JP5365824B2 - コハク酸ジアルキルの製造方法および1,4−ブタンジオールの製造方法 - Google Patents
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さらに本発明は上記組成物あるいはコハク酸アンモニウムの希薄水溶液からコハク酸ジアルキル等を製造する方法に関するものである。
(1)コハク酸アンモニウムを主成分として含有する希薄水溶液から、水を分離し、かつコハク酸アンモニウムを部分的に脱アンモニア反応させることを特徴とするコハク酸系組成物の製造方法。
(2)コハク酸アンモニウムを主成分として含有する希薄水溶液が、バイオマス由来のものである上記(1)に記載のコハク酸系組成物の製造方法。
(3)コハク酸アンモニウムを主成分として含有するバイオマス由来の希薄水溶液から、水を分離すると共に、該コハク酸アンモニウムを部分的に脱アンモニア反応させ、得られるコハク酸系組成物中にコハク酸アンモニウム以外に、コハク酸モノアンモニウム、コハク酸、コハク酸モノアミド、コハク酸アミド、コハク酸イミド、コハク酸エステルのうちの少なくとも一種を含み、該コハク酸系組成物中の炭素(C)に対する窒素(N)の原子比N/Cを0.20<N/C<0.47の範囲とすることを特徴とするコハク酸系組成物の製造方法。
(5)コハク酸アンモニウムの希薄水溶液から、水を分離し、かつ該コハク酸アンモニウムを部分的に脱アンモニア反応させ、アンモニアを部分的に脱離させる際に、反応を50〜230℃で減圧、常圧、加圧下のいずれかの条件下で行うことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のコハク酸系組成物の製造方法。
(6)コハク酸アンモニウムの希薄水溶液から、水を分離し、かつ該コハク酸アンモニウムを部分的に脱アンモニア反応させアンモニアを部分的に脱離させる際に、窒素、空気、炭酸ガス、水蒸気、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルから選ばれた何れかのガスまたは液の流通下に行うことを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のコハク酸系組成物の製造方法。
(8)コハク酸アンモニウムの希薄水溶液から、水を分離し、かつ該コハク酸アンモニウムを部分的に脱アンモニア反応させアンモニアを部分的に脱離させる際に、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロエタンから選ばれた水と共沸蒸留可能な溶媒の存在下に行うことを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のコハク酸系組成物の製造方法。
(9)コハク酸系組成物が、20質量%以下の水分を含む上記(1)〜(8)のいずれかに記載のコハク酸系組成物の製造方法。
(11)上記(10)の第二工程によりコハク酸ジアルキル、コハク酸、無水コハク酸の何れかを製造し、これらと未反応成分および副生成分を分離し、分離して得られた脱アンモニア未反応物および副生成分を上記(10)の第一工程で得られたコハク酸系組成物と合わせて、上記(10)の脱アンモニア反応(第二工程)を行うことを特徴とするコハク酸ジアルキル、コハク酸、無水コハク酸のいずれかを製造する方法。
(12)コハク酸アンモニウムを主成分として含有する希薄水溶液から、アルコールの存在下または不存在下に水を分離し、かつコハク酸アンモニウムを部分的に脱アンモニア反応させることを特徴とするコハク酸ジアルキル、コハク酸、無水コハク酸のいずれかの製造方法。
(14)上記(10)又は(11)記載の第一工程及び第二工程の脱アンモニア反応により生成したアンモニアを回収し、回収したアンモニアをバイオマス由来源であるコハク酸アンモニウムの発酵合成に循環使用することを特徴とする上記(2)〜(9)のいずれかに記載のコハク酸系組成物の製造方法。
