JP2017001988A - ネコブセンチュウ防除剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】ネコブセンチュウに対する麻痺・致死効果に優れるとともに、人畜及び作物に対する安全性が高く、環境や土壌生態系への影響も小さい防除技術の提供。
【解決手段】成分(A)としてマレイン酸、ケイ皮酸又はサリチル酸より選ばれる1種又は2種以上の有機酸と、更に成分(B)として(B)フマル酸、コハク酸又はこれらの誘導体より選ばれる1種又は2種以上のジカルボン酸類と、を有効成分として含有、ネコブセンチュウ防除剤。成分(A)と成分(B)の含有質量比((A):(B))が1:1〜1:200であるネコブセンチュウ防除剤。
【選択図】なし
【解決手段】成分(A)としてマレイン酸、ケイ皮酸又はサリチル酸より選ばれる1種又は2種以上の有機酸と、更に成分(B)として(B)フマル酸、コハク酸又はこれらの誘導体より選ばれる1種又は2種以上のジカルボン酸類と、を有効成分として含有、ネコブセンチュウ防除剤。成分(A)と成分(B)の含有質量比((A):(B))が1:1〜1:200であるネコブセンチュウ防除剤。
【選択図】なし
Description
本発明はネコブセンチュウ防除剤に関し、更に詳細には、ネコブセンチュウに対して優れた麻痺ないし致死作用を有するとともに、人畜や作物に対する安全性が高く、環境や土壌生態系への影響も少ない防除剤に関する。
ネコブセンチュウは、栽培作物に寄生して被害をもたらす定着性内部寄生性線虫である。卵から孵化したネコブセンチュウの幼虫は、口針を使って植物の根の根冠部付近から根内に侵入する。侵入した幼虫が根の中心部に定着すると、その周辺の植物細胞が肥大化してこぶが形成される。幼虫はこれから養分を吸収しながら成長して成虫となる。雌成虫は、根内で発育を続け、成熟すると卵のうを分泌する。卵のうはこぶに着生した状態となり、雌成虫はその中に卵を産みつける。1世代の所要日数は30〜60日程度で、年間2〜4世代を繰り返す。
ネコブセンチュウの寄生範囲は極めて広範であり、種々の野菜や花卉などの農作物に寄生し、生育阻害や収量低下を引き起こすため、国内外において大きな問題となっている。ネコブセンチュウの防除方法として、化学合成農薬による土壌のくん蒸処理が一般的に行われている。このような化学的防除方法は、線虫に対し高い防除効果を発揮するものの、人畜や環境に対する危険性が指摘されている上、有用微生物も死滅させるなど土壌生態系を攪乱し、リサージェンスなどの弊害が生じるおそれもある。
一方、マリーゴールドやギニアグラスなどの対抗植物を栽培し、センチュウ密度を低下させる耕種的防除や、太陽熱、蒸気などを利用した物理的防除も実施されている。これらは安全性が高く環境への負荷も小さい方法であるが、その防除効果はあくまで予防的な範囲にとどまり、一旦作物が線虫に寄生されると、これを除去し土壌環境を回復することは困難になるなどの限界がある。
このため、化学的ないし生物的防除方法において、より人畜に対する安全性が高く、環境への影響も少ない物質の検索が行われている。例えば、コーヒー粕抽出液又は発酵物がネグサレセンチュウ等の植物寄生性線虫に対して致死作用を示すことが報告されている(特許文献1)。また、ナラ、スギなどの植物の精油やその成分、あるいは、ホウ酸、タンニンなどを有効成分とした線虫防除材が開示されている(特許文献2)。しかし、これらの成分は線虫に対する防除効果が十分ではなく、経済的に見合う施用量の範囲内において作物の被害を有効に防止し得るとは言い難い。
さらに、特許文献3には、サリチル酸などの解熱鎮痛化合物を植物の地上部に浸漬することにより、サツマイモネコブセンチュウの植物への侵入が抑制されることが開示されている。しかし、この文献では、サリチル酸などの解熱鎮痛化合物には、線虫を死亡させたり、活動を停止させる効果はないことが明示されており、そのような間接的な作用のみでは、実際に圃場に適用した場合に十分な防除効果は見込めない。
このように人体や環境への影響を最小限に抑えつつ、線虫に対し高い防除効果を実現することは困難であるのが実情であった。
