以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
−エンジン冷却装置の構成−
図1は、本発明の実施形態1に係るエンジン冷却装置Aの構成を模式的に示し、図2は、シリンダヘッドをその上下方向と直角をなす平面に沿って切った断面を示す。このエンジン冷却装置Aは、エンジン(例えば直接噴射式の直列4気筒4バルブエンジン)の本体部10を構成するシリンダブロック11及びシリンダヘッド12にそれぞれ形成されたウォータジャケット13,14と、外気によって冷却水(冷却液)を冷やすために車両の前部等に配設されたラジエータ15と、このラジエータ15及びエンジン本体部10の間で冷却水を循環させるための第1及び第2通路16,17と、ラジエータ15を迂回してシリンダヘッド12のウォータジャケット14との間で冷却水を循環させるためのサブ通路18と、シリンダブロック11のウォータジャケット13に冷却水を送給するための第1電動ウォータポンプ(以下、単に第1電動ポンプという)19と、シリンダヘッド12のウォータジャケット14に冷却水を送給するための第2電動ウォータポンプ(以下、単に第2電動ポンプという)20とを備えている。尚、シリンダブロック11のウォータジャケット13、シリンダヘッド12のウォータジャケット14、並びに第1及び第2通路16,17がメイン回路を、サブ通路18、後述のタンク通路21、後述のノズル通路22、ウォータジャケット14、及び第1通路16がサブ回路を、これらのメイン回路及びサブ回路が冷却水回路(冷却液回路)を構成している。
シリンダブロック11のウォータジャケット13は、4つのシリンダ(図示せず)の外周を囲むようにしてシリンダブロック11の長手方向(シリンダ(気筒)列方向であり、以下、エンジン前後方向ともいう)全体に亘って形成され、その前端部に形成された冷却水入口が第2通路17の下流端部に連通している。
また、シリンダブロック11のウォータジャケット13は、シリンダブロック11のトップデッキに形成された複数の孔部(図示せず)と、シリンダヘッド12のボトムデッキに形成された複数の孔部とを介して、シリンダヘッド12のウォータジャケット14にも連通しており、これにより、上記のようにシリンダブロック11のウォータジャケット13を流れる冷却水は、順次、シリンダヘッド12のウォータジャケット14に流通するようになっている。
シリンダヘッド12のウォータジャケット14(ヘッド側ウォータジャケット)は、各シリンダの吸排気ポート12a,12bやプラグホール12cの外周を包み込むようにしてシリンダヘッド12の長手方向全体に亘って形成されている。ウォータジャケット14における各シリンダに並設された2つの排気ポート12b,12bの間の冷却水の流れは、両排気ポート12b,12bの間隔が狭いため、淀みやすい。
シリンダヘッド12のウォータジャケット14は、ウォータジャケット14において冷却水が少なくともシリンダ列方向に流れるように、その前端部に冷却水入口14aが、その後端部に冷却水出口(図示せず)が形成され、その冷却水出口が第1通路16の上流端部に連通している。これにより、シリンダヘッド12のウォータジャケット14を流通した比較的高温の冷却水は、第1通路16に流出するようになる。
尚、冷却水回路の通水抵抗は、主にシリンダブロック11及びシリンダヘッド12のウォータジャケット13,14の通水抵抗に依存しており、本実施形態では、高抵抗になっている。また、冷却水回路の通水抵抗が高抵抗であれば、第1及び第2電動ポンプ19,20の駆動損失は大きくなる。
また、シリンダヘッド12におけるエンジン幅方向の排気側の端部には、各燃焼室(図示せず)の頂壁部のエンジン幅方向外側にタンク通路21が気筒列方向に延びるように形成されている。
シリンダヘッド12には、シリンダの両排気ポート12b,12bの間のバルブブリッジ部12d(要冷却部。以下、EVBともいう)を指向するノズル通路22(冷却促進通路)がエンジン幅方向外側から内側に延びるように各シリンダ毎に形成されている。各ノズル通路22の上流端部は、タンク通路21と連通している一方、その下流端部は、シリンダヘッド12のウォータジャケット14と連通している。各バルブブリッジ部12dは、各燃焼室の頂壁部を構成しており、両排気ポート12b,12bの間に位置するため、一般に、温度上昇しやすい。本実施形態では、各バルブブリッジ部12の温度信頼性は、高くなっており、温度上昇しにくくなっている。
尚、図2中の12eは、シリンダヘッド12の吸気側に形成された、燃料を直接燃焼室に噴射するためのインジェクタ(図示せず。以下、「Inj.」ともいう)が装着される装着孔である。
また、第1通路16の下流端部はラジエータ15のアッパタンクに接続されており、第1通路16内を流通した比較的高温の冷却水は、ラジエータ15において外気と熱交換して冷却された後に、ラジエータ15のロワタンクに接続されている第2通路17に流出する。
サブ通路18は、第1通路16におけるエンジン本体部10の冷却水出口(シリンダヘッド12のウォータジャケット14の冷却水出口)とラジエータ15との間から分岐している。サブ通路18の下流端部は、タンク通路21の冷却水入口21aに連通している。
第1電動ポンプ19は、第2通路17に配設されていて、例えばインペラの回転によって冷却水を送り出す従来周知の遠心式のものであり、そのインペラのシャフトに接続された電動モータの作動が、制御手段としてのエンジンコントロールユニット23(以下、ECUという)の第1ポンプ制御部23aによって制御されるようになっている。言い換えると、第1電動ポンプ19は、ECU23の第1ポンプ制御部23aによりその作動状態を制御され、メイン回路におけるラジエータ15とエンジン本体部10の冷却水入口との間の冷却水の流通状態を変更可能な第1電動ウォータポンプを構成している。
第2電動ポンプ20は、サブ通路18に配設されていて、例えばインペラの回転によって冷却水を送り出す従来周知の遠心式のものであり、そのインペラのシャフトに接続された電動モータの作動が、ECU23の第2ポンプ制御部23bによって制御されるようになっている。言い換えると、第2電動ポンプ20は、ECU23の第2ポンプ制御部23bによりその作動状態を制御され、サブ通路18における冷却水の流通状態を変更可能な第2電動ウォータポンプを構成している。
ECU23は、周知の如くCPUやメモリ、I/Oインターフェース回路、ドライバ回路等を備えて、エンジンの運転制御のために各シリンダ毎の燃料噴射制御や点火時期制御を行うものであるが、これに加えて、この実施形態では、主にエンジンの温度や負荷状態、回転数等に応じて、第1電動ポンプ19や第2電動ポンプ20の作動を制御するようになっている。
すなわち、この実施形態では、ECU23は、少なくとも、エンジンの負荷状態を検出するためのセンサ24(例えば車両のアクセル開度センサやエアフローセンサ等であり、以下、負荷状態センサと呼ぶ)からの信号と、エンジン回転数センサ25からの信号と、例えば第1通路16におけるシリンダヘッド12のウォータジャケット14の冷却水出口近傍に配設された水温センサ26からの信号とを入力して、これによりエンジンの状態を判定し、これに応じて第1電動ポンプ19や第2電動ポンプ20への出力電圧を制御するようになっている。
以上のように構成されたエンジン冷却装置Aにおける冷却水の全体的な流れは、図3に模式的に示すようになる。同図は、第1電動ポンプ19が作動していないときの流れを矢印で示し、第2電動ポンプ20によってサブ通路18を流通した冷却水は、タンク通路21、ノズル通路22を介して、シリンダヘッド12のウォータジャケット14に流入した後に、その排気側をシリンダ列方向に流れ、その後、第1通路16を流通した後に、第2電動ポンプ20の吸入側に戻される。つまり、第1電動ポンプ19が作動していないときには、冷却水は、サブ通路18、タンク通路21、ノズル通路22、ウォータジャケット14、及び第1通路16によって構成されるサブ回路を流通する。このとき、第1電動ポンプ19が作動していないことから、ラジエータ15との間では冷却水は流れない。尚、当然ながら、第2電動ポンプ20が作動しなければ、上記のような冷却水の流れは起きず、対流による流れを除いて冷却水は略停止することになる。
