JP5352485B2 - 要因分析装置 - Google Patents

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Description

本発明は、製造物の製造工程において測定する複数の特性値の関係をユーザが分析することを支援する要因分析装置に関する。
磁気ディスク装置や半導体装置等をはじめとする製造物の多くは、複数の工程を経て製造され、その各工程において複数の特性値を測定している。これらの特性値が相互に相関を持つ場合、特性値間の関係を体系的に把握することは、不良発生時における対策項目や、プロセス制御に有効な項目を特定するために必要である。
不良発生時における原因を分析するシステムの従来技術には、例えば、特許文献1に示す生産システムがある。これは、製品品質履歴と製造工程履歴から相関強度を計算した後に、製造ライン内部の工程に対して因果の関連構造モデルを自動生成し、これを分析することにより品質変動の根本原因を自動導出する生産システムである。しかしながら、この生産システムの出力は不良発生の原因項目のみの抽出にとどまっており、抽出された項目が直接制御できる項目でなければ、対策を講じることができない。
特許文献2では、不良解析を支援するため、結果と要因を視覚モデル化した特性要因図を出力する情報システムが示されている。このシステムは、結果現象とその要因となりうる要因現象との関係および関係の強さ情報を階層的に視覚化することを特徴としている。しかし、この結果現象と要因現象の関係および関係の強さはデータベース化されていることが前提となっており、結果現象と要因現象が既知でない場合、適用することができない。
特許文献3では、複数の工程を経て製造される製造物において、製品の特性値を目的変数とし、製造工程における測定値を説明変数として作成した重回帰式を用いることにより、目標とする特性値を達成するための説明変数へのフィードバックを容易にする品質管理方法及びシステムが記載されている。ただし、この品質管理方法では目的変数とした特性値に直接影響を与える変数との関係のみに着目しており、複数の製造工程の各測定項目が階層的に影響を与えて特性が作りこまれる場合、その全項目間の関係を網羅するには至らない。
一方、従来から品質を確保する具体的方法を提供する手法として品質機能展開(QFD:Quality Function Deployment)が有効であることが知られている。これは品質を形成するための機能を細部に展開していく手法である。この品質機能展開で用いる機能展開表を作成するには設計や品質に関する製品知識や個別の分析および調査を要する。
特開2006-65598号公報 特開平11-250135号公報 特開2009-99960号公報
複数の特性値の測定を経て製造される製造物について測定項目間の関係を分析するに当たり、上述したように、特許文献1では不良要因項目のみ、また、特許文献3では目的変数とした特性値に直接影響を与える変数のみに着目しており、全測定項目間の関係を体系的に把握することはできない。また、項目間の要因と結果の関係が既知であれば特許文献2に記載されている手法や、前述のQFDによりその関係を可視化できるが、従来、製造物の測定項目間の関係は、設計者がそれまでの知識の蓄積として把握するにとどまっていた。
本発明の目的は、製造物の設計知識がない場合でも測定項目間の関係を容易に把握できる要因分析装置を提供することにある。
本発明は、製造物の製造過程で測定する複数項目の測定データを、測定順序または工程順序に基づき分析し、特性要因図を用いて項目間の関係を可視化するものである。具体的には、まず、製造物の製造工程において測定する複数の特性値の測定データと、その測定順序または工程順序を入力とする。各測定項目についてその測定項目より測定順序または工程順序が前の項目の中から重回帰分析における説明変数を選択し、重回帰式を作成する。分析対象とする項目を指定し、特性要因図を用いて説明変数を階層的に表示することにより、多数の測定項目間の階層的な関係を自動的に可視化する。
本発明により、製造物の設計知識がない場合でも、項目間の関係を把握することが容易になる。その結果、不良対策やプロセス制御に有効な項目の特定が容易になるという利点がある。
