法である。
本発明の第1の製造方法においては、水素化ホウ素アルカリと、アミン塩とを、溶媒中で反応させてN−アルキルボラジンを合成する。また、好ましくは、合成されたN−アルキルボラジンをさらに蒸留精製により精製する。
ところが、N−アルキルボラジン中に、N−アルキルボラジンとの沸点差の小さい不純物が含まれている場合、これらの不純物を蒸留によって分離することは非常に困難である。特に、グリコールジアルキルエーテル系の溶媒中には、前記溶媒よりも低分子量のグリコールジアルキルエーテル類が含まれている場合がある。例えば、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)中には、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)が含まれうる。このような溶媒を反応用溶媒として用いると、低分子量のグリコールジアルキルエーテル類が、N−アルキルボラジンとの沸点差の小さい不純物として、N−アルキルボラジン中に混入してしまう。本発明においては、N−アルキルボラジンとの沸点差の小さい不純物を効果的に除去し、高純度のN−アルキルボラジンを製造する方法を提供する。
本発明の第1においては、N−アルキルボラジンの製造時の反応用溶媒として、前記N−アルキルボラジンの沸点±35℃の範囲に沸点を有する有機物の含有量が500質量ppm以下の反応用溶媒を用いる。
N−アルキルボラジンの沸点±35℃の範囲に沸点を有する有機物が500質量ppm以下の反応用溶媒を用いることによって、生成物中に含まれるN−アルキルボラジンの沸点±35℃の範囲に沸点を有する不純物の含有量を低減することができる。
好ましくは、合成されたN−アルキルボラジンを蒸留によって精製する。これによって、純度の高いN−アルキルボラジンが得られる。
次に、本発明の第1について詳細に説明する。
まず、ABH(Aは、リチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子である)で表される水素化ホウ素アルカリと、(RNHX(Rはアルキル基であり、Xは硫酸基またはハロゲン原子であり、nは1または2である)で表されるアミン塩とを、反応用溶媒中で反応させてN−アルキルボラジンを合成する。
水素化ホウ素アルカリ(ABH)において、Aは、リチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子である。水素化ホウ素アルカリの例としては、水素化ホウ素ナトリウムおよび水素化ホウ素リチウムが挙げられる。
アミン塩((RNHX)において、Rはアルキル基であり、Xは硫酸基またはハロゲン原子である。そして、Xが硫酸基である場合にはnは2であり、Xがハロゲン原子である場合にはnは1である。nが2である場合、Rは、同一であっても異なっていてもよい。合成反応の収率や取り扱いの容易性を考慮すると、Rは好ましくは同一のアルキル基である。アルキル基は、直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよい。アルキル基の有する炭素数は、特に限定されないが、好ましくは1〜8個、より好ましくは1〜4個、さらに好ましくは1個である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。これら以外のアルキル基が用いられてもよい。アミン塩の例としては、モノメチルアミン塩酸塩(CHNHCl)、モノエチルアミン塩酸塩(CHCHNHCl)、モノメチルアミン臭化水素酸塩(CHNHBr)、モノエチルアミンフッ化水素酸塩(CHCHNHF)、モノメチルアミン硫酸塩((CHNHSO)が挙げられる。
N−アルキルボラジンは、下記式で表される化合物である。
Figure 0005373259
式中、Rは、アミン塩について記載した通りであるため、ここでは説明を省略する。N−アルキルボラジンの例としては、N,N’,N”−トリメチルボラジン、N,N’,N”−トリエチルボラジン、N,N’,N”−トリ(n−プロピル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(イソプロピル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(n−ブチル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(sec−ブチル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(イソブチル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