ところで、車両の操舵装置には、ステアリングホイールを回転させる方向への操作とは別に、ステアリングホイールの回転軸を傾斜させたり、ステアリングホイールを回転軸方向に押し引きすることで、ステアリングホイールを回転させる方向への操作による操舵の応答性を変更するような装置も提案されている。ところが、このような2以上の操作方向を持つ操舵装置において、それぞれの操作系について故障の有無を検出しようとすると、操作系ごとに上記技術のようなセンサが必要となり、装置が複雑化する問題がある。
本発明は、このような実情に考慮してなされたものであり、その目的は、より簡単な構成により故障を判定することが可能な操舵装置を提供することにある。
本発明は、自車両のドライバーの第1方向への操作及び第1方向への操作とは異なる動作による第2方向への操作の少なくともいずれかにより自車両の操舵を行なう操舵ユニットと、第1方向への操作による入力値及び第1方向への操作による入力値の変化の少なくともいずれかと、第2方向への操作による入力値及び第2方向への操作による入力値の変化の少なくともいずれかとに基づいて、操舵ユニットが故障していると判定する故障判定ユニットとを備えた操舵装置である。
この構成によれば、操舵ユニットは、自車両のドライバーの例えばステアリングホイールを回転させる方向である第1方向への操作及び例えばステアリングホイールを傾斜させる方向又は押し引きする方向である第2方向への操作の少なくともいずれかにより自車両の操舵を行なう。また、故障判定ユニットは、ステアリングホイールを回転させる方向である第1方向への操作による入力値及び第1方向への操作による入力値の変化の少なくともいずれかと、ステアリングホイールを傾斜させる方向等の第2方向への操作による入力値及び第2方向への操作による入力値の変化の少なくともいずれかとに基づいて、操舵ユニットが故障していると判定する。これにより、第1方向への操作に係る操作系及び第2方向への操作に係る操作系それぞれに故障を判定する機能を備えなくとも、ステアリングホイールを回転させる方向と傾斜させる方向といった2以上の操作方向への操作の入力値に基づいて故障の判定を行うことが可能となる。なお、本発明における「第1方向への操作とは異なる動作による第2方向の操作」とは、ステアリングホイールを回転させる方向への操作、ステアリングホイールを傾斜させる方向への操作及び押し引きする方向への操作のように異なる種類の動作による操作を意味し、ステアリングホイールを右方向に回転させる操作及び左方向に回転させる操作のように、同じ種類の動作であって方向のみが互いに反対方向であるものを含まないものとする。
この場合、故障判定ユニットは、第2方向への操作による入力値が所定の閾値を超えている場合において、第1方向への操作による入力値が所定の閾値以下である場合及び第1方向への操作による入力値の変化が所定の閾値以下である場合のいずれかの場合に操舵ユニットが故障していると判定することが好適である。
この構成によれば、故障判定ユニットは、ステアリングホイールを傾斜させる方向等の第2方向への操作による入力値が所定の閾値を超えるほど大きく、0では無い場合において、ステアリングホイールを回転させる第1方向への操作による入力値が所定の閾値以下と小さい場合及び第1方向への操作による入力値の変化が所定の閾値以下と変化が小さい場合のいずれかの場合に操舵ユニットが故障していると判定する。ステアリングホイールを傾斜させる等の操作がなされているときに、ステアリングホイールを回転させる等の操作があまりなされていない可能性は自車両が走行中であれば低いため、故障判定ユニットは操舵ユニットが故障していると判定することができる。
この場合、故障判定ユニットは、第2方向への操作による入力値が所定の閾値を超えており且つ第2方向への操作による入力値の変化が所定の閾値以下である場合において、第1方向への操作による入力値の変化が所定の閾値以下である場合に操舵ユニットが故障していると判定することが好適である。
この構成によれば、故障判定ユニットは、ステアリングホイールを傾斜させる等の第2方向への操作による入力値が所定の閾値を超えて大きく且つ第2方向への操作による入力値の変化が所定の閾値以下と変化が小さい場合において、ステアリングホイールを回転させる等の第1方向への操作による入力値の変化が所定の閾値以下と変化が小さい場合に操舵ユニットが故障していると判定する。ステアリングホイールを傾斜させる等の操作はなされているがその変化は少ないときに、ステアリングホイールを回転させる等の操作の変化が小さい可能性は自車両が走行中であれば低いため、故障判定ユニットは操舵ユニットが故障していることを判定することができる。
