JP5349216B2 - インク組成物、インクジェット記録方法及び印刷物 - Google Patents

インク組成物、インクジェット記録方法及び印刷物 Download PDF

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本発明は、インク組成物、インクジェット記録方法及び印刷物に関する。
近年、インクジェット記録方式は、簡便・安価に画像を作成でき、ノズルよりインクを被記録媒体と非接触状態で吐出するので、不規則な表面形状の被記録媒体に対して良好な印刷を行うことができる。
専用紙を必要とするインクジェット記録方式は、被記録媒体が制限されること、被記録媒体のコストアップが問題となる。そこで、専用紙と異なる被転写媒体へインクジェット記録方式により記録する試みが多数なされている。
近年、紫外線などの放射線の照射により硬化可能なインク(活性放射線硬化型インクジェット記録用インク)を、インクジェット記録方式により描画した後、紫外線などの放射線を照射してインクを硬化する、無溶剤型のインクジェット記録方式が注目されている。
一般に、水を希釈剤として含む水性インクや有機溶剤を希釈剤として含む溶剤型インクと比較して、活性放射線硬化型インクによるインクジェット記録方式は、ガラス、金属、プラスチック基材といった非吸収性の被記録媒体への描画が可能であり、被記録媒体の適応範囲が広い、描画画像の耐擦過性や耐溶剤性に優れる、感度が高い、生産性に優れる、揮発性の溶剤を含まないので臭気等の人体への影響や環境への負荷が小さい、といったメリットを有する。このため、産業用途での利用が期待されている。
活性放射線硬化型インクジェット記録用インクの着色剤としては、耐光性や耐候性に優れることから、顔料が広く使用されている。
特許文献1には、少なくともイエロー顔料と、光重合性化合物と、光重合開始剤からなる紫外線硬化型インクジェット記録用インク組成物において、イエロー顔料としてC.I.ピグメント・イエロー・180を含有し、かつ塩基性の吸着基を有する高分子分散剤を含有することを特徴とする紫外線硬化型インクジェット記録用インク組成物が開示されている。
特開2004−2528号公報
特許文献1に記載の紫外線硬化型インクジェット記録用イエロー色インク組成物は、長期間又は高温で保存された後に使用すると、濃度ムラ及び筋ムラを引き起こし、満足できるレベルでないことが判明した。従来のイエロー顔料は、長期間又は高温の保管により、N−ビニルラクタム類の分解を誘発、促進し、インク安定性と吐出性とを悪化させる。
そこで、長期間又は高温保存後の紫外線硬化型インクジェット記録用イエロー色インク組成物において、吐出インク体積のバラツキを小さくし、目標着弾位置からのズレを小さくすることにより、濃度ムラ及び筋ムラを改善することが求められている。
本発明が解決しようとする課題は、長期間保存後又は高温保存後であっても、粘度安定性、粒子径安定性、吐出安定性に優れ、光硬化性、硬化膜の柔軟性及び基材密着性に優れたインク組成物を提供することである。
また、本発明が解決しようとする課題は、前記インク組成物を用いた、濃度ムラ及び筋ムラを改善したインクジェット記録方法及び高品質の印刷物を提供することである。
本発明の上記課題は、下記の手段によって解決された。
<1>(A)式(1)で表されるアゾ顔料、(B)N−ビニルラクタム類、(C)(B)と共重合可能なエチレン性不飽和化合物、(D)高分子分散剤、及び、(E)ラジカル重合開始剤を含有することを特徴とするインク組成物、
Figure 0005349216
(式(1)中、Zは5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基を表し、Y1、Y2、R11、R12はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、G1、G2はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、W1、W2はそれぞれ独立に、アルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表す。)
<2>前記式(1)中のW1、W2が、それぞれ独立に総炭素数3以下のアルコキシ基又はアミノ基である、<1>に記載のインク組成物、
<3>前記式(1)中のG1、G2が、それぞれ独立に総炭素数3以下のアルキル基又は総炭素数12以下のアリール基である、<1>又は<2>に記載のインク組成物、
<4>前記式(1)中のZが、6員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基である、<1>〜<3>いずれか1つに記載のインク組成物、
<5>前記(B)が、N−ビニルピロリドン、又は、N−ビニルカプロラクタムである、<1>〜<4>いずれか1つに記載のインク組成物、
<6>前記(C)として単官能エチレン性不飽和化合物を含む、<1>〜<5>いずれか1つに記載のインク組成物、
<7>前記(C)として環状構造を有する単官能エチレン性不飽和化合物を含む、<1>〜<6>いずれか1つに記載のインク組成物、
<8>前記環状構造が、芳香族炭化水素基、不飽和脂環式基である、<7>に記載のインク組成物、
<9>活性放射線硬化型インクジェット記録用である、<1>〜<8>いずれか1つに記載のインク組成物、
<10>被記録媒体上に、<1>〜<9>いずれか1つに記載のインク組成物を吐出する工程、及び、吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して前記インク組成物を硬化する工程を含むことを特徴とするインクジェット記録方法、
<11><10>に記載のインクジェット記録方法によって記録されたことを特徴とする印刷物。
本発明によれば、長期間保存後又は高温保存後であっても、粘度安定性、粒子径安定性、吐出安定性に優れ、光硬化性、硬化膜の柔軟性及び基材密着性に優れたインク組成物を提供することができた。
また、本発明によれば、前記インク組成物を用いた、濃度ムラ及び筋ムラを改善し得るインクジェット記録方法及び該インクジェット記録方法により得られた、高品質の印刷物を提供することができた。
I.インク組成物
本発明のインク組成物は、(A)式(1)で表されるアゾ顔料、(B)N−ビニルラクタム類、(C)(B)と共重合可能なエチレン性不飽和化合物、(D)高分子分散剤、及び、(E)ラジカル重合開始剤、を含有することを特徴とし、活性放射線硬化型インクジェット記録用のインク組成物として好ましく用いられる。
Figure 0005349216
(式(1)中、Zは5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基を表し、Y1、Y2、R11、R12はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、G1、G2はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、W1、W2はそれぞれ独立に、アルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表す。)
本発明者は、インク組成物に、顔料として、式(1)で表されるアゾ顔料を適用すると、該インク組成物を長期間保存後あるいは高温に曝した後であっても、吐出安定性に優れ、その結果、濃度ムラ及び筋ムラの発生を抑制し得ることを見出し、本発明を完成させた。以下、本発明のインク組成物について詳細に説明する。なお、数値範囲を表す「A〜B」等の記載は、「A以上、B以下」と同義であり、特に断りのない限り以下同様とする。
(A)式(1)で表されるアゾ顔料
以下、式(1)で表されるアゾ顔料について説明する。
本発明に用いられるアゾ顔料は、代表的には式(1)で表される。また、(A)アゾ顔料は式(1)で表される構造であっても、その互変異性体であってもよい。また、それらの塩及び水和物でもよい。
式(1)で表される化合物は、その特異的な構造により分子間相互作用を形成しやすく、水又は有機溶媒等に対する溶解性が低く、アゾ顔料として使用することができる。ここで、顔料とは、水や有機溶媒等に分子分散状態で溶解させて使用する染料とは異なり、溶媒中に分子集合体等の固体粒子として微細に分散させて用いるものである。
Figure 0005349216
(式(1)中、Zは5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基を表し、Y1、Y2、R11、R12はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、G1、G2はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、W1、W2はそれぞれ独立に、アルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表す。)
式(1)において、Zは、5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基を表し、それらはさらに縮環していてもよい。好ましい含窒素ヘテロ環を、置換位置を限定せずに例示すると、ピロール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダジン環、ピラジン環である。より好ましくは、6員含窒素ヘテロ環であり、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、S−トリアジン環が挙げられる。Zとして特に好ましくは、ピリミジン環に由来する2価の基である。
Zが6員含窒素ヘテロ環に由来する2価の基の場合、色素分子の分子内、分子間作用が、水素結合性、分子の平面性の点からもより向上しやすい点で好ましい。
式(1)において、Y1及びY2は水素原子又は置換基を表す。Y1及びY2が置換基を表す場合、その例としては、ハロゲン原子、アルキル基(直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基であり、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えば、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基中のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。)、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が挙げられる。
1及びY2として特に好ましくは、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基)、アリール基(例えば、フェニル基)、ヘテロ環基(例えば、2−ピリジル基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基)であり、さらに好ましくは、水素原子、メチル基、フェニル基、メチルチオ基であり、その中でも水素原子が最も好ましい。
なお、Y1及びY2は同一であっても異なっていてもよい。
式(1)において、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基を表す。
11及びR12が置換基を表す場合、その置換基としては、総炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、2−メチルスルホニルエチル、3−フェノキシプロピル、トリフルオロメチル)、総炭素数7〜18の直鎖又は分岐鎖アラルキル基(例えば、ベンジル)、総炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖アルケニル基(例えば、ビニル)、総炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖アルキニル基(例えば、エチニル)、総炭素数3〜12の直鎖又は分岐鎖シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル)、総炭素数3〜12の直鎖又は分岐鎖シクロアルケニル基(例えば、シクロペンテニル)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子)、アリール基(例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4−ジ−t−アミルフェニル)、ヘテロ環基(例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アミノ基、アルキルオキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メチルスルホニルエトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、3−t−ブチルオキシカルボニルフェノキシ、3−メトキシカルボニルフェニルオキシ、アシルアミノ基(例えば、アセトアミド、ベンズアミド、4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブタンアミド)、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、ブチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルブチルアミノ)、アリールアミノ基(例えば、フェニルアミノ、2−クロロアニリノ)、ウレイド基(例えば、フェニルウレイド、メチルウレイド、N,N−ジブチルウレイド)、スルファモイルアミノ基(例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、オクチルチオ、2−フェノキシエチルチオ)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ、2−カルボキシフェニルチオ)、アルキルオキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ)、アルキルスルホニルアミノ基及びアリールスルホニルアミノ基(例えば、メチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、p−トルエンスルホニルアミノ)、カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル、オクチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル)、ヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アゾ基(例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ)、カルバモイルオキシ基(例えば、N−メチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ)、シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ、ジブチルメチルシリルオキシ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ)、イミド基(例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ヘテロ環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2,4−ジ−フェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ、2−ピリジルチオ)、スルフィニル基(例えば、3−フェノキシプロピルスルフィニル)、ホスホニル基(例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル)、アシル基(例えば、アセチル、3−フェニルプロパノイル、ベンゾイル)、イオン性親水性基(例えば、カルボキシ基、スルホ基、ホスホノ基及び4級アンモニウム基)が挙げられる。
式(1)において、好ましいR11及びR12は、置換もしくは無置換の総炭素数1〜8のアシルアミノ基、置換もしくは無置換の総炭素数1〜12のアルキル基、置換もしくは無置換の総炭素数6〜18のアリール基、又は置換もしくは無置換の総炭素数4〜12のヘテロ環基であり、より好ましくは、総炭素数1〜8の直鎖アルキル基又は分岐アルキル基であり、さらに好ましくは、メチル基、イソプロピル基又はt−ブチル基であり、その中でも特にt−ブチル基が最も好ましい。
なお、R11及びR12は同一であっても異なっていてもよい。
式(1)におけるG1及びG2は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、特に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、ベンジル基、2−フェネチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、プロパルギル基、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基であり、さらに好ましくは、水素原子、メチル基、フェニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基であり、その中でも、メチル基、2−ピリジル基、2,6−ピリミジニル基、又は2,5−ピラジニル基が好ましい。
また、G1及びG2がアルキル基を表す場合、総炭素数5以下のアルキル基であることが好ましく、総炭素数3以下のアルキル基であることがより好ましく、メチル基が最も好ましい。
なお、G1及びG2は同一であっても異なっていてもよい。
式(1)において、W1及びW2は、それぞれ独立に、アルコキシ基、アミノ基、アルキル基、又はアリール基を表す。
1及びW2で表されるアルコキシ基としては、好ましくは、総炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等が挙げられる。
1及びW2で表されるアミノ基としては、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、好ましくは、アミノ基、総炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、総炭素数1〜30の置換もしくは無置換のジアルキルアミノ基、総炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基等が挙げられる。
1及びW2で表されるアルキル基としては、直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基が挙げられ、このアルキル基は、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。
具体的には、アルキル基としては、好ましくは、総炭素数1〜30のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
シクロアルキル基としては、好ましくは、総炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等が挙げられる。ビシクロアルキル基としては、好ましくは、総炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、総炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[1.2.2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル基等が挙げられる。
1及びW2で表されるアリール基としては、好ましくは、総炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等が挙げられる。
その中でも好ましいW1及びW2は、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基又はアルキル基であり、より好ましくは、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基であり、さらに好ましくは、総炭素数5以下のアルコキシ基、アミノ基(−NH2基)、総炭素数5以下のアルキルアミノ基、総炭素数10以下のジアルキルアミノ基であり、特に好ましくは、総炭素数3以下のアルコキシ基、総炭素数3以下のアルキルアミノ基又は総炭素数6以下のジアルキルアミノ基であり、その中でも特にメトキシ基が最も好ましい。
1及びW2が、総炭素数5以下のアルコキシ基、アミノ基、又は総炭素数5以下のアルキルアミノ基の場合、色素分子が分子内及び分子間で相互作用を強固に形成しやすくなり、より安定な分子配列の顔料を構成しやすくなることで、良好な色相、高い堅牢性(耐光・ガス・熱・水・薬品)の点で好ましい。
なお、W1及びW2は、同一であっても異なっていてもよい。
本発明において、Z、Y1、Y2、R11、R12,G1、G2、W1、及びW2が、さらに置換基を有し得る基である場合、導入し得る置換基としては、下記の置換基を挙げることができる。
置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。
本発明におけるアゾ顔料は、式(1)で表されるアゾ顔料の互変異性体もその範囲に含むものである。式(1)は、化学構造上取り得る数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示しているが、記載された構造以外の互変異性体であってもよく、複数の互変異性体を含有した混合物として用いてもよい。
例えば、式(1)で表されるアゾ顔料には、下記式(1’)で表されるアゾ−ヒドラゾンの互変異性体が考えられる。
本発明は、式(1)で表されるアゾ顔料の互変異性体である以下の式(1’)で表される化合物もその範囲に含むものである。
Figure 0005349216
式(1’)中、R11、R12、W1、W2、Y1、Y2、G1、G2、及びZは、式(1)中のR11、R12、W1、W2、Y1、Y2、G1、G2、及びZとそれぞれ同義である。
なお、前記式(1)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
本発明の式(1)で表されるアゾ顔料として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ホ)を含むものである。
(イ)W1、W2は、それぞれ独立に、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基)、アミノ基(例えば、−NH2基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基)、又はアリール基(例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基)が好ましく、その中でも、アルコキシ基、アミノ基、又はアルキル基が好ましく、より好ましくはアルコキシ基、アミノ基であり、さらに好ましくは、総炭素数5以下のアルコキシ基、アミノ基(−NH2基)、総炭素数5以下のアルキルアミノ基であり、特に好ましくは、総炭素数3以下のアルコキシ基、アミノ基(−NH2基)、総炭素数3以下のアルキルアミノ基であり、その中でも特にメトキシ基(−OCH3基)が最も好ましい。
(ロ)R11、R12は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基(例えば、置換もしくは無置換の総炭素数1〜8のアシルアミノ基、置換もしくは無置換の総炭素数1〜12のアルキル基、置換もしくは無置換の総炭素数6〜18のアリール基、又は置換もしくは無置換の総炭素数4〜12のヘテロ環基)が好ましく、より好ましくは、総炭素数1〜8の直鎖アルキル基又は分岐アルキル基であり、さらに好ましくは、メチル基、イソプロピル基、又はtert−ブチル基であり、その中でも特にtert−ブチル基が最も好ましい。
(ハ)Zは、5〜8員の含窒素ヘテロ環基に由来する2価の基を表し、それらはさらに縮環していてもよい。Zにおける含窒素ヘテロ環としては、5又は6員の置換もしくは無置換の含窒素ヘテロ環、例えば、ピロール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダジン環が好ましく、特に好ましくは、総炭素数3〜10の6員含窒素ヘテロ環基である。より好ましくは、ピリジン環、ピリミジン環、S−トリアジン環、ピリダジン環、ピラジン環であり、さらに好ましくは、ピリミジン環、S−トリアジン環であり、その中でも特にピリミジン環が最も好ましい。
(ニ)G1、G2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、特に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、ベンジル基、2−フェネチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、プロパルギル基、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、が好ましく、さらに好ましくは、水素原子、メチル基、フェニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基であり、その中でもメチル基、2−ピリジル基、2,6−ピリミジニル基、2,5−ピラジニル基が好ましい。
また、G1、G2で表されるアルキル基としては、総炭素数5以下のアルキル基がより好ましく、総炭素数3以下のアルキル基がより好ましく、メチル基が最も好ましい。
(ホ)Y1、Y2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基)、アリール基(例えば、フェニル基)、ヘテロ環基(例えば2−ピリジル基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基)であり、好ましくは、水素原子、メチル基、フェニル基、メチルチオ基であり、その中でも水素原子が最も好ましい。
本発明における上記式(1)で表されるアゾ顔料のうち、好ましくは下記式(2)で表されるアゾ顔料である。
Figure 0005349216
上記式(2)中のG1、G2、R11、R12、W1、W2、Y1、及びY2は、上記式(1)中のG1、G2、R11、R12、W1、W2、Y1、及びY2と、それぞれ同義である。また、式(2)における点線の結合は、水素結合が可能な箇所を表す。
11、X12は、それぞれ独立に、上記式(1)中のZで表される含窒素ヘテロ環化合物に由来する2価の基(Het.)中のヘテロ原子を表す。
本発明において、上記式(1)で表されるアゾ顔料においては多数の互変異性体が考えられる。
また、本発明において、式(1)で表されるアゾ顔料は、分子内水素結合又は分子内交叉水素結合を形成する置換基を有することが好ましい。本発明における式(1)で表されるアゾ顔料は、少なくとも1個以上の分子内交叉水素結合を形成する置換基を有することが好ましく、少なくとも3個以上の分子内水素結合を形成する置換基を有することがより好ましく、少なくとも3個以上の分子内水素結合を形成する置換基を有し、かつ、それらの水素結合の少なくとも2個が分子内交叉水素結合を形成する置換基を有する場合が特に好ましい。
式(1)で表されるアゾ顔料のうち、前述したように特に好ましいアゾ顔料の式の例としては、上記式(2)で表されるアゾ顔料を挙げることができる。
この構造が好ましい要因としては、式(2)で示すようにアゾ顔料構造に含有するヘテロ環を構成する窒素原子、水素原子及びヘテロ原子(アゾ基又はその互変異性体であるヒドラゾン基の窒素原子とカルボニル基の酸素原子又はアミノ基の窒素原子)が少なくとも1個以上の分子内の交叉水素結合(分子内水素結合)を容易に形成し易いことが挙げられる。
