JP5367295B2 - 食品廃棄物のメタン発酵処理方法及び該システム - Google Patents

食品廃棄物のメタン発酵処理方法及び該システム Download PDF

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Description

本発明は、有機物中の脂質割合が10%以上である食品廃棄物をメタン発酵処理する食品廃棄物のメタン発酵処理方法及び該システムに関する。
従来、有機性廃棄物の処理方法として、環境負荷が小さく且つエネルギーや資源を回収できるメタン発酵処理が広く用いられている。このうち、厨芥、食品加工残渣等の食品廃棄物は、一般に図13に示される処理フローによりメタン発酵処理される。食品廃棄物は固形物濃度が数万〜数十万mg/lと高く、且つ粗大な固形物を多く含むため、まず前処理設備61で破砕や選別等の前処理を行った後、調整槽62にて希釈水を加えて可溶化処理を行う。調整槽62では、加温等により廃棄物中の有機物を可溶化、加水分解して低分子化する。調整槽62から排出される液状廃棄物は、メタン発酵槽63にてメタン生成菌の分解作用によりメタン発酵処理される。メタン発酵処理で発生したバイオガスは、ガスホルダ64に回収され脱硫塔65で脱硫された後、ガスエンジン66等のガス利用設備にて有効利用される。一方、メタン発酵槽63から引き抜かれた消化汚泥は、水処理設備67にて処理される。
メタン発酵処理には、中温メタン発酵と高温メタン発酵がある。中温メタン発酵は、温度37℃付近に活性のピークがある中温菌により分解が行われ、高温メタン発酵は、温度55℃付近に活性のピークがある高温菌により分解が行われる。通常メタン発酵処理を行う場合、高温メタン発酵か中温メタン発酵の何れかに適した温度に管理される。食品廃棄物に含まれる脂質は、温度が高い方が粘度が低く分散性がよくなり分解率が高くなるため、高温メタン発酵が適していると考えられている。しかし、高温メタン発酵は処理速度が速く分解率は高いが、アンモニアの阻害があり中温メタン発酵よりも安定ではないという問題がある。また、高温メタン発酵を採用すると加温のエネルギーが極めて大きくなってしまうことから中温メタン発酵が用いられることが多い。
食品廃棄物を中温メタン発酵するとき、チーズ、バター、サラダ油等の高脂質含有食品廃棄物が搬入された場合、脂質は難分解性であるため、十分な可溶化、低分子化が行えないまま、他の食品廃棄物とともにメタン発酵槽へ投入されると、脂質は界面活性剤の役割を果たし、メタン発酵槽内の発酵液の表面張力を低下させ発泡を引き起こしたり、温度が低いと固まるためメタン発酵槽上部に蓄積し、スカム形成の原因になったりし、バイオガス排出の障害を引き起こすなど、トラブルの要因となる。
そこで特許文献1(特許第3609332号公報)には、油脂含有廃棄物に固形有機性廃棄物を混合し、40℃以上80℃以下の加温条件で加温し、油脂を可溶化した後にメタン発酵処理する方法が開示されている。
また、特許文献2(特開2004−330153号公報)には、有機性廃棄物のうち、セルロース系及び/又は脂質系有機性廃棄物を高温酸発酵する工程Aと、たんぱく質系有機性廃棄物を工程Aより高い温度で且つ微好気条件で酸発酵する工程Bとを備え、これらの処理液を易分解性有機性廃棄物とともにメタン発酵する方法が開示されている。
特許第3609332号公報 特開2004−330153号公報
上記したように、脂質を含有する食品廃棄物を温度37℃程度で中温メタン発酵すると、脂質が難分解性であるため、メタン発酵槽にスカムが発生したりバイオガス排出に障害が生じるなどのトラブルが発生する惧れがあった。一方、このような食品廃棄物を温度55℃程度で高温メタン発酵すると、アンモニアの阻害があり中温メタン発酵よりも安定でなく、また加温のエネルギーが極めて大きくなってしまうという問題があった。