この場合、故障判定ユニットは、第2方向への操作による入力値が所定の閾値を超えており、第2方向への操作による入力値が入力可能な最大値ではなく、且つ第2方向への操作による入力値の変化が所定の閾値以下である場合において、第1方向への操作による入力値の変化が所定の閾値以下である状態が所定の時間以上継続した場合に操舵ユニットが故障していると判定することが好適である。
この構成によれば、故障判定ユニットは、ステアリングホイールを傾斜させる等の第2方向への操作による入力値が所定の閾値を超えて大きいが、第2方向への操作による入力値が入力可能な最大値ではなく、且つ第2方向への操作による入力値の変化が所定の閾値以下と変化が小さい場合において、ステアリングホイールを回転させる等の第1方向への操作による入力値の変化が所定の閾値以下と変化が小さい状態が所定の時間以上継続した場合に操舵ユニットが故障していると判定する。ステアリングホイールを傾斜させる等の操作はなされているが、最大に傾斜させられているのではなく、その変化は小さいときに、ステアリングホイールを回転させる操作に変化が少なく保舵状態で維持されている状態が長時間継続する可能性は自車両が走行中であれば極めて低いため、故障判定ユニットは操舵ユニットが故障していることを精度良く判定することができる。
また、故障判定ユニットは、第2方向への操作による入力値が所定の閾値を超えており、第2方向への操作による入力値が入力可能な最大値ではなく、且つ第2方向への操作による入力値の変化が所定の閾値以下である場合において、第1方向への操作による入力値の変化が所定の閾値を超えている場合に操舵ユニットが故障していると判定することが好適である。
この構成によれば、故障判定ユニットは、ステアリングホイールを傾斜させる等の第2方向への操作による入力値が所定の閾値を超えて大きいが、第2方向への操作による入力値が入力可能な最大値ではなく、且つ第2方向への操作による入力値の変化が所定の閾値以下と変化が小さい場合において、ステアリングホイールを回転させる等の第1方向への操作による入力値の変化が所定の閾値を超えて大きい場合に操舵ユニットが故障していると判定する。ステアリングホイールを傾斜させる等の操作はなされているが、最大に傾斜させられているのではなく、その変化は小さいときに、ステアリングホイールを回転させる操作の変化のみが大きい可能性は自車両が走行中であれば極めて低いため、故障判定ユニットは操舵ユニットが故障していることを精度良く判定することができる。
また、故障判定ユニットは、第2方向への操作による入力値が所定の閾値以下であり、且つ第2方向への操作による入力値の変化が所定の閾値を超えている状態が所定の時間以上継続した場合に操舵ユニットが故障していると判定することが好適である。
この構成によれば、故障判定ユニットは、ステアリングホイールを傾斜させる等の第2方向への操作による入力値が所定の閾値以下と小さく且つ第2方向への操作による入力値の変化が所定の閾値を超えて大きい状態が所定の時間以上継続した場合に操舵ユニットが故障していると判定する。ステアリングホイールを回転させる操作に関わらず、ステアリングホイールを傾斜させる等の操作の入力値は小さいにも関わらず、その変化は大きい状態が継続する可能性は極めて低いため、故障判定ユニットは操舵ユニットが故障していることを精度良く判定することができる。
一方、操舵ユニットにおける第1方向への操作は、自車両の操舵角を規定するための操作であり、操舵ユニットにおける第2方向への操作は、第1方向への操作の応答性を規定するための操作であることが好適である。
この構成によれば、操舵ユニットにおける第1方向への操作は、自車両の操舵角を規定するための主操作であり、操舵ユニットにおける第2方向への操作は、第1方向への操作の応答性を規定するための副操作であるため、上記本発明の構成により、副操作に基づいて故障判定ユニットが操舵ユニットの故障を判定し易くなる。
さらに、操舵ユニットにおける第1方向への操作は、自車両のステアリングホイールを回転させる方向への操作であり、操舵ユニットにおける第2方向への操作は、自車両のステアリングホイールの回転軸を傾斜させる方向及び自車両のステアリングホイールをその回転軸方向に沿って進退動させる方向のいずれかの方向への操作であることが好適である。
