JP5349563B2 - 軸肥大加工方法 - Google Patents
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(l:肥大部のワーク軸方向における幅,l0:ワークの初期掴み幅,ε0:特定の肥大率に対する軸圧縮ひずみ,Nθ:設定曲げ角度に達するまでの回転数)の式に実測値を当てはめて得られるn(n:ワーク材の材料定数)及びN0(N0:回転時定数)を、
(D0:ワークの素材直径)の式に代入すると共に、前記肥大部直径Dを代入して、軸肥大加工回転回数Nの最適な条件を算出し、さらに、ワークの肥大成形させる部分での体積不変の原則から得られる
の式からワークの初期掴み幅l0を算出し、前記ワークは、取得したワークの初期掴み幅l 0 分間隔を離間して前記一対の保持部に保持し、当該保持部間のワークを、取得した圧縮応力に対する最適なワークの温度に加熱して、又は、当該保持部間のワークに、取得したワークの温度に対する最適な圧縮応力を加えて、取得した軸肥大加工回転回数Nだけ当該ワークの軸心回りに回転を付加してワークの任意の位置に所望の肥大部を成形することを特徴とする。
次に、ワークWに軸肥大加工を施すための軸肥大加工装置は、ワークWを保持する一対の保持部2,2を備えている。この保持部2,2は、ワークWを保持した状態で少なくとも一方の保持部2が他方の保持部2に接近及び離間可能に構成されており、両保持部2,2にて保持したワークWに圧縮圧力を作用させることができるよう構成されている。さらに、両保持部2,2は保持したワークWを軸心回りに回転可能に構成されている。また、少なくとも一方の保持部2は他方の保持部2の軸心と交差するように偏倚可能に構成されており、両保持部2,2にて保持したワークWに曲げを作用させることができるよう構成されている(図1の(a)及び(c)参照)。
また、ワークWの加熱後に軸肥大加工する手順としては、ワークWを回転させながら、ワークWの加熱後に円弧型コイルを保持部2,2間から外し、その後、曲げ角度θまでワークWに曲げを付加し、次いで圧縮圧力を付加した(図1の(a)から(c)参照)。これら、回転、圧縮圧力、曲げがワークWに作用すると、ワークWの曲げの内側に位置する箇所に凸部が成形される。そして、ワークWを回転させることによって、該凸部をワークWの全周に渡って累積させ、肥大部を成形させる(図1の(d)参照)。然る後、所定の軸肥大加工回転回数に達すると、曲げ戻しを行い、ワークWを真直化させる(図1の(e)参照)。そして、ワークWを真直化した後に、圧縮圧力と回転を停止させ、ワークWを保持部2,2から取り出す。
さらに、ワークWの温度測定としては、赤外線温度計を用いて、ワークWの加熱直後から軸肥大加工終了までの表面温度を実測した。
また、加熱装置1にて加熱されたワークWの表面及び内部の温度分布とその変化を把握するために、汎用ソフトによるFEM解析を行った。さらに、図1の(a)におけるワークWと両保持部2,2の中心軸横軸断面を図2に示すようにモデル化して、軸肥大加工中の温度変化も考慮して、軸肥大変形挙動も解析できるように2次元平面ひずみ問題として連成解析を行った。なお、両保持部2,2は単純化のために剛体として解析した。また、この解析における熱的及び機械的付加の入力として、実際の軸肥大加工条件に合わせて、ワークWの加熱部分の表層部に熱流束分布を与えて加熱源とし、所定の時間だけ加熱した後に加熱源を外し、偏倚させる保持部2に振り子運動させながら、他方の保持部2の端部より圧縮圧力を与えた。また、前記加熱源としての熱流束は、前記加熱装置1によるワークWの加熱直後に実測した温度分布に解析結果が一致するようにワークW表面部分に熱流束分布を与えた。なお、このとき、ワークWからの前記保持部2,2への放熱は熱伝導による自然放熱を考慮し、他の表面からの放熱は大気への自然放射冷却を考慮した。また、ワークWの降伏応力σy、ヤング率E、熱膨張係数α、比熱C及び熱伝導率λの温度依存性としては実測値をもとに数式化して用いた。