特許文献1及び特許文献2に記載される方法では、メタン発酵前段の可溶化、酸発酵で高温に加温し、分解性を高めるようにしているが、何れもメタン発酵温度は、中温或いは高温により行うことを示しており、上記した問題が残る。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、脂質を含有する食品廃棄物を、効率的に且つ安定的にメタン発酵処理することができ、多くのエネルギーを回収することを可能とした食品廃棄物のメタン発酵処理方法及び該システムを提供することを目的とする。
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、
有機物中の脂質割合が10%以上30%以下の食品廃棄物をメタン発酵槽にてメタン発酵処理する食品廃棄物のメタン発酵処理方法において、
前記食品廃棄物を破砕、選別した後、調整槽で可溶化処理し、該調整槽から排出される液状廃棄物を前記メタン発酵槽に供給し、該メタン発酵槽にて前記液状廃棄物を40℃以上45℃以下の温度条件でメタン発酵処理することを特徴とする。
本発明によれば、分解性が悪くメタン発酵が難しい脂質を含有する食品廃棄物を、従来の中温発酵温度(37℃程度)より高い40〜45℃でメタン発酵処理することにより、効率的に且つ安定してメタン発酵処理することが可能となり、またバイオガスの回収量を増加させより多くのエネルギーを回収することが可能となる。さらに、メタン発酵温度を従来の中温発酵温度より高くしたため、メタン発酵槽での発泡やスカムの形成もなく、メタン発酵処理することができる。
即ち、上記したようにメタン生成菌は、37℃付近に活性のピークがある中温菌と、55℃付近に活性のピークがある高温菌の大きく二つに分けられる。メタン発酵処理は通常、その温度付近になるように温度管理される。脂質類及びメタン発酵槽内の発酵液の粘度は温度が高い方が低く、分散性もよいので、分解率も高いと考えられ、その発酵温度を40〜45℃、好ましくは42℃に制御することで分解率を高め、多くのバイオガス、エネルギー回収を可能とした。また、この発酵温度とすることで、脂質分の分解が速くなり表面張力の低下も小さく、また粘度も小さくなることから、スカム発生や発泡が起こらず、通常よりも多くの脂質分を含む食品廃棄物をメタン発酵処理できるようになる。
一方55℃の高温メタン発酵ではアンモニアの阻害があり、37℃の中温メタン発酵よりも安定ではない。高温メタン発酵は、処理速度は速く分解率は高いが、アンモニア濃度の高いものは処理できない、加温のためのエネルギーが大きいなど不利な点を持つ。また、後段に水処理が必要な場合、水処理は37℃程度以下で行なわなければならないが、55℃の高温メタン発酵の場合は冷却する必要が生じ、エネルギーロスが大きくなる、これに比べて本発明のように40℃以上45℃以下、好適には42℃程度の発酵の場合、冷却設備も必要なく、水処理に供すことが可能である。
このような背景から、処理方法として中温発酵を選択した食品廃棄物に対し、発酵温度を通常の中温発酵温度の37℃より僅かに高い上記温度条件とすることで、安定運転と脂質を多く含む食品廃棄物の受入量を多くすることが可能となる。
のように、有機物中の脂質割合が10%以上30%以下である食品廃棄物を処理対象とすると、メタン発酵処理の温度条件を40℃以上45℃以下とした時、メタン発酵効率及びガス回収量が最も高くなる。
また、有機物中の脂質割合が10%以上30%以下の食品廃棄物をメタン発酵処理するメタン発酵槽を備えた食品廃棄物のメタン発酵処理システムにおいて、
前記食品廃棄物を破砕、選別する前処理装置と、該前処理した食品廃棄物を可溶化する調整槽とを備え、
前記メタン発酵槽は、前記調整槽から排出される液状廃棄物が供給され、該液状廃棄物を40℃以上45℃以下の温度条件でメタン発酵処理する構成を備えたことを特徴とする
以上記載のごとく本発明によれば、分解性が悪くメタン発酵が難しい脂質を含有する食品廃棄物を、従来の中温発酵温度(37℃程度)より高い40〜45℃でメタン発酵処理することにより、効率的に且つ安定してメタン発酵処理することが可能となり、またバイオガスの回収量を増加させより多くのエネルギーを回収することが可能となる。さらに、メタン発酵温度を従来の中温発酵温度より高くしたため、メタン発酵槽での発泡やスカムの形成もなく、メタン発酵処理することができる。
