(実施の形態1)
<構成>
図1は、本実施の形態に係る乗客有無検知装置1の構成を示すブロック図である。図1の乗客有無検知装置1は、計測手段11、補正学習手段12、補正手段13、閾値学習手段14、有無検知手段15、運行管理手段16及び乗降検知手段17を備えている。これらの手段の内ハードウェアである計測手段11を除いて、各手段12〜17はマイクロコンピュータ上のソフトウェアによって構成されている。
計測手段11はエレベータに設置された重量センサで構成され、エレベータの積載重量(秤値)を計測する。運行管理手段16は、エレベータの運行を管理しエレベータの状態信号を保持する。補正学習手段12は計測手段11から秤値を取得し、エレベータの状態信号に基づき秤値の補正量や補正量を算出するための補正式を更新する。補正手段13は補正学習手段12からの補正量や補正式に基づいて秤値を補正し、補正後秤値として算出する。閾値学習手段14は補正手段13からの補正後秤値を基に有無検知手段15で用いる閾値を更新して自動設定する。有無検知手段15は、補正手段13からの補正後秤値と閾値学習手段14からの閾値を比較し、乗客有無を検知する。乗降検知手段17は、計測手段11の計測結果を基に乗客の乗車/降車動作を検知する。
すなわち、実施の形態1の乗客有無検知装置1は、停止時のエレベータの積載重量を秤値として計測する計測手段11と、エレベータの運行を管理し、その状態信号を出力する運行管理手段16と、秤値とエレベータの状態信号に基づき、秤値の補正量や補正量を算出する補正式を更新する補正学習手段12と、補正学習手段で更新された補正量と補正式に基づき、秤値を補正後秤値として補正する補正手段13と、エレベータ内が空であると推定される際の秤値とエレベータの状態信号に基づき閾値を設定/更新する閾値学習手段14と、補正後秤値と閾値を比較して、エレベータ内の乗客の有無を判定する有無検知手段15と、を備える。閾値学習手段14が閾値を適宜更新することによって、正確な乗客の有無検知を行う事が出来る。
<動作>
次に、図1の乗客有無検知装置1の動作について図面を踏まえて説明する。図2は、本実施の形態に係る図1の乗客有無検知装置1の動作を示すフローチャートである。
まず、計測手段11はエレベータの積載重量を計測する(ステップST101)。次に、補正手段13は補正学習手段12から現在の補正量や補正式を取得し、計測手段11が計測した積載重量の秤値を補正して補正後秤値を作成する(ステップST102)。補正量や補正式の作成方法は後述する。
そして、補正学習手段12は補正量や補正式を更新する条件を満たしているか否かを判断する(ステップST103)。例えば補正量を決めるためには、計測手段11から取得した秤値が真値(誤差のない本来の積載重量値)からどのくらいの量の誤差を含んでいるかを求めなければならない。しかし、エレベータ内に乗客がいる場合、乗客の重量の真値は不明であるため補正量を求めることはできない。そこで、エレベータ内が空であると推定される状況であることが、補正量や補正式を更新する条件の1つになる。一般的に、エレベータが乗場呼び、かご呼び、割当を持たずに停止中である場合に空である可能性が高い。そこで補正学習手段12は、エレベータの状態を管理し運転を制御している運行管理手段16からエレベータの状態信号を得る。ここで状態信号とは、例えばエレベータが走行中/停止中であることを示す信号や、ドアが完全戸開中/完全戸閉中であることを示す信号、乗場呼び/かご呼び/割当を示す信号などである。そして、例えばエレベータが停止中でドアが完全戸閉中であり、かつエレベータが乗場呼びやかご呼びや割当を持たない状態であれば空であると推定し、補正量や補正式を更新する条件の1つが満たされていると判断する。この条件を第1補正学習条件とする。
第1補正学習条件を満たすエレベータは空である可能性が高いが、乗客がかご呼びボタンを押し忘れている場合も考えられるため絶対に空であるとは言い切れない。そこで、第1補正学習条件がX秒以上継続して満たされることを第2補正学習条件とする。ここでXは予め補正学習手段12に保持されているものとする。
さらに、第2補正学習条件と同様の趣旨により、補正手段13から取得した補正後秤値が明らかに大きな値ではないことを、補正量や補正式を更新するもう1つの条件としても良い。あるいは、計測手段11から取得した秤値が明らかに大きな値ではないことを、補正量や補正式を更新するもう1つの条件としても良い。すなわち、|補正後秤値|≦TH1もしくは|秤値|≦TH2であること、または|補正後秤値|≦TH1かつ|秤値|≦TH2であることが第3補正学習条件である。なお、TH1、TH2は予め補正学習手段12に保持されているものとする。
現在の階床でエレベータが空である状況が発生するパターンは2通り存在する。1つは、現在階で乗客が降車することによりエレベータが空になったという第1のパターン、もう1つは、空の状態で別の階に待機していたエレベータが呼ばれて現在階に移動してきたという第2のパターンである。どちらのパターンにも第1及び第2補正学習条件を適用できる。
計測手段11は、エレベータを吊るすロープの張力から積載重量を計測することがある。この場合、エレベータの停止中にロープの張力に変化があると秤値の出力特性に影響を与えることがある。つまり、第1のパターンと第2のパターンでは、どちらも第1及び第2補正学習条件を満たすものの、計測された秤値が異なり補正量や補正式が異なることがある。そこで、前の停止階で第1あるいは第2補正学習条件が満たして空と推定されたエレベータが、その状態から現在階に呼ばれて停止中になったことを第4補正学習条件とする。言い換えれば、第2のパターンでエレベータが空になったと推定されることを第4補正学習条件とする。
とはいえ、第4補正学習条件が満たされたとしても、到着後にドアが開いてしまうと乗客が乗車し空でなくなる可能性がある。そこで、ドアが現在階で戸開前であるか、ドアが乗車可能なほど開ききっていないことを第5補正学習条件とする。ドアの状態信号は運行管理手段16から取得する。
また、第4補正学習条件が満たされたとしても前の停止階での降車重量が大きければ、エレベータを吊るすロープの張力の変化が大きく、秤値の出力特性に影響を与えることがある。そこで、前の停止階での降車重量が一定値以下であることを補正量や補正式を更新するもう1つの条件としても良い。すなわち、|前の停止階での降車重量|≦TH3であることを第6補正学習条件とする。なお、TH3は予め補正学習手段12に保持されているものとする。
以上、補正学習手段12がステップST103において補正量や補正式を更新する条件として第1〜第6補正学習条件を説明したが、補正量や補正式を更新する条件を、第1〜第6補正学習条件の全てを満たす場合としてもよいし、その一部の条件を満たす場合としてもよいし、上記の第1から第6の条件の排他的論理和を形成して、その条件を満たす場合としてもよい。いずれにせよ、補正学習手段12は補正量や補正式を更新する条件が満たされていると判断した場合、補正量や補正式を更新する(ステップST104)。
補正量や補正式は、例えば特開2008−239275に記載の方法で求める。例えば、エレベータが空であると推定される状況の秤値をかご負荷補正値(補正量)としてエレベータの運行状況別に格納しておき、現在階に停止したときの秤値からかご負荷補正値を減算したものを補正後秤値とすることが出来る。
ステップST105において補正手段13は、補正学習手段12で更新された補正量や補正式を利用して計測手段11から得た秤値を補正し、補正後秤値を更新する。
ステップST106において閾値学習手段14は、閾値THAを更新する条件が満たされているか否かを判断する。閾値THAは、有無検知手段15において乗客有無を判定するために補正後秤値と比較する値である。閾値THAを大き過ぎる値に設定すると、軽量の乗客が乗車しているにも係わらず“無”(乗客無し)と判定してしまう。そのため、エレベータ内が空のときの補正後秤値と閾値を比較して“無”と判定できる、最小の値が適切な閾値であるといえる。それで、閾値THAは“エレベータ内が空であると推定される状況の補正後秤値”から決まることになる。“エレベータ内が空であると推定される状況の「補正後秤値」”は“エレベータ内が空であると推定される状況の「秤値」”から決まるので、閾値THAは“エレベータ内が空であると推定される状況の「秤値」”から決まる、と言い換えても良い。ここで、閾値の更新に用いる“エレベータ内が空であると推定される状況の「補正後秤値」”を“空補正後秤値”とする。そこで、エレベータ内が空であると推定される状況であることが閾値を更新する条件の1つになる。この条件は上述した第1〜第6補正学習条件と同様であるため、第1〜第6補正学習条件をそれぞれ第1〜第6閾値学習条件とする。