これらの構造が好ましい要因としては、上記式(2)で示すように、アゾ顔料が含有するヘテロ環基を構成する窒素原子、アミノ基の水素原子及びヘテロ原子(例えば、アゾ基又はその互変異性体であるヒドラゾン基の窒素原子、カルボニル基の酸素原子又はアミノ基の窒素原子)が少なくとも4個以上の分子内水素結合を容易に形成し易く、かつ、少なくとも2個以上の分子内の交叉水素結合を容易に形成し易いことが挙げられる。
その結果、分子の平面性が上がり、さらに分子内・分子間相互作用が向上し、例えば式(2)で表されるアゾ顔料の結晶性が高くなり(高次構造を形成し易くなり)、顔料としての要求性能である、光堅牢性、熱安定性、湿熱安定性、耐水性、耐ガス性及び又は耐溶剤性が大幅に向上するため、最も好ましい例となる。
また、本発明におけるアゾ顔料においては、式(1)で表される化合物中に同位元素(例えば、2H、3H、13C、15N)を含有していてもよい。
以下に、前記式(1)で表されるアゾ顔料の具体例として、Pig.−1〜Pig.−46を示すが、本発明に用いられるアゾ顔料は、下記の例に限定されるものではない。また、以下の具体例の構造は化学構造上取り得る数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示されているが、記載された構造以外の互変異性体構造のものであってもよい。
Figure 0005349216
Figure 0005349216
Figure 0005349216
Figure 0005349216
本発明においては、Pig.−1、18、21、33が好ましい。
本発明における式(1)で表されるアゾ顔料は、化学構造式が式(1)で表されるもの、又はその互変異性体であればよく、その結晶形態についても特に制限はない。例えば、多形(結晶多形)とも呼ばれるいかなる結晶形態の顔料であってもよい。
結晶多形は、同じ化学組成を有するが、結晶中におけるビルディングブロック(分子又はイオン)の配置が異なる結晶のことをいう。結晶多形においては、その結晶構造によって化学的及び物理的性質が決定され、各結晶多形は、レオロジー、色相、及び他の色特性によってそれぞれ区別することができる。また、異なる結晶多形は、X−Ray Diffraction(粉末X線回折測定結果)やX−Ray Analysis(X線結晶構造解析結果)によって確認することもできる。
本発明における式(1)で表されるアゾ顔料に結晶多形が存在する場合、その結晶型はどの多形であってもよく、また2種以上の多形の混合物であってもよいが、結晶型が単一のものを主成分とすることが好ましい。すなわち結晶多形の混入が少ないものが好ましく、単一の結晶型を有するアゾ顔料の含有量はアゾ顔料全体に対し70%〜100%、好ましくは80%〜100%、より好ましくは90%〜100%、さらに好ましくは95%〜100、特に好ましくは100%である。
単一の結晶型を有するアゾ顔料を主成分とすることで、色素分子の配列に対して規則性が向上し、分子内・分子間相互作用が強まり高次な3次元ネットワークを形成しやすくなる。その結果として色相の向上・光堅牢性・熱堅牢性・湿度堅牢性・酸化性ガス堅牢性及び耐溶剤性等、顔料に要求される性能の点で好ましい。
アゾ顔料における結晶多形の混合比は、単結晶X線結晶構造解析、粉末X線回折(XRD)、結晶の顕微鏡写真(TEM)、IR(KBr法)等の固体の物理化学的測定値から確認できる。
本発明において、式(1)で表されるアゾ顔料が酸基を有する場合には、酸基の一部あるいは全部が塩型のものであってもよく、塩型の顔料と遊離酸型の顔料が混在していてもよい。上記の塩型の例としてNa、Li、K等のアルカリ金属の塩、アルキル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムの塩、又は有機アミンの塩が挙げられる。有機アミンの例として、低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換低級アルキルアミン、カルボキシ置換低級アルキルアミン及び総炭素数2〜4のアルキレンイミン単位を2〜10個有するポリアミン等が挙げられる。これらの塩型の場合、その種類は1種類に限られず複数種混在していてもよい。
さらに、本発明で使用するアゾ顔料の構造において、その1分子中に酸基が複数含まれる場合は、その複数の酸基は、それぞれ独立に塩型あるいは酸型であり、互いに異なるものであってもよい。
本発明において、前記式(1)で表されるアゾ顔料は、結晶中に水分子を含む水和物であってもよく、また結晶中に含まれる水分子の数にも特に制限はない。
次に、上記式(1)で表されるアゾ顔料の製造方法の一例について説明する。
式(1)で表されるアゾ顔料は、例えば、下記式(A)で表されるヘテロ環アミンを酸性条件でジアゾニウム化し、下記式(B)で表される化合物とカップリング反応を行い、常法による後処理を行うことで、製造することができる。
Figure 0005349216
式(A)及び式(B)中、Wは式(1)におけるW1及びW2と同義であり、Gは式(1)におけるG1及びG2と同義であり、R11、R12、及びZは式(1)におけるR11、R12及びZとそれぞれ同義である。
上記式(A)で表されるヘテロ環アミンは、一般的には公知慣用の方法、例えば、Helv.Chim.Acta,41,1958,1052〜1056やHelv.Chim.Acta,42,1959,349〜352等に記載の方法、及び、それに準じた方法で製造することができる。
また、上記式(B)で表される化合物は、国際公開第06/082669号や特開2006−57076号公報に記載の方法及びそれに準じた方法で製造することができる。
上記式(A)で表されるヘテロ環アミンのジアゾニウム化反応は、例えば、硫酸、リン酸、酢酸、塩酸、メタンスルホン酸などの酸性溶媒中、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸、亜硝酸イソアミル等の試薬を15℃以下の温度で10分〜6時間程度反応させることで行うことができる。
カップリング反応は、上述の方法で得られたジアゾニウム塩と上記式(B)で表される化合物とを40℃以下、好ましくは、25℃以下で10分〜12時間程度反応させることで行うことができる。
このようにして反応させたものは、結晶が析出している場合もあるが、一般的には、反応液に水、あるいはアルコール系溶媒を添加し、結晶を析出させ、結晶を濾取することができる。また、反応液にアルコール系溶媒、水等を添加して結晶を析出させて、析出した結晶を濾取することができる。濾取した結晶を必要に応じて洗浄・乾燥して、式(1)で表されるアゾ顔料を得ることができる。
上記の製造方法によって、上記式(1)で表されるアゾ顔料は粗アゾ顔料(クルード)として得られるが、本発明の顔料として用いる場合、この粗アゾ顔料(クルード)に対して後処理を行うことが望ましい。
この後処理の方法としては、例えば、ソルベントソルトミリング、ソルトミリング、ドライミリング、ソルベントミリング、アシッドペースティング等の磨砕処理、溶媒加熱処理などによる顔料粒子制御工程、樹脂、界面活性剤及び分散剤等による表面処理工程が挙げられる。
式(1)で表されるアゾ顔料は、後処理として溶媒加熱処理及び/又はソルベントソルトミリングを行うことが好ましい。
溶媒加熱処理に使用される溶媒としては、例えば、水、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の極性非プロトン性有機溶媒、氷酢酸、ピリジン、又はこれらの混合物等が挙げられる。上記で挙げた溶媒に、さらに無機又は有機の酸又は塩基を加えてもよい。溶媒加熱処理の温度は所望する顔料の一次粒子径の大きさによって異なるが、40〜150℃が好ましく、60〜100℃がさらに好ましい。また、処理時間は、30分〜24時間が好ましい。
ソルベントソルトミリングとしては、例えば、粗アゾ顔料と、無機塩と、それを溶解しない有機溶剤とを混練機に仕込み、その中で混練磨砕を行うことが挙げられる。上記無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。また、平均粒子径0.5〜50μmの無機塩を用いることがより好ましい。当該無機塩の使用量は、粗アゾ顔料に対して3〜20重量倍とするのが好ましく、5〜15重量倍とするのがより好ましい。有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好適に使用できるが、混練時の温度上昇により溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から高沸点溶剤が好ましい。
このような有機溶剤としては、例えば、ジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール又はこれらの混合物が挙げられる。当該水溶性有機溶剤の使用量は、粗アゾ顔料に対して0.1〜5重量倍が好ましい。混練温度は、20〜130℃が好ましく、40〜110℃が特に好ましい。混練機としては、例えばニーダーやミックスマーラー等が使用できる。
本発明において、式(1)で表されるアゾ顔料粒子の平均粒径は、好ましくは0.005〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.45μm、さらに好ましくは0.015〜0.4μmとなるよう、顔料、分散剤、媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定することが好ましい。
本発明のインク組成物は、式(1)で表されるアゾ顔料及びその互変異性体並びにそれらの塩及び水和物の少なくとも1種を含んでいればよく、これらの中から2種以上を併用してもよい。
また、式(1)で表されるアゾ顔料及びその互変異性体並びにそれらの塩及び水和物の含有量は、インク組成物の全量に対して、0.1〜10重量%が好ましく、1〜7重量%がより好ましく、2〜5重量%がさらに好ましい。
式(1)で表されるアゾ顔料の含有量がこの範囲であれば、所望のイエローの色相が得られ、かつ、吐出安定性にも優れることとなる。
なお、本発明のインク組成物には、式(1)で表されるアゾ顔料に加え、下記の顔料を併用することができる。
併用可能な顔料の例としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、14C、16、17、24、34、35、37、42、53、55、65、73、74、75、81、83、93、95、97、98、100、101、104、108、109、110、114、117、120、128、129、138、150、151、153、154、155、180を挙げることができる。
このように、式(1)で表されるアゾ顔料とその他の顔料を併用する場合、式(1)で表されるアゾ顔料の含有量は、顔料全体に対して20重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。
(B)N−ビニルラクタム類
本発明のインク組成物は、N−ビニルラクタム類を含む。本発明に用いることができるN−ビニルラクタム類の好ましい例として、式(B1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0005349216
式(B1)中、mは1〜5の整数を表し、インク組成物が硬化した後の柔軟性、被記録媒体との密着性、及び、原材料の入手性の観点から、mは2〜4の整数であることが好ましく、mが2又は4であることがより好ましい。すなわち、N−ビニルピロリドン及びN−ビニルカプロラクタムであることが特に好ましい。中でも、N−ビニルカプロラクタムは安全性に優れ、汎用的で比較的安価に入手でき、特に良好なインク硬化性、及び硬化膜の被記録媒体への密着性が得られるので好ましい。
また、上記N−ビニルラクタム類は、ラクタム環上に、アルキル基、アリール基等の置換基を有していてもよく、飽和又は不飽和環構造を連結していてもよい。
N−ビニルラクタム類はインク組成物中に1種のみ含有されていてもよく複数種含有されていてもよい。
本発明において、ラジカル重合性化合物としてN−ビニルラクタム類を用いる場合は、インク組成物全体の50重量%以下含有することが好ましく、より好ましくは5〜45重量%であり、さらに好ましくは10〜40重量%である。上記範囲において他のラジカル重合性化合物との良好な共重合性を示し、硬化性に優れるインク組成物が得られる。
N−ビニルラクタム類は比較的融点が高い化合物である。N−ビニルラクタム類の含有率が50重量%以下のインク組成物は、0℃以下の低温下でも良好な溶解性を示し、インク組成物の取り扱い可能温度範囲が広くなり好ましい。
上記N−ビニルラクタム類はインク組成物中に1種のみ含有されていてもよく、複数種含有されていてもよい。N−ビニルラクタム類が複数種含有されている場合、本発明のインク組成物は、N−ビニルラクタム類の総量としてインク組成物総重量の5重量%以上のN−ビニルラクタム類を含有することが好ましい。
(C)(B)と共重合可能なエチレン性不飽和化合物
本発明のインク組成物は(C)(B)と共重合可能なエチレン性不飽和化合物を含む。
(B)と共重合可能なエチレン性不飽和化合物は、好ましくはラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であればどのようなものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態を持つものが含まれる。ラジカル重合性化合物は1種のみ用いてもよく、また、目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよく、2種以上併用して用いることが、反応性、印刷物の品質を制御する上で好ましい。
エチレン性不飽和化合物として、単官能エチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。単官能エチレン性不飽和化合物は、好ましくはラジカル重合性モノマーであり、重合性のあるエチレン性不飽和結合を1つのみ有するモノマーである。重合性のあるエチレン性不飽和結合を有する基としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニル基、ビニルオキシ基が好ましく例示できる。