図3は各加熱条件における加熱直後のワークW表面における軸方向の温度分布を示している。これによると、最大温度レベルにあるワークW表面の領域は加熱時間の増大と共に増大することが分かる。
次に、図4は加熱時間の増大に伴うワークWの表面最大温度における加熱直後温度Thと軸肥大加工開始時の温度TS及び軸肥大加工終了時の温度Tfの各温度変化を示している。これによると、ワークWの加熱時間theat=60sec以上となると、ワークWの表面最大温度の上昇は次第に飽和していくことが分かる。また、ワークWの加熱時間theat=60sec以上となると、加熱直後から軸肥大加工開始までの間に、ワークWの最大表面温度が100Kから200K程度の温度低下を示す傾向がある。さらに、軸肥大加工開始時と軸肥大加工終了時のワークWの表面最大温度が、加熱時間theat=50sec以上で逆転する傾向があることが分かる。
また、図5は一方の保持部2における軸肥大加工開始から終了までの表面最大温度の変化を示しており、図6はワークWの表面最大温度の軸肥大加工開始から終了までの表面最大温度の変化を示している。これによると、該保持部2の温度は加熱時間theat=100sec以上で、ワークWの温度は加熱時間theat=40sec,50secで、青熱脆性温度域に入ることが分かる。
まず、図7はワークWの加熱時間をパラメータとして、ワークWの軸肥大加工回転回数Nの増大に伴うワークWの肥大率D/D0の挙動を示している。これによると、加熱時間theat>50secでの軸肥大変形挙動は明瞭に加熱時間の影響を受け、ワークWの肥大部の変形速度は加熱時間の増大と共に急速な増大を示すことが分かる。また、ワークWの軸肥大加工回転回数N=20までの肥大率D20/D0に着目すると、加熱時間の増大に伴う肥大率D20/D0の変化は図8に示すようになる。これによると、加熱時間theatが30sec<theat<50secの加熱時間域では、ワークWの肥大率D20/D0はワークWを加熱しない場合よりも低いことが分かる。このように、ワークWの肥大率が低下することは青熱脆性の発生に起因すると推察される。また、加熱時間theat>50secとなると、軸肥大加工に対する加熱時間の効果が明瞭に現れ、加熱時間が増大するほど、その効果が一層向上することが分かる。しかしながら、加熱時間theat=100secでは、破断には至らないが図9に示すように、軸肥大加工終了直前にワークWのフィレット部にき裂が発生した。このき裂の発生は、軸肥大加工最終段階時にワークWの前記フィレット部が青熱脆性温度域にあることに起因している。しかし、加熱時間theat=110sec程度以上の予加熱時間では、ワークWにき裂損傷が発生することはなく、軸肥大加工にとってワークWの加熱が極めて有効となることが分かる。
また、図10は各加熱条件での軸肥大加工中におけるワークWの最大表面温度(加熱直後)Th,最大表面温度(加工開始時)TS,最大表面温度(加工終了後)Tfの各温度変化とワークWの肥大率D20/D0との関係を示している。これによると、軸肥大加工中でのワークWの最大表面温度の変化は軸肥大加工開始時の温度曲線と軸肥大加工終了時の温度曲線との間にあり、この軸肥大加工中でのワークWの最大表面温度の温度変化がワークWの肥大率D20/D0に影響を及ぼしていることが分かる。さらに、軸肥大加工開始時のワークWの表面最大温度TSが約758K以下では、図11の(a)及び(b)にも示すように、ワークWの加熱による効果はほとんどなく、むしろ常温での軸肥大加工よりもワークWの肥大率D20/D0は低下している。また、ワークWの表面最大温度TSが約856K以上では、図11の(c)にも示すように、常温での軸肥大加工では期待できない二倍以上の肥大率D20/D0が得られ、ワークWの加熱による非常に大きな効果が明瞭に現れる。
軸肥大変形挙動は、ワークWの軸方向の平均的な圧縮塑性ひずみが曲げによる交番応力で進行するのを考慮して定式化をはかると、軸圧縮変形挙動として数4(数1)の式で表される。