ステップST106において閾値学習手段14は、閾値を更新する条件を上記の第1〜第6閾値学習条件の全てを満たすこととしてもよいし、その一部の条件を満たすこととしてもよいし、第1〜第6閾値学習条件の排他的論理和を形成してその条件を満たすこととしてもよい。
閾値を更新する条件が満たされていると判断すると、閾値学習手段14は閾値を更新する(ステップST107)。例えば、後述する有無検知手段15で補正後秤値≦THAならば“無”と判定するのであれば、閾値THAは空補正後秤値にする。あるいは、有無検知手段15で補正後秤値<THAならば“無”と判定するのであれば、閾値THAは(空補正後秤値+α)とする。例えば秤値の最小計測単位が2kgであれば、αの最小値は2kgになる。このようにして閾値を更新する方法を第1更新方法とする。なお、“閾値THAを空補正後秤値にする”あるいは、“閾値THAは(空補正後秤値+α)にし、秤値の最小計測単位が2kgであればαの最小値は2kgになる”と述べたが、これは閾値THAを最小の値に設定する場合の一例に過ぎず、ある程度余裕を持った値に閾値THAが設定されるように上記例よりも少し大きめの値に閾値THAを設定しても良い。
ステップST108において、有無検知手段15は補正手段13から補正後秤値を取得し、閾値学習手段14から閾値THAを取得する。そして、補正後秤値<THAならば“無”と判定し、それ以外は“有”と判定する。あるいは、補正後秤値≦THAならば“無”と判定し、それ以外は“有”と判定する。等号を含むか含まないかはステップST107での閾値の更新方法に依存する。
なお、空補正後秤値がエレベータの位置(高さ(m)でも階床でも良い)や停止時の方向や時間によって変化する場合、ステップST107において閾値学習手段14は次のような方法で閾値を更新しても良い。例えば、閾値学習手段14は閾値学習条件が満たされたときの空補正後秤値を取得する。取得した空補正後秤値が今までに閾値の更新に用いてきた空補正後秤値よりも大きな値であった場合、取得した空補正後秤値を用いて第1更新方法で閾値を更新する。つまり、これまで取得してきた空補正後秤値の中で最も大きな空補正後秤値を利用して閾値が更新されることになる。このようにして閾値を更新する方法を第2更新方法とする。
すなわち、閾値学習手段14は、エレベータ内が空であると推定される際の補正後秤値である空補正後秤値を継続して取得し、その最大値に基づいて閾値を更新することを特徴とする。これにより、より正確に有無判定を行うことができるようになる。
第2更新方法を用いる場合、閾値THAはより大きな値へと更新され続けることになるため、必要に応じて閾値THAが下がるように更新する必要がある。そこで、ステップST107において閾値学習手段14は、次のような方法で閾値を更新しても良い。例えば、閾値学習手段14は閾値学習条件が満たされたとき、空補正後秤値と“エレベータの位置”と“停止時の方向”を新たに取得する。新たに取得した空補正後秤値が今までに閾値の更新に用いた空補正後秤値よりも大きな値の場合は、第2更新方法により閾値THAを更新すると同時に、そのときの“エレベータの位置”と“停止時の方向”を保持しておく。そして、新たに取得した空補正後秤値の“エレベータの位置”と“停止時の方向”が、元の閾値の更新に用いた空補正後秤値の“エレベータの位置”と“停止時の方向”と同じ場合、たとえ新たに取得した空補正後秤値が元の空補正後秤値より小さくても、新たに取得した空補正後秤値を用いて第1更新方法で閾値THAを更新する。このようにして閾値を更新する方法を第3更新方法とする。
すなわち、閾値学習手段14は、空補正後秤値の最大値を取得した際と同一のエレベータの位置においてエレベータ内が空であると推定された場合に、そのときの空補正後秤値に基づいて閾値を更新することを特徴とする。よって、これまで取得してきた空補正後秤値の中で最も大きな値であった空補正後秤値が、経年変化などの理由によって小さな値になった場合、それに応じて空補正後秤値と閾値THAもより小さな値へ更新される。
第1〜第3更新方法では、新たに取得した空補正後秤値が何らかの理由で極めて大きな/小さな値を示していた場合、閾値THAも極めて大きな/小さな値へと変化してしまう。そこで、ステップST107において閾値学習手段14は、取得した空補正後秤値から直接に閾値THAを更新するのではなく、空補正後秤値から式(1)に示すUPDATEAを更新し、空補正後秤値の代わりにUPDATEAを用い上記第1〜第3更新方法により閾値THAを更新するようにしても良い。空補正後秤値からUPDATEAを更新するための式(1)を下記に示す。
式(1)に従い、例えば、係数C1=0.5、係数C2以降を0とすると、更新後のUPDATEAは、今のUPDATEAと今回取得した空補正後秤値の平均値となる。係数C1を0〜1の範囲で選ぶことにより、“更新後のUPDATEA”を、“今回取得した空補正後秤値”に近い値に更新したり、あるいは“今のUPDATEA”に近い値に更新したりすることができ、UPDATEAを緩やかに変化させることができるようになる。取得した空補正後秤値から直接に閾値THAを更新していた第1〜第3更新方法は、式(1)においてC1以降の係数を全て0にし、“今のUPDATEA=今回取得した空補正後秤値”にするということと同じである。また、C2以降の係数を0〜1の範囲で選ぶことにより、今回取得した空補正後秤値と今のUPDATEAだけでなく、以前に取得した空補正後秤値と以前のUPDATEAも利用してUPDATEAを更新することになる。例えば、前回までの更新でUPDATEAが徐々に大きな値へと更新されてきていた場合、すなわち“前回取得した空補正後秤値”>“1つ前のUPDATEA”、“前々回取得した空補正後秤値”>“2つ前のUPDATEA”、“前々々回取得した空補正後秤値”>“3つ前のUPDATEA”、…であった場合、仮に“今回取得した空補正後秤値”<“ 今のUPDATEA”であったとしても、新たなUPDATEAはこれまでの増加傾向を反映してなおも増加したり、あるいは大きくは減少しないことになり、より緩やかにUPDATEAを変化させながら更新することができるようになる。このようにして閾値THAを更新する方法を、第4更新方法とする。
すなわち、閾値学習手段14は、過去の閾値にも基づいて閾値を更新する。よって、新たに取得した空補正後秤値が、何らかの理由で極めて大きな/小さな値を示していたとしても、緩やかにUPDATEAが更新されるので、閾値THAも緩やかに変化させることができるようになる。これにより、より正確に有無判定をすることができるようになる。
第1、第2更新方法では、閾値THAを減少させることができない。また、第3、第4更新方法では、UPDATEAを設定した際の“エレベータの位置”及び“停止時の方向”と同じ“エレベータの位置”及び“停止時の方向”のときの空補正後秤値がUPDATEAよりも小さな値でないと、閾値THAがより小さな値へと変化しない。そのため、同じ“エレベータの位置”と“停止時の方向”になる頻度が低いと、閾値THAは小さな値へと変化しづらく、必要以上に大きな値で高止まりすることがある。これを避けるため、ステップST106において閾値学習手段14は、エレベータがN回停止する間に閾値THAが1度も変化しない場合に閾値THAを更新する条件が満たされているものと判定し、ステップST107において、UPDATEAと閾値THAからγを差し引いて小さな値へ変化させても良い。Nとγの値は予め閾値学習手段14が保持しているものとする。
すなわち、閾値学習手段14は、閾値が所定期間内に更新されなかった場合に閾値を所定値分小さな値に更新する。これにより閾値の高止まりを避け、より正確に有無判定をすることができるようになる。
<閾値THB>
エレベータが空になるパターンは2通りあり、1つは現在階で乗客が降車した結果エレベータが空になったという第1のパターンであり、もう1つは、空の状態で別の階に待機していたエレベータが、呼ばれて現在階に移動してきたという第2のパターンであることは既に述べた。また、適切な閾値とは、エレベータ内が空のときの補正後秤値と比較したときに“無”と判定できる最小の値であることも述べた。閾値学習手段14は第4〜第6の閾値学習条件が満たされたときに閾値THAを更新しているとすると、閾値THAは第2のパターンで空になったエレベータの補正後秤値と比較することに適した閾値であると言える。