(15)上記(12)または(13)において脱アンモニア反応により生成したアンモニアを回収し、回収したアンモニアをバイオマス由来源であるコハク酸アンモニウムの発酵合成に循環使用することを特徴とする上記(12)または(13)に記載のコハク酸ジアルキル、コハク酸、無水コハク酸のいずれかの製造方法。
(16)上記(10)〜(13)のいずれかまたは(15)に記載の製造方法により、コハク酸ジアルキル、コハク酸、無水コハク酸のいずれかを得、次いで該コハク酸ジアルキル、コハク酸、無水コハク酸及びこれらの原料であるコハク酸系組成物のいずれかを水素化することを特徴とする1,4―ブタンジオールの製造方法。
(18)コハク酸アンモニウムを主成分とする化合物が、バイオマス由来のものである上記(17)に記載のコハク酸系組成物。
(19)コハク酸系組成物が、コハク酸ジアルキル、コハク酸、無水コハク酸の何れかの製造に用いられるものである上記(17)又は(18)に記載のコハク酸系組成物。
本発明では、コハク酸アンモニウムからの水の分離とアンモニアの分離を同時に行うことにより得られるコハク酸系組成物が熱的に安定であり、また、該組成物中に含まれるコハク酸イミド、コハク酸アミド等も脱アンモニア反応によりポリエステルモノマーへ転換でき(実施例9,10参照)、工業的に有利に前記の目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
本発明は、以下に述べる第1〜第4の4つの反応方法から構成される。第1の方法は、コハク酸アンモニウムを主成分として含有する希薄水溶液からコハク酸系組成物を製造する方法(第一工程)である。第2の方法は、該コハク酸系組成物について、エステル化反応、加水分解反応等により、さらに脱アンモニア反応を促進し、アンモニアの回収率を向上させ、コハク酸ジアルキル、コハク酸、無水コハク酸等を製造する方法(第二工程)である。第3の方法は、第1及び第2の方法を連続的に行う方法である。即ち、第一工程及び第二工程の反応を、前記コハク酸系組成物を単離することなく、連続的に行う方法である。第4の方法は、前記の第一工程及び第二工程の反応により得られるコハク酸系組成物、コハク酸ジアルキル、コハク酸、無水コハク酸等を水素化して1,4−ブタンジオールを製造する方法である。
本発明では、コハク酸系組成物を単離することなく、大量の水を含む発酵合成コハク酸アンモニウム水溶液をそのままポリエステルモノマー製造用の工業原料として使用できることを見出した。このコハク酸系組成物は、コハク酸ジアルキル等の原料として有用なものである。また、コハク酸系組成物から誘導されたコハク酸ジアルキル等は、1,4―ブタンジオールの原料として有用なものである。
上記の希薄水溶液として、好ましくはデンプン、グルコース等の原料から発酵合成で得られるバイオマス由来のコハク酸アンモニウムを主成分とする水溶液が用いられる。
コハク酸アンモニウムは、下記式(1)で表される化合物である。
H4NOOCCH2CH2COONH4 (1)
このバイオマス由来の水溶液は通常水を70〜98質量%含む。また溶質はコハク酸アンモニウムを主成分として、例えば2〜30質量%を含み、その他、酢酸、乳酸、エタノール、蟻酸等を少量含む場合もある。また、コハク酸アンモニウムは、コハク酸モノアンモニウム[コハク酸の酸性塩(H4NOOCCH2CH2COOH)]が不純物として含まれていても反応原料として使用できる。
また、第一工程は、反応系にアルコールを存在させて行うことができる。アルコール(ROH)としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、フーゼル油、オクチルアルコールが用いられる。好ましいアルコールとしては、メタノール、エタノール、ブタノール等のバイオマスから誘導可能なアルコールが挙げられる。このアルコールの使用量の制限はなく、必要に応じてリサイクル使用できる。さらに、第一工程の反応を、溶媒の存在下に行うことができる。好ましい溶媒としてはベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロエタンの何れかの水と共沸蒸留可能な溶媒が挙げられる。
