JP5367511B2 - グリース組成物 - Google Patents
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一方、省電力・省燃費といった環境性能の観点や、寒冷地等の低温化での始動性の観点からは、グリースの抵抗が少ないこと、すなわち低トルク性であることも求められる。
(B)炭素数6〜12の脂肪族モノカルボン酸と3価又は4価の多価アルコールから構成されるポリオールエステル、及び
(C)炭素数4〜14の脂肪族モノカルボン酸と炭素数4〜14の脂肪族ジカルボン酸と3価から6価の多価アルコールから構成されるコンプレックス型ポリオールエステルを含有する基油であって、基油の合計量に対する上記(A)アルキル化ジフェニルエーテルの割合が10〜50質量%であり、かつ上記(B)ポリオールエステルと上記(C)コンプレックス型ポリオールエステルの合計量に対する上記(B)ポリオールエステルの割合が10〜50質量%である基油を含有し、
増ちょう剤として、N−置換テレフタラミン酸ナトリウム塩と脂環式ジウレア化合物を含有し、かつN−置換テレフタラミン酸ナトリウム塩と脂環式ジウレア化合物との合計量に対するN−置換テレフタラミン酸ナトリウム塩の割合が50〜70質量%である増ちょう剤を含有し、
過塩素酸法による全塩基価が0.1〜50mgKOH/gのカルシウムスルホネートをグリース全量に対して0.5〜4.5質%含有し、
混和ちょう度が130〜295の範囲にあることを特徴とするグリース組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記グリース組成物において、上記(B)ポリオールエステルと上記(C)コンプレックス型ポリオールエステルの合計量に対する上記(B)ポリオールエステルの割合が18〜50質量%であるグリース組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記グリース組成物において、基油の合計量に対する上記(A)アルキル化ジフェニルエーテルの割合が10〜30質量%であり、かつ上記(B)ポリオールエステルと上記(C)コンプレックス型ポリオールエステルの合計量に対する上記(B)ポリオールエステルの割合が20〜50質量%であるグリース組成物を提供するものである。
本発明のグリース組成物においては、基油として、以下に記載するアルキル化ジフェニルエーテルとポリオールエステルとコンプレックス型ポリオールエステルを特定割合で含有する。
(i)アルキル化ジフェニルエーテル
本発明のグリース組成物において基油として使用するアルキル化ジフェニルエーテルは、炭素数8〜22のアルキル基を一つ以上有するものであり、下記の式(1)で表される。アルキル化ジフェニルエーテルに結合しているアルキル基の炭素数は好ましくは10〜20、より好ましくは12〜18である。アルキル基の炭素数が少なすぎると、増ちょう剤の分散性が悪くなる傾向にある。一方、アルキル基の炭素数が大きすぎると、基油の流動性が悪くなる傾向がある。
さらに、アルキル化ジフェニルエーテルとしては、その分子中に上記のアルキル基が1〜4つ結合したものが好ましく、1〜3つ結合したものがより好ましく、2〜3つ結合したものが特に好ましい。さらに、ジアルキル化ジフェニルエーテルとトリアルキル化ジフェニルエーテルの混合物が一層好ましい。この混合物におけるジアルキル化ジフェニルエーテルとトリアルキル化ジフェニルエーテルの含有割合は、質量比で1:9〜9:1が好ましく、2:8〜8:2がより好ましい。
本発明のグリース組成物の基油として使用されるポリオールエステルは、炭素数6〜12の脂肪酸と3価又は4価の多価アルコールから構成されるポリオールエステルである。このポリオールエステルは、多価アルコールの水酸基のすべてがエステル化されている完全エステルであってもよく、水酸基の少なくとも1個以上がエステル化されていない水酸基の形で残っている部分エステルであってもよいが、完全エステルであることが特に好ましい。なお、エステル化は従来公知の方法により行うことができる。
ポリオールエステルを構成する脂肪酸中の飽和脂肪族炭化水素基は、直鎖であってもよいし、分岐鎖であってもよい。このうち、直鎖と分岐鎖の組み合わせが好ましい。