一方、ワークWの被圧縮部(肥大部)での体積不変を考慮して、数5(数3)の式を数4(数1)の式に代入すると数6(数2)の式が得られ、図7中に示す破線のように軸肥大変形挙動の推定式として表すことができる。
この軸肥大加工における加工速度∂(D/D0)/∂Nは回転時定数N0の値が小さくなる条件ほど速くなる。ここで、これらの軸肥大変形特性を加工開始時のワークWの最大表面温度TSと回転時定数N0の関係で表すと、図12に示すような傾向がある。すなわち、最大表面温度TSが高くなるほど、回転時定数N0は小さくなるが、ワークWの再結晶温度Tr以上になると急速に回転時定数N0が低下する傾向がある。また、最大表面温度TS=523K〜673Kの範囲を除いて考えると、最大表面温度TSと回転時定数N0の関係の傾向は、図12中の二本の実線で示されるように数7の式で定式化できる。
一方、軸圧縮荷重一定での各加熱条件における軸肥大加工の圧縮応力σcを、各ワークWの最大表面温度TSでの降伏応力σyで基準化した値σc/σyにより、回転時定数N0に及ぼす圧縮応力σcの影響を検討すると、図13に示すような傾向を示す。すなわち、この影響もまた、最大表面温度TS=473K〜623Kの範囲を除いて考えると、再結晶温度Tr域を境に変化する傾向がある。この傾向は軸肥大加工に及ぼすワークWの加熱による温度の効果が降伏強度の温度依存性による低下に支配されていることを示唆している。
まず、ワークWの軸肥大加工開始時の最大表面温度TS=473K〜523Kとなる加熱時間theat=30sec,40sec及び50secでの軸肥大加工においては、最大表面温度TSが図14に示すようにほとんど青熱脆性温度域内で軸肥大変形が進行するため、肥大率D20/D0=1.35以上は向上しない。また、この温度範囲での降伏応力の温度依存性としては青熱脆性によりワークWが強度上昇するので、軸肥大加工に対して、むしろ、ワークWを加熱することが逆効果を示す傾向にあったと推察される。このような青熱脆性の影響には、軸肥大加工過程におけるワークWの表面温度の変化のみならず、表面から軸心方向への温度分布および軸方向温度分布の変化も影響する。
図15及び図16は加熱時間theat=40sec加熱のワークWの軸肥大加工開始時及び終了時の温度分布をFEMにより連成解析して推定したものである。これによると、表面から内部への温度分布はワークWの中央位置では略々均一であり、端部へ僅かに外れる領域でほんの一部分布が生じる程度であることが分かる。しかも、表面から任意の深さ位置における軸方向応力分布としては表面での軸方向分布と略々類似の分布を示している。また、図17に示すように、軸肥大加工の進行に伴うワークWの深さ方向温度分布も表面と中心とに温度差がほとんど生じることはなく、一様に変化する傾向がある。
したがって、軸肥大加工中でのこれらの温度分布の変化から、ワークWの最大表面温度TS=473K〜623Kの範囲の加熱は青熱脆性の影響により軸肥大加工の加工性の向上に対して逆効果となることが十分に推察できる。
加熱時間theat=100secで軸肥大加工開始時のワークWの表面最大温度TS=823KとなるワークWに軸肥大加工を施した場合のように、肥大率D20/D0=2まで向上する加熱条件下でも、図9に見られるようにき裂が発生する。このき裂発生も青熱脆性が影響しており、軸肥大加工中での温度低下によってワークWのフィレット部の温度が青熱脆性温度域に入るため、ワークWの前記フィレット部の材質硬化が疲労き裂を誘起したと推察される。ところが、加熱時間theat=110sec、120secで表面最大温度TS>853KとなるワークWの軸肥大加工の場合では、き裂の発生は認められなかった。これは該ワークWのフィレット部の温度が青熱脆性温度域まで低下しないためである。
したがって、軸肥大加工における効果的な加熱条件としては、常温での軸肥大加工で期待できない二倍程度以上の肥大率が得られ、ワークWの温度低下に伴う青熱脆性の影響による材質硬化に起因するき裂発生を回避できることが不可欠である。このことを考慮すると、ワークWの表面最大温度TS>853Kとなる加熱時間theat>110secの加熱条件が軸肥大加工率の向上にとって最も効果的であると言える。
