JP5363284B2 - バラ積み船及びバラ積み用バージ - Google Patents

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Description

本発明は、従来技術では、損傷と汚染を嫌って袋詰めで輸送されていたポリマーペレット等の粉粒体をバラ積みで輸送する際に、バラ積み用の貨物倉を洗浄するための洗浄用清水タンクの容量を小さくできるバラ積み船及びバラ積み用バージに関する。
従来技術において、ポリマーペレットを船舶で海上輸送する場合には、ポリマーペレットを袋詰めして、この袋を搭載したコンテナをコンテナ船でコンテナ輸送している。
このポリマーペレットは、高圧で製造される低密度ポリエチレン(比重が約0.92)、低圧で製造される高密度ポリエチレン(比重が約0.95)、透明で結晶性(95%)のあるポリプロピレン(比重が約0.9)などのポリマーと呼ばれるものを、大きさがφ3mm×L3mm〜φ6mm×L6mm程度のペレット状に形成したものである。このポリマーペレットの物性は、比重が約0.9〜1.0であり、かさ比重は約0.5程度と比較的軽く、安息角も約30度程度である。
このポリマーの性質は、可燃性のため、粉塵状態では爆発混合気を形成して危険状態となる場合があるが、ペレット状態では、常温での取り扱いで危険性は無く、また、生理学的に不活性であり、人体への特別な毒性はない。また、水との反応性や自己反応性や爆発性はなく、常温では安定しているが、ペレットがこぼれた場合には、足を滑らせて転倒する可能性があるので、漏出防止と漏出時の回収は重要である。特に、輸送時に水域に漏出した場合には、動物が飲み込むと窒息する可能性があるので、注意が必要である。
多くのポリマーの場合、表面に水分が付着したままで成形すると、製品の表面不良や外観不良や機械的物性(強度)不良などが生じる。また、ペレットの損傷により砕けた細かいポリマーがコンタミネーション(汚染物)となることから、ペレットの表面の損傷も嫌われるので、ペレット表面の欠陥防止のため、管や貨物倉の内面でのペレット磨耗を避けることが望ましい。更に、錆やペイント片や別種類のペレットの混入を嫌うので、塗装や錆や他種との混合を避ける必要がある。
従って、ポリマーペレット等のバラ積み乾貨物を輸送する場合には、異種・異色貨物との混合を防止することが課題となる。そのため、バラ積み乾貨物の貨物倉内を揚げ荷荷役を行った後で、かつ、積み荷荷役をする前に洗浄する必要がある。運航効率を良くするためには、空荷(バラスト時)の航海中に貨物倉を洗浄することが好ましいので、貨物倉を洗浄するための洗浄用の清水をバラ積み船に搭載する必要がある。
しかしながら、多量の洗浄用の清水を専用に搭載することは、通常の船舶では行われない荷役港で多量の清水の供給を受ける必要がある上に、清水の搭載分だけバラ積み貨物の積載量が減少したり、又は、バラ積み船の排水量を大きくしたりする必要が生じるので、運航コストを高くする要因となり、好ましくないという問題がある。更に、洗浄後の水を海洋放出することは好ましくはないので、陸上げする必要があるという問題もある。
この貨物倉の洗浄に関して、従来から、原油等を輸送する大型のタンカーにおいては、複数のカーゴオイルタンクと、少なくとも一つのスロップタンクを備えて、このスロップタンクにカーゴオイルタンクを洗浄した洗浄水(海水)を導入し、スロップタンクで水と油の比重差を利用した油水分離処理をした後、分離された油を回収すると共に、分離した水(海水)を海域に放出している(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
