JP5354741B2 - 睡眠改善剤 - Google Patents

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Description

本発明は、新規な睡眠改善剤に関し、詳しくは睡眠を改善する睡眠改善剤に関する。
現代社会ではストレスや24時間型の生活習慣から不眠に悩む人が増加する傾向にある。厚生労働省で2003年から始まった「健康づくりのための睡眠指針検討会」の報告では、「不眠で困っている人」の割合は21.4%にのぼり、深刻な問題となっている。従って快適な睡眠を望む人はこれまで以上に増加し、それと平行して不眠を改善する薬の需要は今後益々高まると考えられる。現在様々な睡眠薬が使用されているが、これらの多くは覚醒後の頭痛、不快感、身体依存などの副作用がみられるため、必ずしも自然な睡眠を得られるとはいえない。従って、より快適な睡眠を得られる治療薬の開発は重要な事項である。
日本や中国などで古くから用いられている生薬、漢方薬の中には、不眠に処方されているものが多くあるが、日本では沖縄において、民間薬としてユリ科植物アキノワスレグサ(Hemerocallis fulva L. var. sempervirens)の根や葉を不眠の際に食することが知られている。このアキノワスレグサは、通称ニーブイグサ(眠くなる草の意)とも呼ばれ、根や葉を生体のまま、または煎じるなどして不眠の際に服用されている。これまでに、この植物の乾燥粉末をマウスに経口摂取させた際の睡眠増加作用が報告されている(非特許文献1)。また特許文献1には、アキノワスレグサを発酵処理させて得られる発酵処理物に睡眠改作用があることが記載されている。しかし、これらの報告において、本植物中の睡眠調節活性成分は明らかにされていない。
Uezu,E."Effect of Hemerocallis on sleep in mice" Psychiatry Clin. Neurosci. 1998,52(2),136−137. 特開2006−62998号公報
本発明は、新規な睡眠改善剤および鎮静剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために有効成分を検討したところ、沖縄で自生しているユリ科植物アキノワスレグサ(Hemerocallis fulva L. var. sempervirens)の成分であるオキシピナタニンに鎮静および睡眠効率の改善に効果があることを見出し、かかる知見に基づいて、本発明を完成させたものである。
即ち、本発明は、以下の睡眠改善剤および鎮静剤に関する。
項1.以下の化学式I:
Figure 0005354741
で表されるオキシピナタニンまたはその誘導体を有効成分として含む睡眠改善剤。
項2.以下の化学式I:
Figure 0005354741
で表されるオキシピナタニンまたはその誘導体の睡眠効率を改善するための使用。
項3.以下の化学式I:
Figure 0005354741
で表されるオキシピナタニンまたはその誘導体を有効成分として含む鎮静剤。
項4.以下の化学式I:
Figure 0005354741
で表されるオキシピナタニンまたはその誘導体の鎮静するための使用。
本発明によれば、アキノワスレグサの成分であるオキシピナタニンを摂取することで、睡眠を改善することが出来る。特に本発明の睡眠改善剤は、ノンレム睡眠を有意に延長することができる。また、本発明の睡眠改善剤は、優れた睡眠改善作用に加え、優れた鎮静作用をも有しているので、鎮静剤としても有用である。
オキシピナタニンをラットに100mg/kg経口投与した時とビーグルのみを投与した時のノンレム睡眠(NREM sleep)に対する効果を示す。 オキシピナタニンをマウスに100mg/kg経口投与した時とビーグルのみを投与した時の投与後の(A)運動量の変化および(B)合計運動量を示す。 オキシピナタニンをマウスに10mg/kg経口投与した時とビーグルのみを投与した時の睡眠覚醒量の変化を示す。
本発明において、「睡眠改善剤」とは、起床時の眠気を改善する、入眠をスムーズにする、中途覚醒を減らす等の作用によって、安眠を誘発して良好な睡眠状態を導くために使用されるものである。また、本発明において、「鎮静剤」とは、人や動物の精神を鎮静させることにより、リラックスさせ、又は睡眠を改善させるために使用されるものである。
本発明の睡眠改善剤は、下記化学式(I):
Figure 0005354741
で表されるオキシピナタニンまたはその誘導体を有効成分として含むものである。