(tert−ブチル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(1−メチルブチル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(2−メチルブチル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(neo−ペンチル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(1,2−ジメチルプロピル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(1−エチルプロピル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(n−ヘキシル)ボラジン、N,N’,N”−トリシクロヘキシルボラジン、N,N’−ジメチル−N”−エチルボラジン、N,N’−ジエチル−N”−メチルボラジン、N,N’−ジメチル−N”−プロピルボラジンなどが挙げられる。
使用する水素化ホウ素アルカリおよびアミン塩は、合成するN−アルキルボラジンの構造に応じて選択すればよい。例えば、ボラジン環を構成する窒素原子にメチル基が結合しているN−メチルボラジンを製造する場合には、アミン塩として、モノメチルアミン塩酸塩などの、Rがメチル基であるアミン塩を用いればよい。
水素化ホウ素アルカリとアミン塩との混合比は、特に限定されないが、アミン塩の使用量を1モルとした場合に、水素化ホウ素アルカリの使用量を1〜1.5モルとすることが好ましい。 本発明においては、反応用溶媒として、N−アルキルボラジンの沸点±35℃の範囲に沸点を有する有機物の含有量が500質量ppm以下、好ましくは100質量ppm以下、より好ましくは50質量ppm以下、特に好ましくは10質量ppm以下の溶媒を用いる。前記有機物の含有量の下限値は特に限定されないが、実質的には、0.1質量ppm以上である。ここで、N−アルキルボラジンの沸点±35℃の範囲に沸点を有する有機物の含有量の値は、ガスクロマトグラフィーによって測定した値を採用するものとする。
N−アルキルボラジンの沸点とは、合成の目的物であるN−アルキルボラジンの常圧における沸点を意味する。なお、N−アルキルボラジンの沸点は、置換基の種類によって変動しうるため、一義的には決定されない。一例を挙げると、N,N’,N”−トリメチルボラジンの沸点は133℃/760mmHgであり、N,N’,N”−トリエチルボラジンの沸点は210℃/760mmHgである。また、N,N’,N”−トリ−イソプロピルボラジンの沸点は272℃/760mmHgであり、N,N’,N”−トリ−n−プロピルボラジンの沸点は280℃/760mmHgである。
反応用溶媒の沸点とは、水素化ホウ素アルカリとアミン塩との反応の際に用いられる溶媒の常圧における沸点を意味する。用いられうる反応用溶媒の沸点の上限については、特に限定はないが、沸点が高すぎると蒸留精製の実施が困難となるため、好ましくはN−アルキルボラジンの沸点+200℃以下、より好ましくは+150℃以下の沸点を有する溶媒が用いられる。前記溶媒の沸点の下限については、特に限定されず、所定の反応温度以下で沸騰がおこらなければよいが、好ましくはN−アルキルボラジンの沸点+40℃以上であり、より好ましくは+50℃以上である。
用いられうる溶媒としては、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、グリコールジアルキルエーテル系溶媒が挙げられ、好ましくは、グリコールジアルキルエーテル系溶媒である。
前記グリコールジアルキルエーテル系溶媒は、下記化学式1で表される溶媒である。
Figure 0005373259
式中、Rは炭素数2〜4のアルキレン基であり、RおよびRは、同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜10のアルキル基であり、nは1〜10の整数である。
具体的には、Rとして含まれうる炭素数2〜4のアルキレン基としては、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。
およびRとして含まれうる炭素数1〜10のアルキル基は、直鎖、分岐、または環状のアルキル基でありうる。RおよびRとして含まれうる炭素数1〜10のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
nは1〜10の整数であり、好ましくは3〜6である。
