JP5365882B2 - 放電ランプ点灯装置 - Google Patents

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Description

本発明は、例えばプロジェクタ装置や露光装置などの光源として好適に用いることができる放電ランプ点灯装置に関する。
例えばプロジェクタ装置や露光装置などの光源としては、発光管内に一対の電極が互いに対向するよう配置されてなるショートアーク型の放電ランプが用いられている。
このような放電ランプとしては、電極頭部および電極軸部が切削によって一体に形成され、当該電極頭部にコイルが巻き回されてなる電極を備えてなるもの(特許文献1参照)、電極頭部にコイルが巻き回された状態で溶融されてなるコイル部が形成された電極を備えてなるもの(特許文献2参照)、電極頭部の後端面に、当該電極頭部の後端の径と同一の外径を有する円筒状部が形成されてなる電極を備えてなるもの(特許文献3参照)が知られている。
しかしながら、これらの放電ランプにおいては、長時間点灯させると、例えば電極軸部における発光管内に突出する部分に、クラックや電極折れなどの破損が生じる、という問題がある。
特開2009−193768号公報 特開2005−19262号公報 特開2010−165661号公報
本発明者らは、電極軸部に破損が生じる原因について鋭意検討を重ねた結果、放電ランプに供給される交流電流中のリップルによって電極が振動することにより、電極軸部に破損が生じることが判明した。
具体的に説明すると、図11(イ)に示すように、放電ランプの電極95は、電極軸部97の先端に電極頭部96が形成されてなり、電極軸部97の基端部分が発光管90における封止部92内に埋設されることによって保持されることによって、電極頭部96が発光管90における発光部91内に位置するよう配置されている。
そして、電極頭部96の質量は電極軸部97の質量より相当に大きいため、放電ランプに交流電流が供給されて当該放電ランプが点灯した状態においては、電極95が振動することにより、図11(ロ)に示すように、電極軸部97における発光管90内に突出する部分が弾性的に変形し、この現象が長時間繰り返されることによって、電極軸部97における発光管90内に突出する部分に、クラックや電極折れなどの破損が生じる。
本発明者らは、放電ランプに供給される交流電流の特性と、電極95の破損との関係を調べたところ、交流電流のリップルの周波数と電極95の固有周波数が近い値であればある程、電極95に損傷が生じやすく、また、交流電流のリップルパワーが大きければ大きい程、電極95に損傷が生じやすいことが判明した。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、その目的は、放電ランプを長時間点灯させても電極軸部に破損が生じることを防止または抑制することができる放電ランプ点灯装置を提供することにある。
本発明の放電ランプ点灯装置は、それぞれ電極軸部の先端に電極頭部が形成されてなるタングステン製の一対の電極が、発光管内に互いに対向して配置され、当該電極の各々は、電極軸部の基端部分が前記発光管における封止部の各々に埋設されることによって保持されてなるショートアーク型の放電ランプと、この放電ランプに交流電流を供給する給電装置とを備えてなる放電ランプ点灯装置において、
下記式(1)により求められる、発光管内における電極の固有周波数をfe(Hz)、放電ランプに供給される交流電流のリップル周波数をfd(Hz)、当該交流電流のリップルパワーをPr(W)としたとき、下記式(2)を満足することを特徴とする。
[但し、aは、電極における集中質量を有する片持ち梁の曲げ振動の固有値、le は、電極軸部における発光管内に突出する部分の基端から電極頭部の重心までの距離(mm)×0.623の値、Eは電極のヤング率、Iは電極軸部の断面二次モーメント、ρは電極の密度、Sは電極軸部における軸方向に垂直な断面の断面積である。]
[但し、Vhは、電極頭部の体積(mm3 )、Vaは、電極軸部における発光管内に突出する部分の体積(mm3 )である。]
本発明の放電ランプ点灯装置においては、前記電極を構成するタングステンの純度が5N以上であることが好ましい。
本発明の放電ランプ点灯装置によれば、給電装置から放電ランプに供給される交流電流が上記式(2)を満足することにより、放電ランプの点灯中において電極に生じる振動が小さいため、放電ランプを長時間点灯させた場合であっても、電極軸部に破損が生じることを防止または抑制することができる。
