例えば光ファイバー線引炉や金属熱処理炉などから排出される、ヘリウムを主成分として含む使用済みガス、の排出流量や不純物組成は、変動を伴うことが多い。そのため、当該排出ガスを連続的に精製処理するためには、当該排出ガスの流量変動や組成変動に対応可能な処理システムを構築する必要がある。しかしながら、PSA法を実行するためのPSA装置においては、当該装置に供給される原料ガスの有意な流量変動(即ち負荷変動)に対応するのは、困難である。また、PSA装置は、原料ガスの組成変動に対応するのも不得手である。
また、例えば光ファイバー線引炉などから排出される、ヘリウムを主成分として含む使用済みガス、のヘリウム濃度は、50vol%以下と比較的低い場合が多い。従来の技術においては、このようなヘリウム濃度領域にある粗ヘリウムガスについて、PSA法によって精製しつつ、高い回収率を達成することは、困難である。
本発明は、このような事情の下で考え出されたものであって、PSA法を利用して高純度ヘリウムを高収率で得るのに適したヘリウム精製方法およびヘリウム精製装置を提供することを、目的とする。
本発明の第1の側面によるとヘリウム精製方法が提供される。本方法においては、ヘリウムを含む混合ガスを貯留槽に取り込み、また、貯留槽から、吸着剤が充填された吸着塔に向けて、混合ガスを供給する。そして、吸着工程および脱着工程を含むサイクルを、吸着塔において繰り返し行う。吸着工程では、吸着塔内が相対的に高圧である状態において、当該吸着塔に混合ガスを導入して当該混合ガス中の不純物を吸着剤に吸着させ、且つ、ヘリウムが富化された精製ガスを当該吸着塔から導出する。脱着工程では、吸着塔内を降圧して吸着剤から不純物を脱着させ、且つ、当該吸着塔からガスを導出する。また、脱着工程は、当該脱着工程の開始から途中までにおいて吸着塔から第1ガスを導出する第1脱着工程と、吸着塔から第2ガスを導出する、第1脱着工程の後の第2脱着工程とを含み、第1ガスを貯留槽に導入する。本方法においては、単一の吸着塔を使用してもよいし、複数の吸着塔を併用してもよい。
本方法では、吸着塔において、上述の吸着工程および脱着工程を含む圧力変動吸着法(PSA法)を実行し、これによって混合ガス中のヘリウムの富化ないし高純度化を図る。混合ガスについては、貯留槽に一旦取り込んだうえで、当該貯留槽から、PSA法を実行するための吸着塔に向けて供給する。貯留槽に取り込まれることとなる原料ガスたる混合ガスがその流量や組成に変動を伴う場合であっても、流量変動や組成変動は、当該混合ガスが貯留槽に一旦取り込まれて貯留および混合されることにより、当該貯留槽から導出される混合ガスにおいては緩和ないし抑制される(このような流量変動や組成変動の緩和ないし抑制の観点から、貯留槽のガス収容用容積は可変であるのが好ましい)。そのため、本方法によると、ヘリウムの精製にあたりPSA法を利用するものであっても、原料ガスの流量変動や組成変動に対応しやすい。
加えて、本方法によると、高純度化されるヘリウムについて、高い収率を達成しやすい。本方法においては、上述の脱着工程中に吸着塔から導出され続けるガス(オフガス)のうち、ヘリウム濃度が相対的に高いオフガスを貯留槽に戻し、当該オフガスをPSA法による再度のヘリウム富化に供することができるからである(貯留槽がオフガスを受け入れるときに当該貯留槽と連通する吸着塔(脱着工程中)の内部圧力(脱着圧力)が不当に上昇するのを回避するという観点からも、貯留槽のガス収容用容積は可変であるのが好ましい)。脱着工程にある吸着塔から導出されるオフガスの不純物含有率は、脱着工程の開始以降、漸次的に上昇する傾向にあるところ、本方法においては、当該オフガスの不純物含有率が充分に低い期間は、オフガス(第1ガス)を貯留槽に導入する第1脱着工程を行い、オフガスの不純物含有率が一定以上である期間は、オフガス(第2ガス)を系外に排出する第2脱着工程を行うことが可能である。
以上のように、本発明の第1の側面に係るヘリウム精製方法は、PSA法を利用して高純度ヘリウムを高収率で得るのに適する。
本発明の第1の側面において、第1脱着工程から第2脱着工程への切替えタイミングは、第1ガスのヘリウム濃度に基づいて決定するのが好ましい。このような構成は、取得される精製ガスのヘリウムの濃度および収率について最適化を図るうえで好ましい。
本発明の第2の側面によるとヘリウム精製方法が提供される。本方法においては、ヘリウムを含む混合ガスを貯留槽に取り込み、また、貯留槽から、吸着剤が充填された複数の吸着塔に向けて、混合ガスを供給する。そして、吸着工程、減圧工程、脱着工程、洗浄工程、および昇圧工程を含むサイクルを、吸着塔において繰り返し行う。吸着工程では、吸着塔内が相対的に高圧である状態にて、当該吸着塔に混合ガスを導入して当該混合ガス中の不純物を吸着剤に吸着させ、且つ、ヘリウムが富化された精製ガスを当該吸着塔から導出する。減圧工程では、吸着塔内を降圧して当該吸着塔からガスを導出する。脱着工程では、吸着塔内を降圧して吸着剤から不純物を脱着させ、且つ、当該吸着塔からガスを導出する。洗浄工程では、吸着塔に洗浄ガスを導入し、且つ、当該吸着塔からガスを導出する。洗浄工程の洗浄ガスは、減圧工程にある吸着塔から導出されたガスである。洗浄工程は、当該洗浄工程の開始から途中までにおいて吸着塔から第1ガスを導出する第1洗浄工程と、当該吸着塔から第2ガスを導出する、第1洗浄工程の後の第2洗浄工程とを含み、第2ガスを貯留槽に導入する。昇圧工程では、吸着塔内の圧力を上昇させる。
本方法では、各吸着塔において、上述の吸着工程、減圧工程、脱着工程、洗浄工程、および昇圧工程を含むPSA法を実行し、これによって混合ガス中のヘリウムの富化ないし高純度化を図る。混合ガスについては、貯留槽に一旦取り込んだうえで、当該貯留槽から、PSA法を実行するための各吸着塔に向けて供給する。貯留槽に取り込まれることとなる原料ガスたる混合ガスがその流量や組成に変動を伴う場合であっても、流量変動や組成変動は、当該混合ガスが貯留槽に一旦取り込まれて貯留および混合されることにより、当該貯留槽から導出される混合ガスにおいては緩和ないし抑制される(このような流量変動や組成変動の緩和ないし抑制の観点から、貯留槽のガス収容用容積は可変であるのが好ましい)。そのため、本方法によると、ヘリウムの精製にあたりPSA法を利用するものであっても、原料ガスの流量変動や組成変動に対応しやすい。
加えて、本方法によると、高純度化されるヘリウムについて、高い収率を達成しやすい。本方法においては、上述の洗浄工程中に吸着塔から導出され続けるガス(パージガス)のうち、ヘリウム濃度が相対的に高いパージガスを貯留槽に導入し、当該パージガスをPSA法によるヘリウム富化に供することができるからである(貯留槽がパージガスを受け入れるときに当該貯留槽と連通する吸着塔(洗浄工程中)の内部圧力(洗浄圧力)が不当に上昇するのを回避するという観点からも、貯留槽のガス収容用容積は可変であるのが好ましい)。洗浄工程にある吸着塔から導出されるパージガスの不純物含有率は、洗浄工程の開始以降、漸次的に低下する傾向にあるところ、本方法においては、パージガスの不純物含有率が充分に低下するまで、パージガス(第1ガス)を系外に排出する第1洗浄工程を行い、パージガスの不純物含有率が充分に低下した以降に、パージガス(第2ガス)を貯留槽に導入する第2洗浄工程を行うことが可能である。
以上のように、本発明の第2の側面に係るヘリウム精製方法は、PSA法を利用して高純度ヘリウムを高収率で得るのに適する。
本発明の第2の側面において、第1洗浄工程から第2洗浄工程への切替えタイミングは、第1ガスのヘリウム濃度に基づいて決定するのが好ましい。このような構成は、取得される精製ガスのヘリウムの濃度および収率について最適化を図るうえで好ましい。
本発明の第2の側面において、好ましくは、脱着工程は、当該脱着工程の開始から途中までにおいて吸着塔から第3ガスを導出する第1脱着工程と、当該吸着塔から第4ガスを導出する、第1脱着工程の後の第2脱着工程とを含み、第3ガスを貯留槽に導入する。このような構成においては、高純度ヘリウムを高収率で得るのに資する。本方法においては、上述の脱着工程中に吸着塔から導出され続けるガス(オフガス)のうち、ヘリウム濃度が相対的に高いオフガスを貯留槽に戻し、当該オフガスをPSA法による再度のヘリウム富化に供することができるからである。脱着工程にある吸着塔から導出されるオフガスの不純物含有率は、脱着工程の開始以降、漸次的に上昇する傾向にあるところ、本方法においては、当該オフガスの不純物含有率が充分に低い期間は、オフガス(第3ガス)を貯留槽に導入する第1脱着工程を行い、オフガスの不純物含有率が一定以上である期間は、オフガス(第4ガス)を系外に排出する第2脱着工程を行うことが可能である。
本発明の第2の側面において、第1脱着工程から第2脱着工程への切替えタイミングは、第3ガスのヘリウム濃度に基づいて決定するのが好ましい。このような構成は、取得される精製ガスのヘリウムの濃度および収率について最適化を図るうえで好ましい。
好ましくは、減圧工程は、当該減圧工程の開始から途中までにおいて吸着塔から第5ガスを導出する第1減圧工程と、当該吸着塔から第6ガスを導出する、第1減圧工程の後の第2減圧工程とを含み、第5ガスを洗浄ガスとして洗浄工程にある吸着塔に導入し、第6ガスを昇圧工程にある吸着塔に導入する。減圧工程にある吸着塔から導出されるガスのヘリウム濃度は比較的高いところ、このような構成によると、減圧工程にある吸着塔から導出されるガスを利用して他の吸着塔にて洗浄工程および昇圧工程を効率よく行うことができる。すなわち、このような構成によると、複数の吸着塔のそれぞれにて行われる工程を有機的に利用して、ヘリウム精製のためのPSA法を効率よく行うことが可能なのである。