また、本発明のインク組成物は、環状構造を有するエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。環状構造を有する単官能エチレン性不飽和化合物としては、芳香族単官能エチレン性不飽和化合物、脂肪族環状構造を有する単官能エチレン性不飽和化合物がより好ましい。
また、本発明のインク組成物は、多官能エチレン性不飽和化合物を含有することがより好ましい。以下、それぞれについて詳述する。
(芳香族単官能エチレン性不飽和化合物及び脂肪族環状構造を有する単官能エチレン性不飽和化合物)
脂肪族環状構造を有する単官能エチレン性不飽和化合物とは、ヘテロ原子を含んでもよい脂環式炭化水素基を有する単官能エチレン性不飽和化合物であり、また、芳香族単官能エチレン性不飽和化合物とは、芳香族基を有する単官能エチレン性不飽和化合物である。
芳香族単官能エチレン性不飽和化合物及び脂肪族環状構造を有する単官能エチレン性不飽和化合物は、以下の式(C1)で表される単官能エチレン性不飽和化合物であることが好ましい。
Figure 0005349216
式(C1)において、R1は水素原子、ハロゲン原子、又は、総炭素数1〜4のアルキル基を表し、X1は、単合、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(O)O−又は−OC(O)−)、アミド結合(―C(O)NH−、又は、−NHC(O)−)、カルボニル結合(−C(O)―)、分岐を有していてもよい総炭素数20以下のアルキレン基、又はこれらを組み合わせた第2の二価の連結基が結合してもよく、第1の二価の連結基のみ又は第2の二価の連結基を有する場合はエーテル結合、エステル結合及び総炭素数20以下のアルキレン基を有するものが好ましい。
Yは単環芳香族基及び多環芳香族基を含む芳香族基又は脂環式炭化水素基であり、前記芳香族基及び脂環式炭化水素基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、シロキサン基、総炭素数30以下の置換基を有していてもよく、前記芳香族基又は脂環炭化水素基の環状構造には、O、N、S等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
上記式(C1)において、R1は水素原子又は総炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは水素原子又はメチル基であり、特に好ましくは水素原子である。
また、X1はエステル結合を有するものであることが好ましい。
すなわち、本発明において、脂肪族環状構造を有する単官能エチレン性不飽和化合物及び芳香族単官能エチレン性不飽和化合物は、アクリレート又はメタクリレート(以下、「(メタ)アクリレート」とも表記する。)であることが好ましい。
〔芳香族単官能エチレン性不飽和化合物〕
芳香族単官能エチレン性不飽和化合物は、以下の式(C2)で表される重合性モノマーであることが好ましい。
Figure 0005349216
式(C2)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、又は、総炭素数1〜4のアルキル基を表し、X1は二価の連結基を表し、R5は置換基を表し、uは0〜5の整数を表し、また、u個存在するR5はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよく、複数のR5がお互いに結合して環を形成してもよく、その環は芳香環であってもよい。
式(C2)中、R1は、好ましくは水素原子又は総炭素数1〜4のアルキル基であり、より好ましくは水素原子又はメチル基であり、さらに好ましくは水素原子である。
1は式(C1)におけるX1と同義である。式(C2)におけるX1のビニル基と結合する端部は、X1のカルボニル炭素とビニル基とが結合するカルボン酸エステル基又はアミド基であることが好ましく、より好ましくはカルボン酸エステル基である。特に、H2C=C(R1)−C(O)O−の構造を有するものであることが好ましい。その場合、芳香環と結合するX1の他の部分は、単結合であっても、前記の基から任意に選択したものであってもよい。
1及びX1を含むビニル部分(H2C=C(R1)−X1−)は、芳香環の任意の位置で結合することができる。また、(A)顔料との親和性を向上させるという観点から、式(C2)におけるX1の芳香環と結合する端部は、酸素原子であることが好ましく、エーテル性酸素原子であることがより好ましく、式(C2)におけるX1は−C(O)O(CH2CH2O)p−(pは1又は2を表す。)であることがさらに好ましい。
u個存在するR5は、それぞれ独立に一価又は多価の置換基であってもよい。一価の置換基は、水素原子、ヒドロキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、チオール基、シロキサン基、又は、さらに置換基を有していてもよい総炭素数30以下の炭化水素基若しくは複素環基であることが好ましい。
式(C2)中、複数のR5は、お互いに結合して環を形成している場合には、芳香環を形成していることが好ましい。
すなわち、式(C2)中、芳香族基として好ましいものは、単環芳香族であるベンゼンから1つ以上の水素を除いた基(フェニル基、フェニレン基等)のほか、2〜4つの環を有する多環芳香族基であり、限定されるものではない。具体的には、ナフタレン、アントラセン、1H−インデン、9H−フルオレン、1H−フェナレン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレン、ナフタセン、テトラフェニレン、ビフェニレン、as−インダセン、s−インダセン、アセナフチレン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、クリセン、プレイアンデン等から1つ以上の水素原子を除いた基が例示できる。
これらの芳香族基は、O、N、S等のヘテロ原子を含む芳香族複素環基であってもよい。具体的には、フラン、チオフェン、1H−ピロール、2H−ピロール、1H−ピラゾール、1H−イミダゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、2H−ピラン、2H−チオピラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール等の単環芳香族複素環化合物から、少なくとも1つの水素原子を除いた基が挙げられる。
また、チアントレン、イソベンゾフラン、イソクロメン、4H−クロメン、キサンテン、フェノキサチイン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、4H−キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、β−カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピロリジン等の多環芳香族複素環化合物から、少なくとも1つの水素原子を除いた基が挙げられる。
上記の芳香族基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、シロキサン基、総炭素数30以下の置換基を1又は2以上有していてもよい。例えば無水フタル酸や無水フタルイミドのように芳香族基が有する2以上の置換基でO、N、S等のヘテロ原子を含む環状構造を形成してもよい。
本発明において、多環芳香族基としてさらに好ましいものは、2〜3つの環を有する多環芳香族基であり、特に好ましいものは、ナフチル基である。
芳香族単官能エチレン性不飽和化合物の具体例として[L−1]〜[L−62]が好ましく挙げられるが、下記に限定されるものではない。
Figure 0005349216
Figure 0005349216
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Figure 0005349216
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〔脂肪族環状構造を有する単官能エチレン性不飽和化合物〕
脂肪族環状構造を有する単官能エチレン性不飽和化合物は、下記式(C3)で表されるノルボルナン骨格を有する化合物であることが好ましい。
Figure 0005349216
式(C3)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、又は、総炭素数1〜4のアルキル基を表し、X1は二価の連結基を表し、エーテル基(−O−)、エステル基(−C(O)O−又は−OC(O)−)、アミド基(−C(O)NR’−)、カルボニル基(−C(O)−)、窒素原子(−NR’−)、置換基を有していてもよい総炭素数1〜15のアルキレン基、又は、これらを2以上組み合わせた二価の基であることが好ましい。なお、R’は水素原子、総炭素数1〜20の直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル基、又は、総炭素数6〜20のアリール基を表す。R2は置換基を表し、rは0〜5の整数を表し、qは環状炭化水素構造を表し、前記環状炭化水素構造として炭化水素結合以外にカルボニル結合(−C(O)−)及び/又はエステル結合(−C(O)O−)を含んでいてもよく、r個存在するR2はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよく、また、ノルボルナン骨格中の一炭素原子をエーテル結合(−O−)及び/又はエステル結合(−C(O)O−)で置換してもよい。
式(C3)中、R1は水素原子又は総炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは水素原子又はメチル基である。
式(C3)におけるX1のビニル基と結合する端部は、X1のカルボニル炭素とビニル基とが結合するエステル基又はアミド基であることが好ましく、より好ましくはエステル結合である。特に、H2C=C(R1)−C(O)O−の構造を有するものであることが好ましい。その場合、ノルボルナン骨格と結合するX1の他の部分は、単結合であっても、前記の基から任意に選択したものであってもよい。
1及びX1を含むビニル部分(H2C=C(R1)−X1−)は、脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。なお、「各脂環式炭化水素構造上」とは、式(C3)におけるノルボルナン構造上及びqを含む環状炭化水素構造上を指す。
また、(A)顔料との親和性を向上させるという観点から、式(C3)におけるX1の脂環式炭化水素構造と結合する端部は、酸素原子であることが好ましく、エーテル性酸素原子であることがより好ましく、式(C3)におけるX1は−C(O)O(CH2CH2O)p−(pは1又は2を表す。)であることがさらに好ましい。
式(C3)におけるR2はそれぞれ独立に置換基を表し、脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。また、r個存在するR2はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
r個存在するR2は、それぞれ独立に一価又は多価の置換基であってもよく、一価の置換基として水素原子、ヒドロキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、チオール基、シロキサン基、さらに置換基を有していてもよい総炭素数30以下の炭化水素基若しくは複素環基、又は、二価の置換基としてオキシ基(=O)であることが好ましい。
2の置換数rは0〜5の整数を表す。
式(C3)におけるqは、環状炭化水素構造を表し、その両端はノルボルナン骨格の任意の位置で置換していてもよく、単環構造であっても、多環構造であってもよく、また、前記環状炭化水素構造として炭化水素結合以外に、カルボニル結合(−C(O)−)及び/又はエステル結合(−C(O)O−)を含んでいてもよい。
前記式(C3)で表されるモノマーとしては、式(C4)又は式(C5)で表されるモノマーであることが好ましい。なお、式(C5)中の環状炭化水素構造中の不飽和結合は、ラジカル重合性が低く、本発明において、式(C5)で表される化合物は単官能エチレン性不飽和化合物である。
Figure 0005349216
式(C4)及び式(C5)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、又は、総炭素数1〜4のアルキル基を表し、X1は二価の連結基を表し、R3及びR4はそれぞれ独立に置換基を表し、s及びtはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、また、s個存在するR3及びt個存在するR4はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
式(C4)又は式(C5)におけるR1及びX1は、式(C3)におけるR1及びX1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(C4)又は式(C5)におけるR1及びX1を含むビニル部分は、式(C4)又は式(C5)における下記に示す各脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。
Figure 0005349216
式(C4)又は式(C5)におけるR3及びR4はそれぞれ独立に置換基を表し、式(C4)又は式(C5)における上記各脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。R3及びR4における置換基は、式(C3)のR2における置換基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(C4)又は式(C5)におけるs及びtはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、また、s個存在するR3及びt個存在するR4はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