また、有機物中の脂質割合が10%以上30%以下である食品廃棄物を処理対象とすることにより、メタン発酵処理の温度条件を40℃以上45℃以下とした時、メタン発酵効率及びガス回収量が最も高くなる。
また、高脂質含有食品廃棄物を、専用の第1調整槽にて高い温度で可溶化処理することにより、高脂質含有食品廃棄物を速い速度で、且つメタン発酵が可能な状態まで十分に分解、低分子化することが可能となり、また調整槽の大きさを大幅に低減可能で、加温に必要なエネルギーを節減することが可能となる。
また、メタン発酵槽内の温度を前記温度条件に維持するために必要とされる熱量以下となるように、夫々の液状廃棄物の流量を調整することにより、加温された液状廃棄物の流入によりメタン発酵槽内の温度がメタン処理温度より高くなり、冷却装置等により冷却しなければならない事態を回避できる。
さらに、第1調整槽に分解促進剤を添加することにより、高脂質含有食品廃棄物の分解、低分子化をより一層促進することができ、メタン発酵の高効率化、バイオガス回収量の向上が可能となる。
さらにまた、メタン発酵槽から引き抜かれた消化汚泥を硝化脱窒処理することにより消化汚泥に残留する窒素分を除去することができる。また、第1調整槽を設けることによりメタン発酵槽で脂質も十分に分解することができるため、硝化脱窒処理を安定して行うことが可能となる。
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の基本構成を示し、第1実施形態に係る処理システムのブロック図である。同図に示されるように、かかる処理システムは、脂質含有食品廃棄物20が投入され、破砕、選別等の前処理を行う前処理設備1と、前処理された脂質含有食品廃棄物20を加温等により可溶化処理する調整槽2と、該調整槽2からの液状廃棄物(脂質含有食品廃棄物)22が圧送ポンプ3により供給され、この液状廃棄物22を温度40〜45℃、好ましくは42℃程度でメタン発酵するメタン発酵槽4と、を備える。
前記前処理設備1に投入される脂質含有食品廃棄物20は、有機物中の脂質割合が10%以上の食品廃棄物である。本実施形態では、例えばチーズ、バター、サラダ油等の脂質割合が高い食品廃棄物を好適にメタン発酵処理できる。
該前処理設備1は、食品廃棄物をメタン発酵に適したものにする前処理を行う設備であり、破砕、選別の少なくとも何れかの処理を含む。破砕はメタン発酵に適した大きさに食品廃棄物を破砕する。選別は、ビニールやプラスチック等のメタン発酵に不適なものを除去する。前処理設備1としては、回転式選別機、回転ブレード式破砕選別機、選択破砕選別機、圧縮選別機、湿式粉砕選別機等が用いられる。
前記調整槽2には、前処理設備1で前処理された脂質含有食品廃棄物20が供給されるとともに、希釈水21が供給される。該調整槽2は、加温等により脂質含有食品廃棄物20の固形物を低分子化して溶解性にする。例えば脂質含有食品廃棄物20を加熱手段(図示略)により30〜45℃程度に加温し、脂質含有食品廃棄物20を可溶化処理する。このとき、一部酸発酵が行われることも含む。また、調整槽2は、希釈水21による水量調整や濃度調整、撹拌手段による混合が行われる。
前記メタン発酵槽4は、調整槽2からの液状廃棄物(脂質含有食品廃棄物)22が圧送ポンプ3により供給される。該メタン発酵槽4はメタン生成菌が卓越して繁殖できる環境に温度、pH等の条件が維持されており、槽内で有機物を主にガス化反応によって分解処理することによりバイオガスを生成させる。
該メタン発酵槽4の温度は、加熱手段(図示略)により40〜45℃、好ましくは42℃程度で、従来の中温発酵温度より僅かに高い温度に維持される。混合液は撹拌手段により撹拌されながら所定の滞留時間保持される。
以上の構成を有する処理システムについて、その作用を処理方法とともに説明する。
