JP5356065B2 - ハニカム構造体 - Google Patents

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本発明は、排ガスを処理するハニカム構造体に関する。
自動車排ガスの浄化に関しては、多くの技術が開発されているが、交通量の増大もあって、まだ十分な排ガス対策がとられているとは言い難い。日本国内においても、世界的にも自動車排ガス規制は、さらに強化されていく方向にある。その中でも、ディーゼル排ガス中のNOx規制については、非常に厳しくなってきている。従来は、エンジンの燃焼システムの制御によってNOx低減を図ってきたが、それだけでは対応しきれなくなってきた。このような課題に対応するディーゼルNOx浄化システムとして、アンモニアを還元剤として用いるNOx還元システム(SCRシステムと呼ばれている。)が提案されている。このようなシステムに用いられる触媒担体として、ハニカム構造体が知られている。
このハニカム構造体は、例えば、長手方向に沿って、該ハニカム構造体の一方の端面から他方の端面まで延伸する複数のセル(貫通孔)を有し、これらのセルは、触媒が担持されたセル壁により、相互に区画されている。従って、このようなハニカム構造体に排ガスを流通させた場合、セル壁に担持された触媒によって、排ガスに含まれるNOxが浄化されるため、排ガスを処理することができる。
一般に、このようなハニカム構造体のセル壁は、コージェライトで構成され、このセル壁には、触媒として、例えばゼオライト(鉄または銅等でイオン交換されたもの)が担持される。この他、セル壁にゼオライトを使用し、ハニカム構造体を形成することが提案されている(例えば特許文献1)。
特開昭61−171539号公報
ハニカム構造体を触媒担体として使用する場合、その適用対象は、例えば、トラックのような大型車両用から普通乗用車用まで、広く変化する。従って、ハニカム構造体には、様々な形状(特に、全長および直径)のものが存在する。
一方、セルの寸法仕様(特にセル幅、セルの全長)は、そのハニカム構造体のNOx浄化性能に大きな影響を及ぼす。そこで本来であれば、各形状を有するハニカム構造体のそれぞれに対して、セルの寸法仕様(特にセル幅、セルの全長)を最適な値に定める必要がある。しかしながら、例えば需要の少ない特殊な形状のハニカム構造体についてまで、セルの寸法仕様の最適値を求め、これに基づいてハニカム構造体を作製することは、非効率的であり、コスト上昇につながる。従って、実際には、ハニカム構造体のセルの寸法仕様は、経験的に定められる場合も多く、全ての形状のハニカム構造体について、セルの寸法仕様が最適化されているとは限られない。また、このようなセルの寸法仕様が最適化されていないハニカム構造体では、触媒担体として使用した際に、しばしば、十分なNOx浄化性能が得られない場合があった。
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、様々な全長および直径を有するハニカム構造体において、適正なNOx浄化性能が得られるハニカム構造体を提供することを目的とする。
本発明では、ゼオライトおよび無機バインダを含み、長手方向に沿って、第1の端面から第2の端面に延伸する複数のセルがセル壁により区画されたハニカムユニットにより構成されるハニカム構造体であって、
前記セルの長手方向に垂直な断面は、実質的に正方形状であり、
前記ハニカムユニットの開口率は、50〜65%であり、
前記ハニカム構造体の体積をV(リットル)とし、前記セルのセル幅をwc(cm)とし、前記セルの長手方向の長さをLc(cm)としたとき、