これらのタンカーにおいては洗浄水としては揚げ荷荷役の港の海水を汲み上げて用い、油水分離した後の海水は揚げ荷荷役の港又は帰りの海域に放出するので、特に洗浄水を船内に貯える必要がない。そのため、洗浄水用のタンクはなく、油水分離用のスロップタンクのみを備えている。
また、化学薬品を海上輸送するケミカルタンカーにおいては、複数の船槽と、廃液タンクを備えて、洗剤含有水洗浄、海水洗浄、真水洗浄、水蒸気加熱、水溶性有機化合物の一つ又は幾つかの組合せによる洗浄を行い、使用した洗浄液の廃液を廃液タンクに回収するか又は船外に排出するかを選択できるようにしたケミカルタンカーの船槽の洗浄方法が提案されている(例えば、特許文献3及び特許文献4参照。)。
このケミカルタンカーにおいては洗浄水として真水を用いる場合には、船に装備している貯水槽の真水を用いており、洗浄水として海水を用いる場合には、帰港の航海中に汲み上げ海水を用いている。
また、シーチェストまたは所定のバラストタンクから吸引された海水と、クリーニングタンク内の清水を、タンククリーニングマシンから貨物タンク内に噴射して、クリーニング後の海水および清水は、クリーニング水の排出装置により船外に排出する、バラスト注排水装置と兼用の貨物タンククリーニング装置が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。この貨物タンククリーニング装置では、清水及び海水を一時的貯めるクリーニングタンクは装備されているが、洗浄後の清水は排出装置により船外に排出されている。
実開平5−20992号公報 特開平10−264885号公報 特開昭62−149597号公報 特開2007−276622号公報(段落〔0004〕、〔0029〕 、〔0040〕、〔0049〕)
本発明は、上述の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、ポリマーペレット等の損傷や汚染を嫌うバラ積み乾貨物を積載するための貨物倉を洗浄するために必要な洗浄用の清水の搭載量を低減することができ、洗浄用清水タンクの容積を小さくして、若しくは、バラストタンクと兼用することで、船の容積を有効に利用して、バラ積み乾貨物を効率よく輸送できるバラ積み船及びバラ積みバージを提供することにある。
上記の目的を達成するための本発明のバラ積み船は、バラ積み乾貨物を搭載するバラ積み船において、洗浄用の清水を貯える洗浄用清水タンクと、バラ積み乾貨物を搭載する貨物倉を洗浄用の清水で洗浄する洗浄装置と、貨物倉を洗浄した後の清水を浄化して、洗浄用の清水として再利用可能にする洗浄水浄化装置とを備え、前記洗浄用清水タンクをバラストタンクとしても使用するように構成される。
この構成により、貨物倉を洗浄するための洗浄用の清水を繰り返し使用できるので、船に搭載する洗浄用の清水の量を低減する、若しくはバラスト水として使用することができ、船の容積を有効に利用して、バラ積み乾貨物を効率よく輸送することができる。また、清水の節約による経済性の向上を図ることもできる。
この構成とすると、通常は、積み荷が無い空荷の時に、洗浄用の清水と、船の浮力と姿勢を調整するためのバラスト用の海水を搭載し、積み荷荷役ではバラスト用の海水を無害化して放出するが、洗浄用の清水をバラスト用としても使用することができるようになるので、バラスト水の注水量を減少させることができる。
これにより、バラスト用の海水中の微生物や生物等を揚げ荷海域から積み荷海域への移動による環境問題の発生を抑制するためのバラスト用海水の無害化処理の量を減少することができ、その分、バラスト用海水の無害化処理装置を小型化できる。