好ましくは、脱着工程にある吸着塔の内部の最低圧力を0%とし且つ吸着工程にある吸着塔の内部の最高圧力を100%とする場合、第1減圧工程の終了時における吸着塔の内部の第1中間圧力は35〜80%の範囲にあり、且つ、第2減圧工程の終了時における吸着塔の内部の第2中間圧力は第1中間圧力より小さい限りにおいて15〜50%の範囲にある。このような構成は、洗浄工程および昇圧工程を効率よく行うのに資する。
好ましくは、昇圧工程は、第2減圧工程にある吸着塔から導出された第6ガスを昇圧対象の吸着塔に導入する第1昇圧工程と、当該吸着塔に精製ガスを導入する、第1昇圧工程の後の第2昇圧工程とを含む。このような構成は、昇圧工程およびその後の吸着工程を各吸着塔にて効率よく行ううえで好適である。
本発明の第1および第2の側面において、好ましくは、脱着工程にある吸着塔の内部の最低圧力は大気圧以上である。このような構成においては、吸着塔にて脱着工程を行うにあたり、真空ポンプなどの積極的減圧手段を必ずしも使用する必要はない。また、真空ポンプなどの積極的減圧手段を必ずしも使用する必要のないこのような構成は、PSA法を実行するための吸着塔ないしPSA装置が、貯留槽からの混合ガスの流量変動(即ち、装置に対する負荷変動)に対応するうえで、好適である。
好ましくは、貯留槽から吸着塔に向けて供給する混合ガスの流量は、吸着塔にて吸着工程が開始する時に更新する。このような構成は、PSA法を実行するための吸着塔ないしPSA装置に対する負荷を軽減するうえで好適である。
第1の好ましい実施の形態では、貯留槽における貯留量について上側設定量および当該上側設定量より小さい下側設定量を設定する。そのうえで、貯留槽からの混合ガス供給流量の更新時において、貯留槽内の混合ガスの貯留量が上側設定量以上である場合、混合ガス供給流量を増大し、貯留槽内の混合ガスの貯留量が上側設定量を下回り且つ下側設定量を上回る場合、混合ガス供給流量を変更せず、貯留槽内の混合ガスの貯留量が下側設定量以下である場合、混合ガス供給流量を低減する。このような構成は、貯留槽に取り込まれることとなる原料ガスたる混合ガスの流量変動に貯留槽が対応するとともに、PSA法を実行するための吸着塔ないしPSA装置に対する負荷変動を軽減して負荷の安定化を図るうえで好適である。
第2の好ましい実施の形態では、貯留槽における貯留量について上側設定量および当該上側設定量より小さい下側設定量を設定し、且つ、混合ガス供給流量の更新時より前に貯留槽に取り込まれる混合ガスの流量(例えば所定期間内の平均流量)を得て基準流量とする。そのうえで、貯留槽からの混合ガス供給流量の更新時において、貯留槽内の混合ガスの貯留量が上側設定量以上である場合、基準流量より大きな流量を混合ガス供給流量とし、貯留槽内の混合ガスの貯留量が上側設定量を下回り且つ下側設定量を上回る場合、基準流量を混合ガス供給流量とし、貯留槽内の混合ガスの貯留量が下側設定量以下である場合、基準流量より小さな流量を混合ガス供給流量とする。このような構成は、貯留槽に取り込まれることとなる原料ガスたる混合ガスの流量変動に貯留槽が対応するとともに、PSA法を実行するための吸着塔ないしPSA装置に対する負荷変動を軽減して負荷の安定化を図るうえで好適である。
好ましくは、混合ガスを吸着塔に供給する前に、貯留槽からの混合ガスに対して、当該混合ガスに含まれる不純物の少なくとも一部を除去または変成するための前処理を施す。このような構成は、高純度ヘリウムを得るうえで好適である。また、前処理を施す前に貯留槽にガスを一旦貯留する本構成は、混合ガスに含まれる所定の不純物の除去または変成のための前処理を、安定して行い、従って効率的に行ううえでも、好適である。流量変動および組成変動が緩和された貯留槽からの混合ガスに対して前処理を施す本構成においては、前処理に対する負荷が安定しやすいからである。
好ましくは、前処理は複数段に分けて行う。例えば、混合ガスに含まれる不純物の少なくとも一部を除去または変成するうえで当該混合ガスに施すべき前処理に発熱反応が含まれる場合、前処理を複数段に分けて行うという構成は、当該前処理において、過度の温度上昇を防止して反応温度を適正範囲内に制御するうえで好ましい。
混合ガスがヘリウムに加えて少なくとも酸素および水素を含む場合には、好ましくは、前処理は、酸素と水素とを反応させて水を生じさせる第1処理と、酸素を一酸化炭素と反応させて二酸化炭素を生じさせる、第1処理の後に行う第2処理とを含む。このような構成は、混合ガスがヘリウムに加えて酸素および水素を含む場合に当該酸素および水素の除去または低濃度化を図るうえで好適である。第1処理では、水素に対して過剰量の酸素が存在する条件下で水素を酸素と反応させると、混合ガス中の水素を相当程度に低濃度化することが可能である(即ち、混合ガスから水素を実質的に除去することが可能である)。第2処理では、酸素に対して過剰量の一酸化炭素が存在する条件下で酸素を一酸化炭素と反応させると、混合ガス中の酸素を相当程度に低濃度化することが可能である(即ち、混合ガスから酸素を実質的に除去することが可能である)。したがって、本構成によると、例えば、混合ガスに対して必要に応じて所定量の酸素や水素を添加して酸素と水素の存在比を調整したうえで、第1処理にて、水素に対して所定過剰量の酸素が存在する条件下で水素を酸素と反応させて水を生じさせることによって水素除去を行うことができ、その後に、混合ガスに対して所定量の一酸化炭素を添加したうえで、第2処理にて、酸素に対して所定過剰量の一酸化炭素が存在する条件下で酸素を一酸化炭素と反応させて二酸化炭素を生じさせることによって酸素除去を行うことができる。このような本構成によると、混合ガスが不純物として酸素および水素を含む場合において、ヘリウム精製に適した吸着剤を使用して行うPSA法によっては除去されにくい水素および酸素を共に前処理(第1処理,第2処理)にて除去したうえで、ヘリウム精製に適した吸着剤を使用して行うPSA法によって除去しやすい一酸化炭素および二酸化炭素をPSA法にて除去することができる。このような本構成は、ヘリウムを高純度化するうえで好ましい。
また、混合ガスがヘリウム、酸素、および水素に加えて一酸化炭素を含む場合には、前処理は、一酸化炭素を酸素と反応させて二酸化炭素を生じさせる、第1処理より前に行う第3処理を、更に含むのが好ましい。一酸化炭素が第1処理の反応を阻害する場合には、このような構成を採用するのが好ましい。第3処理では、一酸化炭素に対して過剰量の酸素が存在する条件下で一酸化炭素を酸素と反応させると、混合ガス中の一酸化炭素を相当程度に低濃度化することが可能である(即ち、混合ガスから一酸化炭素を実質的に除去することが可能である)。したがって、本構成によると、例えば、混合ガスに対して必要に応じて所定量の酸素を添加したうえで、第3処理にて、一酸化炭素に対して所定過剰量の酸素が存在する条件下で一酸化炭素を酸素と反応させて二酸化炭素を生じさせることによって一酸化炭素除去を行うことができ、混合ガスに対して必要に応じて所定量の酸素や水素を添加して酸素と水素の存在比を調整したうえで、第1処理にて、水素に対して所定過剰量の酸素が存在する条件下で水素を酸素と反応させて水を生じさせることによって水素除去を行うことができ、その後に、混合ガスに対して所定量の一酸化炭素を添加したうえで、第2処理にて、酸素に対して所定過剰量の一酸化炭素が存在する条件下で酸素を一酸化炭素と反応させて二酸化炭素を生じさせることによって酸素除去を行うことができる。このような本構成によると、混合ガスが不純物として酸素、水素、および一酸化炭素を含む場合において、第1処理の反応の阻害因子となり得る一酸化炭素を当該第1処理の前に除去した後に、ヘリウム精製に適した吸着剤を使用して行うPSA法によっては除去されにくい水素および酸素を共に前処理(第1処理,第2処理)にて除去したうえで、ヘリウム精製に適した吸着剤を使用して行うPSA法によって除去しやすい二酸化炭素をPSA法にて除去することができる。このような本構成は、ヘリウムを高純度化するうえで好ましい。
本発明の第3の側面によるとヘリウム精製装置が提供される。本装置は、第1ガス通過口および第2ガス通過口を有し当該第1および第2ガス通過口の間において吸着剤が充填された吸着塔と、ヘリウムを含む混合ガスを吸着塔に供給するより前に貯留するための貯留槽と、貯留槽から吸着塔の第1ガス通過口側に混合ガスを供給可能に貯留槽および吸着塔の間を連結する第1ラインと、吸着塔の第1ガス通過口側に接続され且つガス排出端を有する第2ラインと、第2ラインおよび貯留槽を連結する第3ライン(リサイクルライン)とを備える。このような構成を具備する本装置によると、本発明の第1の側面に係る上述のヘリウム精製方法を適切に実行することが可能である。
本発明の第3の側面において、貯留槽は、可変なガス収容用容積を有する。このような構成は、第1の側面に係るヘリウム精製方法に関して上述したように、PSA法を実行するための吸着塔ないしPSA装置に向けて供給される混合ガスの流量変動や組成変動を緩和ないし抑制するという観点や、貯留槽がオフガスを受け入れるときに当該貯留槽と連通する吸着塔(脱着工程中)の内部圧力(脱着圧力)が不当に上昇するのを回避するという観点から、好ましい。
本発明の第4の側面によるとヘリウム精製装置が提供される。本装置は、第1ガス通過口および第2ガス通過口を有し当該第1および第2ガス通過口の間において吸着剤が充填された複数の吸着塔と、ヘリウムを含む混合ガスを吸着塔に供給するより前に貯留するための貯留槽と、貯留槽から各吸着塔の第1ガス通過口側に混合ガスを供給可能に貯留槽および各吸着塔の間を連結する第1ラインと、ガス排出端を有する主幹路、および、吸着塔ごとに設けられて当該吸着塔の第1ガス通過口側に接続された複数の分枝路、を有する第2ラインと、主幹路、および、吸着塔ごとに設けられて当該吸着塔の第2ガス通過口側に接続された複数の分枝路、を有する第3ラインと、第2ラインおよび貯留槽を連結する第4ライン(リサイクルライン)とを備える。このような構成を具備する本装置によると、本発明の第1の側面に係る上述のヘリウム精製方法および第2の側面に係る上述のヘリウム精製方法を、適切に実行することが可能である。