この構成によれば、操舵ユニットにおける第1方向への操作は、自車両のステアリングホイールを回転させる方向への操作であり、操舵ユニットにおける第2方向への操作は、自車両のステアリングホイールの回転軸を傾斜させる方向及び自車両のステアリングホイールをその回転軸方向に沿って進退動させる方向のいずれかの方向への操作であるため、自車両のドライバーが操舵ユニットを異なる操作方向に操作し易くなる。
本発明の操舵装置によれば、操作系それぞれに故障を判定する機能を備えなくとも、2以上の操作方向への操作の入力値に基づいて故障の判定を行うことが可能となる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る操舵装置について説明する。図1に示すように、本発明の第1実施形態の操舵装置10は、ステアリングホイール12と前輪タイヤ50とを機械的に分離したステアバイワイヤ方式を採用している。図1及び図2に示すように、ステアリングホイール12は、その回転軸周りに回転させる主操作方向Mへの操作が可能とされている。また、ステアリングホイール12は、ステアリングホイール12の回転軸を傾斜させる副操作方向Sb1への操作及びステアリングホイール12をその回転軸方向に沿って進退動させる副操作方向Sb2への操作が可能とされている。
図1に示すように、ステアリングホイール12の回転軸には、ステアリングホイール12の回転軸の傾斜角を検出する傾斜角検出センサ14が取り付けられている。また、ステアリングホイール12の回転軸には、ステアリングホイール12の回転軸に平行な方向への押し込み量及び引き寄せ量を検出する押し込み量検出センサ16が取り付けられている。また、ステアリングホイール12の回転軸には、ステアリングホイール12の回転軸周りの回転角度を検出するステアリング角検出センサ18が取り付けられている。
傾斜角検出センサ14、押し込み量検出センサ16及びステアリング角検出センサ18の検出値はECU(Electronic Control Unit)20に送出される。ECU20は、積算器21、微分器22、ローパスフィルタ23、積算器24、微分器25、ローパスフィルタ26、積算器27、フェイル判定部28及びタイヤ角制御部29を備えている。
傾斜角検出センサ14及び押し込み量検出センサ16により検出された副操作方向Sb1,Sb2への入力値は、積算器21により一定時間積算されてフェイル判定部28に送出される。また、傾斜角検出センサ14及び押し込み量検出センサ16により検出された副操作方向Sb1,Sb2への入力値は、微分器22によりその変化分を抽出される。副操作方向Sb1,Sb2への入力値の変化分は、ローパスフィルタ23によりノイズ成分を除去される。ノイズ成分を除去された副操作方向Sb1,Sb2への入力値の変化分は、積算器24により一定時間積算されてフェイル判定部28に送出される。
ステアリング角検出センサ18により検出された主操作方向Mへの入力値は、微分器25によりその変化分を抽出される。主操作方向Mへの入力値の変化分は、ローパスフィルタ26によりノイズ成分を除去される。ノイズ成分を除去された主操作方向Mへの入力値の変化分は、積算器27により一定時間積算されてフェイル判定部28に送出される。
フェイル判定部28は、後述するように主操作方向Mへの入力値の変化分と、副操作方向Sb1,Sb2への入力値及び入力値の変化分とに基づいて操舵系の故障を判定する部位である。
タイヤ角制御部29は、傾斜角検出センサ14及び押し込み量検出センサ16により検出された副操作方向Sb1,Sb2への入力値と、ステアリング角検出センサ18により検出された主操作方向Mへの入力値とに基づいて、タイヤ角変動用モータ31を駆動し、タイヤ角センサ32によりタイヤ角を検出しつつ、前輪タイヤ50を所定のタイヤ角にする操舵を行なう。
本実施形態では、タイヤ角制御部29は、ステアリングホイール12を回転軸回りに回転動させる主操作方向Mへの入力値により、前輪タイヤ50のタイヤ角を規定する。後輪タイヤによっても操舵を行なわれる場合は、タイヤ角制御部29は主操作方向Mへの入力値により後輪タイヤのタイヤ角を規定しても良い。また、タイヤ角制御部29は、ステアリングホイール12の回転軸を傾斜させ、ステアリングホイール12の回転軸を押し引きする副操作方向Sb1,Sb2への入力値により、主操作方向Mへの入力値に対する操舵ギア比、操舵アシスト等の操舵応答性を規定する。後輪タイヤによっても操舵を行なわれる場合は、タイヤ角制御部29は、副操作方向Sb1,Sb2への入力値により、主操作方向Mへの入力値に対する後輪操舵比を決定しても良い。