上記のバラ積み船において、前記洗浄水浄化装置を、貨物倉を洗浄した後の清水を一旦溜めて、洗浄により清水に混入した混合物を浮上分離する混合物浮上分離装置を含めて構成したり、前記洗浄水浄化装置により洗浄用の清水として再利用可能になった清水を満載時にも必要なバラスト水として使用したりする。
また、上記の目的を達成するためのバラ積み用バージは、上記のバラ積み船を、推進装置を持たないバージ船として形成する。この構成のバラ積み用バージは、上記のバラ積み船と同様な効果を奏することができる。
本発明のバラ積み船及びバラ積み用バージによれば、バラ積み乾貨物を搭載する貨物倉を洗浄した後の清水を、洗浄水浄化装置により浄化して、洗浄用の清水として再利用可能にすることができるようになるので、貨物倉を洗浄するための洗浄用の清水を繰り返し使用でき、船に搭載する洗浄用の清水の量を低減することができる。従って、洗浄用タンクの容積を小さくして、船の容積を有効に利用して効率よく輸送することができる。また、清水の節約による経済性の向上を図ることもできる。
本発明に係るバラ積み船における貨物倉の配置を示した側断面図である。 図1のバラ積み船の貨物倉の配置を示した水平面図である。 図1のバラ積み船の貨物倉の構造を示した船体の横断面図である。 貨物倉洗浄システムの構成を示した図である。 貨物倉洗浄システムと船体との関係を模式的に示した図である。 別体の容器構造の貨物倉を船体に搭載したバラ積み船における貨物倉の配置を示した側断面図である。 図6のバラ積み船の貨物倉の配置を示した水平面図である。 図6のバラ積み船の貨物倉の構造を示した船体の横断面図である。 本発明に係るバラ積み乾貨物の輸送方法に使用するバラ積み船と陸上荷役設備の構成を示した斜視図である。
以下、図面を参照して本発明に係るバラ積み船及びバラ積み用バージについて説明する。なお、ここでは、推進装置を有するバラ積み船について説明しているが、本発明は、推進装置を持たないバラ積み用バージに関しても同様に適用できる。なお、図面は説明のための図であり、必ずしも実船で用いる船型や貨物倉の寸法比で作図したものではない。また、図9も荷役方法を説明するための図であり、図1〜図3及び図6〜図8の船体構造とは貨物倉の形状や排出口の異なる船体構造となっている。
図1〜図3に示すように、本発明に係る実施の形態のバラ積み船1は、バラ積み乾貨物を搭載する貨物倉10を備えて構成される。この実施の形態では、貨物倉10は船体と一体で形成される。つまり、貨物倉10の側壁11などが船体構造の一部を構成する。
この貨物倉10は、従来技術のバラ積み船(バルクキャリア)と同様に、船長方向に、隔壁6を介して並べて配置される。また、船幅方向に関しても、貨物倉10を複数配置する。この幅方向に関して、貨物倉10を複数配置することにより、個々の貨物倉10の横幅を小さくして、荒天時の船体動揺等による貨物倉10の内部におけるバラ積み乾貨物の移動範囲を少なくする。これにより、バラ積み乾貨物の横移動量を抑えて、横揺れに対する復原性能を確保する。
また、貨物倉10を、船側外板4と離間して配置すると共に、船側外板4、船底板2では貨物倉壁を形成せず、また、バラストタンクに対しても隣接させないように配置する。これにより、海水、水、バラスト水、燃料等の液体に貨物倉壁が接しないように構成し、バラストタンクにバラスト水を入れた場合等でも、貨物倉10の貨物倉壁が冷却されて結露が生じることを防止する。
この貨物倉10は、図3に示すように、垂直に形成された側壁部11と船側側上部の傾斜部13と、上甲板5の一部からなり、バラ積み乾貨物を投入する投入口14aを有する天井部14と、排出のための排出口15の絞られる傾斜部12とで囲まれた区画として形成される。貨物倉壁は、傾斜部12と側壁部11と傾斜部13と天井部14とで構成される。