以上のようなポリオールエステルの構造の例としては、以下の式(2)で表されるペンタエリスリトール脂肪酸エステルが挙げられる。
本発明のグリース組成物の基油として使用されるコンプレックス型ポリオールエステルは、炭素数4〜14の脂肪族モノカルボン酸と炭素数4〜14の脂肪族ジカルボン酸と3価から6価の多価アルコールから構成されるエステルである。脂肪族モノカルボン酸の炭素数としては6〜14が好ましく、8から12がより好ましい。脂肪族ジカルボン酸炭素数としては4〜10が好ましく、5〜8がより好ましい。脂肪族モノカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸の両場合において、炭素数が小さすぎると高温時の蒸発量が大きくなり、その結果、音響長寿命性が低下する。また、炭素数が大きすぎると基油の流動性が悪くなり、その結果、低トルク性が低下する傾向にある。
また、3価から6価の多価アルコールとしては、例えばトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。このうち、より好ましいものは4価の多価アルコールであり、特にペンタエリスリトールが好ましい。
本発明においては、基油の合計量に対する前記アルキル化ジフェニルエーテルの割合は10〜50質量%が好ましく、10〜35質量%がより好ましく、10〜30質量%がさらに好ましい。アルキル化ジフェニルエーテルの割合が50質量%より大きいと低トルク性が悪くなり、10質量%より小さいと音響長寿命性が悪くなる傾向にある。
また、前記ポリオールエステルとコンプレックス型ポリオールエステルの合計量に対するポリオールエステルの割合は、10〜50質量%が好ましく、18〜50質量%がより好ましく、20〜50質量%がさらに好ましい。ポリオールエステルの割合が50質量%を超えると音響長寿命性が悪くなり、10質量%未満では低トルク性が悪くなる。
本発明のグリース組成物においては、増ちょう剤として、以下に記載するN−置換テレフタラミン酸ナトリウム塩と脂環式ジウレアを含有する。
(i)N−置換テレフタラミン酸ナトリウム塩
本発明のグリース組成物の増ちょう剤として使用するN−置換テレフタラミン酸ナトリウム塩は、下記の式(3)で表される構造を有するものが好ましい。
式(3)において、R15は炭素数4〜22の炭化水素基であり、その炭素数は好ましくは8〜22、より好ましくは12〜22、特に好ましくは14〜20である。また、R15の炭化水素基は脂肪族炭化水素基が好ましく、飽和脂肪族炭化水素基がさらに好ましい。R15の炭素数が少なすぎると増ちょう剤が基油に分散しにくく、基油が分離する傾向が生じる。また、炭素数が大きすぎるとせん断安定性が悪くなる傾向にある。R15の例としては、デシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
本発明のグリース組成物の増ちょう剤としてN−置換テレフタラミン酸ナトリウム塩とともに使用される脂環式ジウレアは、下記の式(4)で表される構造を有する。なお、脂環式ジウレアとは、式(4)におけるR16に相当する分子の両端の構造が脂環式炭化水素基のものを指す。したがって、例えば、式(4)のR17が芳香族炭化水素基であっても、R16が脂環式炭化水素基であれば、「脂環式ジウレア」に該当する。
上記のN−置換テレフタラミン酸ナトリウム塩と脂環式ジウレアの合計量に占めるN−置換テレフタラミン酸ナトリウム塩の割合は50〜70質量%であり、より好ましくは55〜65質量%である。増ちょう剤に占めるN−置換テレフタラミン酸ナトリウム塩が質量比で70質量%より高いと離油防止性が悪くなり、結果として音響長寿命性が悪くなる。また、50質量%より低いと初期音響特性が悪くなる。
本発明のグリース組成物は、カルシウムスルホネートを含有する。このカルシウムスルホネートは、音響長寿命性の観点から、全塩基価(以下、「TBN」と略すことがある)が0.1〜50mgKOH/gであるカルシウムスルホネートである。なお、上記の全塩基価は、過塩素酸法(JIS−K−2501−7)によって測定される塩基価である。
本発明のグリース組成物は、上記各成分の基油と増ちょう剤と添加剤を配合するものであるが、必要に応じて上記以外の添加剤を適宜配合することができる。