以下、本実施形態の操舵装置10の動作について説明する。図3に示すように、自車両のイグニションスイッチがONとなると、操舵装置10の動作が、イグニションスイッチがOFFとなるまで実行される(S101)。操舵装置10のフェイル判定部28が、配線の断線を直接検出した場合には(S102)、フェイル判定部28はフェイルモードに移行する(S114)。フェイルモードでは、ドライバーに所定の警告がなされ、タイヤ角制御部29は安全性が重視され制限された条件での操舵を行なう。
ステアリングホイール12を回転軸回りに回転動させる主操作方向Mへの主操作出力の絶対値の有無及び変化の有無と、ステアリングホイール12の回転軸を傾斜させ、ステアリングホイール12の回転軸を押し引きする副操作方向Sb1,Sb2への副操作出力の絶対値の有無及び変化の有無とは、図4に示すような組合せが考えられる。
この中で、ステアリングホイール12の回転軸を傾斜させる等の副操作方向Sb1,Sb2への副操作出力の絶対値が0ではないがその変化が無い状態において、ステアリングホイール12を回転軸回りに回転動させる主操作方向Mへの主操作出力の絶対値が0であり、その変化も0である状態(図4の項目C)、すなわちステアリングホイール12の回転動が全くなされていない状態は、走行中には可能性が極めて低い。
同様に、ステアリングホイール12の回転軸を傾斜させる等の副操作方向Sb1,Sb2への副操作出力の絶対値が0ではないがその変化が無い状態において、ステアリングホイール12を回転軸回りに回転動させる主操作方向Mへの主操作出力の絶対値は0ではないが、その変化も0である状態(図4の項目K)、すなわちステアリングホイール12がある角度まで回されたままで保舵された状態は、走行中には可能性が極めて低い。そのため、本実施形態では、図4の項目C,Kの状態を検出することにより、操舵装置10の故障を判定する。なお、本実施形態において、絶対値や変化が0とは、実質的に0である状態を意味し、センサへのノイズ等の外乱により微小な値が検出されているが実質的に0である状態を含むものとする。
図3に戻り、操舵装置10のECU20の微分器25は、ステアリングホイール12を回転軸回りに回転動させる主操作方向Mへの主操作出力を微分し、変化分を抽出する(S103)。ECU20のローパスフィルタ26は、主操作出力の変化分のノイズ成分を除去する(S104)。ECU20の積算器27は、ノイズ成分を除去された主操作出力の変化分を一定時間積算する(S105)。フェイル判定部28は、主操作出力の変化が0でないときは(S106)、図4の項目C,Kに該当しないため、通常動作を行う(S113)。
主操作出力の変化が0である状態において(S106)、ECU20の積算器21は、ステアリングホイール12の回転軸を傾斜させる等の副操作方向Sb1,Sb2への副操作出力を一定時間積算する(S107)。フェイル判定部28は、副操作出力が0のときは(S108)、図4の項目C,Kに該当しないため、通常動作を行う(S113)。
副操作出力が0ではない状態において(S108)、ECU20の微分器22は、副操作さ方向Sb1,Sb2への副操作出力を微分し、変化分を抽出する(S109)。ECU20のローパスフィルタ23は、副操作出力の変化分のノイズ成分を除去する(S110)。ECU20の積算器24は、ノイズ成分を除去された主操作出力の変化分を一定時間積算する(S111)。フェイル判定部28は、副操作出力の変化が0でないときは(S112)、図4の項目C,Kに該当せず、ドライバーが操作中であると考えられるため(図4の項目D,L)、通常動作を行う(S113)。一方、フェイル判定部28は、副操作出力の変化が0であるときは(S112)、図4の項目C,Kに該当するため、フェイルモードに移行する(S114)。