本発明の第4の側面において、貯留槽は、可変なガス収容用容積を有する。このような構成は、第1または第2の側面に係るヘリウム精製方法に関して上述したように、PSA法を実行するための吸着塔ないしPSA装置に向けて供給される混合ガスの流量変動や組成変動を緩和ないし抑制するという観点や、貯留槽がパージガスを受け入れるときに当該貯留槽と連通する吸着塔(洗浄工程中)の内部圧力(洗浄圧力)が不当に上昇するのを回避するという観点、貯留槽がオフガスを受け入れるときに当該貯留槽と連通する吸着塔(脱着工程中)の内部圧力(脱着圧力)が不当に上昇するのを回避するという観点から、好ましい。
本発明の第3および第4の側面に係るヘリウム精製装置は、好ましくは、貯留槽における貯留量を検知するための手段と、貯留槽から吸着塔に向けて供給する混合ガスの流量を制御するための手段とを更に備える。このような構成は、上述の第1の好ましい実施の形態に係る混合ガス供給流量の更新を実行するうえで、好適である。
本発明の第3および第4の側面に係るヘリウム精製装置は、好ましくは、貯留槽における貯留量を検知するための手段と、貯留槽から吸着塔に向けて供給する混合ガスの流量を制御するための手段と、貯留槽に供給される混合ガスの流量を検知するための手段とを更に備える。このような構成は、上述の第2の好ましい実施の形態に係る混合ガス供給流量の更新を実行するうえで、好適である。
好ましくは、混合ガスに含まれる不純物の少なくとも一部を除去または変成するための前処理系が第1ラインに設けられている。このような構成は、高純度ヘリウムを得るうえで好適である。また、ガスを一旦貯留するための貯留槽を前処理系の前に具備する本構成は、混合ガスに含まれる所定の不純物を除去または変成するための前処理を、安定して行い、従って効率的に行ううえでも、好適である。流量変動が緩和された貯留槽からの混合ガスが前処理系に供されることとなる本構成においては、前処理系に対する負荷が安定しやすいからである。
好ましくは、前処理系は、前処理を複数段に分けて行うための複数の処理槽を含む。例えば、混合ガスに含まれる不純物の少なくとも一部を除去または変成するうえで当該混合ガスに施すべき前処理に発熱反応が含まれる場合、前処理を複数段に分けて行うための複数の処理槽を前処理系が含むという構成は、当該前処理において、過度の温度上昇を防止して反応温度を適正範囲内に制御するうえで好ましい。
混合ガスがヘリウムに加えて少なくとも酸素および水素を含む場合には、好ましくは、前処理系は、酸素と水素とを反応させて水を生じさせる第1処理を実行するための第1処理槽と、第1処理の後に酸素を一酸化炭素と反応させて二酸化炭素を生じさせる第2処理を実行するための第2処理槽とを含む。このような構成は、混合ガスがヘリウムに加えて酸素および水素を含む場合に当該酸素および水素の除去または低濃度化を図るうえで好適である。
また、混合ガスがヘリウム、酸素、および水素に加えて一酸化炭素を含む場合には、前処理系は、第1処理より前に一酸化炭素を酸素と反応させて二酸化炭素を生じさせる第3処理を実行するための第3処理槽を更に含むのが好ましい。一酸化炭素が第1処理の反応を阻害する場合には、このような構成を採用するのが好ましい。
図1は、本発明に係るヘリウム精製装置Yの全体概略構成を表す。ヘリウム精製装置Yは、貯留系1と、前処理系2と、PSA系3と、リサイクルライン4とを備え、ヘリウムを含む原料ガスG0を回収しつつ連続的にヘリウムを精製することが可能なように構成されている。
原料ガスG0は、光ファイバー線引炉や金属熱処理炉などから排出された、ヘリウムを主成分として含むガスであり、少なくとも一つの所定の箇所(図示略)から連続的に又は断続的に排出されたものである。この排ガス(原料ガスG0)の排出流量や、圧力、組成は変動し得るものであり、急激に変動する場合もある。原料ガスG0は、ヘリウムに加え、不純物として窒素、酸素、一酸化炭素、および水素を含む。主たる不純物は例えば窒素である。原料ガスG0の排出流量(即ち、ヘリウム精製装置Yへの原料ガスG0の供給流量)は、例えば10〜100Nm3/hである。
ヘリウム精製装置Yの一部をなす貯留系1は、図1および図2に示すように、ガスホルダ10、除塵器11、昇圧ブロア12、流量計13、貯留量検知計14、濃度分析計15、流量制御部16、および、原料ガス導入端E1を有するライン17を備えてなる。除塵器11、流量計13、ガスホルダ10、昇圧ブロア12、および流量制御部16は、ライン17内において、直列に配されている。
ガスホルダ10は、ヘリウムを含む混合ガス(原料ガスG0を含む)を一旦貯留するための貯留槽である。また、本実施形態では、ガスホルダ10は、そのガス収容用の容積が可変に構成されている。容積が可変のガスホルダ10は、例えば、内部空間が拡縮可能な袋体によってガス貯留空間が形成されたものである。当該袋体は、例えば樹脂製袋体または布製袋体である。ガスホルダ10の最大容積は例えば70〜100m3である。ガスホルダ10の可変容積については、上側設定値VHおよび下側設定値VLが設定されている。上側設定値VHは、例えば60〜90m3である。下側設定値VLは、例えば10〜40m3である。
除塵器11は、炉からの排ガスである原料ガスG0に含まれることの多い粉塵や金属粉等の固形成分を、原料ガスG0から除去するためのものである。このような除塵器11は、ガスホルダ10の上流側に配され、例えば所定の除塵フィルタを有してなる。
昇圧ブロア12は、ガスホルダ10の下流側に配されてガスホルダ10に原料ガスG0を取り込むように稼働するためのものである。昇圧ブロア12が稼働することにより、ガスホルダ10内のガス貯留空間に負圧が作用して、原料ガスG0がガスホルダ10へ適当に流入することとなる。また、昇圧ブロア12が稼働することにより、ガスホルダ10からガスG1が導出され、当該ガスG1は前処理系2に向けて送出される。
流量計13は、炉からの排ガスである原料ガスG0がガスホルダ10へと流入する流量を計測するためのものである。貯留量検知計14は、ガスホルダ10ないしそのガス貯留空間に貯留されているガスの貯留量を計測するためのものである。
濃度分析計15は、ガスホルダ10および昇圧ブロア12を経たガスG1に含まれる各不純物の濃度を測定するためのものである。濃度分析計15において、ガスG1に含まれる例えば窒素、酸素、一酸化炭素、および水素のそれぞれの濃度が測定される。
流量制御部16は、前処理系2などの後段へと供給するガスG1の流量を制御するためのものである。このような流量制御部16は、例えば、開度を制御可能なバルブよりなる。
ヘリウム精製装置Yの一部をなす前処理系2は、後段のPSA系3において実行される圧力変動吸着法(PSA法)によっては除去しにくい不純物をガスG1から除去するためのものである。PSA法によってヘリウムを精製する際に当該PSA法によっては除去しにくい不純物としては、酸素および水素が挙げられる。また、酸素は、精製後のヘリウムを再利用する際に有害であることが多いので、除去の必要性が高い。前処理系2は、図1および図3に示すように、前処理槽20A,20B,20C、予熱器21、冷却器22A,22B,22C、酸素供給量制御部23、水素供給量制御部24、一酸化炭素供給量制御部25、温度計26A,26B,26C、流量制御部27A,27B、酸素濃度分析計28、ライン29A,29B,29C,29D、およびバイパスライン29b,29cを備えてなる。前処理槽20A,20B,20Cは、ガス経路上、直列に連結されている。
前処理槽20Aは、ガスG1中の一酸化炭素を二酸化炭素に変成して実質的に除去するための転化反応槽であり(一酸化炭素は、後段の前処理槽20Bに充填される触媒にとっての触媒毒となる場合がある)、入口端20aおよび出口端20bを有する。前処理槽20Aには、下記の反応式(1)で表される転化反応を促進する触媒が充填されている。当該触媒としては、例えば、プラチナ系触媒やパラジウム系触媒などの貴金属系触媒を採用することができる。
前処理槽20Bは、前処理槽20Aにおける処理を経て前処理槽20Aの出口端20bから導出されたガスG1中の酸素および水素を水に変化させて低濃度化または実質的に除去するための転化反応槽であり、入口端20aおよび出口端20bを有する。前処理槽20Bには、下記の反応式(2)で表される転化反応を促進する触媒が充填されている。当該触媒としては、例えば、プラチナ系触媒やパラジウム系触媒などの貴金属系触媒を採用することができる。
前処理槽20Cは、前処理槽20Bにおける処理を経て前処理槽20Bの出口端20bから導出されたガスG1中の酸素を一酸化炭素と反応させて酸素を低濃度化または実質的に除去するための転化反応槽であり、入口端20aおよび出口端20bを有する。前処理槽20Cには、上記の反応式(1)で表される転化反応を促進する触媒が充填されている。当該触媒としては、例えば、プラチナ系触媒やパラジウム系触媒などの貴金属系触媒を採用することができる。
予熱器21は、前処理槽20Aに至る前にガスG1を昇温するためのものであり、例えば電気ヒータよりなる。酸素供給量制御部23は、図外の酸素貯留部と連結され、且つ、前処理槽20Aの入口端20aに接続するライン29Aと連結されている。このような酸素供給量制御部23は、酸素貯留部からライン29Aへと必要に応じて供給される酸素の流量を制御するためのものであり、例えば、開度や開状態時間を制御可能なバルブよりなる。温度計26Aは、前処理槽20Aに導入される前のガスG1の温度を測定するためのものである。
