JP3975399B2 - 車両用エンジン冷却装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両用エンジン冷却装置に関するものであり、
さらに詳細には、車両エンジンに、循環液が流れるシリンダブロック内流路を備えたシリンダブロックと、循環液が流れるシリンダヘッド内流路を備えたシリンダヘッドとを備え、両流路が独立とされるとともに、外気との熱交換により循環液を冷却可能な循環液冷却機構を設けた車両エンジン冷却装置に関する。
循環液冷却機構は、一般に、ラジエータ、このラジエータをバイパスするバイパス路、ラジエータ及びバイパス路への分流を制御するサーモスタットバルブを設けて構成される。
【0002】
【従来の技術】
この種の車両用エンジン冷却装置では、循環液の循環は、一般に、エンジンからその駆動力を得て、機械式ポンプである第一ポンプを回して実施される。従って、従来技術にあっては、エンジンの負荷が変わっても、循環流量は変わらない。
【0003】
この種の機械式ポンプの能力(容量)は、エンジン負荷が高い状態(換言すれば冷却を最も必要とする状態)に対応できるように設定される。従って、エンジン負荷が低い状態では、必要以上の循環液量を循環させており、不必要な駆動動力を消費していた。
【0004】
この問題に対して、機械式ポンプを電動式ポンプに置換することが試みられ、さらに、エンジンの損傷を防止するフェールセーフモードを実行可能な構成が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
このようにすれば、エンジン負荷に応じた循環流量の設定が可能となり、駆動動力の低減が図れるように考えられる。しかしながら、機械式ポンプに比べて電動式ポンプのエネルギー効率は低いため、充分な駆動動力の低減効果を得ることができないのが現状である。
【0006】
一方、本願が対象とするように、エンジンのシリンダヘッドにシリンダヘッド内流路を設け、この流路とは独立に、シリンダブロックにシリンダブロック内流路を設ける構成を採用して、これら流路内を流れる循環液を独立に最適冷却して、燃費・排ガスの性状向上を図ることが提案されている(例えば、特許文献2)。
【0007】
この特許文献2に開示される技術では、シリンダブロック内流路とシリンダシリンダヘッド内流路とを独立に設け、さらに第一ラジエータを設けて、前記シリンダブロック内流路のみを介する循環路、前記シリンダブロック内流路及びシリンダヘッド内流路を介する循環路を形成可能に構成される。
そして、前記シリンダヘッド内流路に対して電動式ポンプと第二ラジエータとを別途、設け、これら電動式ポンプ、シリンダヘッド内流路、第二ラジエータを介する循環路を独立に形成可能とする。
結果、シリンダヘッド側とシリンダブロック側との冷却水温度を所望の状態に独立に制御することが可能となる。
【0008】
【特許文献1】
特開2000ー303842号公報
【特許文献2】
特開平05−086861号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、機械式ポンプを電動式ポンプに完全に置換する場合は充分な駆動動力の低減効果を得ることは難しいため、機械式ポンプと電動式ポンプとの併用構造とするほうが、エネルギー効率の点では好ましい。又、燃費等の向上を図ろうとすると、冷却を的確に行う必要がある。
【0010】
しかしながら、特許文献2に開示される技術にあっては、シリンダヘッド、シリンダブロックを最適冷却して、燃費・排ガスを向上させることはできるが、第二ラジエータを追加する等の必要から、既存の循環経路とは実質、独立に更なるシリンダヘッド側の循環系統を設ける必要があり、改良の余地があった。
【0011】
本発明の目的は、既存の車両用エンジン冷却装置に設けられていた循環液循環系統をできるだけ利用しながら、従来設けられていた単独のラジエータを利用して、エンジン負荷に対応した好適なエンジンの暖機・冷却を実行でき、さらに、全体として循環液循環に利用される駆動動力を実質的に低減できる車両用エンジン冷却装置を得ることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための手段は、本願では、請求項1、2に記載され、シリンダヘッド内流路の流入側(上流側)に独立駆動型の第二ポンプを第一ポンプに並列に設ける構成と、請求項3、4に記載され、直列接続されるシリンダヘッド内流路とシリンダブロック内流路との間に同じく独立駆動型の第二ポンプを設ける構成とに分かれる。
【0013】
前者の構成にあっては、流路の切換えだけで、エンジン負荷(冷却負荷)に応じた最適冷却が実行される。そして、基本的には冷却路内を流れる循環液の温度は、エンジン負荷に係わらず、大きく変わることはない。
【0014】
一方、後者の構成にあっては、流路の切換えで、エンジン負荷(冷却負荷)に応じた最適冷却を達成するのであるが、例えば、低エンジン負荷時にはシリンダブロック内流路を流れる循環液温度を、シリンダヘッド内流路を流れる循環液温度に対して高くする等、エンジン負荷(エンジンの運転状態)に応じた適切なシリンダブロック温度保持・冷却が実行され、両温度に関して、温度が異なる運転状態を実現することが可能とされる。
以下、これら二つの構成を順に説明する。
【0015】
1.シリンダヘッド内流路の上流側に第二ポンプを設ける構成
この構成は、その基本構成として、
エンジンより駆動を得る第一ポンプ、シリンダブロック内流路、循環液冷却機構を経るブロック側循環路と、
第一ポンプ、シリンダヘッド内流路、循環液冷却機構を経るシリンダヘッド側循環路とを形成可能に構成された車両用エンジン冷却装置で実現することができる。
即ち、この構成において、請求項1に記載するように、
前記循環液冷却機構の流出口と前記第一ポンプの吸入口との間に存する第一ポンプ吸入側流路部位に、その吸入口が接続され、その吐出口がシリンダシリンダヘッド内流路の流入口に、吐出側で接続される独立駆動型の第二ポンプを、前記第一ポンプと並列に設け、
エンジン負荷に応じて、前記第一ポンプ、第二ポンプの一方もしくは両方の運転を制御する制御装置を設ける。
【0016】
ここで、第二ポンプに関して使用する吐出側でとは、ポンプから吐出された流体が、シリンダヘッド内流路の流入口に流入可能であることを意味する。
【0017】
この構成にあっては、少なくとも第一ポンプを運転する状態で、ブロック側循環路もしくはシリンダヘッド側循環路の一方もしくは両方を循環液が循環できるものとされる。さらに、第一ポンプをバイパスする形態で、第二ポンプが働き、このポンプからシリンダヘッド内流路へ循環液を供給可能な状態を実現できる。
【0018】
従って、必要とされる冷却能力において、それが低い状態では、第一ポンプの駆動だけで、所定量の循環液の循環を確保できる。この場合、循環液冷却機構が実質的に働かない状態(ラジエータをバイパスする状態で循環液が流れる場合)では、冷却というよりは暖機に近い運転状態を実現できる。
【0019】
一方、必要とされる冷却能力が高まった場合は、第一ポンプ、第二ポンプを共に働かせて、循環液流量を増し、高い冷却能の冷却を実行できる。この時、循環液冷却機構は、その要請に応じた冷却能を発揮できればよい。
【0020】
この構成においては、前記第一ポンプに対して、前記シリンダブロック内流路と前記シリンダヘッド内流路とが並列関係にあるため、例えば、第一ポンプをシリンダブロック内流路に振り分け、第二ポンプをシリンダヘッド内流路に振り分ける流路構成が容易に実現できる。
【0021】
以下、エンジン負荷に応じた、流路の選択構成に関して説明する。
本願にあって、エンジン負荷に関して、低エンジン負荷、高エンジン負荷、最高エンジン負荷なる用語を用いるが、これらは、例えば、以下の状況に対応する。
【0022】
また、エンジン負荷は、吸気負圧の値によって区分可能であるとともに、車両の走行状態を特定するパラメータである、アクセルの踏み込み量、車速、エンジン回転数、変速段等のパラメータから導き出されるエンジン負荷によるものであってもよい。
【0023】
低エンジン負荷の例
吸気負圧の値を基準とする場合は、−30kPaより低い(0に近い)場合である。
高エンジン負荷の例
吸気負圧の値を基準とする場合は、−10kPaより低い場合で、低エンジン負荷の下限値より高い(0から遠い)場合である。
最高エンジン負荷の例
吸気負圧の値を基準とする場合は、−10kPaより高い場合である。
【0024】
上記構成の車両用エンジン冷却装置は、以下のような運転形態をとることができる。
【0025】
1 低エンジン負荷時の制御
イ 低エンジン負荷時、制御装置により、第一ポンプのみが単独運転される。低エンジン負荷時にあっては、冷却能力を高く設定する必要がなく、循環液の循環量も高める必要がないため、第一ポンプのみによる循環で、充分な冷却を達成できる。
この運転動作状態においては、循環液の循環量が抑えられるため、第一ポンプの容量は、従来より小さくてよい。この場合、ラジエータによる循環液の冷却を要する場合は少ない。
【0026】
ロ この低エンジン負荷時には、制御装置により、第一ポンプのみが単独運転され、循環液が前記シリンダヘッド内流路及びシリンダブロック内流路に循環される構成とできる。従って、この例における第一ポンプの容量は、低エンジン負荷に対応できる容量でよい。
上記したように、低エンジン負荷時は、低い冷却能で充分であるため、両流路に循環液を循環させて、シリンダヘッド側、ブロック側の両方を適切に冷却できる。
【0027】
2 高エンジン負荷時の制御
イ 高エンジン負荷時、制御装置により、第二ポンプが運転され、循環液がシリンダヘッド内流路、循環液冷却機構を介して循環される。
この種の高エンジン負荷時には、シリンダヘッド内流路に比較的多くの循環液を流して、適切な冷却を実行する必要が生じるが、独立に第二ポンプからシリンダヘッド内流路へ循環液を流すことで、シリンダシリンダヘッドの確実な冷却を達成できる。
【0028】
ロ また、高エンジン負荷時、制御装置により、第一ポンプ及び第二ポンプが共に運転され、第一ポンプがシリンダブロック内流路に循環液を循環させ、第二ポンプが前記シリンダヘッド内流路に循環液を循環させるものとできる。
両ポンプを働かせて、循環量を高め冷却能力の大きいところで、シリンダブロック内流路とシリンダヘッド内流路とを別ポンプで別個に受け持ち、両者とも強力な冷却を実行できる。従って、この例の場合、第一ポンプ、第二ポンプの容量を合わせて、高エンジン負荷時の要求に対応できるようにすることとなる。
【0029】
さて、これまで説明してきた構成において、請求項2に記載されているように、第一ポンプ、第二ポンプ間において、いずれか一方もしくは両方の作動状態で、相手側ポンプ側への吐出流循環液の流入を防止する逆流防止手段を設けておくと、本来あるべき、各ポンプからの流れを下手側(シリンダ内に設けられた内部流路側へ)へ良好に導くことができる。
【0030】
また、この構成において、シリンダブロック内流路の流出部に熱交換器を接続することが好ましい。