複数の測定項目の関係を分析する処理手順の一例を示す図である。 測定値データの一例を示す図である。 測定項目の順序情報データの一例を示す図である。 要因分析処理手順の一例を示す図である。 重回帰係数表の一例を示す図である。 特性要因図の出力例を示す図である。 特性要因図作成の中間出力例を示す図である。 特性要因図作成処理手順の一例を示す図である。 特性要因図に含まれるノードの相対位置算出処理手順の一例を示す図である。 特性要因図作成処理に用いる下位ノードの角度決定ルールの一例を示す図である。 磁気ディスク装置の製造工程を示すフローチャートである。 磁気ディスク装置の製造工場を概略的に示した図である。 要因分析装置の機能構成ブロック図を示す図である。 測定項目の順序情報データの一例を示す図である。 重回帰係数表の一例を示す図である。 特性要因図の出力例を示す図である。
以下に、本発明の実施形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図13は、本発明に係る要因分析装置300のブロック図を示す。
要因分析装置300は、ネットワークインタフェース301、制御部302、二次記憶装置303、主記憶装置304、演算部305、データの入力部及び表示部を有するユーザインタフェース306を備える。これは、PC(パーソナルコンピュータ)のような一般的なコンピュータを想定しており、本実施例に係る要因分析処理は、この装置において、コンピュータプログラムの実行により実施される。演算部305は、コンピュータプログラムの実行により、測定値、順序情報入力手段361、要因分析手段362、要因分析対象項目指定手段363、特性要因図作成手段364の各機能を実施する。二次記憶装置303は、測定値データテーブル371、順序情報データテーブル372、重回帰係数テーブル373を格納する。
図1は、本発明の要因分析装置において、評価対象の製造工程で測定される複数の測定項目の関係をユーザが分析することを支援する処理手順の一例を示す。ステップ101では、製造工程において測定した各項目の測定値を製品または部品の製造番号で紐づけたデータと、各測定項目間の測定順序または工程順序による時系列の順序情報を入力して、測定値データテーブル371、順序情報データテーブル372へ格納する(測定値、順序情報入力手段361)。次に、ステップ102ではステップ101で入力した測定値データと順序情報を用いて、要因分析処理を行う。要因分析処理では、ステップ101で入力した測定項目の一つを重回帰分析処理などの目的変数としたときの説明変数となる測定項目を選択し、さらに重回帰分析における各説明変数の係数を算出する処理を、全ての測定項目をそれぞれ目的変数とした場合について行う。要因分析処理の詳細は後述する。ステップ103は、要因分析処理の結果から得られる重回帰係数表107(重回帰係数テーブル373)を作成する処理である。ステップ104では、要因分析処理を行った測定項目の中から、ユーザが要因分析を行なう対象測定項目を指定した入力を受付ける(要因分析対象項目指定手段363)。ステップ105では、重回帰係数表107を用いて、ステップ104で指定された項目の特性要因図106を作成する。特性要因図作成処理の詳細は後述する。ステップ106では特性要因図を表示し、要因分析処理を終了する。
図2は、図1のステップ101で入力する測定値データ(測定値データテーブル371)の一例である。本例では測定項目を各列に、製品または部品の製造番号で紐づけされた測定値データを各行に示している。測定値データは、評価対象製造ラインの各測定項目について測定されたデータが記憶されて、図2に示される形式にて評価用に一括して入力される。
図3は、図2に示した測定値データの各測定項目の順序情報を示すデータ(順序情報データテーブル372)の一例である。順序情報とは、製品または部品に対してなされた測定項目を時系列に並べた順序を表わす。ただし、同時になされた複数の測定項目には順序を付けずに、同順位を付けることとする。順序情報の形式は測定項目名を順に並べたものでも、測定項目名に順序番号を対応付けたものでもよい。複数の測定項目に対して同順位を指定するには、順序情報の形式に応じて以下の方法を用いることができる。順序情報が測定項目名を順に並べる形式である場合は、各測定項目について、前後の測定項目との順位の違いの有無を指定することにより、同順位を指定することができる。また、順序情報の形式が、測定項目名に順序番号を対応付けたものである場合には、順序番号の重複により同順位を指定することができる。尚、図2および図3の測定項目数に制限はないが、図3の順序情報における測定項目名は図2に示す測定値データにおける各列の測定項目の名前と一致している必要がある。