12.5V+50<Lc/wc<12.5V+200

が成立することを特徴とする。
本発明において、前記ハニカムユニットに含まれるゼオライトは、β型ゼオライト、Y型ゼオライト、フェリエライト、ZSM−5型ゼオライト、モルデナイト、フォージサイト、ゼオライトA、またはゼオライトLであっても良い。
また、前記ハニカムユニットに含まれるゼオライトは、シリカに対するアルミナの重量比が30〜50の範囲であっても良い。
また、前記ハニカムユニットに含まれるゼオライトは、Fe、Cu、Ni、Co、Zn、Mn、Ti、AgまたはVでイオン交換されていても良い。
また、前記ハニカムユニットは、さらに、ゼオライト以外の無機粒子を含んでいても良い。
また前記ゼオライト以外の無機粒子は、アルミナ、チタニア、シリカおよびジルコニアから選定された少なくとも一つであっても良い。
また、前記ハニカムユニットに含まれる無機バインダは、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、およびアタパルジャイトの群から選定された少なくとも一つを含んでも良い。
また、前記ハニカムユニットは、さらに無機繊維を含んでも良い。
前記ハニカムユニットに含まれるそのような無機繊維は、アルミナ、シリカ、炭化珪素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウムおよびホウ酸アルミニウムの群から選定された少なくとも一つであっても良い。
また、本発明によるハニカム構造体は、複数の前記ハニカムユニットを接着層を介して接合することにより構成されても良い。
本発明では、様々な全長および直径を有するハニカム構造体において、適正なNOx浄化性能が得られるハニカム構造体を提供することが可能となる。
本発明のハニカム構造体の一例を模式的に示した斜視図である。 図1のハニカム構造体を構成するハニカムユニットの一例を模式的に示した斜視図である。 本発明のハニカム構造体の別の構成例を模式的に示した斜視図である。 ハニカム構造体のNOx浄化性能を評価するための装置構成を模式的に示したブロック図である。 ハニカム構造体の体積(V)とセル幅(wc)に対するセルの全長(Lc)の比(Lc/wc)の関係において、良好なNOx浄化性能が得られる範囲を示したグラフである。
以下、図面により本発明の特徴を説明する。
図1には、本発明によるハニカム構造体を模式的に示す。また、図2には、図1に示したハニカム構造体の基本単位である、ハニカムユニットの一例を模式的に示す。
図1に示すように、本発明のハニカム構造体100は、2つの端面110および115を有する。また、ハニカム構造体100の両端面を除く外周面には、外周コート層120が形成されている。
ハニカム構造体100は、例えば、図2に示す柱状のセラミック製ハニカムユニット130を、接着層150を介して複数個(図1の例では、縦横4列ずつ16個)接合させた後、外周側を所定の形状(図1の例では、円柱状)に沿って切削加工することにより構成される。
図2に示すように、ハニカムユニット130は、該ハニカムユニットの長手方向に沿って一端から他端まで延伸し、両端面で開口された複数のセル(貫通孔)121と、該セルを区画するセル壁123とを有する。セル121の長手方向(Z方向)に垂直な断面は、実質的に正方形状となっており、1辺の長さ(以下、「セル幅」と称する)は、wcである。またセル121の全長(ハニカムユニット130の全長でもある)は、Lcである。なお、ハニカムユニット130は、NOx浄化に寄与するゼオライトを含む。従って、本発明によるハニカム構造体を、NOx浄化用の触媒担体として使用する場合、セル壁に、必ずしも貴金属触媒を担持する必要はない。ただし、セル壁には、さらに貴金属触媒を担持しても良い。
このように構成されたハニカム構造体100は、例えば、尿素タンクを有する尿素SCRシステムの触媒担体として使用される。この尿素SCRシステムに、排ガスが流通されると、尿素タンクに収容されている尿素が排ガス中の水と反応して、アンモニアが生じる。

CO(NH+HO → 2NH+CO 式(1)

このアンモニアが、NOxを含む排ガスとともに、ハニカム構造体100の一方の端面(例えば端面110)から、各セルに流入した場合、セル壁に含まれているゼオライトの触媒作用により、この混合ガスの間で、以下の反応が生じる。

4NH+4NO+O → 4N+6HO 式(2−1)
8NH+6NO → 7N+12HO 式(2−2)
2NH+NO+NO → 2N+3HO 式(2−3)