一方、計測手段11からの秤値が含む誤差には2種類ある。1つは、エレベータが各階に到着したときに有するオフセット誤差であり、もう1つは、エレベータが各階に到着して戸開したときに、人物の乗降などによって変化する秤値の変化量誤差である。閾値THAはオフセット誤差を考慮した適切な閾値ではあるが、変化量誤差まで考慮しているとは言い難い。すなわち、閾値THAは第1のパターンで空になった可能性のあるエレベータを有無判定を行うことに適した閾値ではない。そこで、ステップST107において閾値学習手段14は、第2のパターンで空になったと推定される状況用の閾値THAと、第1のパターン、すなわち現在階で降車が発生して空になったと推定される状況用の降車閾値THBを別々に用意しても良い。そして、第1のパターンで空となった可能性がある場合、有無判定手段15はステップST108において、補正後秤値と閾値THBを比較して有無判定を行う。
以下、閾値学習手段14が閾値THBを用意する場合の、ステップST106〜ステップST108までの追加動作を説明する。まず、ステップST106において閾値学習手段14は、閾値THBを更新する条件が満たされているか否かを判断する。閾値THBの適切な値とは、エレベータが第1のパターンで空になったときの補正後秤値と閾値を比較したときに、“無”と判定できる最小の値である。そのため、エレベータが第1のパターンで空になったと推定される状況の補正後秤値(空補正後秤値)からTHAと同様にしてTHBを決めることになる。
そこで、エレベータが第1のパターンで空になったと推定される状況であることが、閾値THBを更新する条件の1つになる。空であると推定されることが必要なので、閾値THAを更新する条件として上述した第1〜第3の閾値学習条件は、閾値THBを更新する条件としても利用できる。
また、エレベータが第1のパターンで空になるためには、現在階で乗客が降車しなければならない。通常のエレベータの利用において乗客がある階で降車する場合、エレベータ内に設置されている行先階ボタン(かご呼び)が押下される。そこで、現在階に停止した要因がかご呼びであることを第7閾値学習条件とする。
ステップST106において閾値学習手段14は、閾値THBを更新する条件を上記の第1〜3,7閾値学習条件の全てを満たすこととしてもよいし、その一部の条件を満たすこととしてもよいし、上記の第1〜3,7閾値学習条件の排他的論理和を形成して、その条件を満たすこととしてもよい。
すなわち、閾値学習手段14において、現在階で乗客が降車したことによりエレベータ内が空であると推定される際の秤値とエレベータの状態信号に基づき設定される閾値を降車閾値THBとすると、有無検知手段15は、現在階で乗客が降車したことによりエレベータ内が空であると推定される際に、降車閾値THBを用いて乗客の有無を判定する。これにより、より正確な乗客の有無判定が行える。
閾値THBを更新する条件が満たされていると判断すると、閾値学習手段14は閾値THBを更新する(ステップST107)。閾値の更新は第1から第4の更新方法による。これにより、より正確に有無判定をすることができるようになる。なお、閾値THAを更新するときに利用した変数UPDATEAと区別するために、閾値THBの更新ではUPDATEAに相当する変数をUPDATEBとする。
また、閾値学習手段14は、ステップST107において次の方法で閾値THBを更新しても良い。閾値THBは秤値の変化量誤差が考慮された閾値であり、第1のパターンでエレベータが空になった可能性があるときに利用される。秤値の変化量誤差の量は変化量に依存するため、閾値THBも変化量に応じて決まることが好ましい。閾値THBはUPDATEBから決まるため、閾値THBが変化量に応じて決まるためにはUPDATEBが変化量に応じて決まらなければならない。変化量とは、“エレベータがある階に到着したときの補正後秤値”から“その階で降車が発生してエレベータが空になったと推定されたときの補正後秤値”を引いた値である。“その階で降車が発生してエレベータが空になったと推定されたときの補正後秤値”とはUPDATEBのことである。そのため、UPDATEBが変化量に応じて決まるということは、UPDATEBが“エレベータがその階で到着したときの補正後秤値”に応じて決まるということである。つまり、“エレベータがその階に到着したときの補正後秤値”によってUPDATEBが決まるように“エレベータがその階に到着したときの補正後秤値”の関数を用意する。そして、その関数が適時更新されることで閾値THBも更新されることになる。ここで、“エレベータがその階で到着したときの補正後秤値”をWarriveとする。なお、“エレベータがその階で到着したときの「補正後秤値」”は、“エレベータがその階で到着したときの「秤値」”から決まるので、閾値THBは“エレベータがその階で到着したときの「秤値」”によって更新される、と言い換えても良い。
図3は、Warriveに対するUPDATEBの変化を示すグラフである。今、UPDATEBは(A×Warrive+B)によって決まるものとする。A,Bの初期値は閾値学習手段14が予め保持している。ここで、x1はエレベータの定格容量でエレベータ毎に既知であり、運行管理手段16から取得する。y1は(A×Warrive+ B)から求めることができる。y2はUPDATEBの下限値であり、予め閾値学習手段14が保持している。x2は((y2−B)/A)で求めることができる。前述の閾値THBの閾値学習条件が満たされ、閾値学習手段14が新たなWarrive(x3)とそのときのUPDATEB(y3)を取得したとすると、(x1、y1) 、(x2、y2)、(x3、y3)から最小二乗法を利用してAとBを更新する。更新されたAとBを、Anew,Bnewとする。そして、ステップST107において閾値学習手段14は、UPDATEB=Anew×Warrive+BnewとしてUPDATEBを更新し、更新されたUPDATEBからWarrive(x3)のときの閾値THBを決める。この閾値THBを更新する方法を、第5更新方法とする。
すなわち、閾値学習手段14は、現在階に到着した時の秤値にも基づいて降車閾値THBを設定する。これにより、乗降車による秤値の変化量誤差を考慮して閾値を設定し、より正確に有無判定をすることができるようになる。
また閾値学習手段14は、現在階に到着した時の秤値から降車閾値THBを決めるための式を、現在階に到着した時の秤値に基づいて更新する。これにより、乗降車による秤値の変化量誤差を考慮して閾値を設定し、より正確に有無判定をすることができるようになる。
なお、上述の説明ではx1をエレベータの定格容量とし、y1は式から求めることとしているが、y1を予め閾値学習手段14が保持するUPDATEBの上限値としてもよい。この場合、x1はy1と、式から求める。また、Anewが0の値になった場合、x2は0とする。また、Anewが0の値であり、x1をy1(上限値)から決める場合も、x1をエレベータの定格容量とする。
また、第5更新方法では、新たに取得した到着時の秤値が、何らかの理由で極めて大きな/小さな値を示していた場合、AnewやBnewも極めて大きな/小さな値へと変化してしまい、その結果、降車閾値THBも極めて大きな/小さな値に設定されてしまう。そこで、最小二乗法によって求まった新しいAやBをそのまま更新後のAnewやBnewとして利用するのではなく、式(2)によってAnewやBnewを更新しても良い。
Bnewも同様の式で決めることができる。このようにして閾値THBを更新する方法を、第6更新方法とする。
すなわち、閾値学習手段14は、現在階に到着した時の秤値Warriveから降車閾値THBを求めるための式を、過去の式に基づいて更新する。これにより、新たに取得した到着時の秤値が何らかの理由で極めて大きな/小さな値を示していたとしても、AnewやBnewは緩やかに更新されるため、降車閾値THBも緩やかに更新させることができ、より正確に有無判定をすることができるようになる。