本発明は、かかる実情に鑑みなされたものであり、ネコブセンチュウの防除効果に優れるとともに、人畜や作物に対して安全性が高く、環境や土壌生態系への影響も小さい防除技術の提供を課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定の有機酸が、ネコブセンチュウに対し、優れた麻痺及び致死効果を有し、さらにこれらの有機酸とともに、フマル酸などのジカルボン酸類を併用することにより、フマル酸などのジカルボン酸類はそれ自身抗線虫活性を示さないにもかかわらず、有機酸のネコブセンチュウに対する麻痺ないし致死作用が増強されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、マレイン酸、ケイ皮酸及びサリチル酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の有機酸を有効成分として含有することを特徴とするネコブセンチュウ防除剤である。
また本発明は、さらにフマル酸、コハク酸及びこれらの誘導体よりなる群から選ばれる1種又は2種以上のジカルボン酸類を含有する上記ネコブセンチュウ防除剤である。
本発明の防除剤において有効成分として使用される、マレイン酸、ケイ皮酸及びサリチル酸は、ネコブセンチュウに対する麻痺及び致死作用に優れ、また従来の化学合成農薬と比べ安全性の高いものである。したがって、本発明の防除剤は、人体や環境への影響を最小限に抑えながら、有効にネコブセンチュウを防除し、作物への被害を抑制できる。さらに、コハク酸やフマル酸などは食品添加物としても使用される極めて安全性の高い成分であり、それ自身は抗線虫活性を示さないが、マレイン酸などの有機酸と併用することでその抗線虫活性を増強させることができる。そのため、両者を併用することにより、ネコブセンチュウに対する防除効果を維持しつつ、その安全性を高めることが可能となる。
本発明の防除剤は、マレイン酸、ケイ皮酸及びサリチル酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の有機酸を有効成分とする(成分(A))。これらの中でも、ネコブセンチュウに対する麻痺及び致死効果が高いことから、マレイン酸、ケイ皮酸が好ましく、特にマレイン酸が好適に用いられる。
本発明では、さらにフマル酸、コハク酸及びこれらの誘導体よりなる群から選ばれる1種又は2種以上のジカルボン酸類を併用することが好適である(成分(B))。フマル酸、コハク酸等は、それ自身では抗線虫活性を示さないものの、成分(A)の有機酸と組み合わせることで、成分(A)の有機酸のネコブセンチュウに対する麻痺及び致死作用を増強することができる。フマル酸、コハク酸等は食品添加物としても使用されるなど安全性は非常に高いものであるため、これらを併用することで、成分(A)の使用量を減少させても、ネコブセンチュウに対する効果を維持することができ、防除剤としての安全性を向上させることが可能となる。
フマル酸又はコハク酸の誘導体としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチルなどの炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルコールとのエステル、ヒドロキシル化物など農薬学、医薬的に許容される塩又はエステル等の誘導体が挙げられる。これらの中でも、成分(A)の有機酸との併用によるネコブセンチュウに対する麻痺及び致死作用を増強する効果に優れることから、コハク酸またはフマル酸が好適である。特にマレイン酸とフマル酸とを組合せることにより、ネコブセンチュウに対する麻痺及び致死作用において顕著な増強効果が得られる。
成分(A)と(B)を併用する場合の含有質量比は特に限定されるものではないが、成分(A):(B)=1:1〜1:200とすることが好ましく、1:1〜1:50の範囲がより好ましい。このような範囲で併用することにより、ネコブセンチュウに対する麻痺及び致死作用において優れた増強効果が得られ、かつ安全性を高めることができる。