一方、第1電動ポンプ19が作動しているときには、第1電動ポンプ19からの冷却水は、図4に矢印で示すように第2通路17を流通した後に、シリンダブロック11及びシリンダヘッド12のウォータジャケット13,14を流通し、その後、第1及び第2通路16,17を流通した後に、第1電動ポンプ19の吸入側に戻されるようになる。このとき、第1電動ポンプ19が作動していることから、ラジエータ15との間で冷却水は流れる。また、第2電動ポンプ20からの冷却水は、サブ通路18、タンク通路21、及びノズル通路22を流通した後に、シリンダヘッド12のウォータジャケット14に流入し、ウォータジャケット14をシリンダ列方向に流れるラジエータ15からの冷却水と合流する。
−第1及び第2電動ポンプの作動制御−
次に、ECU23の第1及び第2ポンプ制御部23a,23bによる第1及び第2電動ポンプ19,20の作動制御について説明する。これらの第1及び第2電動ポンプ19,20への出力電圧の制御は、デューティ比の変更によって出力電圧の大きさを調整する所謂デューティ制御であり、制御デューティ比を0〜100%の範囲で変更することにより、出力電圧を例えば0.5〜12Vくらいの所定範囲内において略リニアに変更して、第1及び第2電動ポンプ19,20の回転数をきめ細かく且つ高精度に制御することができる。
また、第1及び第2ポンプ制御部23a,23bは、制御デューティ比を予め設定した時間間隔で切り替えて、第1及び第2電動ポンプ19,20にパルス状に電圧を供給することにより、第1及び第2電動ポンプ19,20を一定の周期で間欠的に作動させることができるようになっている。そして、そのように第1及び第2電動ポンプ19,20を作動させるパルス制御モードと、第1及び第2電動ポンプ19,20を連続的に作動させながら、その回転数をエンジンの状態に応じて変更する通常制御モードとに切り替えて、第1及び第2電動ポンプ19,20の作動状態を制御する。
<エンジン暖機中の第1及び第2電動ポンプの作動制御>
次に、ECU23の第1及び第2ポンプ制御部23a,23bによるエンジン暖機中の第1及び第2電動ポンプ19,20の作動制御について説明する。
第1ポンプ制御部23aは、エンジン暖機中は、第1電動ポンプ19を作動しない。また、第2ポンプ制御部23bは、エンジン暖機中であって、エンジン冷間始動から後述の設定時間t1が経過するまでは、第2電動ポンプ20を作動しない。
一方、第2ポンプ制御部23bは、エンジン暖機中であって、エンジン冷間始動から設定時間t1が経過した後に、第2電動ポンプ20のパルス制御モードを行う。このパルス制御モードは、第2電動ポンプ20を相対的に低い頻度で間欠的に作動させる第1パルス制御モードと、サブ通路18における冷却水の流通量が第1パルス制御モードにおいて第2電動ポンプ20を間欠的に作動させたときの流通量よりも多くなるように第2電動ポンプ20を相対的に高い頻度で間欠的に作動させる第2パルス制御モードとからなる。より詳細に、第2電動ポンプ20の第2パルス制御モードでの運転時におけるその間欠的な作動時間及び停止時間は、それぞれ、第2電動ポンプ20の第1パルス制御モードでの運転時におけるその間欠的な作動時間及び停止時間よりも長くなっており、また、第2パルス制御モードでの運転時におけるその間欠的な作動時の冷却水の流量は、第1パルス制御モードでの運転時におけるその間欠的な作動時の冷却水の流量よりも多くなっている。
第1パルス制御モードにおいて第2電動ポンプ20を間欠作動させると、エンジン本体部10内のウォータジャケット14における冷却水の流通は平均的には殆ど停止に近い状態になり、暖機が促進されるとともに、第2電動ポンプ20の作動時にはウォータジャケット14内の冷却水全体が微量に変位し、僅かに移動するようになり、これによりシリンダ周辺、特にバルブブリッジ部12d近傍の冷却液の僅かな移動に伴い局所的な温度上昇を抑制して部分沸騰を防止することができる。
一方、第2パルス制御モードでは、上記第1パルス制御モードよりもサブ通路18における冷却水の流量(時間平均的な流通量)が多くなるように第2電動ポンプ20を相対的に高い頻度で間欠作動させる。この結果、エンジン本体部10内のウォータジャケット14において冷却水は、断続的ではあるがその移動量が増すようになる。
<エンジン暖機完了後の第1及び第2電動ポンプの作動制御>
次に、ECU23の第1及び第2ポンプ制御部23a,23bによるエンジン暖機完了後の第1及び第2電動ポンプ19,20の作動制御について説明する。
エンジン暖機完了後の第1及び第2電動ポンプの制御モードは、燃費を優先的に向上させる燃費優先制御モードと、トルクを優先的に向上させるトルク優先制御モードと、バルブブリッジ部12dを優先的に冷却するEVB優先制御モードと、インジェクタを優先的に冷却するInj.優先制御モードとからなる。
[燃費優先制御モード]
以下に、燃費優先制御モードについて説明する。
燃費優先制御モードは、エンジン暖機完了後であって、エンジンの状態が低負荷低回転状態のときに行われる。燃費優先制御モードでは、第2通路17における冷却水の流通量が比較的低流量の流通量になるように第1電動ポンプ19を比較的低い頻度で間欠的に作動させるとともに、サブ通路18における冷却水の流通量が、上記第2パルス制御モードにおいて第2電動ポンプ20を間欠的に作動させたときの流通量や第2通路17における冷却水の流通量よりも多い比較的低流量の流通量f1に維持されるように第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。より詳細に、第2電動ポンプ20の燃費優先制御モードでの運転時における冷却水の流量は、第2電動ポンプ20の第2パルス制御モードでの運転時におけるその間欠的な作動時の冷却水の流量や、第1電動ポンプ19の燃料優先制御モードでの運転時におけるその間欠的な作動時の冷却水の流量f2よりも多くなっている。
[トルク優先制御モード]
以下に、トルク優先制御モードについて説明する。
トルク優先制御モードは、エンジン暖機完了後であって、エンジンの状態が高負荷低回転状態のときに行われる。尚、エンジンの状態が高負荷低回転状態のときには、バルブブリッジ部12b等、各種の温度信頼性は確保されており、これは問題とならない。
そこで、トルク優先制御モードでは、まず、第2通路17における冷却水の流通量が時間の経過と比例して多くなるように第1電動ポンプ19を連続的に作動させるとともに、サブ通路18における冷却水の流通量が時間の経過と比例して多くなるように第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。
次に、トルク優先制御モードでの運転開始から後述の設定時間t3が経過すれば、サブ通路18における冷却水の流通量が上記流通量f1よりも多い比較的高流量の流通量f3(第3流通量)に維持されるように第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。
次に、トルク優先制御モードでの運転開始から後述の設定時間t4が経過すれば、第2通路17における冷却水の流通量が上記流通量f2,f3よりも多い比較的高流量の流通量f4(第1流通量)に維持されるように第1電動ポンプ19を連続的に作動させるとともに、サブ通路18における冷却水の流通量が時間の経過と比例して少なくなるように第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。
次に、トルク優先制御モードでの運転開始から後述の設定時間t5が経過すれば、第2通路17における冷却水の流通量が段階的に少なくなるように第1電動ポンプ19を連続的に作動させる。
