JP5364645B2 - 車両灯具用反射板 - Google Patents

車両灯具用反射板 Download PDF

Info

Publication number
JP5364645B2
JP5364645B2 JP2010125073A JP2010125073A JP5364645B2 JP 5364645 B2 JP5364645 B2 JP 5364645B2 JP 2010125073 A JP2010125073 A JP 2010125073A JP 2010125073 A JP2010125073 A JP 2010125073A JP 5364645 B2 JP5364645 B2 JP 5364645B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
film
reflector
thickness
alloy
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2010125073A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2011252187A (ja
Inventor
順 鈴木
俊樹 佐藤
英明 山本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Koito Manufacturing Co Ltd
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Koito Manufacturing Co Ltd
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Koito Manufacturing Co Ltd, Kobe Steel Ltd filed Critical Koito Manufacturing Co Ltd
Priority to JP2010125073A priority Critical patent/JP5364645B2/ja
Publication of JP2011252187A publication Critical patent/JP2011252187A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5364645B2 publication Critical patent/JP5364645B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Non-Portable Lighting Devices Or Systems Thereof (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)
  • Physical Vapour Deposition (AREA)

Description

本発明は、積層反射膜を備えた車両灯具用反射板に関するものである。本発明の反射板は、自動車や自動二輪車などのヘッドランプやリアランプなどの車両灯具の用途に用いられる。
Ag膜は、膜厚が約70nm以上になると可視光の反射率が非常に高くなるため、従来から、光学ミラーなどの反射膜に用いられている。
しかしながら、Ag膜は凝集しやすく、凝集により反射率が低下するという問題を抱えている。例えば、車両灯具の反射膜は、光源が発する熱により、場合によっては80〜200℃程度の高温に曝される。そのため、Ag反射膜を車両灯具に適用しようとすると、熱によってAg原子が拡散して凝集し、Ag反射膜の表面が粗くなって反射率が低下するという問題を招く。
また、Ag膜の凝集は、大気中のハロゲン化物(塩化物等)が水分と共にAg膜表面に吸着することによっても生じる。そこで、例えば特許文献1〜5には、Ag膜の表面に外部環境から遮断するための保護膜(UV硬化樹脂やアクリル系樹脂等の樹脂膜;酸化物や窒化物などの膜)がコーティングされた積層反射膜が提案されている。しかしながら、これらの積層反射膜では、保護膜のピンホール部分からのハロゲンイオンや水分などの侵入によるAg膜の凝集を有効に防止することができない。また、樹脂膜を用いた場合は、樹脂膜をハロゲンイオンや水分が拡散浸透することによってAg膜の凝集が発生するために、Ag膜の表面に多数の白点や変色が生じ、反射率や意匠性や商品性の低下をもたらす。
また、Ag膜は、大気中の硫黄含有物質によって表面が徐々に硫化されて黒く変色し、これにより反射率が低下するという硫化の問題も抱えている。例えば上記特許文献に記載の積層反射膜では、硫黄含有物質中の硫黄が保護膜を拡散浸透してAg膜中のAgと反応してAgSを形成し、表面が黒色化することで反射率や意匠性や商品性の低下をもたらす。