図4に、要因分析手段362が実行する図1のステップ102の要因分析処理手順の一例を示す。ステップ201では、入力した測定値データの測定項目を、順序情報に従って並べ替える。ここで、順序情報に同順位がない場合は、測定値データの列を予め順序情報通りに並べておくことにより、ステップ101において測定値データと順序情報を合わせた一つのファイルを入力とし、ステップ201を省略することもできる。
次に、ステップ202では、式(1)を用いて測定値を測定項目の単位に無関係な量に変換をする標準化を行なう。式(1)において、v(i、j)は図2に示す測定値データのi行j列の値、すなわちi番目の製品または部品におけるj番目の測定項目の測定値を示す。vave(j)はj番目の測定項目における測定値の平均値、vsd(j)はj番目の測定項目における測定値の標準偏差を示すものとし、u(i、j)はi番目の製品または部品製造番号におけるj番目の測定項目の標準化された測定値を示す。このように標準化することにより、全ての測定項目において平均が0、標準偏差が1となる。
(数1)
u(i、j) = (v(i、j) - vave(j))/vsd(j) ………(1)
次にステップ203からステップ211を繰り返す処理を行う。この繰り返し回数は入力した測定項目数に依存し、測定項目数と等しい回数を繰り返す。本実施例では項目番号として変数yを定義した。yを1から最大項目番号まで変化させてステップ204からステップ210の処理を各yで一回ずつ行う。
ステップ204では、 y番目の測定項目Zyを重(単)回帰分析処理の目的変数として設定する。さらに、ステップ201において並べ替えた測定値データのj番目(j列目)の測定項目の順序番号をT(j)とすると、T(j)がT(y)より小さい、すなわちy番目の測定項目より測定の時系列順序が先である全ての測定項目を目的変数Zyに対する説明変数候補とする。(ただし、同順位の測定項目は、説明変数候補に入れない。)
ステップ205から210では、測定項目Zyに対する説明変数を説明変数候補から選択する処理を行う。ステップ205では、ステップ204で抽出された説明変数候補の中から、目的変数Zyと最も相関の高い測定項目Zxを選択する。ここでは、測定項目Zyと、説明変数候補の中の各測定項目Zsごとに、前記標準化した測定値データu(i、y)、u(i、s)のn組の測定値データに対して、相関係数rは、
(数2)
r = Sys/(Sy・Ss) ………(2)
である。ここで、SyとSsは、それぞれ測定値データu(i、y)とu(i、s)の標準偏差であるが、ステップ202で標準化しているので、いずれも1である。また、Sysは、測定値データu(i、y)とu(i、s)との共分散であり、および測定値データu(i、y)とu(i、s)はステップ202で標準化しているので、いずれの平均値も0であるから、共分散Sysは、
Figure 0005352485

で求まる。従って、相関係数r=共分散Sysとなる。
以上の計算を、全ての説明変数候補の中の各測定項目Zsごとに行い、最も相関係数が大きい測定項目Zsを測定項目Zxと選択する。
ステップ206では測定項目Zxと測定項目Zyの相関係数の絶対値を用いて、測定項目Zxを測定項目Zyの説明変数とするか否かを判定する。本実施例では、測定項目ZxとZyの相関係数の絶対値が予め設定したしきい値より大きいとき、ステップ207に進み、測定項目Zxを測定項目Zyの説明変数に追加する処理を行う。
ステップ208では、目的変数Zyに対して、それまでに追加された説明変数を用いて回帰分析を行う。このとき、説明変数が一つであれば単回帰、複数ある場合は重回帰分析を用いる。いま、説明変数となる測定項目がZx1、Zx2の2個選択されていたとすると、目的変数Zyが、説明変数Zx1と説明変数Zx2とによって直線的に変わる関係があると想定して、次式を設定する。
(数4)
Zy = β1・Zx1 + β2・Zx2 + β0 + εn ……(4)
ここで、β0、β1、β2は係数、εnは誤差を表わす。目的変数Zy、説明変数Zx1、説明変数Zx2には、図2に示す測定値データよりサンプル数がn組のデータを式(4)へ代入して、各代入式における誤差ε1、……εnの自乗値の和が最小となるように、係数β0、β1、β2を推定する。