脂質含有食品廃棄物20は、前処理設備1にて破砕、選別等の前処理が施された後、調整槽2にて希釈水21を供給し、加温等により可溶化処理される。該調整槽2から排出された液状廃棄物22は、圧送ポンプ3によりメタン発酵槽4に送給される。
メタン発酵槽4で、脂質含有食品廃棄物22は40〜45℃、好ましくは42℃程度でメタン発酵処理され、バイオガス26が発生するとともに消化汚泥23が発生する。バイオガス26は、回収してメタン利用設備にて有効利用することが好ましい。一例として、バイオガス26をガスホルダ9に回収し、脱硫塔10にて脱硫した後、ガスエンジン11の燃料とする。消化汚泥23は、圧送ポンプ5にて水処理設備6に送給し、該水処理設備6にて曝気処理、活性汚泥処理等の水処理を行った後、脱水機7にて脱水し、処理水24は液肥等に利用するために場外に搬出する。脱水機7からの脱水汚泥は、乾燥機8にて乾燥し、乾燥汚泥25は焼却処理、燃料化処理、埋立処理等を行うために場外に搬出する。
本実施形態によれば、分解性が悪くメタン発酵が難しい脂質を含有する食品廃棄物20を、従来の中温発酵温度(37℃程度)より高い40〜45℃でメタン発酵処理することにより、効率的に且つ安定してメタン発酵処理することが可能となり、またバイオガス26の回収量を増加させより多くのエネルギーを回収することが可能となる。さらに、メタン発酵温度を従来の中温発酵温度より高くしたため、メタン発酵槽4での発泡やスカムの形成もなく、メタン発酵処理することができる。
即ち、メタン生成菌は、37℃付近に活性のピークがある中温菌と、55℃付近に活性のピークがある高温菌の大きく二つに分けられる。メタン発酵処理は通常、その温度付近になるように温度管理される。脂質類及びメタン発酵槽4内の発酵液の粘度は温度が高い方が低く、分散性もよいので、分解率も高いと考えられ、その発酵温度を40〜45℃、好ましくは42℃程度に制御することで分解率を高め、多くのバイオガス、エネルギー回収を可能とした。また、この発酵温度とすることで、脂質分の分解が速くなり表面張力の低下も小さく、また粘度も小さくなることから、スカム発生や発泡が起こらず、通常よりも多くの脂質分を含む食品廃棄物20をメタン発酵処理できるようになる。
一方55℃の高温メタン発酵ではアンモニアの阻害があり、37℃の中温メタン発酵よりも安定ではない。高温メタン発酵は、処理速度は速く分解率は高いが、アンモニア濃度の高いものは処理できない、加温のためのエネルギーが大きいなど不利な点を持つ。また、後段に水処理が必要な場合、水処理は37℃程度以下で行なわなければならないが、55℃の高温メタン発酵の場合は冷却する必要が生じ、エネルギーロスが大きくなる、これに比べて本実施形態のように40℃以上45℃以下、好適には42℃程度の発酵の場合、冷却設備も必要なく、水処理に供すことが可能である。
このような背景から、処理方法として中温発酵を選択した食品廃棄物20に対し、発酵温度を通常の中温発酵温度の37℃より僅かに高い上記温度条件とすることで、安定運転と脂質を多く含む食品廃棄物の受入量を多くすることが可能となる。
図2は、上記第1実施形態を応用させた参考例に係る処理システムのブロック図である。尚、以下に示す参考例において、上記第1実施形態と同様の構成については、その詳細な説明を省略する。
図2において、かかる処理システムは、脂質割合の高い高脂質含有食品廃棄物30が投入され、破砕、選別等の前処理を行う前処理設備12と、前処理された高脂質含有食品廃棄物を加温して可溶化処理する第1調整槽13と、高脂質含有食品廃棄物30を除く他の食品廃棄物33が投入され、破砕、選別等の前処理を行う前処理設備15と、前処理された他の食品廃棄物を加温して可溶化処理する第2調整槽16と、第1調整槽13からの液状廃棄物(高脂質含有食品廃棄物)32が圧送ポンプ14により供給されるとともに、第2調整槽16からの液状廃棄物(他の食品廃棄物)35が圧送ポンプ17により供給され、これらの液状廃棄物を温度40〜45℃、好ましくは42℃程度でメタン発酵するメタン発酵槽4と、を備える。
