JP5347830B2 - レーダ装置 - Google Patents

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Description

この発明は、パルス繰り返し周波数を有した送信波を出力して、目標を検出するパルスドップラ方式のレーダ装置に関するものである。
航空機搭載用のパルスドップラレーダにおいて、HPRF(high pulse repetition frequency)を使用したレーダモードでの測距方法として、FMレンジングが使用されている。これは、送信時に送信周波数にチャープ処理を施し、受信ドップラの周波数の変位を観測して、その変位量から目標までの距離を算出するものである(例えば非特許文献1参照)。
George W. Stimson 著、「Airborne Radar Second Edition」、SciTECH Publishing, Inc、Chapters 14 and 28
しかし、目標から反射されて受信する目標信号以外にも、目標機から送出される送信波を受信したり、目標信号が目標機のエンジンブレードの回転によって変調を受ける(JEM:Jet Engine Modulation)などして、受信帯域に不要波が発生してしまう。この不要波の存在は、目標の探知確率の低下を招き、探知性能に悪影響を与える。
これに対し、例えば特許文献1に示すように、目標の正確なレンジ情報を得るFMレンジング処理を行うことで、不要波の誤認識を抑える方法が知られている。
特開2002−243848
特許文献1に示すような従来のFMレンジング処理においては、レンジ計算の対象となるドップラ周波数データは、送受信によって得られた全データ中から抽出された一部のデータのみに限られる。この抽出される周波数データ数は、レーダ装置のメモリや機器構成上の制約から、あらかじめ設定した固定値で与えられるため、時間的に取得タイミングの早いものから優先的に、所定数分だけ周波数データが抽出される。
ところが、多くの不要波が発生した場合、上記の抽出方法では不要波のみが処理対象データとして抽出されてしまい、肝心の目標信号が処理対象データとして抽出されない現象を生じる可能性が高くなる。不要波の数が多いほど、限られた計算処理対象データ数の中に目標信号が入れなくなる可能性が高くなり、全ての枠を不要波が占有してしまうと、目標探知に失敗するという問題があった。
この発明は係る課題を解決するために成されたものであり、全取得データ中から処理対象となるデータを抽出して目標のレンジ情報を得る際に、予めドップラ周波数データによる目標判定処理を設けることによって、多数の不要波が存在する中で確実に目標のレンジ情報を得ることを目的とする。
この発明によるレーダ装置は、周波数の時間変化率がそれぞれ異なる少なくとも3つの連続したフェーズで、周波数の時間変化率がそれぞれ一定となる周波数変調を施した送信波を発生する励振受信機と、上記励振受信機の受けた目標信号を含む受信信号を検波し、ドップラ周波数データと強度データを得て、FMレンジング処理を施す信号処理器とを備え、上記信号処理器は、フェーズ間で組み合わせたドップラ周波数データの差分結果と周波数の時間変化率との相関関係から規定される、目標信号に特有の判定条件に基づき、目標信号候補のドップラ周波数データを選択し、選択したドップラ周波数データと周波数の時間変化率とから目標の距離情報を求めるものである。
この発明によれば、FMレンジング処理において、ドップラ周波数データと周波数の時間変化率とを用いて目標信号候補を抽出することによって、不要波が複数存在する状況であっても、目標信号を正確に検出して、目標信号についてのみレンジ計算を行うことが可能となる。
実施の形態1.