上記成分(A)のみ、または成分(A)と必要に応じ使用される成分(B)のみで本発明の防除剤とすることができるが、さらに公知の添加剤を用いて製剤化してもよい。剤型としては、例えば、乳剤、水和剤、水溶剤、懸濁剤、油剤、フロアブル剤等の液剤;粉剤、微粒剤、粒剤、錠剤、マイクロカプセル剤、フィルム剤等の固形剤;くん煙剤;くん蒸剤、エアロゾル剤等が例示される。添加剤としては、例えば、担体(希釈剤)、界面活性剤、展着剤、乳化剤、湿展剤、分散剤、崩壊剤等が挙げられる。また本発明の効果を損なわない範囲で、成分(A)以外のセンチュウ防除剤、抗菌剤、殺虫剤、除草剤等の農薬活性成分を使用することもできる。
本発明の防除剤における成分(A)の含有量は特に限定されるものではないが、通常0.1〜100質量%(以下、特に断らない限り「%」は質量%を意味する)、好ましくは1〜50%程度である。また成分(B)を使用する場合は、成分(A)の含有量は通常0.1〜50%、好ましく1〜25%程度であり、(B)の含有量は通常0.1〜99.9%、好ましくは1〜99%である。
本発明の防除対象となるネコブセンチュウは、ハリセンチュウ目(Tylenchida)メロイドギネ科(Meloidogynidae)に属するものであり、例えば、キタネコブセンチュウ(Meloidogyne hapla Chitwood)、ジャワネコブセンチュウ(Meloidogyne javanica Treub)、サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita Kofoidet White)、アレナリアネコブセンチュウ(Meloidogyne arenaria Neal)等が例示され、いずれも好適に使用できる。本発明の防除剤は、これらのネコブセンチュウに対し、麻痺等の運動阻害を生じさせたり、致死させるなど、ネコブセンチュウに直接作用して不活性化させる効果を有する。
本発明の防除剤は、ネコブセンチュウが寄生する種々の植物、例えば、イチゴ、トマト、ナス、ダイコン、ゴボウ、レタス、ニンジン、ヤマノイモ、キュウリ、スイカ、オクラ等の植物の栽培の際に適用することにより、ネコブセンチュウによる被害を有効に抑制することができる。
本発明の防除剤の施用方法は、特に限定されるものではなく、例えば、固形剤の場合は、土壌に散布、混和、敷設等すればよい。液剤の施用方法としては、土壌中に灌注、混和する方法や、土壌表面に散布する方法、植物の根や種子を浸漬する方法等を例示することができる。
より具体的には、例えば、本発明の防除剤を土壌中に灌注する場合、成分(A)の濃度が1〜10000ppm程度、好ましくは2〜1000ppmとなるように調整し、灌水装置等を用いて、植物1株あたり栽培期間中に10〜5000ml/回程度の量を1〜10回程度灌注すればよい。
また本発明の防除剤に植物の根や種子を浸漬する場合、成分(A)の濃度が1〜1000ppm程度、好ましくは2〜500ppmとなるように調整し、その中に根や種子全体を3〜60分程度浸漬すればよい。
このようにして本発明の防除剤を施用することにより、土壌中のネコブセンチュウを麻痺ないし致死させ、農作物への被害を有効に抑制することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実 施 例 1
有機酸による線虫麻痺・致死作用:
1.試験用線虫溶液の準備
ネコブセンチュウ被害を受けたトマト苗より被害根を採取し、水で十分すすいだ後、被害根に付着した卵のうを医療用メスにて摘出した。摘出した卵のうは、精製水で湿らせた脱脂綿の上に置き、これを少量の精製水を入れたシャーレ内に設置して暗所室温にて静置した。数日毎に、シャーレ内の精製水に分離した線虫を線虫懸濁液として遠沈管に採取した。
有機酸による線虫麻痺・致死作用:
1.試験用線虫溶液の準備
ネコブセンチュウ被害を受けたトマト苗より被害根を採取し、水で十分すすいだ後、被害根に付着した卵のうを医療用メスにて摘出した。摘出した卵のうは、精製水で湿らせた脱脂綿の上に置き、これを少量の精製水を入れたシャーレ内に設置して暗所室温にて静置した。数日毎に、シャーレ内の精製水に分離した線虫を線虫懸濁液として遠沈管に採取した。