前記前処理設備12に投入される高脂質含有食品廃棄物30は、有機物中の脂質割合が10%以上の食品廃棄物であり、特にばチーズ、バター、サラダ油等の脂質含有率がより高い食品廃棄物である。
前記前処理設備15に投入される他の食品廃棄物33は、高脂質含有廃棄物30を除く、厨芥、食品加工残渣等の食品廃棄物である。
前記第1調整槽13には、前処理設備12で前処理された高脂質含有食品廃棄物30が供給されるとともに、希釈水31が供給される。該第1調整槽13は加熱手段(図示略)により加温され、高脂質含有食品廃棄物30を可溶化処理する。好適には、第1調整槽13は40℃〜80℃に加温される。
前記第2調整槽16には、前処理設備15で前処理された他の食品廃棄物33が供給されるとともに、希釈水34が供給される。該第2調整槽16は加熱手段(図示略)により第1調整槽13より低い温度で加温され、他の食品廃棄物33を可溶化処理する。好適には、第2調整槽16はメタン発酵槽4の温度以下とする。さらに好適には30℃以上40℃未満に加温される。また、調整槽13、16は、希釈水31、34による水量調整や濃度調整、撹拌手段による混合が行われる。
前記メタン発酵槽4は、第1調整槽13からの高脂質含有食品廃棄物32が圧送ポンプ14により供給されるとともに、第2調整槽16からの他の食品廃棄物35が圧送ポンプ17により供給される。このとき、メタン発酵槽4の前段に混合槽(図示略)を設け、液状廃棄物32、35を予め混合した後、メタン発酵槽4に供給するようにしてもよい。
該メタン発酵槽4の温度条件は、第1実施形態と同様に40〜45℃、好ましくは42℃程度で、従来の中温発酵温度より僅かに高い温度に維持される。
この参考例において、高脂質含有食品廃棄物30は、前処理設備12にて破砕、選別等の前処理が施された後、第1調整槽13にて希釈水31を供給し、40〜80℃の温度に加温され、可溶化処理される。該第1調整槽13には難分解性の高脂質含有食品廃棄物が供給されるが、40〜80℃の高温に加温されることから脂質が十分に溶解し、低分子化される。一方、他の食品廃棄物33は、前処理設備15にて破砕、選別等の前処理が施された後、第2調整槽16にて希釈水34を供給し、第1調整槽13より低い温度、好適にはメタン発酵槽4の温度以下、さらに好適には30℃以上40℃未満の温度に加温され、可溶化処理される。該第2調整槽16に供給される食品廃棄物には脂質は殆ど含まれないため、40℃未満の温度で容易に可溶化する。
第1調整槽13からの高脂質含有食品廃棄物32は、圧送ポンプ14によりメタン発酵槽4に送給されるとともに、第2調整槽16からの他の食品廃棄物35は、圧送ポンプ17によりメタン発酵槽4に送給される。このとき、夫々の液状廃棄物32、35の流量は、圧送ポンプ14、17により調整される。
メタン発酵槽4では、高脂質含有食品廃棄物32と他の食品廃棄物35の混合液が、温度40〜45℃でメタン発酵され、バイオガス26が発生するとともに消化汚泥23が発生する。
参考例によれば、高脂質含有食品廃棄物30と他の食品廃棄物33とを夫々別個の調整槽13、16にて可溶化処理し、高脂質含有食品廃棄物を可溶化する第1調整槽13を他の食品廃棄物を可溶化する第2調整槽16よりも高い温度に設定することにより、高脂質含有食品廃棄物30を、より一層速い速度で且つメタン発酵が可能な状態まで十分に分解、低分子化することが可能となる。また高脂質含有食品廃棄物30と他の食品廃棄物33を一緒に可溶化する場合に比べて、調整槽の大きさを大幅に低減可能で、且つ加温に必要なエネルギーを節減することが可能となり、ランニングコストの低減が可能となる。
また、図3に示すように、上記参考例において、メタン発酵槽4に供給する液状廃棄物32、35の流量を夫々調整する制御を行うことが好ましい。
第1調整槽13からメタン発酵槽4に供給される高脂質含有食品廃棄物32の熱量と、第2調整槽16からメタン発酵槽4に供給される他の食品廃棄物35の熱量の計が、メタン発酵槽4内の温度を40〜45℃、好適には42℃程度に維持するために必要とされる熱量以下となるように、夫々の液状廃棄物32、35の流量を調整する。
