JP7359345B2 - 安全情報管理システムおよびその方法 - Google Patents
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Description
然るに、特許文献1,2には、危険の因果関係の分析を行うとか、その原因を把握するとか等、については何ら開示されていない。
本発明の他の目的は、危険の因果関係を把握して、発生する可能性のある危険に対して安全情報を生成して提供することにある。
前記安全情報に係る複数のキーワードを記憶する第1データベース(DB)と、
該第1DBに管理されている複数のキーワードの関係を基に、因果関係ネットワークを作成する第1処理部と、
前記第1処理部により生成された該因果関係ネットワークを用いて、該キーワード間の寄与度を計算する第2処理部と、
該第2処理部による処理に従って危険の原因を求めることを特徴とする安全情報管理システム、として構成される。
前記項目に関連する2つの前記ノードを選択して、原因に相当する項目と、該項目に関連する寄与度を計算して、該計算の結果を出力する第3処理部を有する、前記安全情報管理システムとして構成される。
前記危険を報告する、複数の項目を有する報告シートを記憶する第2DBと、前記報告シートに記載された複数の項目からキーワードを抽出して、前記項目リストに記録する第4処理部と、を有する、前記安全情報管理システムとして構成される。
本発明はまた、安全情報管理システムによる安全情報管理方法としても把握される。
好ましい実施例を説明する前に、実施例に至った動機ないし経緯について概略説明する。
発明者らは、生産現場や建設現場等(以下、単に現場という)における安全性を高めるためには、下記の4つに着目することが重要であり、それらの情報を現場の管理者や担当者で共有することで現場の安全性が向上する、と考えた。
・これまでどのような事故が発生したか。
・事故やヒヤリハットの原因はどのようなもので、その中で何れの原因が最も要因として大きいか。
・今後どのようなヒヤリハットは発生しやすいか。
・特定のキーワードに注目する。
図1は、安全情報管理システムの構成を示す。
安全情報管理システムは、安全情報を処理するコンピュータ10と、複数の端末151,152(以下、符号15で総称することがある)が、ネットワーク19を介して接続して構成される。コンピュータ10には複数の端末141~143(以下、符号14で総称することがある)が接続される。なお、1又は全ての端末14はネットワーク19を介してコンピュータ10に接続されてもよい。
端末14は、ヒヤリハット・事故調表のデータを入力するために使用される装置である。端末14は、主に、プログラムを実行して情報処理を行う処理部(CPU)と、入力部1401と、表示部1402を有している。複数の端末14は種々の処理機能を有する機器であってよい。例えば、端末141はネットワークに接続される机上据置き型計算機や携帯端末のような外部機器であり、端末142はヒヤリハット・事故調表のデータをフォームデータ、表形式データにより入力することができる端末であり、端末143は、画像化された紙の調表データから、記載項目に関わる部分の文章列やチェック項目、選択項目の記載解析を行い、項目データを取り出すことができる装置である。また、端末14には管理者等の特定の者が使用することができる機器(例えば端末141)が含まれてもよい。
分析サーバ11は、文章処理部111、項目処理部112、ノード選択部113、解析部114、出力処理部115、を有する。ここで、項目処理部112は、条件確率生成部1121、共分散計算部1122、偏相関計算部1123、低相関削除部1124、グラフデータ生成部1125を有する。これらの各機能部は、分析サーバ11が有するハードウェア資源である処理部(CPU)がプログラムを実行することで実現される。
文章処理部111は、主に、文書解析部と、キーワード整理部を有して構成される。文章解析部は、ヒヤリハット・事故調表(以下単に調表という)30に記載された文章から形態素解析によってキーワードを抽出する機能と、調表30にチェック記号「レ」が記入された部分の項目名を抽出する機能と、調表での選択部分の項目名を抽出する機能を有する。なお、調表30は電子データであることを前提としているが、手書きの紙調表でもよい。紙調表の場合、上記の抽出機能は、紙調表の画像から文字認識した後の調表データに対して行われる。形態素解析は単語列による文章から文脈を推定しキーワードを抽出する。また、キーワード整理部は、文章解析部で抽出したキーワードを整理する。具体的には、類似のキーワードで異なる単語が使われている場合には、これを同一のキーワードに変換する機能である。