添加剤としては、亜鉛系、リン系、硫黄系、アミン系、エステル系などの各種摩耗防止剤;2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールなどのアルキルフェノール類、4,4´−メチレンビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)などのビスフェノール類、n−オクタデシル−3−(4´−ヒドロキシ−3´,5´−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネートなどのフェノール系化合物、ナフチルアミン類やジアルキルジフェニルアミン類などの芳香族アミン化合物などの各種酸化防止剤;硫化オレフィン、硫化油脂等の極圧剤;ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール等の各種腐食防止剤等が挙げられる。添加剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のグリース組成物は、混和ちょう度が130〜295である。混和ちょう度が295より高いと離油防止性が低下し、結果として音響長寿命性が低下する。混和ちょう度が130より低いと初期音響特性と低トルク性が悪くなる。
実施例及び比較例では、以下に示す*1〜*14の成分を表1〜5に示した配合量(質量)の割合で含有させたグリース組成物を調整した。
*4〜*7の増ちょう剤は、以下に記載するように、その増ちょう剤の原料を各実施例及び各比較例のグリース組成物で用いる基油に混合して、基油中でその原料を反応させて増ちょう剤を合成し、結果として*1〜*14の各成分を所定量含有するグリース組成物を調整した。なお、グリース組成物は各成分を所定量含有するように調整した後に、ミル処理を行ってグリース中に増ちょう剤を均一に分散させ最終的な組成物とした。
得られたグリース組成物は、それぞれの混和ちょう度、音響長寿命性、低温トルクすなわち低トルク性、初期音響特性について評価を行った。
*2:ポリオールエステル(式(2)におけるR11〜R14が炭素数7〜9の直鎖飽和脂肪族炭化水素基と炭素数9の分岐鎖飽和脂肪族炭化水素基であるペンタエリスリトール脂肪酸エステル。)
*4:N−置換テレフタラミン酸ナトリウム(耐熱容器にアルキルジフェニルエーテルとN−オクタデシルテレフタラミン酸のメチルエステルを入れ、加熱攪拌し、その後、100℃以下に冷却して50質量%水酸化ナトリウム水溶液を加え、よく攪拌しながら徐々に加熱し、十分に鹸化を行い、鹸化終了後150℃において更に基油を加え、最高温度180℃まで加熱し、その後60℃まで冷却してか得られたN−オクタデシルテレフタラミン酸ナトリウム;式(3)におけるR15がオクタデシル基であるもの。)
*6:脂肪族ジウレア(耐熱容器に表中の各基油とジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネートを投入し、加熱し、次に、ステアリルアミンを約60℃付近で添加し、約40分間反応させ、その後、攪拌しながら170℃に加熱して得られたジウレア化合物;式(4)においてR16がステアリル基であり、R17を構成するための原料がジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネートであるもの。)
*8:カルシウムスルホネートA(商品名「NA−SUL729」、楠本化成(株)製、全塩基価=0.26mgKOH/g)
*10:カルシウムフェネート(商品名「オロア5253」、シェブロンテキサコ製)
*11:カルシウムサリシレート(商品名「M7121」、インフィニアムジャパン(株)製)
*12:マグネシウムスルホネート(商品名「C9340」、インフィニアムジャパン(株)製)
*13:バリウムスルホネート(商品名「NA−SULBSN」、(株)樋口商会製)
*14:酸化防止剤(フェニル−α−ナフチルアミン)
(1)混和ちょう度
JIS K 2220ちょう度試験方法に基づき測定した。