シリンダブロックに於ける発熱量が、シリンダヘッドに於ける発熱量に対して比較的小さいことを考えると、シリンダブロック内流路の流量は絞り側に導く必要があるが、熱交換器は、循環液の流路に於ける絞りの役割を果たし、別途、シリンダブロックに、流量調節用の絞りを設ける必要が無くなるためである。
【0031】
2.シリンダヘッド内流路の下手側に第二ポンプを設ける構成
この構成にあっては、その基本構成として、
エンジンより駆動を得る第一ポンプ、シリンダヘッド内流路、循環液冷却機構を経るシリンダヘッド側循環路と、
第一ポンプ、シリンダヘッド内流路、シリンダブロック内流路、循環液冷却機構を経るブロック側直列循環路とが形成可能とされる。
【0032】
そして、請求項3に記載されているように、シリンダヘッド内流路とシリンダブロック内流路との間に、独立駆動の第二ポンプを設けるとともに、この第二ポンプの吸入口と吐出口とを短絡する第二ポンプバイパス路を設け、
エンジン負荷に応じて、第一ポンプ、第二ポンプの一方もしくは両方の運転を制御するとともに、流出される循環液の循環流路を設定して、シリンダシリンダヘッド内流路を流れる循環液温度と、シリンダブロック内流路を流れる循環液温度とを、独立に制御する制御装置を設ける。
【0033】
この構成にあっては、第一ポンプの運転で、循環液がブロック側直列循環路を第二ポンプバイパス路を介して循環する状態と、シリンダヘッド側流路から第二ポンプを介してシリンダブロック内流路に流れて循環する状態との間で、切換えが可能となり、第一ポンプの駆動だけでは不足する冷却状態に対応できる。従って、第一ポンプの容量は比較的小さくてすみ、駆動に要する動力が低減される。
【0034】
さらに、請求項4に記載されているように、シリンダヘッド側循環路が形成され、ブロック側直列循環路が形成されないシリンダヘッド独立循環状態において、第二ポンプとブロック側流路との間で独立のブロック単独循環路を形成可能に構成されていることが好ましい。
シリンダヘッド側循環路内を、その循環路単独で循環液冷却機構を介して循環液を循環させてシリンダヘッド側を冷却し、ブロック単独循環路を形成して、この中を循環液が独立に循環する構成とすることで、例えば、ブロック側の冷却を起こしたくない場合(後記する高エンジン負荷が短期間しか発生しない場合)に、シリンダブロック側が冷却されるのを防止することができる。
【0035】
以下、この構成における制御構造に関して説明する。
1 低エンジン負荷時の制御
イ この負荷状態については、高エンジン負荷時、第一ポンプのみが運転され、循環液がブロック側直列循環路のみを、第二ポンプバイパス路を介して循環する基準循環状態における前記シリンダヘッド内流路を流れる循環液の温度である基準温度に対して、低エンジン負荷時、制御装置により、シリンダシリンダヘッド内流路を流れる循環液の温度が高く制御されることが好ましい。
このように制御することで、循環液の循環量を低く抑えながら、エンジン潤滑油の昇温による潤滑油の粘性抵抗の低減ができ、エンジンの機械的摩擦が低い状態を実現できる。
【0036】
2 高エンジン負荷時の制御
同じく高エンジン負荷状態に対する対応を取るにおいても、この構成のものにあっては、その高エンジン負荷状態の継続時間に従って、その制御を異にするものとする。
【0037】
即ち、高エンジン負荷の持続時間に従って、制御装置により、循環液の循環系統及び第一ポンプ、第二ポンプの作動状態が切換えられる構成を取ることが好ましい。
【0038】
高エンジン負荷状態が短期で収まる場合は、シリンダブロック側の温度低下を防止して、エンジンの機械的摩擦が増加するのを防止するためである。
これに対して、高エンジン負荷状態が長期にわたる場合は、循環液の循環を、高エンジン負荷状態に見合うだけ確保し、的確な冷却を実行できる制御を行う必要があるためである。
【0039】
イ 短期の高エンジン負荷状態
高エンジン負荷の持続時間が所定時間に到達しない短期高エンジン負荷期間において、制御装置により、シリンダヘッド側循環路とブロック単独循環路とを循環液が独立に循環し、ブロック側直列循環路を循環液が流れず、シリンダブロック内流路を流れる循環液の温度が、シリンダヘッド内流路を流れる循環液の温度より高く制御されることが、好ましい。
【0040】
この状態にあっては、シリンダヘッドの冷却は比較的確実に行えるようにし、シリンダブロックの冷却が発生しないようにするためである。
【0041】
ロ 長期の高エンジン負荷状態
高エンジン負荷の持続時間が所定時間を超える長期高エンジン負荷期間において、制御装置により、第一ポンプのみが働き、循環液が前記ブロック側直列循環路を前記第二ポンプバイパス路を介して循環し、シリンダヘッド側循環路を循環することがない基準循環状態が実現され、
シリンダブロック内流路を流れる循環液の温度が、シリンダヘッド内流路を流れる循環液温度により低く制御されることが好ましい。
高エンジン負荷状態が長期的に続く場合は、ブロック側の冷却を問題とすることなく、第一ポンプのみを運転して、シリンダヘッド、ブロック側両方の冷却を適切に行える。
【0042】
3 最高エンジン負荷時の制御
最高エンジン負荷時に、制御装置により、第一ポンプ及び第二ポンプが働き、第一ポンプ、シリンダヘッド内流路、第二ポンプ、シリンダブロック内流路、ラジエータ(循環液冷却機構)を介する最高負荷循環路が形成されることが好ましい。
この状態では、第一ポンプ、第二ポンプ両方の能力をフルに生かして予想される最も高いエンジン負荷に対して、高い能力で冷却を行うことができる。
【0043】