理解の都合上、まず、DB13の構成について説明する。
安全情報DB131は、作成された因果関係ネットワーク(後述する)や項目キーワードの寄与度等を安全情報として格納するDBである。調表DB132は、ヒヤリハット・事故調表30を格納するDBである。項目リストDB133は、ヒヤリハット・事故調表30から選択される、項目ごとのキーワードを記載した項目リスト40を格納するDBである。関連情報DB134は、ヒヤリハット・事故データ以外に使用するデータを格納するDBであり、例えば、温度データを格納する温度DBや天候データを格納する天気DB等の環境情報を格納するDB、等である。
ここで、契約者登録部121は、安全情報を参照する契約者を登録する処理を行う。契約者は例えば、「・・会社」や「・・事業所」等の事業体であり、契約者登録部121は、事業体の名称、住所、参照条件、契約条件等の契約に関する情報の登録処理を行う。
項目管理部124は、調表30から項目ごとのキーワードを選択して、項目リスト40に記録する、項目リストを作成する処理を行う。
調表30において、301はこの調表を作成した報告日、302は事象の発生日時を指定する発生日時、303は報告者名、304は報告者の職級、305は遭遇者名、306は遭遇者の職級である。
307はヒヤリハット・事故のタイトル(名称)が文字で記入される。308はヒヤリハット・事故の発生状況を示し、図示の例では、該当する個所にチェック「レ」を入力することで1つを選択可能である。事象の選択は、共通項目としての利用が可能であり、分析に有用となる。なお、画面形式の場合、該当項目をプルダウン式で表示して、選択できるようにしてもよい。
なお、図示の調表30は一例であり、管理対象とする現場や事業所に応じて、項目内容や項目数を適宜変更して設定することができる。また、提出される調表30はその項目の全てが記入されているとは限らない。例えば、リスクレベル319が未記入の場合もある。
項目リスト40は、調表30に記入されたデータが項目ごとに整理される。項目リストは14個の項目から構成されるテーブルであり、各項目には、調表30から選択されるキーワードがデータとして記入される。なお、調表データを項目ごとに整理することから整理リストまたは整理テーブルと呼んでもよい。
402はヒヤリハット発生季節であり、例えば、3月~5月を春、6月~8月を夏、9月~11月を秋、12月~2月を冬として、春、夏、秋、冬の何れかの単語が入力される。季節は、調表30の発生日304を基に判断される。このように発生日をさらに季節のような概念で分類することで、季節ごとのヒヤリハット・事故の発生の因果関係を捉えることができる。
404は発生場所310に、405は発生状況308に、406は発生原因309に、それぞれ対応する項目である。また、408は原因詳細312に、409は結果314に、410は結果詳細315に、それぞれ対応する項目である。411は対策316に、412は対策詳細であり、対策内容に対応する項目である。413はリスク評価であり、リスクレベル319に対応する数値が記入される。
なお、上記のように、項目リスト40が作成された後に、項目リスト40の画面形式のデータを端末14の表示部1402に表示して、担当者に確認させるようにしてもよい。
ステップ501:項目リスト40の読み出し。
アクセス管理部123が、項目リストDB133を検索して、項目リスト40を読み出す。
ステップ502:項目ペアの選択と繰り返し計算。
項目リスト40にある項目ペアを選択する。項目ペアとは、項目リスト40にある14個の項目から1つずつ項目を選択して、2つの項目から成る組にすることである。選択される項目ペアは、計算上、91個となる。全ての項目ペア(選択される項目ペアの数)について、ステップ503とステップ504の処理を繰り返す。項目どうしの因果関係を分析することが本実施例の特徴の1つである。
条件付確率生成部1121が、項目の組み合わせについて、その組み合わせが項目リスト40に含まれる頻度を算出する。この計算結果を基に、条件付確率生成部1121が条件付確率を計算する。条件付確率では、次のように出現頻度を計算する。項目リスト40中のエントリの数(即ち調表の数)をN個とする。ある2個の項目分類に注目し、ある項目Aが現れたとき、もう一方の項目Bが現れるケース数をPとする。ヒヤリハット・事故調表の数をNとすると、条件付確率は、
P/N ・・・式1
となる。
P/N ・・・式2
となる。
Kij=Mi×Mj ・・・式3
である。
次に、共分散計算部1122が共分散CoVを計算する。項目iと項目jの共分散vijを計算する式は、
Vij= E[(Xi-μi)(Xj-μi)]=E[(Xj-μi)(Xi-μi)] ・・・式4