軸受けの初期音響特性を測定するのに一般的なアンデロンメータを用いて、低騒音性を測定した。アンデロンメータは、ベアリングの外輪を固定し、内輪を一定の速度で回転させたときに内部から外部に伝達される半径方向の振動成分を取り出し、スピーカーより音として出す装置である。具体的には、アンデロンメータの軸受としてJIS呼び番号608のベアリングを用い、グリースを0.3g充填し、回転数1800rpm、スラスト荷重2kgfで一分間回転させたときのハイバンドのアンデロン値を測定することによって行なった。初期音響特性は、アンデロン値が低いほど、良好な結果である。
評価は、以下の基準に従って行った。アンデロン値が、1.3以上、かつ1.5未満であるものも初期音響特性は良好であるが、より小さい方が好ましい。
○:アンデロン値が1.0以上、かつ1.3未満である。
△:アンデロン値が1.3以上、かつ1.5未満である。
×:アンデロン値が1.5以上である。
高温下で軸受けの外輪を固定して内輪を一定速度で回転させ、一定期間毎にそのベアリングのアンデロン値を測定することで音響長寿命性を評価した。具体的には、軸受としてJIS呼び番号608のベアリングを用い、グリースを0.3g充填し、130℃の環境下、回転数3000rpmで回転させ、24時間毎にアンデロン値を測定した。アンデロン値の測定には(3)初期音響特性と同様の方法を用いた。アンデロン値が5以上になった時点を音響寿命とし、寿命に達するまでの時間が長いほど良好な結果である。評価は、以下の基準に従って行った。音響寿命が2500時間未満、かつ2000時間以上であるものも音響長寿命性は良好であるが、より長い方が好ましい。
○:音響寿命が3000時間未満、かつ2500時間以上である。
△:音響寿命が2500時間未満、かつ2000時間以上である。
×:音響寿命が2000時間未満である。
グリースの低トルク性を評価するために、JIS K 2220に基づき、−40℃での低温トルク(mN・m)を測定した。評価は、以下の基準に従って行った。起動トルクが500mN・m以上、かつ530mN・m未満であるものも低トルク性は良好であるが、より小さい方が好ましい。
○:起動トルクが470mN・m以上、かつ500mN・m未満である。
△:起動トルクが500mN・m以上、かつ530mN・m未満である。
×:起動トルクが530mN・m以上である。
Claims (4)
- (A)炭素数8〜22のアルキル基を一つ以上有するアルキル化ジフェニルエーテル、
(B)炭素数6〜12の脂肪族モノカルボン酸と3価又は4価の多価アルコールから構成されるポリオールエステル、及び
(C)炭素数4〜14の脂肪族モノカルボン酸と炭素数4〜14の脂肪族ジカルボン酸と3価から6価の多価アルコールから構成されるコンプレックス型ポリオールエステルを含有する基油であって、基油の合計量に対する上記(A)アルキル化ジフェニルエーテルの割合が10〜50質量%であり、かつ上記(B)ポリオールエステルと上記(C)コンプレックス型ポリオールエステルの合計量に対する上記(B)ポリオールエステルの割合が10〜50質量%である基油を含有し、
増ちょう剤として、N−置換テレフタラミン酸ナトリウム塩と脂環式ジウレア化合物を含有し、かつN−置換テレフタラミン酸ナトリウム塩と脂環式ジウレア化合物との合計量に対するN−置換テレフタラミン酸ナトリウム塩の割合が50〜70質量%である増ちょう剤を含有し、
過塩素酸法による全塩基価が0.1〜50mgKOH/gのカルシウムスルホネートをグリース全量に対して0.5〜4.5質%含有し、
混和ちょう度が130〜295の範囲にあることを特徴とするグリース組成物。 - 基油の合計量に対する上記(A)アルキル化ジフェニルエーテルの割合が10〜35質量%である請求項1に記載のグリース組成物。
- 上記(B)ポリオールエステルと上記(C)コンプレックス型ポリオールエステルの合計量に対する上記(B)ポリオールエステルの割合が18〜50質量%である請求項2に記載のグリース組成物。
- 基油の合計量に対する上記(A)アルキル化ジフェニルエーテルの割合が10〜30質量%であり、かつ上記(B)ポリオールエステルと上記(C)コンプレックス型ポリオールエステルの合計量に対する上記(B)ポリオールエステルの割合が20〜50質量%である請求項1に記載のグリース組成物。
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