本発明のオキシピナタニンまたはその誘導体の製造方法は、限定はされないが、例えば、植物、具体的には沖縄の薬用植物であるアキノワスレグサ(Hemerocallis fulva L. var. sempervirens)を原料として抽出単離することによって調製することができる。
アキノワスレグサからオキシピナタニンを単離調製する場合、原料として使用するアキノワスレグサは、全草であってもまたその一部であってもよい。当該オキシピナタニンの調製は、制限はされないが、例えばアキノワスレグサの全草またはその一部を、有機溶媒を含む溶媒で抽出および分画する工程を経て行うことができる。
例えば、生のアキノワスレグサの全草を細かくし、有機溶媒で室温にて5日〜3週間ほど抽出し、その後、これらを濾過して濾液を濃縮し、得られた溶媒抽出物を、各種カラムクロマトグラフィーを組み合わせて分離することにより、本発明のオキシピナタニンを得ることができる。ここで、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール、アセトン、酢酸エチル、クロロホルムなどが挙げられる。好ましい有機溶媒は、メタノール、エタノール、ブタノール、クロロホルムなどである。さらに、水、および水とこれら有機溶媒との混液などで抽出することも可能である。また、カラムクロマトグラフィーとしては、オープンカラムクロマトグラフ、高速液体クロマトグラフ(HPLC)、分取リサイクルHPLCなどが挙げられ、それらに各種カラムクロマトグラフ用の担体(順相シリカゲル、逆相シリカゲル(ODS)、ゲル濾過(Sephadex)、イオン交換樹脂 (Diaion HP−20))などを組み合わせることができる。好ましいカラムクロマトグラフィーの組み合わせとしては、オープンカラムクロマトグラフにはイオン交換樹脂(Diaion HP−20)、順相シリカゲル、逆相シリカゲル(ODS)、ゲル濾過(Sephadex、GS)などであり、分取リサイクルHPLCにはゲル濾過(Sephadex、GS)、HPLCには逆相シリカゲル(ODS)などが挙げられる。
なお、本発明の睡眠改善剤の有効成分として用いられるオキシピナタニンには、上記化学式(I)に包括的に含まれる構造異性体も含まれる。
本発明の睡眠改善剤は、上記化学式(I)で表されるオキシピナタニンまたはその誘導体のみから構成されていてもよいが、使用形態に応じて、担体、基材又は添加物等の他の成分を含有していてもよい。本発明の睡眠改善剤において、上記化学式(I)で表されるオキシピナタニンまたはその誘導体の配合割合としては、該睡眠改善剤の使用形態、期待される効果の程度、使用者の性別や年齢等によって異なるが、一例として、該睡眠改善剤の総重量に対して、化学式(I)で表されるオキシピナタニンまたはその誘導体が0.01〜100重量%、好ましくは0.1〜10重量%となる割合が挙げられる。
本発明の睡眠改善剤は、医薬、食品等などとして用いることができる。
本発明の睡眠改善剤の投与形態・剤型は、経口投与、非経口投与のいずれでもよく、経口投与剤としては、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤、チュアブル剤などの固形剤、溶液剤、シロップ剤などの液剤が、また、非経口投与剤としては、注射剤、スプレー剤などが挙げられる。好ましい投与形態は、錠剤およびカプセル剤などによる経口投与である。
本発明の睡眠改善剤は、公知の製剤化方法、特に経口摂取に適した製剤化技術を使用して製剤化することができる。
例えば、本発明の睡眠改善剤を医薬として用いる場合、当該医薬組成物は活性成分として遊離または酸付加塩の形態にある有効な量のオキシピナタニンまたはその誘導体を、医薬的に受容しうる担体と均一に混合することにより製造できる。この担体は投与に対して望ましい製剤の形態に応じて、広い範囲の形態を取ることができる。これらの医薬組成物は、経口投与に対して適する単位服用形態にあることが望ましい。経口服用形態にある組成物の調製においては、何らかの有用な薬理的に受容しうる担体が使用できる。例えば、懸濁液及びシロップ剤の如き経口液体調製物は水、シュクロース、ソルビトール、フラクトース等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ゴマ油、オリーブ油、大豆油等の油類、アルキルパラヒドロキシベンゾエート等の防腐剤、ストロベリー・フレーバー、ペパーミント等のフレーバー類を使用して製造できる。