式(C3)で表されるモノマーとして、単官能アクリレートの好ましい具体例を以下に示す。
なお、下記例示化合物の一部において、炭化水素鎖を炭素(C)及び水素(H)の記号を省略した簡略構造式で記載する。
Figure 0005349216
式(C3)で表されるモノマーとして、単官能メタクリレートの好ましい具体例を以下に示す。
Figure 0005349216
式(C3)で表されるモノマーとして、単官能アクリルアミドの好ましい具体例を以下に示す。
Figure 0005349216
なお、本発明において、脂肪族環状構造を有するラジカル重合性モノマーは、脂肪族環状構造の他にエチレン性不飽和結合を有しており、脂肪族環状構造内に有するエチレン性不飽和結合は、重合性のあるエチレン性不飽和結合に該当しない。また、芳香族単官能エチレン性不飽和化合物は、芳香族基の他に、エチレン性不飽和結合を1つ有する化合物である。
脂肪族環状構造を有する単官能エチレン性不飽和化合物、及び芳香族単官能エチレン性不飽和化合物として具体的には、特開2008−87248号公報の段落〔0194〕〜〔0207〕に記載のラジカル重合性モノマーが挙げられ、ここに記載の化合物を本発明でも好適に用いることができる。
(多官能エチレン性不飽和化合物)
本発明におけるラジカル重合性化合物として、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニルオキシ基、及びN−ビニル基よりなる群から選択されるエチレン性不飽和結合基を2つ以上有する多官能エチレン性不飽和化合物(以下、多官能モノマーともいう。)を使用することもできる。
多官能モノマーを含有することで、高い硬化膜強度を有する画像を提供できるインク組成物が得られる。
多官能モノマーは、具体的には、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
中でも、環状構造を有していない非環状多官能モノマーが好ましく、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルジ(メタ)アクリレートがより好ましい。
(その他の重合性化合物)
ラジカル重合性化合物として、下記の非環状単官能モノマーをあわせて使用することもできる。
非環状単官能モノマーは比較的低粘度であり、例えば、インク組成物を低粘度化する目的においても好ましく使用できる。ただし、硬化膜のべとつきを抑えることや、高い膜強度を与えるという観点で、下記非環状単官能モノマーがインク組成物全体に占める割合は、20重量%以下であることが好ましい。より好ましくは15重量%以下である。
非環状単官能モノマーとして、具体的には、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートモノメチルエーテル、ポリテトラエチレングリコール(メタ)アクリレートモノメチルエーテル等が挙げられる。
また、ラジカル重合性化合物の別の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、さらに種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン(メタ)アクリル系モノマーあるいはプレポリマー、ウレタン系モノマーあるいはプレポリマー等の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく用いられる。
さらに、ラジカル重合性化合物として、ビニルエーテル化合物を用いることも好ましい。好適に用いられるビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度の観点から、ジビニルエーテル化合物、トリビニルエーテル化合物が好ましく、特に、ジビニルエーテル化合物が好ましい。ビニルエーテル化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。本発明においてビニルエーテル化合物は特に低粘度化の目的で好ましく使用されるが、添加量が多くなると硬化性の劣化や硬化膜表面のべたつきを引き起こすことがあり、ビニルエーテル化合物の添加量はインク組成物の全体に対して20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。
本発明に用いることができるインク組成物の全体に対する(C)(B)と共重合可能なエチレン性不飽和化合物の総量は25〜75重量%であることが好ましく、30〜60重量%であることがより好ましく、35〜50重量%含有することがさらに好ましい。上記範囲内であると、硬化性に優れ、また、粘度が適度である。
本発明において、(C)(B)と共重合可能なエチレン性不飽和化合物として、芳香族単官能エチレン性不飽和化合物及び脂肪族環状構造を有する単官能エチレン性不飽和化合物を含有する場合には、その総量はインク組成物全体の5〜60重量%であることが好ましく、より好ましくは10〜50重量%であり、さらに好ましくは20〜45重量%である。上記の数値の範囲内であると、適切な粘度に調整でき、インクジェット吐出性に優れる。
本発明において、(C)(B)と共重合可能なエチレン性不飽和化合物として芳香族単官能エチレン性不飽和化合物を含有する場合には、芳香族単官能エチレン性不飽和化合物の含有量は、インク組成物全体の50重量%以下であることが好ましく、より好ましくは10〜45重量%であり、さらに好ましくは20〜35重量%である。上記の数値の範囲内であると、適切な粘度に調整でき、インクジェット吐出性に優れる。
また、ラジカル重合性化合物として、脂肪族環状構造を有する単官能エチレン性不飽和化合物を使用する場合には、インク組成物全体の40重量%含有することが好ましく、5〜30重量%含有することがより好ましく、10〜20重量%含有することがさらに好ましい。上記範囲において硬化性、耐擦過性に優れるインク組成物が得られる。
硬化膜の基材(被記録媒体)密着性を保持する観点で、多官能モノマーがインク組成物全体に占める割合は、70重量%以下であることが好ましい。より好ましくは0〜60重量%である。特に柔軟な硬化膜を得るためには5〜30重量%であることが好ましく、10〜20重量%であることがより好ましい。
(B)N−ビニルラクタム類、及び、(C)(B)と共重合可能なエチレン性不飽和化合物の総量は、インク組成物全体の70〜95重量%が好ましく、80〜90重量%がより好ましく、85〜90重量%がさらに好ましい。上記の数値の範囲内であると、インク安定性、硬化画像の柔軟性が良好である。
(D)高分子分散剤
本発明のインク組成物は、(D)高分子分散剤を含有する。
本発明において、前述した式(1)で表されるアゾ顔料を混合・分散する工程は、高分子分散剤の存在下にて行うことが好ましい。本発明における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。
高分子分散剤の主鎖骨格は、特に制限はないが、ポリウレタン骨格、ポリアクリル骨格、ポリエステル骨格、ポリアミド骨格、ポリイミド骨格、ポリウレア骨格等が挙げられ、インク組成物の保存安定性の点で、ポリウレタン骨格、ポリアクリル骨格、ポリエステル骨格が好ましい。また、高分子分散剤の構造に関しても特に制限はないが、ランダム構造、ブロック構造、くし型構造、星型構造等が挙げられ、同様に保存安定性の点で、ブロック構造又はくし型構造が好ましい。
高分子分散剤として、具体的には、ビックケミー社より市販されている湿潤分散剤DISPER BYKシリーズの101、102、103、106、108、109、110、111、112、116、130、140、142、145、161、162、163、164、166、167、168、170、171、174、108、182、183、184、185、2000、2001、2020、2050、2070、2096、2150、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社より市販されているEFKAシリーズの4008、4009、4010、4015、4020、4046、4047、4050、4055、4060、4080、4300、4330、4340、4400、4401、4402、4403、4406、4800、5010、5044、5054、5055、5063、5064、5065、5066、5070、5244、ルーブリゾール社より市販されているSolsperseシリーズの3000、5000、11200、13240、13650、13940、16000、17000、18000、20000、21000、24000SC、24000GR、26000、28000、31845、32000、32500、32550、32600、33000、34750、35100、35200、36000、36600、37500、38500、39000、53095、54000、55000、56000、71000、楠本化成(株)より市販されているDISPARLONシリーズの1210、1220、1831、1850、1860、2100、2150、2200、7004、KS−260、KS−273N、KS−860、KS−873N、PW−36、DN−900、DA−234、DA−325、DA−375、DA−550、DA−1200、DA−1401、DA−7301、味の素ファインテクノ(株)より市販されているアジスパーシリーズのPB−711、PB−821、PB−822、PN−411、PA−111、エアープロダクツ社より市販されているサーフィノールシリーズの104A、104C、104E、104H、104S、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、420、440、DF110D、DF110L、DF37、DF58、DF75、DF210、CT111、CT121、CT131、CT136、GA、TG、TGE、日信化学工業(株)より市販されているオルフィンシリーズのSTG、E1004、サンノプコ(株)製SNスパースシリーズの70、2120、2190、(株)ADEKAより市販されているアデカコール及びアデカトールシリーズ、三洋化成工業(株)より市販されているサンノニックシリーズ、ナロアクティーCLシリーズ、エマルミンシリーズ、ニューポールPEシリーズ、イオネットMシリーズ、イオネットDシリーズ、イオネットSシリーズ、イオネットTシリーズ、サンセパラー100が挙げられる。
インク組成物中の(D)高分子分散剤の好ましい添加量は、インク組成物中における顔料の重量をP、インク組成物中における高分子分散剤の重量をDとした場合、その重量比(D/P)が、0.01≦D/P≦1.5であることが好ましく、0.03≦D/P≦1.0であることがより好ましく、0.05≦D/P≦0.6であることがさらに好ましい。上記範囲であると、顔料の凝集・沈降、インク粘度上昇が生じず、保存安定性に優れるインク組成物が得られ、インク粘度が低粘度となり、吐出安定性にも優れるインク組成物が得られる。
(E)ラジカル重合開始剤
本発明のインク組成物は、(E)ラジカル重合開始剤(以下、「重合開始剤」、「光重合開始剤」、「光開始剤」ともいう。)を含有する。本発明において、ラジカル重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。本発明に用いることができるラジカル重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明に用いることのできるラジカル重合開始剤は、活性放射線の照射により重合開始種を生成する化合物である。活性放射線としては、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線が例示できるが、装置コストや操作上の安全性の観点から、紫外線又は可視光線が好ましく、紫外線がより好ましい。
具体的なラジカル重合開始剤は当業者間で公知のものを制限なく使用でき、Bruce M.Monroeら著、Chemical Review,93,435(1993)や、R.S.Davidson著、Journal of Photochemistry and Biology A:Chemistry,73.81(1993)や、J.P.Faussier,Photoinitiated Polymerization−Theory and Applications:Rapra Review vol.9,Report,Rapra Technology(1998)や、M.Tsunooka et al.,Prog.Polym.Sci.,21,1(1996)に多く記載されている。また、「イメージング用有機材料」(有機エレクトロニクス材料研究会編、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)に化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が多く記載されている。さらには、F.D.Saeva,Topics in Current Chemistry,156,59(1990)、G.G.Maslak,Topics in Current Chemistry,168,1(1993)、H.B.Shuster et al,JACS,112,6329(1990)、I.D.F.Eaton et al,JACS,102,3298(1980)等に記載されているような、増感剤の電子励起状態との相互作用を経て、酸化的もしくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も知られる。