コハク酸アンモニウム水溶液(20wt%)の脱アンモニア実験を行ったところ、コハク酸、コハク酸モノアミド、コハク酸アミド、コハク酸イミド、コハク酸エステル等が得られた。また、生成物の生成割合(モル%)は脱アンモニア反応を行った反応温度(50〜230℃)により異なった。次に前記のコハク酸アミドとコハク酸イミドについて、脱アンモニアの反応性の難易を調べたところ、脱アンモニアの反応性はコハク酸アミド<コハク酸イミドの順であることが分かった。そこで、本発明の部分的脱アンモニア工程(第一工程)の温度範囲としては、実際に脱アンモニア反応を行った反応温度である「50〜230℃」とした。また好ましい温度範囲としては、部分的脱アンモニア工程(第一工程)の生成物の中で、コハク酸の生成割合が高く、コハク酸イミドの生成割合が低いところを好ましい温度範囲「95〜150℃」とした。
上記の第一工程で得られるコハク酸系組成物は、前記式(1)で示されるコハク酸アンモニウムの水溶液から水を分離すると同時にコハク酸アンモニウムを部分的に脱アンモニア化して得られたものであり、この脱アンモニア生成物は、未反応のコハク酸アンモニウム以外に、コハク酸モノアンモニウム、コハク酸、コハク酸モノアミド、コハク酸アミド、コハク酸イミド、コハク酸エステル(コハク酸ジアルキル、コハク酸モノアルキル、コハク酸モノアミドモノアルキルを含むコハク酸のエステル誘導体)の少なくとも一種を含む。
その理由はN/Cが0.20以下では、コハク酸系組成物中で、脱アンモニア反応が比較的遅いコハク酸アミドやコハク酸イミドの生成割合が増加するため好ましくない。またN/Cが0.47以上ではコハク酸アンモニウムと水の分離に、常温近辺の低温蒸留又は水に対する溶解度が高いコハク酸アンモニアの晶析等が必要となり、コハク酸アンモニウム水溶液からの水分離やアンモニアの脱離がコスト高になるため好ましくない。
前記第一工程で得られるコハク系酸組成物は20質量%以下の水分を含んでも良い。20質量%を超える水分が存在しても、第一工程以降の操作は可能であるが、反応装置の容量が増大するので好ましくない。
上記の第一工程及び第二工程の反応は、回分式又は連続式いずれの反応装置を用いて、コハク酸系組成物を分離し、又は分離せずに行うことができる。第一工程及び第二工程の反応は、同一反応器又は別の反応器を使用して、コハク酸系組成物を分離せずに連続的に行うこともできる。
本発明の第3の方法は、[0021]項で述べたように、上記でコハク酸系組成物を分離せずに連続的に行う場合の反応で、コハク酸アンモニウムの希薄水溶液からアルコールの存在下または不在下に脱アンモニア反応させることにより、コハク酸ジアルキル、コハク酸、無水コハク酸を直接製造する方法である。この反応の温度、時間等は上記の第一工程、第二工程の条件をそのまま採用することができる。
また第一工程及び第二工程の脱アンモニア反応により回収されたアンモニアは、水溶液のまま、また必要に応じて脱水されボンベ等に貯蔵して、コハク酸発酵合成工程で循環使用される。
コハク酸ジアルキル等の水素化反応による1,4―ブタンジオールの製造は、通常、Ru/カーボン触媒又はRu2O5触媒の存在下、150〜200℃、70〜95MPa、4〜10時間の条件下に行われる。また、触媒Re2O7を用いて、200〜270℃、23〜30MPa、3〜10時間の条件下で水素化反応を行い1,4−ブタンジオールを製造することができる。
図1は、コハク酸アンモニウム水溶液から共存する多量の水を分離し、同時にコハク酸アンモニウムの部分的脱アンモニア反応を行い、コハク酸系組成物を製造する工程(第一工程)を示している(実施例1〜6参照)。この実施例ではN/Cは0.20<N/C<0.47の値が得られた。回収されたアンモニアは脱水して、またはアンモニア水溶液として循環使用される。なお、実施例では、コハク酸アンモニウムとして市販の試薬を使用しているが、発酵液から得られるコハク酸アンモニウムを使用しても同様の結果が得られ、市販試薬を用いた実施例が有効であることが分かった。