また、図4は、縦軸が式(A、B)を更新するときの到着時の補正後秤値の発生率、横軸が式(A、B)を更新するときの到着時の補正後秤値のグラフの一例である。発生率は0〜1の値を選ぶ。図4によれば、到着時の補正後秤値は60kg〜70kgである確率が最も高く、1人でエレベータに乗車するケースが多いことがわかる。第5更新方法では、到着したときの秤値から式(A、B)を決めているため、x3 = 65kg(大人1人の平均体重)付近の値で更新されることが多いことになる。x3 = 65kg(大人1人の平均体重)付近の値での更新頻度が高いほど、それ以外のx3の値を用いた更新の影響が小さくなってしまい、必ずしも好適なAnewやBnewに収束しなくなってしまうことがある。そこで、式(3)を用いてAnewやBnewを更新しても良い。
E1は、“今回計算で求めたA”を求めるときに用いた到着時の補正後秤値x3の発生率を利用する。E2は、“前回計算で求めたA”を求めるときに用いた到着時の補正後秤値x3の発生率を利用する。E3以降も同じ要領で求める。Bnewも同様の式で決めることができる。こうすることで、発生率の高いx3を用いて計算されたAやBが、“更新後のAnew”や“更新後のBnew”に及ぼす影響を抑えることができ、より好適なAnewやBnewに収束させることができ、より正確に有無判定をすることができるようになる。各“到着時の補正後秤値x3の発生率”は、予め閾値学習手段14が保持しているものとする。このようにして閾値THBを更新する方法を、第7更新方法とする。
なお、第7更新方法では、各“到着時の補正後秤値x3の発生率”は、予め閾値学習手段14が保持することとしている。しかしながら、ハードウェアの演算メモリや記憶容量など演算リソースの有効活用によってコスト削減するためには、閾値学習手段14に各“到着時の補正後秤値x3の発生率”を保持させておくのは得策ではない。そこで、閾値学習手段14は、各“到着時の補正後秤値x3の発生率”を求めるための式を予め保持しておいても良い。例えば、図4の到着時の補正後秤値x3の発生率が、正規分布に従っていると仮定すると、到着時の補正後秤値x3の発生率f(x3)は、式(4)で求めることができる。
この式中のμは平均体重であり、σは標準偏差の値を示す。eは自然対数の底である。図4では、μを65kg、標準偏差を10としたときの正規分布を示している。この正規分布の値を、“到着時の補正後秤値x3の発生率”として使用しても良い。必ずしも、μ=65kg,σ=10である必要はない。μとσは予め閾値学習手段14に保持されているものとする。こうすることで、少ない演算リソースでより正確に有無判定をすることができるようになる。なお、ここでは正規分布に従うものとして式を作成しているが、特に正規分布に限定しない。“到着時の補正後秤値x3の発生率”をx3の式としておくことで、同様の効果を得ることができる。このようにして閾値THBを更新する方法を、第8更新方法とする。
すなわち、閾値学習手段14は、現在階に到着した時の秤値Warriveから降車閾値THBを求めるための式を、現在階に到着した時の秤値Warriveの発生率にも基づいて更新する。より好適な式に更新することによって、より正確に有無判定をすることができるようになる。
また、閾値学習手段14は、現在階に到着した時の秤値Warriveに基づいて、秤値Warriveの発生率を設定する。こうして設定した発生率に基づきより好適な式に更新することによって、より正確に有無判定をすることができるようになる。
また、式(5)からAnewを求めることにより、第6更新方法と、第7もしくは第8更新方法を併用することができる。
Bnewも同様の式で決めることができる。こうすることで、第6〜第8更新方法の両効果を奏することができる。
なお、上述の説明では、Warriveから(A×Warrive+B)を用いてUPDATEBを求めるとしているが、UPDATEBを求める式を到着時の方向別に用意しても良い。例えば、UP方向で現在階に到着したときの補正後秤値Warrive_UPから(AUP×Warrive_UP+BUP)を用いてUPDATEB_UPを求めても良い。式(AUP、BUP)は、UP方向で現在階に到着した時の秤値から第5〜第8更新方法と同様に求めることができる。DOWN方向についても同様に求めることができる。
すなわち、閾値学習手段14は、現在階に到着した時の秤値Warriveから降車閾値THBを求めるための式を、現在階に到着した時の方向にも基づいて更新する。これにより、より正確に有無判定をすることができる。
なお、上述の説明では、UPDATEBは(A×Warrive+B)の1次式によって決まるものとしているが、2次以上の多次の式で決まることとしても良い。例えば、2次式である場合、UPDATEBは(A×Warrive 2+B×Warrive+C)で決まる。(x1、y1)、(x2、y2)、(x3、y3)から最小二乗法を利用してAとBとCを更新しても良い。これにより、より正確に有無判定をすることができる。
有無検知手段15はステップST108においてエレベータ内の乗客有無を検知するが、エレベータが第1のパターンで空になったのか第2のパターンで空になったのかを判別し、それに応じて閾値を使い分ける。有無検知手段15は、補正手段13から補正後秤値を取得し閾値学習手段14から閾値THAとTHBを取得する。そして、第1のパターンでエレベータが空になっている可能性があると判断すると、補正後秤値<THBならば“無”と判定し、それ以外は“有”と判定する。あるいは、補正後秤値≦THBならば“無”と判定し、それ以外は“有”と判定する。ここで等号を含むか含まないかは、ステップST107での閾値の更新方法に依存する。また、第1のパターンでエレベータが空になっている可能性があると判断されなかった場合は、前述のとおり閾値THAと補正後秤値を比較して、有無判定を行う。
次に、有無検知手段15がステップST108において、第1のパターンでエレベータが空になっている可能性があると判断する方法について説明する。まず、エレベータが現在階で空になるためには現在階で降車が検知されなければならない。また、降車が検知された後に乗車が検知されてはいけない。すなわち、現在階に停止後、乗客の降車動作が検知された後は、有無検知手段15は第1のパターンでエレベータが空になっている可能性があると判断し、閾値THBと補正後秤値を比較して有無判定を行う。しかし、その後に乗客の乗車動作が検知された後は、閾値THAと補正後秤値を比較して有無判定を行う。以下、ステップST108において、乗客の乗降動作を検知する動作について説明する。
乗降検知手段17は、乗客の乗車/降車動作を検知する。図5(a)のグラフは横軸に時刻t(i)、縦軸にエレベータの積載重量W(i)をとり、計測手段11が計測した積載重量Wの時系列変化を示している。ここでグラフの所定の期間[t(i),t(i−x)]に着目すると、この期間に積載重量Wが減少していることが分かる。乗降検知手段17は、W(i)−W(i−x)<Y1を満たすとき、図5(b)に示すように[t(i),t(i−x)]においてエレベータから乗客が降車中であると検出する。iはサンプリング番号であり自然数である。xは変数であり自然数である。t(i)−t(i−1)は、計測手段の計測周期である。前記Y1は予め定める閾値である。また、W(i)−W(i−x)>Y2を満たすとき、[t(i),t(i−x)]は乗車中であると検出する。前記x,Y1,Y2は、予め乗降検知手段17によって保持されているものとする。この方法によれば、t(i)にて降車が検知され始めたことになるため、有無判定手段15はt(i)以降、閾値THBと補正後秤値を比較して有無判定を行う。なお、それまでは閾値THAと補正後秤値を比較して有無判定を行っている。また、降車が検知された後に乗車が検知されると、その時点から閾値THAと補正後秤値を比較して有無判定を行う。また、エレベータが出発して別の階へ移動・停止した場合、移動先で降車が検知されるまでは、閾値THAと補正後秤値を比較して有無判定を行う。これにより、より正確に有無判定をすることができるようになる。なお、エレベータが走行中は乗客の乗降は発生しないため、有無判定を行う必要がない。走行中の乗客の有無は、出発直前に行われた有無判定の結果と同じである。
また、ステップST108において乗降検知手段17は、次の方法で乗客の乗降動作を検知しても良い。図6(a)は、横軸に時刻t、縦軸にエレベータの積載重量Wをとり、計測手段11が計測した積載重量Wの時系列変化を示すグラフである。図6(b)は、横軸に時刻t、縦軸に積載重量Wの時系列変化から演算される時間差分データWdiffを取り、積載重量Wの時間差分データWdiffの時系列変化を示すグラフである。乗降検知手段17は、計測手段11から積載重量W(i)を取得し、式(6)を用いて時間差分データWdiff(i)を演算する。