そこで、硫黄によるAg膜の硫化を防止し、耐硫化性を高める目的で、Ag膜自体の改善(Ag合金膜の検討)が行なわれている。例えば、特許文献6および7には、AgにGeやInを添加したAg合金膜が開示され、特許文献8には、耐熱性が高いAg−Bi合金膜に耐硫化性向上元素としてZnを添加したAg−Bi−Zn合金膜が開示されているが、耐硫化性の更なる向上が求められている。また、これらのAg合金膜は反射率の点で不十分であり、約93%以上の高い反射率を維持することが要求される車両灯具用反射膜に単独で適用しようとすると、硫化が進行することによって反射率が徐々に低下するなどの問題を招く。
上記事情に鑑み、特許文献9には、耐熱性、耐ハロゲン性(耐塩水性)、耐硫化性に優れた積層反射板として、Ag−Bi−(V,Ge,Zn)合金膜にSi酸化物膜が積層された反射板が開示されている。しかしながら、車両灯具の反射膜に適用するには、上記特性のほかに、紫外線照射、加熱・冷却の繰り返しなどに対しても高い耐久性を備えていることが必要であり、更なる改善が求められている。
特開2000−106017号公報 特開2000−106018号公報 特開2006−86095号公報 特開2007−265909号公報 特開2006−98856号公報 特開2001−192753号公報 特開2006−37169号公報 特開2005−48231号公報 特開2009−98650号公報
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、Ag膜の凝集が抑えられ、車両灯具用反射板に要求される種々の諸特性、すなわち、高い反射率を有することは勿論のこと、耐光性、耐熱サイクル性、耐湿性、耐硫化性について優れた耐久性を兼ね備えた、新規な積層反射膜を備えた車両灯具用反射板を提供することにある。
上記課題を解決し得た本発明の車両灯具用反射板は、基体上に、基体側から、Ag合金の第1層と、Si酸化物の第2層と、透明樹脂の第3層とが順次積層された積層反射膜を備えた車両灯具用反射板であって、前記第1層は、Biを0.02〜0.2原子%、Geを0.02〜0.5原子%、Auを0.1〜3.0原子%含有し、残部はAgおよび不可避不純物であるAg合金膜で構成され、前記第3層は、シリコーン変性アクリル樹脂で構成されるところに要旨を有するものである。
好ましい実施形態において、前記シリコーン変性アクリル樹脂は、アミノ基およびグリシジル基を含むモノマーを架橋反応させて得られるものである。
好ましい実施形態において、前記第1層の厚さは70〜300nmであり、前記第2層の厚さは2〜50nmであり、前記第3層の厚さは1〜20μmである。
好ましい実施形態において、前記第2層の厚さをX(nm)とし、前記第3層の厚さをY(μm)としたとき、XとYの積は2〜200である。
本発明の車両灯具用反射板は上記のように構成されているため、Ag膜の凝集が抑えられ、車両灯具用反射板に要求される種々の諸特性を兼ね備えた(高い反射率を有することは勿論のこと、耐光性、耐熱サイクル性、耐湿性、耐硫化性について優れた耐久性を有している)、新規な積層反射膜を備えた車両灯具用反射板を提供することができた。
図1は、本発明に係る車両灯具用反射板の構成を模式的に示す図である。 図2は、実施例において、反射板試料の作製に用いたスパッタリング成膜装置の概略を示す模式図である。
本発明の車両灯具用反射板は、Ag合金膜(第1層)の組成と保護膜(第2層および第3層)の種類が適切に組合わされた積層反射膜を備えているため、高い反射率を有していることは勿論のこと、Agの凝集や硫化が一層生じ難くなり、耐光性、耐熱サイクル性、耐湿性、耐硫化性について優れた耐久性を有している。本発明によれば、高い反射率によって車両灯具の省電力化を達成でき、優れた耐久性によって車両灯具の光量を長期間安定維持させることができる。
上述したように、本発明の車両灯具用反射板は、図1の模式図に示すように、基体上に、基体側から、Ag合金の第1層と、Si酸化物の第2層と、透明樹脂の第3層とが順次積層された積層反射膜を備えた車両灯具用反射板であって、前記第1層は、Biを0.02〜0.2原子%、Geを0.02〜0.5原子%、Auを0.1〜3.0原子%含有し、残部はAgおよび不可避不純物であるAg合金膜で構成され、前記第3層は、シリコーン変性アクリル樹脂で構成されている点に特徴がある。
以下、各構成要件について詳しく説明する。
(基体)
本発明に用いられる基体は特に限定されず、車両灯具用反射板に通常用いられるものを適用することができる。具体的には、例えば、ガラスや樹脂などの基体が用いられる。詳細には、車両灯具の種類に応じ、光源の発する熱の温度によって適宜選択して用いることが好ましい。具体的には、例えば、光源が発する熱の温度が約180℃以上の場合はガラスを、約120〜180℃の場合はPET材やPBT材等のポリエステル材を、約120℃以下の場合はポリカーボネート材を用いることが好ましい。
(第1層のAg合金)
上記基体の上(直上でも良いし、後記する下地膜を介在しても良い)に形成される第1層のAg合金は、Biを0.02〜0.2原子%、Geを0.02〜0.5原子%、Auを0.1〜3.0原子%含有し、残部はAgおよび不可避不純物である。すなわち、本発明に用いられるAg合金は、Ag−(0.02〜0.2)原子%Bi−(0.02〜0.5)原子%Ge−(0.1〜3.0)原子%Auで表わされる四元系Ag合金である。