その後、浄化された排ガスは、ハニカム構造体100の他方の端面(例えば端面115)から排出される。このように、ハニカム構造体100内に排ガスを流通させることにより、排ガス中のNOxを処理することができる。また、ここでは、尿素水を加水分解して、NHを供給する方法を示したが、その他の方法でNHを供給しても良い。
ところで、ハニカム構造体をNOx浄化用の触媒担体として使用する場合、その適用対象は、例えば、トラックのような大型車両用から普通乗用車用まで、広く考えられる。従って、ハニカム構造体には、様々な形状(特に、全長Lおよび直径D(図1および図3参照))のものが存在する。
一方、セルの寸法仕様(特にセル幅wc、セルの全長Lc(図2参照))は、そのハニカム構造体のNOx浄化性能に大きな影響を及ぼす。そこで本来であれば、各形状を有するハニカム構造体のそれぞれに対して、セルの寸法仕様(特にセル幅、セルの全長)を最適な値に定める必要がある。しかしながら、例えば需要の少ない特殊な形状のハニカム構造体についてまで、セルの寸法仕様の最適値を求め、これに基づいてハニカム構造体を製作することは、非効率的であり、コスト上昇につながる。従って、実際には、ハニカム構造体のセルの寸法仕様は、経験的に定められる場合も多く、全ての形状のハニカム構造体について、セルの寸法仕様が最適化されているとは限られない。また、このようなセルの寸法仕様が最適化されていないハニカム構造体では、触媒担体として使用した際に、しばしば、十分なNOx浄化性能が得られないという問題が生じ得る。
本願発明者らは、このような問題に対して研究を重ねた結果、
(1)通常の場合、ハニカム構造体の形状、特に外径Dおよびその全長Lは、ハニカム構造体の体積Vを用いることにより、一つのパラメータとして定義されること、
(2)正方形状断面を有するセルの寸法仕様は、セル幅wcに対するセルの全長Lcの比、すなわち値Lc/wcをパラメータとして定義できること、ならびに
(3)値Lc/wcを、ハニカム構造体の体積Vに対して、ある範囲内に設定することにより、良好なNOx浄化性能を示すハニカム構造体を得ることができること、
を見出し、本願発明に至った。
すなわち、本発明では、ハニカム構造体100の体積をV(リットル)とし、各セル121のセル幅をwc(cm)とし、セルの全長をLc(cm)としたとき、

12.5V+50<Lc/wc<12.5V+200 式(3)

