JP5359056B2 - 磁気センサ及び回転角度検出装置 - Google Patents

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本発明は、回転する磁場を検知するための磁気センサ及び回転角度検出装置に関する。
磁気抵抗効果素子を用いた磁気センサは、非接触での検出を実現するものとして有用であり、回転角度を測定することを目的として磁気エンコーダや磁気回転角度センサが利用されている。
特に、絶対角を測定するためには、回転する磁場に対して磁気抵抗効果素子の検出感度が等方的であり、どのような磁場の向きに対しても検出誤差が小さいことが重要である。このような磁気回転角度センサを実現することを目的として、例えば、特許文献1には、図6に示すような螺旋形状の磁気抵抗効果素子(螺旋型素子)が開示されている(本発明の図面の符号と区別するために、符号の説明を100番台で示す)。これは磁気抵抗効果素子の形状に起因した磁気的異方性、即ち形状磁気異方性を低減するために螺旋型素子を構成し、回転する磁場に対して等方性を向上させる技術である。また、特許文献1には、図7に示すような蛇行形状の磁気抵抗効果素子(蛇行型素子)が開示されている。半円形の磁気抵抗効果素子を連結させた蛇行形状を用いることで、半円形の円弧の特徴である磁気的な等方性を実現しようとするものである。特許文献2には、図8に示すように半円形を組み合わせた磁気抵抗効果素子が開示されている(本発明の図面の符号と区別するために、符号の説明を200番台で示す)。
特許第3587678号公報(図3,図4) 実開昭48−086765号公報(第5図)
図6の螺旋型素子の場合、形状磁気異方性に起因する保磁力の大きさが螺旋の曲率半径によって変化するため、螺旋型素子の中心部と外周部で検出感度に差が生じる。その結果、磁気センサを小型化するために磁気抵抗効果素子のパターンの面積を縮小すると、検出感度の異方性が顕著になるという問題点があった。
図7のように半円形の磁気抵抗効果素子を連結した場合、円弧部と半円接続部では外部磁場に対して磁気エネルギーが異なっており、円弧部では水平方向(紙面での横方向)の磁気異方性を示し、半円接続部では垂直方向(紙面での上下方向)の磁気異方性を示す。このとき、蛇行型素子を構成する円弧部と半円接続部の数は、必ず半円接続部の方が1つ多くなることから磁気抵抗効果素子全体の磁気異方性を十分小さくするには不十分なことがある。
図8のように円弧の端が配線に接続されていると、円弧部と半円の端では外部磁場に対して磁気エネルギーが異なっており、円弧部では垂直方向(紙面での上下方向)の磁気異方性を示し、円弧の端では水平方向(紙面での横方向)の磁気異方性を示す。円弧の端における磁気異方性をキャンセルすることは難しい。
かかる状況において、磁気抵抗効果素子の形状磁気異方性を十分小さくする為には、円盤形状の磁気抵抗効果素子(円盤型素子)を用いることが理想的である。しかし、円盤型素子または前記円盤型素子を複数個連ねた素子では、電流を流したときに円盤内部の電位分布が一様ではないという問題点がある。また、所望の電気抵抗を得るためには円盤型素子の面積を大きくすることになり、小型化に反するという問題点もある。また、素子の全長が短いと検出感度が十分得られないという問題がある。
本発明は、このような問題に着目してなされたものであり、検出感度の異方性を抑え、磁気的等方性を有し、検出感度も高く、且つ小型の磁気センサおよびそれを用いた回転角度検出装置を提供することを目的とするものである。
本発明は非磁性の中間層を介して2つの強磁性膜が積層されたスピンバルブ型磁気抵抗効果素子を用いた磁気センサであって、前記スピンバルブ型磁気抵抗効果素子は複数のリング型素子および/もしくはC字型素子が連なるとともに、前記複数のリング型素子および/もしくはC字型素子が全体的に屈曲もしくは屈折するように連なり、前記複数のリング型素子および/もしくはC字型素子が電気的に接続されている状態で通電され、外部磁場に対して前記スピンバルブ型磁気抵抗効果素子の電気抵抗が変化することを特徴とする。
スピンバルブ型磁気抵抗効果素子(以後、磁気抵抗効果素子と称す)として円形状のリング型素子、もしくはそれに近似するC字型素子を用いたことで、スピンバルブ型磁気抵抗効果素子の磁化の向きが電流路となるパターン形成された金属膜のなす角度と一定ではなく、あらゆる角度を有する形状となる。この形状とすることで、磁気センサは素子内部の磁化に対し、形状に起因する磁気異方性を低減し、検出信号の波形ひずみを低減できる。特にC字型素子は電流路の一端に開口部を設けることによりリング状素子を連結したものより電流路が制限され、電気抵抗が大きく出力の大きな磁気センサとなる。磁気抵抗効果素子の電気抵抗は大きい方が消費電力が少なく好ましい。さらに、スピンバルブ型磁気抵抗効果素子を屈曲もしくは屈折、さらには折り返す形状にすることで、磁場の検出部を長くすることができ、電気抵抗が大きく出力の大きな磁気センサとなる。