2.線虫懸濁液の密度調整
(1)遠沈管に採取した線虫の懸濁液を、遠心分離機により3000rpm条件で3分間遠心分離し、線虫を沈殿させた。
(2)パスツールピペットを用いて上澄みを取り除き、線虫の高密度懸濁液を得た。
(3)この高密度線虫懸濁液をタッチミキサーでよく撹拌した後、ピペットマンを用いて一定量採取し、これをプレパラート上に広げた。
(4)顕微鏡(40倍)で観察しながら、プレパラート上の線虫をすべてカウントし、高密度線虫懸濁液の線虫密度を求めた。
(5)必要に応じて精製水あるいは、高密度線虫懸濁液を加えて、線虫密度が0.1mlあたり500頭以上の線虫懸濁液を調製した。
(1)遠沈管に採取した線虫の懸濁液を、遠心分離機により3000rpm条件で3分間遠心分離し、線虫を沈殿させた。
(2)パスツールピペットを用いて上澄みを取り除き、線虫の高密度懸濁液を得た。
(3)この高密度線虫懸濁液をタッチミキサーでよく撹拌した後、ピペットマンを用いて一定量採取し、これをプレパラート上に広げた。
(4)顕微鏡(40倍)で観察しながら、プレパラート上の線虫をすべてカウントし、高密度線虫懸濁液の線虫密度を求めた。
(5)必要に応じて精製水あるいは、高密度線虫懸濁液を加えて、線虫密度が0.1mlあたり500頭以上の線虫懸濁液を調製した。
3.線虫の麻痺・致死試験
(1)試験化合物としてマレイン酸、ケイ皮酸、サリチル酸及びフマル酸、コハク酸を用いた。マレイン酸、フマル酸、コハク酸については、精製水を用いて濃度4000ppmの水溶液を準備した。サリチル酸、ケイ皮酸は水に対する溶解性が低いため、10(v/v)%エタノール水溶液を用いて濃度4000ppmの溶液を準備した。
(2)1.5ml容チューブにピペットマンを用いて濃度4000ppmに調製したマレイン酸、ケイ皮酸、サリチル酸、フマル酸及びコハク酸溶液を0.1ml入れ、精製水0.8mlを加えて撹拌後、密度調整済み線虫懸濁液を0.1ml加えて撹拌し、濃度400ppmの各種有機酸水溶液1ml中に、線虫が500頭以上存在する試験液を調製した。
(3)また、同様に、1.5ml容チューブにピペットマンを用いて濃度4000ppmに調製したマレイン酸、ケイ皮酸、サリチル酸、フマル酸及びコハク酸溶液を0.01ml入れ、精製水0.89mlを加えて撹拌後、密度調整済み線虫懸濁液を0.1ml加えて撹拌し、濃度40ppmの各種有機酸水溶液1ml中に、線虫が500頭以上存在する試験液を調製した。
(4)また、1.5mlチューブに10(v/v)%エタノール水溶液を0.01mlと、精製水0.89mlを入れて良く撹拌し、密度調整済み線虫懸濁液を0.1ml加えて1mlとした試験液を対照1とした。また、1.5mlチューブに精製水0.9mlと密度調整済み線虫懸濁液を0.1ml加えて1mlとした試験液を対照2とした。各試験液は蓋をし、室温にて静置した。
(5)各試験液は所定時間後(1,3,6,8,12,24時間)にタッチミキサーで撹拌し、ピペットマンを用いてその0.03mlをプレパラートに広げ、顕微鏡(40倍)にて観察し、動いている(生存)線虫と動かない(麻痺)線虫の数をそれぞれカウントし、全線虫のうちの麻痺した線虫の割合(麻痺率)を求めた。1回の測定においてこの操作を2回繰り返し、その平均値を各試験液の麻痺率とした。
(6)また、各試験液は所定時間後(1,3,6,8,12,24時間)にタッチミキサーで撹拌し、ピペットマンを用いてその0.1mlを1.5ml容チューブに入れ、ここに1mlの精製水を加えて撹拌後、3000rpm条件で3分間遠心分離して線虫を沈殿させ、上澄み1mlを除去し、再び精製水1mlを加えて撹拌後、同様に3000rpm条件で3分間遠心分離し、上澄み1mlを除去した後、精製水1mlを加えることにより、線虫を精製水で十分に洗浄した後、室温にて24時間静置した。24時間後、3000rpm条件で3分間遠心分離して線虫を沈殿させ、上澄みを取り除き、沈殿している線虫懸濁液全量をプレパラートに広げ、顕微鏡(40倍)にて観察し、動いている(生存)線虫と動かない(致死)線虫の数をそれぞれカウントし、全線虫のうちの致死した線虫の割合(致死率)を求めた。1回の測定においてこの操作を2回繰り返し、その平均値を各試験液の致死率とした。