さて、これまで説明してきた構成において、第一ポンプがエンジンにより駆動される機械式ポンプであり、第二ポンプが電動式ポンプであることが好ましい。現状の冷却装置の構成の改良で対応できる。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、本願の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に、シリンダヘッド内流路Fhの流入側(上流側)に第二ポンプP2を設ける構成を示すとともに、図2に、低エンジン負荷時及び高エンジン負荷時の流路の切り分けを示した。
図3に、直列接続されるシリンダヘッド内流路Fhとシリンダブロック内流路Fbとの間に第二ポンプP2を設ける構成を示すとともに、図4、5に、この例におけるエンジン負荷に応じた流路の切り分けを示した。
【0045】
先にも示したように、図1、2に示す構成にあっては、実質流路の切換えだけで、エンジン負荷(冷却負荷)に応じた最適冷却が実行される。そして、基本的には冷却路内を流れる循環液の温度は、エンジン負荷に係わらず、大きく変わることはない。本願では、この構成を第一実施の形態と呼ぶ。
【0046】
一方、図3〜5に示す構成にあっては、流路の切換えで、エンジン負荷(冷却負荷)に応じた最適冷却を達成するのであるが、例えば、所定時にはシリンダブロック内流路Fbを流れる循環液温度を、シリンダヘッド内流路Fhを流れる循環液温度より高くする等、エンジン負荷(エンジンの運転状態)に応じた冷却が実行され、両温度に関して、温度が異なる運転状態が実現する場合も存在する。本願では、この構成を第二実施の形態と呼ぶ。
【0047】
以下、それぞれの形態の説明にあたっては、先ず、冷却装置4の構成を説明するとともに、次にエンジン負荷に応じた流路切換えを伴った動作を説明する。
【0048】
〔第一の実施の形態〕
イ 装置構成
図1に示すように、この車両用エンジン冷却装置4は、循環液が流れるシリンダブロック内流路Fbを備えたシリンダブロックSBと、循環液が流れるシリンダヘッド内流路Fhを備えたシリンダヘッドSHとを備えている。
そして、第一ポンプP1、前記シリンダブロック内流路Fb、循環液冷却機構ROを経るブロック側循環路Cbと、前記第一ポンプP1、前記シリンダシリンダヘッド内流路Fh、前記循環液冷却機構ROを経るシリンダヘッド側循環路Chとを形成可能に構成されている。
ここで、前記第一ポンプP1に対して、シリンダブロック内流路Fbとシリンダヘッド内流路Fhとが並列関係にある。
従って、この第一ポンプP1のみが運転される状態にあっては、図2(イ)にみられる様に、シリンダブロック内流路Fb及びシリンダヘッド内流路Fhに共に循環液が流れる状態が実現する。
【0049】
また、前記循環液冷却機構ROは、ラジエータR、ラジエータバイパス路6、サーモスタットThを備えて構成されている。
この実施形態では、ラジエータバイパス路6と、ラジエータの流出口Roと第一ポンプP1の吸入口P1iとを接続する接続路7との合流部位(バイパス流路流出側接続部8と呼ぶ)にサーモスタットTh(内部を流れる循環液の温度に従って開弁・閉弁するもので、この例の場合は、循環液の温度が設定温度以上になった場合に、ラジエータR側から接続路下流側への流れを確保する)が備えられている。
従って、循環液温度が低い状態では、バイパス路側を循環液が流れ、高い状態ではラジエータ側を循環液が流れる。
【0050】
さらに、前記シリンダブロック内流路Fbの流出部Fboに変速機用の熱交換器9が接続されている。
また、前記変速機用の熱交換器9の下手側から、前記サーモスタットThと第一ポンプP1の吸入口P1iとの間が、ラジエータ帰還路Rrとは別の流路で帰還連結され、中間にヒータHを備えたヒータ側帰還路Hrが備えられている。
この構成から、シリンダブロック内流路Fbを流れる循環液の一部を、ヒータHにより昇温して、第一ポンプP1に戻すことができる。
【0051】
さて、本願の特徴である、第二ポンプP2の設置構成について以下説明する。図1に示すように、前記サーモスタッド取付け部8から前記第一ポンプP1までの流路部位に、その吸入口P2iが接続され、その吐出口P2oが、その下手側で前記シリンダヘッド内流路Fhの流入側に接続される第二ポンプP2が設けられている。
そして、このポンプP2と第一ポンプP1との競合(相手側ポンプから吐出された循環液が、自らのポンプ内に流入すること)を避けるために、第一ポンプP1の吐出口P1oとシリンダブロック内流路Fbの流入口Fbiとを接続するブロック接続路10と、第二ポンプP2の吐出口P2oとシリンダヘッド内流路Fhの流入口Fhiとを接続するシリンダヘッド接続路11とを連結する連結路12に第一逆止弁CV1が備えられている。さらに、前記シリンダヘッド接続路11における前記連結路12の接続部より上流側(第二ポンプ側)に第二逆止弁CV2が備えられている。
【0052】
第一逆止弁CV1の方向は、シリンダヘッド接続路11からブロック接続路10への循環液の流れを阻止し、第二逆止弁CV2のそれは、連結路12から(換言すればシリンダヘッド内流路Fhから)第二ポンプP2側への循環液の流れを阻止するものである。
【0053】
即ち、前記第一ポンプP1、第二ポンプP2間において、いずれか一方もしくは両方の作動状態で、相手側ポンプ側への流出循環液の流入を防止する逆流防止手段が設けられている。
【0054】
さらに、この車両用エンジン冷却装置には、エンジン負荷に応じて、前記第一ポンプP1、第二ポンプP2の一方もしくは両方の運転を制御するとともに、流出される循環液の循環流路を設定する制御装置CUが備えられている。
【0055】