具体的には、以下のように制御される。
Aにおける高脂質含有食品廃棄物32の熱量をQ=m・t(質量:m、温度:t)、Bにおける他の食品廃棄物35の熱量をQ=m・t(質量:m、温度:t)、Cにおけるメタン発酵槽内の混合液の熱量をQ=m・t(質量:m、温度:t)、Dにおけるメタン発酵槽からの放熱量をQ、Eにおけるバイオガスの熱量をQ=m・t(質量:m、温度:t)、Fにおける引き抜き消化汚泥の熱量をQ=m・t(質量:m、温度:t)とすると、メタン発酵槽内混合液の入熱はQ+Q、メタン発酵槽内混合液からの出熱はQ+Q+Qとなり、メタン発酵槽内混合液の熱量Qは以下の式(1)となる。
=Q+Q−(Q+Q+Q) ・・・(1)
これは、以下の式(2)で表される。
=m・t+m・t−Q−(m+m)・t ・・・(2)
ここから、メタン発酵槽内の温度tは以下の式(3)で表される。
=(m・t+m・t−Q)÷(m+m+m) ・・・(3)
そして、メタン発酵槽内の温度tが、メタン発酵処理の温度(40〜45℃)と同等若しくはこれより低くなるように設定する。
≦メタン発酵温度(40〜45℃) ・・・(4)
従って、上記式(3)と式(4)を満たすように、制御装置36により圧送ポンプ14、17を制御し、高脂質含有食品廃棄物32の質量mを流量調整するとともに、他の食品廃棄物35の質量mを流量調整する。尚、式(4)において、tは40℃〜80℃の所定温度、tはtより低い所定温度、m、m、mは反応によって決定する量である。
これにより、加温された液状廃棄物32、35の流入によりメタン発酵槽4内の温度がメタン発酵温度より高くなり冷却装置等により冷却しなければならない事態を回避できる。
また、第1調整槽13に、酵素、酸化促進剤、アルカリ剤の少なくとも何れか1つ又はこれらのうち複数の組み合わせからなる分解促進剤を添加する分解促進剤添加装置(図示略)を設けてもよい。分解促進剤添加装置としては、酵素添加装置、酸化促進剤注入装置、アルカリ注入装置等が用いられ、これらのうち少なくとも一つ、或いは複数の組み合わせとする。
酵素添加装置は、脂質を分解する酵素を添加する装置であり、酵素としてはリパーゼ等が用いられる。リパーゼは、脂質のエステル結合を加水分解し、脂質の低分子化を促進する。酸化促進剤注入装置は、脂質の酸化を促進する酸化剤を添加する装置であり、酸化剤としては、オゾン、過酢酸、過酸化水素等が用いられる。酸化剤はその強力な酸化力により有機物を酸化分解する作用を有しており、脂質の低分子化にも有効である。アルカリ注入装置は、脂質をアルカリ分解するアルカリ剤を添加する装置であり、アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム等が用いられる。アルカリ剤は有機物の加水分解反応を促進させる作用を有しており、脂質の低分子化にも有効である。
参考例によれば、高脂質含有食品廃棄物30の分解、低分子化をより一層促進することができ、メタン発酵の高効率化、バイオガス回収率の向上が可能となる。
さらに、メタン発酵槽4から引き抜かれた消化汚泥23を処理する水処理設備6として、硝化・脱窒設備を備えた構成とすることが好適である。硝化・脱窒設備は、脱窒素槽、硝化槽等を組み合わせた周知の装置であり、消化汚泥23に含まれるBOD、窒素を除去する。これにより、下水放流基準を満たす処理水とすることができる。
これには、高脂質含有食品廃棄物30中には窒素分が多く含まれるため、硝化・脱窒設備を備えることにより、メタン発酵槽4からの消化汚泥23に残留する窒素分を除去することができる。また、従来のシステムでは、高脂質含有食品廃棄物30は分解性が悪いためメタン発酵処理を行った後に未分解の脂質が残存することがあるが、未分解の脂質は酸素を消費してしまい、硝化脱窒処理の阻害となることがあった。しかし本参考例のシステムによれば、高温の第1調整槽13を設けることによりメタン発酵槽4にて脂質も十分に分解することができるため、硝化脱窒処理を安定して行うことが可能となる。
