JP5362312B2 - 導電性樹脂成形物 - Google Patents
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Description
例えば、水系電解液を用いる電気二重層コンデンサーにおいては、より高い出力電圧を得る目的で、複数のコンデンサーを、直列や並列にて接続し使用する場合がある。しかし、これらコンデンサーを複数接続してなる複合体は、複合体全体が有する内部抵抗が大きくなってしまい、低い出力電流しか得られない場合がある。このようなことから、個々のコンデンサーが有する内部抵抗を出来るだけ小さくすることが望まれている。また、電解液として25〜50%程度の硫酸水溶液を使用するため、集電体に対しては同時に耐食性も要求されている。
導電性樹脂成形物中に含まれる導電体に金属を用いたものは、酸性環境下では導電性が不安定であるという欠点があり、耐食性の良い貴金属を用いると極めて高価になるという問題がある。
そこで、機械物性と導電性のバランスをとるために、炭素繊維とカーボンブラックを熱可塑性樹脂に配合した導電性繊維強化複合材料(特許文献1)や、ガラス繊維で強化した繊維強化複合材料にカーボンブラックを配合した電気的性質の優れた熱可塑性樹脂組成物(特許文献2)などが提案されている。
しかし、これらの技術では、剛性や弾性率は向上するが、一方において柔軟性が低下する。つまり、例えば成形品をフィルム状にしても形状を自由に変形することができるといった樹脂本来の特徴を失ってしまい用途が限られてしまう。また、特許文献3にあるようなガラス繊維のチョップドストランドを通常の押出機を使用して混練する方法では、繊維が混練工程で短く切断され、これを更に射出成形することにより繊維は更に短く破損することとなり、この結果、剛性や弾性率の向上は図れても、耐衝撃性の向上効果は得られず、用途に限りが生じるという問題があった。
例えば、特許文献4では、ポリアニリンまたはその誘導体とプロトン酸を接触させ、その接触時または接触後に金属化合物を添加することによって、良好な熱可塑性導電性プラスチックを得ている。
しかして、本発明は、
(1)熱可塑性樹脂を30〜75重量%、導電性ポリアニリンを1.5〜10重量%、導電性炭素を12〜53重量%含む導電性樹脂組成物を成形してなる導電性樹脂成形物であって、
当該導電性樹脂組成物が、JIS K 7171に規定される曲げ特性の試験において下記に記載の条件で成形して得られたプレスサンプルのたわみ7.0mmにおける曲げ強度が100gf以上となる導電性樹脂組成物であり、導電性炭素が導電性炭素繊維を含む導電性樹脂成形物。
<プレス条件>
サイズ、形状: 24mmΦ、1mm厚み
温度 : 含有熱可塑性樹脂の融点以上
圧力、時間 : 5MPa、1分、次いで20MPa、4分間の2段階
<曲げ試験条件>
支点間距離 : 20mm
試験速度 : 50mm/min、
(2)熱可塑性樹脂がポリオレフィンを含む(1)に記載の導電性樹脂成形物、
(3)導電性ポリアニリンがドーパントによりドープされているポリアニリンである(1)又は(2)に記載の導電性樹脂成形物、
(4)導電性ポリアニリン中の窒素原子とドーパントのモル比が窒素原子:ドーパント=1:0.5〜1:3である(3)に記載の導電性樹脂成形物、
(5)ドーパントが炭素数6以上のアルキル基を有する酸を含む(3)または(4)に記載の導電性樹脂成形物、
(6)炭素数6以上のアルキル基を有する酸がドデシルベンゼンスルホン酸を含む(5)に記載の導電性樹脂成形物、
(7)体積固有抵抗値が1×10−1Ω・cm以下である(1)〜(6)のいずれかに記載の導電性樹脂成形物、
(8)金属元素を2000ppm以下含有する(1)〜(7)のいずれかに記載の導電性樹脂成形物、
(9)熱可塑性樹脂、導電性ポリアニリン及び導電性炭素を含む導電性樹脂組成物を成形後、浸漬または洗浄することを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の導電性樹脂成形物の製造方法、