式(6)においてΔiは差分間隔を表す。時間差分データWdiff(i)は、積載重量が減少するとマイナスの値を示し、積載重量が増加するとプラスの値を示し、積載重量に変化がないと零の値を示す特性がある。そこで乗降検知手段17は、時間差分データWdiff(i)がマイナスの値を示してから再び零以上の値を示すまでの期間[t(i),t(i−x)]に降車が発生していると検出し、t(i)以降、有無検知手段15は閾値THBを利用して有無判定を行う。また乗降検知手段17は、時間差分データWdiff(i)がプラスの値を示してから再び零以下の値を示すまでの期間を乗車中と検出する。これにより、より正確に乗降動作を検知することができ、その結果、より正確に有無判定をすることができるようになる。
ところで、積載重量Wのデータは図7(a)に示すように数値ノイズを持つことがある。その結果、図7(b)のように時間差分データWdiffにも数値ノイズが発生し、乗降動作を誤検知してしまうことがある。そこで、次のような対策を施してもよい。例えば乗降検知手段17は、図7(b)に示すように時間差分データWdiffが時刻t(i)にマイナス値を示してから時刻t(i+x)に再び0以上の値を示すと、時刻t(i)〜t(i+x)の間の時間差分データWdiffの値の合計の絶対値を計算する。そして、絶対値が閾値Wjudge以下の値であった場合、時刻t(i)〜t(i+x)の間の時間差分データWdiffの値はノイズであると判断して0へ変換する。図7は乗車の場合を示したが、降車の場合は時間差分データWdiffがマイナスの値を示すので、例えば時刻t(i)に時間差分データWdiffが0より小さな値を示してから時刻t(i+x)に再び0以上の値を示すと、時刻t(i)〜t(i+x)の間の時間差分データの値の合計の絶対値を演算し、絶対値が閾値Wjudge以下の値であった場合、時刻t(i)〜t(i+x)の間の時間差分データWdiffの値はノイズであると判断して0へ変換する。閾値Wjudgeは予め乗降検知手段17に保存されているものとする。これにより、より正確に乗降動作を検知することができ、その結果、より正確に有無判定をすることができるようになる。
計測手段11は一定周期で積載重量Wを計測している。そのため、ステップST108までの動作が終了するとステップST101から動作を再開する。ただし、常に乗客有無を検知する必要がない場合、ステップST102からステップST108の各動作の内、必要に応じて全てあるいは一部の動作を省略しても良い。また、計測手段11が一定周期で積載重量Wを計測しているとすると、その他の各手段で用いる秤値は、そのときの計測された瞬時値ではなく、そのときに計測された秤値とそこから一定期間過去の間に計測された秤値の平均値を利用しても良い。これにより、エレベータやロープの振動によって生じる秤値の微振動の影響による有無検知精度の低下を軽減することができる。
また、図2では、ステップST106とステップST107にて閾値を更新してから、ステップST108にて更新された閾値を利用して有無判定を行うとしているが、動作の順序は問わないものとする。例えば、ステップST105の後で、今の閾値を利用してステップST108と同様の動作を行い、有無判定を実施し、その後、ステップST106とステップST107の動作によって閾値を更新しても良い。
また、図2では、ステップST104にて秤値の補正量/補正式を更新しステップST105にて秤値を再補正した後、ステップST108にて補正後秤値を利用して有無判定を行うとしているが、補正量/補正式の更新と有無判定動作の順序は問わないものとする。例えば、今の補正量や補正式を利用して秤値を補正し、補正後秤値を利用してステップST108と同様の動作で有無判定を行った後に、ステップST103とステップST104と同様の動作を行い秤値の補正量や補正式を更新しても良い。
<効果>
秤値を補正したとしても、その誤差を完全に除去することは難しい。また、その誤差量は、秤装置の設置環境や経年変化に依存するため、全てのエレベータに対して同じ閾値を適用すると、精度良く有無判定を行うことが難しかった。しかし、実施の形態1の乗客有無検知装置1は、停止時のエレベータの積載重量を秤値として計測する計測手段11と、エレベータの運行を管理し、その状態信号を出力する運行管理手段16と、秤値とエレベータの状態信号に基づき、秤値の補正量や補正量を算出する補正式を更新する補正学習手段12と、補正学習手段で更新された補正量と補正式に基づき、秤値を補正後秤値として補正する補正手段13と、エレベータ内が空であると推定される際の秤値とエレベータの状態信号に基づき閾値を設定/更新する閾値学習手段14と、補正後秤値と閾値を比較して、エレベータ内の乗客の有無を判定する有無検知手段15と、を備えることにより、閾値を適切な値に自動更新し、正確な乗客の有無検知を行う事が出来る。また、エレベータの保守作業員が個別に閾値を設定するという作業を省力化することができる。
さらに、閾値学習手段14は、エレベータ内が空であると推定される際の補正後秤値である空補正後秤値を継続して取得し、その最大値に基づいて閾値を更新することを特徴とする。これにより、より正確に有無判定を行うことができるようになる。
また、閾値学習手段14は、空補正後秤値の最大値を取得した際と同一のエレベータの位置においてエレベータ内が空であると推定された場合に、そのときの前記空補正後秤値に基づいて閾値を更新することを特徴とする。よって、これまで取得してきた空補正後秤値の中で最も大きな値であった空補正後秤値が、経年変化などの理由によって小さな値になった場合、それに応じて空補正後秤値と閾値THAもより小さな値へ更新される。
さらに、閾値学習手段14は、過去の閾値にも基づいて閾値を更新する。よって、新たに取得した空補正後秤値が、何らかの理由で極めて大きな/小さな値を示していたとしても、緩やかにUPDATEAが更新されるので、閾値THAも緩やかに変化させることができるようになる。これにより、より正確に有無判定をすることができるようになる。
また、閾値学習手段14は、閾値が所定期間内に更新されなかった場合に閾値を所定値分小さな値に更新する。これにより閾値の高止まりを避け、より正確に有無判定をすることができるようになる。
さらに、閾値学習手段14において、現在階で乗客が降車したことによりエレベータ内が空であると推定される際の秤値とエレベータの状態信号に基づき設定される閾値を降車閾値THBとすると、有無検知手段15は、現在階で乗客が降車したことによりエレベータ内が空であると推定される際に、降車閾値THBを用いて乗客の有無を判定する。これにより、より正確な乗客の有無判定が行える。
また、閾値学習手段14は、現在階に到着した時の秤値にも基づいて降車閾値THBを設定する。これにより、乗降車による秤値の変化量誤差を考慮して閾値を設定し、より正確に有無判定をすることができるようになる。
さらに、閾値学習手段14は、現在階に到着した時の秤値から降車閾値THBを決めるための式を、現在階に到着した時の秤値に基づいて更新する。これにより、乗降車による秤値の変化量誤差を考慮して閾値を設定し、より正確に有無判定をすることができるようになる。
また、閾値学習手段14は、現在階に到着した時の秤値Warriveから降車閾値THBを求めるための式を、過去の式に基づいて更新する。これにより、新たに取得した到着時の秤値が何らかの理由で極めて大きな/小さな値を示していたとしても、AnewやBnewは緩やかに更新されるため、降車閾値THBも緩やかに更新させることができ、より正確に有無判定をすることができるようになる。
さらに、閾値学習手段14は、現在階に到着した時の秤値Warriveから降車閾値THBを求めるための式を、現在階に到着した時の秤値Warriveの発生率にも基づいて更新する。より好適な式に更新することによって、より正確に有無判定をすることができるようになる。
また、閾値学習手段14は、現在階に到着した時の秤値Warriveに基づいて、秤値Warriveの発生率を設定する。こうして設定した発生率に基づきより好適な式に更新することによって、より正確に有無判定をすることができるようになる。
さらに、閾値学習手段14は、現在階に到着した時の秤値Warriveから降車閾値THBを求めるための式を、現在階に到着した時の方向にも基づいて更新する。これにより、より正確に有無判定をすることができる。
(実施の形態2)
<構成>
