JP5372066B2 - 線虫防除剤 - Google Patents

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Description

本発明はネコブセンチュウ及び/又はネグサレセンチュウの防除剤に関し、栽培作物に対する害虫の防除技術の分野に属する。
近年、栽培作物に対する寄生性線虫類による被害が拡大し、問題となっている。この問題は特定作物を連作する場合に特に顕著となり、その作物への寄生性の強い線虫の土壌中の密度が高くなる結果、作物の生育を阻害したり、収量を低下させたりするなどの被害をもたらす。
特に、ネコブセンチュウとネグサレセンチュウはいずれも寄主範囲、生息範囲が広く、国内外において大きな問題となっている。いずれの線虫も作物の根に侵入し、ネコブセンチュウは組織細胞を栄養にして成長するとともに、根の組織をコブ状にして機能を低下させ、ネグサレセンチュウは移動しながら根の組織を広範囲に崩壊、壊死させることが知られている。
その対策として、従来、堆肥等の粗大有機物が用いられてきたが、この方法は、有害線虫に対する抑制効果は高いものの、大量に用いる必要があるので、労働負担が高く、さらに、作物の異常生長を招いたり、土壌中に病原菌が蔓延しやすくなるなどの欠点がある。
また、土壌中での線虫の繁殖を抑制する化学的物質を含有する植物、例えばマリーゴールド、クロタラリア、ギニアグラスなどを栽培作物と併せて植え付ける方法もあるが、この方法は目的とする作物の作付面積を制約するという難点がある。
さらに、播種あるいは植付け前にくん蒸処理用の農薬を用いた土壌消毒はコストも低く、現在最も汎用的に使用されている防除法であり、土壌中の線虫除去に効果を有するが、この方法は人畜に対する安全性を損なう懸念があり、また、有用微生物を死滅させるなど、土壌生態系への影響が大きい。さらに、リサージェンス(誘導多発性)と呼ばれるように、処理後、かえって対象害虫あるいは他の害虫が増加するという被害の常態化をしばしば誘発することが知られている。
また、物理的防除方法として、ハウスでの太陽熱を利用した消毒や、大量の潅水と熱とによる還元消毒なども効果的ではあるが、この方法は大規模な設備が必要で、コストや労働負担が高い。
そして、これらの対策方法は、いずれも予防的な方法であって、作付中に一旦寄生されると、それを排除して土壌を回復するのはきわめて困難であり、さらなる汚染を防ぐしかないのが実情である。
このような実情に対処するものとして、特許文献1にはネコブセンチュウに有効な天然物由来の防除剤が開示されており、アワユキセンダングサ、ヒメジョン、オオアレチノギク、セイタカアワダチソウなどのキク科植物の抽出物が、ネコブセンチュウに対して防除効果を有することが記載されている。また、特許文献2にはコーヒー粕抽出液やコーヒー粕発酵物が各種植物寄生性線虫に対してある程度の防除効果を有することが記載され、特許文献3には、コーヒー粕抽出液やコーヒー粕発酵物にマリーゴールド植物体を用いることにより、特許文献2で得られた線虫防除効果が高まることが記載されている。また、特許文献4には、植物精油や精油の成分、植物還流液、ホウ酸又はその塩、タンニンなどを有効成分とした線虫防除材及び土壌活性化剤が記載されている。
特許4528982号 特開平11−92321号公報 特開平11−92323号公報 特開2003−171217号公報
しかし、前記特許文献1に記載のものは、ネコブセンチュウを効果的に防除するために大量の植物体が必要となり、処理コストが高くなるという欠点がある。
また、特許文献2に記載されたコーヒー粕抽出液は、線虫分散液へ所定量を添加し、2、4、6、24時間後における溶液中における線虫の状態を直接顕微鏡にて観察することで、死亡率を測定しているが、線虫防除の研究分野ではこの状態は完全に死亡しているのではなく、単に不動化した状態であり、その後抽出液を水で希釈してさらに数時間静置すると、再び活動を開始することが知られている。また、特許文献2に記載されたコーヒー粕発酵堆肥は、圃場にかなり大量に施用しても、完全に線虫が防除されていない。したがって、特許文献2におけるコーヒー粕抽出液および/またはコーヒー粕発酵物を含有する線虫活性抑制剤を用いたとしても、長期に作物を栽培するうちに被害は再び拡大してしまう可能性が高い。