(1)試験化合物としてマレイン酸、ケイ皮酸、サリチル酸及びフマル酸、コハク酸を用いた。マレイン酸、フマル酸、コハク酸については、精製水を用いて濃度4000ppmの水溶液を準備した。サリチル酸、ケイ皮酸は水に対する溶解性が低いため、10(v/v)%エタノール水溶液を用いて濃度4000ppmの溶液を準備した。
(2)1.5ml容チューブにピペットマンを用いて濃度4000ppmに調製したマレイン酸、ケイ皮酸、サリチル酸、フマル酸及びコハク酸溶液を0.1ml入れ、精製水0.8mlを加えて撹拌後、密度調整済み線虫懸濁液を0.1ml加えて撹拌し、濃度400ppmの各種有機酸水溶液1ml中に、線虫が500頭以上存在する試験液を調製した。
(3)また、同様に、1.5ml容チューブにピペットマンを用いて濃度4000ppmに調製したマレイン酸、ケイ皮酸、サリチル酸、フマル酸及びコハク酸溶液を0.01ml入れ、精製水0.89mlを加えて撹拌後、密度調整済み線虫懸濁液を0.1ml加えて撹拌し、濃度40ppmの各種有機酸水溶液1ml中に、線虫が500頭以上存在する試験液を調製した。
(4)また、1.5mlチューブに10(v/v)%エタノール水溶液を0.01mlと、精製水0.89mlを入れて良く撹拌し、密度調整済み線虫懸濁液を0.1ml加えて1mlとした試験液を対照1とした。また、1.5mlチューブに精製水0.9mlと密度調整済み線虫懸濁液を0.1ml加えて1mlとした試験液を対照2とした。各試験液は蓋をし、室温にて静置した。
(5)各試験液は所定時間後(1,3,6,8,12,24時間)にタッチミキサーで撹拌し、ピペットマンを用いてその0.03mlをプレパラートに広げ、顕微鏡(40倍)にて観察し、動いている(生存)線虫と動かない(麻痺)線虫の数をそれぞれカウントし、全線虫のうちの麻痺した線虫の割合(麻痺率)を求めた。1回の測定においてこの操作を2回繰り返し、その平均値を各試験液の麻痺率とした。
(6)また、各試験液は所定時間後(1,3,6,8,12,24時間)にタッチミキサーで撹拌し、ピペットマンを用いてその0.1mlを1.5ml容チューブに入れ、ここに1mlの精製水を加えて撹拌後、3000rpm条件で3分間遠心分離して線虫を沈殿させ、上澄み1mlを除去し、再び精製水1mlを加えて撹拌後、同様に3000rpm条件で3分間遠心分離し、上澄み1mlを除去した後、精製水1mlを加えることにより、線虫を精製水で十分に洗浄した後、室温にて24時間静置した。24時間後、3000rpm条件で3分間遠心分離して線虫を沈殿させ、上澄みを取り除き、沈殿している線虫懸濁液全量をプレパラートに広げ、顕微鏡(40倍)にて観察し、動いている(生存)線虫と動かない(致死)線虫の数をそれぞれカウントし、全線虫のうちの致死した線虫の割合(致死率)を求めた。1回の測定においてこの操作を2回繰り返し、その平均値を各試験液の致死率とした。
4.試験結果
各試験化合物によるネコブセンチュウに対する麻痺・致死試験結果は、表1に示すとおりである。
各試験化合物によるネコブセンチュウに対する麻痺・致死試験結果は、表1に示すとおりである。
その結果、フマル酸およびコハク酸は400ppm条件においてもネコブセンチュウに対する麻痺、致死効果がほとんど認められなかった。一方、マレイン酸、ケイ皮酸、サリチル酸は40ppm条件でも数時間後から麻痺あるいは致死する傾向が認められた。なお、ケイ皮酸およびサリチル酸はエタノール水溶液であるため、同濃度のエタノール水溶液のみを用いてその影響を確認したが、ほとんど影響は認められなかった(対照1)。これらの結果から、線虫に対する麻痺および致死効果は、マレイン酸、ケイ皮酸、サリチル酸の順に高いことが示された。
実 施 例 2
有機酸とコハク酸またはフマル酸の併用による線虫麻痺・致死作用:
(1)サリチル酸