この貨物倉10の貨物倉壁は、内側に突出する骨部材を設けずに、かつ、板耳を出さずに、貨物倉10の内面を平滑に形成する。つまり、貨物倉10を前後方向に仕切る隔壁6の側壁部11を形成する部分では骨部材は全て貨物倉10の外側、即ち、貨物倉10同士の間等に配置する。また、貨物倉10が横方向に向き合う側壁部11も骨部材を備えた一枚板で形成せずに、骨部材を間に挟んだ二枚の側壁部11で構成する。その他の貨物倉壁も貨物倉10の外側に骨部材を配置する。これにより、バラ積み乾貨物の残留量を減らし、且つ、シャドーエリアがないので、水もしくは圧縮空気による洗浄にて残留物を洗い流すことができ、貨物積み替え時のコンタミネーションを防ぐことができる。
また、貨物倉10の貨物倉壁は、耐錆材料、例えば、二種類の性質の異なる金属を張り合わせたクラッド鋼(圧着鋼)を用いて、内側の表面側の金属をステンレス(SUS)材等の錆びない金属とすることが好ましい。これにより、錆を嫌うバラ積み乾貨物でも輸送できるようになる。貨物倉10の上部の投入口14aには、積み荷荷役時に陸上側のバラ積み用配管と接続可能な投入用配管31を設ける。この投入用配管31には、接続フランジ31aを設ける。積み荷荷役時に、この投入用配管31に陸上荷役設備からの積み荷荷役用配管(図9の52)を接続し、バラ積み乾貨物を自然落下により、貨物倉10内に収納する。この投入口14aは、バラ積み乾貨物を均等に貨物倉10内に収納できるように、傾斜部12の中央、即ち、排出口15の直上に設けるのが好ましい。
また、貨物倉10の下部の傾斜部12を供えた排出部の排出口15には、積み荷荷役で貨物倉に貯蔵中のバラ積み乾貨物が気体輸送管に落下するのを防止するために、バルブを設ける。このバルブは、例えば、ロータリーバルブ等の定量排出バルブ21aで形成する。この定量排出バルブ21aを有する排出用配管21を介して気体輸送管22を排出口15に接続し、揚げ荷荷役時には、貨物倉10内のバラ積み乾貨物を重力により傾斜部12を滑らせて排出口15に移動させると共に、定量排出バルブ21aにより気体輸送管22で輸送可能な量に調整しながら、バラ積み乾貨物を気体輸送管22に排出して、気体輸送により陸上の荷役設備に輸送する。この気体輸送に関しては空気等を用いた気体圧送式を用いるが、この気体圧送式の替りに真空吸引式としてもよい。
なお、水分を嫌うバラ積み乾貨物の場合には、気体輸送管22に乾燥空気を送る。この場合、積み荷時や揚げ荷時等の荷役時は陸上施設の空気乾燥設備やブロワーやコンプレッサーといった送風装置から乾燥空気を貨物倉10内や気体輸送管22内に供給し、荷役時以外と運航時には、船に搭載した空気乾燥機と送風機から乾燥空気を貨物倉10内に供給し、貨物倉10内のバラ積み乾貨物が湿気を持つのを防止する。なお、真空吸引式の場合には、送風装置の替りに真空ポンプを用いる。
また、陸上施設に空気乾燥設備や送風装置を持っていない港湾に寄港する可能性がある場合は、このような港でも自力で荷役できるように、1乃至2の貨物倉10の荷揚げを行えるだけの容量を持つ空気乾燥設備と送風装置をバラ積み船1内に設けることが好ましい。
また、排出口15を一つの貨物倉10に1個若しくは複数個(図1〜図3と図6〜図8では4個)設ける。複数個設けることにより1個の場合よりも、排出口15の周辺の傾斜部12の高さを低くすることができ、貨物倉10及びバラ積み乾貨物を積んだ状態における貨物倉10全体の重心位置を低くすることができる。このことは、かさ比重が小さいバラ積み乾貨物を搭載すると、重心位置が高くなり、船体の横揺れに関する復原性能が悪化するが、この悪化の程度を減少させることができる。これにより、船全体の重心の低下と船体の横揺れに関する復原性能を確保できる。また、傾斜部12の高さを低くすることで、傾斜部12の外側周囲にできるデッドスペースを小さくすることができる。