ステップ209では、この回帰式を用いた予測値と実際の測定項目Zyの値の差である回帰誤差を算出し、この回帰誤差と最も相関の高い測定項目Zxを選択する。
再びステップ206に戻り、この測定項目Zxと回帰誤差の相関係数としきい値を比較して相関係数がしきい値より大きい場合は、ステップ207に進み測定項目Zxを測定項目Zyの説明変数に追加し、ステップ207から209の処理を繰り返す。ステップ206で相関係数がしきい値より小さい場合は測定項目Zxを説明変数に追加せず、ステップ210で、それまでに選択された測定項目を測定項目Zyの説明変数として確定し、重回帰係数を求める。ただし、説明変数が一つの場合は単回帰分析を用いる。
本実施例では重回帰分析における説明変数の選択において、相関係数を用いる方式を示しているが、仮説検定を用いるステップワイズ法を用いてもよい。また、ステップ206における説明変数追加の判定には、本実施例で示している相関係数を用いる方法の代わりに、重回帰式の寄与率や予測誤差、または寄与率や予測誤差の説明変数追加前との差分にしきい値を設けて説明変数追加を判定する方法を用いてもよい。
以上に述べたステップ204からステップ210の処理を、各測定項目を目的変数として行うことで、全測定項目の説明変数および重回帰係数を算出することができる。
図5は、ステップ206におけるしきい値を0.3とし、図2に示す測定値データと、図3に示す順序情報データに対して要因分析処理を行った結果得られる重回帰係数表107の一例を示す。図5において、各列と各行はともに順序情報に従い測定項目を並べており、y番目の行の測定項目を目的変数としたときのx番目の説明変数に対する重回帰係数がy行x列に記入されている。空欄は、x番目の測定項目がy番目の測定項目の説明変数として選択されていないことを示す。例えば、図5より、測定項目P7の回帰式は式(5)のようになる。式(5)においてC7は定数項を示す。
(数5)
P7 = -0.16・P3 + 0.88・P5 + C7 ……(5)
また、図5の6行目がすべて空欄であることから、項目P6はそれ以前のどの項目とも相関がないことを示す。
ステップ104では、要因分析の対象項目をユーザが指定する。ここでは、項目P8を要因分析の対象項目として指定した場合の例を示して、ステップ105の特性要因図作成処理および特性要因図106について説明する。
図6は、項目P8を要因分析の対象測定項目に指定した場合における特性要因図の一例である。特性要因図の枝別れした各線分ごとのまとまりをノードと呼ぶことにする。各ノードは線分の一端に記載されている測定項目を目的変数とし、その説明変数のノードを下位ノードとして持つものとする。図6の特性要因図を作成する処理を、図7を用いて説明する。図7は、図6の特性要因図における線分のみを抜き出したものである。
図8に、特性要因図作成手段364が実行する特性要因図作成の処理手順の一例を示す。特性要因図作成処理において、ステップ899では、各ノードの角度を決めるため、極座標軸を設定する。本例では紙面上に水平右方向を0度、垂直上方向を90度とする。ステップ900では、最上位のノードの角度を決定する。本例では180度とする。また、最上位ノードの目的変数はステップ104で指定した要因分析の対象測定項目とする。最上位のノードをN0とする。
ステップ901ではすべてのノードの相対位置算出を行う。ノードの相対位置算出処理の詳細は後述する。次に、ステップ902ではステップ901で算出した各ノードの相対位置に基づき各ノードを描画する処理を行う。
図9は、各ノードの相対位置を算出する処理手順の一例を示す。ステップ901の詳細を、図9と図7を用いて説明する。図9に示す処理は再帰処理で、末端のノードから順に上位ノードとの相対位置を算出していく。各ノードについて下位ノードの長さや角度から、自ノードの上位ノードに対する起点を決めていくことができる。以下、図5に示した重回帰係数表から、項目P8を要因分析の対象測定項目と指定したときの例を用いて詳細に説明する。
まず、最上位のノードN0に対して、図9に示す処理を開始する。ステップ1000では、対象ノードの目的変数に対する説明変数を抽出する。本例では最上位のノードN0の目的変数は項目P8であり、図5の重回帰係数表の8行目より、項目P8の説明変数は、項目P2、P4、P7であることがわかる。この説明変数の数だけ、ステップ1001からステップ1005の間の処理を繰り返す。