の関係が満たされるようにして、セルの寸法仕様を定めることを特徴とする。これにより、ハニカム構造体の体積が変化しても、最適なNOx浄化性能を得ることができ、すなわち様々な全長および直径を有するハニカム構造体において、常に最適なNOx浄化性能を得ることが可能となる。
ここで、ハニカム構造体の体積Vの範囲は、特に限られないが、体積Vは、1L(リットル)≦V≦15L(リットル)の範囲であることが好ましい。またセル幅wcは、0.5cm≦wc≦2.0cmの範囲であることが好ましい。セル幅wcが0.5cm未満では、ハニカム構造体の圧力損失が大きくなり、セル幅wcが2.0cmを超えると、幾何学的表面積が小さいため、NOxとゼオライト中のアンモニアが十分に接触できないため、NOx浄化性能が低下する。また、ハニカムユニット130の開口率は、50〜65%であることが好ましい。
次に、本発明によるハニカム構造体の構成について、より詳しく説明する。
ハニカム構造体100を構成するハニカムユニット130は、ゼオライトに加えて無機バインダを含む。さらに、ハニカムユニット130は、ゼオライト以外の無機粒子、および/または無機繊維を含んでも良い。
ゼオライトは、例えば、β型ゼオライト、Y型ゼオライト、フェリエライト、ZSM−5型ゼオライト、モルデナイト、フォージサイト、ゼオライトA、またはゼオライトLが好ましい。あるいは、ゼオライトは、Fe、Cu、Ni、Co、Zn、Mn、Ti、AgまたはVでイオン交換されたものであっても良い。
また、ゼオライトは、シリカに対するアルミナの重量比が30〜50の範囲であることが好ましい。
無機バインダとしては、無機ゾルや粘土系バインダ等を用いることができ、上記無機ゾルの具体例としては、例えば、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス等が挙げられる。また、粘土系バインダとしては、例えば、白土、カオリン、モンモリロナイト、セピオライト、アタパルジャイト等の複鎖構造型粘土等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
これらの中では、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライトおよびアタパルジャイトからなる群から選択された少なくとも1種が望ましい。
ゼオライト以外の無機粒子としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、ムライト、ゼオライト等からなる粒子が望ましい。これらの粒子は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。また、これらの中では、アルミナ、ジルコニアが特に望ましい。
また、ハニカムユニットに無機繊維を加える場合、無機繊維の材料としては、アルミナ、シリカ、炭化珪素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウムまたはホウ酸アルミニウム等が望ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記材料の中では、アルミナが望ましい。なおウィスカも無機繊維に含まれるものとする。
ハニカムユニットに含まれる無機粒子(ゼオライトおよびゼオライト以外の無機粒子)の量について、望ましい下限は30重量%であり、より望ましい下限は40重量%であり、さらに望ましい下限は50重量%である。一方、望ましい上限は90重量%であり、より望ましい上限は80重量%であり、さらに望ましい上限は75重量%である。無機粒子(ゼオライトおよびゼオライト以外の無機粒子)の含有量が30重量%未満では、排ガスの浄化に寄与するゼオライトの量が相対的に少なくなる。一方、90重量%を超えると、ハニカムユニットの強度が低下する可能性がある。
また、ゼオライトは、シリカに対するアルミナの比が30〜50の範囲であることが好ましい。
無機バインダは、固形分として、5重量%以上含まれることが好ましく、10重量%以上含まれることがより好ましく、15重量%以上含まれることがさらに好ましい。一方、無機バインダの含有量は、固形分として、50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましく、35重量%以下であることがさらに好ましい。無機バインダの量が固形分として、5重量%未満では、製造したハニカムユニットの強度が低くなることがある。一方、無機バインダの量が固形分として、50重量%を超えると、原料組成物の成型性が悪くなることがある。
ハニカムユニットに無機繊維が含まれる場合、無機繊維の合計量について、望ましい下限は3重量%であり、より望ましい下限は5重量%であり、特に望ましい下限は8重量%である。一方、望ましい上限は50重量%であり、より望ましい上限は40重量%であり、特に望ましい上限は30重量%である。無機繊維の含有量が3重量%未満ではハニカムユニットの強度向上の寄与が小さくなり、50重量%を超えると排ガスの浄化に寄与するゼオライトの量が相対的に少なくなる。
ハニカムユニット130のセル密度は、15.5〜186個/cm(100〜1200cpsi)の範囲であることが好ましく、46.5〜170個/cm(300〜1100cpsi)の範囲であることがより好ましく、62.0〜155個/cm(400〜1000cpsi)の範囲であることがさらに好ましい。
ハニカムユニット130のセル壁123の厚さは、特に限定されないが、強度の点から望ましい下限は、0.1mmであり、浄化性能の観点から望ましい上限は、0.4mmである。
ハニカム構造体100の接着層150は、接着層用ペーストを原料として形成される。接着層用ペーストとしては、特に限定されるものではないが、例えば、無機粒子と無機バインダを混ぜたものや、無機バインダと無機繊維を混ぜたものや、無機粒子と無機バインダと無機繊維を混ぜたものなどを用いることができる。また、これらにさらに有機バインダを加えても良い。
無機粒子、無機バインダおよび無機繊維としては、前述のようなハニカムユニットを構成する材料と同様のものを使用することができる。また、有機バインダとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなどから選ばれる1種以上が挙げられる。有機バインダの中では、カルボキシルメチルセルロースが望ましい。
接着層の厚さは、0.3〜2.0mmの範囲であることが好ましい。接着層の厚さが0.3mm未満では十分な接合強度が得られないおそれがあるためである。また接着層の厚さが2.0mmを超えると、圧力損失が大きくなることがある。なお、接合させるハニカムユニットの数は、ハニカム構造体の大きさに合わせて適宜選定される。
ハニカム構造体100の外周コート層120は、前述のような接着材層を構成する材料と同様の無機粒子、無機バインダおよび無機繊維を含み、さらに有機バインダを含むペーストを原料として形成される。外周コート層120は、接着層150と同じ材料であっても、異なる材料であっても良いが、同じ材料であることが好ましい。外周コート層の剥離やクラックが発生しにくくなるからである。原料となるペーストには、必要に応じて、酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加しても良い。外周コート層の最終的な厚さは、0.1mm〜2.0mmが好ましい。
以上の記載では、図1のような、接着層150を介して複数のハニカムユニット130を接合することにより構成されるハニカム構造体を例に説明した。
図3には、本発明のハニカム構造体の別の構成例を示す。なお、ハニカム構造体200は、複数のセル122がセル壁124を隔てて、長手方向に並設された単一のハニカムユニットから構成されていることを除き、ハニカム構造体100と同様の構造を有する。なお、図3の例では、ハニカム構造体200の外周面に、外周コート層120が設置されているが、この外周コート層は、設置しても、設置しなくても良い。
(ハニカム構造体の製作方法)
次に、本発明のハニカム構造体の製造方法を説明する。なお、ここでは、前述の図1のような、複数のハニカムユニットから構成されるハニカム構造体100の製造方法を例に説明する。
まず、ゼオライトを含む無機粒子、無機バインダを主成分とし、さらに必要に応じて無機繊維を添加した原料ペーストを用いて押出成形等を行い、ハニカムユニット成形体を作製する。
原料ペーストには、これらの他に有機バインダ、分散媒および成形助剤を成形性にあわせて適宜加えてもよい。有機バインダとしては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂およびエポキシ樹脂等から選ばれる1種以上の有機バインダが挙げられる。有機バインダの配合量は、無機粒子、無機バインダおよび無機繊維の合計100重量部に対して、1〜10重量部が好ましい。