上記下地膜は、基体表面の汚れや異物(例えば、ハロゲンや硫黄を含む汚れや微小な異物など)に起因して生じるAg膜の凝集と、それに伴う反射率の低下を防止するのに有効である。本発明に用いられる下地膜としては、例えば、Cu、Ni、Co、W、Mo、Ta、Cr、Tiなどの金属の単独の膜、またはこれらの金属のうちの1種以上からなる合金の膜;Si、Ti、Al、Sn、Znなどの金属の酸化物膜;ホウケイ酸ガラスなどのガラス皮膜;塗膜などの樹脂膜(アクリル樹脂膜、シリコン樹脂膜等)などが挙げられる。
まず、本発明に用いられるAg合金は、Biを0.02〜0.2原子%含有する。前述したように、純Agでは約70nm以上の厚さで成膜すると約96%という非常に高い反射率が得られるが、約100℃以上の高温に曝されると熱によるAg膜の凝集を招く恐れがある。Biを0.02原子%以上含有することにより、このような高温下におけるAg膜の凝集が抑制され、耐熱性が向上する。Biの含有率が高くなるほど、耐熱性向上効果が高くなるが、その反面、反射率が低下する。高い反射率と高い耐熱性を両立するには、Bi含有率の上限を0.2原子%とする。Bi含有率の好ましい範囲は、0.03〜0.18原子%であり、より好ましい範囲は0.04〜0.16原子%である。
上記Ag合金は、更にGeを0.02〜0.5原子%含有する。Geは耐硫化性を高め、空気中に含まれる硫化水素などの硫化物と接触したときの変色(黒色化)を抑える作用がある。このような作用を有効に発揮させるためには、Geの含有率を0.02原子%以上とする。ただし、上記Biと同様、Geの含有率が高くなると反射率が低下するため、高い反射率と高い耐硫化性の両方を兼備するには、Ge含有率の上限を0.5原子%とする。Ge含有率の好ましい範囲は0.03〜0.45原子%であり、より好ましい範囲は0.04〜0.40原子%である。
上記Ag合金は、更にAuを0.1〜3.0原子%含有する。Auは、ハロゲンを含む異物が飛来して膜の表面に付着することに起因するAgの凝集を抑制する作用がある。同様の作用を有する合金元素として、上記Auの他にPt、Pd、Rhがあるが、これらは添加することにより反射率が比較的大きく低下するのに対し、Auは多量(例えば上限の3.0原子%程度)添加しても反射率の低下が小さいという利点がある。
また、Auの添加により、Ag合金膜の上に形成されるSi酸化物(第2層)や基体に起因するAgの凝集抑制効果も得られる。この点について詳しく説明すると、Ag合金膜(第1層)とSi酸化物膜(第2層)は同一のスパッタリング成膜装置内で連続成膜が可能であるが、その上に樹脂膜(第3層)を形成する場合はスパッタリング成膜装置から一旦取出して塗装ブースへ搬送される(成膜方法の詳細は後述する)が、その間に、Si酸化物膜上にハロゲンなどを含む不可避的な飛来異物が付着したり、この付着等によってSi酸化物膜にピンホールが発生したりする場合がある。Auは、この飛来異物付着部分やピンホール部分でのAg凝集の発生を抑えるのに非常に有効である。また、基体上にもともと存在するハロゲンを含む汚れや異物などが付着した部分でもAgの凝集が発生する恐れがあるが、Auの添加により、このような凝集も有効に抑制される。
Auの含有率が0.1原子%未満であるとハロゲンイオンと水分による凝集の抑制作用が小さく、一方、3原子%を超えると材料コストが高くなる。優れたAg凝集抑制作用と安い材料コストとの両立を考慮すると、Au含有率の好ましい範囲は0.3〜2.5原子%である。
本発明に用いられるAg合金は、上記の成分を含有し、残部はAgおよび不可避的不純物である。
(第2層のSi酸化物)
第2層のSi酸化物は、上述した第1層のAg合金膜を外部環境から遮断するための保護膜として機能するものであり、無色透明である。
なお、保護膜として機能し得る透明酸化物膜としては、上記Si酸化物の他に、SnO2、ZnO等の酸化物膜が挙げられるが、これらの酸化物膜はいずれも黄色などを呈している(無色ではない)ために、光源の色を再現できない。また、無色透明の金属酸化物としてAlやTiの酸化物もあるが、これらの酸化物膜を第2層として用いた場合、Si酸化物を用いた場合に比べて、特に耐硫化性が劣っている(後記する実施例には示さず)。また、AlやTiの酸化物は、成膜速度がSi酸化物に比べて約1/10以下であり、生産性が著しく低い。以上の点から、本発明では、第2層としてSi酸化物を選択した次第である。
(第3層の透明樹脂)
第3層の透明樹脂は、シリコーン変性アクリル樹脂で構成されている。このシリコーン変性アクリル樹脂は、アミノ基およびグリシジル基を含むモノマーを架橋反応させて得られるものである。具体的には、後記するように、主剤としてアミノ基含有アクリル樹脂を用い、硬化剤としてグリシジル基含有シリコーン樹脂を用い、これらを架橋反応させて得られる。この架橋反応により、グリシジル基は開環した状態でシリコーン変性アクリル樹脂中に取り込まれるためグリシジル基(環状エポキシ)は存在しておらず、主成分としてアクリル樹脂を、副成分としてシリコーン樹脂を含む透明樹脂が得られる。