本実施の形態の人数検知装置は、実施の形態1の乗客有無検知装置1を利用するものであり、乗客有無検知装置1がエレベータ内に乗客が居ると判定した場合に、乗客が1人なのか、複数人なのかを推定する。
図8は、実施の形態2に係る人数検知装置2の構成を示すブロック図である。人数検知装置2は、乗客有無検知装置1、人数検知手段21、ドア計測手段22を備える。乗客有無検知装置1は、前述の通り実施の形態1の乗客有無検知装置と同じであり、その構成要素である各手段は、本実施の形態の人数検知装置2にも含まれているものとする。乗客有無検知装置1に含まれる計測手段11を除き、各手段はマイクロコンピュータ上のソフトウェアによって構成されている。
人数検知手段21は、計測手段11が計測したエレベータの積載重量と乗客有無検知装置1の有無検知結果を基に、エレベータ内の乗客が0人か1人か2人以上かを検知する。
すなわち、実施の形態2に係る人数検知装置は、実施の形態1の乗客有無検知装置と、乗客有無検知装置から乗客有無検知結果と秤値を受け、これらに基づき前記エレベータの乗客数を検知する人数検知手段と、を備える。乗客有無検知装置が“無”と判定した場合に人数検知手段が乗客数を0にすれば、繰り返し乗車数や降車数を検知することによる検知精度の低下を防ぐことが出来る。
<動作>
次に、人数検知装置2の動作について記載する。図9は、本実施の形態に係る人数検知装置2の動作を示すフローチャートである。図9に示すステップST201からステップST208までの動作は、図2に示すステップST101からステップST108までの動作と同一であるため説明を省略し、それ以降の動作について説明する。
ステップST209において、人数検知手段21は計測手段11から秤値、あるいは補正手段13から補正後秤値を取得し、その時間差分データを演算する。図10は、エレベータが停止して完全戸開中に2人が乗車し、その後2人が降車したときの積載重量の時系列変化を示すグラフである。人数検知手段21は、取得した積載重量W(i)から実施の形態1で示した式(6)を用いて、時間差分データWdiff(i)を演算する。あるいは、実施の形態1の乗降検知手段17から時間差分データWdiff(i)を取得しても良い。図11は、図10に示した積載重量Wのデータから演算した時間差分データWdiffの時系列変化を示す図である。
次いで人数検知手段21は、乗降人数を推定する条件が満たされた場合に、演算した時間差分データから乗降人数を推定する(ステップST210)。乗降人数を推定する条件とは、時間差分データWdiffがプラスの値から0以下の値へ遷移すること、あるいは時間差分データWdiffの値がマイナスの値から0以上の値へ遷移すること、である。時間差分データWdiffは、Δiの間に積載重量Wに変化がない場合0の値を示すので、乗降行為が終了して積載重量が変化しなくなると0の値を示す。したがって、図11のグラフにおいて1つの凸型波形が1回の乗降動作を示している。
乗降人数を推定する条件が満たされると、人数検知手段21は時間差分データWdiffから乗降人数を演算する。図12は、モデル波形Wm(i)の時系列変化を示すグラフである。人数検知手段21は予め図12に示されるようなモデル波形Wm(i)を保持し、そのモデル波形Wm(i)を時間軸方向に走査して、図11に示した時間差分データWdiff(i)の波形とモデル波形Wm(i)との形状の類似度を表す式(7)に示される正規化相互相関関数z(τ)を算出する。
ここで、τは基準となる時刻t(i)からのずれ量を示し、Wm(バー)標準モデルの時間差分データWm(i)の平均を示し、Wdiff(バー)は受信した時間差分データWdiff(i)の平均を示す。基準となる時刻は任意に選択することができ、例えば現在のt(i)でも良い。そして、相互相関関数z(τ)の値が予め定める閾値Soverlap以上となった回数を、1つの凸型波形の人数とする。Soverlapは、予め人数検知手段21が保持しているものとする。凸型波形がプラスの値の場合は乗車人数であり、マイナスの場合は降車人数になる。凸型波形がマイナスの場合は、モデル波形Wm(i)もマイナスの値に変換してから相互相関関数z(τ)を演算すればよい。この乗降人数を演算する方法を乗降人数検知方法1とする。
そして人数検知手段21は、有無検知装置1から取得する有無判定結果とステップST210で演算した乗降人数から、エレベータ内の乗客が0人か、1人か、2人以上かを判定する(ステップST211)。有無検知装置1から習得する有無判定結果が“無”であれば、更新後のエレベータ内の乗客は0人と判定する。有無判定結果が“有”であれば、エレベータ内の人数を式(8)から算出する。
もし、ステップST210において、乗降人数を推定する条件が満たされており、乗車人数が検知された場合は、降車人数は0人になる。逆に降車人数が検知された場合は、乗車人数は0人になる。乗車人数も降車人数を検知されていない場合は、エレベータ内の人数に変化は無い。
更新後のエレベータ内の人数が1人である場合、人数検知手段21はエレベータ内の人数を1人と判定する。更新後のエレベータ内の人数が2人以上である場合、人数検知手段21は、エレベータ内の人数を2人以上と判定する。
ステップST210において人数検知手段21は、乗降人数検知方法1とは異なる次の方法で乗降人数を検知しても良い。例えば、図11の時間差分データWdiff(i)の0以上の値において、図中に示すCの位置に閾値を設定する。そして、時間差分データWdiff(i)が閾値以上になった回数を乗車人数とする。Cの位置に閾値を設定した場合WdiffがC以上となる回数は2回あり、通過人数は2人と推定される。閾値を時間差分データWdiff(i)の0以下の値に設定する場合は、時間差分データWdiff(i)が閾値以下になった回数を降車人数とする。このような人数検知方法によれば、乗降人数検知方法1のようにモデル波形Wm(i)を予め保存しておく必要がなく、モデル波形Wm(i)との類似度を演算する必要がないため、使用する演算リソース量を少なくすることができる。この乗降人数を演算する方法を、乗降人数検知方法2とする。
また、ステップST210において人数検知手段21は、乗降人数検知方法1及び2とは異なる次の方法で乗降人数を検知しても良い。図11の時間差分データWdiff(i)の0以上の値において、閾値を複数、例えば図11に示すように6つの閾値A〜Fを設定する。そして、時間差分データWdiff(i)が閾値以上になった回数(乗車人数の推定候補)を閾値毎に数える。そして、各乗車人数の推定候補になった数(カウント値)を数えると、図13に示すような表が完成する。このとき、乗車人数が2人と推定されたのは閾値6個中4個と最も多いため、乗車人数を2人とする。時間差分データWdiff(i)の0以下の値において閾値を複数設定した場合も同様にして降車人数を決定する。このような方法によれば、乗降人数検知方法1のようにモデル波形Wm(i)を予め保存しておく必要がなく、モデル波形Wm(i)との類似度を演算する必要がないため、使用する演算リソース量を少なくすることができる。さらに、乗降人数検知方法2では1つの閾値の設定次第で人数検知結果が変動するが、この乗降人数検知方法では複数の閾値を設定するため乗降人数検知方法2よりも精度良く人数を検出することができる。この乗降人数検知方法を乗降人数検知方法3とする。
また、ステップST210において人数検知手段21は、乗降人数検知方法1〜3とは異なる次の方法で乗降人数を検知しても良い。図14は、ドア計測手段の一例としてドア23の近傍に設けられる光電センサ24を示す図である。例えば、ドア計測手段22は1つまたは複数個の光電センサ24の発光素子と受光素子によって構成されており、ドア23を人が通過すると図15(a)に示すような感知結果が得られる。図15(a)において横軸は時刻、縦軸はセンサ設置位置を示している。ここで、光電センサ24の設置位置に所定の範囲Pn(nは自然数)を設ける。たとえば範囲P1において、N1(N1は自然数)個以上の光電センサ24がM1(M1は自然数)回連続して感知することを通過開始条件S1とする。また、所定の範囲P2において、N2(N2は自然数)個以上の光電センサ24がM2(M2は自然数)回連続して感知しなかったことを通過終了条件E1とする。範囲P1およびP2は必ずしも同一の範囲である必要はない。通過開始条件S1が満たされてから、通過終了条件E1が満たされるまでの間に利用者が通過したと判断し、通過人数を1人と検出する。