この発明に係る実施の形態1によるレーダ装置について、図を用いて説明する。
図1は実施の形態1におけるレーダ装置の電波の送受信の様子を示す図である。図1において、レーダ装置3を搭載した航空機(自機1)と、目標となる航空機(目標機2)とが向かい合って飛行し、両航空機の飛行中にレーダ装置3が電波を送受信することを前提としている。自機1は、目標機2を発見するために、自機1の機首にレーダ装置3を搭載し、レーダ装置3を用いて目標の捜索を行う。自機1のレーダ装置3からの送信波4が目標である目標機2にて反射し、返ってくる目標信号を受信して、目標の探知が行われる。このとき、目標機2から送出される送信波5や、JEMによる不要波が、レーダ装置3にて受信される状況が生じる。
次に、レーダ装置3の構成について説明する。図2は実施の形態1によるレーダ装置3の構成を示す図であり、レーダ波の受信からレンジ算出処理を行う機器の構成を示している。
図2において、レーダ装置3は、アンテナ6と、励振受信機7と、信号処理器8によって構成される。信号処理器8は、信号処理部9とデータ処理部10から構成される。アンテナ6は励振受信機7によって発振及び周波数変調された送信電波を空間に放射し、目標信号を含む空間から入射する電波を受信する。アンテナ6によって受信され、励振受信機7によって周波数混合及び復調処理された信号は、信号処理器8の信号処理部9に送られる。
信号処理部9によって高速フーリエ変換、CFAR処理(Constant False Alarm Rate:一定誤警報確率)、及びピーク検出処理が行われて、ドップラ周波数データが取得される。これらのドップラ周波数データとそれぞれのドップラ周波数が持つ強度データとは、データ処理部10に送られる。データ処理部10にて、このドップラ周波数データ及び強度データに対するFMレンジング処理が実施される。
ここで、データ処理部10にて主に処理が行われる、FMレンジング処理について説明する。
FMレンジング処理では、信号処理部9によって励振受信機7の生成する送信周波数が制御され、励振受信機7から少なくとも3種類以上の複数種類の送信パターンから成る送信波が出力されて、目標の捜索が行われる。図3は、周波数が一定または周波数の時間変化が直線的となる3種類の送信パターンを用いることによって、送信周波数を時間に応じて連続的に変化させた例を示す図である。
図において、3つの送信パターンは、それぞれCフェーズ、Bフェーズ、Aフェーズとして構成され、Cフェーズでは一定の送信周波数を用いており、Cフェーズに続くBフェーズでは送信周波数の周波数の時間変化率(以下、周波数変化率)が一定(直線周波数変調率)となる周波数変調を行う周波数チャープが与えられており、Bフェーズに続くAフェーズでは送信周波数においてBフェーズとは異なる一定の周波数変化率(直線周波数変調率)で周波数変調を行う周波数チャープが与えられている。このような送信パターンによって周波数の変化した送信波は、目標にて反射され励振受信機7で受信されて、信号処理部9にてドップラ周波数データ及び強度データが生成され、生成されたデータは順次、データ処理部10における図示しないメモリのデータ格納領域に、取得データファイルとして格納される。
例えば、一定の送信周波数を用いるCフェーズにて、励振受信機7がドップラ周波数f[Hz]の信号を受信し、この受信信号に対応したドップラ周波数データ及び強度データがデータ処理部10のデータ格納領域に格納される。
Cフェーズで信号が受信されると、次に信号処理部9からの命令により、Bフェーズ、Aフェーズが起動する。BフェーズとAフェーズでは励振受信機7により送信周波数にチャープが与えられている。
これにより、送信周波数は図3に示すように連続的に変化した状態で送信が行われ、受信時にデチャープ処理を行うことでドップラ周波数データおよび強度データが取り出されて、データ処理部10のデータ格納領域に格納される。
なお、送信パターンはこのA、B、Cの3種類のフェーズに限ることはなく、4種類以上のフェーズを用いても良い。
ここで、B、Aフェーズで受信し、信号処理部9にて検出されたドップラ周波数をそれぞれf[Hz]、f[Hz]とする。また、送信周波数の変化率は図3に示すようなグラフの傾きで表され、Bフェーズでの周波数の傾き11をfk[Hz/s]、Aフェーズでの周波数の傾き12をfk[Hz/s]とする。周波数の傾きの符号や大小によって以降の処理内容が異なるが、ここでは例えばfk:fk=2:1、fk>0、fk>0とし、送信周波数の各変化率fk、fkを予め設定した値とする。
FMレンジング処理では、検出したドップラ周波数、及びB、Aフェーズでの周波数の変化率と光の速度cにより、一般にレンジ(例えば目標までの距離)が、次の式(1)または式(2)に示すレンジ計算式によって求められる。
Figure 0005347830
レンジ計算処理100では、式(1)または式(2)を用いて、C、Bフェーズによるドップラ周波数及び周波数の変化率のデータを用いた結果Rcbと、C、Aフェーズによるドップラ周波数及び周波数の変化率のデータを用いた結果Rcaの2通りのレンジを算出することができる。なお、式(1)及び式(2)による、これら2通りの計算結果を比較することで、目標までの距離をより精度良く確定することが可能となる。