前記グリコールジアルキルエーテル系溶媒のうち、好ましくは、モノエチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)、ペンタエチレングリコールジメチルエーテル、モノエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、モノプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、モノプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等である。さらに好ましくは、トリグライム、テトラグライム、ペンタグライムであり、最も好ましくは、トリグライムである。
前記溶媒は、合成されるN−アルキルボラジンの沸点に応じて選択されうる。例えば、沸点が133℃であるN,N’,N”−トリメチルボラジンを合成する場合、沸点が216℃であるトリグライムや、沸点が175℃であるジプロピレングリコールジメチルエーテルを反応用溶媒として用いることが好ましい。また、沸点が210℃であるN,N’,N”−トリエチルボラジンを合成する場合、沸点が275℃であるテトラグライムを反応用溶媒として用いることが好ましい。沸点が約272℃であるN,N’,N”−トリ−イソプロピルボラジン、または沸点が約280℃であるN,N’,N”−トリ−n−プロピルボラジンを合成する場合は、沸点が約342℃であるペンタエチレングリコールジメチルエーテルを反応用溶媒として用いることが好ましい。
一方、N−アルキルボラジンの沸点±35℃の範囲に沸点を有する有機物としては、例えば、合成されるN−アルキルボラジンがN,N’,N”−トリメチルボラジンの場合、ジグライム、モノエチレングリコールジエチルエーテルなどが挙げられ、N,N’,N”−トリエチルボラジンの場合、トリグライム、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどが挙げられる。また、合成されるN−アルキルボラジンがN,N’,N”−トリ−イソプロピルボラジンまたはN,N’,N”−トリ−n−プロピルボラジンの場合、テトラグライムなどが挙げられる。
通常、市販の溶媒中には、一定量の不純物が含まれ、本発明で用いられうるグリコールジアルキルエーテル系の溶媒では、前記溶媒よりも低分子量のグリコールジアルキルエーテル類が混入している場合がある。例えば、市販のトリグライムには、600質量ppm程度のジグライムが含まれる。このように、溶媒中にN−トリメチルボラジンの沸点±35℃の範囲の有機物が500質量ppm以上含まれる場合は、好ましくは蒸留によって、前記溶媒を精製し、上述の有機物の含有量を500質量ppm以下に低減させたものを反応用溶媒として用いる。 溶媒を蒸留精製するために用いられうる蒸留装置は、多段式蒸留塔のような回分式(バッチ式)蒸留装置または連続式蒸留装置が好適である。多段式蒸留塔である場合における蒸留塔の段数は、特に限定されるものではないが、塔頂(最上段)と塔底(最下段)とを除いた段数が2段以上であることが好ましい。このような蒸留塔としては、例えばラシヒリング、ポールリング、インタロックスサドル、ディクソンパッキング、マクマホンパッキング、スルーザーパッキング等の充填物が充填された充填塔、泡鐘トレイ、シーブトレイ、バルブトレイ等のトレイ(棚段)を使用した棚段塔等、一般に用いられている蒸留塔が好適である。中でも、オルダーショウ蒸留塔などのシーブトレイを使用した棚段塔が好ましく用いられうる。また、棚段と充填物層とを併せ持つ複合式の蒸留塔も採用することができる。上記の段数とは、棚段塔においては棚段の数を示し、充填塔においては理論段数を示す。上記段数は、好ましくは3〜100段であり、より好ましくは5〜50段である。
蒸留塔の構成としては、リボイラ、コンデンサ等を備えた一般的な構成を採用できる。蒸留塔の本数は限定的ではなく、1本または2本の蒸留塔が使用できる。
蒸留塔における圧力操作は、混合物の組成、加熱源、冷却源の温度等によって適宜決定されるものであり、特に制限されるものではないが、副反応の抑制という観点から、減圧下で行うことが好ましい。具体的には60kPa以下が好ましく、30kPa以下がより好ましい。また、同様に塔底温度は、250℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。蒸留塔の塔頂における還流比は限定的ではないが、好ましくは0.1〜50、より好ましくは0.3〜30とすればよい。その他の操作条件は、公知の蒸留条件に従えばよい。