上記透明樹脂膜は、外部環境中に存在する水分や硫黄含有物質、ハロゲンを含む飛来異物や水分から上記の第1層(Ag合金膜)を、より完全に遮断するための保護膜として機能する。なお、第2層または第3層それぞれ単独の保護膜では、車両灯具用反射板に用いるには保護性が不十分であり、第2層および第3層を積層して用いることで十分な保護性を発揮する。
以下、上記のシリコーン変性アクリル樹脂に到達した経緯を説明する。
水分や、硫化水素などのような硫黄含有ガスの侵入を防止するためには、通常、樹脂膜の架橋を密にすることが考えられる。架橋とは、モノマー又は樹脂成分中に存在する官能基が熱や水分によって反応し、三次元的に樹脂が結合する現象(三次元網目構造)であり、官能基の組合せ・比率・分子サイズ・熱などの外部負荷などが複雑に影響する。
ここで、架橋を密にする手法としては、例えば、(ア)シリコーン系樹脂の選択、(イ)官能基数の増加、(ウ)反応温度の上昇などが挙げられるが、このうち(ウ)は、樹脂基体変形に伴う配光不良の懸念があるため、本発明では、上記(ア)と(イ)に着目した。
ここで、シリコーン樹脂は主鎖としてシロキサン結合を有するため、三次元網目構造の形成に有利に働く反面、Si−O結合の回転エネルギーは小さく(0.8kJ/mol程度)、運動性が高いため、ガス透過性は高くなり易い傾向にあり、保護性は不十分であった。また、塗料硬化後に未反応官能基(シラノール基)が残存し易く、経時で反応が進行すると塗膜内部応力が増加し、剥がれ等の不具合を招くといった問題もあった。
そこで、主鎖の運動性を低くする目的で、回転エネルギーの大きいC−H結合(15.1kJ/mol程度)が主鎖となるアクリル樹脂(官能基:ビニル基)を上記のシリコーン樹脂と混合し、シリコーン樹脂とアクリル樹脂を架橋させることにした。これが、前述した特許文献4に記載の「変性シリコーン系樹脂」である。この「変性シリコーン系樹脂」において、シリコーン樹脂量は、アクリル樹脂量よりも多く含まれている。
しかし、上記の「変性シリコーン系樹脂」では、三次元網目構造の形成が不十分なため、高い耐湿性や耐硫化性が得られなかった。その理由は詳細には不明であるが、シラノール基の比率が低下し、且つアクリル樹脂中のビニル基との架橋が進まなかったためであると推察される。また、架橋を促進させる触媒として、金属およびその酸化物を添加したが、耐光試験(フェードメータ試験)において、これらとAg合金とが反応して変色してしまい、耐湿性や耐硫化性もさほど向上しなかった。
そこで、これらの耐久性向上には、主鎖そのものの運動エネルギーを制御しながら、緻密な三次元網目構造を形成する必要性があるとの観点に立ち、上記特許文献4とは異なり、主成分をアクリル樹脂とし、副成分としてシリコーン樹脂を含むシリコーン変性アクリル樹脂を採用した次第である。具体的には、シリコーン変性アクリル樹脂100質量部に対するアクリル樹脂とシリコーン樹脂の好ましい比率は、おおむね、60質量部:40質量部〜90質量部:10質量部であることが好ましく、より好ましくは、70質量部:30質量部〜80質量部:20質量部である。
ここで、アクリル樹脂はアミノ基を含み、シリコーン樹脂はグリシジル基を含んでいる。これらの組合せが最も高い保護性を示すことが判明したからである。
本発明では、モノマー成分である「アミノ基含有アクリル樹脂」および「グリシジル基含有シリコーン樹脂」について、市販品を用いることができる。また、これらの樹脂を混合してシリコーン変性アクリル樹脂を得る方法は特に限定されず、通常の架橋反応によって得ることができる。
本発明によれば、上記シリコーン変性アクリル樹脂の採用によって高い耐湿性を確保すると共に、上記Ag合金膜の採用によって高い耐硫化性を確保している。前述したように、上記Si酸化物膜は、硫化水素の侵入を遮断できる緻密な保護膜として有効に作用する。
本発明において、第1層(Ag合金)の好ましい厚さは70〜300nmである。全反射性能を得るには70nm以上の厚さが必要である。また、熱やハロゲンイオンによるAgの凝集は、Ag合金の厚さにも依存し、膜が厚いほど凝集し難くなるからである。一方、第1層の厚さの好ましい上限は、反射率やAg凝集抑制などの観点からは特に限定されないが、材料コストを考慮し、300nmとする。第1層のより好ましい厚さは100〜280nmであり、更に好ましくは150〜250nmである。
第2層(Si酸化物)の好ましい厚さは2〜50nmである。第2層の厚さが2nm未満の場合、Si酸化物膜が連続膜となり難く、特に耐硫化性および耐熱性の点で保護性が低下する恐れがある。一方、第2層の厚さが50nmを超えると、反射率が低下するほか、膜の残留応力が大きくなって耐湿試験時に膜の割れや剥離が生じる恐れがある。第2層のより好ましい厚さは3〜45nmであり、更に好ましくは4〜40nmである。