ステップ1002では、ノードNmの目的変数に対するk番目の説明変数を目的変数に持つ下位ノードN(Nm、k)を生成する。本例では、項目P8の3つの説明変数の内、まず一つ目の説明変数P2を目的変数に持つノードN(N0、1)を生成する。
ステップ1003では、ノードN(N0、1)の角度を決定する。本実施例では、図10の表を用いて角度を決定する。ステップ899で設定した曲座標軸に対し、図10に示す通り上位ノードの枝の角度ごとに下位ノードの枝の角度を2種類ずつ設定し、複数の枝を作成する場合、交互に用いることとする。本実施例では、ステップ900において、最上位のノードの枝の角度を180度とした。これは、図7における線分A1・A2の角度に相当する。この上位ノードの枝の角度から、下位ノードの角度を決定する。図10より、上位ノードが180度のときの下位ノードの角度は120度または-120度である。ここでは120度を選択する。これにより線分B1・B2の向きが決定する。ただし、この角度の決定方法に特に制限はなく、3つ以上の角度から設定してもよいし、上位ノードと成す角度を用いて定義してもよい。また、本例では全てのノードから2つの方向に交互にノードが伸びる方法をとっているが、全てのノードを同一方向にしてもよいし、全てのノードを異なる方向にしてもよい。
次に、ステップ1004ではノードN(N0、1)について、ノードN0に対する相対位置の算出を行うため、ノードN(N0、1)の相対位置算出処理に再帰する。ノードN(N0、1)の相対位置算出処理におけるステップ1000では、ノードN(N0、1)の目的変数である測定項目P2に対する説明変数を抽出する。図5より項目P2の説明変数はないことがわかる。そのため、説明変数のループであるステップ1001から1005の処理を行わず、ステップ1006の処理に進む。ステップ1006では、ノードN(N0、1)の長さを算出する。これは図7における線分B1・B2の長さである。項目P2は説明変数がなく、最も末端のノードであることから、ノードN(N0、1)の長さには、ノードの長さの最小値として予め設定した長さを設定する。次に、ステップ1007では、上位ノードにおけるノードN(N0、1)の起点を算出する。これは図7における線分A1・B1の長さに相当する。これはノードN(N0、1)の大きさに依存し、前後のノードと重ならないよう決定する。ノードの大きさとは、例えば、該当ノードN(N0、1)の目的変数がいくつの説明変数を持つかによって、枝別れする下位のノードの数が異なり、特性要因図の作図領域の大きさに差異を生ずる。そのため、該当ノードN(N0、1)の説明変数の数と、さらに下位のノードの説明変数の数から、該当ノードの特性要因図の作図に必要な領域を、ノードの大きさとして算出する。
ここでノードN(N0、1)の相対位置算出処理を終了し、ノードN0の相対位置算出処理におけるステップ1005に進む。次に、測定項目P8の二つ目の説明変数である測定項目P4を目的変数に持つノードN(N0、2)をステップ1002で生成し、ステップ1003で、その角度を決定する。本例では、上述の項目P2に対して、図10から120度を選択しているため、ノードN(N0、2)の角度は-120度とする。ステップ1004では、ノードN(N0、2)の相対位置の算出処理を開始する。ノードN(N0、2)の相対位置の算出処理において、ステップ1000で、ノードN(N0、2)の目的変数である項目P4に対する説明変数として図5より項目P1を抽出する。ステップ1002では、ノードN(N(N0、2)、1)を生成し、ステップ1003で、ノードN(N(N0、2)、1)の角度を決定する。このとき、上位ノードN(N0、2)の角度は-120度であることから、図10より、項目P1のノードの枝の角度(図7における線分E1・E2の向き)は0度または180度である。ここでは0度を選択する。次に、ステップ1004でノードP1の相対位置算出処理を開始する。項目P1は説明変数を持たないため、ステップ1006に進み、ノードN(N(N0、2)、1)の長さ(図7における線分E1・E2の長さ)を上述のノードN(N0、1)と同様に最小値に決定し、ノードN(N(N0、2)、1)の上位ノードにおける起点(図7における線分C1・E1の長さ)をノードN(N(N0、2)、1)の大きさから決定する。ここで、ノードN(N(N0、2)、1)の相対位置算出処理を終了する。