により与えられる。ここで、E[*]は*の平均値をとる操作を示す。Xiは項目の出現数である。μiは項目iの出現数の平均値である。
偏相関計算部1123が共分散行列から相関行列Mを計算する。相関行列Mは、次式より計算する。
この相関行列の行列要素は
偏相関計算部1123が引き続き、相関行列Mから偏相関行列を計算する。偏相関行列をPとすると、
P=M-1 ・・・式8
となる。従って偏相関行列は相関行列の逆行列を求めることにより得られる。偏相関行列の要素は、
低相関削除部1124が、偏相関行列の項目間の要素を取り出す。
ステップ508:偏相関行列要素の選択。
偏相関行列の要素(i,j)に関して、iを固定した時に、(i, j)の各jに対応する要素を検索し、その値に対して、ノード選択部113がノードの選択を行う。
・最大値(正値)から順番にあらかじめ決められた数を選択する。そして、相関の絶対値の最大値から指定された数だけの項目の組み合わせを選択し、それ以外は削除する。
・あらかじめ決められた相関係数の閾値を参照して、閾値よりも大きな場合は、相関ありとして選択し、閾値の低いものは相関なしとして削除する。
いずれの方式を採用してもよいが、本実施例では後者を採用する。
選択ノードとリンクについて項目名、偏相関値をセーブ(記憶部(不図示)に格納)する。
ステップ510:孤立ノードの検出と再接続。
ステップ508でリンク構造が決まるが、このとき、リンクが無く、孤立したノードが出現する可能性がある。例えば、図6(b)ではノード605が孤立している。グラフデータ生成部1125は、孤立ノードの再接続を行う。すなわち、孤立しているノード605と他のノードとを再接続することで、因果関係における関連性を再構築する。その結果、図6(c)に示すように、ノード605に対して、ノード602、603が接続された。
ステップ510まででノードとリンクによるネットワーク構造が得られると、引き続き、グラフデータ生成部1125は、リンクに向き付けを行うことで因果関係を記述する。因果関係を決定するため、情報基準を用いる。ここでは、MDL(最小記述長さ:Minimum Description Length)を用いる。MDLは情報の記述の大きさを比較する量であり、次のように記述する。
また、項目Aが発生した条件で項目Bが発生する条件付確率はP(B|A)であるため、
・MDL1<MDL2 ⇒ノードAからノードBへの向き付けをする
・MDL1>MDL2 ⇒ノードBからノードAへの向き付けをする
によって向き付けを決定する。
ステップ510の結果、矢印をたどると、ループが発生する可能性がある。図6(d)では、リンク602、603、605が1つのループを形成している。グラフデータ生成部115は、このようなループを消去する。ループを消去する理由は、因果関係が無限ループに陥るのを防ぐためである。
開始ノード、終了ノードを同じノードに設定する。エッジ重みρは、各リンクに1,2、…Nと重複しないように割り付ける。
サブステップ2:最短ルート検索。最短ルート検索を実施する。
サブステップ3:エッジの消去。2回以上の探索で自身に戻ることがあれば、そのループから最小のρを有するエッジを消去する。
ループが発生している場合、必ず、各ノードから2本のエッジが出ているため、ノードの孤立は起こらない。
ループが発見された場合は、このリンクの中で、偏相関値が最も小さくなるリンクを消去することになる。また、リンクの消去によって孤立ノードが発生する場合は、次の大きな偏相関値を持つリンクを消去する。これを繰り返すことによって、ループのない因果関係ネットワークを生成することができる。生成された因果関係ネットワークは、ノードとリンクとリンクの方向により定義つけされて、記憶部に一時格納される。
各ノードの寄与度を計算するため、解析部114は因果関係ネットワークに現れるノードを選択して寄与度となる確率を計算する。
ステップ514:ノードの選択。
ノード選択部113が、因果関係ネットワークの未計算のノードを選択する。
解析部114すなわち上流確率伝搬計算機能と下流確率伝搬計算機能が、確率伝搬を計算することで、各項目のヒヤリハット・事故に対する寄与度を算出する。この寄与度は確率(寄与度確率値)として算出することができる。計算に際して、まず、寄与度を計算するノードを選択する。そしてそのノードにつながっている矢印に関して原因の方向(上流)に追跡を行うことで、確率値の積算を行う。この計算方法を以下に示す。
P(EUP, ELW)は観測値のみから求めることができる。これらは、広く知られたベイズの定理である。P(X|EUP)およびP(X|ELW)については、
・Xの親と子のノードの方向に計算する。