次に、トルク優先制御モードでの運転開始から後述の設定時間t6が経過すれば、サブ通路18における冷却水の流通量が段階的に多くなるように第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。
次に、トルク優先制御モードでの運転開始から後述の設定時間t7が経過すれば、第2通路17における冷却水の流通量が上記流通量f2よりも多く上記流通量f4よりも少ない比較的低流量の流通量f5(第2流通量)に維持されるように第1電動ポンプ19を連続的に作動させる。
次に、トルク優先制御モードでの運転開始から後述の設定時間t8が経過すれば、サブ通路18における冷却水の流通量が上記流通量f1,f5よりも多く上記流通量f3よりも少ない流通量f6(第4流通量)に維持されるように第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。
[EVB優先制御モード]
以下に、EVB優先制御モードについて説明する。
EVB優先制御モードは、エンジン暖機完了後であって、エンジンの状態が高負荷高回転状態のときに行われる。
EVB優先制御モードでは、まず、第2通路17における冷却水の流通量が時間の経過と比例して多くなるように第1電動ポンプ19を連続的に作動させるとともに、サブ通路18における冷却水の流通量が時間の経過と比例して多くなるように第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。
次に、EVB優先制御モードでの運転開始から後述の設定時間t9が経過すれば、サブ通路18における冷却水の流通量が上記流通量f1よりも多い比較的高流量の流通量f7に維持されるように第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。
次に、EVB優先制御モードでの運転開始から後述の設定時間t10が経過すれば、第2通路17における冷却水の流通量が上記流通量f2よりも多く上記流通量f7よりも少ない比較的高流量の流通量f8に維持されるように第1電動ポンプ19を連続的に作動させるとともに、サブ通路18における冷却水の流通量が時間の経過と比例して少なくなるように第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。
次に、EVB優先制御モードでの運転開始から後述の設定時間t11が経過すれば、サブ通路18における冷却水の流通量が上記流通量f1,f8よりも少ない比較的低流量の流通量f9に維持されるように第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。
[Inj.優先制御モード]
以下に、Inj.優先制御モードについて説明する。
Inj.優先制御モードは、エンジン暖機完了後であって、エンジンの状態が低負荷高回転状態のときに行われる。尚、エンジンの状態が低負荷高回転状態のときには、バルブブリッジ部12b等、シリンダヘッド12の排気側の温度信頼性は確保されており、これは問題とならない。また、エンジンの負荷状態が高負荷状態のときには、インジェクタは流動燃料の増大により自己冷却されており、その温度信頼性は問題とならない。
そこで、Inj.優先制御モードでは、まず、第2通路17における冷却水の流通量が時間の経過と比例して少なくなるように第1電動ポンプ19を連続的に作動させるとともに、サブ通路18における冷却水の流通量が上記流通量f1よりも少ない比較的低流量の流通量f10に維持されるように第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。
次に、Inj.優先制御モードでの運転開始から後述の設定時間t12が経過すれば、第2通路17における冷却水の流通量が上記流通量f1,f2よりも多く上記流通量f8よりも少ない比較的高流量の流通量f11に維持されるように第1電動ポンプ19を連続的に作動させる。
−エンジン始動後の制御手順−
以下に、エンジンの始動後にECU23によって行われる第1及び第2電動ポンプ19,20の具体的な制御手順を説明する。
<エンジン冷機時の制御手順>
最初に、エンジン冷機時のECU23によって行われる第1及び第2電動ポンプ19,20の具体的な制御手順を、図1〜図3、図5を参照して説明する。図5は、冷却水の流通状態の時間変化を示すタイムチャートであり、同図の実線は、サブ通路18(サブ回路)における冷却水の流量の時間変化を、破線は、第2通路17(メイン回路)における冷却水の流量の時間変化を示している。
まず、第1及び第2電動ポンプ19,20を停止状態とする。これにより、第2通路17及びサブ通路18において、すなわち、冷却水回路において冷却水の流通状態が流通停止状態になる。そして、水温センサ26により検出した始動時のエンジン水温から冷間始動かどうか判定する。
その判定が冷間始動であれば、エンジン始動後に第2電動ポンプ20の運転を開始するまでの設定時間t1が経過したかどうか判定する。この設定時間t1は、始動時のエンジン水温に対応する適値を予め実験等により決定して、例えばテーブルに設定しておき、このテーブルから読み込むようにすればよい。
設定時間t1が経過していないならば、時間の経過を待つ間、第1及び第2電動ポンプ19,20を停止状態に維持する。これにより、エンジン本体部10内のウォータジャケット13,14における冷却水の流通を停止して、その暖機を最大限に促進することができる。そして、冷間始動から設定時間t1が経過すれば、第1電動ポンプ19を停止状態に維持したまま、第2電動ポンプ20を第1パルス制御モードで運転する。
すなわち、まず、第1パルス制御モードにおける第2電動ポンプ20の間欠作動の周期及びその作動時の制御デューティ比をそれぞれ予め設定したテーブルから読み込む。このテーブルは、例えば、エンジン水温に応じて第2電動ポンプ20の作動周期及びデューティ比の適値をそれぞれ実験等に基づいて決定したものである。
そして、上記作動周期及びデューティ比に対応する制御信号により第2電動ポンプ20のモータにパルス状に出力電圧を印加して、これを間欠的に作動させる。そうして第2電動ポンプ20を間欠的に作動させると、サブ通路18において、すなわち、サブ回路において冷却水の流通状態が第1流通状態になる。
各ノズル通路22は各バルブブリッジ部12dを指向しているため、上記のようにして第2電動ポンプ20を作動させると、サブ通路18及びタンク通路21を介して各ノズル通路22から少量ながら断続的に噴出した冷却水は、シリンダヘッド12のウォータジャケット14の各バルブブリッジ部12dに向かって集中的に流入することになり、この冷却水によって各バルブブリッジ部12dが冷却され、各バルブブリッジ部12dにおける冷却水の部分沸騰が比較的低流量の冷却水で抑制されることになる。
また、上記のようにして第2電動ポンプ20を作動させると、ウォータジャケット14における冷却水は、第2電動ポンプ20の連続的な作動時のように入口側から出口側に向かって連続的に移動するのではなく、瞬間的なポンプ作動によって小さく移動した後に直ちに停止することを繰り返すようになる。
言い換えると、上記第1パルス制御モードでは、第2電動ポンプ20の間欠作動によって、ウォータジャケット14の冷却水全体が周期的に微量に変位しながら間欠的に流通することになり、このことによって、エンジンの各シリンダ周辺、特に各バルブブリッジ部12dの局所的な温度上昇が抑制されるとともに、冷却水を停止させているときと同じようにエンジンの放熱量が少なくなって、エンジンの暖機が十分に促進されることになる。
さらに、各ノズル通路22を流通した冷却水は、ウォータジャケット14の排気側に流入した後に、ウォータジャケット14の排気側をシリンダ列方向に流れることになり、このことによって、シリンダブロック11のウォータジャケット13やシリンダヘッド14のウォータジャケット14の吸気側において冷却水の流通が殆ど停止に近い状態になり、エンジンの暖機がより一層十分に促進されることになる。