1.5ml容チューブに、10(v/v)%エタノール水溶液で濃度4000ppmに調整したサリチル酸液、濃度4000ppmのコハク酸水溶液またはフマル酸水溶液、精製水、密度調整済み線虫懸濁液を順に加え、1ml中にサリチル酸濃度が20ppmまたは40ppmとなる試験液、およびサリチル酸濃度が20ppmまたは40ppmと、コハク酸またはフマル酸濃度がサリチル酸濃度の10倍である200ppm、400ppmとが混合した試験液をそれぞれ作成した。各試験液について、実施例1と同様にしてネコブセンチュウの麻痺・致死試験を行った。結果を表2に示す。
有機酸とコハク酸またはフマル酸の併用による線虫麻痺・致死作用:
(1)サリチル酸
1.5ml容チューブに、10(v/v)%エタノール水溶液で濃度4000ppmに調整したサリチル酸液、濃度4000ppmのコハク酸水溶液またはフマル酸水溶液、精製水、密度調整済み線虫懸濁液を順に加え、1ml中にサリチル酸濃度が20ppmまたは40ppmとなる試験液、およびサリチル酸濃度が20ppmまたは40ppmと、コハク酸またはフマル酸濃度がサリチル酸濃度の10倍である200ppm、400ppmとが混合した試験液をそれぞれ作成した。各試験液について、実施例1と同様にしてネコブセンチュウの麻痺・致死試験を行った。結果を表2に示す。
サリチル酸20ppmあるいは40ppmに対し、コハク酸あるいはフマル酸を200ppmあるいは400ppm加えた条件は、サリチル酸20ppmあるいは40ppm単独条件よりも麻痺および致死効果が向上した。また、その向上効果はコハク酸よりも、フマル酸を加えた方がより高い傾向を示した。
(2)ケイ皮酸
1.5ml容チューブに、10(v/v)%エタノール水溶液で濃度4000ppmに調整したケイ皮酸液、濃度4000ppmのコハク酸水溶液またはフマル酸水溶液、精製水、密度調整済み線虫懸濁液を順に加え、1ml中にケイ皮酸濃度が10ppm、20ppmまたは40ppmとなる試験液、およびサリチル酸濃度が10ppm、20ppmまたは40ppmと、コハク酸またはフマル酸濃度がケイ皮酸濃度のそれぞれ10倍である100ppm、200ppm、400ppmとが混合した試験液をそれぞれ作成した。各試験液について、実施例1と同様にしてネコブセンチュウの麻痺・致死試験を行った。結果を表3に示す。
1.5ml容チューブに、10(v/v)%エタノール水溶液で濃度4000ppmに調整したケイ皮酸液、濃度4000ppmのコハク酸水溶液またはフマル酸水溶液、精製水、密度調整済み線虫懸濁液を順に加え、1ml中にケイ皮酸濃度が10ppm、20ppmまたは40ppmとなる試験液、およびサリチル酸濃度が10ppm、20ppmまたは40ppmと、コハク酸またはフマル酸濃度がケイ皮酸濃度のそれぞれ10倍である100ppm、200ppm、400ppmとが混合した試験液をそれぞれ作成した。各試験液について、実施例1と同様にしてネコブセンチュウの麻痺・致死試験を行った。結果を表3に示す。
ケイ皮酸10ppm、20ppmあるいは40ppmに対し、コハク酸あるいはフマル酸を100ppm、200ppmあるいは400ppm加えた条件は、ケイ皮酸10ppm、20ppmあるいは40ppm単独条件よりも麻痺および致死効果が向上した。また、その向上効果はコハク酸よりも、フマル酸を加えた方がより高い傾向を示し、この傾向はサリチル酸の場合よりも顕著であった。
(3)マレイン酸
1.5ml容チューブに、濃度4000ppmに調整したマレイン酸水溶液、濃度4000ppmのコハク酸水溶液またはフマル酸水溶液、精製水、密度調整済み線虫懸濁液を順に加え、1ml中にマレイン酸濃度が10ppm、20ppmまたは40ppmとなる試験液、およびサリチル酸濃度が10ppm、20ppmまたは40ppmと、コハク酸またはフマル酸濃度がマレイン酸濃度のそれぞれ10倍である100ppm、200ppm、400ppmとが混合した試験液をそれぞれ作成した。各試験液について、実施例1と同様にしてネコブセンチュウの麻痺・致死試験を行った。結果を表4に示す。