・Xの計算で必要なのは、ノードと”関係”を有する親ノードと子ノードなので、親と子が親と子を持つ場合は、再帰的に計算する。
以上より、上流寄与度は以下の式によって計算する。
下流確率伝搬は以下の式となる。
安全情報DB131に格納された安全情報の提供が可能である。安全情報の提供としては、日替わり、季節替わり、リスク評価、天候替わり、温度替わり、などがあげられる。また、安全情報の提供に際して、影響の大きな項目の表示、ある特定のヒヤリハットや事故が発生した時にその要因のうち最も寄与度の高い要因を表示する、等があげられる。例えば、関連情報DB131に格納されている、天候情報や温度情報等の環境情報をキーワードに関係付けて、因果関係ネットワークに組み込むことで、ステップ501~516に示す方法で因果関係ネットワークを生成することができる。
ヒヤリハット・事故のうち、曜日に対応して頻発するものを検索して表示する、処理である。図7を参照する。
ステップ701:曜日ノードの選択。
例えば、管理者が端末141を操作することで、アクセス管理部123が安全情報DB131から因果関係ネットワークを読み出して、因果関係ネットワークを構成するノードとリンクの画面を端末141に表示する。管理者がノードとリンクの画面表示を見ながら、ノードを選択し、キーワードを入力することで行われる。(以下の説明におけるノードとキーワードの選択入力も同様である)。ノードが選択されると、ノード選択部113が、曜日のノードのなかで、参照する曜日に対応するノードを選択する。
ノード選択部113が、該当する曜日のノードに接続する上流、下流のノードを選択する。このとき、関連情報DB134を検索する。該当するノードの上流は、矢印の根元をたどることになり、ノードの下流は矢印の先をたどることになる。
ステップ703:寄与度の計算。
解析部114が、ステップ515~516の処理を実行する。この中で、原因に当たる項目とその寄与度を検索する。
ステップ704:結果、原因の並べ替え。
出力処理部115が、寄与度の大きさに基づいて、ヒヤリハット・事故の結果・原因にかかわる項目を並べ替えて、表示リストを作成する。表示リストは、端末15へ提供されて表示される。
図8に示すように、季節ごとの表示は、対象が異なるだけで、日替わり表示と同様の処理動作である。即ち、曜日項目に代わって季節項目が対象となる。具体的には、ヒヤリハット・事故調表から抽出された発生日が、3月~5月を春、6月~8月を夏、9月~11月を秋、12月~2月を冬として、因果関係ネットワークの項目を生成し、因果関係の生成を行う。この季節分析はヒヤリハット・事故調表に発生月の情報が記載されている場合に有効である。この結果に対して、日替わり表示と同じように、因果関係ネットワークを生成する。
ノード選択部113が、季節のノードのなかで、参照する季節に対応するノードを選択する。
ステップ802:上流、下流ノードの選択。
ノード選択部113が、該当する曜日のノードに接続する上流、下流のノードを選択する。このとき、関連情報DB134を検索する。該当するノードの上流は、矢印の根元をたどることになり、ノードの下流は矢印の先をたどることになる。
ステップ803:寄与度の検索。
解析部114が、ステップ515~516を実行して、原因に当たる項目とその寄与度を検索する。
ステップ804:対策項目の並べ替え。
出力処理部115が、寄与度の大きさに基づいて。結果、対策以外の項目を並べ替えて、表示リストを作成する。表示リストは、端末15へ提供されて表示される。
図9に示すように、天候替わりの表示は、日替わりや季節替わり表示と同様の処理動作である。即ち、曜日項目に代わって天候項目が対象となる。具体的には、ヒヤリハット・事故の発生日から天候データを参照して天候を項目として追加する。例えば、晴、曇り、雨のような分類を用いる。これらを因果関係ネットワークの項目として、因果関係の生成を行う。この結果に対して、日替わり表示と同じように、因果関係ネットワークを生成する。
ノード選択部113が、季節のノードのなかで、参照する天候に対応するノードを選択する。
ステップ902:上流、下流ノードの選択。
ノード選択部113が、該当する季節のノードに接続する上流、下流のノードを選択する。このとき、関連情報DB134を検索する。該当するノードの上流は、矢印の根元をたどることになり、ノードの下流は矢印の先をたどることになる。
ステップ903:寄与度の計算。
解析部114が、ステップ515~516の処理を実行する。この中で、原因に当たる項目とその寄与度を検索する。
ステップ904:結果、原因の並べ替え。
出力処理部115が、寄与度の大きさに基づいて、ヒヤリハット・事故の結果、原因にかかわる項目を並べ替えて、表示リストを作成する。表示リストは、端末15へ提供されて表示される。