次に、エンジン始動後に設定時間t2が経過したかどうか判定する。この設定時間t2は、エンジン水温に対応する適値を予め実験等により決定して、例えばテーブルに設定しておき、このテーブルから読み込むようにすればよい。
設定時間t2が経過していないならば、時間の経過を待つ間、第1パルス制御モードでの運転を継続する。そして、冷間始動から設定時間t2が経過すれば、第1電動ポンプ19を停止状態に維持したまま、第2電動ポンプ20を第2パルス制御モードで運転する。すなわち、上記第1パルス制御モードと同様に第2電動ポンプ20の間欠作動の周期及びそのデューティ比を制御して、第2電動ポンプ20を間欠的に作動させる。
この第2パルス制御モードでは、サブ通路18において、すなわち、サブ回路において冷却水の流通状態が上記第1流通状態よりも冷却水の流通量が多い第2流通状態になる。そして、上述したようにウォータジャケット14において冷却水が少量であっても連続的に流れるようになり、ウォータジャケット14の冷却水が入れ替わる。
また、上記のようにして第2電動ポンプ20を作動させると、各ノズル通路22から噴出した冷却水は、各バルブブリッジ部12dに向かって集中的に流入することになり、各バルブブリッジ部12dにおける冷却水の部分沸騰が比較的低流量の冷却水で抑制されることになる。
さらに、各ノズル通路22を流通した冷却水は、ウォータジャケット14の排気側をシリンダ列方向に流れることになり、このことによって、シリンダブロック11のウォータジャケット13やシリンダヘッド14のウォータジャケット14の吸気側において冷却水の流通が殆ど停止に近い状態になり、エンジンの暖機が十分に促進されることになる。
その後、水温センサ26による検出値が設定温度を越えれば、暖機完了と判定し、冷機時の制御は終了となる。
<エンジン温間時の制御手順>
次に、エンジン温間時のECU23によって行われる第1及び第2電動ポンプ19,20の具体的な制御手順を説明する。
まず、負荷状態センサ24により検出したエンジンの負荷状態と、エンジン回転数センサ25により検出したエンジン回転数と、水温センサ26により検出したエンジン水温とから、エンジンの状態を判定する。
その判定が低負荷低回転状態であれば、図6に示すように、第1及び第2電動ポンプ19,20を燃費優先制御モードで運転し、高負荷低回転状態であれば、第1及び第2電動ポンプ19,20をトルク優先制御モードで運転し、高負荷高回転状態であれば、第1及び第2電動ポンプ19,20をEVB優先制御モードで運転し、低負荷高回転状態であれば、第1及び第2電動ポンプ19,20をInj.優先制御モードで運転する。
[燃費優先制御モードでの運転]
以下に、第1及び第2電動ポンプ19,20の燃費優先制御モードでの運転について、図1、図2、図4、図5を参照して説明する。
すなわち、第2通路17における冷却水の流量(時間平均的な流通量)が比較的低流量の流量になるとともに、サブ通路18における冷却水の流量が、上記第2パルス制御モードにおいて第2電動ポンプ20を間欠的に作動させたときの流量や上記流量f2よりも多い比較的低流量の流量f1に維持されるように、第1電動ポンプ19を比較的低頻度で間欠的に、第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。すなわち、上記第1及び第2パルス制御モードと同様に第1電動ポンプ19の間欠作動の周期及びそのデューティ比を制御して、第1電動ポンプ19を間欠的に作動させる。
そのように第2電動ポンプ20を作動させると、各ノズル通路22から噴出した冷却水は、各バルブブリッジ部12dに向かって集中的に流入することになり、各バルブブリッジ部12dにおける冷却水の部分沸騰が比較的低流量の冷却水で抑制されることになる。
また、上記のようにして第1及び第2電動ポンプ19,20を作動させると、各ノズル通路22を流通した比較的高温の冷却水は、シリンダヘッド14のウォータジャケット14に比較的多量に流入して、ウォータジャケット13,14の冷却水温度は、比較的高温(例えば約120℃)に維持されることになり、エンジン燃費が向上されることになる。
さらにまた、上記のようにして第1及び第2電動ポンプ19,20を作動させると、ラジエータ15からの冷却水が比較的少量になり、このことによって、冷却水の総流量が多くなることが抑制され、第1及び第2電動ポンプ19,20の総消費電力(駆動損失)が増加することが抑制されることになる。
[トルク優先制御モードで運転]
以下に、第1及び第2電動ポンプ19,20のトルク優先制御モードでの運転について、図1、図2、図4、図7を参照して説明する。図7は、燃費優先制御モードからトルク優先制御モードに切り替わったときのエンジンの各種状態の時間変化を示すタイムチャートであり、(a)は、アクセル開度の時間変化を示し、(b)は、エンジン回転数の時間変化を示し、(c)は、冷却水温度の時間変化を示し、(d)は、点火時期の時間変化を示し、(e)は、冷却水の総流量の時間変化を示し、(f)は、実線が、サブ通路18(サブ回路)における冷却水の流量の時間変化を、破線が、第2通路17(メイン回路)における冷却水の流量の時間変化を示している。
エンジンの状態が高負荷低回転状態では、負荷の増大により各バルブブリッジ部12dの熱負荷が高まり、ノッキングが発生しやすくなり、タイムリーに各バルブブリッジ部12dの冷却性を高める必要がある。
そこで、まず、第2通路17及びサブ通路18における冷却水の流量が時間の経過と比例して多くなるように第1及び第2電動ポンプ19,20を連続的に作動させる。
そのように第2電動ポンプ20を作動させると、各ノズル通路22から噴出した冷却水は、各バルブブリッジ部12dに向かって集中的に流入することになり、各バルブブリッジ部12dにおける冷却水の部分沸騰が抑制されることになる。
また、そのように各バルブブリッジ部12d(排気ポート12b壁)が冷却されると、点火時期が進角して、トルクが向上することになる。
さらに、上記のようにして第1及び第2電動ポンプ19,20を作動させると、各ノズル通路22を流通した比較的高温の冷却水は、ウォータジャケット14の排気側に流入するとともに、ラジエータ15を流通した比較的低温の冷却水は、ウォータジャケット14に流入するようになり、これらのことによって、ウォータジャケット14の吸気側をその排気側に比べて低温の冷却水が流通し、この低温の冷却水によって吸気ポート12a壁が冷却されることになる。これにより、充填効率が向上して、トルクがより一層向上することになる。
さらにまた、上記のようにして第1電動ポンプ19を作動させると、ラジエータ15から比較的低温の冷却水が比較的多量に流入するようになり、この冷却水の流入によってウォータジャケット13,14の冷却水温度が例えば90℃に低下して、このことによって、エンジン本体部10が冷却されることになる。このように冷却水温度が低下すると、点火時期が進角することになる(図7(c)、(d)を参照)。
そして、トルク優先制御モードでのエンジン運転後に設定時間t3が経過したかどうか判定する。この設定時間t3は、エンジン水温に対応する適値を予め実験等により決定して、例えばテーブルに設定しておき、このテーブルから読み込むようにすればよい。尚、設定時間t4〜t8も、これと同様に設定される。
設定時間t3が経過していないならば、時間の経過を待つ間、第1及び第2電動ポンプ19,20を上記作動状態に維持する。そして、トルク優先制御モードでの運転開始から設定時間t3が経過すれば、第1電動ポンプ19を上記作動状態に維持したまま、サブ通路18における冷却水の流量が上記流量f1よりも多い比較的高流量の流量f3に維持されるように第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。