本発明の放電ランプ点灯装置に用いられる放電ランプの一例における構成を示す説明用断面図である。 図1に示す放電ランプにおける一方の電極を拡大して示す説明用断面図である。 本発明の放電ランプ点灯装置に用いられる給電装置の一例における回路の構成を示す説明図である。 連続点灯試験終了後の放電ランプAにおける電極の破損の有無について、電極の固有周波数と交流電流のリップル周波数との差と、交流電流のリップルパワーとの関係を示すグラフである。 連続点灯試験終了後の放電ランプBにおける電極の破損の有無について、電極の固有周波数と交流電流のリップル周波数との差と、交流電流のリップルパワーとの関係を示すグラフである。 連続点灯試験終了後の放電ランプCにおける電極の破損の有無について、電極の固有周波数と交流電流のリップル周波数との差と、交流電流のリップルパワーとの関係を示すグラフである。 放電ランプA〜放電ランプCの各々における電極の破損の有無の臨界線を示すグラフである。 放電ランプA〜放電ランプCの各々において、電極頭部の体積と発光管から突出する電極軸部の体積との比、および電極の破損の有無の臨界線の傾きをプロットしたグラフである。 放電ランプにおける電極の変形例を示す説明用断面図である。 放電ランプにおける電極の他の変形例を示す説明用断面図である。 放電ランプの点灯中における電極軸部が弾性的に変形した状態を示す説明用断面図である。
以下、本発明の放電ランプ点灯装置の実施の形態について説明する。
本発明の放電ランプ点灯装置は、ショートアーク型の放電ランプと、この放電ランプに交流電流を供給する給電装置とを備えてなるものである。
図1は、本発明の放電ランプ点灯装置に用いられる放電ランプの一例における構成を示す説明用断面図である。
この放電ランプ10は、内部に放電空間を形成する外形が略楕円球状の発光部12と、この発光部12の両端の各々に一体に連設された、管軸に沿って外方に伸びるロッド状の封止部13とよりなる発光管11を有する。この発光管11における発光部12内には、それぞれ棒状の電極軸部14b,15bの先端に当該電極軸部14b,15bより大きい径を有する略円柱状の電極頭部14a,15aが連続して形成されてなる互いに同一の構成の一対の電極14,15が、発光管11の管軸に沿って互いに対向するよう配置されている。電極14,15の各々は、電極軸部14b,15bの基端部分が封止部13の各々に埋設されることによって保持されている。
発光管11における封止部13の各々の内部には、モリブデンよりなる金属箔16,17が気密に埋設され、金属箔16,17の各々の一端には、一対の電極14,15の各々における電極軸部14b,15bの基端が溶接されて電気的に接続されており、一方、金属箔16,17の他端には、封止部13の外端から外方に突出する外部リード18,19が溶接されて電気的に接続されている。
発光管11は石英ガラスにより構成され、この発光管11の発光部12内には、例えば、水銀、希ガスおよびハロゲンが封入されている。
水銀は、発光物質として封入されるものであり、その封入量は例えば0.08mg/mm3 以上とされる。
希ガスは、点灯始動性を改善するためのものであり、その封入圧は、静圧で例えば10〜26kPaである。また、希ガスとしては、アルゴンガスを好適に用いることができる。
ハロゲンは、発光部12内においてハロゲンサイクルを形成すると共に、これにより、電極物質であるタングステンが発光部12の内壁に付着することを抑制するためのものであり、その封入量は、例えば1×10-6〜1×10-2μmol/mm3 である。また、ハロゲンとしては、沃素、臭素、塩素などを用いることができる。
図2は、一方の電極14を拡大して示す説明用断面図である。この例の電極14は、電極頭部14aおよび電極軸部14bが、適宜の塊状のタングステンよりなる電極材料を切削することによって一体に形成されてなるものであり、電極頭部14aの外周面には、タングステンよりなる線材が巻き回されてなるコイル部14cが形成されている。
また、電極14を構成するタングステンとしては、純度が5N(99.999%)以上のものを用いることが好ましい。
また、他方の電極15は、図2に示す一方の電極14と同様の構成である。