リスク評価について、ヒヤリハット・事故調表に記載されていることがある。この場合、ヒヤリハット・事故調表に記載されたリスクレベル(リスク評価)が妥当であるか、を因果関係分析の結果から評価(リスク評価)することができる。これには、過去のヒヤリハット・事故調表に記載されたリスク評価結果を分析して、新たに提出されたヒヤリハット・事故調表の内容からリスク評価を行うことになる。
レベル1:直ちにリスク低減対策を行う必要はない。この場合は、教育や周知によって対応する。
レベル2:問題の発生が懸念される。このため、対策のための計画を立てて実行する。直ちに低減対策を行う必要はない。
レベル3:重大な問題があるので、優先的に対策を行う。
レベル4:直ちに解決すべき問題である。関係する行動をすぐに中止し、対策を講じなければならない。
この場合、各レベルに応じて、因果関係ネットワークのノードが1つあり、そのノードにその他の原因・結果項目が因果関係で繋がっている、前提である。これらの因果関係の繋がりを追跡することで、関係する項目とその寄与率を検索することができる。
ステップ1001:リスクレベルの選択。
例えば、管理者が端末141を使用して、リスクレベル1-4までの何れかのノードとキーワードを選択入力することで行う。リスクレベルが選択されると、ノード選択部113が、リスクレベルに対応するノードを選択する。
ステップ1002:確率伝搬の計算。
解析部114が、ステップ515~516の処理を実行する。すなわち、確率伝搬アルゴリズムに従って、接続したノードの確率伝搬の計算を行う。
対策以外の項目に対応するノードを選択し、その項目と因果関係で接続している項目と、その寄与度を全て取得する。これは、対策以外の項目が対策レベルに対してどの程度寄与しているかを判断でき、これによって対策レベルにその項目がどれぐらい寄与しているかがわかる。寄与度は、リスクレベルの項目ごとに、上流の確率伝搬と、下流への確率伝搬を計算したステップ515およびステップ516を行った段階で取得できる。
選択されたリスクレベルと、そのリスクレベルに接続される項目のキーワードの因果関係は、例えば図11のようになる。図中のキーワードのノードの数値は寄与度(%)を示している。
ステップ1001で選択された項目の寄与度をPiとして正規化の係数を求める。これはつぎの式により行うことができる。
式19を用いて、リスクレベルごとにリスクレベルの強度が計算された。その計算結果に基づいて、リスクレベルを判定する。
決定されたリスクレベルは、管理者用の端末141に表示される。管理者は、表示されたリスクレベルと、確認対象となっている(例えば手元にある)ヒヤリハット・事故調表に記載されたリスク評価とを比較することで、リスクレベルが妥当であるかの判定、および当該リスクレベルに関係する項目のキーワードの判断とすることができる。
ヒヤリハットや事故は、ヒヤリハット・事故調表の記載上では1つ程度の原因が提示されがちである。しかし、実際には複合的な原因に因る場合が多い。そこで、過去に報告された多数のヒヤリハット・事故調表に基づく項目データ(すなわち項目リストに蓄積された項目データ)も分析することで、複合的さらには確信的な原因を探り、提示することが出る。これが1つの特徴である。
図13は、上記例2において端末15に表示される表示画面1201の例を示す。表示画面1201は、寄与度の大きい項目を並べ替えられた、予め決められた数(例えば順位4位内)の、原因と寄与度から成る表示リストに基づく。表示リストは、雨:76%、荷物運搬:54%、A1出入口:23%、帰宅時:12%のように、原因1202とそれに対応する寄与度1203の対からなる。なお、寄与度の合計は必ずしも100%である必要はなく、あいまいさ(ファジー性)を持った値として表わされてよい。
実施例1では、コンピュータ10が、情報処理装置としての、分析サーバ11とDBサーバ12を有する、としている。他の例によれば、分析サーバ11とDBサーバ12は、ハードウェアとして別々の装置である必要はなく、1台の情報処理装置を用いて、分析サーバ11とDBサーバ12の機能を実現してもよい。また、ハードウェアとして1台の情報処理装置を用いる場合でも、分析サーバ11とDBサーバ12の機能をソフトウェア的に分離して構成してもよい。また、コンピュータ10の一部または全部の機能を、クラウドコンピュータ上に構成することも可能である。
また他の例として、端末14は、ネットワークを介して、コンピュータ10の分析サーバ11やDBサーバ12に接続するように構成してもよい。もちろん、その場合でも端末14とコンピュータ10の間にセキュリティが確保されることが必要である。