第3層(シリコーン変性アクリル樹脂)の好ましい厚さは1〜20μmである。厚さが1μm未満の場合、特に飛来付着する異物等に対する保護性が低くなるため好ましくない。一方、厚さが20μmを超えると反射率の低下が起こるため好ましくない。第2層のより好ましい厚さは2〜18μm、更に好ましくは3〜16μmである。
また、第2層のSi酸化物膜の厚さをX(nm)とし、第3層の透明樹脂膜の厚さをY(μm)としたとき、XとYの積は2〜200に制御されていることが好ましい。XとYの積が2未満の場合、第2層および第3層の少なくとも一方が非常に薄くなるため、ハロゲンイオン、熱、硫黄の他、飛来付着する異物等、紫外線照射、加熱・冷却の繰り返しなどに対して十分な耐久性を示すことができなくなる(後記する表には示さず)。一方、XとYの積が200を超えると、第2層および第3層の少なくとも一方が非常に厚くなり、反射率が93%を下回るようになり(後記する表には示さず)、車両灯具用反射板としては適切でない。より好ましいXとYの積は5〜180であり、更に好ましくは6〜160である。
本発明において、必要に応じて形成される上記下地膜の厚さは5nm以上であることが好ましい。5nm未満であると連続膜にならない場合があり、基体上にハロゲンイオンや硫黄が付着したときにAgの凝集を防止できない恐れがある。上記下地膜のより好ましい厚さは5nm以上であり、更に好ましくは7nm以上である。
なお、上記下地膜の厚さの好ましい上限は材料によって異なる。例えば上記下地膜が金属膜の場合、厚さは500nm以下であることが好ましい。ここで、上記下地膜の上限が500nmを超えると膜の残留応力が大きくなり、積層反射膜を成膜して耐熱試験や耐湿試験を行ったときに割れや剥がれが発生する恐れがある。上記下地膜のより好ましい厚さは400nm以下であり、更に好ましくは300nm以下である。
また、上記下地膜が金属酸化物膜の場合、好ましい厚さは100nm以下である。上記下地膜の厚さが100nmを超えると膜の残留応力が大きくなり、積層反射膜を成膜して耐熱試験や耐湿試験を行ったときに割れや剥がれが発生する恐れがある。上記下地膜のより好ましい厚さは90nm以下であり、更に好ましくは80nm以下である。
また、上記下地膜が塗膜などの樹脂膜の場合、特に厚さの上限は限定されないが、塗膜工程上、厚さは200μm以下であることが好ましい。
次に、本発明の車両灯具用反射板の製造方法を説明する。
まず、Ag合金の第1層は、Ag合金スパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法を用いて成膜することが好ましい。特にAgのような金属を成膜するときは、DCスパッタリング法により成膜することが好ましい。
また、Si酸化物の第2層は、上記第1層と同様、Si酸化物スパッタリングターゲットを用いて成膜することが好ましい。特にSi酸化物のような金属酸化物を成膜するときは、RFスパッタリング法により成膜することが好ましい。このSi酸化物膜は、上記Ag合金膜と同一のスパッタリング成膜装置内で連続して成膜することが可能である。
また、透明樹脂の第3層は、上記のようにして第1層および第2層を成膜した後、この積層反射膜を成膜した基体をスパッタリング成膜装置から一旦取り出してから、当該透明樹脂を含む塗料を公知のコーティング手段を用いて第2層の上に塗布し、乾燥の後、加熱または紫外線照射などの方法により硬化することによって得られる。この工程は、例えば専用の塗装ブースで行なわれる。
なお、基体とAg合金(第1層)との間に下地膜を形成する場合は、下地膜を構成する材料によって成膜方法を適宜変えて行うことが好ましい。例えば、下地膜が金属または金属酸化物で構成されているときは、スパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法を用いて成膜することが好ましい。詳細には、金属膜の場合はDCスパッタリング法の適用が好ましく、金属酸化物の場合はRFスパッタリング法の適用が好ましい。なお、金属酸化物の場合は、CVD法により成膜することもできる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
本実施例では、図2に示すスパッタリング成膜装置を用い、表1に示す種々のAg合金(第1層)およびSi酸化物(第2層)を基体上に成膜した。図2のスパッタリング成膜装置は、DC(直流)電源に接続されたカソード1基(A)と、DC電源またはRF電源に接続されたカソード1基(B)とを備えている。DC電源に接続されたカソードAには、サイズφ152mm×t5mmのAg−Bi−Ge合金スパッタリングターゲットまたはAg−Bi−Ge−Au合金スパッタリングターゲットを取付けた。
