JP5353095B2 - 芳香族ニトリルの製造方法 - Google Patents

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本発明は、アルキル置換芳香族炭化水素をアンモニアおよび酸素を含む混合ガスと反応させ、芳香族ニトリルを製造する方法に関する。芳香族ニトリルは、合成樹脂、農薬等の製造原料およびアミン、イソシアネート等の中間原料として有用である。
アルキル置換芳香族炭化水素に気相でアンモニアと酸素を反応させる反応は、アンモ酸化反応と呼ばれ種々提案されている。アンモ酸化反応の反応形式としては固定床、流動層等の形式が例示されている。アンモ酸化反応では、多量の反応熱が発生するために反応温度の制御が著しく困難であり、その解決策の一つとして流動層形式の反応が有効とされ、種々の方法が提示されており、例えば、触媒にシリカを担体に用いる方法(特許文献1)は、反応温度制御の点で優れた性能を示す。しかしながら、これらの触媒は何れも流動状態における触媒磨耗と微粉化が免れず、安定した反応を継続することが難しい。さらに、流動層形式では反応後のガスと触媒を分離する工程が必要となり経費が増大するため、好ましくない。
一方、固定床形式では多管式の反応器が用いられ、反応熱の除去効率の向上が求められる。一般には、アルミナやチタニアに有効成分を担持した金属酸化物触媒が使用される。その際有効な触媒としてバナジウム、クロム、アンチモン、モリブデン、スズ、ホウ素等の酸化物又はそれらの複合酸化物が用いられている。しかしながら公知の触媒を用いた場合、局部的過熱による燃焼反応の進行、すなわち反応温度制御の困難から生じる二酸化炭素、シアン化水素等の副生成物の増大により、目的生成物である芳香族ニトリルの収率の低下などの問題が生じている。
さらに固定床形式で用いられる触媒は、対応する芳香族ニトリルを高収率で得ることと同時に、触媒充填の際や反応条件下において触媒粉化による反応器内の偏流を防止するために、実用上耐えうる強度を有することが重要とされている。例えば、クロム化合物を特定のクロム処理剤を用いて処理したものを、バナジウムなどの金属酸化物と混合させることによって高強度の触媒が得られることが開示されている(特許文献2)が、これらの触媒では、芳香族ニトリルの収率が必ずしも十分でなく、更なる改善が望まれている。
特開平11−209332号公報 特開2003−267942号公報
本発明の目的は、アルキル置換芳香族炭化水素とアンモニアおよび酸素を含む混合ガスを触媒上で接触反応させて、芳香族ニトリルを高収率で且つ経時的に安定して経済的に有利に製造する方法を提供することである。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、アルキル置換芳香族炭化水素と、アンモニアおよび酸素を含む混合ガスを触媒上で接触反応させて対応するニトリル化合物を製造するに際し、径が100Å以上の細孔の全容積が0.10cc/g以上0.30cc/g以下であるバナジウムとクロムの酸化物および担体から構成される触媒を用いることにより芳香族ニトリルを工業的に極めて有利に製造することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、下記の製造方法に関する。
(1)アルキル置換芳香族炭化水素と、アンモニアおよび酸素を含む混合ガスを触媒上で接触反応させて対応するニトリル化合物を製造する方法であって、該触媒が、バナジウムの酸化物及びクロムの酸化物並びにアルミナ、シリカアルミナ、ジルコニア及びチタニアから選ばれる1種以上の担体から構成され、径が100Å以上の細孔の全容積が0.10cc/g以上0.30cc/g以下であることを特徴とする芳香族ニトリルの製造方法。
(2)前記触媒が更にホウ素の酸化物を含有する(1)に記載の芳香族ニトリルの製造方法。