図3は、本発明の放電ランプ点灯装置に用いられる給電装置の一例における回路の構成を示す説明図である。この給電装置20は、直流電圧が供給される降圧チョッパ回路21と、この降圧チョッパ回路21の出力側に接続された、直流電圧を交流電圧に変化させて放電ランプ10に供給するフルブリッジ型インバータ回路(以下、「フルブリッジ回路」ともいう。)22と、放電ランプ10に直列接続されたコイルL1と、コンデンサC1と、スタータ回路23と、フルブリッジ回路22におけるスイッチング素子Q1〜Q4を駆動するドライバ24と、リップル制御部26を有する制御機構25とにより構成されている。
降圧チョッパ回路21は、直流電圧Vdcが供給される+側電源端子に接続されたスイッチング素子Qxと、リアクトルLxと、スイッチング素子QxおよびリアクトルLxの接続点と−側電源端子との間において当該接続点にカソード側端子が接続されたダイオードDxと、リアクトルLxの出力側端子に接続された平滑コンデンサCxと、平滑コンデンサCxの−側端子およびダイオードDxのアノード側端子に接続された電流検出用の抵抗Rxとにより構成されている。
スイッチング素子Qxは所定のデューティによってON−OFF駆動され、これにより、直流電圧Vdcが当該デューティに応じた電圧に降圧される。また、降圧チョッパ回路21の出力側端子には、抵抗R1,R2よりなる電圧検出用直列回路Vdが設けられている。
フルブリッジ回路22は、ブリッジ状に接続された4つのスイッチング素子Q1〜Q4によって構成されている。これらのスイッチング素子Q1〜Q4は、ドライバ24から出力される信号に基づいて、スイッチング素子Q1〜Q4の各々に対応する駆動回路G1〜G4が作動することによって駆動され、互いに対角に配置されたスイッチング素子Q1,Q4およびスイッチング素子Q2,Q3を交互にON状態にすることにより、スイッチング素子Q1,Q2の接続点とスイッチング素子Q3,Q4の接続点との間に矩形波状の交流電圧が発生する。
スタータ回路23は、抵抗R3およびスイッチング素子Q5よりなる直列回路と、コンデンサC2と、トランスT1とにより構成されている。このようなスタータ回路23においては、駆動回路G5によってスイッチング素子Q5をオンにすると、コンデンサC2に充電されていた電荷がスイッチング素子Q5およびトランスT1の一次側巻線を介して放電され、これにより、トランスT1の二次側にパルス状の高電圧が発生する。そして、この高電圧が放電ランプ10の補助電極Etに印加されることにより、当該放電ランプ10が点灯する。
制御機構25におけるリップル制御部26は、放電ランプ10に供給される交流電流におけるリップルパワーおよびリップル周波数を制御する機能を有するものである。具体的に説明すると、降圧チョッパ回路21におけるスイッチング素子Qxについて、そのON−OFFの周期を長くしたり短くしたりすると、そのON−OFFの周期に応じて、放電ランプ10に供給される交流電流におけるリップルパワーおよびリップル周波数が変化する。従って、リップル制御部26によってスッチング素子QxのON−OFFの周期を調整することにより、放電ランプ10に供給される交流電流におけるリップルパワーおよびリップル周波数が、後述する式(2)を満足するよう制御される。
本発明の放電ランプ点灯装置においては、給電装置20から放電ランプ10に交流電流が供給されることにより、当該放電ランプ10が点灯される。放電ランプ10に供給される交流電流の電力は、例えば180〜450Wである。
そして、本発明においては、下記式(1)により求められる、発光管11内における電極14,15の固有周波数をfe(Hz)、放電ランプ10に供給される交流電流のリップル周波数をfd(Hz)、当該交流電流のリップルパワーをPr(W)としたとき、下記式(2)を満足するよう、給電装置20によって放電ランプ10に供給される交流電流が制御される。
上記式(1)において、aは、電極14,15における集中質量を有する片持ち梁の曲げ振動の固有値である。
e は、電極軸部14b,15bにおける発光管12内に突出する部分T(図2参照)の基端E(図2参照)から電極頭部14a,15aの重心G(図2参照)までの距離L(mm)×0.623の値である。
Eは、電極14,15のヤング率であり、電極14,15の材質はタングステンであることから、その値は280,000MPaである。
Iは電極軸部14b,15bの断面二次モーメントであり、電極軸部14b,15bにおける軸方向に垂直な断面の形状が円形である場合には、その直径をd(mm)としたとき、I=πd4 /64である。
ρは電極14,15の密度であり、電極14,15の材質はタングステンであることから、その値は19.2×10-6(kg/mm3 )である。