また、好適には、硝化・脱窒設備からの処理水若しくは脱水機7からの処理水24の少なくとも一部を返送し、第1調整槽13及び/又は第2調整槽16の希釈水31、34として用いるとよい。これにより、排水量を低減することが可能であり、また希釈水を外部から供給する必要がなくなるため、ランニングコストを削減することが可能である。
ここで、食品廃棄物のメタン発酵処理において、食品廃棄物に含まれる有機物中の脂質割合と、メタン発酵温度とに対するガス発生量の関係を求める試験を行った。図4に示すように、試験装置は、250mlのメディウム瓶で形成したメタン発酵槽40をシリコン栓つき蓋41で密封し、蓋41の中央にガラス管を配し、ガスを捕集するためのチューブ42を接続する。チューブ42の先を1000mlのガスホルダ43に接続し、ガス発生量を測定できるようにしたバッチ式の試験装置とした。メタン発酵槽40は、各試験温度となるように恒温槽で温度制御できるようにした。この試験装置を用い、以下の試験条件により試験を実施した。
メタン発酵槽40内に予め投入したメタン発酵汚泥は、中温(35℃程度)のメタン発酵汚泥とした。メタン発酵を行う試料は、食品廃棄物に対し、生クリームの添加量を変え脂質濃度を変えたものとする。試料はフードプロセッサで破砕しておく。予め、食品廃棄物、及び、生クリームのVTS(強熱減量)及び脂質濃度を測定し、脂質の割合が、有機物に対して目的の数値になるように混合した。その後希釈し、夫々の試料が、TS(蒸発残留物)濃度15%程度、VTS濃度14%程度となるように調整したものを試料とした。各試験条件における汚泥の投入量は6gとした。このときの負荷は、5.6g−VTS/l−槽である。
図5に示すように、有機物中の脂質割合を5%、15%、25%、35%、45%と異ならせた試料において、発酵温度を37℃、42℃の2種類として夫々を組み合わせ、試験1〜試験10としてメタン発酵処理を行った。試験1〜試験10のバッチ試験において、食品廃棄物6gを添加し、7日後のガス発生量を測定した。
この試験結果を図6及び図7に示す。図6は各試験のガス発生量を示す表で、図7は有機物中の脂質割合とガス発生量の関係を示すグラフである。
メタン発酵槽内に投入する試料において、有機物中の脂質割合が5%、10%と比較的低いもの、及び40%と高いものでは、発酵温度37℃のメタン発酵の方がややガス発生量が大きかったが、20%、30%では、発酵温度42℃の方がガス発生量が大きかった。しかし、40%では、37℃の方がガス発生量が大きいものの、双方ともガス発生量が極端に落ちている。
この結果から、食品廃棄物のメタン発酵では、有機物中の脂質割合が10%より大きく30%程度である場合、42℃という、通常の中温メタン発酵の37℃に対して5℃程度高い温度の方が優位になることがわかった。
次いで、メタン発酵処理の連続的な試験を行い、発明の効果を検証するとともに、42℃よりも高い45℃におけるメタン発酵処理の試験を行い、さらに高い効果が得られるかを検証した。
試験は、図8に示す試験装置を用いた。恒温器51を備えた恒温水槽50内に容量2Lのメタン発酵槽45を浸漬配置し、メタン発酵槽内温度を設定値に維持できるようにした。メタン発酵槽45は蓋で密閉してガラス管46を貫通し、該ガラス管46より試料となる食品廃棄物を供給するとともに、メタン発酵液を抜き出す構成とした。メタン発酵槽45には、槽内を撹拌する撹拌機47を設けた。該メタン発酵槽45で発生したバイオガスは、気液分離器52で気液分離した後、ガス量を測定するガスメータ53を経てガスホルダ54に回収されるようにした。
試験の温度条件は、Run1:発酵温度42℃、Run2:発酵温度37℃、Run3:発酵温度45℃とした。メタン発酵汚泥は、42℃付近でメタン発酵を行い約2ヶ月馴致したものを用いた。試料は、チーズ等を含む高脂質含有食品廃棄物をフードプロセッサで破砕したもの用いた。試料は、TS濃度16.6%、VTS濃度15.2%、有機物中の脂質割合約25%である。