(10)熱可塑性樹脂、導電性ポリアニリン及び導電性炭素を含む導電性樹脂組成物を成形後、浸漬または洗浄し、更にドーパントを加えることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の導電性樹脂成形物の製造方法に存する。
[(a)熱可塑性樹脂]
本発明で用いる熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、様々な熱可塑性樹脂を用いることができる。たとえばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル類、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド類、ポリスチレン、ポリスチレン共重合体、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ塩化ビニル及びこれらの混合物等を挙げることができる。
このうち、熱可塑性樹脂でもオレフィン系樹脂が柔軟性、汎用性の観点から特に有用である。オレフィン系樹脂としては特に制限はなく、様々なオレフィン系樹脂を用いることができる。たとえば、エチレンの単独重合体;エチレンを主成分とした、プロピレン、1−ブテン等の他のα−オレフィン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等のビニル単量体等の1種又は2種以上との共重合体等のエチレン系樹脂;プロピレンの単独重合体;プロピレンを主成分とした、エチレン、1−ブテン等の他のα−オレフィン等の1種又は2種以上との共重合体等のプロピレン系樹脂;1−ブテンの単独重合体;1−ブテンを主成分とした、エチレン、プロピレン等の他のα−オレフィン等の1種又は2種以上との共重合体等のブテン系樹脂;等が挙げられる。これらのオレフィン系樹脂は、単独重合体であっても、共重合体でも良く、また、ランダム共重合体であっても良いし、ブロック共重合体であっても良い。
なお、上記の「主成分」とは、共重合体の構成成分中に50重量%以上、好ましくは60重量%以上含まれるものを指す。
オレフィン系樹脂の重合方法は、樹脂状物が得られる限り、如何なる重合方法を採用しても差し支えないが、気相法、溶液法であるものが特に好ましい。
本発明の導電性樹脂成形物には、ポリオレフィン系樹脂はその1種のみが含まれていても良く、2種以上が混合して含まれていても良い。
熱可塑性樹脂中ポリオレフィン系樹脂は50〜100重量%であるのが好ましい。更に熱可塑性樹脂中エチレン系樹脂が50〜100重量%であるのが好ましい。
熱可塑性樹脂の含有量は導電性樹脂成形物中30〜85重量%、更に好ましくは30〜75重量%である。含有量が多いと高導電性を得られず、少ないと柔軟性の低下が著しくなり脆くなる。
本発明で用いる導電性ポリアニリンは、構成単位の基本骨格がアニリン及び/またはアニリン誘導体であれば特に制限はない。導電性ポリアニリンとしては、ドーパントによりドープされたポリアニリンが挙げられる。
該ドーパントとしては、導電性ポリマーのベースとなるπ共役高分子化合物等をドープすることができるドーピング剤であれば任意のものが使用でき、特に限定されないが、その具体例としては、ヨウ素、臭素、塩素、フッ素などのハロゲン化合物;硫酸、塩酸、硝酸、過塩素酸、ホウフッ化水素酸などのプロトン酸;これらプロトン酸の各種塩;三塩化アルミニウム、三塩化鉄、塩化モリブデン、塩化アンチモン、五フッ化ヒ素、五フッ化アンチモンなどのルイス酸;酢酸、トリフルオロ酢酸、ポリエチレンカルボン酸、ギ酸、安息香酸などの有機カルボン酸;これら有機カルボン酸の各種塩;フェノール、ニトロフェノール、シアノフェノールなどのフェノール類;これらフェノール類の各種塩;ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ポリエチレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、アルキルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、樟脳スルホン酸、ジオクチルスルホコハク酸、銅フタロシアニンテトラスルホン酸、ポルフィリンテトラスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ナフタレンスルホン酸縮合物などの有機スルホン酸;これら有機スルホン酸の各種塩;ポリアクリル酸などの高分子酸;プロピルリン酸エステル、ブチルリン酸エステル、ヘキシルリン酸エステル、ポリエチレンオキシドドデシルエーテルリン酸エステル、ポリエチレンオキシドアルキルエーテルリン酸エステルなどのリン酸エステル;これらリン酸エステルの各種塩;ラウリル硫酸エステル、セチル硫酸エステル、ステアリル硫酸エステル、ラウリルエーテル硫酸エステルなどの硫酸エステル;これら硫酸エステルの各種塩;等が挙げられる。
中でも、プロトン酸、有機カルボン酸、フェノール類、有機スルホン酸、リン酸エステル、硫酸エステル、これらの各種塩であるのが好ましく、具体的には、塩酸、硝酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、樟脳スルホン酸、ジオクチルスルホコハク酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ナフタレンスルホン酸縮合物、これらの金属塩等各種塩であるのが好ましい。
また、上記一次ドーパントと呼ばれるものに、二次ドーパントと呼ばれる置換フェノール誘導体を含んでもよい。
ドーパントの添加量は、導電性樹脂成形物中の導電性ポリアニリン中の窒素原子(ただし、ドーパント由来の窒素原子を含まない)とドーパント(導電性ポリアニリンのドーピングに使用されず該成形物中に存在しているドーパントも含む)の量比がモル比で窒素原子:ドーパント=1:0.001〜1:15好ましくは1:0.5〜1:3であるのがドーパントとして役割を果たす最適値なので好ましい。
本発明の導電性樹脂成形物には、導電性ポリアニリンは、その1種のみが含まれていても良く、2種以上含まれていても良い。
導電性ポリアニリンの導電性樹脂成形物中の含有量は0.9〜10重量%である。なお、導電性ポリアニリンがドーパントによりドーピングされたものである場合は、前記の導電性ポリアニリンの含有量には、導電性ポリアニリンのドーパント由来部は含まれない。
導電性ポリアニリンの含有量が少ないと優れた導電性が得られず、多すぎると柔軟性の低下が著しくなり脆くなる。含有量が1.5〜10重量%であると導電性がより良好となるので好ましい。
本発明で用いる導電性炭素としては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラックの他、黒鉛、活性炭、カーボンナノチューブやカーボンナノワイヤー等の導電性炭素繊維等が挙げられる。これらを1種又は2種以上使用してもよい。これらの中では、少量の添加で導電性付与効果が出る高導電性の、アセチレンブラックやファーネスブラックや導電性炭素繊維等が好ましい。さらに好ましくは、高導電性で、且つ他の導電体との接触効率の高い高アスペクト比を有することから導電性炭素繊維が好ましい。繊維状導電体を用いて導電性樹脂成形物を製造する時、導電体そのものの導電性が同じならば、導電性は導電体が細く長い方が導電体同士が接触しやすいため導電性は優れた結果となる。導電性炭素繊維の例としては気相成長炭素繊維、シングルウォールカーボンナノチューブ、マルチウォールカーボンナノチューブ等が挙げられる。導電性炭素繊維の径に特に制限はなく、その製造様式は繊維状物が得られる限り、如何なる製造様式を採用しても差し支えない。導電性炭素を含有する導電性樹脂成形物において、成形物の導電性能に大きな影響を与える要因として導電体の接触が挙げられる。成形物中において導電体の接触が多いほど導電性は優れる。そのため、導電性炭素繊維のような高アスペクト比を有する導電性炭素を用いるほうが成形物中で効率よく導電回路が形成されるため好ましい。