Sは電極軸部14b,15bにおける軸方向に垂直な断面の断面積であり、電極軸部14b,15bにおける軸方向に垂直な断面の形状が円形である場合には、その直径をd(mm)としたとき、S=π(d/2)2 である。
以上において、「電極軸部14b,15bにおける発光管12内に突出する部分T」とは、発光管11の内壁から離隔する部分を意味するが、電極軸部14b,15bにおける封止部13内に位置する部分においては、当該封止部13と電極軸部14b,15bとの間に極僅かな隙間を有することがあるため、本発明においては、電極軸部14b,15bの外周面と発光管11との間の離間距離が10μm以上である部分を「電極軸部14b,15bにおける発光管11内に突出する部分T」と定義する。また、電極軸部14b,15bに凹凸が存在する場合は、当該電極軸部14b,15bの凸部と発光管11との間の離間距離が10μm以上である部分を「電極軸部14b,15bにおける発光管12内に突出する部分T」とする。
また、式(2)において、Vhは、電極頭部14a,15aの体積(mm3 )であり、Vaは、電極軸部14b,15bにおける発光管11内に突出する部分Tの体積(mm3 )である。
また、リップルパワー[Pr]は、放電ランプ10に供給される交流電流の電圧値をVL とし、当該交流電流におけるリップルの振幅の大きさの2倍の値(リップル幅)をΔIとしたとき、Pr=VL ×ΔIにより求められるものである。
本発明の放電ランプ点灯装置において、上記式(2)は、以下のような試験を行うことにより実験的に導かれたものである。
〈放電ランプの作製〉
図1に示す構成に従い、下記の仕様により、定格入力電力が210Wの放電ランプA、定格入力電力が275Wの放電ランプB、および定格入力電力が330Wの放電ランプCを作製した。
1.放電ランプAの仕様
〔発光管(11)〕
発光管(11)の材質は石英ガラスで、発光部(12)の最大外径が10mm、発光部(12)の内容積が66mm3 である。
〔電極(14,15)〕
電極(14,15)の材質は、タングステン(純度99.999%)で、電極軸部(14b,15b)の直径(d)が0.4mm、電極頭部(14a,15a)の体積(Vh)が2.7mm3 、発光管(11)内に突出する電極軸部(14b,15b)の基端部から電極頭部(14a,15a)の重心までの距離が2.5mm、発光管(11)内に突出する電極軸部(14b,15b)の体積:0.63mm3 であり、発光管(11)内における電極(14,15)の固有周波数feが76kHz(a=3.927,le =1.5575,E=280,000MPa,I=1.256×10-3),ρ=19.2×10-6kg/mm3 ,S=0.1256mm2 )である。
〔封入物〕
発光管(11)内には、発光物質として水銀0.2mg/mm3 、ハロゲンとして臭素4×10-4μmol/mm3 が封入されると共に、希ガスとしてアルゴンガスが13kPaの封入圧(静圧)で封入されている。
2.放電ランプBの仕様
〔発光管(11)〕
発光管(11)の材質は石英ガラスで、発光部(12)の最大外径が11.3mm、発光部(12)の内容積が80mm3 である。
〔電極(14,15)〕
電極(14,15)の材質は、タングステン(純度99.999%)で、電極軸部(14b,15b)の直径(d)が0.4mm、電極頭部(14a,15a)の体積(Vh)が4.0mm3 、発光管(11)内に突出する電極軸部(14b,15b)の基端部から電極頭部(14a,15a)の重心までの距離が2.9mm、発光管(11)内に突出する電極軸部(14b,15b)の体積:0.5mm3 であり、発光管(11)内における電極(14,15)の固有周波数feが71kHz(a=3.927,le =1.813,E=280,000MPa,I=1.256×10-3,ρ=19.2×10-6kg/mm3 ,S=0.1256mm2 )である。
〔封入物〕
発光管(11)内には、発光物質として水銀0.2mg/mm3 、ハロゲンとして臭素4×10-4μmol/mm3 が封入されると共に、希ガスとしてアルゴンガスが13kPaの封入圧(静圧)で封入されている。
3.放電ランプCの仕様
〔発光管(11)〕
発光管(11)の材質は石英ガラスで、発光部(12)の最大外径が13mm、発光部(12)の内容積が120mm3 である。
〔電極(14,15)〕