その後、ノードN(N0、2)の相対位置算出処理におけるステップ1006に進み、ノードN(N0、2)の長さ(図7における線分C1・C2の長さ)をノードN(N0、2)の大きさに応じて決定し、次にステップ1007で上位の枝におけるノードN(N0、2)の起点(図7における線分A1・C1の長さ)を、ノードN(N0、1)とノードN(N0、2)の大きさに応じて決定し、ノードN(N0、2)の相対位置の決定処理を終了する。同様の処理を、測定項目P8の三つ目の説明変数である項目P7を説明変数に持つノードN(N0、3)についても行い、ノードN(N0、3)の相対位置算出処理を終了した後、最上位ノードN0の相対位置算出処理へ戻り、ステップ1006で最上位ノードの長さ(図7における線分A1・A2)を算出する。最上位のノードではステップ1007は不要であるため、以上の処理から、図8における各ノードの上位ノードに対する相対位置決定処理(ステップ901)を終了する。
次に、図8のステップ902では、ユーザインタフェース上の全ノードの位置を算出し、描画する。ステップ901からノード間の相対位置関係が算出されているため、最上位ノードの位置を決定後、全ての下位ノードを描画することができる。図6に示す例では、各ノードにおいてその線分の端に、測定項目名に加え、重回帰係数を表示している。ここで、各測定項目の値が式(1)を用いて標準化されている場合、この重回帰係数は各測定項目の目的変数に対する寄与度を表している。よって、図6のように測定項目名と重回帰係数を表示することにより、測定項目間の階層関係および寄与度の高い測定項目を把握することができる。
本例では、測定項目P8に最も大きい影響を与えているのは測定項目P7であり、さらに測定項目P7を調整するには測定項目P5と測定項目P3を調整することが有効であることがわかる。尚、本例ではフィッシュボーン型の特性要因図を示しているが、特性要因図には入れ子型や階層型もあり、これらの形態を用いても同様の効果が得られる。
次に、本発明に係る分析装置を磁気ディスク装置(HDD)の生産品質管理データに適用した例について説明する。
図11はHDDの製造工程の概略を示す。本例では、磁気ディスク装置を構成する多くの部品の内、主要部品である磁気ヘッド、円板の製造工程と組立工程を示している。磁気ヘッドは、ウエハに複数の素子を形成する工程1201、ウエハ試験工程1202、各素子を切り出してスライダを加工する工程1203、スライダの試験工程1204、各スライダとサスペンションなどの部品を組み合わせたHGA(Head Gimbal Assembly)を組み立てる工程1205、HGAの試験工程1206、複数のHGAを組み合わせたHSA(Head Stack Assembly)を組み立てる工程1207、HSAの試験工程1208を経て形成される。円板は、円板を形成する工程1209と、円板の試験工程1210を経て形成される。次に、HSAと円板とスピンドルモータ等の部品を組み合わせて、HDA(Head Disk Assembly)を組み立てて、サーボ信号を書き込む工程1211、HDAの試験工程1212、HDAとプリント基板等の部品よりHDDを組み立てる工程1213、HDDの試験工程1214を経て、HDDが完成する。この磁気ディスク装置の各試験工程でそれぞれ部品やHDDの特性が計測される。
このような製造工程で得られる各試験測定値データに対し、本発明を適用する場合、例えば、工程1202、工程1204、工程1206、工程1208、工程1210、工程1212、工程1214の各試験工程で測定される全ての測定項目についてその測定値と測定順序を入力することで解を得ることができる。これにより、磁気ヘッドおよび磁気ディスクからHDDを製造する製造工程中の試験工程で測定される全ての測定項目の階層的な関係を特性要因図で視覚化することができる。
また、測定項目ごとではなく、試験工程ごとに順序番号を設定して適用する場合、試験工程が異なる測定項目の関係のみを求めることもできる。工程1201から工程1208と、工程1209は必ずしも順序づけができないため、同じ順序番号を与えて本実施例を適用してもよい。