(3)前記のバナジウム、クロム及びホウ素の酸化物が下記の組成式で表される(2)に記載の芳香族ニトリルの製造方法。
組成式 VCrd
[式中のVはバナジウム、Crはクロム、Bはホウ素、Oは酸素を示す。添字のa,b,c,dは各元素の原子比率を表し、a=1、b=0.5〜2.0、c=0.01〜1.5であり、dは上記各元素が結合して生成する酸化物または複合酸化物に対応する酸素数を示す。]
(4)前記触媒が機械的な圧縮成形により調製されたものである(1)〜(3)の何れかに記載の芳香族ニトリルの製造方法。
(5)前記触媒の径が100Å以上の細孔の全容積が該触媒の全細孔容積の80%以上である(4)に記載の芳香族ニトリルの製造方法。
(6)担体がチタニアである(1)〜(5)の何れかに記載の芳香族ニトリルの製造方法。
本発明は、アルキル置換芳香族炭化水素のアンモ酸化反応において、対応する芳香族ニトリルを製造する方法を提供する。本発明の触媒を用いることにより、アルキル置換芳香族炭化水素をアンモ酸化して対応する芳香族ニトリルを工業的に極めて有利に製造することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明における反応は、アルキル置換芳香族炭化水素と、酸素含有ガスおよびアンモニアとの反応(アンモ酸化反応)であり、触媒上で気相接触させることでなされる。
本発明で原料として用いられるアルキル置換芳香族炭化水素としては、トルエン、エチルベンゼンなどのアルキルベンゼン;キシレン、メシチレン、シメン、ジュレン、ジエチルベンゼンなどのポリアルキルベンゼン;メチルナフタレン、エチルナフタレンなどのアルキルナフタレン;及びジメチルナフタレン、ジエチルナフタレンなどのポリアルキルナフタレン等が挙げられ、ベンゼン、ナフタレン等の炭素環を有し、結合したメチル基、エチル基、プロピル基、ホルミル基、アセチル基、ヒドロキシメチル基、メトキシカルボニル基等、アンモ酸化反応によりシアノ基を生成し得る側鎖(以下、置換基と称す)を少なくとも1つ有する炭化水素化合物である。また、この炭化水素化合物はハロゲン基、ヒドロキシ基、アルコキシル基、アミノ基、ニトロ基、ニトリル基等を含んでいても使用できる。これらの化合物は単独または混合物で使用できる。
本発明に用いられるアンモニアは工業用グレードで良い。アンモニアの使用量は、アルキル置換芳香族炭化水素1モルに含まれる置換基1個に対して1〜20倍モル、好ましくは3〜15倍モルの範囲である。これより使用量が少ないと目的生成物の収率は低下し、一方、これより多いと空時収率が小さくなる。本発明方法では、反応ガスに含まれる未反応アンモニアを回収し、反応系に戻し再使用できる。反応ガスから未反応アンモニアの回収方法は種々考えられるが、工業的には、未反応アンモニアを水に吸収させた後、それを蒸留操作でアンモニアを他の副生成物と分離するのが便利である。ここで回収されるアンモニア中の水分量は蒸留の操作条件によって異なるが、通常は5〜20容量%が含まれる。
本発明で使用される酸素は、酸素含有ガスの形で供給され、通常は空気が用いられる。別法として、空気または酸素を不活性ガス、例えば窒素、炭酸ガス、排ガス等で希釈して用いることもできる。酸素の使用量は、アルキル置換芳香族炭化水素1モルに含まれる置換基1個に対してOとして1.5倍モル以上、好ましくは2〜50倍モルの範囲である。これより使用量が少ないと目的生成物の収率が低下し、一方、これより多いと空時収率が小さくなる。
本発明において用いられる触媒は、基本的にはバナジウムの酸化物及びクロムの酸化物(以下、総称して「金属酸化物」と称す)並びに後述する担体で構成され、更に金属酸化物がホウ素の酸化物を含有することが好ましく、金属酸化物が下記の組成式で表されることが特に好ましい。
組成式 VCrd