図2は、コハク酸アンモニウム水溶液から共存する多量の水を分離し、同時にアルコール(ROH)を反応系内に共存させながらコハク酸アンモニウムの部分的脱アンモニア反応を行い、コハク酸系組成物を製造する工程(第一工程)を示している(実施例6参照)。回収されたアンモニアは脱水して、または水溶液として循環使用される。また回収されたROHは循環使用される。
図3は、コハク酸アンモニウム水溶液から共存する多量の水を分離し、同時にコハク酸アンモニウムの部分的脱アンモニア反応を行い、コハク酸系組成物を製造する工程(第一工程)とROH及び触媒の存在下にコハク酸系組成物の脱アンモニア反応とエステル化反応を行い、コハク酸系組成物からコハク酸ジアルキルを製造する工程(第二工程)を示している(実施例7参照)。得られたコハク酸ジエステルは蒸留により精製され、コハク酸系ポリエステルの原料として使用される。また第二工程の生成物であるコハク酸ジアルキルは水素化工程により1,4―ブタンジオールに転換され、同様にコハク酸系ポリエステルの原料として使用される。また第二工程の脱アンモニア反応の未反応物、例えば、コハク酸イミドは、実施例10に示すように、再度脱アンモニア反応及びエステル化反応を第二工程で行うことによりコハク酸アンモニウムからコハク酸エステルへの転換率を向上させることができる。なお、前記の脱アンモニア反応の未反応物、例えばコハク酸イミドは、第一工程、又は第一工程の反応生成物であるコハク酸系組成物に加えて脱アンモニア反応及びエステル化反応を行うことによりコハク酸アンモニウムからコハク酸エステルへの転換率を向上させることもできる。回収されたアンモニアは脱水してまたは水溶液として循環使用される。また蒸留工程で回収されたROHは循環使用される。
図4は、図3の工程にコハク酸ジアルキルの加水分解工程を加えたものである。即ち、図3で得られたコハク酸ジアルキルを加水分解してコハク酸を製造する工程が含まれている。回収されたROHは循環使用される。
図5は、コハク酸アンモニウム水溶液から、共存する多量の水を分離し、併せて部分的脱アンモニア反応を行い、コハク酸系組成物を製造する工程(第一工程)と水と触媒の存在下又は第一工程と異なる温度、圧力等の条件を採用することによりコハク酸系組成物の脱アンモニア反応を行い、第一工程より高い収率でコハク酸又は無水コハク酸を得ることを目的としている。得られたコハク酸は分離工程で晶析、蒸留、昇華法等によりコハク酸又は無水コハク酸に精製され、コハク酸系ポリエステルの原料として使用される。また、精製されたコハク酸又は無水コハク酸は水素化工程により1,4―ブタンジオールに転換され、同様にコハク酸系ポリエステルの原料として使用される。また第二工程の脱アンモニア反応の未反応物、例えばコハク酸アミド、コハク酸イミドは実施例9及び実施例10に示す脱アンモニア反応により、コハク酸アンモニウムからのコハク酸又は無水コハク酸への転換率を向上させる。回収されたアンモニアは脱水してまたは水溶液として循環使用される。
図6は、ROHの存在下に、コハク酸アンモニウム水溶液から共存する多量の水を分離し、併せて脱アンモニア反応とエステル化反応を連続的に行う(実施例7の場合と異なりコハク酸系組成物を分離することなく、第一工程及び第二工程を連続的に行う)ことによりコハク酸系ポリエステルの原料であるコハク酸ジアルキルを製造する工程を示している(実施例11参照)。得られたコハク酸ジアルキルはコハク酸系ポリエステルの原料として利用される。また、コハク酸ジアルキルは水素化工程により1,4−ブタンジオールに転換され、コハク酸系ポリエステルの原料として利用される。回収されたアンモニアは脱水してまたは水溶液として循環使用される。
コハク酸エステルの定量は、ガスクロマトグラ法を用いて行った。またアンモニウムの回収量は、中和滴定法により求めた。またコハク酸アンモニウム、コハク酸、コハク酸アミド、コハク酸モノアミド、コハク酸イミド等は液体クロマトグラフ法により分析した。
エステル類、酸無水物及び1,4−ブタンジオールの定量分析