実施例1では分析サーバ11が文章処理部111を有しているが、他の例では、文章処理部111は、必ずしも、分析サーバ11に持たせる必要がなく、例えば、ヒヤリハット・事故調表のデータを入力する端末14に持たせてもよい。その場合、端末14が有する処理部が、文章処理部の機能を実行して、その処理結果(即ち抽出又は整理されたキーワード)が分析サーバ11へ送信されることになる。
実施例1では、管理者による端末4の入力指示に応じて、例1~例3の、「日替わり表示」等の表示リストを、端末15へ提供するとした。他の例によれば、利用者が使用する端末15を用いて、端末4が行う上記の入力指示、および表示リストの表示を行うようにしてもよい。
実施例1の調表30は一例であり、管理対象とする現場や事業所に応じて、項目内容や項目数を適宜変更することができる。例えば、同じ会社の複数の事業所を対象として管理する場合、事業所ごとに危険の種類が異なることがある。例えば、営業所と、炎天下で高所の作業場と、湿気の多い作業場、等ではそれぞれ危険が異なる。このような場合、それぞれの現場や事業所に応じて、項目の種類や数の異なった調表30が使用されることがある。或いは、全ての項目を含むような調表を用意しておいて、現場や事業所に応じて記入すべき項目を限定させるようにしてもよい。
管理対象とする現場や事業所に応じて、項目リスト40の項目内容や項目数を適宜変更することができる。例えば、上記調表の例の場合、複数種類の調表30に亘る全ての項目をカバーする最大限の項目を、項目リスト40に用意することができる。
実施例1では、調表30を基に項目リスト40を作成する、としている。この例2によれば、項目リスト40の全ての項目を必ずしも調表30から作成しなくてもよい。例えば、調表30に無い項目を他から取得して、項目リスト40に1または複数の項目を追加して作成することが可能である。例えば、長時間残業や徹夜勤務が続くと、ヒヤリハットや事故が発生し易いという傾向がある。そこで、項目リスト40に残業時間または勤休状態の項目を用意しておき、関連情報DB134の1つとして従業員の勤休を管理する勤休管理DBと連携させておく。ヒヤリハット・事故調表に記載された遭遇者305について、勤休管理DBから当該遭遇者の最近の残業時間または勤休状態のデータを取得して、項目リストに記入することができる。因果関係の分析では、ヒヤリハットや事故の原因として、長時間残業や徹夜勤務との関係が明らかになる。
実施例1では、項目リスト40の各項目401~414は、予め用意されている。然しながら、ヒヤリハットや事故の原因が必ずしも予め想定できるとは限らない。そこで、項目管理部124に項目リスト40の項目追加機能を持たせて、調表30に良く出てくる単語(頻度単語)を文章処理部111に抽出させる。項目管理部124は、文章処理部111が抽出した頻度単語に関連する項目(例えば上位概念の用語)を、項目リスト40に追加することができる。頻度単語の抽出は、複数の調表を対象として抽出することが好ましい。
11:分析サーバ
12:DBサーバ
13:DB
14、141~143:端末
15:端末
111:文章処理部
112:項目処理部
1121:条件付確率生成部
1122:共分散計算部
1123:偏相関計算部
1124:低相関削除部
1125:グラフデータ生成部
113:ノード選択部
114:解析部
115:出力処理部
121:契約者登録部
122:ユーザ登録部
123:アクセス管理部
124:項目管理部
131:安全情報DB
132:調表DB
133:項目リストDB
134:関連情報DB
Claims (14)
- コンピュータを用いて、事故またはヒヤリハットに関する安全情報を管理する安全情報管理システムであって、
事故またはヒヤリハットが発生した日時、場所、原因、結果を含む複数の項目ごとのキーワードを記録した項目リストを記憶する第1データベース(DB)と、
前記項目を示すノードと、該ノード間を接続するリンクによって規定され、該リンクで接続される2つの前記項目に含まれるキーワードについて出現の条件付確率を計算して、2つの該ノードの因果関係を表す向き付けを行うことで、前記事故またはヒヤリハットの該原因と該結果に関する全てのキーワードについて因果関係を持つ因果関係ネットワークを生成する第1処理部と、
該因果関係ネットワークを構成する、該ノードの上流の確率値の伝搬計算と該ノードの下流の確率値の伝搬計算を行うことで、原因と結果の連鎖の確率値を求めて、該項目の寄与度を算出する第2処理部と、
前記第2処理部により計算された、該因果関係ネットワークにおける原因となる前記項目と前記寄与度を、前記事故またはヒヤリハットの安全情報として出力する第3処理部と、