具体的には、基板台に基体であるサイズφ50mm×t1mmのポリカーボネート(PC)基体を取付け、カソードA上のスパッタリングターゲットに正対させ、チャンバー内を1.3×10-3Pa以下となるように真空に引いた。その後、チャンバー内にArガスを導入してチャンバー内圧力を0.27Paに調整し、カソードA上のスパッタリングターゲットにDC(直流)電力を印加してプラズマを発生させ、DC電力200Wでスパッタリングターゲットをスパッタリングすることにより、PC基体上にAg−Bi−Ge合金またはAg−Bi−Ge−Au合金よりなる第1層を形成した。なおAg合金膜の厚さは150nmとした。このように成膜したAg合金膜中の各種添加元素の含有率を、ICP発光分析法またはICP質量分析法により測定して求めた。
次いで、上記の基板台を、Si酸化物スパッタリングターゲットを取付けたカソードB上に移動させ、チャンバー内圧力を0.27Paとなるように調整し、カソードB上のターゲットにRF(高周波)電力を印加してプラズマを発生させ、RF電力200WでSi酸化物スパッタリングターゲットをスパッタリングすることにより、第1層上にSi酸化物の第2層を形成した。なおSi酸化物膜の厚さは2、5、10nmとした。
次に、このようにして第1層および第2層を形成したPC基体をチャンバーから取り出し、アクリルシリコーン樹脂系塗料(アクリル樹脂を含んだ主剤:シリコーン樹脂を含んだ硬化剤=4:1)をスプレー塗装後、75℃×30分にて硬化させて透明樹脂膜の第3層を形成した。なお樹脂膜の厚さは10μmとした。
このようにして得られた積層反射膜の各試料について、JIS R3106に準拠してD65光源での波長範囲380〜780nmの光によって可視光反射率(初期反射率)を測定した。
更に、下記条件下で耐光試験、耐熱サイクル試験、耐湿試験、耐硫化試験の各耐久試験を行った。
(耐光試験)
耐光試験は、スガ試験機製フェードメータ試験機(FAL−5H)を用い、上記の各試料を1000時間保持して行なった。試験後の各試料の表面に発生した白点の数を目視で測定し、白点発生点数が0個を◎、1〜4個を○、5〜9個を△、10個以上を×とした。
(耐熱サイクル試験)
耐熱サイクル試験は、上記の各試料について、80℃で15.5時間、−30℃で7.5時間(温度変更にそれぞれ30分)保持する工程(合計24時間)を1サイクルとし、これを20サイクル行なった。試験後の各試料の表面に発生した白点の数を目視で測定し、白点発生点数が0個を◎、1〜4個を○、5〜9個を△、10個以上を×とした。
(耐湿試験)
耐湿試験は、上記の各試料を、温度50℃・相対湿度95RH%にて1000時間保持して行なった。試験後の各試料の表面に発生した白点の数を目視で測定し、白点発生点数が0個を◎、1〜4個を○、5〜9個を△、10個以上を×とした。
(耐硫化試験)
耐硫化試験は、下記(1)および(2)の2通りの方法を行なった。本実施例では、いずれの試験においても、評価が○または◎のものを「耐硫化性に優れる(合格)」と評価した。
(1)硫化点に基づく評価
上記の各試料を、10%硫化アンモニウム気流中60分間暴露して行った。試験後の各試料の表面(耐硫化試験で暴露された側の面)を光学顕微鏡で200倍に拡大して、その面の写真を撮影し、同倍率で撮影したマイクロメーターの写真の寸法で0.2mm×0.2mmの領域(実寸で表面上の0.2mm×0.2mmの領域)に発生した点状の変色箇所(すなわち、Si酸化膜のピンホール箇所に発生したAgの硫化点)を数え、この変色発生点数により、耐硫化性(硫化され難さの程度)を評価した。具体的には、発生点数が0個を◎、1〜3個を○、4〜6個を△、7個以上を×とした。
(2)反射率変化に基づく評価
上記硫化試験後の各試料について、前記初期反射率の測定と同様の方法により波長範囲380〜780nmの光に対する可視光反射率を測定し、初期反射率との差を以下の式によって求め、この反射率の差によっても耐硫化性を評価した。反射率の差が1%以下を◎、1%超3%以下を○、3%超5%以下を△、5%超を×とした。
試験前後の反射率の差=初期反射率(%)−耐熱試験後反射率(%)
これらの結果を表1に併記する。
なお、表1の最右欄に「総合評価」の欄を設け、上記の結果について、全ての評価が◎または○のものを合格とし、△または×が一つでもあるものを不合格とした。
表1より、以下のように考察することができる。
まず、表1の実験番号4〜6は、本発明の要件を満足する例であり、高い初期反射率を有すると共に、耐光試験、耐熱サイクル試験、耐湿試験、耐硫化試験のいずれの耐久試験を行っても良好な耐久性を有している。よって、これらは、車両灯具用反射板として極めて有用であることが分かった。
これに対し、本発明のいずれかの要件を満足しない実験番号1〜3は、以下の不具合を抱えている。
まず、実験番号1は、特許文献9を模擬したもので第3層の樹脂層を有しない例であり、初期反射率および耐硫化試験の結果は良好であったが、耐光試験、耐熱サイクル試験、および耐湿試験はすべて、不合格であった。
実験番号2は、第2層のSi酸化物を有しない例であり、初期反射率、耐光試験、耐熱サイクル試験、および耐湿試験の結果は良好であったが、耐硫化試験の結果は不合格であった。
実験番号3は、第1層のAg合金としてAuを添加しない例であり、初期反射率および耐硫化試験の結果は良好であったが、耐光試験、耐熱サイクル試験、および耐湿試験の結果は不合格であった。