また、全センサの感知結果を累積し、その累積数から通過人数を推定しても良い。図15(b)は、ある時刻における光電センサ24の感知結果の累積数を示す図である。横軸は時刻、縦軸は感知結果累積数を示している。ここで、感知結果累積数にも所定の範囲Qn(nは自然数)を設け、例えば所定の範囲Q1においてN3(N3は自然数)個以上の光電センサ24が、M3(M3は自然数)回連続して感知した場合を通過開始条件S2とする。また、たとえば所定の範囲Q2において、N4(N4は自然数)個以上の光電センサ24がM4(M4は自然数)回連続して感知しなかった場合を通過終了条件E2とする。範囲Q1およびQ2は必ずしも同一の範囲である必要はない。通過開始条件S2が満たされてから、通過終了条件E2が満たされるまでの間に利用者が通過したと判断し、通過人数を1人と推定する。
通過人数を推定するにあたり、2つの通過開始条件S1,S2のいずれか一方を適用してもよいし、両方適用してもよい。また2つの通過終了条件E1,E2のいずれか一方を適用してもよいし、両方適用してもよい。Pn,Qn,Nn,Mn(nは自然数)は人数検知手段21によって保持されているものとする。ただし、ドア計測手段22は通過人数を検知できるが、それが乗車か降車かを判断することはできないため、実施の形態1の乗降検知手段17がステップST108で行う方法によって、すなわち計測手段11から秤値を取得し、積載重量Wの変化を調べることによって乗車か降車かを判定する。
そして人数検知手段21は、ドア計測手段22が検知した通過人数と積載重量Wの変化から得た乗車・降車の判定結果とを突合わせ、換言すればマッチングさせて乗車人数と降車人数とを出力する。以下、通過人数と乗車・降車の判定結果とを突合わせる方法について説明する。図16(a)はドア計測手段22が通過人数を検知した結果を示す図であり、図16(b)は積載重量の変化から乗車/降車の別を検知した結果を示した図である。人数検知手段21は、降車中であると推定されている期間[t(i),t(i−x)]に通過人数が1人と推定されている場合、当該期間の降車人数を1人と出力する。しかし、通過人数を推定するドア計測手段22と進行方向を推定する計測手段21とはセンサ系列が異なるため、互いの時系列データに時間差が生じ、降車中であると推定されている期間[t(i),t(i−x)]に通過人数が1人と推定されるとは限らない。
そこで本実施の形態では、通過人数の出力時刻の進行方向が仮に不明(以下「不」という)である場合、通過人数の出力時刻を±Z(Zは自然数)の範囲でずらすことによって、乗車・降車の判定結果が乗車方向(以下「乗」という)、または降車方向(以下「降」という)と一致するか否かを探索する。探索した結果、「降」と一致した場合は、降車人数を1人と出力する。
仮に、通過人数の出力時刻を±Zの範囲でずらしても進行方向結果が「乗」または「降」と一致しない場合は、予め人数検知手段21に保持されているルールに沿って、乗車人数をN(Nは自然数)人、降車人数をM(Mは自然数)人と出力する。
本実施の形態では、図16において通過人数の出力時刻の進行方向が仮に「不」である場合、通過人数の出力時刻を±Zの範囲でずらす例を説明したが、乗車・降車の判定結果の出力期間[t(i),t(i−x)]を±Zの範囲でずらしても同様の効果が得られる。変数Zは、人数検知手段21によって保持されているものとする。この乗降人数検知方法を、乗降人数検知方法4とする。
すなわち、人数検知装置2はエレベータのドアを通過する人数を検知するドア計測手段22を備え、人数検知手段21は、ドア計測手段22が検知した通過人数と、乗客有無検知装置1の乗客有無検知結果と秤値に基づきエレベータの乗客数を検知する。これにより、乗客数を正確に検知することが出来る。
なお、図14に示したドア23は、2枚のドア部分すなわち第1のドア部分23aと第2のドア部分23bとで構成され、第1のドア部分23a、第2のドア部分23bがそれぞれドア中央部から各両端部へ移動することによってドア23が開く構造となっているが、このようなドアに限定されない。例えばドア23は、1枚のドア部分によって構成され、この1枚のドア部分が出入口の一端部から他端部へ移動することで、ドア23が開く構造であってもよい。
また、2枚のドア部分すなわち第1及び第2のドア部分23a,23bは、必ずしもそれぞれ1枚の矩形板状部材で構成されていなくてもよい。例えば第1及び第2のドア部分23a,23bは、それぞれ2枚以上の複数枚の矩形板状部材によって多段に構成され、第1のドア部分23aと第2のドア部分23bとがドア中央部から各両端部へ移動するにあたり、複数枚の矩形板状部材が重なり合いながら移動するようにドア23を開くものであってもよい。同様に、ドア23が1枚のドア部分によって構成される場合、1枚のドア部分は必ずしも1枚の矩形板状部材で構成されていなくてもよく、例えば2枚以上の複数枚の矩形板状部材によって多段に構成され、1枚のドア部分が一端部から他端部へ移動するにあたり、複数枚の矩形板状が重なり合いながら移動するようにドア23を開くものであってもよい。
また、図14では光電センサ24をドア23の近傍に複数個並べて設けているが、図14は平易に説明するための模式図に過ぎず、光電センサ24は乗場側とエレベータ側のどちらに設置されていてもよい。また光電センサ24は、必ずしも乗場側やエレベータ側の目視可能な位置に設置する必要はない。一般的にエレベータのドア23は、乗場側のドアとエレベータ側のドアとによって構成されるが、この場合に光電センサ24は、乗場側のドアとエレベータ側のドアとの間に設置されていてもよい。また光電センサ24は、必ずしも各乗場に1つずつ設置する必要はなく、エレベータ側のドアに装着されることによってエレベータの移動と共に移動し、各階で乗客の乗り降りを計測できるようにしてもよい。
また、光電センサ24は、一般的に発光端子と受光端子とによって構成されるが、発光および受光の各端子は必ずしも1対1に対応している必要はない。1つの発光端子から広角に発射されたビームを複数の受光端子が受光することにより、複数の計測結果を測定することも可能であり、そのような光電センサ24を用いても本発明を実施することは可能である。
複数人が横並びの状態で乗車すると、乗降人数検知方法1〜3では時間差分データの凸型波形は1つしか形成されないことにより、乗車人数を1人であると誤検知する可能性がある。乗降人数検知方法4においても、複数人が横並びで乗車した場合の感知結果は一人が乗車した場合の感知結果と似ており、乗車人数を過少に検知してしまう可能性がある。複数人が横並びで降車する場合も同様の問題が生じる。そこで、次のような補正を施してもよい。図17(a)は、約110kg相当の物体が乗車したときの積載重量Wの時系列変化を示すグラフであり、図17(b)は、積載重量Wの時間差分データWdiffの時系列変化を示すグラフである。時間差分データWdiffには、1つの凸型波形の合計値の絶対値が積載重量Wの変化量と等しくなるという特性がある。すなわち、積載重量Wが約110kg増加したとき、時間差分データWdiffの凸型波形の合計値(積分値)は約110kgになる。そこで、人数検知手段21は、1人の体重と想定される積載重量Wの閾値Wtotsu1を設定し、凸型波形の積分値の絶対値が閾値Wtotsu1以上である場合に最少の乗車/降車人数を2人とする。つまり、人数検知手段21は上記の場合に1つの凸型波形から演算される乗車/降車人数の最小値を2以上とし、仮に乗降人数検知方法1〜4のいずれかによって乗車/降車人数が1人以下と評価されたとしても、乗車/降車人数を2人と数える。なお、最少の乗車/降車人数を3人とするための閾値Wtotsu2、4人とするための閾値Wtotsu3、5人とするための閾値Wtotsu4、…など、閾値を複数個用意しても良い。各閾値は予め人数検知手段21に保持されているものとする。
また、上記補正方法を利用すれば、人数検知手段21はエレベータ内の人数を多め/少なめに数えることができる。例えば、上述の補正を乗車人数の算定のみに行い降車人数は補正なしで算定すれば、乗車人数を多めに数えていることになり、式(8)によって算出されるエレベータ内の人数が多めに算出されることになる。逆に、上述の補正を降車人数の算定のみに行い乗車人数は補正なしで算定すれば、降車人数を多めに数えていることになり、式(8)によって算出されるエレベータ内の人数が少なめに算出されることになる。
すなわち、人数検知手段21は、秤値の時間差分データの凸型波形を積分し、積分値に応じて乗車人数及び降車人数を検知することによりエレベータの乗客数を検知する手段であって、積分値が所定の閾値以上であれば、乗車人数と降車人数のいずれか一方の最小値を2以上とする。これにより、エレベータの乗客数を多めあるいは少なめにカウントすることが出来る。