ロ 運転動作
以下、この実施形態の運転動作について説明する。
この運転動作は、エンジン負荷に応じたものであり、動作形態はエンジン負荷が低い場合とエンジン負荷が高い場合とで区分けされる。
低エンジン負荷時の循環液の循環状態を図2(イ)に示し、高エンジン負荷時の循環液の循環状態を図2(ロ)に示した。これらの図において、太実線で示す箇所が循環液が流れている(循環している)部位であり、細実線で示す箇所では循環液が流れることはない。さらに、太実破線は、循環液の一部が流れる状態を示す。
【0056】
〔低エンジン負荷時〕
図2(イ)に示すように、この低エンジン負荷時、第一ポンプP1のみが独立運転され、主にラジエータバイパス流路6を介して、ラジエータRを実質バイパスして循環液が循環される。また、この状態にあって、第一ポンプP1のみにより、循環液がシリンダヘッド内流路Fh及びシリンダブロック内流路Fbに循環される。
【0057】
さらに、詳細に説明すると、機械式ポンプである第一ポンプP1から吐出された循環液は、その一部がシリンダブロック内流路Fbへ、他部が第一逆止弁CV1を経てシリンダヘッド内流路Fhへ分流し、シリンダヘッドSHとシリンダブロックSBおよび変速機用の熱交換器9を冷却した後、ラジエータRとラジエータバイパス流路6へ分流し、サーモスタットThで合流して、第一ポンプP1へ戻る。
【0058】
エンジン負荷が低い状態では、所謂、ノッキング等の異常燃焼は起こりにくく、また、循環液温度が急激に上昇する可能性がないため、循環液量を小さくしても問題ない。
従って、この実施形態を採用する場合は、第一ポンプP1の容量は、従来、同等のエンジンに装着される機械式ポンプの容量よりも小さくでき、低負荷時状態では第一ポンプP1の駆動動力低減による燃費向上が図れる。
【0059】
さらに、この構造では、シリンダヘッドSHとシリンダブロックSBへの通液を並列することで、従来のシリンダブロックSBを経た後、シリンダシリンダヘッドSHへ通液する直列タイプに比べ、通液抵抗が小さくなるため、第一ポンプP1の容量を更に小さくすることが可能であり、また駆動動力も小さく抑えられる。
【0060】
ここで、一般には、シリンダヘッドSHの発生熱に比べシリンダブロックSBの発熱量は小さく、並列通液でシリンダブロックSBを最適に冷却するためには、シリンダブロック内流路Fbを絞って流量を下げる必要があるが、本願では変速機用の熱交換器9により、その絞り機能を果たすことができ、無駄な絞りは不要である。また、変速機用の熱交換器9の冷却作用により、さらに液冷却作用によりさらに燃費向上が図れる。
【0061】
〔高負荷時〕
図2(ロ)に示すように、制御装置CUにより、第一ポンプP1及び第二ポンプP2が共に運転され、第一ポンプP1がシリンダブロック内流路Fbに循環液を循環させ、第二ポンプP2がシリンダヘッド内流路Fhに循環液を循環させる。
【0062】
さらに詳細に説明すると、機械式ポンプである第一ポンプP1から吐出された循環液は、シリンダブロックSBおよび変速機用の熱交換器9を冷却する。
一方、電動式ポンプである第二ポンプP2から吐出された循環液はシリンダシリンダヘッドSHを冷却し、その後、ラジエータ帰還路Rrで合流する。
そして、ラジエータ側へ帰還した後、ラジエータRとラジエータバイパス路6へ分流し、サーモスタットThで合流して、第一ポンプP1と第二ポンプP2へ戻る。
【0063】
第二ポンプP2で吐出された循環液は、第二逆止弁CV1を経てシリンダシリンダヘッドSHを冷却し、シリンダブロックSBを冷却した循環液と合流し、その後、各ポンプP1、P2へ戻る。
【0064】
エンジン負荷が高い状態では、異常燃焼および循環液温度の急上昇によるオーバーヒートを避けるため、循環流量をエンジン低負荷に比して多くする必要がある。そこで、この高エンジン負荷時には、両ポンプP1、P2を作動させて、循環液の循環量を確保し、適切な冷却状態を実現する。
【0065】
この場合、第一逆止弁CV1を設けられているため、第二ポンプP2から吐出された循環液が、第一ポンプP1から吐出された循環液の流路を妨げることはない。第一ポンプP1から吐出された循環液は全量シリンダブロックSBへ、第二ポンプP2から吐出された循環液は全量シリンダヘッドSHへ流れる。
【0066】
ハ 効果
この構成を採用すると、エネルギー効率は高いが流量制御のし難い機械式ポンプを従来の機械式ポンプよりも小容量とすることで、通常運転時のポンプ駆動動力を減らし、冷却能力の増強が必要となった時のみ、エネルギ効率は低いが流量制御のしやすい電動式ポンプを作動させ必要流量を確保できる。
【0067】
冷却能力の増強が必要となるのは、高負荷運転時であるが、前述の如く高負荷運転は、一般走行ではないため、電動式ポンプが作動する機会は少なく、結果ポンプの駆動動力は低く抑えられ、燃費が向上する。
【0068】
また、厳寒時などでは、ヒータ性能が不足するときは、電動式ポンプの作動により循環液循環量を増すことが可能である。
【0069】
〔第二の実施の形態〕
イ 装置構成
図3に示すように、この実施の形態では、第一ポンプP1、シリンダシリンダヘッド内流路Fh、循環液冷却機構ROを経るシリンダヘッド側循環路Chと、第一ポンプP1、シリンダヘッド内流路Fh、シリンダブロック内流路Fb、循環液冷却機構ROを経るブロック側直列循環路Cbdとを別個に形成可能に構成されている。
【0070】