また、特許文献3に記載のものは、特許文献2に記載されているようにコーヒー粕発酵堆肥だけでは線虫防除効果が低く、マリーゴールドペレットも単独では線虫防除効果が低いので、線虫防除効果を実現させるためには、2つの成分を混合しなくてはならず、製造に手間がかかる。また、マリーゴールドペレットについては半乾燥したマリーゴールドをそのままペレット化しているため、大量に土壌へ施用することで他の病害菌の温床になる可能性が考えられる。
また、特許文献4に記載のものは、例えば実施例1〜6について、表2に示されているように、混和法では土壌1ml中の線虫数が対照例では0.94であるのに対し、実施例では0.18〜0.53残留しており、これは対照例の約19〜56%に相当する。また、同様に、灌注法の場合も対照例では0.83であるのに対し、0.28〜0.58残留しており、これは対照例の約34〜70%に相当する。したがって両処理法における防除効果はそれぞれ最大約81%、66%となり、防除効果が必ずしも高いとはいえない。また、表3に示されているように、2重量%添加条件の場合は対照例が2.02であるのに対し、残留率が0.18〜0.37であり、これは対照例の約9〜18%である。したがって、その防除効果は最大約91%と比較的高いものの、2重量%添加条件では作物の発芽能が低下するなど、作物への悪影響を生じる可能性があり、防除効果や作物への影響の点で、必ずしも満足できるものではない。
以上のように、従来報告されている線虫防除剤は、商品作物を安定供給しなくてはならない農家にとっては、満足できるような効果を示していないといえる。すなわち、人体や作物に対する安全性はもちろん、なるべく経済的で、実施の容易性等に優れ、植物の生長を阻害することなく、なおかつ線虫への防除効果がより優れた防除剤の実現が望まれている。
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであって、まず、請求項1に記載の発明は、ネコブセンチュウ及び/又はネグサレセンチュウを防除対象とする線虫防除剤であって、テルミナリア・チェブラ果実の抽出物を有効成分とすることを特徴とする。
ここで、テルミナリア・チェブラはミラボラン、ミラボラム、ミロバラン、呵梨靱(かりろく)などとも呼ばれており、インドやネパール、ミャンマーに分布するシクンシ科の落葉高木である。また、この果実を熱水あるいはアルコールなどの各種親水性溶媒で抽出後、溶媒を留去させて得られた乾燥抽出物は、タンニンを多く含むため、皮革産業における皮なめし用途において、ミラボランタンニンなどと呼ばれて利用されている。
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の線虫防除剤であって、前記抽出物が、溶媒として水、親水性有機溶媒又は水と親水性有機溶媒の混合液を用いて抽出されたものであることを特徴とする。
抽出物を得る際に用いられる溶媒は、安全性、汎用性、経済性を考慮すると、水が望ましいが、親水性有機溶媒であるエタノールやメタノールなど水溶性アルコール類のほか、アセトン、ジメチルスルホキシドなどを用いることも可能であり、これらを複数混合させても良い。
また、得られた抽出物は、各種溶媒に溶解した状態で用いても良いが、溶媒を留去し、乾燥させ、固形状あるいは粉末状にして用いても良く、水、親水性有機溶媒又は水と親水性有機溶媒の混合液で溶解して希釈することで、目的に応じた濃度に調整して使用することができる。
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載の線虫防除剤であって、前記抽出物の濃度が、前記溶媒に対して2重量%未満かつ0.4重量%以上であることを特徴とする。