電極(14,15)の材質は、タングステン(純度99.999%)で、電極軸部(14b,15b)の直径(d)が0.5mm、電極頭部(14a,15a)の体積(Vh)が5.0mm3 、発光管(11)内に突出する電極軸部(14b,15b)の基端部から電極頭部(14a,15a)の重心までの距離が3.2mm、発光管(11)内に突出する電極軸部(14b,15b)の体積が0.4mm3 であり、発光管(11)内における電極(14,15)の固有周波数feが50.8kHz(a=3.927,le =1.9936,E=280,000MPa,I=3.066×10-3),ρ=19.2×10-6kg/mm3 ,S=0.19625mm2 )である。
〔封入物〕
発光管(11)内には、発光物質として水銀0.2mg/mm3 、ハロゲンとして臭素4×10-4μmol/mm3 が封入されると共に、希ガスとしてアルゴンガスが13kPaの封入圧(静圧)で封入されている。
〈放電ランプの連続点灯試験〉
上記の放電ランプA〜放電ランプCを複数本用意し、これらの放電ランプについて、370Hzの基本周波数成分100msec毎に46.25Hzの低周波数成分が1サイクル挿入された、それぞれの定格入力電力値による交流電流によって300時間連続して点灯させる連続点灯試験を、放電ランプに供給される交流電流におけるリップルパワーおよびリップル周波数を変えて行い、各放電ランプの電極の状態を調べた。結果を図4、図5および図6に示す。
〈試験結果の検討〉
図4は、連続点灯試験終了後の放電ランプAにおける電極の破損の有無について、電極の固有周波数と交流電流のリップル周波数との差と、交流電流のリップルパワーとの関係を示すグラフであり、図5は、連続点灯試験終了後の放電ランプBにおける電極の破損の有無について、電極の固有周波数と交流電流のリップル周波数との差と、交流電流のリップルパワーとの関係を示すグラフであり、図6は、連続点灯試験終了後の放電ランプCにおける電極の破損の有無について、電極の固有周波数と交流電流のリップル周波数との差と、交流電流のリップルパワーとの関係を示すグラフである。
図4、図5および図6において、横軸は電極の固有周波数[fe]と交流電流のリップル周波数[fd]との差の絶対値[|fe−fd|](以下、「絶対値[|fe−fd|」という。)、縦軸は交流電流のリップルパワー(Pr)を示し、○は連続点灯試験終了後において電極に破損が認められなかった放電ランプ、×は連続点灯試験終了後において電極に破損が認められた放電ランプである。
図4〜図6から明らかなように、放電ランプA〜放電ランプCのいずれにおいても、絶対値[|fe−fd|]が小さい程、すなわち、交流電流のリップル周波数[fd]が電極の固有周波数[fe]に近似する程、リップルパワーが小さくても電極に破損が生じやすくなる、換言すれば、絶対値[|fe−fd|]が大きい程、リップルパワーが大きくても電極に破損が生じにくくなる。
また、図4〜図6の各々について、電極の破損の有無の分布状況を分析すると、それぞれ直線Scで示すように、臨界線が存在する、換言すれば、リップルパワーの値が、絶対値[|fe−fd|]との関係において臨界線である直線Sc上に位置する値以下であれは、電極の破損が生じない。
従って、発光管内における電極の固有周波数をfe、放電ランプに供給される交流電流のリップル周波数をfd、当該交流電流のリップルパワーをPr、図4〜図6の各々における直線Scの傾きをgとしたとき、下記式(2−1)を満足すれば、電極の破損が生じないことが理解される。
式(2−1):Pr≦|fe−fd|×g
また、臨界線である直線Scの関数を求めたところ、図4についてはy=2.3333x、図5についてはy=2.2x、図6についてはy=1.32xであり、図7にも示すように、放電ランプの仕様によって直線Scの傾きが変化することが確認された。
そして、図4〜図6において、臨界線である直線Scの傾きの変化について分析をした結果、電極の形状、電極の大きさによるものであることが判明した。
具体的に説明すると、定格入力電力が大きい放電ランプの電極においては、電極頭部の体積が大きいものが必要となる。一方、電極軸部については、放電ランプの点灯中において、電極材料と発光管材料との熱膨張差に起因する発光管の破損を防止するために、当該電極軸部の径が小さいものであることが好ましい。そのため、放電ランプの定格入力電力が大きくなるに従って、電極としては、電極頭部の体積と電極軸部の体積との比が大きいものが用いられる。