分散媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(ベンゼンなど)およびアルコール(メタノールなど)などを挙げることができる。成形助剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸およびポリアルコール等を挙げることができる。
原料ペーストは、特に限定されるものではないが、混合・混練することが好ましく、例えば、ミキサーやアトライタなどを用いて混合してもよく、ニーダーなどで十分に混練してもよい。原料ペーストを成形する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、押出成形などによってセルを有する形状に成形することが好ましい。
次に、得られた成形体は、乾燥することが好ましい。乾燥に用いる乾燥機は、特に限定されるものではないが、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機および凍結乾燥機などが挙げられる。また、得られた成形体は、脱脂することが好ましい。脱脂する条件は、特に限定されず、成形体に含まれる有機物の種類や量によって適宜選択するが、おおよそ400℃、2時間が好ましい。更に、得られた成形体は、焼成することが好ましい。焼成条件としては、特に限定されるものではないが、600〜1200℃で2時間程度が好ましく、600〜1000℃で2時間程度がより好ましい。この理由は、焼成温度が600℃未満では、焼結が進行せずハニカムユニットとしての強度が低くなり、1200℃を超えると、焼結が過剰に進行し、ゼオライトの反応サイトが減少してしまうためである。
次に、以上の工程で得られたハニカムユニットの側面に、後に接着層となる接着層用ペーストを均一な厚さで塗布した後、この接着層用ペーストを介して、順次他のハニカムユニットを積層する。この工程を繰り返し、所望の寸法の(例えば、ハニカムユニットが縦横4個ずつ配列された)ハニカム構造体を作製する。
次にこのハニカム構造体を加熱して、接着層用ペーストを乾燥、固化させて、接着層を形成させるとともに、ハニカムユニット同士を固着させる。
次にダイヤモンドカッター等を用いて、ハニカム構造体を、例えば円柱状に切削加工し、必要な外周形状のハニカム構造体を作製する。
次に、ハニカム構造体の外周面(側面)に外周コート層用ペーストを塗布後、これを乾燥、固化させて、外周コート層を形成する。
複数のハニカムユニットを接着層によって接合させた後(ただし、外周コート層を設けた場合は、外周コート層を形成させた後)に、このハニカム構造体を脱脂することが好ましい。この処理により、接着層用のペーストおよび外周コート層用ペーストに有機バインダが含まれている場合、これらの有機バインダを脱脂除去することができる。脱脂条件は、含まれる有機物の種類や量によって適宜選定されるが、通常の場合、700℃、2時間程度である。
以上の工程により、図1に示すハニカム構造体を製作することができる。
以下、実施例により本発明を詳しく説明する。
(実施例1)
まず、Feゼオライト粒子(平均粒子径2μm)2250重量部、アルミナ粒子(平均粒子径2μm)550重量部、アルミナゾル(固形分30重量%)2600重量部、アルミナ繊維(平均繊維長100μm、平均繊維径6μm)780重量部、メチルセルロース410重量部に、可塑剤および潤滑剤(ユニルーブ)を混合、混練して混合組成物を作製した。Feゼオライト粒子は、ゼオライト重量に対して3wt%の分がFeでイオン交換されたものである。次に、この混合組成物を押出成形機により押出成形を行い、ハニカム構造体の成形体を得た。
次に、マイクロ波乾燥機および熱風乾燥機を用いてこれらの成形体を十分乾燥させ、400℃で2時間保持して脱脂した。その後、700℃で2時間保持して焼成を行い、ハニカム構造体(外径102mm×全長120mm、体積1L(リットル))を作製した(図3の形状のハニカム構造体)。ハニカム構造体の開口率は、60%であった。またハニカム構造体のセル幅wcは、0.69mmであり、セル壁の厚さは、0.2mmであり、セル密度は、124個/cmであった。
(実施例2〜13)
実施例1と同様の工程により、実施例2〜13に係るハニカム構造体を作製した。これらのハニカム構造体は、実施例1に係るハニカム構造体に比べて、全長L、外径D、体積V、セル幅wcを変化させている。ただし、その他のパラメータ値は、実施例1の場合と同様である。
表1には、実施例1〜13に係る各ハニカム構造体の全長L、外径D、体積V、セル幅wc、およびセル幅wcに対するセルの全長Lcの比(Lc/wc)の値をまとめて示した。なお、表1において、セルの全長Lcは、ハニカム構造体の全長Lと等しいため、省略している。また表1において、A1およびA2の欄には、それぞれ、各ハニカム構造体の体積Vを用いて、A1=(12.5V+50)、およびA2=(12.5V+200)の両式から求めた値が示されている。A1は、前述の式(3)の不等式の左辺の値に相当し、A2は、前述の式(3)の不等式の右辺の値に相当する。
Figure 0005356065
(比較例1〜11)
実施例1と同様の工程により、比較例1〜11に係るハニカム構造体を作製した。これらのハニカム構造体は、実施例1に係るハニカム構造体に比べて、全長L、外径D、体積V、セル幅wcを変化させている。ただし、その他のパラメータ値は、実施例1の場合と同様である。
表1には、比較例1〜11に係る各ハニカム構造体の各形状パラメータ、および前述のA1およびA2の値をまとめて示した。表1から、実施例1〜13に係るハニカム構造体では、Lc/wcの値は、A1〜A2の範囲に含まれていることがわかる。一方、比較例1〜11に係るハニカム構造体では、Lc/wcの値は、A1〜A2の範囲から外れている。
(NOx浄化性能評価)
前述の各ハニカム構造体を用いて、NOx浄化性能の評価を行った。
図4には、NOx浄化性能の評価試験装置のブロック図を示す。この装置400は、ディーゼルエンジン405と、ディーゼル酸化触媒システム(DOC)410と、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)415と、尿素SCRシステム420とが、この順に直列に接続されて構成されている。尿素SCRシステム420は、尿素タンク425と、触媒担体部430とで構成される。触媒担体部430には、前述の実施例および比較例に係るハニカム構造体のうちの一つが設置される。
この装置400において、エンジン405からの排ガスは、最初にDOC410に導入される。DOC410では、排ガス中の一酸化炭素および炭化水素系ガスが酸化される。次に、DOC410から排出されたガスは、DPF415に導入され、ここで排ガス中のパティキュレート(PM)が除去される。次に、DPF415から排出されたガスは、尿素SCRシステム420に導入される。尿素SCRシステム420では、尿素タンク425から排ガスに尿素が供給され、前述の式(1)の反応により、アンモニアが生成される。このアンモニアを含む排ガスは、その後、触媒担体部430に導入され、ここで前述の式(2−1)、(2−2)、(2−3)のように、NOxが処理される。その後、NOx処理された排ガスは、系外に排出される。
ここで、図4中のA点とB点、すなわち、尿素タンク425と触媒担体部430の間、および尿素SCRシステム420の出口側の2箇所において、排ガス中のNO濃度を測定することにより、触媒担体部430に設置されたハニカム構造体のNOx浄化性能を評価することができる。
試験は、エンジン405を始動させてから、B点でのNO濃度がほとんど変化しなくなるまで継続した。NO濃度の測定には、HORIBA製の装置(MEXA−7100D)を使用した。この装置のNOの検出限界は、0.1ppmである。エンジン405の回転数およびトルクは、触媒担体部430に設置されるハニカム構造体の体積に合わせて以下のように設定した:
(1)ハニカム構造体の体積Vが1.0L(リットル)の場合;エンジン回転数1000rpm、トルク100N・m、
(2)ハニカム構造体の体積Vが2.4L(リットル)の場合;エンジン回転数1500rpm、トルク150N・m、
(3)ハニカム構造体の体積Vが10.0L(リットル)の場合;エンジン回転数3500rpm、トルク270N・m、
(4)ハニカム構造体の体積Vが15.0L(リットル)の場合;エンジン回転数4500rpm、トルク300N・m。
なお、エンジンの容積は、全て1.6L(リットル)である。
得られた測定結果から、NOx浄化率Nを算出した。ここでNOx浄化率Nは、