特に、本発明におけるラジカル重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィン化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(e)チオ化合物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(g)ケトオキシムエステル化合物、(h)ボレート化合物、(i)アジニウム化合物、(j)メタロセン化合物、(k)活性エステル化合物、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、及び(m)アルキルアミン化合物等が好ましく用いられる。
本発明において、ラジカル重合開始剤としては、アシルホスフィンオキサイド化合物、及びα−アミノアセトフェノン化合物よりなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含有することが好ましい。これらの化合物をラジカル重合開始剤として使用すると、特に高感度で硬化させることができるので好ましい。
アシルホスフィンオキサイド化合物として具体的には、特開2008−246832号公報の段落〔0059〕〜〔0077〕に記載の化合物が挙げられ、ここに記載の化合物を本発明でも好適に用いることができる。
また、α−アミノアセトフェノン化合物として具体的には、特開2008−246832号公報の段落〔0078〕〜〔0096〕に記載の化合物が挙げられ、ここに記載の化合物を本発明でも好適に用いることができる。
(その他のラジカル重合開始剤)
本発明において、ラジカル重合開始剤として、その他のラジカル重合開始剤を含有することができる。
その他のラジカル重合開始剤としては、α−ヒドロキシアセトフェノン化合物、オキシムエステル化合物が例示できる。
−α−ヒドロキシアセトフェノン化合物−
α−ヒドロキシアセトフェノン化合物として具体的には、特開2008−246832号公報の段落〔0097〕〜〔0100〕に記載の化合物が挙げられ、ここに記載の化合物を本発明でも好適に用いることができる。
−オキシムエステル化合物−
また、オキシムエステル化合物として具体的には、特開2008−246832号公報の段落〔0101〕〜〔0105〕に記載の化合物が挙げられ、ここに記載の化合物を本発明でも好適に用いることができる。
本発明のインク組成物において、(E)ラジカル重合開始剤の総使用量は、インク組成物に対して、好ましくは0.01〜35重量%、より好ましくは0.5〜20重量%、さらに好ましくは1.0〜15重量%の範囲である。0.01重量%以上であると、組成物を十分硬化させることができ、35重量%以下であると、硬化度が均一な硬化膜を得ることができる。
また、本発明において、ラジカル重合開始剤としてアシルホスフィンオキサイド化合物を使用することが好ましく、アシルホスフィンオキサイド化合物をインク組成物の総量に対して0.01〜35重量%使用することが好ましく、より好ましくは1〜25重量%であり、さらに好ましくは3〜20重量%である。
また、本発明のインク組成物に後述する増感剤(増感色素)を用いる場合、ラジカル重合開始剤の総使用量は、増感剤に対して、ラジカル重合開始剤:増感剤の重量比で、好ましくは200:1〜1:200、より好ましくは50:1〜1:50、さらに好ましくは20:1〜1:5の範囲である。
(F)その他の成分
本発明のインク組成物は、前記(A)〜(E)成分以外に、下記に示すようなその他の成分を含有していてもよい。
本発明においては、(E)ラジカル重合開始剤の感度を向上させる目的で、増感色素を添加してもよい。増感色素としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有するものが好ましい。
増感色素としては、例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)が挙げられる。
増感色素として具体的には、特開2008−214395号公報の段落〔0085〕〜〔0098〕に記載の化合物が挙げられ、ここに記載の化合物を本発明に適用することができる。
さらに、本発明のインク組成物には、感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を共増感剤として加えてもよい。
このような共増感剤としては、アミン類、例えば、M.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号に記載の化合物等が挙げられ、より具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
他の共増感剤としては、チオール及びスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、より具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
また他の共増感剤としては、例えば、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特開平8−54735号公報記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
本発明のインク組成物には、目的に応じて種々の添加剤を併用することができる。例えば、インク組成物の安定性向上のため、酸化防止剤、重合禁止剤を添加することができる。また、本発明のインク組成物には、さらに、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤、射出物性の制御を目的とした導電性塩類、被記録媒体との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することができる。
また、本発明のインク組成物には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。
また、本発明のインク組成物には、液物性調整のためにノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤や、有機フルオロ化合物などを添加することもできる。
また、本発明のインク組成物には、この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
以下に、それぞれの添加剤について述べる。
本発明のインク組成物には、長時間安定した吐出性を付与するため、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、シリコーンオイル類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
インク組成物中の界面活性剤の含量は、インクジェットヘッドの吐出に適した表面張力に適合させるように適宜調整されるが、0〜6重量%が好ましく、より好ましくは0〜4重量%、さらに好ましくは0〜2重量%の範囲である。
本発明のインク組成物の保存性を高める観点から重合禁止剤を添加してもよい。また、本発明のインク組成物はインクジェット記録に適用するため、40〜80℃の範囲で加熱し、低粘度化して吐出することが好ましい。また、熱重合によるヘッド詰まりを防ぐためにも、重合禁止剤を添加することが好ましい。
重合禁止剤は、本発明のインク組成物全量に対し、200〜20,000ppm添加することが好ましい。
ラジカル重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl、tris(N−nitroso−N−phenylhydroxylamine)aluminum salt等が挙げられる。
本発明のインク組成物の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、インク組成物の総量に対して0.1〜8重量%であることが好ましい。
本発明のインク組成物には、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。前記有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などが挙げられる。前記金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体などが挙げられ、具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのI〜J項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、インク組成物の総量に対して0.1〜8重量%であることが好ましい。
本発明のインク組成物には、吐出物性の制御を目的として、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類を添加することができる。
本発明のインク組成物には、被記録媒体との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤などが挙げられる。
この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量はインク組成物全体に対し0.1〜5重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量%の範囲である。
本発明のインク組成物には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。さらに、高分子化合物の共重合組成として、「カルボキシ基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
塩基性化合物は、インク組成物の保存安定性を向上させる観点から添加することが好ましい。本発明に用いることができる塩基性化合物としては、公知の塩基性化合物を用いることができ、例えば、無機塩等の塩基性無機化合物や、アミン類等の塩基性有機化合物を好ましく用いることができる。
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6ページに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と総炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と総炭素数3〜14の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と総炭素数6〜14の芳香属アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などが例示できる。
〔インク組成物の物性]
本発明のインク組成物は、吐出性を考慮し、25℃における粘度が40mPa・s以下であることが好ましい。より好ましくは5〜40mPa・s、さらに好ましくは7〜30mPa・sである。また吐出温度(好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃)における粘度が、3〜15mPa・sであることが好ましく、3〜13mPa・sであることがより好ましい。
本発明のインク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク浸透を回避し、未硬化モノマーの低減が可能となる。さらにインク液滴着弾時のインクの滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善されるので好ましい。
また、本発明のインク組成物の25℃における表面張力は、20〜35mN/mであることが好ましい。より好ましくは23〜33mN/mである。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点はで35mN/m以下が好ましい。
II.インクジェット記録方法
本発明のインクジェット記録方法は、被記録媒体上に本発明のインク組成物を吐出する工程、及び、吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、該インク組成物を硬化する工程を含むことを特徴とする。これらの工程を行うことで、被記録媒体上に硬化したインク組成物による画像が形成される。
本発明のインクジェット記録方法では、本発明のインク組成物が吐出安定性を有することから、吐出インク体積のバラツキが小さくなり、目標着弾位置からのズレが小さくなることで、濃度ムラ及び筋ムラを抑制することが可能となる。
本発明のインクジェット記録方法には、以下に詳述するインクジェット記録装置を用いることができる。
本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成し得る公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。すなわち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明のインクジェット記録方法における被記録媒体へのインク組成物の吐出を実施することができる。
本発明で用いることのできるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性放射線源を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは8〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、さらに好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
上述したように、本発明のインク組成物のような活性放射線硬化型インクは、吐出されるインクを一定温度にすることが望ましいことから、インクジェット記録装置には、インク組成物温度の安定化手段を備えることが好ましい。一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。すなわち、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断もしくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