[式中のVはバナジウム、Crはクロム、Bはホウ素、Oは酸素を示す。添字のa,b,c,dは各元素の原子比率を表し、a=1、b=0.5〜2.0、c=0.01〜1.5であり、dは上記各元素が結合して生成する酸化物または複合酸化物に対応する酸素数を示す。]
前記担体としてはアルミナ、シリカアルミナ、ジルコニア及びチタニアが挙げられ、中でもチタニアが好ましい。
担体の量は、触媒中で50〜99重量%、好ましくは65〜97重量%である。
本触媒におけるバナジウム源としては、メタバナジン酸アンモニウム、硫酸バナジル、およびシュウ酸、酒石酸などの有機酸のバナジウム塩類が使用されるが、その後の焼成操作で分解し、容易に酸化物となりうるメタバナジン酸アンモニウム、シュウ酸バナジル、酒石酸バナジルなどが好ましい。
クロム源としては、無水クロム酸、硝酸クロム、水酸化クロム、クロム酸アンモニウム、クロム酸ナトリウム、重クロム酸アンモニウム、重クロム酸カリウム、重クロム酸ナトリウムおよびシュウ酸、酒石酸などの有機酸のクロム塩類が使用されるが、その後の焼成操作で分解し、容易に酸化物となりうるシュウ酸クロム、酒石酸クロムなどが好ましい。
ホウ素源としては、ホウ酸、ホウ酸アンモニウムなどが使用される。
触媒は以下の方法を用いて製造することができる。
前記バナジウム源、クロム源、ホウ素源となる化合物の水溶液を混合し、均一水溶液とした後に、担体を加え混合する。
例えば、酸化バナジウムをシュウ酸に溶かした水溶液に、無水クロム酸をシュウ酸に溶かした水溶液、ホウ酸水溶液を加え、均一水溶液とした後に担体であるアルミナまたはチタニアの粉末を加え混合する。その後、十分に触媒の均質化を図るため機械的な操作により混練する。
混練後、110℃〜150℃で乾燥し、その後、粉砕して粉末を得る。ここで、粉砕前に、乾燥品を250℃〜500℃にて予備焼成を行うことが好ましく、270℃〜450℃がより好ましい。
次いで成形機により適当な形状に成形する。触媒の形状としては円柱、リング、球状、三つ葉、四つ葉などが好ましいが、特に円柱、リング状が好ましい。成形機には押し出し成形機、転動造粒機、打錠成形機等があるが、特に打錠成形機を使用するのが好ましい。打錠成形機を使用する場合、粉末を圧縮成形する際に黒鉛やエチルセルロースなどの成形助剤(バインダー)を添加する方が好ましい。添加量は1%〜10%が好ましい。成形後、焼成を350〜700℃、好ましくは400℃〜650℃で数時間以上、空気を流通しながら行う。触媒のサイズは、外径3mm〜8mm、高さ3mm〜8mmとなるように成形するのが好ましい。本発明で使用する触媒は、径が100Å以上の細孔の全容積が0.10cc/g以上0.30cc/g以下であることが好ましく、0.15cc/g以上0.25cc/g以下であることがより好ましい。また、径が100Å以上の細孔の全容積が全細孔容積の80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。
上記の方法により調製した触媒を用いた反応の形式は、通常は気相流通固定床形式である。反応装置としては、触媒粒子を反応器に充填し、原料のガス(アルキル置換芳香族炭化水素と、アンモニアおよび酸素を含む混合ガス)を連続的に反応させる充填層触媒反応器が一般的である。
充填層触媒反応器の伝熱方式は、断熱式と熱交換式に大別されるが、本発明での反応は、発熱反応であるため、熱交換式を用いるのが好ましい。特に反応管内に触媒を充填し、管外に熱媒体を通す単管あるいは多管の熱交換式が好ましい。
反応器の材質は原料の種類や反応条件によるが、一般にはステンレス鋼や炭素鋼などが好ましい。
反応管の管径は1cmから5cm、長さは10cm〜7mが好ましい。
反応温度は300〜500℃の広い範囲で実施できるが、330〜470℃であることが好ましい。300℃より低い温度では原料化合物の転化率が小さく、500℃より高い温度では二酸化炭素、シアン化水素などの生成が増加しニトリル化合物の収率が低下する。