Claims (4)

  1. 基体上に、基体側から、Ag合金の第1層と、Si酸化物の第2層と、透明樹脂の第3層とが順次積層された積層反射膜を備えた車両灯具用反射板であって、
    前記第1層は、Biを0.02〜0.2原子%、Geを0.02〜0.5原子%、Auを0.1〜3.0原子%含有し、残部はAgおよび不可避不純物であるAg合金膜で構成され、
    前記第3層は、シリコーン変性アクリル樹脂100質量部に対するアクリル樹脂とシリコーン樹脂の比率が60質量部:40質量部〜90質量部:10質量部を満足するシリコーン変性アクリル樹脂で構成されることを特徴とする車両灯具用反射板。
  2. 前記シリコーン変性アクリル樹脂は、アミノ基およびグリシジル基を含むモノマーを架橋反応させて得られるものである請求項1に記載の車両灯具用反射板。
  3. 前記第1層の厚さが70〜300nm、前記第2層の厚さが2〜50nm、前記第3層の厚さが1〜20μmである請求項1または2に記載の車両灯具用反射板。
  4. 前記第2層の厚さをX(nm)とし、前記第3層の厚さをY(μm)としたとき、XとYの積が2〜200である請求項1〜3のいずれかに記載の車両灯具用反射板。
JP2010125073A 2010-05-31 2010-05-31 車両灯具用反射板 Expired - Fee Related JP5364645B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010125073A JP5364645B2 (ja) 2010-05-31 2010-05-31 車両灯具用反射板