コハク酸エステル及び無水コハク酸、1,4−ブタンジオール等は、ガスクロマトグラフ法により定量した。分析用カラムは、島津キャピラリーカラム「HiCap−CBP1−M25−025(無極性、メチルシリコン(OV-1、SE-30相当)、最高使用温度320℃、25m)」を使用した。初期温度100℃、昇温速度5℃/分、最終温度270℃の条件下、内部標準物質としてジエチレングリコールジブチルエーテルを用いて、FID法により定量分析を行った。
コハク酸アンモニウム、コハク酸、コハク酸モノアミド、コハク酸アミド、コハク酸イミド等は、UV検出器(使用カラム:東ソーODS−100V、カラム温度25℃)を用いる液体クロマトグラフ法により定量した(内部標準:アジピン酸)。またコハク酸アンモニウムのNH4 +は、電気伝導検出器(使用カラム:IC-Cation、カラム温度:室温)を用いる液体クロマトグラフ法により定量した(内部標準:KBr、カラム温度:室温)。
JISK0102−1986法に準じた中和滴定法により回収されたアンモニアの定量分析を行った。回収されたアンモニアを硫酸溶液に吸収させ、残った硫酸についてメチルレッド−ブロモクレゾールグリーン混合液指示薬を用いて水酸化ナトリウムで滴定し、アンモニウムイオンを定量し、アンモニアの回収量を求めた。
攪拌羽と温度計付きの内容積100mlの四つ口フラスコを用いてコハク酸アンモニウム(CH2COONH4)227.4g(180ミリモル)と水109.5gを含む水溶液を20℃で空気を40ml/分で流し、かき混ぜながら加温し、170℃、常圧下で水の分離と脱アンモニア反応を2時間行い(第一工程)、発生したアンモニアと水を流出させ、トラップに捕集した。捕集したアンモニアと水は2N硫酸180mlを含む内容積200mlトラップに導入し、硫酸水溶液中に吸収させた。次いで、1モル/リットルNaOH溶液を用いて未反応の硫酸を滴定し、アンモニウムイオンを定量し、回収されたアンモニア量を求めた。その結果、アンモニアの回収率は56.6%であった。また、反応後のフラスコには、室温で白色固体の生成物20.4gを得た。液体クロマトグラフ法により生成物の分析を行ったところ、該生成物は、未反応のコハク酸アンモニウム以外にコハク酸、コハク酸モノアミド、コハク酸アミド、コハク酸イミド等の成分を含む白色固体(コハク酸系組成物)であった。前記アンモニア分析の結果から、該白色固体(コハク酸系組成物)のN/C原子比は0.21であった。
攪拌羽と温度計付きの内容積100mlの四つ口フラスコを用いて、コハク酸アンモニウム(CH2COONH4)29.13g(60ミリモル)と水36.5gを含む水溶液を70℃で、減圧下(0.25〜15mmHg)、かき混ぜながら水の分離と脱アンモニア反応を3時間行い(第一工程)、発生したアンモニアと水をトラップに捕集した。捕集したアンモニアと水は2N硫酸60mlを含む内容積200mlトラップに導入し、硫酸水溶液中に吸収させた。次いで、1モル/リットルNaOH溶液を用いて未反応の硫酸を滴定し、アンモニウムイオンを定量し、回収されたアンモニア量を求めた。その結果、アンモニアの回収率は12.7%であった。また、反応後のフラスコには、室温で白色固体の生成物9.6gを得た。液体クロマトグラフ法により生成物の分析を行ったところ、該生成物は、未反応のコハク酸アンモニウム以外にコハク酸、コハク酸モノアミド、コハク酸アミド、コハク酸イミド等の成分を含む白色固体(コハク酸系組成物)であった。前記アンモニア分析の結果から、該白色固体(コハク酸系組成物)のN/C原子比は0.43であった。
攪拌羽と温度計付きの内容積100mlの四つ口フラスコを用いて、コハク酸アンモニウム(CH2COONH4)29.13g(60ミリモル)と水36.5gを含む水溶液を50℃で、減圧下(0.25〜5mmHg)、かき混ぜながら水の分離と脱アンモニア反応を3時間行い(第一工程)、発生したアンモニアと水をトラップに捕集した。捕集したアンモニアと水は2N硫酸60mlを含む内容積200mlトラップに導入し、硫酸水溶液中に吸収させた。次いで、1モル/リットルNaOH溶液を用いて未反応の硫酸を滴定し、アンモニウムイオンを定量し、回収されたアンモニア量を求めた。その結果、アンモニアの回収率は7.2%であった。また、反応後のフラスコには、室温で白色固体の生成物10.4gを得た。液体クロマトグラフ法により生成物の分析を行ったところ、該生成物は、未反応のコハク酸アンモニウム以外にコハク酸、コハク酸モノアミド、コハク酸アミド、コハク酸イミド等の成分を含む白色固体(コハク酸系組成物)であった。前記アンモニア分析の結果から、該白色固体(コハク酸系組成物)のN/C原子比は0.46であった。