また、別の本発明は、非磁性の中間層を介して2つの強磁性膜が積層されたスピンバルブ型磁気抵抗効果素子を用いた磁気センサであって、前記スピンバルブ型磁気抵抗効果素子は波形に形成されるとともに全体的に屈曲もしくは屈折するように連なり、外部磁場に対して前記スピンバルブ型磁気抵抗効果素子の電気抵抗が変化することを特徴とする。効果や作用は前記の磁気センサと同様である。
これらのスピンバルブ型磁気抵抗効果素子が少なくとも2つ含まれるブリッジ回路を構成し、前記ブリッジ回路の抵抗が回転する磁場に対して変化することを検出する回転角度検出装置とすることで、従来よりも検出精度の高いものが得られる。
本発明によれば、検出感度の異方性を抑え、磁気的等方性を有し且つ小型の磁気センサ及びそれを用いた回転角度検出装置を提供することができ、さらに、スピンバルブ型磁気抵抗効果素子を全体的に屈曲、屈折、若しくは折り返すように連なった形状としたので素子の電気抵抗が高くなり、消費電力を極力小さくできる。
本発明の磁気センサは、スピンバルブ型磁気抵抗効果素子をリング型素子やC字型素子を連ねたもの、もしくは素子全体を波形の曲線部を主体とした形状とする。リング型素子は真円に近づくものほど好ましい。C字型素子も開口部以外は真円に近い形状が好ましい。これらの素子が連なった形状とは、複数のリング型、C字型の磁気抵抗効果素子を直接連結した構造、複数のリング型素子を一括パターニングで一体に形成した構造、或いは配線を介して複数のリング型素子を電気的に接続した構造を含む。素子の幅を制御することによって、所望の電気抵抗(磁場を印加していないときに比較する電気抵抗)を得ることができる。
C字型素子を用いる場合は、C字型素子の開口部が隣接するC字型素子の開口部とは異なる方向に開口していることが好ましい。開口部をそれぞれ別の方向にすることで形状に起因する磁気抵抗効果素子の磁気異方性を低減し、検出信号の波形ひずみを低減できる。
また、偶数個のC字型素子で1つの磁気抵抗効果素子が形成されることが好ましい。奇数個のものよりも磁気異方性を低減し、検出信号の波形ひずみを低減できる。
前記C字型素子は中心角が180°超の円弧形状が好ましく、225°超の円弧形状がなお好ましい。真円形状に近いほど外部磁場に対して磁気エネルギーが均一になり、磁気異方性が小さくなる。C字型素子は中心角度で60度超〜180°未満の開口部を有する。C字型素子の1端から他端に流す電流の流路の幅(電気抵抗の幅)は一定にすることが好ましい。
C字型素子の開口部は電流を流す配線又は端子とは重ならない位置とすることが好ましい。C字型素子同士が連なった接点から周方向で約90°ずれた位置で切り欠きを設けるのがよい。さらに、前記C字型素子を複数個連ねて磁気センサ用の素子を構成することもできる。
スピンバルブ型磁気抵抗効果素子は複数のC字型素子がその開口部の一端同士で結合して連続的に連なる形状を有するものでもよい。詳細は後述する。対の向かい合ったC字型素子は幾何学的に開口部の角度が60度超となる。磁気抵抗効果素子は点対称になるように形成することが好ましい。また、全ての磁気抵抗素子が点対称になるように形成することが好ましい。
強磁性膜は単層膜或いは少なくとも1層の強磁性層を含む多層膜のいずれでもよい。一方の強磁性膜は製膜時に磁化方向を固定した固定層として用い、他方の強磁性膜は回転磁場の向きに沿って磁化方向が自由に回転する自由層として用いる。リング型素子、C字型素子が連なった形状とは、複数のC字型の磁気抵抗効果素子を直接連結した構造、複数のC字型の磁気抵抗効果素子を一括パターニングで一体に形成した構造、或いは配線を介して複数のC字型素子を電気的に接続した構造を含む。
以下、本発明についてさらに具体的な実施形態を用いて説明する。