本発明の導電性樹脂成形物には、導電性炭素は、その1種のみが含まれていても良く、2種以上が混合して含まれていても良い。導電性炭素は導電性炭素繊維を50〜100重量%含有するのが好ましい。
導電性炭素の含有量は該成形物中6〜53重量%である。含有量が少ないと極めて高い導電性が得られず、多いと柔軟性の低下が著しくなり脆くなる。導電性炭素の含有量は12〜53重量%であると成形物の導電性と柔軟性が良好となるのでより好ましい。
本発明の導電性樹脂成形物は、上記成分(a)〜(c)を必須成分として含有するものであるが、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、他の樹脂(エラストマー(ゴム)を含む)、添加剤、充填材等の成分を含有していても構わない。ただし、本発明の導電性樹脂成形物中には、前記(a)〜(c)の必須成分を合計で50重量%以上含んでいることが好ましく、70重量%以上含んでいることが特に好ましい。
前記添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、ブロッキング防止剤、分散剤、難燃剤、導電性高分子用ドーパント、助剤、着色剤の他、熱可塑性樹脂に通常用いられる各種添加剤等を挙げることができる。
このうち酸化防止剤としては、例えば、モノフェノール系、ビスフェノール系、トリ以上のポリフェノール系、チオビスフェノール系、ナフチルアミン系、ジフェニルアミン系、フェニレンジアミン系のもの等が挙げられる。これらの中では、モノフェノール系、ビスフェノール系、トリ以上のポリフェノール系、チオビスフェノール系の酸化防止剤が、酸化防止効果が高いことから好ましい。酸化防止剤を使用する場合は、成分(a)〜(c)の合計量に対し、通常、0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%用いる。酸化防止剤が0.01重量%以上であると、酸化防止剤の使用による酸化防止効果が有効に発現しやすく、また、5重量%以下である方が、使用量に見合った効果が得られ経済的である。
また、前記充填材としては、例えば、タルク、マイカ、シリカ、チタニア、炭酸カルシウムの他、熱可塑性樹脂に通常用いられる各種充填剤等を挙げることができる。
分散剤を用いることにより、導電性ポリアニリンと熱可塑性樹脂の混合性が良くなり、樹脂組成物が加工し易くなり、かつ導電性ポリアニリンが樹脂全体に広がりやすく、より高い導電性を得ることができる。また、得られた成形物を水や水溶液等に浸漬または水や水溶液等で洗浄することにより、該分散剤が除去されるので、成形物中で導電性ポリアニリンが濃縮し(濃度が高くなり)、更により高い導電性を有する導電性樹脂成形物を得ることできる。分散助剤の量は樹脂組成物中で0.1〜50重量%程度である。
更に、浸漬または洗浄後の成形物を塩酸等ドーパントを含有する溶液に浸漬または該溶液で洗浄する等、ドーパントを加えることにより、成形物中の導電性ポリアニリンが再度ドーピングされ、分散剤除去の際に抜け落ちたドーパントを補填することができ、更により高い導電性を有する導電性樹脂成形物を得ることができる。
本発明の導電性樹脂成形物は、優れた導電性能を有し、また、柔軟性を維持していることから、ハンドリングが容易であり二次加工適正に優れ燃料電池セパレータ部材や太陽電池部材など、電子材料などの成形品等として工業的に極めて有用である。
実施例、比較例で用いた材料及び評価方法は以下に示す通りである。
[使用材料]
・PE:日本ポリエチレン(株)製 エチレン系樹脂;KS240T
・VGCF−S:昭和電工(株)製 導電性炭素繊維(平均繊維径100nm、 平均繊維長10μm、アスペクト比100)