熱媒体としては、高温であるため、溶融塩が特に好ましい。最高の収率を示す反応温度は、原料の種類、原料濃度、接触時間、および触媒の焼成温度などにより変化するので、これらの条件に応じて適宜この範囲で選択することが好ましい。原料のガスと触媒の接触時間は一般にはかなり広い範囲に採ることができるが、0.5〜30秒であることが好ましい。
本発明の反応は通常、常圧にて行われるが、加圧下または減圧下にても行うことができる。反応生成物の捕集は、任意の適当な方法、例えば、生成物が析出するのに十分な温度まで冷却し捕集する方法、水その他適当な溶媒などで反応生成ガスを洗浄、捕集する方法などが使用される。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によりその範囲を限定されるものではない。
実施例1
(触媒の調製)
無水クロム酸CrO19.6gを純水20mLに溶解し、シュウ酸75.3gに純水60mLを加え、50℃〜60℃に加熱した。この水溶液に攪拌下、上記クロム酸水溶液を徐々に加えシュウ酸クロム水溶液を作った。一方、シュウ酸44.4gを純水40mLに溶解し、80〜90℃に加熱後、よく攪拌しながら五酸化バナジウムV17.8gを徐々に加え、シュウ酸バナジル水溶液を作った。次に調製したシュウ酸バナジル水溶液に調製したシュウ酸クロム水溶液を70℃から90℃で滴下、混合した。この混合水溶液にホウ酸1.21gを70℃〜90℃で添加し、混合した。調製した触媒溶液を85℃〜95℃にて加熱し、熟成した。その後100℃〜110℃にて濃縮した。濃縮した調合液に、アナターゼ型である酸化チタン133.3gを添加し、70℃で、均質となるまでニーダーを用いて混練すると共に水分を蒸発させた。その後、得られたケーキを乾燥機にて110℃の条件で乾燥した。
次に、乾燥品を焼成炉にて400℃の条件で2時間予備焼成し、その後、粉砕機にて粉砕した。
粉砕した粉にグラファイトを4wt%添加し、混合した。次にこの原料粉を外径6mm、内径3mm×高さ6mmのリング状の形となるように、打錠成形機を用いて打錠成形した。成形後、焼成炉にて550℃で15時間焼成した。この触媒の原子比はCr:V:Bが1.0:1.0:0.1で、組成式はVCr0.14.15で表わされ、触媒中の担体チタニアの濃度は80wt%であった。
この触媒の細孔容積を吸着法により測定した結果、径が100Å以上の細孔の全容積は0.20cc/gであった。また、径が100Å以上の細孔の全容積は全細孔容積の94%であった。
(触媒の活性試験)
内径30mmの炭素鋼製反応管にこの触媒1.5kgを充填した。380℃に保持した溶融塩浴に反応管を設置し、反応管入口側と出口側の配管はヒーターで加熱保温した。原料を130℃に保温した蒸発器中でガス化させ、メタキシレン1.0容積%、アンモニア8.0容積%、酸素5.0容積%、窒素86.0容積%よりなるガスを、反応管中に導入し、空時速度SV2400Hr−1の条件で接触反応させた。反応生成物をガスクロマトグラフィーで分析した。この結果、メタキシレンに対するイソフタロニトリルの収率は90%であった。また、副生成物である3−シアノベンズアミドの生成率は0.9%であった。
(触媒性能の経時変化)
同様の条件で、240日間連続して触媒の活性試験を行ったが、活性の変化は見られなかった。
実施例2
触媒の担体がアルミナである以外は、実施例1と同様にして触媒を調製し、触媒の活性試験を行った。この触媒の径が100Å以上の細孔の全容積は0.18cc/gであった。また、径が100Å以上の細孔の全容積は全細孔容積の92%であった。メタキシレンに対するイソフタロニトリルの収率は88%であった。また、副生成物である3−シアノベンズアミドの生成率は0.8%であった。同様の条件で、220日間連続して触媒の活性試験を行ったが、活性の変化は見られなかった。