冷却器22Aは、前処理槽20Aにおける処理を経て前処理槽20Aの出口端20bから導出されたガスG1を冷却するためのものであり、ライン29Bに設けられている。このような冷却器22Aは、例えば、冷却水を冷却媒体とする熱交換器よりなる。この冷却器22Aとライン上並列するようにバイパスライン29bが設けられており、当該バイパスライン29bには、流量制御部27Aが設置されている。流量制御部27Aは、例えば、開度や開状態時間を制御可能なバルブよりなる。水素供給量制御部24は、図外の水素貯留部と連結され、且つ、ライン29Bと連結されている。このような水素供給量制御部24は、水素貯留部からライン29Bへと必要に応じて供給される水素の流量を制御するためのものであり、例えば、開度や開状態時間を制御可能なバルブよりなる。温度計26Bは、前処理槽20Bに導入される前のガスG1の温度を測定するためのものである。
冷却器22Bは、前処理槽20Bにおける処理を経て前処理槽20Bの出口端20bから導出されたガスG1を冷却するためのものであり、ライン29Cに設けられている。このような冷却器22Bは、例えば、冷却水を冷却媒体とする熱交換器よりなる。この冷却器22Bとライン上並列するようにバイパスライン29cが設けられており、当該バイパスライン29cには、流量制御部27Bが設置されている。流量制御部27Bは、例えば、開度や開状態時間を制御可能なバルブよりなる。一酸化炭素供給量制御部25は、図外の一酸化炭素貯留部と連結され、且つ、ライン29Cと連結されている。このような一酸化炭素供給量制御部25は、一酸化炭素貯留部からライン29Cへと必要に応じて供給される一酸化炭素の流量を制御するためのものであり、例えば、開度や開状態時間を制御可能なバルブよりなる。酸素濃度分析計28は、ライン29Cを流れるガスG1に一酸化炭素が添加される前にガスG1の酸素濃度を測定するためのものである。温度計26Cは、前処理槽20Cに導入される前のガスG1の温度を測定するためのものである。
冷却器22Cは、前処理槽20Cにおける処理を経て前処理槽20Cの出口端20bから導出されたガスG1を冷却するためのものであり、ライン29Dに設けられている。このような冷却器22Cは、例えば、冷却水を冷却媒体とする熱交換器よりなる。
本実施形態における前処理系2は、上述のように三段の転化反応槽を具備するものであるが、PSA系3にガスG1を供する前に当該ガスG1から除去すべき不純物の種類および量に応じて、前処理系2を、所定の一段の転化反応槽を具備するものとして構成してもよいし、所定の二段の転化反応槽を具備するものとして構成してもよいし、所定の四段以上の転化反応槽を具備するものとして構成してもよい。或は、PSA系3にガスG1を供する前に当該ガスG1から除去すべき不純物がない場合は、前処理系2を設けなくてもよい。
ヘリウム精製装置Yの一部をなすPSA系3は、図1および図4に示すように、PSA装置30を備えてなる。PSA装置30は、吸着塔31A,31B,31Cと、昇圧機32と、ライン33〜36と、ヘリウム濃度分析計37とを備え、前処理系2からのガスG1(ヘリウムを含む)から圧力変動吸着法(PSA法)を利用してヘリウムを濃縮分離することが可能なように構成されている。
吸着塔31A,31B,31Cのそれぞれは、両端にガス通過口31a,31bを有し、ガス通過口31a,31bの間において、ガスG1に含まれる不純物を選択的に吸着するための吸着剤が充填されている。例えば、不純物たる窒素や一酸化炭素を吸着するための吸着剤としては、合成ゼオライトを用いることができる。例えば、不純物たる二酸化炭素を吸着するための吸着剤としては、カーボンモレキュラーシーブ(CMS)を用いることができる。例えば、不純物たる水分を吸着するための吸着剤としては、アルミナゲルを用いることができる。一種類の吸着剤を吸着塔31A,31B,31C内に充填してもよいし、複数種類の吸着剤を吸着塔31A,31B,31C内にて積層させて充填してもよい。吸着塔31A,31B,31C内に充填する吸着剤の種類や数については、吸着塔31A,31B,31Cにて除去すべき不純物の種類および量に応じて決定する。
昇圧機32は、ガス吸入口32aおよびガス送出口32bを有する。ガス吸入口32aは、前処理系2におけるライン29Dと連結されている。このような昇圧機32は、ガス吸入口32aから吸引したガスG1をガス送出口32bから吸着塔31A,31B,31Cに向けて供給ないし送り出すためのものであり、例えば圧縮機である。
ライン33は、昇圧機32のガス送出口32bに接続された主幹路33’、および、吸着塔31A,31B,31Cの各ガス通過口31a側にそれぞれが接続された分枝路33A,33B,33Cを有する。分枝路33A,33B,33Cには、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁33a,33b,33cが付設されている。
ライン34は、精製ガス導出端E2を有する主幹路34’、および、吸着塔31A,31B,31Cの各ガス通過口31b側にそれぞれが接続された分枝路34A,34B,34Cを有する。分枝路34A,34B,34Cには、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁34a,34b,34cが付設されている。
ライン35は、主幹路35’、および、吸着塔31A,31B,31Cの各ガス通過口31b側にそれぞれが接続された分枝路35A,35B,35Cを有する。分枝路35A,35B,35Cには、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁35a,35b,35cが付設されている。
ライン36は、ガス排出端E3を有する主幹路36’、および、吸着塔31A,31B,31Cの各ガス通過口31a側にそれぞれが接続された分枝路36A,36B,36Cを有する。分枝路36A,36B,36Cには、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁36a,36b,36cが付設されている。
ヘリウム濃度分析計37は、ライン36ないし主幹路36’を流れるガスのヘリウム濃度を測定するためのものである。ヘリウム濃度分析計37としては、例えば、熱伝導率計を含んで構成されるものを採用することができる。
本実施形態におけるPSA系3ないしPSA装置30は、上述のように三塔の吸着塔31A,31B,31Cを具備するものであるが、PSA系3を、所定の一塔の吸着塔を具備するものとして構成してもよいし、所定の二塔の吸着塔を具備するものとして構成してもよいし、所定の四塔以上の吸着塔を具備するものとして構成してもよい。
ヘリウム精製装置Yの一部をなすリサイクルライン4は、図1に示すように、PSA系3ないしPSA装置30における上述のライン36の、ヘリウム濃度分析計37より下流側の箇所と、貯留系1における上述のガスホルダ10とを連結する。リサイクルライン4には、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁4aが付設されている。このようなリサイクルライン4は、PSA装置30における吸着塔31A,31B,31Cの各ガス通過口31a側から排出される所定のガスを、ガスホルダ10に戻すためのものである。
以上のような構成を有するヘリウム精製装置Yを使用して、本発明に係るヘリウム精製方法を実行することができる。
貯留系1では、昇圧ブロア12が稼働して、ライン17の原料ガス導入端E1から原料ガスG0が受け入れられる。受け入れられた原料ガスG0は、除塵器11を通過することによって所定の固形成分が除去されて、流量計13にて流量が計測された後、ガスホルダ10に取り込まれる。ガスホルダ10には、PSA系3からの所定のガスも取り込まれる。ガスホルダ10におけるガス貯留空間の容積は上述のように可変であるところ、ガスホルダ10ないしそのガス貯留空間に貯留されているガスの貯留量が貯留量検知計14によって計測される。そして、ガスホルダ10からはガスG1が導出される。ガスG1については、濃度分析計15によって各不純物の濃度が測定される。濃度分析計15によって測定される例えば酸素濃度をX1とし、例えば一酸化炭素濃度をX2とし、例えば水素濃度をX3とする。また、ガスG1については、流量制御部16によって流量が調節される。ガスG1の流量は、PSA系3における吸着塔31A,31B,31Cのいずれかが後述の吸着工程を開始する時(吸着塔切替時)に更新される。具体的には、ガスG1の流量は、例えば次のようにして更新される。
まず、流量計13によって計測される原料ガスG0の流量について、吸着塔31A,31B,31Cの一つが後述の吸着工程を開始する時(吸着塔切替時)までの所定時間(例えば10秒間)の平均流量が、基準流量として求められる。次に、求められた平均流量(基準流量)が、装置全体について想定ないし設定される負荷流量範囲すなわち流量制御部16の流量制御範囲(例えば0〜150Nm3/h)に対する割合(α%)に換算される。この割合(α%)を利用して、ガスG1について次に設定されるべき流量が算出される。例えば、吸着塔切替時に貯留量検知計14によって計測されるガスホルダ10のガス貯留量が上述の上側設定値VH以上である場合、α%にβ%が加算され、流量制御部16の流量制御範囲(例えば0〜150Nm3/h)の(α+β)%の流量が算出され、この算出流量がガスG1の次の流量として採用される。例えば、吸着塔切替時に貯留量検知計14によって計測されるガスホルダ10のガス貯留量が上述の下側設定値VL以下である場合、α%からβ%が差し引かれ、流量制御部16の流量制御範囲(例えば0〜150Nm3/h)の(α−β)%の流量が算出され、この算出流量がガスG1の次の流量として採用される。例えば、吸着塔切替時に貯留量検知計14によって計測されるガスホルダ10のガス貯留量が、上側設定値VHを下回り且つ下側設定値VLを上回る場合、流量制御部16の流量制御範囲(例えば0〜150Nm3/h)のα%の流量が算出され、この算出流量がガスG1の次の流量として採用される。ガスG1についてこのようにして更新された流量は、次の吸着塔切替時まで流量制御部16によって維持されることとなる。