そして、本発明においては、バラ積み乾貨物を搭載する貨物倉10を洗浄するための貨物倉洗浄システム40を備えて構成される。
図4及び図5に示すように、この貨物倉洗浄システム40は、洗浄用の清水Wを貯える洗浄用清水タンク41と、バラ積み乾貨物を搭載する貨物倉10を洗浄用の清水Wで洗浄する洗浄装置42と、貨物倉10を洗浄した後の清水Waを浄化して、洗浄用の清水Wとして再利用可能にする洗浄水浄化装置43とを備えて構成する。
貨物倉10を洗浄する洗浄装置42は、原油タンカー等の貨物倉用のタンク洗浄機や、ケミカルタンカー等のタンク洗浄機と同じ構造の洗浄装置を用いることができ、揚げ荷荷役後の貨物倉10の壁面に付着しているバラ積み貨物やバラ積み貨物の破砕物などを洗い落とすことができればよい。
この洗浄水浄化装置43は、バラ積み乾貨物を揚げ荷荷役した後の貨物倉10を洗浄した後の清水Waを浄化する装置であり、浮上分離装置やフィルタ装置やスクリーン装置や吸着装置等の水処理装置を用いることができるが、バラ積み乾貨物がポリマーペレットのように比重が清水よりも小さい場合には、例えば、浮上分離装置で構成する。この場合には、洗浄水浄化装置43を、貨物倉10を洗浄した後の清水Waを一旦溜めて、洗浄により清水Waに混入した混合物Uを浮上分離する混合物浮上分離装置を含めて構成する。
この浮上分離装置は、オイルセパレータとして数多く使用されており、洗浄した後の清水Waを洗浄水浄化装置43の混合物浮上分離装置のタンク内に貯めて放置しておくと比重の小さい混合物Uが浮上して上部側に溜まり、混合物Uが分離した清水Wbが下部側に溜まる。分離した混合物Uは混合物浮上分離装置のタンクの上部側から抜き取られ、分離した清水Wbは下部側から抜き取られる。この分離を促進するために、タンク内に多数の傾斜板や波型の傾斜板を配置したり、気泡を導入する加圧浮上分離をしたり等してもよい。
更に、洗浄用清水タンク41に清水Wを陸上から供給するために、清水供給配管44を設ける。また、洗浄用清水タンク41から洗浄装置42に清水Wを送るための洗浄水供給配管45を設けると共に、この洗浄水供給配管45に洗浄水供給ポンプ45aを設ける。また、貨物倉10又は排出用配管21又は気体輸送管22から洗浄後の清水Waを抜き出して洗浄水浄化装置43に送るための洗浄水抜き出し配管46を設け、この洗浄水抜き出し配管46に洗浄水抜き出しポンプ46aを設ける。
また、洗浄水浄化装置43の下部側から抜き出した清水Wbを洗浄用清水タンク41に戻す洗浄水戻し配管47を設け、この洗浄水戻し配管47に洗浄水戻しポンプ47aを設ける。また、洗浄水浄化装置43の上部から抜き出した洗浄時に清水Waに混合し、この洗浄水浄化装置43で浮上分離した混合物Uを抜き取って混合物貯蔵タンク48に送り込むための混合物抜き取り配管49を設け、この混合物抜き取り配管49に混合物抜き取りポンプ49aを設ける。
この貨物倉洗浄システム40を備えることにより、貨物倉10を洗浄するための洗浄用の清水W(=Wb)を繰り返し使用できるので、バラ積み船1に搭載する洗浄用の清水Wの量を低減することができ、洗浄用清水タンク41の容積を小さくして、若しくは、バラストタンクを洗浄用清水タンク41として使用することで、バラ積み船1の容積を有効に利用して、バラ積み乾貨物を効率よく輸送することができる。