また、回分式の蒸留を行う際に、除去したい軽沸点成分の濃度が低い場合には、蒸留塔を全還流で保持して還流槽に軽沸点成分を濃縮し、還流槽の組成が安定したところで、槽内の液を短時間で抜き出す方式で軽沸点成分を除去してもよい。この操作を複数回繰り返すことで、軽沸点成分をさらに除去することができる。全還流にて保持する時間は、装置によって異なるが、還流槽の液量に対して、2倍の液が塔頂より留出する時間より長くすることが望ましい。本操作の終了後に、塔底から残存する液を抜きだすか、塔頂から留出させることで、軽沸点成分を低減した液を得ることができる。
水素化ホウ素アルカリとアミン塩との反応条件は、特に限定されない。反応温度は、好ましくは20〜250℃、より好ましくは50〜240℃、さらに好ましくは100〜220℃である。上記範囲で反応させると、水素発生量の制御が容易である。反応温度は、K熱電対などの温度センサーを用いて測定されうる。
好ましくは、上述のN−アルキルボラジンを合成する段階で得られた反応液から、合成されたN−アルキルボラジンを蒸留によって精製する。
合成によって得られたN−アルキルボラジンを含む反応液は、スラリー状である。このスラリー状の反応液から、はじめに粗蒸留を行う。これによって、溶媒を蒸発させ、同時にハロゲンを除去する。粗蒸留のための装置や蒸留条件については特に限定されない。目的とするN−アルキルボラジンに応じて、常圧蒸留や減圧蒸留などの手法を選択すればよい。粗蒸留の際の塔底温度は、好ましくは50〜250℃であり、より好ましくは80〜200℃である。蒸留圧力は、好ましくは0.1〜80kPaであり、より好ましくは1〜40kPaである。粗蒸留によって、生成したN−アルキルボラジンの95%程度を反応液から分離し、留分として純度70%程度の粗生成物を得る。粗蒸留後、溶媒を含むスラリー状の反応液が残り、反応で副生するNaClは、主に前記溶媒を含むスラリー状の反応液中に含まれる。好ましくは、粗生成物中のハロゲンの含有量は、1000質量ppm以下である。
または、前記スラリー状の反応液から液体成分を蒸発させることによって、液体成分と固体成分とを完全に分離した後に、前記液体成分について粗蒸留を行って粗生成物を得てもよい。反応で副生するNaClは、主に前記固体成分中に残る。
次いで、上述の粗生成物について精留を行う。精留に用いる装置や精留の条件は、上述した反応に用いるための溶媒の蒸留精製の際の装置および条件と同様である。精留を行うことによって、ハロゲンの含有量をさらに低減させ、高純度のN−アルキルボラジンを得る。 本発明によって提供されるN−アルキルボラジンは、好ましくは、純度が99.9質量%以上であり、より好ましくは99.92質量%以上であり、特に好ましくは99.95質量%以上である。ここで、N−アルキルボラジンの純度の値は、ガスクロマトグラフィーによって測定した値を採用するものとする。このような高純度のN−アルキルボラジンを用いることにより、半導体素子などの製品の性能を向上させることができる。
また、本発明によって提供されるN−アルキルボラジンは、ハロゲンの含有量が、好ましくは1質量ppm以下であり、より好ましくは0.1質量ppm以下である。ここで、ハロゲンの含有量の値は、イオンクロマトグラフィーによって測定した値を採用するものとする。
本発明の第2は、上述の製造方法で製造されるN−アルキルボラジンであって、反応用溶媒として下記化学式1で表されるグリコールジアルキルエーテル系溶媒を用いた場合、前記N−アルキルボラジンの沸点±35℃の範囲に沸点を有するグリコールジアルキルエーテル類の生成物中の含有量が、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以下であり、特に好ましくは0.03質量%以下である、N−アルキルボラジンである。複数種のグリコールジアルキルエーテル類が混入する場合、各成分の含有量の合計量が上記範囲であることが好ましい。ここで、生成物であるN−アルキルボラジン中に含まれる、前記N−アルキルボラジンの沸点±35℃の範囲に沸点を有するグリコールジアルキルエーテル類の含有量の値は、ガスクロマトグラフィーによって測定した値を採用するものとする。
Figure 0005373259
式中、Rは炭素数2〜4のアルキレン基であり、RおよびRは、同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜10のアルキル基であり、nは1〜10の整数である。
なお、本願発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであって、上述した本発明の第1の製造方法の技術的範囲が、本発明の第2のN−アルキルボラジンが得られる形態のみに制限されることはない。