攪拌羽と温度計付きの内容積100mlの四つ口フラスコを用いて、コハク酸アンモニウム(CH2COONH4)227.4g(180ミリモル)と水109.5gを含む水溶液に25℃で空気を10ml/分で流し、かき混ぜながら加温し、170℃(内温)、常圧下で水の分離と脱アンモニア反応を2時間行い(第一工程)、発生したアンモニアと水を流出させトラップに捕集した。捕集したアンモニアと水は2N硫酸180mlを含む内容積200mlのトラップに導入し、硫酸水溶液中に吸収させた。次いで、1モル/リットルNaOH溶液を用いて未反応の硫酸を滴定し、アンモニウムイオンを定量し、回収されたアンモニア量を求めた。その結果、アンモニアの回収率は53.1%であった。また、反応後のフラスコには、室温で白色固体の生成物7.1gを得た。液体クロマトグラフ法により、生成物の分析を行ったところ、該生成物は、未反応のコハク酸アンモニウム以外にコハク酸、コハク酸モノアミド、コハク酸アミド、コハク酸イミド等の成分を含む白色固体(コハク酸系組成物)であった。前記アンモニア分析の結果から、該白色固体(コハク酸系組成物)のN/C原子比は0.23であった。
攪拌、Dean-stark装置及び温度計を備えた内容積100mlの四つ口フラスコを用いて、コハク酸アンモニウム(CH2COONH4)29.13g(60ミリモル)、水36.5g及びトルエン50mlからなる混合物を19℃でかき混ぜながら加温し、トルエンの還流下に水を共沸除去し、併せて脱アンモニア反応を6.7時間行った(第一工程)。発生したアンモニアと水を流出させ、Dean-stark装置の冷却管下部に接続したトラップに捕集した。捕集したアンモニアと水は2N硫酸を含む内容積200mlトラップの硫酸水溶液中に吸収させ、次いで、1モル/リットルNaOH溶液を用いて未反応の硫酸を滴定し、アンモニウムイオンを定量し、回収されたアンモニア量を求めた。その結果、アンモニアの回収率は44.8%であった。また、反応後のフラスコには、室温で白色固体の生成物7.8gを得た。液体クロマトグラフ法により、生成物の分析を行ったところ、生成物は、未反応のコハク酸アンモニウム以外にコハク酸、コハク酸モノアミド、コハク酸アミド、コハク酸イミド等の成分を含む白色固体(コハク酸系組成物)であることが分かった。前記アンモニア分析の結果から、該白色固体(コハク酸系組成物)のN/C原子比は0.27であった。
攪拌羽、温度計及びメタノール導入・排出口を備えた内容積100mlの耐圧ガラス製反応管にコハク酸アンモニウム(CH2COONH4)29.13g(60ミリモル)と水36.5gからなる水溶液を仕込み(20℃)、メタノールを反応系に導入し(0.5ml/分)、流通させ、かき混ぜながら加温して、125℃、常圧〜0.2MPaの圧力下で水の分離と脱アンモニア反応を2時間行い(第一工程)、発生したアンモニアと水をトラップに捕集した。捕集したアンモニアと水(メタノールを含む)は2N硫酸180mlを含む内容積200mlトラップに導入し、硫酸水溶液中に吸収させた。次いで、1モル/リットルNaOH溶液を用いて未反応の硫酸を滴定し、アンモニウムイオンを定量し、回収されたアンモニア量を求めた。その結果、アンモニアの回収率は37.8%であった。また、反応後、反応管中に無色透明な反応液(メタノール溶液)22.3gが得られた。ガスクロマトグラフ及び液体クロマトグラフ法により上記反応液の分析を行ったところ、コハク酸アンモニウム以外にコハク酸、コハク酸モノアミド、コハク酸アミド、コハク酸イミド、コハク酸ジメチル等が含まれていることが分かった。前記アンモニア分析の結果から、メタノールを含む反応液中のコハク酸系組成物のN/C原子比は0.31であった。