また、洗浄用清水タンク41と洗浄水浄化装置43の混合物浮上分離装置のタンクの少なくとも一方、好ましくは両方をバラストタンクとしても使用するように構成すると、洗浄用の清水をバラスト用としても使用することができるようになるので、バラスト水の注水量を減少させることができる。これにより、バラスト用の海水中の微生物や生物等を揚げ荷海域から積み荷海域への移動による環境問題の発生を抑制するためのバラスト用海水の無害化処理の量を減少することができ、その分、バラスト用海水の無害化処理装置を小型化できる。
なお、洗浄用清水タンク41若しくは洗浄水浄化装置43の混合物浮上分離装置のタンクをバラストタンクとして使用する場合には、航海中は、洗浄用清水タンク41は略同じ水位を保てるので、浄化処理中以外は空となる浮上分離装置のタンクよりも、洗浄用清水タンク41をバラストタンクとして使用する方が好ましい。
また、貨物倉10の構成に関しては、図6〜図8に示すように、貨物倉10Aを個々の別体の容器として形成し、この別体の容器構造の貨物倉10Aを船体に搭載してもよい。この貨物倉10Aは、垂直に形成された側壁部11A、バラ積み乾貨物を投入する投入口14Aaを有する天井部14Aと、排出のための排出口15Aに絞られる傾斜部12Aとで囲まれた区画として形成される。貨物倉壁は、傾斜部12Aと側壁部11Aと傾斜部13Aと天井部14Aとで構成される。
貨物倉10Aの水平断面形状は、図7では、排出口15Aを複数設け易い四角形に形成しているが、別体の容器方式なので、円形や長円形や楕円等であってもよい。また、貨物倉10Aに複数の排出口15Aを持つ場合の排出口15Aの配置は船体前後方向であっても、船体横方向であってもその他の方向であってもよいが、気体輸送管22の配置に合わせて配置する。
また、貨物倉10Aの貨物倉壁は、船体と一体で形成される貨物倉10と同様に、内側に突出する骨部材を設けずに、貨物倉壁の骨部材は全て貨物倉10Aの外側に配置して、貨物倉10Aの内面を平滑に形成する。
この個々の貨物倉10Aを別体で製造して船体に搭載する別体の容器方式を採用することにより、貨物倉を構成する耐錆材料で形成される部分を船体と別体で製造してから、船体に搭載することができる。特に、耐錆材料としてクラッド鋼等特殊な鋼材を用いて貨物倉10Aの貨物倉壁を形成する場合には、個々の貨物倉10Aを別に製造して、耐錆金属で形成される部分が略完成した貨物倉10Aを船体に搭載することにより、製造が著しく容易となる。また、耐錆材料としてFRPなどの非金属材料で形成した貨物倉10Aを用いることも可能となる。
更に、貨物倉10Aを上甲板から突出させると共に、貨物倉10Aの側壁部11Aと上甲板5との間を水密若しくは風雨密構造で構成する。これにより、上甲板5を貨物倉10Aの上部構造とするよりも、船体構造の鋼材が削減され製造原価を低減できる。また、貨物倉10Aを完全に上甲板5やハッチカバー(図示しない)で覆う構造よりも、構造が単純化するので、船体重量を軽減でき、また、船体の重心を下げることができる。その結果、船体の横揺れに関する復原性能を容易確保できるようになる。
ただし、貨物倉10Aの上部が暴露されるため、貨物倉10A内の温度上昇に配慮する必要が有り、遮熱塗料などによる防熱施工を行うこともありうる。
また、図6〜図8に示すように、貨物倉10Aの上部に覆い構造7を設けると、貨物倉10Aの天井部14Aが大気中に露出しないので、湿度を嫌うバラ積み乾貨物の場合には特に湿気防止の効果を奏することができる。
その他の、貨物倉10Aの前後方向の配置及び横方向の複数配置、バラストタンク等からの離間配置、クラッド鋼の利用、積み荷荷役用の貨物倉10Aの上部の投入口14Aaと投入配管31、貨物倉10Aの下部の傾斜部12Aを供えた排出部の排出口15Aと定量排出バルブ21aと排出管21と気体輸送管22、乾燥空気Aの送入方式等の構成は、貨物倉10が船体と一体で形成されるバラ積み船1と同じである。