上記の放電ランプAおよび放電ランプBについて確認すると、定格入力電力が210Wの放電ランプAについては、電極頭部の体積[Vh]と発光管から突出する電極軸部の体積[Va]との比(以下、「頭軸体積比」という。)[Vh/Va]が4.28、定格入力電力が275Wの放電ランプBについては、頭軸体積比[Vh/Va]が7.94、定格入力電力が330Wの放電ランプCについては、頭軸体積比[Vh/Va]が12.5である。
そして、図8に示すように、横軸を頭軸体積比[Vh/Va]とし、縦軸を臨界線(直線Sc)の傾き[g]とするグラフ上に、放電ランプA〜放電ランプCの各々における頭軸体積比[Vh/Va]および縦軸を臨界線(直線Sc)の傾きをプロットし、各プロットの近似直線Saの関数を求めたところ、y=−0.13x+3.0であり、yは直線Scの傾き[g]であり、xが頭軸体積比[Vh/Va]であることから、電極頭部の体積をVh、発光管から突出する電極軸部の体積をVa、図4〜図6の各々における直線Scの傾きをgとしたとき、下記式(2−2)が導かれる。
式(2−2):g=−0.13×(Vh/Va)+0.3
そして、上記式(2−2)を上記式(2−1)に代入することにより、上記式(2)が導かれる。
本発明の放電ランプ点灯装置によれば、給電装置20から放電ランプ10に供給される交流電流が上記式(2)を満足することにより、放電ランプ10の点灯中において電極14,15に生じる振動が小さいため、放電ランプ10を長時間点灯させた場合であっても、電極軸部14b,15bに破損が生じることを防止または抑制することができる。
本発明の放電ランプ点灯装置においては、上記の実施の形態に限定されず、種々の変更を加えることが可能である。
例えば放電ランプ10の電極14,15は、電極軸部14b,15bの先端に電極頭部14a,15aが形成されてなるタングステン製のものであれば、具体的な構造は特に限定されず、例えば図9に示すように、電極頭部14にコイルが巻き回された状態で溶融されてなるコイル部14cが形成されてなるものであってもよく、図10に示すように、電極頭部14aの後端面に、当該電極頭部14aの後端の径と同一の外径を有する円筒状部14dが形成されてなるものであってもよい。
また、一対の電極14,15は互いに異なる構造のものであってもよい。
10 放電ランプ
11 発光管
12 発光部
13 封止部
14a,15a 電極頭部
14b,15b 電極軸部
14c コイル部
14d 円筒状部
16,17 金属箔
18,19 外部リード
20 給電装置
21 降圧チョッパ回路
22 フルブリッジ型インバータ回路
23 スタータ回路
24 ドライバ
25 制御機構
26 リップル制御部
90 発光管
91 発光部
92 封止部
95 電極
96 電極頭部
97 電極軸部
C1,C2 コンデンサ
Cx 平滑コンデンサ
Dx ダイオード
E 電極軸部における発光管内に突出する部分の基端
Et 補助電極
G 電極頭部の重心
G1〜G5 駆動回路
L1 コイル
Lx リアクトル
Q1〜Q5,Qx スイッチング素子
R1,R2,R3,Rx 抵抗
T 電極軸部における発光管内に突出する部分
T1 トランス

Claims (2)

  1. それぞれ電極軸部の先端に電極頭部が形成されてなるタングステン製の一対の電極が、発光管内に互いに対向して配置され、当該電極の各々は、電極軸部の基端部分が前記発光管における封止部の各々に埋設されることによって保持されてなるショートアーク型の放電ランプと、この放電ランプに交流電流を供給する給電装置とを備えてなる放電ランプ点灯装置において、
    下記式(1)により求められる、発光管内における電極の固有周波数をfe(Hz)、放電ランプに供給される交流電流のリップル周波数をfd(Hz)、当該交流電流のリップルパワーをPr(W)としたとき、下記式(2)を満足することを特徴とする放電ランプ点灯装置。
    [但し、aは、電極における集中質量を有する片持ち梁の曲げ振動の固有値、le は、電極軸部における発光管内に突出する部分の基端から電極頭部の重心までの距離(mm)×0.623の値、Eは電極のヤング率、Iは電極軸部の断面二次モーメント、ρは電極の密度、Sは電極軸部における軸方向に垂直な断面の断面積である。]
    [但し、Vhは、電極頭部の体積(mm3)、Vaは、電極軸部における発光管内に突出する部分の体積(mm3)である。]
  2. 前記電極を構成するタングステンの純度が5N以上であることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ点灯装置。
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