まず、ワークWの軸肥大加工開始時の表面最大温度TSがTS=673K以下の加熱条件では、ワークWの肥大率に対してほとんど効果がないというより、むしろ、悪影響を及ぼす。また、表面最大温度TSがTS=823Kの加熱条件では、約二倍の肥大率を得られるが、軸肥大加工中のワークWの温度低下により青熱脆性に起因する疲労き裂が発生する。
また、表面最大温度TSがTS=853K以上の加熱条件では、ワークWを加熱することがワークWの肥大率の向上に対して極めて有効であり、青熱脆性のような有害な影響が発生することなく肥大率D20/D0が二倍以上に増大する。
さらに、軸肥大加工に対するワークWの加熱の効果を温度依存性によるσc/σyの増大効果と見做して評価すると、軸肥大変形挙動は室温(常温)の軸肥大加工の場合と同様に、ワークWの加熱を伴う軸肥大加工でもよく推定できる。
まず、軸肥大加工をワークWに施す前にワークWを加熱することは、上述したように、ワークWの軸肥大加工率の向上に対して有効であることは明らかであり、ワークWを加熱して温度を高くすれば、ワークWの変形抵抗を小さくすることができ、軸肥大加工を施しやすくできる。すなわち、本実施例におけるワークWを加熱する加熱工程は、軸肥大加工を施すワークWを加熱することで、ワークWの変形抵抗を確実に低下させ、ワークWの軸肥大加工性を確実に向上させるための工程である。したがって、ワークWを加熱できるものであれば、加熱工程に用いる加熱装置1は、上記した高周波誘導加熱装置のみならず、種々の燃料を使用し、その燃焼により生じる熱によりワークWを加熱する燃焼加熱装置であっても何ら問題はなく、これらのような加熱装置を実施例に合わせて選択して、最適なものを使用すれば良い。
上述したように、加熱装置1にてワークWを加熱した後に該ワークWに軸肥大加工を施しても、その肥大率に対してほとんど効果がない、あるいは、青熱脆性の影響によりむしろ悪影響を及ぼす温度域があることは明らかである(図10参照)。この温度域は、加熱したワークWの軸肥大開始時の最大表面温度TSで見た場合ではTS=673K以下である。
また、前記温度域(TS=673K以下)を越えるワークWの表面最大温度TSとすると、上述したように、ワークWを加熱することがワークWの肥大率の向上に対して有効に作用する(図10参照)。したがって、この温度域(TS>673K)では、ワークWの変形抵抗を確実に低下させることができ、従来の常温での軸肥大加工の圧縮圧力以下の圧縮圧力にてワークWに軸肥大加工を施せる。さらに、容易にワークWに成形する肥大部の直径を大きくできると共にワークWの軸方向に幅広な肥大部を成形することも可能となる。
さらに、表面最大温度TSがTS=853K以上の加熱では、ワークWを加熱することがワークWの肥大率に対して極めて有効に作用し、青熱脆性のような有害な影響を受けることなく、ワークWの肥大率を二倍以上とすることができる(図10参照)。また、この表面最大温度TS=853K以上ではワークWの再結晶温度Trの温度近傍以上となることから、結晶粒微細化強化の作用による組織の改質及び機械的特性の改善がなされると共に強靭化が図れることから、ワークWの塑性変形能(伸び)が向上される特徴がある。したがって、この温度域以上では、従来の常温での軸肥大加工の圧縮圧力以下の圧縮圧力でワークWに軸肥大加工を施せるだけでなく、一層容易に肥大部の直径を大きくできると共にワークWの軸方向に幅広な肥大部を容易に成形可能となり、さらに、ワークWの改質及び機械的特性の改善もできる。
しかしながら、前記温度域(TS=673K以下)を越えるワークWの最大表面温度TSがTS=823Kであっても、上述したように、軸肥大加工中のワークWの放熱により青熱脆性温度域までワークWの温度低下した部分が青熱脆性の影響により材質硬化し、き裂損傷が発生することがある(図9参照)。