次に、トルク優先制御モードでのエンジン運転後に設定時間t4が経過したかどうか判定する。設定時間t4が経過していないならば、時間の経過を待つ間、第1及び第2電動ポンプ19,20を上記作動状態に維持する。そして、トルク優先制御モードでの運転開始から設定時間t4が経過すれば、第2通路17における冷却水の流量が上記流量f2,f3よりも多い比較的高流量の流量f4に維持されるように第1電動ポンプ19を連続的に作動させるとともに、サブ通路18における冷却水の流量が時間の経過と比例して少なくなるように第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。
次に、トルク優先制御モードでのエンジン運転後に設定時間t5が経過したかどうか判定する。設定時間t5が経過していないならば、時間の経過を待つ間、第1及び第2電動ポンプ19,20を上記作動状態に維持する。そして、トルク優先制御モードでの運転開始から設定時間t5が経過すれば、第2電動ポンプ20を上記作動状態に維持したまま、第2通路17における冷却水の流量が段階的に少なくなるように第1電動ポンプ19を連続的に作動させる。
次に、トルク優先制御モードでのエンジン運転後に設定時間t6が経過したかどうか判定する。設定時間t6が経過していないならば、時間の経過を待つ間、第1及び第2電動ポンプ19,20を上記作動状態に維持する。そして、トルク優先制御モードでの運転開始から設定時間t6が経過すれば、第1電動ポンプ19を上記作動状態に維持したまま、サブ通路18における冷却水の流量が段階的に多くなるように第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。
次に、トルク優先制御モードでのエンジン運転後に設定時間t7が経過したかどうか判定する。設定時間t7が経過していないならば、時間の経過を待つ間、第1及び第2電動ポンプ19,20を上記作動状態に維持する。
そして、トルク優先制御モードでの運転開始から設定時間t7が経過すれば、第2電動ポンプ20を上記作動状態に維持したまま、第2通路17における冷却水の流量が上記流量f2よりも多く上記流量f4よりも少ない比較的低流量の流量f5に維持されるように第1電動ポンプ19を連続的に作動させる。尚、本実施形態では、流量f5は上記流量f1と略同一であるが、相違してもよい。
そのように第1電動ポンプ19を作動させると、ラジエータ15からの冷却水が比較的少量になり、このことによって、冷却水の総流量が多くなることが抑制され、第1及び第2電動ポンプ19,20の総消費電力が増加することが抑制されることになる。
次に、トルク優先制御モードでのエンジン運転後に設定時間t8が経過したかどうか判定する。設定時間t8が経過していないならば、時間の経過を待つ間、第1及び第2電動ポンプ19,20を上記作動状態に維持する。
そして、トルク優先制御モードでの運転開始から設定時間t8が経過すれば、第1電動ポンプ19を上記作動状態に維持したまま、サブ通路18における冷却水の流量が上記流量f1,f5よりも多く上記流量f3よりも少ない流量f6に維持されるように第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。この設定時間t8(流量f6)は、点火時期がノック限界点火時期を超えて進角しないように設定されている。
そのように第2電動ポンプ20を作動させると、サブ通路18における冷却水の流量が、点火時期がノック限界を超えて進角しないように設定された流量f6に維持されるため、ノッキングが発生することが抑制されるとともに、トルクが十分に確保されることになる。
[EVB優先制御モードでの運転]
以下に、第1及び第2電動ポンプ19,20のEVB優先制御モードでの運転について、図1、図2、図4、図8を参照して説明する。図8は、燃費優先制御モードからEVB優先制御モードに切り替わったときのエンジンの各種状態の時間変化を示すタイムチャートであり、(a)は、アクセル開度の時間変化を示し、(b)は、エンジン回転数の時間変化を示し、(c)は、冷却水温度の時間変化を示し、(d)は、バルブブリッジ部12の温度の時間変化を示し、(e)は、冷却水の総流量の時間変化を示し、(f)は、実線が、サブ通路18(サブ回路)における冷却水の流量の時間変化を、破線が、第2通路17(メイン回路)における冷却水の流量の時間変化を示している。
エンジンの状態が高負荷高回転状態になると、各バルブブリッジ部12bが急激に温度上昇する(図8(a)、(b)、(d)を参照)。
そこで、まず、第2通路17及びサブ通路18における冷却水の流量が時間の経過と比例して多くなるように第1及び第2電動ポンプ19,20を連続的に作動させる。尚、サブ通路18における冷却水の流量は高負荷低回転状態のときよりも大きく設定される。
そのように第2電動ポンプ20を作動させると、各ノズル通路22から噴出した冷却水は、各バルブブリッジ部12dに向かって高流量で集中的に流入することになり、各バルブブリッジ部12dが十分に冷却される。
また、上記のようにして第1電動ポンプ19を作動させると、ラジエータ15から比較的低温の冷却水が比較的多量に流入するようになり、エンジン本体部10が冷却されることになる。
そして、EVB優先制御モードでのエンジン運転後に設定時間t9が経過したかどうか判定する。この設定時間t9は、エンジン水温に対応する適値を予め実験等により決定して、例えばテーブルに設定しておき、このテーブルから読み込むようにすればよい。尚、設定時間t10,t11も、これと同様に設定される。
設定時間t9が経過していないならば、時間の経過を待つ間、第1及び第2電動ポンプ19,20を上記作動状態に維持する。そして、EVB優先制御モードでの運転開始から設定時間t9が経過すれば、第1電動ポンプ19を上記作動状態に維持したまま、サブ通路18における冷却水の流量が上記流量f1よりも多い比較的高流量の流量f7に維持されるように第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。
次に、EVB優先制御モードでのエンジン運転後に設定時間t10が経過したかどうか判定する。設定時間t10が経過していないならば、時間の経過を待つ間、第1及び第2電動ポンプ19,20を上記作動状態に維持する。そして、EVB優先制御モードでの運転開始から設定時間t10が経過すれば、第2通路17における冷却水の流量が上記流量f2よりも多く上記流量f7よりも少ない比較的高流量の流量f8に維持されるように第1電動ポンプ19を連続的に作動させるとともに、サブ通路18における冷却水の流量が時間の経過と比例して少なくなるように第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。
次に、EVB優先制御モードでのエンジン運転後に設定時間t11が経過したかどうか判定する。設定時間t11が経過していないならば、時間の経過を待つ間、第1及び第2電動ポンプ19,20を上記作動状態に維持する。
そして、EVB優先制御モードでの運転開始から設定時間t11が経過すれば、サブ通路18における冷却水の流量が上記流量f1,f8よりも少ない比較的低流量の流量f9に維持されるように第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。設定時間t11(流量f9)は、各バルブブリッジ部12dの温度が、バルブブリッジ部12dの温度信頼性を確保するために超えてはならない限界温度を超えないように設定されている。尚、本実施形態では、流量f9は上記流量f2と略同一であるが、相違してもよい。
そのように第2電動ポンプ20を作動させると、ノズル通路22からの冷却水が比較的少量になり、このことによって、冷却水の総流量が多くなることが抑制され、第1及び第2電動ポンプ19,20の総消費電力が増加することが抑制されることになる。
また、上記のようにして第2電動ポンプ20を作動させると、サブ通路18における冷却水の流量が、各バルブブリッジ部12dの温度が上記限界温度を超えないように設定された流量f9に維持されるため、各バルブブリッジ部12dの温度信頼性が確保されることになる。