1.5ml容チューブに、濃度4000ppmに調整したマレイン酸水溶液、濃度4000ppmのコハク酸水溶液またはフマル酸水溶液、精製水、密度調整済み線虫懸濁液を順に加え、1ml中にマレイン酸濃度が10ppm、20ppmまたは40ppmとなる試験液、およびサリチル酸濃度が10ppm、20ppmまたは40ppmと、コハク酸またはフマル酸濃度がマレイン酸濃度のそれぞれ10倍である100ppm、200ppm、400ppmとが混合した試験液をそれぞれ作成した。各試験液について、実施例1と同様にしてネコブセンチュウの麻痺・致死試験を行った。結果を表4に示す。
マレイン酸10ppm、20ppmあるいは40ppmに対し、コハク酸あるいはフマル酸を100ppm、200ppmあるいは400ppm加えた条件は、マレイン酸10ppm、20ppmあるいは40ppm単独条件よりも麻痺および致死効果が向上した。また、その向上効果はコハク酸よりも、フマル酸を加えた方がより高い傾向を示し、この傾向はサリチル酸、ケイ皮酸の場合よりもさらに顕著であった。
実 施 例3
マレイン酸とフマル酸の併用による線虫麻痺・致死作用(1):
(1)マレイン酸またはフマル酸の単独使用
1.5ml容チューブにおいて、1ml中マレイン酸またはフマル酸が下記表5に示す濃度となるように各種試験液を調製し、試験液とネコブセンチュウの接触時間を3日間とした以外は実施例1と同様にしてネコブセンチュウの麻痺・致死試験を行った。結果を表5に示す。
マレイン酸とフマル酸の併用による線虫麻痺・致死作用(1):
(1)マレイン酸またはフマル酸の単独使用
1.5ml容チューブにおいて、1ml中マレイン酸またはフマル酸が下記表5に示す濃度となるように各種試験液を調製し、試験液とネコブセンチュウの接触時間を3日間とした以外は実施例1と同様にしてネコブセンチュウの麻痺・致死試験を行った。結果を表5に示す。
フマル酸単独では、500ppm濃度条件においてもほとんど麻痺および致死効果は認められなかった。一方、マレイン酸単独では、5.00ppmから約40%の麻痺率および約35%の致死率を示し、6.00ppmで約90%の麻痺率および約80%の致死率を示した。また、10.00ppmでは約75%の麻痺率および約90%の致死率を示した。
(2)マレイン酸とフマル酸の併用
1.5ml容チューブにおいて、1ml中マレイン酸とフマル酸が下記表6に示す濃度となるように各種試験液を調製し、試験液とネコブセンチュウの接触時間を3日間とした以外は実施例1と同様にしてネコブセンチュウの麻痺・致死試験を行った。結果を表6に示す。
1.5ml容チューブにおいて、1ml中マレイン酸とフマル酸が下記表6に示す濃度となるように各種試験液を調製し、試験液とネコブセンチュウの接触時間を3日間とした以外は実施例1と同様にしてネコブセンチュウの麻痺・致死試験を行った。結果を表6に示す。
表5に示すとおり、マレイン酸単独では、3〜4ppmの濃度でほとんど麻痺・致死作用を示さないのに対し、フマル酸を併用することで麻痺および致死率が著しく向上した(表6)。マレイン酸5〜6ppmの濃度でも、フマル酸を併用することで、麻痺および致死作用が顕著に増強されることが示された。
実 施 例 4
マレイン酸とフマル酸の併用による線虫麻痺・致死作用(2):
1.5ml容チューブにおいて、1ml中マレイン酸とフマル酸が下記表7に示す濃度となるように各種試験液を調製し、実施例1と同様にしてネコブセンチュウの麻痺・致死試験を行った。結果を表7に示す。
マレイン酸とフマル酸の併用による線虫麻痺・致死作用(2):
1.5ml容チューブにおいて、1ml中マレイン酸とフマル酸が下記表7に示す濃度となるように各種試験液を調製し、実施例1と同様にしてネコブセンチュウの麻痺・致死試験を行った。結果を表7に示す。
より短時間でも、マレイン酸とフマル酸を併用することで、マレイン酸単独よりも麻痺および致死率が向上することが示された。
実 施 例 5
マレイン酸とフマル酸又はフマル酸ナトリウムの併用による線虫麻痺・致死作用:
1.5ml容チューブにおいて、1ml中マレイン酸とフマル酸ナトリウムが下記表8に示す濃度となるように各種試験液を調製し、試験液とネコブセンチュウの接触時間を表中の時間とした以外は実施例1と同様にしてネコブセンチュウの麻痺・致死試験を行った。結果を表8に示す。