散剤、丸薬、カプセルおよび錠剤はラクトース、グルコース、シュクロース、マニトール等の賦形剤、デンプン、アルギン酸ソーダ等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の表面活性剤、グリセリン等の可塑剤を用いて製造できる。錠剤およびカプセルが、投与が容易であるという理由で最も有用な単位経口投与剤である。錠剤やカプセルを製造する際には、固体の医薬担体が用いられる。
本発明の睡眠改善剤を経口投与する場合、その有効投与量は、対象患者の年齢・体重・病態、投与方法などによっても異なるが、通常、有効成分(オキシピナタニンまたはその誘導体)を1〜10000mg/kg/日程度、好ましくは10〜1000mg/kg/日程度となるように投与する。また、その投与時期は通常就寝前の1〜6時間であり、より好ましくは2〜5時間である。
以下に、本発明を具体的に説明するため、本発明の睡眠改善剤の有効成分であるオキシピナタニンの製造例、本発明の睡眠改善剤および鎮静の効果を明確にするために実施例、並びに本発明の睡眠改善剤の製剤例を記載する。但し、本発明は、これらの実施例等により何ら限定されるものではない。
実施例1
オキシピナタニンの製造方法
生のアキノワスレグサの全草を細かくし、メタノールを溶媒として室温で一週間抽出した。その後、これらを濾過して濾液を濃縮し、得られた固体(以下「メタノール抽出物」と呼ぶ)を、オープンカラムクロマトグラフにはイオン交換樹脂 (Diaion HP−20)、順相シリカゲル、ゲル濾過(Sephadex、GS)を組み合わせ、分取リサイクルHPLCにはゲル濾過(Sephadex、GS)を組み合わせて分離を行い、オキシピナタニンを得た。
オキシピナタニンについて得られたデータ結果は以下の通りである。
・無色針状結晶(H2O−MeOH);mp 152−153℃(decomp.);IR(KBr)vmax 3350, 1660, 1615, 1504 cm-1
1 H NMR(D 2 O,400MHz)δ:6.40(1H,m,2’),6.19(1H,ddd,J=4,4,2Hz,4’),5.63(1H,dddd,J=14,4,4,2Hz,5’),4.74(1H,dddd,J=14,4,4,2Hz,5’),4.34(1H,dd,J=9,4Hz,3),4.26(1H,dd,J=14,2Hz,6’),4.18(1H,dd,J=14,2Hz,6’),3.98(1H,dd,7,4Hz,5),2.34(1H,ddd,J=15,7,4Hz,4),2.22(1H,ddd,J=15,9,4Hz,4).
13 C NMR(D 2 O,100MHz)δc:178.7(2),175.9(6),138.6(3’),129.1(4’),87.5(2’),76.6(5’),71.7(3),58.9(6’),55.2(5).
試験例1
1.方法
1)使用動物
Sprague−Dawleyラット(オス、生後8週、体重250−280g)を日本エスエルシー株式会社より購入した。
2)飼育方法
ラットは防音チャンバー内に設置したアクリル製ゲージで個別に管理した。12時間ごとの明暗周期(午前7時より明期開始)下で、ラット用固定型飼料(飼料名:ラボMRストック)を与え、飼料と水を自由に摂取させた。
3)脳波・筋電位測定用電極の処理手術と測定装置への接続
ラットに脳波・筋電位測定用の電極の処理手術(Huang Z.L.et al.,J.Neurosci.2003,23(14),5975−83.,Okada T.et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.2003,312(1),29−34.)を実施し、回復用チャンバーに10日間おいて回復させた。その後、記録用チャンバーに移して電極に測定用ケーブルを接続し、4日間順応させた。
4)サンプル投与
オキシピナタニンを水に溶解させ、投与用量100mg/kgでゾンデ針を用いて経口投与した。投与は19:00(暗期の開始時刻)に行い、1日目は溶媒単独のコントロールとして、水のみを投与し、2日目にオキシピナタニンを投与した(n=6)。
5)脳波・筋電位の記録と解析
脳波および筋電位は増幅(脳波:0.5−30Hz、筋電位:20−200Hz)後、サンプリング速度:128Hzでデジタル化して記録した。解析は脳波記録ソフトウェア‘Sleep Sign’(キッセイコムテック社製)を用いて、10秒間のデータを1エポックとし、脳波と筋電位の周波数成分・波形によって、各エポックを覚醒、ノンレム睡眠、レム睡眠のいずれかに自動判定した。得られた判定結果は最終的に実験者自身が確認し必要に応じて修正を行った。投与後12時間にわたる脳波データを解析し、1時間毎の覚醒、ノンレム睡眠、レム睡眠の時間を算出した。また、脳波のパワースペクトルを解析して、シータ波、およびデルタ波の強さを解析した。