攪拌羽と温度計付きの内容積100mlの耐圧ガラス製反応管に実施例1で得られた白色固体(コハク酸系組成物)6.80g(この重量は、実施例1で得られた白色固体の1/3の重量で、この重量は、計算値で60ミリモルのコハク酸系成分に相当する)とエタノール60ml及びチタンテトライソプロポキシドTi(O-isoPr)43.4ミリモルを加え、140℃(内温)で加圧下(0.63MPa)にエタノールを導入(0.4〜0.9ml/min.)し、反応系内を流通させて脱アンモニア反応を5時間行い(第二工程)、発生したアンモニアとエタノールをトラップに捕集した。反応後、反応管に得られた反応液についてガスクロマトグラフ法により分析を行ったところ、68.0%の収率でコハク酸ジエチルが得られた。
攪拌、Dean-stark装置及び温度計を備えた内容積200mlの二口フラスコへコハク酸アンモニウム(CH2COONH4)29.13g(60ミリモル)と水36.5gからなる水溶液と1−ブタノール60mlを仕込み、27℃でかき混ぜながら加温し、150℃(オイルバス温度)で、1−ブタノールの還流下に水を共沸除去しながら、脱アンモニア反応を2時間行った(第一工程)。発生したアンモニアと水をDean-stark装置の冷却管下部に接続したトラップに捕集した(アンモニアを含む約30mlの水を回収した)。次に二口フラスコを室温まで冷却し、1−ブタノール10mlとチタンテトライソプロポキシド(Ti(O-isoPr)4)3.4ミリモルを反応フラスコへ仕込み、加温して1−ブタノールを還流下に水を共沸除去し、併せて脱アンモニア反応を24時間続けた(第二工程)。反応後、得られた反応液について液体クロマトグラフ及びガスクロマトグラフ法により分析を行ったところ、46.4%の収率でコハク酸ジ-n-ブチルが得られた。他の反応生成物としてはコハク酸モノブチル、コハク酸モノアミド、コハク酸アミド、コハク酸イミド等が検出された。
攪拌羽、温度計及びメタノール導入・排出口を備えた内容積100mlの耐圧ガラス製反応管にコハク酸アミド6.97g(60ミリモル)とメタノール36.5mlを加え(17℃)、メタノールを反応系内に導入(0.5ml/min.)、流通させ、該混合物をかき混ぜながら加温して、125℃、加圧下(0.6MPa)で5時間脱アンモニア反応を行った。発生したアンモニアはメタノールとともにトラップに捕集した。反応後、実施例1と同様の方法で回収されたアンモニア量を調べたところ回収アンモニア率は5.3%であった。また反応液についてガスクロマトグラフ法により分析を行ったところ、コハク酸ジメチルが生成していることが分かった。コハク酸アミドの脱アンモニア率は低いが、コハク酸アミドは加熱によりコハク酸イミドへ転換可能であり、同様にコハク酸アミドが第一工程で得られるコハク酸系組成物に含まれていても、下記実施例10の反応を繰り返し行うことによりコハク酸アンモニウムからのコハク酸ジメチルへの転換率を向上させることが可能であることが分かった。
攪拌羽、温度計及びメタノール導入・排出口を備えた内容積100mlの耐圧ガラス製反応管にコハク酸イミド5.94g(60ミリモル)とメタノール36.5mlを加え(17℃)、メタノールを反応系内に導入(0.5ml/min.)、流通させ、該混合物をかき混ぜながら加温して、125℃、加圧下(0.6MPa)で5時間脱アンモニア反応を行った。発生したアンモニアはメタノールとともにトラップに捕集した。反応後、実施例1と同様の方法で回収されたアンモニア量を調べたところ回収アンモニア率は19.7%であった。また反応液についてガスクロマトグラフ法により分析を行ったところ、コハク酸ジメチルが生成していることが分かった。従って、コハク酸イミドが第一工程で得られるコハク酸系組成物に含まれていても、コハク酸イミドはコハク酸エステルに転換でき、また、第一工程と第二工程を繰り返し行うことによりコハク酸アンモニウムからのコハク酸エステルへの転換率を向上させることが可能であることを見出した。また、コハク酸アミドは加熱によりコハク酸イミドへ転換可能であり、同様にコハク酸アミドが第一工程で得られるコハク酸系組成物に含まれていても、本反応を繰り返し行うことによりコハク酸アンモニウムからのコハク酸ジメチルへの転換率を向上させることが可能であることが分かった。