・VGCF:昭和電工(株)製 導電性炭素繊維(平均繊維径150nm、平均繊維長8μm、アスペクト比53)
・Panipol PA:panipol社製 ポリアニリン
・ZnO:関東化学(株)製 酸化亜鉛
・DBSA:関東化学(株)製 ドデシルベンゼンスルホン酸
[評価方法]
<体積固有抵抗値>
ダイアインスツルメンツ社製ロレスターを用いて23℃、90Vにて実施例及び比較例において得られたプレス成形物の体積抵抗値を測定した。結果を表に示した。
実施例及び比較例で得られたプレス成形物を図1にあるようにJIS K 7171にある曲げ試験機に設置し、ブリッジ幅20mm、試験速度50mm/minにて曲げ試験を行った。得られたチャートにてたわみ7.0mmの時に曲げ強度(曲げ強さ)が100gf以上の曲げ強度である試料を柔軟性が良いとした。これは、該実験にて100gfより小さい曲げ強度のものは試料にヒビが入ったか割れたものであったため、柔軟性の指標として上記値を定めている。結果を表に示した。また図2に一部の結果のチャートを示した。
<浸漬後の成形物の樹脂組成>
水に浸漬することにより成形物中のドーパント(DBSA)の一部、及び分散剤であるDBSA−Zn(下記のポリアニリンマスターバッチの製造の過程で生成。分散剤として作用する。)が溶出するが、熱可塑性樹脂、導電性ポリアニリン、VGCF−S(またはVGCF)は浸漬により溶出はしない。従って、浸漬後の成形物の組成は、浸漬後の成形物中のDBSAとZn量を元素分析とICP−OES(ICP発光分光分析)によりそれぞれ求め、これらの量から算出した。なお、元素分析にはPerkin−Elmer社製2400II CHNS/Oアナライザを、ICP−OESにはSEIKO社製SPS7700を用いた。
塩酸浸漬後の成形物中のCl量は、試料を燃焼フラスコ中で燃焼させた後、発生ガスを過酸化水素水に吸収させ、硝酸第二水銀で滴定を行い求めた。
(第1工程:導電性ポリアニリンマスターバッチの製造)
絶縁性を示すエメラルジン塩基のポリアニリンであるPanipol PA1.49gと、DBSA7.86g、ZnO0.66gを室温にて10分間、ガラス棒を用いて手動で予備混練した後、ラボプラストミルを用いて180℃、450rpmで7分間混練し、これを導電性ポリアニリンマスターバッチとした。
(第2工程:導電性樹脂成形物の製造)
熱可塑性樹脂(PE)、導電性ポリアニリンマスターバッチ、導電性炭素(VGCF−SまたはVGCF)を表にある組成(重量%)で混練した。混練にはラボプラストミルを用い、180℃、50rpm、3分間行った。得られた混練品を室温まで冷ました後、細かく破砕した。破砕品はプレス機を用いてプレス成形し、導電性樹脂成形物(プレス成形品)を得た。なお、プレスには東洋精機製作所製ミニテストプレスを用い、真ちゅう製の24mmφ×1.0mm厚の型にて180℃、5MPaで1分間、その後180℃、20MPaで4分間プレスした。
実施例1〜18で得られた各プレス成形物を多量のイオン交換水に室温にて120時間浸漬した。その後、室温にて前記水に浸漬した成形物を24時間真空乾燥し、導電性樹脂成形物を得た(水浸漬品)。
なお、実施例19〜36において、ICP−OESの結果より求めた導電性樹脂成形物(水浸漬品)中のZn(元素)は2000ppm以下であった。
実施例19〜36で得られた各水浸漬品を、室温にて多量の6M塩酸に44時間浸漬した後、室温にて24時間真空乾燥し、導電性樹脂成形物を得た(水及び塩酸浸漬品)。
なお、実施例37〜54において、ICP−OESの結果より求めた導電性樹脂成形物(水及び塩酸浸漬品)中のZn(元素)は2000ppm以下であった。また、滴定の結果より求めた導電性樹脂成形物中のCl(元素)は2000ppm以下であった。
導電性炭素としてVGCFを用いたこと以外は実施例50と同様にして導電性樹脂成形物(水及び塩酸浸漬品)を得た。
実施例1〜18は導電性ポリアニリンと導電性炭素による相乗効果を明確に示している。それぞれの導電体を単独で用いた場合には、併用した場合に比べ高導電性を示す成形物は得られない。