2.結果
投与後6時間におけるノンレム睡眠の合計時間
投与用量100mg/kgにおいて、ビーグル(水)投与時に比べてノンレム睡眠時間を延長する効果が見られた(図1)。
試験例2
1.方法
1)使用動物
Slc:ICRマウス(オス、生後10週、体重38−40g)を日本エスエルシー株式会社より購入した。
2)飼育方法
動物行動量測定用チャンバーに設置したアクリル製ケージでグループ飼育し(8匹ずつ)、7日間馴化させる。12時間ごとの明暗周期下(午前7時より明期開始)で、ラット用固形型飼料(飼料名:ラボMRストック)を与え、飼料と水を自由に摂取させる。
3)サンプル投与
オキシピナタニンを水に溶解させ、投与重量100mg/kgでゾンデ針を用いて経口投与した。投与は19:00(暗期の開始時刻)に行い、1日目は溶媒単独のコントロールとして、水のみを投与し、2日目にオキシピナタニンを投与した(n=8)。
4)ロコモーターアッセイ(運動量)の記録と解析
赤外線モニターを用い、動物から放出される赤外線を検出して運動量をカウントした。赤外線モニターは連続して12時間記録した。記録はBiotex 16CH Act Monitor BAI2216(バイオテックス社製)を用い、行った。解析は運動量の経時的変化と各時間での合計運動量を算出した。
2.結果
投与後6時間における合計運動量
投与量100mg/kgにおいて、ビーグル(水)投与時に比べて統計的に有意な運動量の減少が見られた(図2)。
試験例3
1.方法
1)使用動物
C57BL/6マウス(オス、生後10週、体重25-28g)を株式会社オリエンタルバイオサービスより購入した。
2)飼育方法
マウスは防音チャンバー内に設置したアクリル製ゲージで個別に管理した。12時間ごとの明暗周期(午前8時より明期開始)下でマウス用固定型飼料(飼料名:ラボMRストック)を与え、飼料と水を自由に摂取させた。
3)脳波・筋電位測定用電極の処理手術と測定装置への接続
マウスに脳波・筋電位測定用の電極の処理手術を実施し、回復用チャンバーに10日間おいて回復させた。その後、記録用チャンバーに移して電極に測定用ケーブルを接続し、4日間順応させた。
4)サンプル投与
オキシピナタニンを水に溶解させ、投与用量10 mg/kgでゾンデ針を用いて経口投与した。投与は20:00(暗期の開始時刻)に行い、1日目は溶媒単独のコントロールとして、水のみを投与し、2日間おいてオキシピナタニンを投与した(n=4)。
5)脳波・筋電位の記録と解析
脳波および筋電位は増幅(脳波:0.5-30 Hz、筋電位:20-200 Hz)後、サンプリング速度:128 Hzでデジタル化して記録した。解析は脳波記録ソフトウェア‘Sleep Sign’(キッセイコムテック社製)を用いて、10秒間のデータを1エポックとし、脳波と筋電位の周波数成分・波形によって、各エポックを覚醒、ノンレム睡眠、レム睡眠のいずれかに自動判定した。得られた判定結果は最終的に実験者自身が確認し必要に応じて修正を行った。投与後12時間にわたる脳波データを解析し、1時間毎の覚醒、ノンレム睡眠、レム睡眠の時間を算出した。また、脳波のパワースペクトルを解析して、シータ波、およびデルタ波の強さを解析した。
2.結果
投与後4時間におけるノンレム睡眠の合計時間
投与用量10 mg/kgにおいて、水投与時に比べて統計的に有意にノンレム睡眠時間を延長する効果が見られた(図3)。
製剤例1:錠剤
常法によって、次の組成により錠剤を調製する。
オキシピナタニン 200mg
乳糖 60mg
バレイショデンプン 30mg
ポリビニルアルコール 2mg
ステアリン酸マグネシウム 1mg
タール色素 微量
製剤例2:散剤
常法によって、次の組成により散剤を作成する。
オキシピナタニン 200mg
乳糖 275mg
本発明のオキシピナタニンは睡眠改善剤および鎮静剤として用いることができる。

Claims (2)

  1. 以下の化学式I:
    Figure 0005354741
    で表されるオキシピナタニンまたはその酸付加塩を有効成分として含む睡眠改善剤。
  2. 以下の化学式I:
    Figure 0005354741
    で表されるオキシピナタニンまたはその酸付加塩を有効成分として含む鎮静剤
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