N(%)={(A点におけるガス中のNO濃度−B点におけるガス中のNO濃度)/
(A点におけるガス中のNO濃度)}×100 式(4)

により算出した。
結果を、表1の右欄に示す。また、図5には、各実施例および比較例に係るハニカム構造体における、ハニカム構造体の体積Vと、セル幅wcに対するセルの全長Lcの比(Lc/wc)との関係を示す。図5のグラフにおいて、直線L1は、前述のA1、すなわち、A1=(12.5V+50)の関係を示している。また、直線L2は、前述のA2、すなわち、A2=(12.5V+200)の関係を示している。従って、直線L1とL2の間の範囲は、前述の式(3)の関係を満たす領域に相当する。図5のグラフにおいて、実施例を○で、また比較例を●で示した。
表1の結果から、実施例1〜13に係るハニカム構造体は、比較例1〜11に係るハニカム構造体に比べて、高いNOx浄化性能を有することがわかった。また図5のグラフの結果から、ハニカム構造体の体積Vと値Lc/wcの関係が、直線L1とL2の間の範囲にあるときに、ハニカム構造体が良好なNOx浄化性能を示すことがわかった。
100 ハニカム構造体
110 第1の端面
115 第2の端面
120 外周コート層
121、122 セル
123、124 セル壁
130 ハニカムユニット
150 接着層
200 別のハニカム構造体
400 NOx浄化性能の評価試験装置
405 ディーゼルエンジン
410 ディーゼル酸化触媒システム
415 ディーゼルパティキュレートフィルタ
420 尿素SCRシステム
425 尿素タンク
430 触媒担体部