攪拌羽、温度計及びメタノール導入・排出口を備えた内容積100mlの耐圧ガラス製反応管にコハク酸アンモニウム(CH2COONH4)29.13g(60ミリモル)と水36.5gからなる水溶液を仕込み(18℃)、メタノールを反応系に導入し(0.4〜0.7ml/分)、流通させ、かき混ぜながら加温し、125℃、常圧〜0.5MPaの圧力下で水の分離と脱アンモニア反応を行い(第一工程)、実施例6の場合と異なりコハク酸系組成物の分離を行うことなく、引続き脱アンモニアとエステル化反応(第二工程)を10時間連続的に行ったところ、無色透明の液体が得られた(約25ml)。ガスクロマトグラフ及び液体クロマトグラフ法により無色液体の分析を行った結果、コハク酸ジメチルエステルが49.1%の収率で得られた。
Claims (9)
- バイオマス由来のコハク酸アンモニウムを主成分として含有する希薄水溶液から、50〜230℃で減圧、常圧、加圧下のいずれかの条件下で、水を分離し、同時にコハク酸アンモニウムを部分的に脱アンモニア反応させて、炭素(C)に対する窒素(N)の原子比N/Cを0.20<N/C<0.47の範囲とするコハク酸系組成物を製造し(第一工程)、次いで該コハク酸系組成物をアルコール及び触媒の存在下で脱アンモニア反応とエステル化反応を行う(第二工程)ことを特徴とするコハク酸ジアルキルの製造方法。
- 上記の第一工程のコハク酸系組成物が、コハク酸アンモニウム以外に、コハク酸モノアンモニウム、コハク酸、コハク酸モノアミド、コハク酸アミド、コハク酸イミド、コハク酸エステルのうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1に記載のコハク酸ジアルキルの製造方法。
- 上記の第一工程のコハク酸系組成物を製造する際の脱アンモニア反応をアルコール(ROH)(R:メチル、エチル、プロピル、ブチル)の存在下で行うことを特徴とする請求項1または2に記載のコハク酸ジアルキルの製造方法。
- 上記の第一工程のコハク酸系組成物を製造する際の脱アンモニア反応を 窒素、空気、炭酸ガス、水蒸気、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルから選ばれた何れかのガスまたは液の流通下に行うことを特徴とする請求項1または2に記載のコハク酸ジアルキルの製造方法。
- 上記の第一工程のコハク酸系組成物を製造する際の脱アンモニア反応をベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロエタンから選ばれた水と共沸蒸留可能な溶媒の存在下に行うことを特徴とする請求項1または2に記載のコハク酸ジアルキルの製造方法。
- 上記の第一工程によるコハク酸系組成物が、20質量%以下の水分を含む請求項1〜5のいずれかに記載のコハク酸ジアルキルの製造方法。
- 上記の第二工程によりコハク酸ジアルキルを製造し、未反応成分および副生成分を分離し、分離して得られた未反応物および副生成分を上記の第一工程で得られたコハク酸系組成物と合わせて、上記の第二工程を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のコハク酸ジアルキルの製造方法。
- 上記の第一工程及び第二工程の脱アンモニア反応により生成したアンモニアを回収し、回収したアンモニアをバイオマス由来源であるコハク酸アンモニウムの発酵合成に循環使用することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のコハク酸ジアルキルの製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法により、コハク酸ジアルキルを得、次いで該コハク酸ジアルキルを水素化することを特徴とする1,4−ブタンジオールの製造方法。
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