上記のインクジェット記録装置を用いて、インク組成物の吐出はインク組成物を好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃に加熱して、インク組成物の粘度を、好ましくは3〜15mPa・s、より好ましくは3〜13mPa・sに下げた後に行うことが好ましい。特に、本発明のインク組成物として、25℃におけるインク粘度が50mPa・s以下であるものを用いると、良好に吐出が行えるので好ましい。この方法を用いることにより、高い吐出安定性を実現することができる。
本発明のインク組成物のような活性放射線硬化型インクジェット記録用インク組成物は、概して通常インクジェット記録用インクで使用される水性インクより粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。インク組成物の粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こす。したがって、吐出時のインク組成物の温度はできるだけ一定に保つことが必要である。よって、本発明において、インク組成物の温度の制御幅は、好ましくは設定温度の±5℃、より好ましくは設定温度の±2℃、さらに好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
次に、吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、前記インク組成物を硬化する工程について説明する。
被記録媒体上に吐出されたインク組成物は、活性放射線を照射することによって硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれるラジカル重合開始剤が活性放射線の照射により分解して、ラジカルを発生し、そのラジカルによってラジカル重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。このとき、インク組成物においてラジカル重合開始剤と共に増感剤が存在すると、系中の増感剤が活性放射線を吸収して励起状態となり、ラジカル重合開始剤と接触することによってラジカル重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
ここで、使用される活性放射線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用され得る。活性放射線のピーク波長は、増感剤の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、350〜420nmであることがさらに好ましい。
また、本発明のインク組成物は、低出力の活性放射線であっても十分な感度を有するものである。したがって、露光面照度が、好ましくは10〜4,000mW/cm2、より好ましくは20〜2,500mW/cm2で硬化させることが適当である。
活性放射線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェット記録用インクの硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、LED(UV−LED),LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット記録用光源として期待されている。
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性放射線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。さらに一層短い波長が必要とされる場合、米国特許番号第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性放射線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性放射線源はUV−LEDであり、特に好ましくは350〜420nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
なお、LEDの被記録媒体上での最高照度は10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、50〜800mW/cm2であることが特に好ましい。
本発明のインク組成物は、このような活性放射線に、好ましくは0.01〜120秒、より好ましくは0.1〜90秒照射されることが適当である。
活性放射線の照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インクの吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性放射線の照射は、インク着弾後、一定時間(好ましくは0.01〜0.5秒、より好ましくは0.01〜0.3秒、さらに好ましくは0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、被記録媒体に着弾したインクが硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインクが浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えることができるので好ましい。
さらに、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。国際公開第99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、本発明のインクジェット記録方法に適用することができる。
上述したようなインクジェット記録方法を採用することにより、表面の濡れ性が異なる様々な被記録媒体に対しても、着弾したインクのドット径を一定に保つことができ、画質が向上する。
本発明のインクジェット記録方法には、本発明のインク組成物を含むインクセットを好適に使用することができる。例えば、本発明のインク組成物(イエロー色)に、シアン色のインク組成物、マゼンタ色のインク組成物、ブラック色の組成物を組み合わせてインクセットとして使用することが例示できる。
本発明のインク組成物を使用してフルカラー画像を得るためには、イエロー(本発明のインク組成物)、シアン、マゼンタ、ブラックよりなる4色の濃色インク組成物を組み合わせたインクセットであることが好ましい。また、イエロー(本発明のインク組成物)、シアン、マゼンタ、ブラック、ホワイトよりなる5色の濃色インク組成物群と、ライトシアン、ライトマゼンタのインク組成物群と、を組み合わせたインクセットであることがさらに好ましい。なお、本発明における「濃色インク組成物」とは、顔料の含有量がインク組成物全体の1重量%を超えているインク組成物を意味する。
なお、本発明のインクジェット記録方法にてカラー画像を得るためには、各色のインク組成物(インクセット)を用い、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。具体的には、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのインク組成物からなるインクセットを使用する場合には、イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。さらに、ライトシアン、ライトマゼンタ色のインク組成物群と、シアン、マゼンタ、ブラック、ホワイト、イエローの濃色インク組成物群と、の計7色が少なくとも含まれるインクセットを使用する場合には、その場合には、ホワイト→ライトシアン→ライトマゼンタ→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。
このように、明度の低いインクから順に重ねることにより、下部のインクまで照射線が到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、密着性の向上が期待できる。また、照射は、全色を吐出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
本発明において、被記録媒体としては、特に限定されず、支持体や記録材料として公知の被記録媒体を使用することができる。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。また、本発明における被記録媒体として、非吸収性被記録媒体を好適に使用することができる。
III.印刷物
本発明の印刷物は、本発明のインクジェット記録方法によって記録されたことを特徴とする。本発明の印刷物は、濃度ムラ及び筋ムラが抑制された本発明のインクジェット記録方法によって記録された印刷物であることから、高品質の印刷物となる。また、本発明の印刷物は、画像形成に用いられるインク組成物が色相及び感度にも優れるため、発色性と鮮鋭度に優れた高品質な画像を有することから、広汎な分野に適用し得る。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は重量基準である。
[合成例1]
〜例示化合物(Pig.−1)の合成〜
例示化合物(Pig.−1)の合成スキームを下記に示す。
Figure 0005349216
(1)中間体(a)の合成
シアノ酢酸メチル29.7g(0.3モル)にオルトギ酸トリメチル42.4g(0.4モル)、無水酢酸20.4g(0.2モル)、p−トルエンスルホン酸0.5gを加えて110℃(外温)に加熱し、反応系から生じる低沸点成分を留去しながら20時間撹拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い、前記中間体(a)を14.1g(黄色粉末、収率30%)で得た。得られた中間体(a)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、CDCl3)7.96(s,1H),4.15(s,3H),3.81(s,3H)
(2)中間体(b)の合成
メチルヒドラジン7.4mL(141ミリモル)にイソプロパノール150mLを加えて15℃(内温)に冷却し、この混合液に中間体(a)7.0g(49.6ミリモル)を徐々に添加した後、50℃に加熱して1時間40分撹拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い、前記中間体(b)を10.5g(白色粉末、収率50%)で得た。得られた中間体(b)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、CDCl3)7.60(s,1H),4.95(brs,2H),3.80(s,3H),3.60(s,3H)
(3)中間体(c)の合成
ヒドラジン1水和物130mLにメタノール100mLを加えて10℃(内温)に冷却し、この混合液に4,6−ジクロロピリミジン50.0g(336ミリモル)を徐々に添加(内温20℃以下)した後、50℃に加熱して4時間30分撹拌した。反応液から析出した結晶をろ取、イソプロパノールでかけ洗い後、乾燥を行い、前記中間体(c)を43.1g(白色粉末、収率92%)で得た。得られた中間体(c)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、d6−DMSO)7.82(s,1H),7.55(s,2H),5.96(s,1H),4.12(s,4H)
(4)中間体(d)の合成
中間体(c)35.0g(0.25モル)、ピバロイルアセトニトリル68.8g(0.55モル)に水900mLを加えて室温で撹拌した。この懸濁液に1M塩酸水をpH3になるように滴下した後、50℃に加熱して8時間撹拌した。この反応液に8M水酸化カリウム水溶液を滴下してpH8に調整して、さらに1M塩酸水を滴下してpH6に調整して析出した結晶をろ取、イソプロパノールでかけ洗い後、乾燥を行い前記中間体(d)を83.0g(白色粉末、収率94%)で得た。得られた中間体(d)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、d6−DMSO)8.73(s,1H),7.97(s,1H),6.88(s,4H),5.35(s,2H),1.22(s,18H)
(5)例示化合物(Pig.−1)の合成
濃硫酸4.1mLに酢酸18.5mLを加えて氷冷で撹拌し、40%ニトロシル硫酸3.85g(12.1ミリモル)を滴下した。この混合液に中間体(b)1.71g(11.0ミリモル)を徐々に添加(内温0℃以下)した後、0℃で2時間撹拌した。この反応液に尿素150mgを添加し、さらに0℃で15分撹拌して、ジアゾ液Aを調製した。
中間体(d)にメタノール50mLを加えて加熱溶解させた後、氷冷で撹拌した混合液に前記ジアゾ液Aをゆっくり滴下した(内温10℃以下)。この反応液を室温で2時間撹拌した後、析出した結晶をろ取、メタノールでかけ洗いして前記例示化合物(Pig.−1)の粗結晶を得た。さらに前記粗結晶に水を加えて撹拌した後、この懸濁液を水酸化ナトリウム水溶液でpH7に調整し、さらにジメチルアセトアミド20mLを加えて、80℃で2時間撹拌した。析出した結晶をろ取、さらにメタノールで懸濁洗浄し得られた結晶をろ取、乾燥して例示化合物(Pig.−1)を2.0g(黄色粉末、収率79%)で得た。
なお、上記合成スキームと同様にして、例示化合物(Pig.−18)、例示化合物(Pig.−21)、及び例示化合物(Pig.−33)を合成した。
[実施例1〜10及び比較例1で使用した各素材]
実施例1〜10及び比較例1で使用した各素材は下記に示す通りである。
(顔料)
・例示化合物(Pig.−1)
・例示化合物(Pig.−18)
・例示化合物(Pig.−21)
・例示化合物(Pig.−33)
・Yellow HG AF(クラリアント製C.I.ピグメント・イエロー・180)
(高分子分散剤)
・DISPERBYK−168(高分子分散剤、固形分30%、BYK Chemie社製)