次に、バラ積み乾貨物の輸送方法について説明する。この輸送方法は、上記のバラ積み船1、1Aを用いて行う輸送方法であり、次のようなバラ積み乾貨物の積み荷荷役と揚げ荷荷役を行う。ここでは、貨物倉10Aを個々の別体の容器として形成し、この別体の容器を搭載したバラ積み船1Aで説明するが、船体と一体に形成される貨物倉10を持つバラ積み船1でも同じである。
図9を参照しながら、バラ積み乾貨物の積み荷荷役と揚げ荷荷役について説明する。先ず、積み荷荷役は、陸上荷役設備の積み荷用陸上設備50のバラ積み乾貨物用貯蔵容器51の下部とバラ積み船1Aの貨物倉10Aの天井部14Aに設けられた投入用配管31に積み荷荷役用配管52を接続し、積み荷用送風装置53から乾燥空気Aを送って、気体輸送によりバラ積み乾貨物Bを投入用配管31の先端の投入口14Aに搬送する。投入口14Aに搬送されたバラ積み乾貨物Bは自然落下により、貨物倉10Aに収納される。
各貨物倉10Aにバラ積み乾貨物Bが収納されたら、投入用配管31を閉じて、積み荷荷役用配管52を外して、この貨物倉10Aに関する積み荷荷役を終了する。各貨物倉10Aの積み荷荷役を終了したら、出港準備を行って航海に移る。
次に、揚げ荷荷役について説明する。入港した後に、陸上荷役設備の揚げ荷用陸上設備60の揚げ荷用送風装置61に接続された空気送入管62を、バラ積み船1Aの空気供給口23(図9では、船体上部の側面の上側)に接続する。また、一時貯蔵容器63の上部に接続された揚げ荷用配管64をバラ積み船1Aの貨物排出口24(図9では、船体上部の側面の下側)に接続する。
接続後、揚げ荷用送風装置61を駆動し、乾燥空気Aを空気供給口23から気体輸送管22に送ると共に、バラ積み乾貨物Bを貨物倉10Aの排出口15Aから、定量排出バルブ21aで流量を調整しながら気体輸送管22に供給する。これにより、気体輸送によりバラ積み乾貨物Bを気体輸送管22、貨物排出口24、揚げ荷用配管64経由で、一時貯蔵容器63に搬送する。
この一時貯蔵容器63からは、貯蔵用送風装置65の駆動により、バラ積み乾貨物Bを貯蔵用配管66経由で貯蔵容器67の上部に搬送し、貯蔵容器67に貯蔵する。この貯蔵容器67に貯蔵されたバラ積み乾貨物Bは、貨車68等で各所に搬送される。
貨物倉10Aのバラ積み乾貨物Bを揚げ荷した後は、空気供給口23の流通を閉じた後、揚げ荷用配管64の取外しと貨物排出口24の閉鎖を行う。これにより揚げ荷荷役を終了し、出港の準備をして航海に移る。
この揚げ荷荷役が済んで洗浄可能な状態になった貨物倉10Aに対して、出港前から、又は、出港後に、貨物倉10Aの洗浄を行う。この洗浄は、図4及び図5に示すように、出港前に清水供給配管44経由で陸上から供給され洗浄用清水タンク41に貯蔵された清水Wを用いる。この清水Wを洗浄水供給ポンプ45aを駆動して洗浄用清水タンク41から洗浄水供給配管45経由で洗浄装置42に送る。
洗浄装置42はこの清水Wの供給を受けて貨物倉10Aがきれいになるまで散水し、貨物倉10Aを洗浄する。この貨物倉10Aを洗浄した後の清水Waにはバラ積み乾貨物の破砕片などが含まれているので、洗浄水抜き出しポンプ46を駆動して、貨物倉10又は排出用配管21又は気体輸送管22から洗浄後の清水Waを抜き出して洗浄水抜き出し配管46経由で洗浄水浄化装置43に送る。
洗浄水浄化装置43では、一定時間溜め置いて浮上分離を行い、洗浄後の清水Waから混合物Uを自分の浮力により浮上させて清水Wbと分離する。分離した後に、洗浄水戻しポンプ47aを駆動して、下部に溜まっている清水Wbを、洗浄水浄化装置43の下部側から抜き出し、洗浄水戻し配管47経由で洗浄用清水タンク41に戻す。