したがって、加熱工程にてワークWを加熱する条件は、軸肥大加工開始時にワークWの全体又は少なくとも肥大成形したい部分の温度が青熱脆性温度域を越える温度(TS>673K)とすると共に、軸肥大加工中にワークWからの放熱により、ワークWの全体又は少なくとも肥大成形したい部分の温度が青熱脆性温度域まで低下しない温度とすることが望ましい。これによると、ワークWの変形抵抗を確実に低下させることができると共に、従来の常温での軸肥大加工の圧縮圧力以下の圧縮圧力でワークWに軸肥大加工を施せ、さらに、ワークWに青熱脆性の影響による材質硬化に起因するき裂損傷の発生を防ぐことができる。また、このワークWを加熱する条件は、ワークWの塑性変形能の向上も図れ、軸肥大加工におけるワークWの肥大率の向上に対して有効に作用するので、肥大率二倍以上の大きな肥大部を容易に成形可能となると共に、ワークWの軸方向に幅広な肥大部を容易に成形することが可能となる。
まず、直線状の軸材であるワークWの所望部分又は全体を加熱した後、このワークWを一定間隔離間させた一対の保持部2,2で保持させる。あるいは、ワークWを一定間隔離間させた一対の保持部2,2に保持させた状態で、その保持部2,2間のワークW又はその保持部2,2間のワークWの所望部分を加熱させる((a)及び(b)参照)。なお、このときの保持部2,2の間隔は、最大でワークWに曲げと圧縮圧力を作用させたときに、ワークWが座屈しない程度までの間隔とする。また、この間隔は初期掴み幅l0である((a)参照)。また、ワークWの加熱する条件は、上述したように、軸肥大加工開始時に少なくともワークWの肥大成形したい部分の温度が青熱脆性温度域を越える温度とすると共に、軸肥大加工中にワークWからの放熱により、ワークWのその部分の温度が青熱脆性温度域まで低下しない温度とする。
そして、ワークWを保持部2,2にて保持させた後、両保持部2,2間のワークWに回転と圧縮圧力と曲げを作用させる((c)参照)。このとき、圧縮圧力は少なくとも一方の保持部2を他方の保持部2に接近させることで作用させている。また、圧縮圧力はワークWの曲げ外側に生じる引張力を相殺して引張力がワークWに作用しない程度、又は、圧縮圧力がワークWに作用する程度とする。このとき、加熱工程にてワークWを加熱していることで、上述したように、ワークWの変形抵抗は確実に低下していることから、作用させる圧縮圧力は小さなもので良い。また、この圧縮圧力により、ワークWの曲げ外側に生じる引張力を相殺して、ワークWが疲労することを防止している。さらに、曲げ角度については数度程度で良い。この曲げ角度を大きくすると、ワークWは屈曲しやすくなるため加工性が悪くなる。また、回転速度については毎分数回転から毎分数百回転程度の回転で良い。
これら、回転、圧縮圧力、曲げがワークWに作用すると、ワークWの曲げの内側に位置する箇所に凸部が成形される。そして、ワークWを回転させることによって、該凸部をワークWの全周に渡って累積させ、所望の肥大部を成形させる((d)参照)。
然る後、所望の肥大部が成形されると、曲げ戻しを行い、ワークWを真直化させる((e)参照)。そして、ワークWを真直化した後に、圧縮圧力と回転を停止させ、ワークWを保持部2,2から取り出す。
このようにすると、保持部2,2から取り出した素材径D0のワークWの中間部に、幅l(l0>l)の肥大部直径D(D>D0)の肥大部を成形できる((f)参照)。
さらに、本実施例においては、加熱装置1にてワークWを加熱する加熱工程を、ワークWに軸肥大加工を施す前に行うようにしているが、ワークWの軸肥大加工中も加熱装置1にてワークWを加熱するようにしても良い。この方法のようにしても、上述した軸肥大加工方法と同様の作用と効果を得ることができる。さらに、この方法によれば、ワークWの温度管理が行いやすいだけでなく、ワークWのきめ細かな温度調節を行え、さらには、ワークWからの放熱の影響によるワークWの変形抵抗及び塑性変形能の変化を略々無くすあるいは無視できるようにすることが可能となる。したがって、軸肥大加工により成形する肥大部の形状(肥大部直径及び肥大部幅等)をよりコントロールしやすくなり、所望の肥大部を一層成形しやすくなる。