流量更新におけるパラメータたるβの値は、原料ガスG0の流量について予め把握可能な限りにおける変動量や変動時間に応じて設定することができる。βの値を適切に選択することにより、ガスホルダ10内のガス貯留量の変動を抑制することができ、ガスホルダ10から供給されるガスG1の流量が安定化される。これにより、後段の前処理系2およびPSA系3に対する、ガスG1の流量変化等に伴う負荷変動を軽減して、負荷の安定化を図ることができる。
流量制御部16にて流量制御を受けるガスG1は、前処理系2に供される。前処理系2では、ガスG1は、順次、前処理槽20Aにて一酸化炭素が除去され(一段目処理)、前処理槽20Bにて酸素濃度および水素濃度が低下され或は酸素および水素が除去され(二段目処理)、前処理槽20Cにて酸素濃度が低下され或は酸素が除去される(三段目処理)。具体的には、前処理槽20Aでは、上述のように、反応式(1)で表される転化反応によってガスG1中の一酸化炭素を二酸化炭素に変成して実質的に除去する。前処理槽20Bでは、上述のように、反応式(2)で表される転化反応によってガスG1中の酸素および水素を水に変化させて低濃度化または実質的に除去する。前処理槽20Cでは、上述のように、反応式(1)で表される転化反応によってガスG1中の酸素を低濃度化または実質的に除去する。
前処理槽20AにガスG1が導入される前に、ガスG1の温度は調節される。具体的には、ガスG1は、ライン29Aにおいて、温度計26Aによって測定される温度が例えば100〜150℃となるように予熱器21を通過する際に昇温される。これにより、前処理槽20Aにおける反応温度は例えば250℃以下とされる。上記反応式(1)で表される転化反応を促進するうえでは、前処理槽20Aにおける反応温度は100℃以上であるのが好ましい。前処理槽20Aにおいてメタンが生ずる反応を充分に抑制するうえでは、前処理槽20Aにおける反応温度は250℃以下であるのが好ましい。
前処理槽20AにガスG1が導入される前に、ガスG1には、酸素供給量制御部23の稼働によって必要に応じて所定量の酸素が添加される。酸素添加量は、上述の濃度分析計15によって測定された酸素濃度X1および一酸化炭素濃度X2に基づいて決定される。上記反応式(1)で表される転化反応を促進して前処理槽20Aにて充分に一酸化炭素を除去するためには、前処理槽20Aに導入されるガスG1に含まれる酸素は、前処理槽20Aに導入されるガスG1に含まれる一酸化炭素の1.1〜1.5倍当量であるのが好ましい。前処理槽20Aでは、上述のように、上記反応式(1)で表される転化反応が生じ、ガスG1中の一酸化炭素が二酸化炭素に変成されて実質的に除去される。
前処理槽20Aの後、ガスG1が前処理槽20Bに導入される前に、ガスG1の温度は調節される。具体的には、メインラインであるライン29Bに設けられた冷却器22Aを通過するガスとバイパスライン29bを通過するガスとの流量比を調整することにより、温度計26Bによって測定される温度が例えば50〜60℃となるように、前処理槽20Bに導入される前のガスG1の温度は調節される。流量比の調整は、流量制御部27Aが稼働することによって行われる。このような手法により、前処理槽20Bにおける反応温度は例えば100〜350℃とされる。上記反応式(2)で表される転化反応を促進するうえでは、前処理槽20Bにおける反応温度は100〜350℃であるのが好ましい。また、前段の前処理槽20Aにおいて、水素と酸素の反応により副生成物として水が発生する場合が想定されるところ、水分は前処理槽20B内の触媒の活性阻害要因となり得るため、前処理槽20Bに導入されるガスG1の温度は、露点温度(例えば50℃)以上であるのが好ましい。
前処理槽20BにガスG1が導入される前に、ガスG1には、水素供給量制御部24の稼働によって必要に応じて所定量の水素が添加される。水素添加量は、上述の濃度分析計15によって測定された酸素濃度X1、一酸化炭素濃度X2、および水素濃度X3、並びに、前処理槽20A前に添加された酸素量に基づいて決定される。上記反応式(2)で表される転化反応は発熱反応であるところ、前処理槽20Bに導入されるガスG1に含まれる酸素は、前処理槽20Bにおける反応温度が350℃を超えない程度の量であるのが好ましい。前処理槽20Bでは、上述のように、上記反応式(2)で表される転化反応が生じ、ガスG1中の酸素および水素が水に変えられて低濃度化または実質的に除去される。
前処理槽20Bの後、ガスG1が前処理槽20Cに導入される前に、ガスG1の温度は調節される。具体的には、メインラインであるライン29Cに設けられた冷却器22Bを通過するガスとバイパスライン29cを通過するガスとの流量比を調整することにより、温度計26Cによって測定される温度が例えば100〜150℃となるように、前処理槽20Cに導入される前のガスG1の温度は調節される。流量比の調整は、流量制御部27Bが稼働することによって行われる。このような手法により、前処理槽20Cにおける反応温度は例えば250℃以下とされる。上記反応式(1)で表される転化反応を促進するうえでは、前処理槽20Cにおける反応温度は100℃以上であるのが好ましい。前処理槽20Cにおいてメタンが生ずる反応を充分に抑制するうえでは、前処理槽20Cにおける反応温度は250℃以下であるのが好ましい。
前処理槽20CにガスG1が導入される前に、酸素濃度分析計28によってガスG1の酸素濃度が測定されたうえで、一酸化炭素供給量制御部25の稼働によって必要量の一酸化炭素がガスG1に添加される。一酸化炭素添加量は、酸素濃度分析計28によって測定された酸素濃度に基づいて決定される。前処理槽20Cでは、上述のように、反応式(1)で表される転化反応によってガスG1中の酸素を低濃度化または実質的に除去する。上記反応式(1)で表される転化反応を促進して前処理槽20Cにて充分に酸素を除去するためには、前処理槽20Cに導入されるガスG1に含まれる一酸化炭素は、前処理槽20Cに導入されるガスG1に含まれる酸素の1.1〜1.5倍当量であるのが好ましい。ヘリウム精製装置Yによって精製されるヘリウムから酸素を除去する場合において、前処理槽20Bにて充分に酸素を除去できる場合には、前処理槽20Cおよびその直前に配される温度調節手段等については必ずしも設けなくてもよい。
前処理槽20Cを経た後、ガスG1は、冷却器22Cを通過することによって温度調節される。冷却器22Cを通過した後のガスG1の温度は例えば20〜40℃である。
前処理系2において所定の前処理を受けたガスG1は、PSA系3に供される。PSA系3およびリサイクルライン4では、PSA装置30の駆動時において、図5から図7に示す態様で自動弁33a〜33c,34a〜34c,35a〜35c,36a〜36d,4aを切替えることにより、装置内において所望のガスの流れ状態を実現し、以下のステップ1〜15からなる1サイクルを繰り返すことができる(図5から図7では、各自動弁の開状態を○で表し且つ閉状態を×で表す)。本方法の1サイクルにおいては、吸着塔31A,31B,31Cのそれぞれにて、吸着工程、第1減圧工程、第2減圧工程、第1脱着工程、第2脱着工程、第1洗浄工程、第2洗浄工程、第1昇圧工程、および第2昇圧工程が行われる。図8は、ステップ1〜5におけるPSA装置30でのガスの流れ状態を表す。図9は、ステップ6〜10におけるPSA装置30でのガスの流れ状態を表す。図10は、ステップ11〜15におけるPSA装置30でのガスの流れ状態を表す。
ステップ1では、図5に示すように各自動弁の開閉状態が選択され且つ昇圧機32が作動することにより、図8(a)に示すようなガス流れ状態が達成されて、吸着塔31Aにて吸着工程が、吸着塔31Bにて第1洗浄工程が、吸着塔31Cにて第1減圧工程が行われる。
図4および図8(a)を併せて参照するとよく理解できるように、ステップ1では、所定の高圧状態にある吸着塔31Aのガス通過口31a側にガスG1が導入されて、当該ガスG1中の不純物(窒素,一酸化炭素,二酸化炭素,水など)を吸着塔31A内の吸着剤に吸着させ、且つ、ヘリウムが富化された精製ガスG2が吸着塔31Aのガス通過口31b側から導出される。精製ガスG2は、ライン34を介して精製ガス導出端E2から装置外へ取り出される。これとともに、ステップ1では、後述のステップ11〜15(吸着工程)を経た吸着塔31Cの内部が降圧されて、吸着塔31Cのガス通過口31b側からガスG3が導出される。このガスG3は、ライン35を介して吸着塔31Bへと導かれる。これとともに、ステップ1では、後述のステップ15(第2脱着工程)を経た吸着塔31Bのガス通過口31b側に吸着塔31CからのガスG3が洗浄ガスとして導入されつつ、吸着塔31Bのガス通過口31a側からガスG3’(パージガス)が導出される。このガスG3’は、ライン36を介してガス排出端E3から装置外へ排出される。
第1洗浄工程にある吸着塔31Bから導出されるガスG3’の不純物含有率は、第1洗浄工程の開始以降、漸次的に低下する傾向にある(即ち、吸着塔31Bから導出されるガスG3’のヘリウム濃度は、第1洗浄工程の開始以降、漸次的に上昇する傾向にある)ところ、ステップ1を終了するタイミング、即ち、吸着塔31Bについて第1洗浄工程から第2洗浄工程へと切替えるタイミングは、ライン36ないし主幹路36’を流れるガスG3’のヘリウム濃度に基づいて決定することができる(第1手法)。ライン36を流れるガスG3’のヘリウム濃度は、ヘリウム濃度分析計37によって測定することができる。ステップ1を終了するタイミングは、例えば、ヘリウム濃度分析計37によって測定されるガスG3’のヘリウム濃度が所望値に達した時点とする。