この戻ってきた清水Wbを洗浄用の清水Wとして、別の貨物倉10Aの清浄を行う。洗浄用清水タンク41の容量と洗浄水浄化装置43の浮上分離用タンクの容量を、同時洗浄する貨物倉10Aの容量を考えて適切な容量に設定することにより、連続的あるいは、断続的に貨物倉10Aを順次洗浄していくことができる。
また、洗浄水浄化装置43の浮上分離用タンクの上部に溜まった混合物Uは、混合物Uの溜まり具合や洗浄水浄化装置43の稼働時間等に応じて、混合物抜き取りポンプ49aを駆動して浮上分離用タンクから抜き出して混合物貯蔵タンク48に溜め込む。この混合物貯蔵タンク48に溜め込んだ混合物Uは、次の揚げ荷荷役時に陸上に搬出して、陸上の処理設備で再生処理又は廃棄処理する。また、洗浄用清水タンク41に貯蔵した再利用の清水Wb(=W)は、使用回数を増すに従って徐々に種々の物質の混入量が増加してくるので、必要に応じて混合物Uと同様に、揚げ荷荷役時に陸上に搬出して陸上の処理設備で浄化処理し、新しい清水Wを洗浄用清水タンク41に搭載する。
上記の構成のバラ積み船1,1Aによれば、バラ積み乾貨物Bを搭載する貨物倉10,10Aを洗浄した後の清水Waを、洗浄水浄化装置43により浄化して、洗浄用の清水W(=Wb)として再利用可能にすることができるようになるので、貨物倉10,10Aを洗浄するための洗浄用の清水Wを繰り返し使用でき、バラ積み船1,1Aに搭載する洗浄用の清水Wの量を低減することができる。従って、洗浄用清水タンク41の容積を小さくして、バラ積み船1,1Aの容積を有効に利用して、バラ積み乾貨物Bを効率よく輸送することができる。
本発明のバラ積み船及びバラ積み用バージは、上記のような効果を奏することができるので、従来技術では、損傷や汚染を回避するために袋詰めとコンテナ輸送を行っていた、ポリマーペレット等の粉粒体等の輸送に利用することができる。
1,1A バラ積み船
2 船底板
3 二重底(内底板)
4 船側外板
5 上甲板
6 隔壁
7 覆い構造
10,10A 貨物倉
11,11A 側壁部
12,12A 傾斜部
13 船側側上部の傾斜部
14,14A 天井部
14a,14Aa 投入口
15,15A 排出口
21 排出用配管
21a 定量排出バルブ
22 気体輸送管
23 空気供給口
24 貨物排出口
31 投入用配管
40 貨物倉洗浄システム
41 洗浄用清水タンク
42 洗浄装置
43 洗浄水浄化装置
48 混合物貯蔵タンク
A 乾燥空気
B バラ積み乾貨物
U 混合物
W 清水
Wa 洗浄した後の清水
Wb 混合物が分離した清水

Claims (4)

  1. バラ積み乾貨物を搭載するバラ積み船において、洗浄用の清水を貯える洗浄用清水タンクと、バラ積み乾貨物を搭載する貨物倉を洗浄用の清水で洗浄する洗浄装置と、貨物倉を洗浄した後の清水を浄化して、洗浄用の清水として再利用可能にする洗浄水浄化装置とを備え、前記洗浄用清水タンクをバラストタンクとしても使用することを特徴とするバラ積み船。
  2. 前記洗浄水浄化装置を、貨物倉を洗浄した後の清水を一旦溜めて、洗浄により清水に混入した混合物を浮上分離する混合物浮上分離装置を含めて構成することを特徴とする請求項1記載のバラ積み船。
  3. 前記洗浄水浄化装置により洗浄用の清水として再利用可能になった清水を満載時にも必要なバラスト水として使用することを特徴とする請求項1又は2に記載のバラ積み船。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のバラ積み船を、推進装置を持たないバージ船として形成することを特徴とするバラ積みバージ。
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