すなわち、テルミナリア・チェブラ果実の抽出物の濃度が、水、親水性有機溶媒又は水と親水性有機溶媒の混合液に対して2重量%以上になると、植物の種類によっては生長阻害を生じる可能性がある。一方、0.4重量%より低くなると、線虫防除効果を十分に発揮することができなくなる。
また、請求項4に記載の発明は、ネコブセンチュウ及び/又はネグサレセンチュウを防除対象とする線虫防除方法であって、前記請求項1から3のいずれか1項に記載の防除剤を用いることを特徴とする。
本発明に係る防除剤及びこれを用いた防除方法によれば、テルミナリア・チェブラ果実の抽出物が、ネコブセンチュウやネグサレセンチュウなどの線虫に作用し、致死の効果を発揮して、これらの線虫が寄生することによる作物被害を防止もしくは軽減する。
また、特に、この防除剤は、植物の実を原料とし、人畜や環境への影響がなく、土壌生態系を損なうおそれもない。
また、この防除剤は、植物に対する影響が少ないため、作物への寄生が認められてからであっても処理を行なうことができ、線虫による被害を防止もしくは軽減することができる。
ネコブセンチュウの生存状態と致死状態とを示す写真である。 ネグサレセンチュウの生存状態と致死状態とを示す写真である。
本発明の防除剤は、水あるいは熱水抽出物の乾燥品として市販されているものを使用することができる。これは各種溶媒に対して高い溶解性を保持しているため、水、親水性有機溶媒又は水と親水性有機溶媒の混合液に溶解希釈することで、目的に応じた濃度に調整して使用することができる。
また、必要に応じて他の防除成分、界面活性剤、乳化剤、保存料、酸化防止剤、紫外線吸収剤や、色素、顔料などの添加剤を配合した状態で製剤化することもできる。
また、この防除剤は固形状あるいは粉末状の場合は土壌へ散布、混和することによって用いることができる。また、液状の場合は土壌中に灌注して用いることができるほか、適宜担体に担持させ、これを土壌表面に配置あるいは土壌中に混和して用いることもできる。
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1:ネコブセンチュウに対する防除効果
1.試験用線虫溶液の準備
沖縄県内のバジル圃場より、ネコブセンチュウ被害根を採取し、水で十分すすいだ後、被害根に付着した卵のうを医療用メスにて摘出した。摘出した卵のうは、水で湿らせたキムワイプの上に置き、これを少量の水をはったシャーレ内に設置して暗所室温にて静置した。数日毎に、シャーレ内の水に分離した線虫を線虫懸濁液としてパスツールピペットで採取し、三角フラスコに移し、パラフィルムなどで蓋をした。この線虫懸濁液は暗室下15℃条件にて冷蔵保管し、2週間以内に実験に供試した。
2.線虫懸濁液の密度調整
(1)三角フラスコ中で15℃に保存されている線虫の懸濁液をパスツールピペットを用いて遠沈管に入れ、遠心分離機を用いて、3000rpm条件で3分間遠心分離し、線虫を沈殿させた。
(2)パスツールピペットを用いて上澄みを取り除き、線虫の高密度懸濁液を得た。
(3)この高密度線虫懸濁液をタッチミキサーでよく撹拌した後、ピペットマンを用いて0.1ml採取し、これをプレパラート上に広げた。
(4)顕微鏡(40倍)で観察しながら、カウンターを用いてプレパラート上の線虫をすべてカウントし、高密度線虫懸濁液0.1mlあたりの線虫密度を求めた。
(5)必要に応じて蒸留水あるいは、高密度線虫懸濁液を加えて、線虫密度が0.1mlあたり130〜140頭の線虫懸濁液を調製した。
3.線虫の不動化・致死試験
(1)実施例に係る防除剤として、試験管にテルミナリア・チェブラ果実の熱水抽出物の乾燥粉末(川村通商(株)製ミラボランタンニン)を50mg、20mg、10mg秤取して入れ、ここへ蒸留水を4.5ml加えて撹拌し、溶解させた。
(2)これらをそれぞれ実施例1−ア(1重量%濃度条件)、実施例1−イ(0.4重量%濃度条件)、実施例1−ウ(0.2重量%濃度条件)とした。