・アジスパーPB821(高分子分散剤、味の素ファインテクノ(株)製)
(重合性化合物)
・RAPI−CURE DVE−3(トリエチレングリコールジビニルエーテル、ISP社製)
・N−ビニル−ε−カプロラクタム(NVC、BASF社製)
・N−ビニルピロリドン(NVP、(株)日本触媒製)
・FA−512A(ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、日立化成工業(株)製)
・Actilane 421(プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、Akcros社製)
・SR339A(2−フェノキシエチルアクリレート、SARTOMER社製)
・KAYARAD DPCA−60(カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬(株)製)
(重合開始剤)
・Lucirin TPO(ラジカル重合開始剤、BASF社製)
・Irgacure 369(ラジカル重合開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
・Irgacure 184(ラジカル重合開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
(その他添加剤)
・FIRSTCURE ST−1(重合禁止剤、Chem First社製)
・KF−353(シリコーン系界面活性剤、信越化学工業(株)製)
[顔料分散物(ミルベース)の調製]
イエローミルベースを以下の組成にて混合し、ミキサー(シルバーソン社製L4R)を用いて3,000回転/分にて10分撹拌した。その後、ビーズミル分散機DISPERMAT SL(VMA−GETZMANN GmbH社製)に入れ、直径0.65mmのジルコニアビーズ(YTZボール、(株)ニッカトー製)を用い、ビーズ充填率80体積%、2,500回転/分で6時間分散を行い、イエローミルベースYM1を作製した。
<イエローミルベースYM1>
・顔料:例示化合物(Pig.−1) 30部
・RAPI−CURE DVE−3 26部
・DISPERBYK−168 44部
<イエローミルベースYM2>
・顔料:例示化合物(Pig.−1) 30部
・RAPI−CURE DVE−3 50部
・アジスパーPB821 20部
<イエローミルベースYM3>
・顔料:例示化合物(Pig.−18) 30部
・RAPI−CURE DVE−3 26部
・DISPERBYK−168 44部
<イエローミルベースYM4>
・顔料:例示化合物(Pig.−21) 30部
・RAPI−CURE DVE−3 26部
・DISPERBYK−168 44部
<イエローミルベースYM5>
・顔料:例示化合物(Pig.−21) 30部
・RAPI−CURE DVE−3 50部
・アジスパーPB821 20部
<イエローミルベースYM6>
・顔料:例示化合物(Pig.−33) 30部
・RAPI−CURE DVE−3 50部
・アジスパーPB821 20部
<イエローミルベースYM7>
・顔料:Yellow HG AF 30部
・RAPI−CURE DVE−3 26部
・DISPERBYK−168 44部
〔実施例1〕
以下の成分を、ミキサー(シルバーソン社製L4R)を用いて2,500回転/分にて15分撹拌して、イエロー色のインク組成物(実施例1のインク組成物)を得た。
東機産業(株)製TVE−22LTを用いて測定した25℃における粘度は18.5mPa・sであった。協和界面科学(株)製、全自動表面張力計CBVP−Zを用いて測定した25℃における表面張力は27.6mN/mであった。
・イエローミルベースYM1 13.0部
・N−ビニル−ε−カプロラクタム 40.0部
・SR339A 20.0部
・Actilane 421 10.0部
・KAYARAD DPCA−60 2.0部
・FIRSTCURE ST−1 0.3部
・Irgacure 369 3.5部
・Lucirin TPO 8.0部
・Irgacure 184 3.1部
・KF−353 0.1部
〔実施例2〜6、比較例1〕
実施例1のインク組成物の調製において、イエローミルベースYM1をイエローミルベースYM2、イエローミルベースYM3、イエローミルベースYM4、イエローミルベースYM5、イエローミルベースYM6、イエローミルベースYM7に適宜置換え、それ以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜6及び比較例1のインク組成物を調製した。
〔実施例7〜10〕
実施例1のインク組成物の調製と同様に、以下実施例7〜10のインク組成物の調製を実施した。
〔実施例7〕
・イエローミルベースYM1 13.0部
・N−ビニル−ε−カプロラクタム 20.0部
・SR339A 35.0部
・Actilane 421 15.0部
・KAYARAD DPCA−60 2.0部
・FIRSTCURE ST−1 0.3部
・Irgacure 369 3.5部
・Lucirin TPO 8.0部
・Irgacure 184 3.1部
・KF−353 0.1部
〔実施例8〕
・イエローミルベースYM1 13.0部
・N−ビニル−ε−カプロラクタム 10.0部
・SR339A 35.0部
・FA−512A 10.0部
・Actilane 421 15.0部
・KAYARAD DPCA−60 2.0部
・FIRSTCURE ST−1 0.3部
・Irgacure 369 3.5部
・Lucirin TPO 8.0部
・Irgacure 184 3.1部
・KF−353 0.1部
〔実施例9〕
・イエローミルベースYM1 13.0部
・N−ビニル−ε−カプロラクタム 40.0部
・FA−512A 20.0部
・Actilane 421 10.0部
・KAYARAD DPCA−60 2.0部
・FIRSTCURE ST−1 0.3部
・Irgacure 369 3.5部
・Lucirin TPO 8.0部
・Irgacure 184 3.1部
・KF−353 0.1部
〔実施例10〕
・イエローミルベースYM1 13.0部
・N−ビニル−ピロリドン 40.0部
・SR339A 20.0部
・Actilane 421 10.0部
・KAYARAD DPCA−60 2.0部
・FIRSTCURE ST−1 0.3部
・Irgacure 369 3.5部
・Lucirin TPO 8.0部
・Irgacure 184 3.1部
・KF−353 0.1部
[評価]
〜吐出性評価〜
上記で得られたインクジェット記録用インク組成物(実施例1〜10及び比較例1のインク組成物)を、それぞれPET製容器に封入し60℃環境下に4週間保管した。インクジェット記録装置として、インクジェットプリントヘッドCA3(東芝テック(株)製)を搭載したJetLyzer((株)ミマキエンジニアリング製)を吐出電圧22V、吐出ドロップ数7ドロップに設定し、インク組成物を45℃にて60分間連続吐出したのち、10cmラインにて印字した。被記録媒体として、ポリ塩化ビニル(厚み220μm)を用いた。
印字サンプルの打滴開始部から5cmの部位のライン間の距離を王子計測機器(株)製ドットアナライザーDA−6000で測定し、その標準偏差を算出し、吐出の方向精度を評価した。評価基準は以下の通りである。また、評価結果を表1に示す。
−連続吐出性評価基準−
◎・・・ノズル抜け2本未満
○・・・ノズル抜け2本以上5本未満
△・・・ノズル抜け5本以上10本未満
×・・・ノズル抜け10本
−吐出位置精度評価基準−
◎・・・標準偏差が2μm未満
○・・・標準偏差が2μm以上4μm未満
△・・・標準偏差が4μm以上6μm未満
×・・・標準偏差が6μm以上
−硬化感度(硬化性)の測定方法−
上記インクジェット記録方法に従い、平均膜厚が12μmのベタ画像の描画を行い、紫外線照射後の画像面において、触診により、画像のべとつきの程度を評価し、経時前後での変化を以下の基準で評価した。
3・・・経時前後で変動なし
2・・・経時前後での変動が若干あり、経時後はべとつきが若干ある
1・・・経時前後で大きく変動し、経時後は未硬化のインクが手に転写するほど固まっていない
−N−ビニルラクタム分解率−
Waters社製液体クロマトグラフィー装置及び関東化学(株)製液体クロマトグラフィー用カラムRP−18を用いて経時前後のインク組成物を測定した。経時前後のN−ビニルラクタムピークのピーク面積を比較し、減少割合(分解割合)を計算した。減少割合が小さいほど分解が抑制できていることを示す。
−柔軟性評価方法:折り曲げテスト−
本実施例では、保存前後での硬化膜の柔軟性を評価する方法として、折り曲げテストを実施した。
上記インクジェット記録方法に従い、被記録媒体として、エステルフィルムE5000(膜厚125μm、東洋紡績(株)製)を用い、画像部の平均膜厚が12μm、24μm、36μmの3つのベタ画像を描画した。折り曲げテストは画像を形成した被記録媒体を25℃条件下で1回折り曲げ、画像部の割れの有無によって評価した。一般に平均膜厚が厚くなると、画像部を折り曲げた際に画像部にかかる歪が大きくなり、割れを生じやすくなる。すなわち、より厚い膜厚で画像部に割れが生じないかをテストすることで、柔軟性の尺度とすることができる。
評価基準は以下の通りである。
4・・・平均膜厚12μm、24μm、36μmのサンプルでは割れが発生しない
3・・・平均膜厚12μm、24μmのサンプルでは割れが発生しない
2・・・平均膜厚12μmのサンプルでは割れが発生しないが、平均膜厚24μmのサンプルで、画像部の折り曲げた部分に割れが入る
1・・・平均膜厚12μm、24μm、36μmすべてのサンプルで、画像部の折り曲げた部分に割れが入る
−基材密着性評価方法:クロスハッチテスト(EN ISO2409)−
被記録媒体として、PET(エステルフィルムE5000、膜厚125μm、東洋紡績(株)製)を用い、上記インクジェット記録方法に従い、それぞれの基板に画像部の平均膜厚が12μmのベタ画像を描画した。その後、各々の印刷物に対して、クロスハッチテスト(EN ISO2409)を実施した。
−粘度変化率測定方法−
本実施例における粘度測定は、B型粘度計:Brookfield LVDV−I(Brookfield社製)を用い、25℃条件下で、ローターの回転数20rpmで粘度測定を行った。インク組成物調製直後と、60℃環境下に4週間保管した直後の粘度の変化率を測定した。
Figure 0005349216
本発明のインク組成物はこれら実施例に限定されるものではないが、本実施例に示すとおり、比較例と比べ、実施例1〜10ではN−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドンの分解が抑制され、分解生成物による経時でのインク組成物の増粘を防ぐことができ、かつ分解物によるノズル近辺の汚染が発生せず、安定なメニスカスが形成され吐出性を良好に維持できる。加えて、上記実施例により、本発明のインク組成物は、光硬化性、膜柔軟性、基材密着性に有効なN−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドンの有効性を維持でき、これら性能も良好に維持できることが示されている。
また、本発明のインク組成物を使用したインクジェット記録方法により、濃度ムラ及び筋ムラの改善された印刷物が得られた。

Claims (11)

  1. (A)式(1)で表されるアゾ顔料、
    (B)N−ビニルラクタム類、
    (C)(B)と共重合可能なエチレン性不飽和化合物、
    (D)高分子分散剤、及び、
    (E)ラジカル重合開始剤を含有することを特徴とする
    インク組成物。
    Figure 0005349216
    (式(1)中、Zは5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基を表し、Y1、Y2、R11、R12はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、G1、G2はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、W1、W2はそれぞれ独立に、アルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表す。)
  2. 前記式(1)中のW1、W2が、それぞれ独立に総炭素数3以下のアルコキシ基又はアミノ基である、請求項1に記載のインク組成物。
  3. 前記式(1)中のG1、G2が、それぞれ独立に総炭素数3以下のアルキル基又は総炭素数12以下のアリール基である、請求項1又は2に記載のインク組成物。
  4. 前記式(1)中のZが、6員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基である、請求項1〜3いずれか1項に記載のインク組成物。
  5. 前記(B)が、N−ビニルピロリドン、又は、N−ビニルカプロラクタムである、請求項1〜4いずれか1項に記載のインク組成物。
  6. 前記(C)として単官能エチレン性不飽和化合物を含む、請求項1〜5いずれか1項に記載のインク組成物。
  7. 前記(C)として環状構造を有する単官能エチレン性不飽和化合物を含む、請求項1〜6いずれか1項に記載のインク組成物。
  8. 前記環状構造が、芳香族基又は不飽和脂環式基である、請求項7に記載のインク組成物。
  9. 活性放射線硬化型インクジェット記録用である、請求項1〜8いずれか1項に記載のインク組成物。
  10. 被記録媒体上に、請求項1〜9いずれか1項に記載のインク組成物を吐出する工程、及び、
    吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して前記インク組成物を硬化する工程を含むことを特徴とする
    インクジェット記録方法。
  11. 請求項10に記載のインクジェット記録方法によって記録されたことを特徴とする
    印刷物。
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