或は、ステップ1を終了するタイミングは、吸着塔31Bにて行われている第1洗浄工程の開始からの時間に基づいて決定してもよい(第2手法)。具体的には、所定条件において、第1洗浄工程の開始からの時間と、吸着塔31BからのガスG3’のヘリウム濃度との関係を予め調べておき、ガスG3’のヘリウム濃度が上昇して所望のヘリウム濃度X4に至るのに要する時間(第1洗浄工程の開始からの時間)を予測時間として導出したうえで、当該予測時間が経過した時点でステップ1を終了してもよい。
或は、ステップ1を終了するタイミングは、一つ前のサイクルにおけるステップ1の実行時間を基準にして、当該前サイクルの当該ステップ1に係るガスG3’のヘリウム濃度に基づいて決定してもよい(第3手法)。具体的には、一つ前のサイクルにおいて吸着塔31Bにて第1脱着工程(前サイクルのステップ1)を行った際、当該第1脱着工程の実行時間T1と当該第1脱着工程終了時点のガスG3’のヘリウム濃度X4’とを取得する。そして、当該ヘリウム濃度X4’と、第2手法に関して上述した所望のヘリウム濃度X4とを比較する。X4<X4’である場合には、本ステップ1が実行される時間をT1−t1として、前サイクルのステップ1の実行時間T1よりも短くする。X4>X4’である場合には、本ステップ1が実行される時間をT1+t2として、前サイクルのステップ1の実行時間T1よりも長くする。t1は例えば1〜3秒であり、t2は例えば1〜3秒である。本手法を採用する場合、最初のサイクルのステップ1の終了タイミングに関しては、上述の第2手法における予測時間を採用するのがよい。ヘリウム濃度分析計37によるヘリウム濃度測定に比較的長時間を要するために上記第1手法では適切なタイミングでステップ1を終了できない場合には、このような第3手法を採用するのが好ましい。
ステップ1の終了後、ステップ2では、図5に示すように各自動弁の開閉状態が選択され且つ昇圧機32が作動することにより、図8(b)に示すようなガス流れ状態が達成されて、吸着塔31Aにて吸着工程が、吸着塔31Bにて第2洗浄工程が、吸着塔31Cにて第1減圧工程が行われる。
図4および図8(b)を併せて参照するとよく理解できるように、ステップ2では、吸着塔31Aにおいて、ステップ1から引き続き吸着工程が行われ、精製ガスG2が導出される。これとともに、ステップ2では、吸着塔31Cにおいて、ステップ1から引き続き第1減圧工程が行われる。これとともに、ステップ2では、ステップ1から引き続いて吸着塔31Bのガス通過口31b側に吸着塔31CからのガスG3が洗浄ガスとして導入されつつ、吸着塔31Bのガス通過口31a側からガスG3”(パージガス)が導出される。このガスG3”は、ライン36およびリサイクルライン4を介してガスホルダ10へと導入されて、ガスホルダ10に貯留される。
ステップ3では、図5に示すように各自動弁の開閉状態が選択され且つ昇圧機32が作動することにより、図8(c)に示すようなガス流れ状態が達成されて、吸着塔31Aにて吸着工程が、吸着塔31Bにて第1昇圧工程が、吸着塔31Cにて第2減圧工程が行われる。
図4および図8(c)を併せて参照するとよく理解できるように、ステップ3では、吸着塔31Aにおいて、ステップ2から引き続き吸着工程が行われ、精製ガスG2が導出される。これとともに、ステップ3では、吸着塔31Cにおいて、ステップ2から引き続いて吸着塔31Cの内部が降圧されて、吸着塔31Cのガス通過口31b側からガスG4が導出される。このガスG4は、ライン35を介して吸着塔31Bへと導かれる。これとともに、ステップ3では、吸着塔31Bのガス通過口31b側に吸着塔31CからのガスG4が昇圧ガスとして導入されて、吸着塔31Bの内部が昇圧される。
ステップ4では、図5に示すように各自動弁の開閉状態が選択され且つ昇圧機32が作動することにより、図8(d)に示すようなガス流れ状態が達成されて、吸着塔31Aにて吸着工程が、吸着塔31Bにて第2昇圧工程が、吸着塔31Cにて第1脱着工程が行われる。
図4および図8(d)を併せて参照するとよく理解できるように、ステップ4では、吸着塔31Aにおいて、ステップ3から引き続き吸着工程が行われ、精製ガスG2が導出される。精製ガスG2の一部は吸着塔31Bへと導かれる。これとともに、ステップ4では、吸着塔31Bのガス通過口31b側に吸着塔31Aからの精製ガスG2が昇圧ガスとして導入されて、吸着塔31Bの内部が昇圧される。これとともに、ステップ4では、吸着塔31Cの内部が降圧されて、吸着塔31C内の吸着剤から不純物が脱着され、吸着塔31Cのガス通過口31a側からガスG5(オフガス)が導出される。このガスG5は、ライン36およびリサイクルライン4を介してガスホルダ10へと導入されて、ガスホルダ10に貯留される。
第1脱着工程にある吸着塔31Cから導出されるガスG5の不純物含有率は、第1脱着工程の開始以降、漸次的に上昇する傾向にある(即ち、吸着塔31Cから導出されるガスG5のヘリウム濃度は、第1脱着工程の開始以降、漸次的に低下する傾向にある)ところ、ステップ4を終了するタイミング、即ち、吸着塔31Cについて第1脱着工程から第2脱着工程へと切替えるタイミングは、ライン36ないし主幹路36’を流れるガスG5のヘリウム濃度に基づいて決定することができる(第1手法)。ライン36を流れるガスG5のヘリウム濃度は、ヘリウム濃度分析計37によって測定することができる。ステップ4を終了するタイミングは、例えば、ヘリウム濃度分析計37によって測定されるガスG 5 のヘリウム濃度が所望値に達した時点とする。
或は、ステップ4を終了するタイミングは、吸着塔31Cにて行われている第1脱着工程の開始からの時間に基づいて決定してもよい(第2手法)。具体的には、所定条件において、第1脱着工程の開始からの時間と、吸着塔31CからのガスG5のヘリウム濃度との関係を予め調べておき、ガスG5のヘリウム濃度が低下して所望のヘリウム濃度X5に至るのに要する時間(第1脱着工程の開始からの時間)を予測時間として導出したうえで、当該予測時間が経過した時点でステップ4を終了してもよい。
或は、ステップ4を終了するタイミングは、一つ前のサイクルにおけるステップ4の実行時間を基準にして、当該前サイクルの当該ステップ4に係るガスG5のヘリウム濃度に基づいて決定してもよい(第3手法)。具体的には、一つ前のサイクルにおいて吸着塔31Cにて第1脱着工程(前サイクルのステップ4)を行った際、当該第1脱着工程の実行時間T2と当該第1脱着工程終了時点のガスG5のヘリウム濃度X5’とを取得する。そして、当該ヘリウム濃度X5’と、第2手法に関して上述した所望のヘリウム濃度X5とを比較する。X5<X5’である場合には、本ステップ4が実行される時間をT2+t1として、前サイクルのステップ4の実行時間T2よりも長くする。X5>X5’である場合には、本ステップ4が実行される時間をT2−t2として、前サイクルのステップ4の実行時間T2よりも短くする。t1は例えば1〜3秒であり、t2は例えば1〜3秒である。本手法を採用する場合、最初のサイクルのステップ4の終了タイミングに関しては、上述の第2手法における予測時間を採用するのがよい。ヘリウム濃度分析計37によるヘリウム濃度測定に比較的長時間を要するために上記第1手法ではステップ4を適切なタイミングで終了できない場合には、このような第3手法を採用するのが好ましい。
ステップ4の終了後、ステップ5では、図5に示すように各自動弁の開閉状態が選択され且つ昇圧機32が作動することにより、図8(e)に示すようなガス流れ状態が達成されて、吸着塔31Aにて吸着工程が、吸着塔31Bにて第2昇圧工程が、吸着塔31Cにて第2脱着工程が行われる。
図4および図8(e)を併せて参照するとよく理解できるように、ステップ5では、吸着塔31Aにおいて、ステップ4から引き続き吸着工程が行われ、精製ガスG2が導出される。精製ガスG2の一部は吸着塔31Bへと導かれる。これとともに、ステップ5では、吸着塔31Bにおいて、ステップ4から引き続いて内部が昇圧される。これとともに、ステップ5では、ステップ4から引き続いて吸着塔31Cの内部が降圧されて、吸着塔31C内の吸着剤から不純物が更に脱着され、吸着塔31Cのガス通過口31a側からガスG6(オフガス)が導出される。このガスG6は、ライン36を介してガス排出端E3から装置外へ排出される。
ステップ1〜5において、吸着工程にある吸着塔31Aの内部の最高圧力は、例えば700〜2000kPa(ゲージ圧)である。ステップ1の第1洗浄工程の終了時点における吸着塔31Cの内部の圧力は、例えば300〜1500kPa(ゲージ圧)である。ステップ1〜2にわたる第1減圧工程の終了時点における吸着塔31Cの内部の圧力(第1中間圧力)は、例えば200〜1200kPa(ゲージ圧)である。ステップ3の第2減圧工程の終了時点における吸着塔31Cの内部の圧力(第2中間圧力)は、例えば100〜1000kPa(ゲージ圧)である。ステップ4の第1脱着工程の終了時点における吸着塔31Cの内部の圧力は、例えば50〜500kPa(ゲージ圧)である。ステップ5の第2脱着工程の終了時点における吸着塔31Cの内部の圧力は、例えば0〜30kPa(ゲージ圧)である。
ステップ6〜10では、ステップ1〜5で吸着塔31Aにおいて行われたのと同様に、吸着塔31Bにおいて、図9に示すように吸着工程が行われる。これとともに、ステップ6〜10では、ステップ1〜5で吸着塔31Bにおいて行われたのと同様に、吸着塔31Cにおいて、図9に示すように第1洗浄工程(ステップ6)、第2洗浄工程(ステップ7)、第1昇圧工程(ステップ8)、および第2昇圧工程(ステップ9〜10)が行われる。これとともに、ステップ6〜10では、ステップ1〜5で吸着塔31Cにおいて行われたのと同様に、吸着塔31Aにおいて、図9に示すように第1減圧工程(ステップ6〜7)、第2減圧工程(ステップ8)、第1脱着工程(ステップ9)、および第2脱着工程(ステップ10)が行われる。