図12は、磁気ディスク装置の製造工場の概略を示した図である。この例で、素子形成工場310は図11の工程1201、工程1202を実施し、円板工場320は工程1209、工程1210を実施する。また、スライダ加工工場330は工程1203、工程1204を実施し、組立工場340は工程1205、工程1206、工程1207、工程1208、工程1211、工程1212、工程1213、工程1214を実施する。それぞれの工場には、多種多様な製造装置と試験装置があり、これら全ての製造装置と全ての試験装置は、ネットワーク354で接続され、かつ、生産管理装置351、設備データ管理装置352、試験データ管理装置353、要因分析装置300とも接続されている。
例えば、素子形成工場310の中には、露光装置311、成膜装置312などの製造設備があり、露光装置311が有する位置決めセンサが測定したデータは、処理したウエハの製造番号とともに設備データ管理装置352に格納されて管理され、成膜装置312が有するガス流量センサが測定したデータは、処理したウエハの製造番号とともに設備データ管理装置352に格納されて管理されている。また、素子形成工場310の中には、工程1202を実行するための試験装置319があり、試験装置319が測定したデータは、処理したウエハの製造番号やウエハ上の測定座標とともに試験データ管理装置353に格納されて管理されている。同様に、円板形成工場320、スライダ加工工場330、組立工場340の中にある各製造設備から得られるデータや各試験装置から得られるデータは、設備データ管理装置352や試験データ管理装置353に格納されて管理されている。
本実施例は要因分析装置300に適用されて実施される。要因分析装置300は、各製造設備から得られたデータを設備データ管理装置352からネットワーク354を介して取得し、また、各試験装置から得られたデータを試験データ管理装置353からネットワーク354を介して取得する。要因分析装置300では、これら取得した測定値データと、測定項目の順序情報を与えることにより実行される。
以上のように、複数の工程を経て製造され多数の測定項目を持つ磁気ディスク装置を対象として、本実施例に係る要因分析装置を用いることにより、測定項目間の関係を可視化できるため、特別な製品知識がなくても多数の測定項目間の関係を把握することが容易になる。これにより不良発生時の対策項目の特定やプロセス制御の対象項目の特定が容易になり、早期の不良対策やプロセス制御適用が可能となる効果がある。また、上述は磁気ディスク装置の製造工程を対象に本実施例を適用した例であるが、その他の装置や製造物にも適用可能である。
次に、実施例1で示した測定値データを用いて、同順位が含まれている順序情報を指定した場合の例を説明する。例えば、図2に示した測定項目において、項目P7と項目P8の測定が同時である場合、項目P7の測定値を用いて、項目P8を制御することはできない。このような場合には、項目P7と項目P8に同順位の順序を指定することができる。図14に、図2に示した測定値データの測定項目の順序情報の一例を示す。図15は、ステップ101で、図2に示した測定値データと図14に示す順序情報を入力として要因分析処理102を行った場合における、重回帰係数表103の例を示す。図14で同順位に指定した項目は説明変数に含まれていないことが分かる。例えば、項目P8の説明変数に着目すると、図3に示す順序情報を与えた場合には、図5より項目P2、P4、P7が選択されている。一方、図14で示す順序情報では項目P7と項目P8は同順位であり、図15では項目P8の説明変数は項目P1、P2、P5となっており、項目P7は含まれていないことが分かる。図16は、項目P8を対象として、図15の重回帰係数表基づいて作成した特性要因図の一例である。本例では、項目P8に最も大きい影響を与えているのは項目P5であり、さらに項目P5を調整するには項目P3と項目P2を調整することが有効であることがわかる。このように、本発明を用いることにより多数の項目の測定順序や工程順序に応じた階層関係を容易に把握することができる。
300…要因分析装置、 301…ネットワークインタフェース、 302…制御部、 303…2次記憶装置、 304…主記憶装置、 305…演算部、 306…ユーザインタフェース、 310…素子形成工場、 311…露光装置、 312…成膜装置、 313…エッチング装置、 319…試験装置、 320…円板形成工場、 321…成膜装置、 322…塗布装置、 323…洗浄装置、 329…試験装置、 330…スライダ加工工場、 331…切削装置、 332…研磨装置、 333…露光装置、 339…試験装置、