実施例3
触媒の担体がシリカアルミナである以外は、実施例1と同様にして触媒を調製し、触媒の活性試験を行った。この触媒の径が100Å以上の細孔の全容積は0.22cc/gであった。また、径が100Å以上の細孔の全容積は全細孔容積の90%であった。メタキシレンに対するイソフタロニトリルの収率は86%であった。また、副生成物である3−シアノベンズアミドの生成率は0.9%であった。同様の条件で、215日間連続して触媒の活性試験を行ったが、活性の変化は見られなかった。
実施例4
触媒の担体がジルコニアである以外は、実施例1と同様にして触媒を調製し、触媒の活性試験を行った。この触媒の径が100Å以上の細孔の全容積は0.21cc/gであった。また、径が100Å以上の細孔の全容積は全細孔容積の93%であった。メタキシレンに対するイソフタロニトリルの収率は87%であった。また、副生成物である3−シアノベンズアミドの生成率は0.8%であった。同様の条件で、210日間連続して触媒の活性試験を行ったが、活性の変化は見られなかった。
実施例5
メタキシレンに代えてパラキシレンを使用して、実施例1と同様に触媒の活性試験を行った。パラキシレンに対するテレフタロニトリルの収率は88%であった。また、副生成物である4−シアノベンズアミドの生成率は0.7%であった。同様の条件で、230日間連続して触媒の活性試験を行ったが、活性の変化は見られなかった。
実施例6
メタキシレンに代えてトルエンを使用して、実施例1と同様に触媒の活性試験を行った。トルエンに対するベンソニトリルの収率は87%であった。また、副生成物であるベンズアミドの生成率は0.9%であった。同様の条件で、235日間連続して触媒の活性試験を行ったが、活性の変化は見られなかった。
比較例1
(触媒の調製)
無水クロム酸CrO19.6gを純水20mLに溶解し、シュウ酸75.3gに純水60mLを加え、50℃〜60℃に加熱した。この水溶液に攪拌下、上記クロム酸水溶液を徐々に加えシュウ酸クロム水溶液を作った。一方、シュウ酸44.4gを純水40mLに溶解し、80〜90℃に加熱後、よく攪拌しながら五酸化バナジウムV17.8gを徐々に加え、シュウ酸バナジル水溶液を作った。次に調製したシュウ酸バナジル水溶液に調製したシュウ酸クロム水溶液を70℃から90℃で滴下、混合した。この混合水溶液にホウ酸1.21gを70℃〜90℃で添加し、混合した。調製した触媒溶液を85℃〜95℃にて加熱し、熟成した。その後100℃〜110℃にて濃縮した。濃縮した調合液に、アナターゼ型である酸化チタン133.3gを添加し、70℃で、均質となるまでニーダーを用いて混練すると共に水分を蒸発させた。
その後、得られたケーキを押し出し成形した。110℃、15hr乾燥した後、450℃、15hr焼成した。この触媒の原子比はCr:V:Bが1.0:1.0:0.1の割合で含有され、触媒中の担体チタニアの濃度は80wt%であった。
この触媒の細孔容積を吸着法により測定した結果、径が100Å以上の細孔の全容積は0.084cc/gであった。また、径が100Å以上の細孔の全容積は全細孔容積の75%であった。
(触媒の活性試験)
内径30mmの炭素鋼製反応管にこの触媒1.5kgを充填した。380℃に保持した溶融塩浴に反応管を設置し、反応管入口側と出口側の配管はヒーターで加熱保温した。原料を130℃に保温した蒸発器中でガス化させ、メタキシレン1.0容積%、アンモニア8.0容積%、酸素5.0容積%、窒素86.0容積%よりなるガスを、反応管中に導入し、空時速度SV2400Hr−1の条件で接触反応させた。反応生成物をガスクロマトグラフィーで分析した。この結果、メタキシレンに対するイソフタロニトリルの収率は81%であった。また、副生成物である3−シアノベンズアミドの生成率は1.5%であった。
(触媒性能の経時変化)