を有する安全情報管理システム。 - コンピュータを用いて、事故またはヒヤリハットに関する安全情報を管理する安全情報管理システムであって、
事故またはヒヤリハットが発生した日時、場所、原因、結果、リスクレベルを含む複数の項目ごとのキーワードを記録した項目リストを記憶する第1データベース(DB)と、
前記項目を示すノードと、該ノード間を接続するリンクによって規定され、該リンクで接続される2つの前記項目に含まれるキーワードについて出現の条件付確率を計算して、2つの該ノードの因果関係を表す向き付けを行うことで、前記事故またはヒヤリハットの該原因と該結果に関する全てのキーワードについて因果関係を持つ因果関係ネットワークを生成する第1処理部と、
該因果関係ネットワークを構成する、該ノードの上流の確率値の伝搬計算と該ノードの下流の確率値の伝搬計算を行うことで、原因と結果の連鎖の確率値を求めて、該項目の寄与度を算出する第2処理部と、
前記第2処理部により計算された、該因果関係ネットワークにおける原因となる前記項目と前記寄与度を、前記事故またはヒヤリハットの安全情報として出力する第3処理部と、を有し、
前記リスクレベルは複数の段階に定義され、
ノード選択部が、複数の段階に定義された前記リスクレベルの何れかのノードを選択し、
前記第2処理部は、選択された前記ノードについて確率伝搬の計算を行って、該ノードの寄与度を選択し、選択された該リスクレベルと、該リスクレベルのノードに接続される1または複数のノードについて前記項目のキーワードの因果関係を取得し、
該リスクレベルごとにリスクレベルの強度を計算し、その計算結果に基づいて、該リスクレベルを判定する、
ことを特徴とする安全情報管理システム。 - 前記第3処理部により出力される、前記項目の前記原因と前記寄与度を示す画面を表示する第2の端末を有し、
該第2の端末は、判定された前記リスクレベルを表示する、
請求項2の安全情報管理システム。 - コンピュータを用いて、事故またはヒヤリハットに関する安全情報を管理する安全情報管理システムであって、
事故またはヒヤリハットが発生した日時、場所、原因、結果を含む複数の項目ごとのキーワードを記録した項目リストを記憶する第1データベース(DB)と、
前記項目リストから選択された2つずつの前記項目の組み合わせについて、前記項目に含まれるキーワードについて出現頻度を条件付確率として計算する条件付確率生成部と、
前記項目間の条件付確率に基づいて共分散値を計算する共分散計算部と、
前記共分散値から前記項目間の関係性を表す偏相関を計算し、前記項目間の関係性の強さを示す数値を計算する偏相関計算部と、
前記偏相関計算部による計算結果を基に、前記項目を示すノードと、該ノード間を接続するリンクによって、因果関係を持つ因果関係ネットワークを生成するグラフデータ生成部と、を有する第1処理部と、
該因果関係ネットワークを構成する、前記項目に対応するノードの上流の確率値の伝搬計算と前記項目に対応するノードの下流の確率値の伝搬計算を行うことで、原因と結果の連鎖の確率値を求めて、該項目の寄与度を算出する第2処理部と、
前記第2処理部により計算された、該因果関係ネットワークにおける原因となる前記項目と前記寄与度を、前記事故またはヒヤリハットの安全情報として出力する第3処理部と、
を有する安全情報管理システム。 - 前記偏相関計算部による前記項目間の関係性の強さを示す数値(偏相関値)が、あらかじめ決められた閾値よりも低い偏相関値を有する前記項目の組み合わせを削除する低相関削除部を有する、請求項5の安全情報管理システム。
- 前記低相関削除部は、前記ノードから出てくる矢印が複数あり、前記偏相関値が前記閾値よりも大きくなる場合、前記偏相関値の大きさに従って小さい値を消去する、
請求項6の安全情報管理システム。 - 前記事故またはヒヤリハットを報告する、前記複数の項目を有する報告シートを記憶する第2DBと、
前記報告シートに記載された前記複数の項目からキーワードを抽出して、前記第1DBの前記項目リストにある前記複数の項目に記録する第4処理部と、を有する
請求項1、2、5の何れか1の項に記載の安全情報管理システム。 - 前記事故またはヒヤリハットを報告する、複数の項目を有する報告シートの入力を行う第1の端末と、
前記第3処理部により出力される、前記項目の前記原因と前記寄与度を示す画面を表示する第2の端末を有する
請求項1、2、5の何れか1の項に記載の安全情報管理システム。 - コンピュータが、事故またはヒヤリハットに関する安全情報を管理する安全情報管理方法であって、
事故またはヒヤリハットが発生した日時、場所、原因、結果を含む複数の項目ごとのキーワードを記録した項目リストを第1データベース(DB)に記憶するステップと、