図1は本発明の別の実施形態に係る磁気センサ9の平面図であり、第1のブリッジ回路と第2のブリッジ回路を基板4上に形成したものである。第1のブリッジ回路は、連結したC字型素子1A,1B,1C及び1Dでホイートストーンブリッジを構成すると共に、端子3d及び3gをVccとし、端子3a及び3jをGndとし、端子3eと3fとの間で出力電圧Vo1を得る。第2のブリッジ回路は、連結したC字型素子1E,1F,1G及び1Hでホイートストーンブリッジを構成すると共に、端子3d及び3gをVccとし、端子3b及び3iをGndとし、端子3c及び3hとの間で出力電圧Vo2を得る。各々のC字型素子を構成するスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の固定層磁化方向は太い矢印で示した。第1のブリッジ回路に対して第2のブリッジ回路は固定層磁化方向を90°回転させたので、正弦波的に変化する回転磁場を基板に平行な向きに印加すると、出力電圧Vo1とVo2はコサイン波とサイン波の関係になり、逆正接(tan−1θ)演算を行うと、回転角度θを求めることができる。
図1の磁気抵抗効果素子は、4個のC字型素子が2列に連なり、かつその一端側でさらに2つのC字型素子と一部直線部分で形成される継部が連結したものである。継部の両端部2箇所で90°づつ屈折し、全体として180°折り返した形状である。列の連結したC字型素子は直線上に並べられ、互いの端を重ねて形成されている。C字型素子の線幅は全て同じで一律とし、対応する形状にパターニングして得た。
図2は本発明の実施形態に係る他の磁気抵抗効果素子の平面図である。図2(a)は、図1の磁気センサで使用した磁気抵抗効果素子がC字型素子ではなくリング型素子としたもので、各素子の数、寸法などは同じである。5個のリング字型素子を2列に並べ、かつかつその一端側のリング型素子の間にもう1つのリング型素子を入れて継部として連結したものである。
図2(b)は、図1の磁気センサで使用した磁気抵抗効果素子とほぼ同形のもので、開口部が180°づつ変わるように5個のC字型素子を2列に並べ、かつその一端側のC字型素子の間にもう1つのC字型素子を入れて継部として連結したものである。図1で記載した磁気抵抗効果素子よりも直線部分が少ないので磁気異方性を低減できる。C字型素子は、真円の一部を開口させた形状である。一列にC字型素子を並べた磁気抵抗効果素子よりも電気抵抗が大きくなるので消費電力を小さくすることができる。
図2(c)は、開口部の中心角度が120°の円弧形状のC字型素子を、端部同士を段違いにかつ直線部を介して接続し、継部の両端部2箇所で90°づつ屈曲させ、かつ全体的に180°折り返して接続した磁気抵抗効果素子である。
図2(d)は、開口部の中心角度が120°のC字型素子を、端部同士を段違いに接続し、継部の両端部2箇所で90°づつ屈曲させ、かつ全体的に180°折り返して接続した磁気抵抗効果素子であり、かつC字型素子として開口部以外の形状を正6角形としたものである。直線のみを組み合わせてC字型素子を形成することで、製造プロセス中での素子幅が管理しやすく、素子幅によって変化する電気抵抗を制御しやすい。この図ではC字型素子は、正6角形の一部を開口させた形状であるが、開口部以外のC字型素子形状は特に正6角形である必要は無い。但し、磁気異方性を極力小さくすることを考えれば開口部以外のC字型素子形状は正多角形であることが好ましいし、さらに磁気異方性を小さくするには少なくとも正5角形以上、好ましくは正6角形以上の多角形とすることが好ましい。
図2(e)は、磁気抵抗効果素子を波形のパターンで形成したものであり、かつ全体的に180°折り返したものである。
図3は別の実施形態に係る磁気センサ9の平面図であり、1つの磁気抵抗効果素子は、6個のC字型素子が全体として曲線状配置され、全体的に屈曲した形状に連結して形成されている。磁気抵抗効果素子61A〜61Dと、磁気抵抗効果素子61E〜61Hが連結して回路が形成される。ただし、素子配置による異方性を発生させないようにするため、リング型素子からなる磁気回路は回転対象に配置されることが必要である。
図4は、図1の磁気センサにおけるブリッジ回路を説明する回路図である。第1のブリッジ回路と第2のブリッジ回路を基板44上に形成したものである。第1のブリッジ回路は、連結したC字型素子41a及び41b,41c及び41d,41e及び41f,41g及び41hでホイートストーンブリッジを構成すると共に、端子43eをVccとし、端子43fをGndとし、端子43aと端子43jとの間で出力電圧Vo1と得る。第2のブリッジ回路は、連結したC字型素子41i及び41j,41k及び41l,41m及び41n,41o及び41pでホイートストーンブリッジを構成すると共に、端子43cをVccとし、端子43hをGndとし、端子43b及び43gと端子43d及び43iとの間で出力電圧Vo2と得る。