本実施形態においては、操舵装置10のタイヤ角制御部29は、自車両のドライバーのステアリングホイール12を回転させる方向である主操作方向Mへの操作及びステアリングホイール12を傾斜させる方向又は押し引きする方向である副操作方向Sb1,Sb2への操作により自車両の操舵を行なう。また、フェイル判定部28は、主操作方向Mへの操作による入力値の変化と、副操作方向Sb1,Sb2への操作による入力値及びその変化とに基づいて、操舵装置10が故障していると判定する。これにより、主操作方向Mへの操作に係る操作系及び副操作方向Sb1,Sb2への操作に係る操作系それぞれに故障を判定する機能を備えなくとも、ステアリングホイール12を回転させる方向と傾斜させる方向といった2以上の操作方向への操作の入力値に基づいて故障の判定を行うことが可能となる。
また、本実施形態においては、フェイル判定部28は、ステアリングホイール12を傾斜させる方向等の副操作方向Sb1,Sb2への操作による入力値があり、0では無い場合において、ステアリングホイール12を回転させる主操作方向Mへの操作による入力値の変化が0の場合に操舵装置10が故障していると判定する。ステアリングホイール12を傾斜させる等の操作がなされているときに、ステアリングホイールを回転させる操作があまりなされていない可能性は自車両が走行中であれば低いため、フェイル判定部28は操舵装置10が故障していると判定することができる。
特に、本実施形態では、フェイル判定部28は、ステアリングホイール12を傾斜させる等の副操作方向Sb1,Sb2への操作による入力値が0では無く且つ副操作方向Sb1,Sb2への操作による入力値の変化が0の場合において、ステアリングホイール12を回転させる主操作方向Mへの操作による入力値の変化が0の場合に操舵装置10が故障していると判定する。ステアリングホイール12を傾斜させる等の操作はなされているがその変化が無いときに、ステアリングホイール12を回転させる操作の変化が無い可能性は停車時や保舵時以外は低いため、ファイル判定部28は操舵装置10が故障していることを判定することができる。
また、本実施形態では、操舵装置10における主操作方向Mへの操作は、自車両の操舵角を規定するための主操作であり、副操作方向Sb1,Sb2への操作は、主操作方向Mへの操作の応答性を規定するための副操作であるため、上記本実施形態の構成により、副操作に基づいてフェイル判定部28が操舵装置10の故障を判定し易くなる。
さらに、本実施形態では、操舵装置10における主操作方向Mへの操作は、自車両のステアリングホイール12を回転させる方向への操作であり、副操作方向Sb1,Sb2への操作は、自車両のステアリングホイール12の回転軸を傾斜させる方向及び自車両のステアリングホイールをその回転軸方向に沿って進退動させる方向のいずれかの方向への操作であるため、自車両のドライバーがステアリングホイール12を異なる操作方向に操作し易くなる。
以下、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、図4に示す組合せについて、故障の発生が予想される状態をより詳細に判定する点が上記第1実施形態と異なっている。本実施形態では、図4の項目C,Kの状態の他、項目B,F,J,N,G,Oの状態についても故障の判定を行う。なお、本実施形態においては、主操作方向Mへの主操作出力の絶対値を直接に検出することは行われず、主操作出力の変化の検出と、状況が所定時間維持されるか否かとによって、間接的に主操作出力の絶対値の有無が判定され、図4の項目への当て嵌めが行われる。なお、本実施形態においても、絶対値や変化が0とは、実質的に0である状態を意味し、センサへのノイズ等の外乱により微小な値が検出されているが実質的に0である状態を含むものとする。
図5に示すように、上記第1実施形態と同様に、自車両のイグニションスイッチがONとなると、操舵装置10の動作が、イグニションスイッチがOFFとなるまで実行される(S201)。操舵装置10のフェイル判定部28が、配線の断線を直接検出した場合には(S202)、フェイル判定部28はフェイルモードに移行する(S223)。
ECU20の積算器21は、ステアリングホイール12の回転軸を傾斜させる等の副操作方向Sb1,Sb2への副操作出力を一定時間積算する(S203)。副操作出力が0である状態において(S204)、ECU20の微分器22は、副操作方向Sb1,Sb2への副操作出力を微分し、変化分を抽出する(S205)。ECU20のローパスフィルタ23は、副操作出力の変化分のノイズ成分を除去する(S206)。ECU20の積算器24は、ノイズ成分を除去された主操作出力の変化分を一定時間積算する(S207)。