ステップ6を終了するタイミング(即ち、吸着塔31Cについて第1洗浄工程から第2洗浄工程へと切替えるタイミング)の決定手法としては、ステップ1の終了タイミングに関して上述した第1手法、第2手法、または第3手法を採用することができる。また、ステップ9を終了するタイミング(即ち、吸着塔31Aについて第1脱着工程から第2脱着工程へと切替えるタイミング)の決定手法としては、ステップ4の終了タイミングに関して上述した第1手法、第2手法、または第3手法を採用することができる。
ステップ11〜15では、ステップ1〜5で吸着塔31Aにおいて行われたのと同様に、吸着塔31Cにおいて、図10に示すように吸着工程が行われる。これとともに、ステップ11〜15では、ステップ1〜5で吸着塔31Bにおいて行われたのと同様に、吸着塔31Aにおいて、図10に示すように第1洗浄工程(ステップ11)、第2洗浄工程(ステップ12)、第1昇圧工程(ステップ13)、および第2昇圧工程(ステップ14〜15)が行われる。これとともに、ステップ11〜15では、ステップ1〜5で吸着塔31Cにおいて行われたのと同様に、吸着塔31Bにおいて、図10に示すように第1減圧工程(ステップ11〜12)、第2減圧工程(ステップ13)、第1脱着工程(ステップ14)、および第2脱着工程(ステップ15)が行われる。
ステップ11を終了するタイミング(即ち、吸着塔31Aについて第1洗浄工程から第2洗浄工程へと切替えるタイミング)の決定手法としては、ステップ1の終了タイミングに関して上述した第1手法、第2手法、または第3手法を採用することができる。また、ステップ14を終了するタイミング(即ち、吸着塔31Bについて第1脱着工程から第2脱着工程へと切替えるタイミング)の決定手法としては、ステップ4の終了タイミングに関して上述した第1手法、第2手法、または第3手法を採用することができる。
以上のようにして、PSA系3ないしPSA装置30からは、ヘリウムが富化された精製ガスG2が取り出され続ける。
ヘリウム精製装置Yを使用して行う以上のヘリウム精製方法では、吸着塔31A,31B,31Cのそれぞれにおいて、上述のような吸着工程、第1減圧工程、第2減圧工程、第1脱着工程、第2脱着工程、第1洗浄工程、第2洗浄工程、第1昇圧工程、および第2昇圧工程を含むPSA法を実行し、これによって混合ガスたるガスG1中のヘリウムの富化を図る。ガスG1は、上述の原料ガスG0、ガスG3”、およびガスG5をガスホルダ10に一旦取り込んだうえで、当該ガスホルダ10から、PSA法を実行するためのPSA系3ないしPSA装置30(吸着塔31A,31B,31Cを含む)に向けて供給されたものである。ガスホルダ10に取り込まれる原料ガスG0がその流量や、圧力、組成に変動を伴う場合であっても、流量変動や、圧力変動、組成変動は、当該原料ガスG0がガスホルダ10に一旦取り込まれて貯留および混合されることにより、当該ガスホルダ10から導出されるガスG1においては抑制される。そのため、本方法によると、ヘリウムの富化にあたりPSA法を利用するものであっても、原料ガスG0の流量変動や、圧力変動、組成変動に対応しやすい。
加えて、本方法によると、精製ガスG2(高純度化されたヘリウム)について、高い収率を達成しやすい。その理由は次のとおりである。
第一に、本方法においては、上述の脱着工程(第1脱着工程,第2脱着工程)にある吸着塔31A,31B,31Cから導出され続けるガス(オフガス)のうち、ヘリウム濃度が相対的に高いオフガス(ガスG5)をガスホルダ10に導入し、当該オフガスをPSA法による再度のヘリウム富化に供することができるからである。吸着工程にて吸着剤に吸着された不純物(例えば、窒素や、一酸化炭素、二酸化炭素など)は、脱着工程において吸着剤から脱着するところ、当該脱着工程においては、塔内圧力が低下するにつれて、単位圧力当りの不純物脱着量は大きくなる。そのため、脱着工程にある吸着塔31A,31B,31Cから導出されるオフガスの不純物含有率は、脱着工程の開始以降、漸次的に上昇する傾向にある。本方法においては、当該オフガスの不純物含有率が充分に低い期間は、オフガス(ガスG5)をガスホルダ10に導入する第1脱着工程を行い、オフガスの不純物含有率が一定以上である期間は、オフガス(ガスG6)を系外に排出する第2脱着工程を行うことが可能である。
第二に、本方法においては、上述の洗浄工程(第1洗浄工程,第2洗浄工程)にある吸着塔31A,31B,31Cから導出され続けるガス(パージガス)のうち、ヘリウム濃度が相対的に高いパージガス(ガスG3”)をガスホルダ10に導入し、当該パージガスをPSA法によるヘリウム富化に供することができるからである。洗浄工程が進むほど吸着剤が清浄化されるので、洗浄工程にある吸着塔31A,31B,31Cから導出されるパージガスの不純物含有率は、洗浄工程の開始以降、漸次的に低下する傾向にある。本方法においては、パージガスの不純物含有率が充分に低下するまで、パージガス(ガスG3’)を系外に排出する第1洗浄工程を行い、パージガスの不純物含有率が充分に低下した以降に、パージガス(ガスG3”)をガスホルダ10に導入する第2洗浄工程を行うことが可能である。
以上のように、本発明に係るヘリウム精製方法は、PSA法を利用して高純度ヘリウムを高収率で得るのに適する。
本方法で使用するガスホルダ10のガス収容用容積は、上述のように可変である。このような構成は、ガスホルダ10に取り込まれることとなる原料ガスG0、ガスG3”、およびガスG5の流量変動(特に原料ガスG0の流動変動)や圧力変動にガスホルダ10が対応するうえで、好適である。また、本構成は、ガスホルダ10がガス3”(パージガス)を受け入れるときに当該ガスホルダ10と連通する吸着塔(洗浄工程中)の内部圧力が不当に上昇するのを回避するという観点からも、好ましい。加えて、本構成は、ガスホルダ10がガス5(オフガス)を受け入れるときに当該ガスホルダ10と連通する吸着塔(脱着工程中)の内部圧力が不当に上昇するのを回避するという観点からも、好ましい。
本方法では、上述のように、吸着塔31A,31B,31Cのそれぞれの減圧工程は、当該減圧工程の開始から途中までにおいて当該吸着塔からガスG3を導出する第1減圧工程と、当該吸着塔からガスG4を導出する、第1減圧工程の後の第2減圧工程とを含み、ガスG3を洗浄ガスとして洗浄工程にある他の吸着塔に導入し、ガスG4を第1昇圧工程にある他の吸着塔に導入する。減圧工程にある吸着塔31A,31B,31Cから導出されるガスのヘリウム濃度は比較的高いところ、このような構成によると、減圧工程にある吸着塔31A,31B,31Cから導出されるガスを利用して他の吸着塔にて洗浄工程および昇圧工程を効率よく行うことができる。すなわち、このような構成によると、複数の吸着塔31A,31B,31Cのそれぞれにて行われる工程を有機的に利用して、ヘリウム富化のためのPSA法を効率よく行うことが可能である。
本方法では、脱着工程(第1脱着工程,第2脱着工程)にある吸着塔31A,31B,31Cの内部の最低圧力を0%とし且つ吸着工程にある吸着塔31A,31B,31Cの内部の最高圧力を100%とする場合、第1減圧工程の終了時における吸着塔31A,31B,31Cの内部の第1中間圧力は35〜80%の範囲にあり、且つ、第2減圧工程の終了時における吸着塔31A,31B,31Cの内部の第2中間圧力は第1中間圧力より小さい限りにおいて15〜50%の範囲にあるのが好ましい。このような構成は、洗浄工程および昇圧工程を効率よく行うのに資する。
本方法では、昇圧工程は、上述のように、第2減圧工程にある吸着塔31A,31B,31Cの一つから導出されたガスG4を昇圧対象の吸着塔31A,31B,31Cの一つに導入する第1昇圧工程と、当該吸着塔に精製ガスG2を導入する、第1昇圧工程の後の第2昇圧工程とを含む。このような構成は、昇圧工程およびその後の吸着工程を各吸着塔において効率よく行ううえで好適である。
本方法では、PSA法を実行するにあたり、脱着工程(第1脱着工程,第2脱着工程)にある吸着塔31A,31B,31Cの内部を降圧するうえで真空ポンプを使用しない。そのため、吸着塔31A,31B,31Cの内部の最低圧力は大気圧以上である。このような構成は、PSA法を実行するための吸着塔31A,31B,31CないしPSA装置30が、ガスホルダ10からのガスG1の流量変動(即ち、装置に対する負荷変動)に対応するうえで、好適である。
本方法では、ガスホルダ10からPSA系3ないし吸着塔31A,31B,31Cに向けて供給するガスG1の流量は、上述のように、吸着塔31A,31B,31Cにて吸着工程が開始する時に更新する。このような構成は、PSA法を実行するための吸着塔ないしPSA装置に対する負荷を軽減するうえで好適である。
本方法では、ガスホルダ10における貯留量について、上述のように、上側設定量VHおよび下側設定量VLを設定し、且つ、ガスG1供給流量の更新時より前にガスホルダ10に取り込まれる原料ガスG0の平均流量を得て基準流量とする。そのうえで、本方法では、ガスG1供給流量の更新時において、上述のように、ガスホルダ10内のガス貯留量が上側設定量VH以上である場合、基準流量より大きな流量をガスG1供給流量とし、ガスホルダ10内のガス貯留量が上側設定量VHを下回り且つ下側設定量VLを上回る場合、基準流量をガスG1供給流量とし、ガスホルダ10内のガス貯留量が下側設定量VL以下である場合、基準流量より小さな流量をガスG1供給流量とする。このような手法においては、ガスG1供給流量の更新時において、ガスホルダ10内のガス貯留量が上側設定量VH以上である場合、ガスG1供給流量を増大し、ガスホルダ10内のガス貯留量が上側設定量VHを下回り且つ下側設定量VLを上回る場合、ガスG1供給流量を変更せず、ガスホルダ10内のガス貯留量が下側設定量VL以下である場合、ガスG1供給流量を低減する場合がある。以上のような構成は、ガスホルダ10に取り込まれることとなる原料ガスG0、ガスG3”、およびガスG5の流量変動(特に原料ガスG0の流動変動)にガスホルダ10が対応するとともに、前処理系2や、PSA法を実行するためのPSA装置30ないし吸着塔31A,31B,31C、に対する負荷変動を軽減して負荷の安定化を図るうえで好適である。前処理系2での前処理に含まれる上記反応式(1)で表される転化反応および上記反応式(2)で表される転化反応は、いずれも発熱反応であるところ、前処理系2に対する負荷変動が軽減されて負荷の安定化が図られることは、当該発熱反応について過度の温度上昇を防止して反応温度を適正範囲内に制御するうえで好ましい。