(3)また、一般に市販され、良く利用されている各種植物より抽出したタンニンの乾燥粉末を用いて同様に比較試験を行なった。比較例1としては実施例1で用いたテルミナリア・チェブラ果実の抽出物(ミラボランタンニン)と良く似た化学構造を有し、芳香族カルボン酸や糖が多数エステル結合してなる加水分解型タンニンで、チェストナットの木質部から抽出されたチェストナットタンニン、比較例2としてはガンビアの葉部から抽出され、その化学構造としては、フラバノール骨格が多数炭素−炭素結合してなる縮合型タンニンであるガンビアタンニン、比較例3としてはミモサの樹皮から抽出された縮合型タンニンであるミモサタンニン、比較例4としてはケブラチョの木質部から抽出された縮合型タンニンであるケブラチョタンニンを用いた。これらも実施例と同様、試験管に50mg、20mg、10mgを秤取し、ここへ蒸留水を4.5ml加えてよく溶かし、それぞれ比較例1−ア(1重量%濃度条件)、比較例1−イ(0.4重量%濃度条件)、比較例1−ウ(0.2重量%濃度条件)などとした。
(4)また、比較例5として、試験管に蒸留水4.5mlのみを入れた。(対照試験)
(5)各試験管にピペットマンを用いて上記の密度調整済み線虫懸濁液を0.5mlずつ加えてタッチミキサーでよく撹拌し、全量が5.0mlで、その1mlあたりに線虫が130〜140頭存在する試験液を調整した。各試験液はパラフィルムで蓋をし、遮光下25℃条件にて静置した。
(6)各試験液は所定時間後にタッチミキサーで撹拌し、ピペットマンを用いてその0.3mlをプレパラートに広げ、顕微鏡(40倍)にて観察し、動いている(生存)線虫と動かない(不動化)線虫の数をそれぞれカウントし、全線虫のうちの不動化した線虫の割合(不動化率)を求めた。なお、1回の測定においてこの操作を3回繰り返し、その平均値を各試験液の不動化率とした。
(7)24時間後の不動化率を測定した後、試験液の全量を遠沈管に入れ、遠心分離機を用いて3000rpm条件で3分間遠心分離した。その後、パスツールピペットを用いて上澄みをできるだけ除去し、沈殿物に蒸留水を加えてタッチミキサーでよく撹拌し、遠心分離機で3000rpm条件で3分間遠心分離した。この操作を再度行い、さらに再びパスツールピペットを用いて上澄みをできるだけ除去後、最初に除去した量だけ蒸留水を加えることで、線虫を洗浄するとともに試験液を蒸留水で十分に置換した。
(8)これらを25℃にて24時間静置した後、タッチミキサーで撹拌し、ピペットマンを用いてその0.3mlをプレパラートに広げ、顕微鏡(40倍)にて観察し、生存している線虫と致死している線虫の数をそれぞれカウントし、全線虫のうちの致死した線虫の割合(致死率)を求めた。ここで、線虫の生存、致死の判定は、図1及び図2の(a)に示すように、比較的複雑に屈曲し、観察中、たえず動いているものを生存、(b)に示すように、原形質が収縮したり、原形質内に気泡が発生するなどの異常を呈して、観察中全く動かないものを致死とした。なお、1回の測定においてこの操作を3回繰り返し、その平均値を各試験液の致死率とした。
4.試験結果
ネコブセンチュウにおける不動化・致死試験結果は、表1に示すとおりである。
Figure 0005372066
ネコブセンチュウに対する防除効果について、実施例1−ア及び実施例1−イはいずれも試験開始直後から不動化率が高く、その後97%以上が致死していた。一方、実施例1−ウは、試験開始後6時間までは不動化率が低く、その後24時間で100%が不動化し、さらに24時間後86.2%が致死した。
一方、比較例2は、ア、イ、ウいずれの希釈濃度も不動化及び致死率は非常に低く、このことから比較例2は実施例1と同じ加水分解型タンニンであるが、ネコブセンチュウに対して全く防除効果を示さないことが明らかとなった。
また、他の比較例において、特に比較例2−イや比較例4−イは試験開始後24時間で不動化率が100%程度まで上昇したが、その後の致死率は13.8%、9.2%とかなり低下した。また、比較例3−ア、比較例3−ウ、比較例4−ウも試験開始後24時間で50%以上が不動化したが、その後の致死の判定ではいずれも3%以下まで低下し、試験溶液中では不動化状態であったネコブセンチュウが水で洗浄、置換されたことによって再び活性化したことを示す。また、比較例3−イも最終的に14%程度の致死を示したが、防除効果としては低かった。