尚、図9は、燃費優先制御モードから、順次、トルク優先制御モード、EVB優先制御モードに切り替わったときのエンジンの各種状態の時間変化を示すタイムチャートであり、(a)は、アクセル開度の時間変化を示し、(b)は、エンジン回転数の時間変化を示し、(c)は、冷却水温度の時間変化を示し、(d)は、点火時期の時間変化を示し、(e)は、バルブブリッジ部12bの温度の時間変化を示し、(e)は、冷却水の総流量の時間変化を示し、(f)は、実線が、サブ通路18(サブ回路)における冷却水の流量の時間変化を、破線が、第2通路17(メイン回路)における冷却水の流量の時間変化を示している。これらの燃費優先制御モード、トルク優先制御モード、及びEVB優先制御モードでの運転は、前述の燃費優先制御モード、トルク優先制御モード、及びEVB優先制御モードでの運転とほぼ同様である。
[Inj.優先制御モードでの運転]
以下に、第1及び第2電動ポンプ19,20のInj.優先制御モードでの運転について、図1、図2、図4、図10を参照して説明する。図10は、EVB優先制御モードからInj.優先制御モードに切り替わったときのエンジンの各種状態の時間変化を示すタイムチャートであり、(a)は、アクセル開度の時間変化を示し、(b)は、エンジン回転数の時間変化を示し、(c)は、冷却水温度の時間変化を示し、(d)は、バルブブリッジ部12bの温度の時間変化を示し、(e)は、インジェクタの温度の時間変化を示し、(f)は、冷却水の総流量の時間変化を示し、(g)は、実線が、サブ通路18(サブ回路)における冷却水の流量の時間変化を、破線が、第2通路17(メイン回路)における冷却水の流量の時間変化を示している。
まず、第2通路17における冷却水の流量が時間の経過と比例して少なくなるように第1電動ポンプ19を連続的に作動させるとともに、サブ通路18における冷却水の流量が上記流量f1よりも少ない比較的低流量の流量f10に維持されるように第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。尚、本実施形態では、流量f10は上記流量f2,f9と略同一であるが、相違してもよい。
そして、Inj.優先制御モードでのエンジン運転後に設定時間t12が経過したかどうか判定する。この設定時間t12は、エンジン水温に対応する適値を予め実験等により決定して、例えばテーブルに設定しておき、このテーブルから読み込むようにすればよい。
設定時間t12が経過していないならば、時間の経過を待つ間、第1及び第2電動ポンプ19,20を上記作動状態に維持する。そして、Inj.優先制御モードでの運転開始から設定時間t12が経過すれば、第2電動ポンプ19を上記作動状態に維持したまま、第2通路17における冷却水の流量が上記流量f1,f2よりも多く上記流量f8よりも少ない比較的高流量の流量f11に維持されるように第1電動ポンプ19を連続的に作動させる。
シリンダヘッド12の吸気側の各インジェクタは、エンジン回転数が高回転数になると、温度上昇するが、上記のようにして第1電動ポンプ19を作動させると、ラジエータ15から比較的低温の冷却水が比較的多量に流入するようになり、このことによって、各インジェクタが冷却され、その温度がインジェクタの温度信頼性を確保するために超えてはならない限界温度を超えることが抑制されることになる。
また、上記のようにして第2電動ポンプ20を作動させると、ノズル通路22からの冷却水が比較的少量になり、このことによって、冷却水の総流量が多くなることが抑制され、第1及び第2電動ポンプ19,20の総消費電力が増加することが抑制されることになる。
−効果−
以上により、本実施形態によれば、ノズル通路22がシリンダの排気ポート12b周辺の要冷却部を指向しているので、エンジン暖機中に、ECU23により、サブ通路18において冷却水の流通状態が、順次、流通停止状態、第1流通状態、この第1流通状態よりも冷却水の流通量が多い第2流通状態になるように第2電動ポンプ20を作動させると、サブ通路18を介してノズル通路22から流出した冷却水がシリンダヘッド12のウォータジャケット14の要冷却部に向かって集中的に流入し、この冷却水によって要冷却部が冷却される。このため、要冷却部における冷却水の部分沸騰を抑制することができる。
また、エンジン暖機中に、ECU23により、サブ通路18において冷却水の流通状態が、順次、流通停止状態、第1流通状態、この第1流通状態よりも冷却水の流通量が多い第2流通状態になるように第2電動ポンプ20を作動させる。このようにして、エンジン暖機中に、所定期間、シリンダヘッド12のウォータジャケット14における冷却水の流通を停止に近い状態にすることにより、エンジンの暖機を促進することができる。
さらに、エンジン暖機中に、ECU23により、メイン回路におけるラジエータ15とエンジン本体部10の冷却水入口との間において冷却水の流通状態が流通停止状態になるように第1電動ポンプ19を作動させるので、エンジン暖機中に、エンジン本体部10内の冷却水通路におけるシリンダヘッド12のウォータジャケット14おいてその冷却水入口14aから出口への冷却水の新たな流通を停止に近い状態にすることができる。このため、エンジンの暖機をより一層促進することができる。
以上により、エンジン暖機時に、シリンダヘッド12のシリンダの排気ポート12b周辺の要冷却部における冷却水の部分沸騰を抑制しながら、エンジンの暖機を促進してエンジン燃費を向上させることができる。
また、エンジン暖機完了後であって、エンジンの状態が低負荷低回転状態のときに、ECU23により、サブ通路18において冷却水が流通するように第2電動ポンプ20を作動させるので、サブ通路18を介してノズル通路22から流出した冷却水が要冷却部に向かって集中的に流入し、この冷却水によって要冷却部が冷却される。このため、要冷却部における冷却水の部分沸騰を抑制することができる。
さらに、エンジン暖機完了後であって、エンジンの状態が低負荷低回転状態のときに、ECU23により、サブ通路18における冷却水の流通量がメイン回路におけるラジエータ15とエンジン本体部10の冷却水入口との間の冷却水の流通量よりも多くなるように第1及び第2電動ポンプ19,20を作動させるので、ノズル通路22を流通した比較的高温の冷却水がシリンダヘッド12のウォータジャケット14に比較的多量に流入する。このため、冷却水温度を比較的高温に維持することができる。
さらにまた、エンジン暖機完了後であって、エンジンの状態が低負荷低回転状態のときに、ECU23により、サブ通路18における冷却水の流通量がメイン回路におけるラジエータ15とエンジン本体部10の冷却水入口との間の冷却水の流通量よりも多くなるように第1及び第2電動ポンプ19,20を作動させるので、メイン回路からの冷却水が比較的少量になる。このため、冷却水の総流量が多くなることを抑制することができ、第1及び第2電動ポンプ19,20の総消費電力が増加することを抑制することができる。
以上により、エンジン暖機完了後であって、エンジンの状態が低負荷低回転状態のときに、要冷却部における冷却水の部分沸騰を抑制しながら、冷却水温度を比較的高温に維持するとともに、電動ポンプ19,20の消費電力が増加することを抑制することができる。
ところで、シリンダに並設された2つの排気ポート12b,12bの間のバルブブリッジ部12dは、シリンダヘッド12のウォータジャケット14における冷却水のシリンダ列方向の流通だけでは冷却しにくく、このことによって、バルブブリッジ部12dにおいて冷却水が部分沸騰しやすい。
ここで、本実施形態によれば、ノズル通路22がバルブブリッジ部12dを指向しているので、ECU23により、サブ通路18において冷却水が流通するように第2電動ポンプ20を作動させると、サブ通路18を介してノズル通路22から流出した冷却水がバルブブリッジ部12dに向かって集中的に流入し、この冷却水によってバルブブリッジ部12dが冷却される。このため、バルブブリッジ部12dにおける冷却水の部分沸騰を抑制することができる。