フェイル判定部28は、副操作出力が0である状態において(S204)、副操作出力の変化が0であるときは(S208)、図4に示すように、主操作方向Mへの主操作出力の絶対値が0で変化も0のときは、車両が停止し、ドライバーがステアリングホイール12から手を離している状態が想定される(図4の項目A)。また、主操作方向Mへの主操作出力の絶対値及びその変化のいずれもが0ではないときは、ドライバーが副操作方向Sb1,Sb2への操作を行わず、主操作方向Mへの操作のみで通常の操作をしている状態が想定される(図4の項目E,I,M)。そこで、フェイル判定部28は通常動作を行う(S222)。
一方、フェイル判定部28は、副操作出力が0である状態において(S204)、副操作出力の変化が0ではないときは(S208)、図4に示すように、ドライバーが副操作方向Sb1,Sb2への操作を開始した場合等であり、主操作方向Mへの主操作に関わらず一瞬のみ有り得るが、それ以外は故障が生じている状態が想定される(図4の項目B,F,J,N)。そこで、フェイル判定部28は、1〜10秒間の経時を行い(S209)、1〜10秒後に状況に変化が無いときは(S210)、フェイルモードに移行する(S223)。フェイル判定部28は、1〜10秒後に状況に変化が有るときは(S210)、通常動作を行う(S222)。この時間は、副操作出力が変化している場合に副操作出力が0である状態状態が継続する可能性がある時間、すなわち副操作がなされているときに、副操作出力の絶対値0を横切る時間とすることができる。
副操作出力が0ではない状態においても(S204)、ECU20の微分器22は、副操作方向Sb1,Sb2への副操作出力を微分し、変化分を抽出する(S211)。ECU20のローパスフィルタ23は、副操作出力の変化分のノイズ成分を除去する(S212)。ECU20の積算器24は、ノイズ成分を除去された主操作出力の変化分を一定時間積算する(S213)。
副操作出力が0ではない状態であって(S204)、その変化も0ではない状態の場合は(S214)、図4に示すように、主操作出力に関わらず、ドライバーが副操作方向Sb1,Sb2への操作を継続して行っている状況が想定される(図4の項目D,H,L,P)。そこで、フェイル判定部28は通常動作を行う(S222)。
副操作出力が0ではない状態であって(S204)、その変化が0である状態の場合は(S214)、図4の項目C,G,K,Oの状況が想定される。この場合、ECU20の微分器25は、ステアリングホイール12を回転軸回りに回転動させる主操作方向Mへの主操作出力を微分し、変化分を抽出する(S215)。ECU20のローパスフィルタ26は、主操作出力の変化分のノイズ成分を除去する(S216)。ECU20の積算器27は、ノイズ成分を除去された主操作出力の変化分を一定時間積算する(S217)。
副操作出力が0ではない状態であって(S204)、その変化は0である状態であり、(S214)、主操作出力の変化が0ではないときは(S218)、図4の項目G,Oの状況が想定される。このようにステアリングホイール12を回転軸回りに回転動させる主操作方向Mへの主操作出力に変動があるにも関わらず、ステアリングホイール12の回転軸を傾斜させる等の副操作方向Sb1,Sb2への副操作出力に変動が無い状況は、ステアリングホイール12の回転軸が最大限に傾斜されている等の副操作出力の絶対値が最大値である状況以外は可能性が極めて低い。
そこで、フェイル判定部28は、副操作出力の絶対値が最大値である場合には通常動作を行なう(S222)。一方、フェイル判定部28は、副操作出力の絶対値が最大値でない場合には、フェイルモードに移行する(S223)。
副操作出力が0ではない状態であって(S204)、その変化は0である状態であり、(S214)、主操作出力の変化が0であるときは(S218)、図4の項目C,Kの状況が想定される。このようにステアリングホイール12を回転軸回りに回転動させる主操作方向Mへの主操作出力に変動が無いにも関わらず、ステアリングホイール12の回転軸を傾斜させる等の副操作方向Sb1,Sb2への副操作出力に変動が無い状況が長時間継続する状況は可能性が極めて低い。
そこで、フェイル判定部28は1分間の計時を行う(S219)。この場合の計時時間は、自車両がコーナーを完全に抜ける程度の時間とすることが好ましい。1分間の計時後、フェイル判定部28は状況に変化が有り、主操作出力の変化の有無と副操作出力の絶対値及びその変化の有無とがあったか否かを判定する(S220)。状況に変化があった場合、フェイル判定部28は通常動作を行なう(S222)。