生成物中に含まれうる化学式1のグリコールジアルキルエーテル類としては、残留したグリコールジアルキルエーテル系溶媒の他に、前記グリコールジアルキルエーテル系溶媒よりも低分子量のグリコールジアルキルエーテル類が複数種混入しうる。したがって、前記グリコールジアルキルエーテル類は、前記グリコールジアルキルエーテル系溶媒の構造に対応するR、R、Rを有し、それぞれ異なるnを有する複数の化合物の混合物として存在しうる。
本発明の製造方法において、反応用溶媒としてトリグライムを用いてN,N’,N”−トリメチルボラジンを製造する場合、ジエチレングリコールジメチルエーテルの含有量は、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以下であり、特に好ましくは0.03質量%以下である。
本発明の第3は、N−アルキルボラジンの沸点±35℃の範囲に沸点を有する有機物の含有量が500質量ppm以下である、前記N−アルキルボラジンの製造に用いる反応用溶媒である。前記反応用溶媒は、N−アルキルボラジンの沸点±35℃の範囲に沸点を有する有機物の含有量が、好ましくは100質量ppm以下であり、より好ましくは50質量ppm以下であり、特に好ましくは10質量ppm以下である。ここで、N−アルキルボラジンの沸点±35℃の範囲に沸点を有する有機物の含有量の値は、ガスクロマトグラフィーによって測定した値を採用するものとする。
製造されたN−アルキルボラジンは、特に限定されないが、半導体用層間絶縁膜、バリアメタル層、エッチストッパー層などの形成に用いられうる。その際には、N−アルキルボラジンがそのまま用いられてもよいし、N−アルキルボラジンに改変を加えた化合物が用いられてもよい。N−アルキルボラジンまたはN−アルキルボラジンの誘導体を重合させた重合体を、半導体用層間絶縁膜、バリアメタル層またはエッチストッパー層の原料として用いてもよい。以下、「N−アルキルボラジン」、「N−アルキルボラジンの誘導体」および「これらに起因する重合体」をまとめて、「ボラジン環含有化合物」と称する。
ボラジン環含有化合物を用いて、半導体用層間絶縁膜、バリアメタル層またはエッチストッパー層を形成する手法としては、例えば、ボラジン環含有化合物を含む溶液状またはスラリー状の組成物を調製し、これを所望の部位に塗布することによって、塗膜を形成する手法や化学気相成長成膜法(CVD法)が用いられうる。
以下、実施例および比較例を用いて本発明の実施の形態をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみには制限されない。
<実施例1>
スルーザーパッキングを充填した理論段数12段の蒸留塔を用いて、市販のトリグライム(日本乳化剤株式会社製ジメチルトリグリコール)の蒸留を行った。
使用した市販のトリグライム(沸点216℃)中にはジグライム(沸点162℃)が600質量ppm含まれていた。このトリグライム200kgを塔底に仕込み、塔頂圧力4kPaで全還流を行い還流槽にジグライムを濃縮した。全還流のまま1時間保持した後、還流槽の液を短時間で抜き出した。この操作を6回繰り返してジグライムの除去を行った。その後、還流比0.5にてトリグライムを留出させ、トリグライムの精製を完了した。仕込み液量に対して留出率15質量%まで初留とし、それ以降85質量%までを本留とした。全還流から抜き出された初留は30kgであった。得られたトリグライム中のジグライムの含有量は5質量ppmであった。トリグライム中のジグライムの含有量は、ガスクロマトフィーによって測定した。測定条件は以下の通りである。
Figure 0005373259
このトリグライムを用いて、N,N’,N”−トリメチルボラジン(沸点133℃)の合成を行った。
還流管を備えた100Lの反応器を窒素置換した後、アミン塩として、乾燥したメチルアミン塩酸塩8.38kg、反応用溶媒として、上記で精製したトリグライム30kgを仕込み、150℃まで昇温した。その後、水素化ホウ素アルカリである水素化ホウ素ナトリウム5.25kgと反応用溶媒である上記で精製したトリグライム22.2kgとの混合物を、7.5時間かけて供給した。その後、170℃まで昇温し、その後2時間熟成した。反応中に生成した水素は還流管にて冷却した後、系外へ除去した。得られた反応液には、N,N’,N”−トリメチルボラジンが4.5kg含まれていた。
得られた反応液から蒸留にてN,N’,N”−トリメチルボラジンを濃縮した。粗蒸留として、圧力13kPaにて反応液を加熱し、N,N’,N”−トリメチルボラジンを含んだ留分を6.7kg留出させた。留分中のN,N’,N”−トリメチルボラジンの濃度は65質量%であった。