また、エンジン暖機完了後であって、エンジンの状態が高負荷低回転状態のときに、ECU23により、サブ通路18における冷却水の流通量を低負荷低回転状態のときの流通量f1よりも多い流通量f3にすべく第2電動ポンプ20を作動させるので、サブ通路18を介してノズル通路22から流出した冷却水がバルブブリッジ部12dに向かって集中的に且つ比較的多量に流入し、この冷却水によってバルブブリッジ部12dが冷却される。このため、ノッキングを回避して点火時期を進角させることができ、トルクを向上させることができる。
さらに、エンジン暖機完了後であって、エンジンの状態が高負荷低回転状態のときに、ECU23により、メイン回路におけるラジエータ15とエンジン本体部10の冷却水入口との間の冷却水の流通量を低負荷低回転状態のときの流通量f2よりも多い流通量f4にした後にこの流通量f4よりも少ない流通量f5に維持すべく第1電動ポンプ19を作動させるとともに、サブ通路18における冷却水の流通量を低負荷低回転状態のときの流通量f1よりも多い流通量f3にした後にこの流通量f3よりも少ない流通量f6に維持すべく第2電動ポンプ20を作動させるので、メイン回路からの冷却水やノズル通路22からの冷却水が比較的少量になる。このため、冷却水の総流量が多くなることを抑制することができ、第1及び第2電動ポンプ19,20の総消費電力が増加することを抑制することができる。
以上により、トルクを十分に確保しながら、電動ポンプ19,20の消費電力が増加することを抑制することができる。
また、エンジン暖機完了後であって、エンジンの状態が高負荷高回転状態のときに、ECU23により、サブ通路18における冷却水の流通量を低負荷低回転状態のときの流通量f1よりも多い流通量f7にすべく第2電動ポンプ20を作動させるので、ノズル通路22から流出した冷却水がバルブブリッジ部12dに向かって集中的に且つ比較的多量に流入することになり、この冷却水によってバルブブリッジ部12dがその後の温度上昇を見越して強く冷却される。このため、バルブブリッジ部12dの温度信頼性を確保することができる。
さらに、エンジン暖機完了後であって、エンジンの状態が高負荷高回転状態のときに、ECU23により、サブ通路18における冷却水の流通量を低負荷低回転状態のときの流通量f1よりも多い流通量f7にした後に低負荷低回転状態のときの流通量f1よりも少ない流通量f9に維持すべく第2電動ポンプ20を作動させるので、ノズル通路22からの冷却水が比較的少量になる。このため、冷却水の総流量が多くなることを抑制することができ、第1及び第2電動ポンプ19,20の総消費電力が増加することを抑制することができる。
シリンダヘッド12の吸気側は、エンジン回転数が高回転数になると、温度上昇するが、エンジン暖機完了後であって、エンジンの状態が低負荷高回転状態のときに、ECU23により、メイン回路におけるラジエータ15とエンジン本体部10の冷却水入口との間の冷却水の流通量を低負荷低回転状態のときの流通量f2よりも多い流通量f11に維持すべく第1電動ポンプ19を作動させるので、ラジエータ15から比較的低温の冷却水が比較的多量に流入するようになり、シリンダヘッド12の吸気側が冷却される。このため、その温度が高温になることを抑制することができる。
また、エンジン暖機完了後であって、エンジンの状態が低負荷高回転状態のときに、サブ通路18における冷却水の流通量を低負荷低回転状態のときの流通量f1よりも少ない流通量f10に維持すべく第2電動ポンプ20を作動させるので、ノズル通路22からの冷却水が比較的少量になる。このため、冷却水の総流量が多くなることを抑制することができ、第1及び第2電動ポンプ19,20の総消費電力が増加することを抑制することができる。
(参考例1)
本参考例は、冷却水回路の通水抵抗が低抵抗になっており、このことによって、トルク優先制御モードが実施形態1とは異なるものになっている。以下、その相違点について説明する。その他の点に関しては、実施形態1とほぼ同様である。
−第1及び第2電動ポンプのトルク優先制御モードでの作動制御−
以下に、ECU23の第1及び第2ポンプ制御部23a,23bによる第1及び第2電動ポンプ19,20のトルク優先制御モードでの作動制御について説明する。
本参考例に係るトルク優先制御モードでは、まず、第2通路17における冷却水の流通量が時間の経過と比例して多くなるように第1電動ポンプ19を連続的に作動させるとともに、サブ通路18における冷却水の流通量が時間の経過と比例して少なくなるように第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。
次に、トルク優先制御モードでの運転開始から後述の設定時間t14が経過すれば、サブ通路18における冷却水の流通量が上記流通量f1よりも少ない比較的低流量の流通量f12に維持されるように第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。
次に、トルク優先制御モードでの運転開始から後述の設定時間t15が経過すれば、第2通路17における冷却水の流通量が上記流通量f1,f2よりも多い比較的高流量の流通量f13に維持されるように第1電動ポンプ19を連続的に作動させる。
−トルク優先制御モードでの運転の制御手順−
以下に、第1及び第2電動ポンプ19,20のトルク優先制御モードでの運転の制御手順について、図1、図2、図4、図11を参照して説明する。図11は、燃費優先制御モードからトルク優先制御モードに切り替わったときのエンジンの各種状態の時間変化を示すタイムチャートであり、(a)は、アクセル開度の時間変化を示し、(b)は、エンジン回転数の時間変化を示し、(c)は、冷却水温度の時間変化を示し、(d)は、点火時期の時間変化を示し、(e)は、冷却水の総流量の時間変化を示し、(f)は、実線が、サブ通路18(サブ回路)における冷却水の流量の時間変化を、破線が、第2通路17(メイン回路)における冷却水の流量の時間変化を示している。
まず、第2通路17における冷却水の流量が時間の経過と比例して多くなるように第1電動ポンプ19を連続的に作動させるとともに、サブ通路18における冷却水の流量が時間の経過と比例して少なくなるように第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。
そのように第1電動ポンプ19を作動させると、ラジエータ15から比較的低温の冷却水が比較的多量に流入するようになり、エンジン本体部10が冷却されることになる。
そして、トルク優先制御モードでのエンジン運転後に設定時間t14が経過したかどうか判定する。この設定時間t14は、エンジン水温に対応する適値を予め実験等により決定して、例えばテーブルに設定しておき、このテーブルから読み込むようにすればよい。尚、設定時間t15も、これと同様に設定される。
設定時間t14が経過していないならば、時間の経過を待つ間、第1及び第2電動ポンプ19,20を上記作動状態に維持する。そして、トルク優先制御モードでの運転開始から設定時間t14が経過すれば、第1電動ポンプ19を上記作動状態に維持したまま、サブ通路18における冷却水の流量が上記流量f1よりも少ない比較的低流量の流量f12に維持されるように第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。
次に、トルク優先制御モードでのエンジン運転後に設定時間t15が経過したかどうか判定する。設定時間t15が経過していないならば、時間の経過を待つ間、第1及び第2電動ポンプ19,20を上記作動状態に維持する。そして、トルク優先制御モードでの運転開始から設定時間t15が経過すれば、第2電動ポンプ20を上記作動状態に維持したまま、第2通路17における冷却水の流量が上記流量f1,f2よりも多い比較的高流量の流量f13に維持されるように第1電動ポンプ19を連続的に作動させる。
そのように第1電動ポンプ19を作動させると、ラジエータ15を流通した比較的低温の冷却水は、ウォータジャケット14に比較的多量に流入するようになり、冷却水の総流量が多くなることになる。これにより、トルクが向上することになる。また、ウォータジャケット14に比較的多量に流入する低温の冷却水によって吸気ポート12a壁が冷却されることになり、このことによって、充填効率が向上して、トルクがより一層向上することになる。