図9に、運転日ごとの原料(試料)投入量、図10にその際のVTS負荷の推移を示した。
この試験結果を図11及び図12に示す。図11は、Run1、Run2、Run3におけるメタン発酵のガス発生量の推移を示すグラフである。また、図12は、試験期間中の投入VTSに対するガス発生量の関係を示すグラフである。
図11及び図12から、Run1:42℃のメタン発酵の方がガス発生量が多く、ガス発生量の増加が明らかとなり、また連続系において投入有機物の分解率の向上が達成されることもわかった。また、Run3:45℃の発酵では、Run1:42℃ほどのガス発生量は得られないが、Run2:37℃の発酵よりは、ややガス発生量が多いことがわかった。このことから、発酵温度が45℃より高い温度領域では、連続的に運転できない可能性があることがわかる。
さらに、メタン発酵槽の観察結果から、Run1:42℃、Run3:45℃の発酵に比較して、Run2:37℃の発酵の方がメタン発酵槽内における発泡現象が明らかに多かった。
この試験から、高濃度に脂質を含む食品廃棄物のメタン発酵では、従来から至適温度とされてきた中温領域の37℃に比較して、5℃高い42℃付近の発酵の方が優位であることが示された。
本発明によれば、分解性が悪くメタン発酵が難しい脂質を含有する食品廃棄物であっても、効率的に且つ安定してメタン発酵処理することが可能で、またより多くのエネルギーを回収することが可能であるため、厨芥、食品加工残渣等の処理システムに幅広く利用することができる。
本発明の第1実施形態に係る処理システムのブロック図である。 本発明の参考例に係る処理システムのブロック図である。 本発明の参考例に係る処理システムの制御方法を説明する図である。 実施例1の試験装置を示す概略構成図である。 実施例1における試験条件を示す表である。 実施例1における各試験のガス発生量を示す表である。 実施例1における有機物中の脂質割合とガス発生量の関係を示すグラフである。 実施例2の試験装置を示す概略構成図である。 実施例2における原料投入量の推移を示すグラフである。 実施例2におけるVTS負荷の推移を示すグラフである。 実施例2におけるガス発生量の推移を示すグラフである。 実施例2における投入VTSとガス発生量の関係を示すグラフである。 従来のメタン発酵処理システムを示すブロック図である。
符号の説明
1、12、15 前処理設備
2 調整槽
3、5、14、17 圧送ポンプ
4 メタン発酵槽
6 水処理設備
13 第1調整槽
16 第2調整槽
20 脂質含有食品廃棄物
22 液状廃棄物
23 消化汚泥
26 バイオガス
30 高脂質含有食品廃棄物
32 液状廃棄物(高脂質含有食品廃棄物)
33 他の食品廃棄物
35 液状廃棄物(他の食品廃棄物)
36 制御装置

Claims (2)

  1. 有機物中の脂質割合が10%以上30%以下の食品廃棄物をメタン発酵槽にてメタン発酵処理する食品廃棄物のメタン発酵処理方法において、
    前記食品廃棄物を破砕、選別した後、調整槽で可溶化処理し、該調整槽から排出される液状廃棄物を前記メタン発酵槽に供給し、該メタン発酵槽にて前記液状廃棄物を40℃以上45℃以下の温度条件でメタン発酵処理することを特徴とする食品廃棄物のメタン発酵処理方法。
  2. 有機物中の脂質割合が10%以上30%以下の食品廃棄物をメタン発酵処理するメタン発酵槽を備えた食品廃棄物のメタン発酵処理システムにおいて、
    前記食品廃棄物を破砕、選別する前処理装置と、該前処理した食品廃棄物を可溶化する調整槽とを備え、
    前記メタン発酵槽は、前記調整槽から排出される液状廃棄物が供給され、該液状廃棄物を40℃以上45℃以下の温度条件でメタン発酵処理する構成を備えたことを特徴とする食品廃棄物のメタン発酵処理システム。
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