340…組立工場、 341…HSA組立装置、 342…HDA組立装置、 343…サーボライト装置、 349…試験装置、 351…生産管理装置、 352…設備データ管理装置、 353…試験データ管理装置、 354…ネットワーク、 361…測定値、順序情報入力手段、 362…要因分析手段、 363…要因分析対象項目指定手段、 364…特性要因図作成手段、 371…測定値データテーブル、 372…順序情報データテーブル、 373…重回帰係数テーブル

Claims (6)

  1. 製造工程において測定した各部品及び製造物の特性値に基づいて、ユーザが製造物の品質管理データを分析することを支援する装置であって、
    評価の対象の部品及び製造物の各特性に関して、製造工程中において試験して得られた測定値データと、それら各測定項目の試験工程における試験時刻の時系列順序を表わす測定項目順序情報または試験工程順序情報の入力を受付け、受付けた測定値データと順序情報を2次記憶装置へ格納する手段と、
    前記測定値データを、前記順序情報に従って並べ替え、各測定項目を回帰分析の目的変数と決めた場合に、前記順序情報において該測定項目より前に在り、かつ該測定項目と所定値以上の相関関係を持つ測定項目を回帰分析の説明変数と選択して、該目的変数に対する重(単)回帰分析を実行して、各測定項目毎の説明変数の重(単)回帰係数を算出して、2次記憶装置へ格納する手段と、
    ユーザより要因分析の対象測定項目の指定を受付ける手段と、
    前記指定された対象測定項目を最上位ノードの目的変数として、該目的変数の説明変数に当たる測定項目を下位ノードの説明変数として枝別れしたノードのデータを作成し、更に各下位ノードを目的変数とする説明変数の下位ノードを順次階層的に相対位置を算出する処理を繰り返して、特性要因図を作成して、ユーザインタフェースへ表示する手段と、
    を有することを特徴とする要因分析装置。
  2. 前記特性要因図において、最上位ノード以外の各ノードの一端に近接して、各ノードの上位ノードに対応付けられた測定項目を目的変数とした場合の、説明変数となる測定項目名とともに、前記目的変数に対する寄与度を表わす重(単)回帰係数を表示することを特徴とする請求項1に記載の要因分析装置。
  3. 前記特性要因図において、下位ノードとして枝別れした要因として示される測定項目は、前記測定項目順序情報または試験工程順序情報において、ユーザが指定した要因分析の対象測定項目より前の順序であり、かつ、前記特性要因図で示されるすべての階層構造において、ユーザが指定した要因分析の対象測定項目に近い階層の測定項目は、前記測定項目順序情報または試験工程順序情報において、ユーザが指定した要因分析の対象測定項目から遠い階層の測定項目より後の順序であることを特徴とする請求項1に記載の要因分析装置。
  4. 前記各測定項目毎の説明変数の重(単)回帰係数を算出して、2次記憶装置へ格納する手段は、
    前記測定値データを、前記順序情報に従って並べ替え、全ての測定項目において特性値の平均と分散が等しくなるように測定値データの標準化を行い、各測定項目を回帰分析の目的変数と決めた場合に、前記順序情報において前記目的変数と決めた測定項目より前に在る測定項目を説明変数候補として選択し、前記説明変数候補の中で最も前記目的変数と決めた測定項目と相関が高く、かつその相関係数が所定値以上である測定項目を説明変数と選択し、続いて、選択された説明変数による前記目的変数の重(単)回帰分析を行い、その回帰誤差と前記説明変数候補の中で最も相関が高く、かつその相関係数が前記所定値以上である測定項目を、更に説明変数として追加する処理を繰り返し、全ての測定項目に対する説明変数の選択と、重(単)回帰係数を算出して、2次記憶装置へ格納する手段であることを特徴とする請求項1に記載の要因分析装置。
  5. 前記特性要因図で示される階層構造において、ユーザが指定した要因分析の対象測定項目に近い階層の測定項目に対する、ユーザが指定した要因分析の対象測定項目から遠い階層の項目の寄与度が表示されていることを特徴とする請求項1に記載の要因分析装置。
  6. 前記特性要因図で示される階層構造が、重回帰分析における目的変数と説明変数の関係にあり、前記寄与度が重回帰係数であることを特徴とする請求項1に記載の要因分析装置。
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