本方法では、ガスG1をPSA系3の吸着塔31A,31B,31Cに供給する前に、ガスホルダ10からのガスG1に対して、当該ガスG1に含まれる不純物の少なくとも一部を除去または変成するための前処理を前処理系2において施す。このような構成は、高純度ヘリウムを得るうえで好適である。
本方法では、前処理系2にてガスG1に施すべき前処理を、上述のように複数段(一段目〜三段目処理)に分けて行う。一段目処理および三段目処理における上記反応式(1)で表される転化反応、並びに、二段目処理における上記反応式(2)で表される転化反応は、いずれも発熱反応であるところ、前処理を複数段に分けて行うという構成は、当該前処理に含まれる発熱反応について過度の温度上昇を防止して反応温度を適正範囲内に制御するうえで好ましい。
本方法では、前処理系2の前処理槽20Aにおいて、上述のように、一酸化炭素に対して過剰量の酸素が存在する条件下で一酸化炭素を酸素と反応させることによって一酸化炭素除去を行うことができる。このような一酸化炭素除去は、後段の前処理槽20Bに充填される触媒にとって一酸化炭素が触媒毒となる場合において、前処理槽20B内の転化反応を適切に生じさせるうえで好ましい。
本方法では、前処理系2の前処理槽20Bにおいて、上述のように、水素に対して過剰量の酸素が存在する条件下で水素を酸素と反応させて水を生じさせることによって水素除去を行うことができる。これとともに、本方法では、前処理槽20Cにおいて、上述のように、酸素に対して過剰量の一酸化炭素が存在する条件下で酸素を一酸化炭素と反応させて二酸化炭素を生じさせることによって酸素除去を行うことができる。そして、本方法では、前処理系2にて発生した二酸化炭素や添加された一酸化炭素を、PSA系3で実施されるPSA法によってガスG1から除去することができる。このように、本方法によると、ヘリウム精製に適した吸着剤を使用して行うPSA法によっては除去されにくい水素および酸素を共に前処理系2(PSA系3の前)にて除去したうえで、ヘリウム精製に適した吸着剤を使用して行うPSA法によって除去しやすい一酸化炭素および二酸化炭素をPSA系3にて除去することができ、従って、ヘリウムを適切に高純度化することができる。
本方法では、前処理系2の後においてガスG1を吸着塔31A,31B,31Cに供給する前に、昇圧機32によってガスG1を昇圧する。このような構成は、ガスG1について前処理系2にて前処理を施したうえで適切にPSA法を実行するうえで好適である。
図1から図4に示すヘリウム精製装置Yを使用して、所定の原料ガスG0からヘリウムを濃縮分離した。本実施例における原料ガスG0は、光ファイバー線引炉から排出されたガスであり、精製対象ガスたるヘリウムを含む。当該原料ガスG0の仕様を、図11の表に掲げる。
本実施例では、貯留系1において、ガスホルダ10に原料ガスG0を取り込みつつ、ガスホルダ10からガスG1を後段(前処理系2,PSA系3)に向けて供給し続け、ガスG1の流量について、PSA系3における吸着塔31A,31B,31Cのいずれかが吸着工程を開始する時(吸着塔切替時)に更新した。本実施例で使用したガスホルダ10は、内部空間が拡縮可能な袋体によってガス貯留空間が形成されたものであり、当該袋体は、ポリエチレンフィルム(内層)とポリウレタンフィルム(中間層)とウルトラハイバリアフィルム(外層)とからなる多層フィルム(商品名:ガスホルダー膜,株式会社ダイゾー製)よりなる。使用したガスホルダ10の最大容積は100m3である。また、ガスG1の流量については、上述した手法において、具体的には次のように更新した。
まず、流量計13によって計測される原料ガスG0の流量について、吸着塔31A,31B,31Cの一つが吸着工程を開始する時(吸着塔切替時)までの10秒間の平均流量を基準流量として求めた。次に、求められた平均流量(基準流量)を、流量制御部16の流量制御範囲である0〜150Nm3/hに対する割合(α%)に換算した。この割合(α%)を利用して、ガスG1について次に設定されるべき流量を算出した。具体的には、吸着塔切替時に貯留量検知計14によって計測されるガスホルダ10のガス貯留量が、ガスホルダ10について設定した上側設定値80m3以上である場合には、α%に5%を加算し、流量制御部16の流量制御範囲である0〜150Nm3/hの(α+5)%の流量を算出し、この算出流量をガスG1の次の流量として採用した。吸着塔切替時に貯留量検知計14によって計測されるガスホルダ10のガス貯留量が下側設定値20m3以下である場合には、α%から5%を差し引き、流量制御部16の流量制御範囲である0〜150Nm3/hの(α−5)%の流量を算出し、この算出流量をガスG1の次の流量として採用した。また、吸着塔切替時に貯留量検知計14によって計測されるガスホルダ10のガス貯留量が、上側設定値80m3を下回り且つ下側設定値20m3を上回る場合には、流量制御部16の流量制御範囲である0〜150Nm3/hのα%の流量を算出し、この算出流量をガスG1の次の流量として採用した。ガスG1について以上のようにして更新した流量は、次の吸着塔切替時まで維持した。
本実施例では、前処理系2において、以下の条件でガスG1に対して前処理を行った。前処理槽20A内の触媒としては、プラチナ系触媒を採用した。前処理槽20Aに導入される前のガスG1については、温度を150℃に調節し、前処理槽20Aにて充分に一酸化炭素が除去されるように、酸素供給量制御部23の稼働によって一酸化炭素に対して1.1倍当量の酸素を添加した。前処理槽20B内の触媒としては、パラジウム系触媒を採用した。前処理槽20Bに導入される前のガスG1については、温度を110℃に調節し、ガスG1の酸素濃度が約2%低下するように、水素供給量制御部24の稼働によって所定量の水素を添加した。前処理槽20C内の触媒としては、プラチナ系触媒を採用した。前処理槽20Cに導入される前のガスG1については、温度を220℃に調節し、前処理槽20Cにて充分に酸素が除去されるように、一酸化炭素供給量制御部25の稼働によって酸素に対して1.1倍当量の一酸化炭素を添加した。前処理槽20Cの後の冷却器22Cでは、ガスG1を30〜40℃に冷却した。
本実施例では、PSA系3ないしPSA装置30において、図8から図10に示すように吸着工程、第1減圧工程、第2減圧工程、第1脱着工程、第2脱着工程、第1洗浄工程、第2洗浄工程、第1昇圧工程、および第2昇圧工程からなる1サイクルを吸着塔31A,31B,31Cにおいて繰り返した。本実施例において使用したPSA装置30の吸着塔31A,31B,31Cのそれぞれは円筒形状(内径200mm,内寸高さ1500mm)を有する。各吸着塔内には、吸着剤として、CaA型合成ゼオライトとアルミナゲルとを積層して充填した。アルミナゲルは、各吸着塔の上述のガス通過口31a側にて塔内容積の5%を占める。CaA型合成ゼオライトは、各吸着塔の上述のガス通過口31b側にて塔内容積の95%を占める。
本実施例では、吸着塔31A,31B,31Cのそれぞれにおいて、ステップ1,6,11を80秒間、ステップ2,7,12を50秒間、ステップ3,8,13を30秒間、ステップ4,9,14を80秒間、ステップ5,10,15を30秒間行った。すなわち、本実施例では、吸着塔31A,31B,31Cのそれぞれにおいて、吸着工程を270秒間、第1減圧工程を130秒間、第2減圧工程を30秒間、第1脱着工程を80秒間、第2脱着工程を30秒間、第1洗浄工程を80秒間、第2洗浄工程を50秒間、第1昇圧工程を30秒間、第2昇圧工程を110秒間行った。吸着工程における吸着塔31A,31B,31Cの内部の最高圧力は800kPa(ゲージ圧)とし、脱着工程(第1脱着工程,第2脱着工程)における吸着塔31A,31B,31Cの内部の最低圧力は大気圧とした。また、第1減圧工程の終了時点における吸着塔31A,31B,31Cの内部の圧力(第1中間圧力)は400kPa(ゲージ圧)とし、第2減圧工程の終了時点における吸着塔31A,31B,31Cの内部の圧力(第2中間圧力)は200kPa(ゲージ圧)とした。
本実施例では、ステップ1,6,11を終了するタイミングの決定手法として、ステップ1の終了タイミングに関して上述した第2手法を採用した。具体的には、第1洗浄工程にある吸着塔からのガスG3’のヘリウム濃度が上昇して20vol%に至るのに要する時間を80秒として導出したうえで、上述のように第1洗浄工程の開始から80秒後に第2洗浄工程へと切替えることとした。また、本実施例では、ステップ4,9,14を終了するタイミングの決定手法として、ステップ4の終了タイミングに関して上述した第2手法を採用した。具体的には、第1脱着工程にある吸着塔からのガスG5のヘリウム濃度が低下して25vol%に至るのに要する時間を80秒として導出したうえで、上述のように第1脱着工程の開始から80秒後に第2脱着工程へと切替えることとした。
以上のような条件で行った本実施例において取得した精製ガスG2について、ヘリウム純度は99.999vol%であり、ヘリウム回収率は約85%であった。取得した精製ガスG2の仕様を図11の表に掲げる。