ラジエータRに対して、そのバイパス路6及び電子制御サーモスタットThを設ける点は、第一の実施の形態と同様である。但し、この電子制御サーモスタットThの設定は、制御装置CUからの指令に従い、エンジン負荷の大小に従って、変化される。即ち、低エンジン負荷時の設定は、高エンジン負荷時及び最高エンジン負荷時の設定に対して高い。
【0071】
上記二つの循環路Ch、Cbdを形成するために、シリンダヘッド内流路Fhの直流入部位(上流部位)に第一ポンプP1が直付けされており、このシリンダヘッド内流路Fhの流出側(下流側)に、第一流路制御バルブAV1を設けて、二系統に分けている。
第一の系統は、第一帰還路33aを介して直接、ラジエータR側に帰還する系統であり、第二の系統33bは、シリンダブロック内流路Fbを介してラジエータR側に帰還する系統である。
通常の使用状態は、第一ポンプP1の運転によりシリンダヘッドSH及びシリンダブロックSBの両方を冷却することを予定している。
【0072】
さらに、前記第一ポンプP1の吸入口P1i、シリンダヘッド内流路Fhの流出口Fho間をバイパスするシリンダヘッド内流路バイパス路34が設けられており、この流路34にヒータHが備えられている。この流路34は、熱不足が発生する場合に対する対応である。
【0073】
本願の特徴である第二ポンプP2の配設構成に関して説明すると、シリンダシリンダヘッド内流路Fhとシリンダブロック内流路Fbとを直列接続する接続路36内で、前記第一流路制御バルブAV1の下手側に、第二ポンプP2を設けるとともに、この第二ポンプP2の吸入口P2iと吐出口P2oとを短絡する第二ポンプバイパス路37が設けられている。このバイパス路37には逆止弁CVが備えられており、第二ポンプP2から流出された循環液がシリンダブロック内流路Fbに向かわず、第二ポンプP2の吸入口P2iに戻るのを阻止するようにされている。
【0074】
さらに、前記第二ポンプバイパス路37への流入側分岐部37iと、第二ポンプの吸入口P2iとの間に第二流路制御バルブAV2が設けられており、このバルブAV2の下手側が、一方が第二ポンプP2の吸入口P2iに、他方が第二ポンプP2、シリンダブロック内流路Fbをバイパスして、ラジエータR側に戻るように接続されている。
この回路構成は、後に説明するブロック単独循環路Cidを独立に形成するためである。
【0075】
そして、前記シリンダヘッド側循環路Chが形成され、前記ブロック側直列循環路Cbdが形成されないシリンダヘッド独立循環状態において、第二ポンプP2とシリンダブロック内流路Fbとの間で独立のブロック単独循環路Cidを形成可能に構成されている。
【0076】
このブロック単独循環路Cidは、図4(ロ)において太実線で示され、シリンダヘッド側循環路Chとは独立となっている循環路であり、第二ポンプP2が運転されることで、シリンダブロック内流路Fb、第二流路制御バルブAV2、第二ポンプP2を経る循環路となり、この循環路内を循環液が強制循環される。
【0077】
さて、図3に示すように、この実施の形態にあっては、ラジエータRから流出する循環液の液温を検出するための第一温度センサT1、シリンダヘッド内流路Fhから流出する循環液の液温を検出するための第二温度センサT2、さらに循環液冷却機構ROに戻る循環液の液温を検出するための第三温度センサT3が備えられている。
これらの温度センサT1,T2,T3からの検出情報は、前記した制御装置CUに送られ、ポンプP1、P2の運転制御、循環液の循環流路選択設定の用に利用される。
【0078】
また、対応する制御装置CUにあっても、エンジン負荷に応じて、第一ポンプP1、第二ポンプP2の一方もしくは両方の運転を制御するとともに、吐出される循環液の循環流路を設定して、結果的に、シリンダヘッド内流路Fhを流れる循環液温度と、シリンダブロック内流路Fbを流れる循環液温度とを、独立に制御することが可能とされている。
【0079】
さて、制御装置CUには、高エンジン負荷の持続時間に従って、循環液の循環系統及び第一ポンプP1、第二ポンプP2の運転状態を切換える切換え手段cu1が備えられている。
【0080】
即ち、この切換え手段cu1は、高エンジン負荷の持続時間が所定時間に到達しない短期高エンジン負荷期間において、シリンダヘッド側循環路Chとブロック単独循環路Cidとを循環液が独立に循環し、ブロック側直列循環路Cbdを循環液が流れず、シリンダブロック内流路Fbを流れる循環液の温度を、シリンダヘッド内流路Fhを流れる循環液の温度より高く制御する。この所定時間は、エンジンにより様々であるが、例えば、1分程度の場合もある。
この制御状態は、図4(ロ)で示す制御状態である。
【0081】
一方、高エンジン負荷の持続時間が所定時間を超える長期高エンジン負荷期間において、第一ポンプP1のみが働き、循環液がブロック側直列循環路Cbdを第二ポンプバイパス路37を介して循環し、シリンダヘッド側循環路Chを循環することがない基準循環状態が実現される。
この制御状態は、図5(イ)で示す制御状態である。この制御状態を取る状況での装置の働きは、運転動作の項で説明する。
【0082】
また、前記制御装置CUには、最高エンジン負荷時に所定の設定制御を実行できるように構成されている。即ち、最高エンジン負荷時には、第一ポンプP1及び第二ポンプP2が働き、第一ポンプP1、シリンダヘッド内流路Fh、第二ポンプP2、シリンダブロック内流路Fb、循環液冷却機構ROを介する最高負荷循環路Cmaxが形成される。
この状態で、循環液は図5(ロ)に太実線で示す循環路を循環する。
【0083】
ロ 運転動作
〔低エンジン負荷時〕