−効果−
以上により、本参考例によれば、エンジン暖機完了後であって、エンジンの状態が高負荷低回転状態のときに、メイン回路におけるラジエータ15とエンジン本体部10の冷却水入口との間の冷却水の流通量を低負荷低回転状態のときの流通量f2よりも多い流通量f13に維持すべく第1電動ポンプ19を作動させるので、ラジエータ15を流通した冷却水がシリンダヘッド12のウォータジャケット14に比較的多量に流入して、冷却水の総流量が多くなる。このため、トルクを向上させることができる。
尚、本参考例では、トルク優先制御モードを実施形態1とは異ならせているが、実施形態1と同様にしてもよい。
また、本参考例では、トルク優先制御モードでの運転開始から設定時間t14が経過すれば、第2電動ポンプ20を連続的に作動させているが、停止状態にしてもよい。
(実施形態2)
本実施形態は、各バルブブリッジ部12の温度信頼性が低くなっており、このことによって、EVB優先制御モードが実施形態1とは異なるものになっている。以下、その相違点について説明する。その他の点に関しては、実施形態1とほぼ同様である。
−第1及び第2電動ポンプのEVB優先制御モードでの作動制御−
以下に、ECU23の第1及び第2ポンプ制御部23a,23bによる第1及び第2電動ポンプ19,20のEVB優先制御モードでの作動制御について説明する。
本実施形態に係るEVB優先制御モードでは、まず、第2通路17における冷却水の流通量が時間の経過と比例して多くなるように第1電動ポンプ19を連続的に作動させるとともに、サブ通路18における冷却水の流通量が時間の経過と比例して多くなるように第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。
次に、EVB優先制御モードでの運転開始から後述の設定時間t16が経過すれば、サブ通路18における冷却水の流通量が上記流通量f1よりも多い比較的高流量の流通量f14に維持されるように第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。
次に、EVB優先制御モードでの運転開始から後述の設定時間t17が経過すれば、第2通路17における冷却水の流通量が上記流通量f1,f2よりも多く上記流通量f14よりも少ない比較的高流量の流通量f15に維持されるように第1電動ポンプ19を連続的に作動させる。
−EVB優先制御モードでの運転の制御手順−
以下に、第1及び第2電動ポンプ19,20のEVB優先制御モードでの運転の制御手順について、図1、図2、図4、図12を参照して説明する。図12は、燃費優先制御モードからEVB優先制御モードに切り替わったときのエンジンの各種状態の時間変化を示すタイムチャートであり、(a)は、アクセル開度の時間変化を示し、(b)は、エンジン回転数の時間変化を示し、(c)は、冷却水温度の時間変化を示し、(d)は、バルブブリッジ部12の温度の時間変化を示し、(e)は、冷却水の総流量の時間変化を示し、(f)は、実線が、サブ通路18(サブ回路)における冷却水の流量の時間変化を、破線が、第2通路17(メイン回路)における冷却水の流量の時間変化を示している。
まず、第2通路17及びサブ通路18における冷却水の流量が時間の経過と比例して多くなるように第1及び第2電動ポンプ19,20を連続的に作動させる。
そのように第1電動ポンプ19を作動させると、ラジエータ15から比較的低温の冷却水が比較的多量に流入するようになり、エンジン本体部10が冷却されることになる。
そして、EVB優先制御モードでのエンジン運転後に設定時間t16が経過したかどうか判定する。この設定時間t16は、エンジン水温に対応する適値を予め実験等により決定して、例えばテーブルに設定しておき、このテーブルから読み込むようにすればよい。尚、設定時間t17も、これと同様に設定される。
設定時間t16が経過していないならば、時間の経過を待つ間、第1及び第2電動ポンプ19,20を上記作動状態に維持する。そして、EVB優先制御モードでの運転開始から設定時間t16が経過すれば、第1電動ポンプ19を上記作動状態に維持したまま、サブ通路18における冷却水の流量が上記流量f1よりも多い比較的高流量の流量f14に維持されるように第2電動ポンプ20を連続的に作動させる。
次に、EVB優先制御モードでのエンジン運転後に設定時間t17が経過したかどうか判定する。設定時間t17が経過していないならば、時間の経過を待つ間、第1及び第2電動ポンプ19,20を上記作動状態に維持する。そして、EVB優先制御モードでの運転開始から設定時間t17が経過すれば、第2電動ポンプ20を上記作動状態に維持したまま、第2通路17における冷却水の流量が上記流量f1,f2よりも多く上記流量f14よりも少ない比較的高流量の流量f15に維持されるように第1電動ポンプ19を連続的に作動させる。
そのように第1及び第2電動ポンプ19,20を作動させると、ラジエータ15を流通した比較的低温の冷却水は、ウォータジャケット14に比較的多量に流入するようになるとともに、各ノズル通路22から噴出した冷却水は、各バルブブリッジ部12dに向かって集中的に且つ比較的多量に流入することになり、これらの冷却水によって各バルブブリッジ部12dが冷却され、各バルブブリッジ部12dの熱負荷増大に対しその冷却性を十分に高めることができる。
−効果−
以上により、本実施形態によれば、エンジン暖機完了後であって、エンジンの状態が高負荷高回転状態のときに、ECU23により、メイン回路におけるラジエータ15とエンジン本体部10の冷却水入口との間の冷却水の流通量を低負荷低回転状態のときの流通量f2よりも多い流通量f15に維持すべく第1電動ポンプ19を作動させるとともに、サブ通路18における冷却水の流通量を低負荷低回転状態のときの流通量f1よりも多い流通量f14に維持すべく第2電動ポンプ20を作動させるので、ラジエータ15を流通した比較的低温の冷却水がシリンダヘッド12のウォータジャケット14に比較的多量に流入するとともに、ノズル通路22から流出した冷却水がバルブブリッジ部12dに向かって集中的に且つ比較的多量に流入することになり、これらの冷却水によってバルブブリッジ部12dがその後の温度上昇を見越して強く冷却される。このため、バルブブリッジ部12dの温度信頼性を確保することができる。
尚、本実施形態では、EVB優先制御モードを実施形態1とは異ならせているが、実施形態1と同様にしてもよい。
また、本実施形態では、冷却水回路の通水抵抗が高抵抗になっているため、トルク優先制御モードを実施形態1と同様にしているが、冷却水回路の通水抵抗が低抵抗になっている場合、トルク優先制御モードを参考例1と同様にしてもよい。
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、エンジンを直列4気筒エンジンで構成しているが、これに限らず、例えば、単気筒エンジンで構成してもよく、直列4気筒エンジン以外の直列複数気筒エンジンで構成してもよい。
また、上記各実施形態では、バルブブリッジ部12dが要冷却部を構成しているが、冷却を要する排気ポート12b周辺の部分である限り、要冷却部はこれに限らない。
さらに、上記各実施形態では、第1及び第2電動ポンプ19,20を時間制御しているが、これに限らず、例えばエンジン水温で制御してもよい。
さらにまた、上記各実施形態では、燃費優先制御モードにおいて、第1電動ポンプ19を間欠的に作動させているが、単位時間当たりの流量が満足するようであれば連続作動させてもよく、温度的に支障がなければ停止状態にしてもよい。
また、上記各実施形態では、Inj.優先制御モードにおいてEVB優先制御モードからの移行の例について説明したが、燃費優先制御モードからの移行もあり得る。
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。