また、軸肥大加工前でのみワークWを加熱する場合と比べて、この軸肥大加工方法は、ワークWの放熱による温度低下を考慮する必要がないことから、加熱した際の少なくともワークWの肥大成形させたい部分の温度を青熱脆性温度域を越える温度でも低く抑えることが可能となる。すなわち、ワークWの肥大成形したい部分の温度が青熱脆性温度域を越える温度からワークWの最大表面温度TS=673Kの間の温度域においても、青熱脆性の影響を受けることなくワークWに軸肥大加工を施すことが可能となる。したがって、所望する肥大部の軸肥大加工を、肥大部形状に合わせて、より最適な条件にて効率良く行うことが可能となる。さらに、上述した軸肥大加工方法に比べて、極めて大きな肥大部を成形可能となる。
2 保持部
D 肥大部直径
D0 ワークの素材直径
l 肥大部のワーク軸方向における幅(肥大部幅)
l0 ワークの初期掴み幅
N 軸肥大加工回転回数
N0 回転時定数
Nθ 設定曲げ角度に達するまでの回転数
n ワーク素材の材料定数
W ワーク
σc 圧縮応力
σy ワークの各温度における降伏応力
ε0 特定の肥大率に対する軸圧縮ひずみ
Claims (2)
- 所定間隔離間した一対の保持部にてワークを保持し、当該保持部間のワークに加熱と、圧縮応力と、曲げ、及び、当該ワークの軸心回りの回転を付加してワークの任意の位置に所望の肥大部を成形する軸肥大加工方法において、
σc/σy(σc:圧縮応力、σy:ワークの各温度における降伏応力)の値を任意に定め、ワークに作用させたい圧縮応力に基づき、圧縮応力に対する最適なワークの温度の条件を得ると共に、
所望する肥大部の肥大部直径Dに達するまでの最適な軸肥大加工回転回数Nを、
(l:肥大部のワーク軸方向における幅,l0:ワークの初期掴み幅,ε0:特定の肥大率に対する軸圧縮ひずみ,Nθ:設定曲げ角度に達するまでの回転数)の式に実測値を当てはめて得られるn(n:ワーク素材の材料定数)及びN0(N0:回転時定数)を、
(D0:ワークの素材直径)の式に代入すると共に、前記肥大部直径Dを代入して、軸肥大加工回転回数Nの最適な条件を算出し、さらに、ワークの肥大成形させる部分での体積不変の原則から得られる
の式からワークの初期掴み幅l0を算出し、
前記ワークは、取得したワークの初期掴み幅l 0 分間隔を離間して前記一対の保持部に保持し、当該保持部間のワークを、取得した圧縮応力に対する最適なワークの温度に加熱して、取得した軸肥大加工回転回数Nだけ当該ワークの軸心回りに回転を付加してワークの任意の位置に所望の肥大部を成形することを特徴とする軸肥大加工方法。 - 所定間隔離間した一対の保持部にてワークを保持し、当該保持部間のワークに加熱と、圧縮応力と、曲げ、及び、当該ワークの軸心回りの回転を付加してワークの任意の位置に所望の肥大部を成形する軸肥大加工方法において、
σc/σy(σc:圧縮応力、σy:ワークの各温度における降伏応力)の値を任意に定め、軸肥大加工開始時のワークの温度に基づき、ワークの温度に対する最適な圧縮応力の条件を得ると共に、
所望する肥大部の肥大部直径Dに達するまでの最適な軸肥大加工回転回数Nを、
(l:肥大部のワーク軸方向における幅,l 0 :ワークの初期掴み幅,ε 0 :特定の肥大率に対する軸圧縮ひずみ,N θ :設定曲げ角度に達するまでの回転数)の式に実測値を当てはめて得られるn(n:ワーク素材の材料定数)及びN 0 (N 0 :回転時定数)を、
(D 0 :ワークの素材直径)の式に代入すると共に、前記肥大部直径Dを代入して、軸肥大加工回転回数Nの最適な条件を算出し、さらに、ワークの肥大成形させる部分での体積不変の原則から得られる
の式からワークの初期掴み幅l 0 を算出し、
前記ワークは、取得したワークの初期掴み幅l 0 分間隔を離間して前記一対の保持部に保持し、当該保持部間のワークに、取得したワークの温度に対する最適な圧縮応力を加えて、取得した軸肥大加工回転回数Nだけ当該ワークの軸心回りに回転を付加してワークの任意の位置に所望の肥大部を成形することを特徴とする軸肥大加工方法。
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