同様の条件で、90日間連続して触媒の活性試験を行ったが、活性の変化は見られなかった。
比較例2
(触媒の調製)
無水クロム酸CrO19.6gを純水20mLに溶解し、シュウ酸75.3gに純水60mLを加え、50℃〜60℃に加熱した。この水溶液に攪拌下、上記クロム酸水溶液を徐々に加えシュウ酸クロム溶液を作った。一方、シュウ酸44.4gを純水40mLに溶解し、80〜90℃に加熱後、よく攪拌しながら五酸化バナジウムV17.8gを徐々に加え、シュウ酸バナジル溶液を作った。次に調製したシュウ酸バナジル水溶液に調製したシュウ酸クロム水溶液を70℃から90℃で滴下、混合した。この混合水溶液にホウ酸1.21gを70℃〜90℃で添加し、混合した。調製した触媒溶液を85℃〜95℃にて加熱し、熟成した。その後100℃〜110℃にて濃縮した。濃縮した調合液に、アナターゼ型である酸化チタン133.3gを添加し、70℃で、均質となるまでニーダーを用いて混練すると共に水分を蒸発させた。その後、得られたケーキを乾燥機にて110℃の条件で乾燥し、乾燥粉を粉砕機にて粉砕した。
粉砕した粉にグラファイトを4wt%添加し、混合した。次にこの原料粉を外径6mm内径3mm×高さ6mmのリング状の形となるように、打錠成形機を用いて打錠成形した。成形後、焼成炉にて550℃で15時間焼成した。この触媒の原子比はCr:V:Bが1.0:1.0:0.1の割合で含有され、触媒中の担体チタニアの濃度は80wt%であった。
この触媒の細孔容積を吸着法により測定した結果、径が100Å以上の細孔の全容積は0.30cc/gであった。また、径が100Å以上の細孔の全容積は全細孔容積の73%であった。
(触媒の活性試験)
内径30mmの炭素鋼製反応管にこの触媒1.5kgを充填した。380℃に保持した溶融塩浴に反応管を設置し、反応管入口側と出口側の配管はヒーターで加熱保温した。原料を130℃に保温した蒸発器中でガス化させ、メタキシレン1.0容積%、アンモニア8.0容積%、酸素5.0容積%、窒素86.0容積%よりなるガスを、反応管中に導入し、空時速度SV2400Hr−1の条件で接触反応させた。反応生成物をガスクロマトグラフィーで分析した。この結果、メタキシレンに対するイソフタロニトリルの収率は80%であった。また、副生成物である3−シアノベンズアミドの生成率は1.8%であった。同様の条件で、80日間連続して触媒の活性試験を行ったが、活性の変化は見られなかった。

Claims (4)

  1. アルキル置換芳香族炭化水素と、アンモニアおよび酸素を含む混合ガスを触媒上で接触反応させて対応するニトリル化合物を製造する方法であって、該触媒が、バナジウムの酸化物、クロムの酸化物及びホウ素の酸化物並びにアルミナ、シリカアルミナ、ジルコニア及びチタニアから選ばれる1種以上の担体から構成され、径が100Å以上の細孔の全容積が0.15cc/g以上0.25cc/g以下であり、前記触媒の径が100Å以上の細孔の全容積が該触媒の全細孔容積の80%以上であることを特徴とする芳香族ニトリルの製造方法。
  2. 前記のバナジウム、クロム及びホウ素の酸化物が下記の組成式で表される請求項に記載の芳香族ニトリルの製造方法。
    組成式 VaCrbBcOd
    [式中のVはバナジウム、Crはクロム、Bはホウ素、Oは酸素を示す。添字のa,b,c,dは各元素の原子比率を表し、a=1、b=0.5〜2.0、c=0.01〜1.5であり、dは上記各元素が結合して生成する酸化物または複合酸化物に対応する酸素数を示す。]
  3. 前記触媒が機械的な圧縮成形により調製されたものである請求項1又2に記載の芳香族ニトリルの製造方法。
  4. 前記担体がチタニアである請求項1〜3の何れかに記載の芳香族ニトリルの製造方法。
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