なお、対照試験である比較例5は、試験開始から48時間後までほとんど不動化及び致死することはなかった。
したがって、これらの結果は、他の植物などから得られる加水分解型あるいは縮合型のタンニン物質ではなく、テルミナリア・チェブラ果実の抽出物を用いた場合にのみ特異的にネコブセンチュウ防除効果が認められることを示している。
実施例2:ネグサレセンチュウに対する防除試験
1.試験用ネグサレセンチュウ幼虫の準備
沖縄県内のキク圃場より、ネグサレセンチュウ被害根を採取し、水で十分洗浄後、被害根を2〜3mm程度に刻んで、水で湿らせたキムワイプの上に置き、これを少量の水をはったシャーレ内に設置して暗所室温にて静置した。数日毎に、シャーレ内の水に分離した線虫を線虫懸濁液としてパスツールピペットで採取し、三角フラスコに移し、パラフィルムなどで蓋をした。この線虫懸濁液は暗室下15℃条件にて冷蔵保管し、2週間以内に実験に供試した。
2.線虫懸濁液の密度調整
ネコブセンチュウに対する防除試験と同様の手法で行なった。
3.線虫の不動化・致死試験
ネグサレセンチュウを用いること以外はすべてネコブセンチュウに対する防除試験と同様の手法で行ない、実施例に係る防除剤として、試験管にテルミナリア・チェブラ果実の熱水抽出物の乾燥粉末(川村通商(株)製ミラボランタンニン)を50mg、20mg、10mg秤取して入れ、ここへ蒸留水を4.5ml加えてよく溶かした剤をそれぞれ実施例2−ア(1重量%濃度条件)、実施例2−イ(0.4重量%濃度条件)、実施例2−ウ(0.2重量%濃度条件)とした。また、同様にしてチェストナットタンニン、ガンビアタンニン、ミモサタンニン、ケブラチョタンニンから調製した剤をそれぞれ、比較例6、7、8、9とした。また、比較例10として、試験管に蒸留水4.5mlのみを入れた。(対照試験)
4.試験結果
ネグサレセンチュウにおける不動化・致死試験結果は、表2に示すとおりである。
Figure 0005372066
ネグサレセンチュウに対する防除効果について、実施例2−ア及び実施例2−イはいずれも試験開始直後は60%程度であった不動化率が、24時間までにそれぞれ97.7%、91.0%まで上昇し、その後も約91%以上が致死していた。一方、実施例2−ウは、試験開始直後の不動化率は36.5%であったが、その後徐々に上昇し、その後約55%が致死していた。
一方、比較例6は、ア、イ、ウいずれの希釈濃度でも不動化及び致死率は低く、最終的な致死率が44%を超えるものはなかった。このことから比較例6は、ネコブセンチュウを用いた試験と同様、ネグサレセンチュウに対しても、実施例2と同じ加水分解型タンニンであるが、全く防除効果を示さないことが明らかとなった。
また、他の比較例において、特に比較例7はア、イ、ウいずれの濃度条件も試験開始後24時間で不動化率が97%以上を示したが、その後の致死率はそれぞれ26.0%、44.2%、19.5%と大幅に低下した。また、同様の傾向は比較例8−イ、比較例8−ウ、比較例9−イでも認められ、いずれも試験開始後24時間で100%が不動化したが、その後の致死の判定ではいずれも30%以下に低下し、試験溶液中では不動化状態であったネグサレセンチュウが水で洗浄、置換されたことによって再び活性化したことを示す。
また、対照試験である比較例10おいても最終的に25%程度の致死が確認されたが、これは、キクの被害根に寄生したネグサレセンチュウを直接分離して試験に供したためであり、様々な成熟ステージの個体が混在しており、寿命を迎えた個体がカウントされた可能性が高いといえる。
したがって、これらの結果は、他の植物などから得られる加水分解型あるいは縮合型のタンニン物質ではなく、テルミナリア・チェブラ果実の抽出物を用いた場合にのみ特異的にネグサレセンチュウ防除効果が認められることを示している。
次に、本発明の実施例について植物に対する生長阻害性の確認試験について説明する。
1.試験方法