ステップST211において人数検知手段21は、有無検知装置1から取得する有無判定結果が“無”であった場合にエレベータ内の乗客を0人と判定するが、毎回有無判定結果を取得する必要はない。エレベータ内の乗客有無が“有”から“無”へ変化するタイミングは、戸開中かつ降車を検知したときである。そこで、ステップST210にて降車を検知したときのみ、人数検知手段21は有無検知装置1から有無判定結果を取得して、エレベータ内の乗客人数の検知結果に反映させても良い。あるいは、エレベータの完全戸閉後に有無判定結果を取得して、エレベータ内の乗客の人数に反映させても良い。あるいは、降車が検知された後の完全戸閉後に有無判定結果を取得して、エレベータ内の乗客の人数に反映させても良い。
また、エレベータ内の人数を、式(8)を用いて乗降人数の加減算から算出する場合、例えば1回の乗車/降車動作による乗車/降車人数の検知精度が90%であったとすると、乗降動作を5回繰り返した後のエレベータ内の人数の検知精度は90%の5乗=約60%となる。このように、検知精度は乗降動作を繰り返す度に低下する。しかし、人数検知手段21はステップST211において有無検知装置1から取得する有無判定結果が“無”であった場合に、更新後のエレベータ内の乗客を0人に再設定することで、再び1回の乗車/降車動作による乗車/降車人数の検知精度まで回復する。そこで、ステップST211において人数検知手段21は、有無検知装置1から取得する有無判定結果が“無”とならないまま、連続して乗車/降車人数を検知した回数Nraを数える。そして、Nraが閾値THnra以上である場合に人数検知手段21は、そのときに算出されているエレベータ内の人数は精度が低いものとして無視する。つまり、人数検知手段21は連続した乗車/降車動作の回数からエレベータ内の人数の検知精度を推定し、検知精度が低い場合には算出されているエレベータ内の人数を無視する。そして、次に有無検知装置1から有無判定結果が“無”と取得できるまで、エレベータ内の人数を“不明”と判定するようにしても良い。若しくは、エレベータ内の人数を、0人、1人、2人以上の内いずれかに判定するようにしても良い。閾値THnraは、予め人数検知手段21に保持されているものとする。
このように、人数検知手段21は、乗車/降車動作の回数からエレベータの乗客数の検知精度を推定する。これにより、精度の低い検知結果を出力することを避けることができる。
又、人数検知手段は、エレベータ内の人数の検知精度が低いとき、エレベータ内の人数を“不明”と出力することを特徴とする。これにより、本実施の形態の人数検知装置2を利用する装置/システムは、エレベータ内の人数が“不明”と判定されたときの動作、すなわちエレベータ内の人数の検知精度が低いときの動作を、予め定めておくことができ、誤ったエレベータ内の人数を利用することで、誤って動作してしまう可能性を低減することができる。
なお、乗降人数検知方法4を用いない場合、ドア計測手段22は必ずしも必要ではない。
<効果>
以上の様に、本実施の形態によれば実施の形態1の乗客有無検知装置1によってエレベータ内に乗客がいると判定された場合に、その乗客が1人であるか複数人であるかを求めることができる。
そして、実施の形態2に係る人数検知装置は、実施の形態1の乗客有無検知装置と、乗客有無検知装置から乗客有無検知結果と秤値を受け、これらに基づき前記エレベータの乗客数を検知する人数検知手段と、を備える。乗客有無検知装置が“無”と判定した場合に人数検知手段が乗客数を0にすれば、繰り返し乗車数や降車数を検知することによる検知精度の低下を防ぐことが出来る。
又、人数検知装置2はエレベータのドアを通過する人数を検知するドア計測手段22を備え、人数検知手段21は、ドア計測手段22が検知した通過人数と、乗客有無検知装置1の乗客有無検知結果と秤値に基づきエレベータの乗客数を検知する。これにより、乗客数を正確に検知することが出来る。
さらに、人数検知手段21は、秤値の時間差分データの凸型波形を積分し、積分値に応じて乗車人数及び降車人数を検知することによりエレベータの乗客数を検知する手段であって、積分値が所定の閾値以上であれば、乗車人数と降車人数のいずれか一方の最小値を2以上とする。これにより、エレベータの乗客数を多めあるいは少なめにカウントすることが出来る。
又、人数検知手段21は、乗車/降車動作の回数からエレベータの乗客数の検知精度を推定する。これにより、精度の低い検知結果を出力することを避けることができる。
さらに、人数検知手段21は、エレベータ内の人数の検知精度が低いとき、エレベータ内の人数を“不明”と出力することを特徴とする。これにより、本実施の形態の人数検知装置2を利用する装置/システムは、エレベータ内の人数が“不明”と判定されたときの動作、すなわちエレベータ内の人数の検知精度が低いときの動作を、予め定めておくことができ、誤ったエレベータ内の人数を利用することで、誤って動作してしまう可能性を低減することができる。
(実施の形態3)
<構成>
本実施の形態の暴れ検知装置は、実施の形態2の人数検知装置1を利用し、エレベータ内の乗客が暴れていることをより正確に検知することが出来る暴れ検知装置である。
図18は、この発明の実施の形態3に係る暴れ検知装置3の構成を示すブロック図である。暴れ検知装置3は、実施の形態2に記載の人数検知装置2と暴れ検知手段31を備える。人数検知手段21は、図8にその構成を示した実施の形態2の人数検知装置と同じものである。それで、人数検知装置2の構成要素である各手段は暴れ検知装置3にも含まれている。また、人数検知装置2の構成要素である有無検知装置1は、図1に示した実施の形態1の有無検知装置1と同じものであり、その構成要素である各手段も暴れ検知装置3に含まれている。
乗客有無検知装置1に含まれる計測手段11、人数検知装置に含まれるドア計測手段22を除き、各手段はマイクロコンピュータ上のソフトウェアによって構成されている。
暴れ検知手段31は、カメラの撮影画像を基に、エレベータ内の乗客の暴れ動作を検知する。
<動作>
次に、暴れ検知装置3の動作について記載する。図19は、本実施の形態3に係る暴れ検知装置3の動作を示すフローチャートである。図19に示すステップST301からステップST311までの動作は、図9に示すステップST201からステップST211までの動作と同一であるので、説明を省略する。
ステップST312において暴れ検知手段31は、人数検知装置2からエレベータ内が“0人”か、“1人”か、“2人以上”か、あるいは“不明”か、を取得した上で例えば特開2006−276969記載の方法によって暴れを検知する。具体的には、撮影時刻が異なる2枚の画像から画像内の各点の動きの向きや大きさを算出し、人物の動きの向きや大きさのばらつき量から暴れを検知する。暴れ検知手段31は、人数検知装置2から取得したエレベータ内の乗客数が0人か1人であった場合、暴れではないと判断する。
すなわち、実施の形態2の人数検知装置2と、暴れ検知装置3はエレベータ内の撮影画像を解析してエレベータ内の暴れ動作を検知する暴れ検知手段31と、を備え、暴れ検知手段31は、前記人数検知装置がエレベータの乗客数を2人以上と検知した場合にのみ、暴れ動作の検知を行う。人数検知装置2によってエレベータ内の乗客が0人、または1人と検知された場合に暴れではないと判断するため、より正確に暴れを検知できる。その結果、必要以上にエレベータを各階で停止・戸開するような運行が改善され、乗客の利便性が向上する。
このような方法によれば、実際のエレベータ内の人数が2人であるにも係らず人数検知装置2が1人と過少に検知した場合に、暴れを検知することができなくなってしまうという問題がある。しかし人数検知装置2は、実施の形態2で説明したようにエレベータ内の乗客数を多めに数えるように設定することができるため、そのように設定すればエレベータ内の人数が過少に検知されることを低減し、暴れ検知を必要以上に阻害せずに運行を改善し、乗客の利便性を向上することができる。
また、人数検知装置2によるエレベータ内の人数の検知精度が低いときには、人数検知装置2はエレベータ内の人数を“不明”と出力するため、実際のエレベータ内の人数が2人であるにも係らずエレベータ内の人数を1人と過少に検知し、それによって暴れを検知することができなくなってしまう、という問題を低減することができる。