例えば、比較例1と4は、熱可塑性樹脂を60重量%、導電体として導電性ポリアニリン6重量%または導電性炭素を40重量%を含有しており、それぞれの体積固有抵抗値は2.54×104 Ω・cm、1.08×100 Ω・cmである。実施例8は熱可塑性樹脂を60重量%、導電体として導電性ポリアニリンを3重量%及び導電性炭素を20重量%含有している。実施例8の成形物の体積固有抵抗値として一般的に予想される結果は、2.54×104 Ω・cmと1.08×100 Ω・cmの平均値である1.26×104 Ω・cmであるが、実際には実施例8の体積固有抵抗値は8.69×10−1Ω・cmであり、それぞれの導電体を単独で用いた場合の値や、併用して用いた場合に予測される平均値よりも優れた導電性を示している。
実施例1〜18と実施例19〜36を比べるとわかるように、ほとんどの組成において導電性の向上が見られる。特に、導電性ポリアニリンマスターバッチの含有量が多くなるほど顕著である。これは熱可塑性樹脂、導電性ポリアニリン、導電性炭素と分散剤を含有する成形物を分散剤が溶解する液体に浸漬することにより、分散剤が成形品から溶出し、その結果、導電性ポリアニリンが成形品内部で濃縮されるためと思われる。
また、実施例19〜36と実施例37〜54を比べるとわかるように、ドーピングの追添加により更に導電性の向上が見られ、実施例43〜54では柔軟性を損なうことなく1×10−1Ω・cm以下という極めて高い導電性を示している。
Claims (10)
- 熱可塑性樹脂を30〜75重量%、導電性ポリアニリンを1.5〜10重量%、導電性炭素を12〜53重量%含む導電性樹脂組成物を成形してなる導電性樹脂成形物であって、
当該導電性樹脂組成物が、JIS K 7171に規定される曲げ特性の試験において下記に記載の条件で成形して得られたプレスサンプルのたわみ7.0mmにおける曲げ強度が100gf以上となる導電性樹脂組成物であり、導電性炭素が導電性炭素繊維を含む導電性樹脂成形物。
<プレス条件>
サイズ、形状: 24mmΦ、1mm厚み
温度 : 含有熱可塑性樹脂の融点以上
圧力、時間 : 5MPa、1分、次いで20MPa、4分間の2段階
<曲げ試験条件>
支点間距離 : 20mm
試験速度 : 50mm/min - 熱可塑性樹脂がポリオレフィンを含む請求項1に記載の導電性樹脂成形物。
- 導電性ポリアニリンがドーパントによりドープされているポリアニリンである請求項1又は2に記載の導電性樹脂成形物。
- 導電性ポリアニリン中の窒素原子とドーパントのモル比が窒素原子:ドーパント=1:0.5〜1:3である請求項3に記載の導電性樹脂成形物。
- ドーパントが炭素数6以上のアルキル基を有する酸を含む請求項3または4に記載の導電性樹脂成形物。
- 炭素数6以上のアルキル基を有する酸がドデシルベンゼンスルホン酸を含む請求項5に記載の導電性樹脂成形物。
- 体積固有抵抗値が1×10−1Ω・cm以下である請求項1〜6のいずれか一項に記載の導電性樹脂成形物。
- 金属元素を2000ppm以下含有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の導電性樹脂成形物。
- 熱可塑性樹脂、導電性ポリアニリン及び導電性炭素を含む導電性樹脂組成物を成形後、浸漬または洗浄することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の導電性樹脂成形物の製造方法。
- 熱可塑性樹脂、導電性ポリアニリン及び導電性炭素を含む導電性樹脂組成物を成形後、浸漬または洗浄し、更にドーパントを加えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の導電性樹脂成形物の製造方法。
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