上記蒸留にて得られた留分について、内径32mm、20段のガラス製オルダーショウ蒸留塔にて精留を行った。上記留分1.2kgを塔底に仕込み、塔頂圧力27kPa、還流比5にて精留した。仕込み液量に対して留出率24質量%までを初留とし、それ以降52質量%までを本留として取得した。本留中のN,N’,N”−トリメチルボラジンの濃度は99.9質量%であった。また、本留中のジグライムの含有量は100質量ppmであった。本留中のN,N’,N”−トリメチルボラジンの濃度および本留中のジグライムの含有量は、上記表1と同様の条件で、ガスクロマトグラフィーで測定した。
また、本留中の塩素の含有量はイオンロマトグラフィーで測定した。まず、ボラジン化合物をメチルアルコール(関東化学株式会社製;電子工業用メチルアルコール)で20倍に希釈分解させ、さらに超純水で分解物を20倍に希釈することにより分析用加水分解液を調製する。この液を、陽イオン吸着カラムを通過させた後、イオンクロマトグラフィーであるISC−1500(日本ダイオネクス株式会社製)を用いて測定した。本留中の塩素の含有量は40ppb以下(検出限界以下)であった。
<比較例1>
実施例1の反応において、精製しないトリグライム(ジグライム600質量ppm含有)を反応用溶媒として用いた以外は、同様の条件で、反応、粗蒸留、精留を実施した。精留で得られた本留中のN,N’,N”−トリメチルボラジンの濃度は99.5質量%であった。また、本留中のジグライムの含有量は3200質量ppmであった。
<実施例2>
段数20段の棚段塔を用いて、市販のトリグライムの蒸留を行った。市販のトリグライム中にはジグライムが600質量ppm含まれていた。塔頂圧力4kPa、還流比5で蒸留を行い、仕込み液量に対して留出率5.5質量%までを初留とし、それ以降80質量%までを本留とした。得られたトリグライム中のジグライムの含有量は8質量ppmであった。このトリグライムを反応用溶媒として用いて、反応、粗蒸留、精留を実施例1と同様に行い、N,N’,N”−トリメチルボラジンを得た。
精留後得られたN,N’,N”−トリメチルボラジンの濃度は99.9質量%であった。また、本留中のジグライムの含有量は130質量ppmであった。また、本留中の塩素の含有量は、40ppb以下(検出限界以下)であった。
以上の実施例および比較例に示す結果から、N−アルキルボラジンの合成に用いる溶媒を蒸留することによって、溶媒中に含まれるN−アルキルボラジンとの沸点差の小さい不純物を除去できることがわかる。蒸留した溶媒を反応用溶媒として用いることで、高純度のN−アルキルボラジンの製造が可能となる。

Claims (5)

  1. ABH4(Aは、リチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子である)で表される水素化ホウ素アルカリと、RNH 3 (Rはアルキル基であり、Xはハロゲン原子である)で表されるアミン塩とを、反応用溶媒中で反応させてN−アルキルボラジンを合成する段階を含み、
    前記反応用溶媒として、下記化学式1で表されるグリコールジアルキルエーテル系溶媒であり、前記N−アルキルボラジンの沸点±35℃の範囲に沸点を有するグリコールジアルキルエーテル類の含有量が10質量ppm以下の溶媒を使用し、
    有機溶媒を蒸留によって精製することにより前記反応用溶媒を得る段階をさらに含み、
    合成された前記N−アルキルボラジンを蒸留によって精製する段階をさらに含む、N−アルキルボラジンの製造方法
    Figure 0005373259
    式中、R 1 は炭素数2〜4のアルキレン基であり、R 2 およびR 3 は、同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜10のアルキル基であり、nは1〜10の整数である。
  2. 製造されるN−アルキルボラジンの純度が99.9質量%以上である、請求項に記載の製造方法。
  3. 前記N−アルキルボラジンのアルキル基の有する炭素数が1〜4個である、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記N−アルキルボラジンがN,N',N''−トリメチルボラジンである、請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記N−アルキルボラジンの沸点±35℃の範囲に沸点を有するグリコールジアルキルエーテル類が、前記反応用溶媒よりも低分子量のグリコールジアルキルエーテル類である、請求項1〜4のいずれか1項の製造方法。
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