マレイン酸とフマル酸又はフマル酸ナトリウムの併用による線虫麻痺・致死作用:
1.5ml容チューブにおいて、1ml中マレイン酸とフマル酸ナトリウムが下記表8に示す濃度となるように各種試験液を調製し、試験液とネコブセンチュウの接触時間を表中の時間とした以外は実施例1と同様にしてネコブセンチュウの麻痺・致死試験を行った。結果を表8に示す。
この結果に示すとおり、マレイン酸単独で使用するよりも、フマル酸またはフマル酸ナトリウムを併用することでかなり麻痺および致死率が向上した。また、その効果はフマル酸ナトリウムよりもフマル酸の方がやや高かった。
本発明のネコブセンチュウ防除剤は、麻痺ないし殺線虫活性に優れ、かつ安全性が高く、環境や土壌生態系への影響も小さいものである。したがって、種々の作物の栽培に適用可能な環境への負荷が小さい防除技術として有用なものである。
Claims (3)
- 次の成分(A);
(A)マレイン酸、ケイ皮酸及びサリチル酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上
の有機酸
を有効成分として含有することを特徴とするネコブセンチュウ防除剤。 - さらに次の成分(B);
(B)フマル酸、コハク酸及びこれらの誘導体よりなる群から選ばれる1種又は2種以
上のジカルボン酸類
を含有する請求項1記載のネコブセンチュウ防除剤。 - 成分(A)と成分(B)の含有質量比((A):(B))が1:1〜1:200である請求項1または2記載のネコブセンチュウ防除剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015117968A JP2017001988A (ja) | 2015-06-11 | 2015-06-11 | ネコブセンチュウ防除剤 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2017001988A true JP2017001988A (ja) | 2017-01-05 |
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ID=57751317
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2017001988A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN111920765A (zh) * | 2020-09-24 | 2020-11-13 | 河北新世纪药业有限公司 | 一种复方伊维菌素注射液及其制备方法 |
WO2021007385A1 (en) * | 2019-07-09 | 2021-01-14 | Arizona Board Of Regents On Behalf Of The University Of Arizona | Compositions and methods for treating plant parasites |
-
2015
- 2015-06-11 JP JP2015117968A patent/JP2017001988A/ja active Pending
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WO2021007385A1 (en) * | 2019-07-09 | 2021-01-14 | Arizona Board Of Regents On Behalf Of The University Of Arizona | Compositions and methods for treating plant parasites |
CN111920765A (zh) * | 2020-09-24 | 2020-11-13 | 河北新世纪药业有限公司 | 一种复方伊维菌素注射液及其制备方法 |
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