この状態にあっては、図4(イ)に示すように、これまで説明してきたブロック側直列循環路Cbdが形成される。但し、一部の循環液はヒータH内を流れることとなり、循環液に供給できる熱の最大量を、ヒータH及びシリンダシリンダヘッドSH側から循環液に供給することが可能とされる。
【0084】
さらに詳細に説明すると、機械式ポンプである第一ポンプP1から流出された循環液はシリンダヘッド内流路Fh、第一流路制御バルブAV1、逆止弁CV、シリンダブロック内流路Fbを経た後、ラジエータRとラジエータバイパス路6へ分流及びサーモスタットThで合流を経て、第一ポンプP1へ戻る。
【0085】
エンジン負荷が低い状態では、循環液温度を高めても、所謂、ノッキング等の異常燃焼は起こりにくくなっている。この状態で、循環液温度ひいては潤滑油温度を、従来エンジンよりも高く保つことにより、エンジン内の機械摩擦を小さく抑えられるため、燃費が向上する。
【0086】
循環液温度を高く保つには、例えば、電子制御サーモスタットThの作動温度を従来エンジンより高く設定することで、実現可能である。
ちなみに、機械摩擦をシリンダブロックSB及びシリンダヘッドSHに分けると、シリンダブロックSB側がその殆どを占める。
【0087】
〔高エンジン負荷時〕
この実施の形態にあっては、高エンジン負荷時の動作は二つに分かれる。
但し、この高エンジン負荷時にあっては、電子制御サーモスタットThの温度設定は、低エンジン負荷時の設定に対して低く設定され、ラジエータRの冷却が比較的低温側から循環液に加わる設定とされる。
【0088】
a 高エンジン負荷が短時間しか継続しない場合
エンジンの高負荷状態が短時間の場合は、第一ポンプP1が運転され、循環液がシリンダヘッド側循環路Chのみを、第一帰還路33aを介して循環する。
【0089】
さらに詳細に説明すると、図4(ロ)に示されているように、第一ポンプP1で吐出された循環液は、シリンダヘッドSH、第一流路制御バルブAV1を経た後、第一帰還路33aを介してラジエータRとラジエータバイパス路6へ分流し、電子制御サーモスタットThで合流し、第一ポンプP1へ戻る。一方、第二ポンプP2で吐出された循環液は、シリンダブロックSB、第二流路制御バルブAV2を経て、第二ポンプP2へ戻る。
【0090】
エンジン負荷が高い状態では、循環液温度を高めると異常燃焼が起こり易いため、循環液温度、特にシリンダヘッドSHを循環する循環液温度は、従来エンジンと同等以下に保つ必要がある。
この状態では、シリンダヘッドSHを循環する循環液温度を従来エンジンよりも低く保つことで、エンジンの燃焼は改善され、燃費が向上する。
【0091】
一方、シリンダブロックSBの循環液温度は、エンジン燃料への寄与度が小さいため、すぐ温度を下げる必要がない。そのため、この状態では、第一ポンプP1で吐出された低い温度の循環液がシリンダヘッドSHを経てシリンダブロックSBへ流れ込まぬように、シリンダヘッドSHとシリンダブロックSBの循環液流路を独立に形成し、シリンダブロックSBでは、低負荷状態で保たれた高い温度の循環液を第二ポンプP2で循環させる。
【0092】
循環液の温度は、一旦下げると温度上昇に時間を要する。そのためもし、高エンジン負荷状態で、循環液をシリンダヘッド内流路、シリンダブロック内流路へと直列に回し、エンジン全体の低水温制御を行うと、その後の低負荷状態で高水温制御を実現しょうとしても、直ぐには高水温とはならず機械摩擦低減効果が小さくなる。
【0093】
一般の走行では、高負荷状態の時間は極めて短いため、高負荷の度に機械摩擦の大半を占めるシリンダブロック部の循環液温度を下げるべきではない。よって、上述した循環構造を採用する。
【0094】
b 高エンジン負荷が継続する場合
低負荷時と同様、図5(イ)に示すように、第一ポンプP1で吐出された循環液はシリンダヘッドSH、第一流路制御バルブAV1、逆止弁CV、シリンダブロックSBを経た後、ラジエータRとラジエータバイパス路6へ分流し、さらに電子制御サーモスタットThで合流し、第一ポンプP2へ戻る。
エンジン負荷が高い状態では、異常燃焼回避及び燃焼改善による燃費向上のためにエンジン全体の循環液温度を、従来エンジンと同等以下に保つ必要がある。循環液温度を低くするため、電子制御サーモスタットThに通電し低温設定とし、ラジエータRを流れる循環液流量を増やすこととなる。
【0095】
〔最高エンジン負荷時〕
循環液の液温が上昇し、エンジン負荷が最高となっている場合は、上記の最高負荷循環路Cmaxを形成する。この場合、シリンダヘッドSH、シリンダブロックSBを流れる循環液の流量は、第二ポンプP2の作動により増加される。しかしながら、この様にすることで、ポンプP1、P2の駆動動力低減による燃費向上も得ることができる。
【0096】
ハ 効果
一般に、機械式ポンプの容量はエンジン高負荷の状態を基準として設定してあり、低負荷の状態では必要以上の水が循環されており、無用な動力が消費されている。
【0097】
しかしながら、この構成では、第一ポンプである、エネルギ効率は高いが流量制御しにくい機械式ポンプを、従来機械式ポンプよりも小容量とすることが可能で、通常運転時のポンプ駆動動力を減らし、循環液温が上昇して冷却能力の増強が必要になった時のみ、エネルギ効率が低いが流量制御のしやすい電動式ポンプを作動させ、必要流量を確保することができる。
【0098】
循環液温が上昇するのは高エンジン負荷運転時であるが、この構成では、前述のごとく高エンジン負荷運転は一般運転では殆どないため、第二ポンプP2が作動する機会は少なく、結果、ポンプの駆動動力は低く抑えられ燃費が向上する。また、厳寒時など、ヒータ性能が不足するときは、第二ポンプP2として可変式電動式ポンプを採用しておくと、このポンプの作動により循環液循環量を増すことが可能である。