(1)実施例に係る線虫防除剤として、先の実施例1及び2で用いたテルミナリア・チェブラ果実の熱水抽出物の乾燥粉末を用い、スイートバジルを用いた試験を実施例3、ミニトマトを用いた試験を実施例4、ピーマンを用いた試験を実施例5とした。
(2)5.5L容量のプラスチック製ポットに5Lの培養土を充填し、ここへ各種植物の苗を定植する3日前から、線虫防除剤を2重量%濃度水溶液(実施例3−ア、4−ア、5−ア)1重量%濃度水溶液(実施例3−イ、4−イ、5−イ)、0.4重量%濃度水溶液(実施例3−ウ、4−ウ、5−ウ)とし、それぞれ1つのポットあたり1日30mlずつ潅注した。
(3)4日目に実施例3はスイートバジルの苗(地上部長さ約15cm)、実施例4はミニトマトの苗(地上部長さ約18cm)、実施例5はピーマンの苗(地上部長さ約10cm)を1株ずつポットに定植し、直後に再び各種線虫防除剤をそれぞれ30ml潅注した。
(4)さらに定植後、2日目まで各種線虫防除剤を1つのポットあたり1日30mlずつ潅注した。
(5)なお、実施例3、4、5において、それぞれ各種線虫防除剤の代わりに水を用いた対照試験を行い、これらをそれぞれ比較例11、12、13とした。
(6)適宜潅水しながら1ヶ月間栽培し、各種条件における植物に対する生長阻害レベルを5(甚大)、4(やや甚大)、3(中程度)、2(軽度)、1(ほとんど阻害なし)、0(阻害なし)として評価した。なお、実施例3ではそれぞれ2ポットずつ、実施例4、5及び比較例11、12、13ではそれぞれ3ポットずつ試験を行い、その平均値で各種溶液の植物に対する生長阻害の有無を判定した。
2.試験結果
本発明の実施例にかかる線虫防除剤の各種植物に対する生長阻害試験結果は表3に示すとおりである。
Figure 0005372066
テルミナリア・チェブラ果実の抽出物の2重量%濃度水溶液をスイートバジルの苗に潅注した実施例3−アのみ1つの株において葉の脱落などが認められ、やや生長阻害が認められたが、実施例3−イ、ウ及び実施例4、5においては、比較例11、12、13と同様、全く生長阻害は認められなかった。
以上の結果から、テルミナリア・チェブラ果実の抽出物は、植物の定植時あるいは栽培中においても2重量%濃度未満で用いることで生長阻害を生じることがないことが示された。
すなわち、本実施例の防除剤は、ネコブセンチュウ及びネグサレセンチュウに対して0.4重量%以上の希釈液で迅速な致死効果が認められた。また、0.2重量%濃度でもネコブセンチュウに対しては86%程度、ネグサレセンチュウに対しては55%程度の致死が認められたことから、被害レベルや線虫の種類、栽培植物に応じて、必要濃度に希釈することによって、経済的かつ効果的に使用できることが示された。また、1重量%濃度以下では、植物に対する影響がなかった。
以上により、本実施例の防除剤は、植物の生長を阻害することなく、ネコブセンチュウ及びネグサレセンチュウに対する高い防除効果を有することが確認された。
本発明に係る防除剤は、テルミナリア・チェブラ果実の抽出物を有効成分として用いることで、環境や人畜に対する安全性に優れ、かつ低コストで実施可能でありながら、植物の生長を阻害することなくネコブセンチュウやネグサレセンチュウに対する高い防除効果を有することから、農産物の生産業において好適に利用される可能性がある。

Claims (4)

  1. ネコブセンチュウ及び/又はネグサレセンチュウを防除対象とする線虫防除剤であって、テルミナリア・チェブラ果実の抽出物を有効成分とすることを特徴とする線虫防除剤。
  2. 前記抽出物が、溶媒として水、親水性有機溶媒又は水と親水性有機溶媒の混合液を用いて抽出されたものであることを特徴とする請求項1に記載の線虫防除剤。
  3. 前記抽出物の濃度が、前記溶媒に対して2重量%未満かつ0.4重量%以上であることを特徴とする請求項2に記載の線虫防除剤。
  4. ネコブセンチュウ及び/又はネグサレセンチュウを防除対象とする線虫防除方法であって、前記請求項1から3のいずれか1項に記載の防除剤を用いることを特徴とする線虫防除方法。
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