一方、状況に変化が無い場合は、図4の項目Kに示すように、ステアリングホイール12を回転軸回りに回転動させる主操作方向Mへの主操作が変動無く保舵状態で固定される状況が1分間の計時後も継続する可能性は低く、自車両はコーナーを抜け、すでに図4の項目Pの状況に移行しているものと考えられる。
また、図4の項目Cの状況においては、ステアリングホイール12を回転軸周りに回転動させる主操作方向Mへの主操作が全く無く、ステアリングホイール12の回転軸を傾斜させる等の副操作方向Sb1,Sb2への副操作出力に変動が無い状況は、停車時等にステアリングホイール12の回転軸が最大限に傾斜されている等の副操作出力の絶対値が最大値である状況以外は可能性が極めて低い。そこで、フェイル判定部28は、副操作出力の絶対値が最大値である場合には通常動作を行なう(S222)。一方、フェイル判定部28は、副操作出力の絶対値が最大値でない場合には、フェイルモードに移行する(S223)。
本実施形態によれば、フェイル判定部28は、ステアリングホイール12を傾斜させる等の副操作方向Sb1,Sb2への操作による入力値が0ではないが、最大値ではなく、且つその副操作による入力値の変化が0である場合において、ステアリングホイール12を回転させる主操作方向Mへの操作による入力値の変化が0である状態が1分間以上継続した場合に操舵装置10が故障していると判定する。ステアリングホイール12を傾斜させる等の副操作はなされているが、最大に傾斜させられているのではなく、その変化は小さいときに、ステアリングホイール12を回転させる主操作に変化がなく保舵状態で維持されている状態が長時間継続する可能性は極めて低いため、フェイル判定部28は操舵装置10が故障していることを精度良く判定することができる。
また、本実施形態によれば、フェイル判定部28は、ステアリングホイール12を傾斜させる主操作方向Mへの操作による入力値が0ではないが、最大値ではなく、且つ副操作による入力値の変化が0である場合において、ステアリングホイール12を回転させる主操作方向への操作による入力値の変化が0では無い場合に操舵装置10が故障していると判定する。ステアリングホイール12を傾斜させる等の副操作はなされているが、最大に傾斜させられているのではなく、その変化は無いときに、ステアリングホイール12を回転させる主操作のみが変化する可能性は自車両が走行中であれば極めて低いため、フェイル判定部28は操舵装置10が故障していることを精度良く判定することができる。
さらに本実施形態によれば、フェイル判定部28は、ステアリングホイール12を傾斜させる等の副操作方向Sb1,Sb2への操作による入力値が0であり且つその変化が0ではない状態が1〜10秒間以上継続した場合に操舵装置10が故障していると判定する。ステアリングホイール12を回転させる主操作に関わらず、ステアリングホイール12を傾斜させる等の副操作の入力値は小さいにも関わらず、その変化は大きい状態が継続する可能性は自車両が走行中であれば極めて低いため、フェイル判定部28は操舵装置10が故障していることを精度良く判定することができる。
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、主操作方向Mへの操作出力の変化及び副操作方向Sb1,Sb2への操作出力やその変化が、0であるか、存在するか、あるいは最大値であるか否かで故障の判定が行われたが、本発明はこれに限定されず、主操作方向Mへの操作出力の変化及び副操作方向Sb1,Sb2への操作出力やその変化に対して、所定の閾値や範囲を用いて故障の判定が行われても良い。
例えば、主操作方向Mへの主操作出力値から副操作方向Sb1,Sb2への副操作出力値の許容範囲が定められ、当該許容範囲を副操作出力値が超える場合には故障であると判定されても良い。あるいは、副操作方向Sb1,Sb2への副操作出力値から主操作方向Mへの主操作出力値の許容範囲が定められ、当該許容範囲を主操作出力値が超える場合には故障であると判定されても良い。あるいは、主操作方向Mへの主操作と副操作方向Sb1,Sb2への副操作とが同時に行われる状況において、いずれかの操作出力が足りない場合に、足りない操作系は故障と判定されても良い。
また、上記実施形態においては、主操作方向Mへの主操作出力の絶対値については直接検出することは行わなかったが、主操作出力の絶対値を直接検出し、図4の項目に従って、故障が判定されても良い。