前記項目を示すノードと、該ノード間を接続するリンクによって規定され、該リンクで接続される2つの前記項目に含まれるキーワードについて出現の条件付確率を計算して、2つの該ノードの因果関係を表す向き付けを行うことで、前記事故またはヒヤリハットの該原因と該結果に関する全てのキーワードについて因果関係を持つ因果関係ネットワークを生成する第1処理ステップと、
該因果関係ネットワークを構成する、該ノードの上流の確率値の伝搬計算と該ノードの下流の確率値の伝搬計算を行うことで、原因と結果の連鎖の確率値を求めて、該項目の寄与度を算出する第2処理ステップと、
前記第2処理ステップにより計算された、該因果関係ネットワークにおける原因となる前記項目と前記寄与度を、前記事故またはヒヤリハットの安全情報として出力する第3処理ステップと、
を有する安全情報管理方法。 - コンピュータが、事故またはヒヤリハットに関する安全情報を管理する安全情報管理方法であって、
事故またはヒヤリハットが発生した日時、場所、原因、結果、リスクレベルを含む複数の項目ごとのキーワードを記録した項目リストを第1データベース(DB)に記憶するステップと、
前記項目を示すノードと、該ノード間を接続するリンクによって規定され、該リンクで接続される2つの前記項目に含まれるキーワードについて出現の条件付確率を計算して、2つの該ノードの因果関係を表す向き付けを行うことで、前記事故またはヒヤリハットの該原因と該結果に関する全てのキーワードについて因果関係を持つ因果関係ネットワークを生成する第1処理ステップと、
該因果関係ネットワークを構成する、該ノードの上流の確率値の伝搬計算と該ノードの下流の確率値の伝搬計算を行うことで、原因と結果の連鎖の確率値を求めて、該項目の寄与度を算出する第2処理ステップと、
前記第2処理ステップにより計算された、該因果関係ネットワークにおける原因となる前記項目と前記寄与度を、前記事故またはヒヤリハットの安全情報として出力する第3処理ステップと、を有し、
前記リスクレベルは複数の段階に定義され、
複数の段階に定義された前記リスクレベルの何れかのノードを選択し、
前記第2処理ステップは、選択された前記ノードについて確率伝搬の計算を行って、該ノードの寄与度を選択し、選択された該リスクレベルと、該リスクレベルのノードに接続される1または複数のノードについて前記項目のキーワードの因果関係を取得し、
該リスクレベルごとにリスクレベルの強度を計算し、その計算結果に基づいて、該リスクレベルを判定する、
ことを特徴とする安全情報管理方法。 - コンピュータが、事故またはヒヤリハットに関する安全情報を管理する安全情報管理方法であって、
事故またはヒヤリハットが発生した日時、場所、原因、結果を含む複数の項目ごとのキーワードを記録した項目リストを第1データベース(DB)に記憶するステップと、
前記項目リストから選択された2つずつの前記項目の組み合わせについて、前記項目に含まれるキーワードについて出現頻度を条件付確率として計算する条件付確率生成ステップと、
前記項目間の条件付確率に基づいて共分散値を計算する共分散計算ステップと、
前記共分散値から前記項目間の関係性を表す偏相関を計算し、前記項目間の関係性の強さを示す数値を計算する偏相関計算ステップと、
前記偏相関計算ステップによる計算結果を基に、前記項目を示すノードと、該ノード間を接続するリンクによって、因果関係を持つ因果関係ネットワークを生成するグラフデータ生成ステップと、を有する第1処理ステップと、
該因果関係ネットワークを構成する、前記項目に対応するノードの上流の確率値の伝搬計算と、前記項目に対応するノードの下流の確率値の伝搬計算を行うことで、原因と結果の連鎖の確率値を求めて、該項目の寄与度を算出する第2処理ステップと、
前記第2処理ステップにより計算された、該因果関係ネットワークにおける原因となる前記項目と前記寄与度を、前記事故またはヒヤリハットの安全情報として出力する第3処理ステップと、
を有する安全情報管理方法。 - 前記偏相関計算ステップによる前記項目間の関係性の強さを示す数値(偏相関値)が、あらかじめ決められた閾値よりも低い偏相関値を有する前記項目の組み合わせを削除する低相関削除ステップを有する、請求項12の安全情報管理方法。
- 第1の端末が、前記事故またはヒヤリハットを報告する、複数の項目を有する報告シートの入力を行い、
第2の端末が、前記第3処理ステップにより出力される、前記項目の前記原因と前記寄与度を示す画面を表示する
請求項10、11、12の何れか1の項に記載の安全情報管理方法。
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