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010125073A JP5364645B2 (ja) 2010-05-31 2010-05-31 車両灯具用反射板

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011252187A JP2011252187A (ja) 2011-12-15
JP5364645B2 true JP5364645B2 (ja) 2013-12-11

Family

ID=45416335

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010125073A Expired - Fee Related JP5364645B2 (ja) 2010-05-31 2010-05-31 車両灯具用反射板

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5364645B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20150070599A1 (en) * 2012-06-14 2015-03-12 Polymatech Japan Co., Ltd. Substrate Sheet and Touch Panel
JP5867343B2 (ja) * 2012-08-30 2016-02-24 豊田合成株式会社 灯具用リフレクタの製造方法

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5121152B2 (ja) * 2005-07-07 2013-01-16 エスケー化研株式会社 塗装方法
JP2007033600A (ja) * 2005-07-25 2007-02-08 Mitsuya:Kk 高耐食性反射鏡及びその製造方法
JP2007265909A (ja) * 2006-03-29 2007-10-11 Koito Mfg Co Ltd 車両用灯具
CN101809467B (zh) * 2007-09-25 2012-12-12 株式会社神户制钢所 反射膜、反射膜层叠体、led、有机el显示器及有机el照明器具
JP5280777B2 (ja) * 2007-09-25 2013-09-04 株式会社神戸製鋼所 反射膜積層体

Also Published As

Publication number Publication date
JP2011252187A (ja) 2011-12-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8399100B2 (en) Reflection film, reflection film laminate, LED, organic EL display, and organic EL illuminating instrument
JP2005015893A (ja) リフレクター用Ag合金反射膜、及び、このAg合金反射膜を用いたリフレクター、並びに、このAg合金反射膜のAg合金薄膜の形成用のAg合金スパッタリングターゲット
JP2010270191A (ja) コーティング組成物および光学物品
US8603648B2 (en) Reflective film laminate
WO1999062646A1 (fr) Article possedant une couche d'argent et composition resineuse a appliquer sur l'argent de revetement
JP5097031B2 (ja) 反射膜、led、有機elディスプレイ及び有機el照明器具
JP5049417B2 (ja) 車両用灯具のリフレクター
JP5280777B2 (ja) 反射膜積層体
JP5364645B2 (ja) 車両灯具用反射板
JP2015140379A (ja) フィルム用粘着剤組成物およびこれを用いた粘着フィルムならびに遮熱性粘着フィルム、粘着フィルムの施工方法ならびに遮熱性粘着フィルムの施工方法
JP5096701B2 (ja) 銀被膜塗料組成物と、それを有する光反射体および照明器具
CA2344216C (fr) Alliage aluminium-titane a reflectivite speculaire elevee, revetements reflecteurs comprenant un tel alliage et miroirs et pieces comportant ce revetement
WO2006132416A1 (ja) 反射率・透過率維持特性に優れた銀合金
JP2008190036A (ja) 耐凝集性および耐硫化性に優れた反射膜
JP2007121461A (ja) 耐熱性を有する反射部材とこれを有する照明器具
JP2015140378A (ja) フィルム用粘着剤組成物およびこれを用いた粘着フィルムならびに遮熱性粘着フィルム、粘着フィルムの施工方法ならびに遮熱性粘着フィルムの施工方法
JP2010123332A (ja) 反射鏡およびそれを用いた照明器具
JP5144302B2 (ja) 反射膜積層体
JP5867343B2 (ja) 灯具用リフレクタの製造方法
JP2010097066A (ja) 照明用、ミラー用またはディスプレイパネル用の反射体
JP5942283B2 (ja) 照明器具用反射板
JP2009021020A (ja) 耐腐食性に優れたリフレクタを有する車両用灯具
JP5260452B2 (ja) 耐温水性に優れるAl合金反射膜、およびスパッタリングターゲット
JP2010097065A (ja) 反射体
JP6891958B2 (ja) 装飾製品

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20121009

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20130529

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130604

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130726

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130813

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130909

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees