JP4528982B2 - ネコブセンチュウ防除剤および防除方法 - Google Patents
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Description
<植物寄生性センチュウ>
・サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita Cofoid et White)
滅菌水を入れたシャーレにキムワイプを入れ、沖縄県中頭郡うるま市与那城西原の原寄
生ナスから採取した卵のうを置き、25℃のインキュベーターで孵化させ、孵化した2
期幼虫をパスツールピペットで回収し、ミニトマト「ちびっこ」(Lycopersicum esculentum Mill.)に接種し、増殖させたサツマイモネコブセンチュウの2期幼虫を用いた。
・アレナリアネコブセンチュウ(Meloidogyne arenaria (Neal) Chitwood)
九州沖縄農業研究センター(〒861−1192 熊本県合志市須屋2421)の岩堀英晶氏から分譲して頂いたセンチュウ汚染土壌にミニトマトを植え、寄生させた後、上記と同様に卵のうを採取し、孵化させた2期幼虫をパスツールピペットで回収し、トマト「ちびっこ」に接種し、増殖させたアレナリアネコブセンチュウの2期幼虫を用いた。
サツマイモネコブセンチュウ2期幼虫に対する植物抽出物の効果(1):
(1)植物抽出物の製造
採取直後の、表1に示す各植物の全草2gをそれぞれ容器に入れ、そこに30%の水および70%のエタノールの混合液(以下、「70%エタノール」という)を15ml添加し、25℃で10日間静置してアルコール抽出物(生)を製造した。また、表1に示す各植物の全草を採取後、乾燥機を用い、90℃で1時間乾燥させたものについてもアルコール抽出物(乾燥)を製造した。これらのアルコール抽出物の0.1mlを以下の実験に用いた。
上記(1)で製造した各植物から得られたアルコール抽出物(生および乾燥)を、1ml容量のメスピペットを使って、5ml容量の滅菌済小型試験管に0.1ml添加し、完全に乾燥するまでクリーンベンチ内で1〜2日間風乾させた。その試験管に1mlピペットでサツマイモネコブセンチュウ2期幼虫懸濁液(100頭/0.1ml)を添加し、7日後に不動化した2期幼虫を計数した。実験は5反復行った。不動化率は試験に使用したサツマイモネコブセンチュウのうち、不動化(動かなくなった)したサツマイモネコブセンチュウの割合である。各植物から得られたアルコール抽出物のサツマイモネコブセンチュウの不動化率を表1に示した。
表1より、キク科植物のアワユキセンダングサ、ヒメジョオン、オオアレチノギクのアルコール抽出物(生および乾燥のいずれも)は、サツマイモネコブセンチュウを高い割合で不動化することがわかった。
サツマイモネコブセンチュウ2期幼虫に対する植物抽出物の効果(2):
採取直後の、表2に示す各植物の根を除く全草部分10gをビーカーに入れ、それに蒸留水を50ml添加した。次いで、これを30分間煮沸して煮沸抽出物(生)を製造した。また、採取後の表2に示す各植物の根を除く全草部分を乾燥機で90℃で1時間乾燥させたものについても上記と同様に煮沸抽出物(乾燥)を製造した。これらの煮沸抽出物をそれぞれ蒸留水で1/10または1/20に希釈したものを用いて、実施例1の(2)と同様にしてサツマイモネコブセンチュウの不動化率を測定した。
サツマイモネコブセンチュウ2期幼虫に対するアワユキセンダングサの部位別抽出
物の効果:
表3に示すアワユキセンダングサの各部位の煮沸抽出物(乾燥)を実施例2と同様に製造した。この煮沸抽出物(乾燥)を原液のままの状態および1/10または1/50に蒸留水で希釈した。これらを、1ml容量のメスピペットを使って、5ml容量の滅菌済小型試験管に0.1ml添加し、完全に乾燥するまでクリーンベンチ内で1〜2日間風乾させた。その試験管にマイクロピペットでサツマイモネコブセンチュウ2期幼虫懸濁液(100頭/0.1ml)を添加し、放置した。7日経過後に、各試験間からセンチュウを含む液をパスツールピペットで採取し、滅菌水に入れ別の試験管に移した。試験管ミキサーで撹拌後、25℃条件下に置き、不動化したセンチュウを致死と見なし、致死した2期幼虫を計数した。致死率は試験に使用したサツマイモネコブセンチュウのうち、致死したサツマイモネコブセンチュウの割合で示した。アワユキセンダングサの各部位の煮沸抽出物(乾燥)のサツマイモネコブセンチュウの致死率も表3に示した。
サツマイモネコブセンチュウの孵化に対するアワユキセンダングサ煮沸抽出物
(乾燥)の効果:
アワユキセンダングサの根を除く全草の煮沸抽出物(乾燥)を実施例2と同様に製造した。これを蒸留水で1/2、1/3、1/10、1/20、1/100または1/200に希釈した。各希釈液に、サツマイモネコブセンチュウの卵のうを解剖用メスを用いて1個入れ、25℃に維持した。卵のう浸漬後3日、6日および9日後に、パスツールピペットを用いて抽出液に含まれるサツマイモネコブセンチュウ2期幼虫を計数し、孵化率を調べた。実験は5反復行い、孵化率は百分率で算出した。その結果を図2に示した。また、対照としては滅菌蒸留水を用いた。
サツマイモネコブセンチュウ2期幼虫の忌避行動に対するアワユキセンダングサ煮沸抽出物(乾燥)の効果:
アワユキセンダングサの根を除く全草の煮沸抽出物(乾燥)は実施例2と同様に製造した。この煮沸抽出物(乾燥)の原液のままのものおよびこれを蒸留水で1/10に希釈したものを試料とした。次に、滅菌済シャーレに素寒天培地(寒天:20g、蒸留水:1,000ml)を10ml分注後、凝固させた。凝固後の平板培地裏面の中心に黒マジックで直径2cmの円を描き,その円内に植物体抽出物(乾燥)の原液および1/10希釈液をマイクロピペットで異なるシャーレに3.5μl滴下し、クリーンベンチ内で10分間風乾させた。対照区として滅菌水(3.5μl)を滴下した。その後、それぞれの円内にマイクロピペットを用いてサツマイモネコブセンチュウ懸濁液(100頭/3.5μl)を添加した後、25℃条件下に静置し、30、60、120、180、240、300および360分間後に円内の2期幼虫を計数した。実験は5反復行った。その結果を図3に示した。また、対照としては滅菌蒸留水を用いた。
トマトの生育および根こぶ形成に及ぼすアワユキセンダングサ煮沸抽出物(乾燥)
の灌注処理の効果:
1/5,000aワグネルポットに滅菌した供試土壌(市販の島尻マージ(商品名:島尻赤土、緑土産業株式会社製)とバーミキュライトを4:1の割合で混和し、これを元肥として有機肥料を10aあたり3t換算で混和したもの)を重鎮し、これに約10cmに生育したトマト(「ちびっこ」(Lycopersicum esculentum Mill.))の苗を定植した。薬剤区としてホスチアゼート粒剤(20kg/10a)を設置した。定植から2日後、10mlメスピペットを用いてポット当たりサツマイモネコブセンチュウ懸濁液(1,000頭/10ml)を接種し、実施例3では、根を除く全部位のアワユキセンダングサ煮沸抽出液(乾燥)の1/10〜1/50希釈液で高い殺虫効果が認められたことから、1/10および1/20希釈液の40mlを複数回灌注した。各処理区は以下の通りである。
1/10(3):1/10に希釈したアワユキセンダングサ煮沸抽出物の灌注を3回行
ったもの。
1/10(6):1/10に希釈したアワユキセンダングサ煮沸抽出物の灌注を6回行
ったもの。
1/10(9):1/10に希釈したアワユキセンダングサ煮沸抽出物の灌注を9回行
ったもの。
1/20(6):1/20に希釈したアワユキセンダングサ煮沸抽出物の灌注を6回行
ったもの。
1/20(9):1/20に希釈したアワユキセンダングサ煮沸抽出物の灌注を9回行
ったもの。
薬剤:ホスチアゼート粒剤(20kg/10a)を土壌混和したもの。
無処理:アワユキセンダングサ煮沸抽出物の灌注および薬剤の散布のいずれもしていな
いもの
根こぶの程度を以下の評価基準に従って判定し、更に以下の式により根こぶ指数を算出した。
(評価) (内容)
0: 根こぶ無し。
1: 根こぶが僅かに認められるが、被害は目立たない。
2: 一見して根こぶが認められる。大きな根こぶや連続した根こぶは少ない。
3: 大小の根こぶが多数認められる。根こぶに覆われて太くなった根も見られるが 、根域全体の50%以下。
4: 多くの根が根こぶだらけで太くなっている。
土壌中のセンチュウ数はベルマン法によって計数した。方法の手順としては、まず、網皿に和紙フィルターを1枚敷き、ガラス漏斗(直径9cm)にゴム管(直径11mm)を取り付け、ピンチコックで止めた。その後、十分混合したサンプル土壌を20gずつ網皿に入れ、底を床に軽く打ちつけて土壌を均等に広げた。さらに、その網皿を漏斗にセットし、網皿の下部が浸るように水を補給した。水の補給の際に空気が入ってないか確認した後、上側をポリフィルムで覆い、48時間分離を継続した。その間不足した水は適宜補給した。分離を行う際の温度はセンチュウが活動しやすい25℃前後とした。48時間後にピンチコックをはずし、水を試験管に10ml測り取り、センチュウが沈殿した後に計数した。実験は3反復行った。
トマトの生育および根こぶ形成に及ぼすアワユキセンダングサ煮沸抽出物(乾燥)
の根浸漬処理の効果:
アワユキセンダングサの根を除く全草の煮沸抽出物(乾燥)を実施例2と同様に製造した。この煮沸抽出物(乾燥)を原液のまままたはこの原液を滅菌蒸留水で1/2、1/10に希釈した希釈液および滅菌蒸留水をそれぞれ30mlずつ滅菌済シャーレ(直径6cm)に入れた。次にそれらのシャーレに草丈約10cmのトマト(「ちびっこ」)の根を30分間浸漬した後、1/5,000aワグネルポットに滅菌した供試土壌(市販の島尻マージとバーミキュライトを4:1の割合で混和し、これを元肥として有機肥料を10aあたり3t換算で混和したもの)を重鎮し、定植した。また、無処理区には滅菌水を設置し、薬剤区にはホスチアゼート粒剤(20kg/10a換算)を設置した。各処理区は以下の通りである。
原液:アワユキセンダングサ煮沸抽出物にトマトの根を浸漬したもの。
1/2:1/2に希釈したアワユキセンダングサ煮沸抽出物にトマトの根を浸漬した
もの。
1/10:1/10に希釈したアワユキセンダングサ煮沸抽出物にトマトの根を浸漬し
たもの。
薬剤:ホスチアゼート粒剤(20kg/10a)を土壌混和したもの。
無処理:滅菌蒸留水にトマトの根を浸漬したもの。
トマトの生育および根こぶ形成に及ぼすアワユキセンダングサ煮沸抽出物(乾燥)
の種子浸漬処理の効果:
アワユキセンダングサの根を除く全草の煮沸抽出物(乾燥)を実施例2と同様に製造した。この煮沸抽出物(乾燥)の原液のままのものおよびこの原液を滅菌蒸留水で1/2、1/10に希釈した希釈液を試料とした。これらにトマト(「ちびっこ」)の種子を30分間または60分間浸漬した後、キムワイプ上で乾燥させた。比較としては、滅菌蒸留水を用いた。滅菌した供試土壌(市販の島尻マージとバーミキュライトを4:1の割合で混和し、これを元肥として有機肥料を10aあたり3t換算で混和したもの)に浸漬処理された種子を植え、人工気象器内で約2ヶ月栽培後、ビニールポットに定植した。各処理区は以下の通りである。
原液(30):アワユキセンダングサ煮沸抽出物にトマトの種子を30分間浸漬した
もの。
原液(60):アワユキセンダングサ煮沸抽出物にトマトの種子を60分間浸漬した
もの。
1/2(30):1/2に希釈したアワユキセンダングサ煮沸抽出物にトマトの種子を
30分間浸漬したもの。
1/2(60):1/2に希釈したアワユキセンダングサ煮沸抽出物にトマトの種子を
60分間浸漬したもの。
1/10(30):1/10に希釈したアワユキセンダングサ煮沸抽出物にトマトの種
子を30分間浸漬したもの。
1/10(60):1/10に希釈したアワユキセンダングサ煮沸抽出物にトマトの種
子を60分間浸漬したもの。
滅菌蒸留水(30):滅菌蒸留水にトマトの種子を30分間浸漬したもの。
滅菌蒸留水(60):滅菌蒸留水にトマトの種子を60分間浸漬したもの。
アレナリアネコブセンチュウの運動に及ぼすアワユキセンダングサ煮沸抽出物
(乾燥)の効果:
アワユキセンダングサの根を除く全草の煮沸抽出物(乾燥)を実施例2と同様に製造した。この煮沸抽出物(乾燥)の原液のままのものおよびこの原液を1/2、1/10、1/20および1/100に希釈した希釈液を試料とした。この試料1mlにマイクロピペット(20〜200μl)を用いてアレナリアネコブセンチュウ懸濁液(100頭/0.1ml)を接種し、光学顕微鏡下で観察し、致死率を実施例3と同様にして算出した。それらの結果を表7に示した。実験は5反復行い、致死率は百分率で算出した。
主要作物に対するアワユキセンダングサ煮沸抽出物(乾燥)の効果:
1/5,000aワグネルポットに滅菌した供試土壌(市販の島尻マージ(商品名:島尻赤土、緑土産業株式会社製)とバーミキュライトを4:1の割合で混和し、これを元肥として有機肥料を10aあたり3t換算で混和したもの)を重鎮した。これに、播種後10日目の供試作物(ナス(品種名:くろすけ(Solanum melongena L.))、インゲン(品種名:丸莢プロバイダー(Phaseolus vulgaris L.))およびツルレイシ(品種名:あばしゴーヤー(Momordica charantia L.)))を定植した。この定植した作物に、実施例2と同様に製造したアワユキセンダングサの根を除く全草の煮沸抽出物(乾燥)の原液、1/10および1/20希釈液の10mlを複数回灌注した。各処理区は以下の通りである。
1/10(12):1/10に希釈したアワユキセンダングサ煮沸抽出物の灌注を12
回行ったもの。
1/20(12):1/20に希釈したアワユキセンダングサ煮沸抽出物の灌注を12
回行ったもの。
滅菌蒸留水:滅菌蒸留水の灌注を12回行ったもの。
Claims (6)
- アワユキセンダングサ(Bidens pilosa .var.radiata Scherff)、タチアワユキセンダングサ(Bidens pilosa L. var. radiata Sch. Bip.)、ハイアワユキセンダングサ(Bidens pilosa L. var. radiata Scherff.f.decumbens Scherff.)、ヒメジョオン(Stenactis annuus (L.)Cass.)、オオアレチノギク(Erigeron sumatrensis Retz.)およびセイタカアワダチソウ(Solidago altissima L.)よりなる群から選ばれる1種または2種以上のキク科植物の抽出物を有効成分とすることを特徴とするネコブセンチュウ防除剤。
- アワユキセンダングサ(Bidens pilosa .var.radiata Scherff)、ヒメジョオン(Sten
actis annuus (L.) Cass.)、オオアレチノギク(Erigeron sumatrensis Retz.)およびセイタカアワダチソウ(Solidago altissima L.)よりなる群から選ばれる1種または2種以上のキク科植物の抽出物を有効成分とすることを特徴とするネコブセンチュウ防除剤。 - アワユキセンダングサ(Bidens pilosa .var.radiata Scherff)、ヒメジョオン(Sten
actis annuus (L.) Cass.)およびオオアレチノギク(Erigeron sumatrensis Retz.)よりなる群から選ばれる1種または2種以上のキク科植物の抽出物を有効成分とすることを特徴とするネコブセンチュウ防除剤。 - 土壌中に、請求項1ないし3の何れかの項記載の防除剤を灌注することを特徴とするネコブセンチュウ防除方法。
- 植物の根を、請求項1ないし3の何れかの項記載の防除剤に浸漬することを特徴とするネコブセンチュウ防除方法。
- 植物の種子を、請求項1ないし3の何れかの項記載の防除剤に浸漬することを特徴とするネコブセンチュウ防除方法。
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