【0099】
さて、以上説明した内容から、第二の実施の形態における車両用エンジン冷却装置は、以下の構成を有することとなっている。
即ち、車両エンジンに、循環液が流れるシリンダブロック内流路を備えたシリンダブロックと、循環液が流れるシリンダヘッド内流路を備えたシリンダヘッドを備え、シリンダブロック内流路とシリンダヘッド内流路とを独立として設け、外気との熱交換により循環液を循環液冷却機構を設け、
エンジンより駆動を得る第一ポンプ、シリンダヘッド内流路、循環液冷却機構を経るシリンダヘッド側循環路と、
第一ポンプ、シリンダヘッド内流路、シリンダブロック内流路、循環液冷却機構を経るブロック側直列循環路とを形成可能に構成された車両用エンジン冷却装置において、
低エンジン負荷時に前記循環液冷却機構から流出される循環液温度に対して、高エンジン負荷時に前記循環液冷却機構から流出される循環液温度が低く設定される。
【0100】
即ち、低エンジン負荷状態では、循環液温度が高くなるように(冷却を受けない状態に)、エンジン冷却が必要な高エンジン負荷状態では、循環液温度が低くなるように(冷却を受けるように)設定する。
このようにしておくと、低エンジン負荷状態における、エンジン潤滑油の昇温によるエンジンの機械的摩擦損失の低減を迅速にできる。
【0101】
【図面の簡単な説明】
【図1】本願の第一実施の形態における循環液の循環流路構成を示す図
【図2】低エンジン負荷時と高エンジン負荷時との第一実施の形態における循環液の循環状態を示す図
【図3】本願の第二実施の形態における循環液の循環流路構成を示す図
【図4】低エンジン負荷時と短期の高エンジン負荷時での第二実施の形態における循環液の循環状態を示す図
【図5】長期の高エンジン負荷時及び最高エンジン負荷時での第二実施の形態における循環液の循環状態を示す図
【符号の説明】
4 車両用エンジン冷却装置
6 ラジエータバイパス路
9 熱交換器
10 ブロック接続路
11 シリンダヘッド接続路
12 連結路
37 第二ポンプバイパス路
AV 流路制御バルブ
Cb ブロック側循環路
Cbd ブロック側直列循環路
Ch シリンダヘッド側循環路
Cid ブロック単独循環路
Cmax 最高負荷循環路
CU 制御装置
CV 逆止弁
Fb シリンダブロック内流路
Fh シリンダヘッド内流路
H ヒータ
P1 第一ポンプ
P2 第二ポンプ
R ラジエータ
RO 循環液冷却機構
SB シリンダブロック
SH シリンダヘッド
Th サーモスタット

Claims (4)

  1. 車両エンジンに、循環液が流れるシリンダブロック内流路を備えたシリンダブロックと、循環液が流れるシリンダヘッド内流路を備えたシリンダヘッドとを備え、前記シリンダブロック内流路を前記シリンダヘッド内流路に対して独立に設け、
    外気との熱交換により前記循環液を冷却可能な循環液冷却機構を設け、
    エンジンより駆動を得る第一ポンプ、前記シリンダブロック内流路、前記循環液冷却機構を経るブロック側循環路と、
    前記第一ポンプ、前記シリンダヘッド内流路、前記循環液冷却機構を経るシリンダヘッド側循環路とを形成可能に構成された車両用エンジン冷却装置であって、
    独立駆動する第二ポンプを、その吸入口を、前記循環液冷却機構の流出口から前記第一ポンプの吸入口に至る間の第一ポンプ吸入側流路部位に接続し、吐出口を前記シリンダヘッド内流路の流入口に吐出側で接続して、前記第一ポンプと並列に設け、
    エンジン負荷に応じて、前記第一ポンプ、第二ポンプの一方もしくは両方の運転を制御する制御装置を設けた車両用エンジン冷却装置。
  2. 前記第一ポンプ、第二ポンプ間において、いずれか一方もしくは両方の運転状態で、相手側ポンプ側への吐出循環液の流入を防止する逆流防止手段を設けた請求項1記載の車両用エンジン冷却装置。
  3. 車両エンジンに、循環液が流れるシリンダブロック内流路を備えたシリンダブロックと、循環液が流れるシリンダヘッド内流路を備えたシリンダヘッドを備え、前記シリンダブロック内流路を前記シリンダシリンダヘッド内流路に対して独立に設け、
    外気との熱交換により前記循環液を冷却可能な循環液冷却機構を設け、
    エンジンより駆動を得る第一ポンプ、前記シリンダヘッド内流路、前記循環液冷却機構を経るシリンダヘッド側循環路と、
    前記第一ポンプ、前記シリンダヘッド内流路、前記シリンダブロック内流路、前記循環液冷却機構を経るブロック側直列循環路とを形成可能に構成された車両用エンジン冷却装置であって、
    前記シリンダヘッド内流路と前記シリンダブロック内流路との間に、独立駆動する第二ポンプを設けるとともに、前記第二ポンプの吸入口と吐出口とを短絡する第二ポンプバイパス路を設け、
    エンジン負荷に応じて、前記第一ポンプ、第二ポンプの一方もしくは両方の運転を制御するとともに、吐出される循環液の循環流路を設定して、前記シリンダヘッド内流路を流れる循環液温度と、前記シリンダブロック内流路を流れる循環液温度とを、独立に制御する制御装置を設けた車両用エンジン冷却装置。
  4. 前記シリンダヘッド側循環路が形成され、前記ブロック側直列循環路が形成されないシリンダヘッド独立循環状態において、前記第二ポンプと前記シリンダブロック内流路との間に形成される独立の循環路であるブロック単独循環路を独立形成可能に構成される請求項3記載の車両用エンジン冷却装置。
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