Claims (6)

  1. ゼオライト、該ゼオライト以外の無機粒子、無機繊維、および無機バインダを含み、長手方向に沿って、第1の端面から第2の端面に延伸する複数のセルがセル壁により区画されたハニカムユニットにより構成されるハニカム構造体であって、
    前記、ハニカムユニットは、ゼオライト、該ゼオライト以外の無機粒子、無機繊維、および無機バインダを含む原料ペーストを押出成形することにより製造され、
    前記ゼオライトは、Fe、Cu、Ni、Co、Zn、Mn、Ti、AgまたはVでイオン交換されており、
    前記ゼオライト以外の無機粒子は、アルミナ、チタニア、シリカおよびジルコニアから選定された少なくとも一つであり、
    前記セルの長手方向に垂直な断面は、実質的に正方形状であり、
    前記ハニカムユニットの開口率は、50〜65%であり、
    前記ハニカム構造体の体積をV(リットル)とし、前記セルのセル幅をwc(cm)とし、前記セルの長手方向の長さをLc(cm)としたとき、

    12.5V+50<Lc/wc<12.5V+200

    が成立することを特徴とするハニカム構造体。
  2. 前記ゼオライトは、β型ゼオライト、Y型ゼオライト、フェリエライト、ZSM−5型ゼオライト、モルデナイト、フォージサイト、ゼオライトA、またはゼオライトLであることを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体。
  3. 前記ゼオライトは、シリカに対するアルミナの重量比が30〜50wt%の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載のハニカム構造体。
  4. 前記無機バインダは、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、およびアタパルジャイトの群から選定された少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
  5. 前記無機繊維は、アルミナ、シリカ、炭化珪素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウムおよびホウ酸アルミニウムの群から選定された少なくとも一つであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
  6. 当該ハニカム構造体は、複数の前記ハニカムユニットを接着層を介して接合することにより構成されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
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