各々のC字型素子を構成するスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の固定層磁化方向は太い矢印で示した。第1のブリッジ回路に対して第2のブリッジ回路は固定層磁化方向を90°回転させたので、正弦波的に変化する回転磁場を基板に平行な向きに印加すると、出力電圧Vo1とVo2はコサイン波とサイン波の関係になり、逆正接(tan−1θ)演算を行うと、回転角度θを求めることができる。なお、他の実施形態として、図7中の上側のブリッジ回路にて、2辺における連結したC字型素子を通常の電気抵抗に置き換えたハーフブリッジとする場合、図7中の下側のブリッジ回路でも、2辺における連結したC字型素子を通常の電気抵抗に置き換えたハーフブリッジとした。
図5(a)は図1の磁気センサを用いたセンサデバイスの平面図であり、図5(b)は前記センサデバイスを用いた回転角度検出装置の概略図である。センサデバイス59は、磁気センサ49をリードフレーム上に設け、磁気センサ49の端子と電極ピン52とをボンディングワイヤ53で電気的に接続し、モールド樹脂51で被覆して構成した。このセンサデバイス59は、径方向NS2極に着磁した円盤状永久磁石56に対向するように配置した。前記円盤状永久磁石56は磁石支持部55を介して回転軸54に接続されており、回転軸が回転すると、センサデバイス59に印加される磁力線57のうちxy平面に平行な成分も回転軸と同じように回転する。この回転磁界をセンサデバイス59で検知した。
本発明の実施形態に係る磁気センサの平面図である。 本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子の平面図である。 本発明の実施形態に係る他の磁気センサの平面図である。 図1の磁気センサにおけるブリッジ回路を説明する回路図である。 (a)図6の磁気センサを用いたセンサデバイスの平面図、及び(b)前記センサデバイスを用いた回転角度検出装置の概略図である。 従来の磁気センサの平面図である。 従来の他の磁気センサの平面図である。 従来の他の磁気センサの平面図である。
符号の説明
3a,3b,3c,3d,3e:端子、
3f,3g,3h,3i,3j:端子、
4:基板、9,49:磁気センサ、
41a,41b:連結したC字型素子、41c,41d:連結したC字型素子、
41e,41f:連結したC字型素子、41g,41h:連結したC字型素子、
41i,41j:連結したC字型素子、41k,41l:連結したC字型素子、
41m,41n:連結したC字型素子、41o,41p:連結したC字型素子、
51:モールド樹脂、52:電極ピン、53:ボンディングワイヤ、54:回転軸、
55:磁石支持部、56:円盤状永久磁石、57:磁力線、59:センサデバイス、
61A,61B,61C,61D:連結したC字型素子、
61E,61F,61G,61H:連結したC字型素子、
63a,63b,63c,63d,63e:端子、
63f,63g,63h,63i,63j:端子、69:基板、
103:磁界センサ、108:基板、130:磁気抵抗効果膜、
130a,130b:螺旋状の形状パターンの両端部、
131:磁気抵抗効果膜のパターン形状、137:絶縁膜、
191,195,191a,195a:導電体電極膜、
104:磁界センサ、140:磁気抵抗効果膜、
141:磁気抵抗効果膜のパターン形状、141a:略半円状、
201:磁気抵抗効果素子、201A:素子本体部、201B:補助素子部、
202:メタルバー、203:回転ヨーク、
213,221,222,223,224,225:端子、

Claims (3)

  1. 非磁性の中間層を介して2つの強磁性膜が積層されたスピンバルブ型磁気抵抗効果素子を用いた磁気センサであって、前記スピンバルブ型磁気抵抗効果素子は複数のリング型素子が連なるとともに、前記複数のリング型素子が全体的に屈折するように連なり、前記複数のリング型素子が電気的に接続されている状態で通電され、外部磁場に対して前記スピンバルブ型磁気抵抗効果素子の電気抵抗が変化することを特徴とする磁気センサ。
  2. 前記複数のリング型素子が連なって折り返すように連なっていることを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子が少なくとも2つ含まれるブリッジ回路を構成し、前記ブリッジ回路の抵抗が回転する磁場に対して変化することを検出する回転角度検出装置。
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