次に、レンジ計算処理の対象となる目標信号に対応した周波数データを選択するための、目標判定処理について説明する。図4は、データ処理部10のデータ格納領域に格納された、取得データファイルでのデータの流れを示す図である。
まず、励振受信機7による送信波及び受信信号の送受信によって得られたドップラ周波数データは、送信パターンのフェーズ毎に、図4のようにデータ処理部10のデータ格納領域における取得データファイル13に格納される。図4において、例えば、C、B、Aの各フェーズそれぞれN個のデータを受信したとして、f(n)、f(n)、f(n)、(n=1、2、3、・・・、N−1、N)と表している。ただし、同じ周波数を持ったデータが受信された場合、新規データとして追加しないため、同一フェーズ内で同じ値のデータは存在しない。
続いて、データ処理部10における目標判定アルゴリズム50のデータ抽出処理によって、取得データファイル13の中からレンジ計算処理の対象となるドップラ周波数データが抽出され、抽出されたドップラ周波数データ及びそれに対応した強度データが目標候補ファイル14に格納される。このデータ抽出処理では、フェーズ間でのドップラ周波数データの関係性に複数の条件を設けて目標か否かの判定をしていく。その際、FMレンジングでは周波数の傾きが大きいほど測距精度が高くなり、図3の例ではf>fとしたことから、BフェーズでのデータfをAフェーズでのデータfに対して優先的に考慮していくこととなる。
次に、目標判定アルゴリズム50のデータ抽出処理の詳細について説明する。
まず、C、Bフェーズのデータの相関に関する一つ目、及び二つ目の条件判定処理を行う。
一つ目の条件判定処理では、周波数の傾きが正(fk>0)であるとき、目標信号はCフェーズからBフェーズに移行した際に、周波数の低い方へ変位することを利用する(fk<0であれば周波数の高い方へ変位する)。
つまり、ドップラ周波数データの差分をfcb=f−fとしたとき、「0<fcb」となるf、fの組合せは目標信号である可能性があるということになる。これを一つ目の条件(J1)とする。なお、この一つ目の条件(J1)では、図1に示すように自機1と目標機2とが向かい合って飛行している状態を前提としている。
データ処理の手順は、まずCフェーズでのドップラ周波数データf(n)を固定し、それに対してドップラ周波数データf(1)、f(2)、・・・、f(N)と順にドップラ周波数データの差分fcbを算出して、一つ目の条件(0<fcb)による条件判定処理を行っていく。
この条件判定処理の結果、fcbが一つ目の条件を満たせば、次の二つ目の条件判定処理に移行する。
また、最後のドップラ周波数データf(N)まで一つ目の条件判定処理が終了したら、ドップラ周波数データf(n)をf(n+1)にして、ドップラ周波数データf(n+1)を固定し、それに対してドップラ周波数データf(1)、f(2)、・・・、f(N)と順にドップラ周波数データの差分fcbを算出して、再び一つ目の条件判定処理動作を順次繰り返して行く。
二つ目の条件判定処理においても、C、Bフェーズのドップラ周波数データを利用する。
式(1)に示すレンジ計算式から、ドップラ周波数データの差分fcbは目標までの距離と比例していることが分かる。そこで、目標を観測する最大距離を設定すれば、そのときのドップラ周波数データの差分fcbは一意に定まる。
この最大距離をfcbMとおけば、二つ目の条件(J2)では、「fcb<fcbM」となるドップラ周波数データf、fを目標信号候補として抽出する。最大距離fcbMは、例えば送信電力や遠方の地表までの距離などから決定することができる。
一つ目の条件(J1)を満たしたドップラ周波数データf(n)についてfcbを算出し、二つ目の条件(fcb<fcbM)による二つ目の条件判定処理を行う。ドップラ周波数データf(n)がこの二つ目の条件(J2)を満たした場合、次の条件判定処理へ移行する。
また、ドップラ周波数データf(n)がこの二つ目の条件(J2)を満たさなかった場合は、ドップラ周波数データf(n)をf(n+1)にして一つ目の条件判定処理、及び二つ目の条件判定処理を再開する。
次に、三つ目の条件判定処理では、CフェーズとB、Aフェーズとの相関関係を用いる。この条件判定処理では、ドップラ周波数データの差分fcb及びfca(fca=f−f)が目標までの距離と比例していること、及び目標信号であればB、Aフェーズで同じ周波数の差分結果が得られることを利用する。
例えば、レンジ計算の式(1)において、目標までの距離をRcb=Rcaとすれば、概略「fcb:fca=fk:fk」となるので、これを三つ目の条件(J3)とする三つ目の条件判定処理を行う。
一つ目の条件(J1)及び二つ目の条件(J2)の二つの条件を満たした最初のドップラ周波数データの差分fcbに対して、ドップラ周波数データf(1)、f(2)、・・・f(N)と、順次三つ目の条件(fcb:fca=fk:fk)による判定処理を行い、この三つ目の条件(J3)を満たすfが存在すれば、fcbの値とその強度データPを目標信号候補として、目標候補ファイル14に登録する。なお、目標候補ファイル14は、データ処理部10のメモリにおける別のデータ格納領域に構成されており、そのデータ容量が所定の大きさに限られている。
また、三つ目の条件判定処理の結果、このようなドップラ周波数データfが存在しなければ、ドップラ周波数データfをf(n+1)にして一つ目の条件判定処理、二つ目の条件判定処理、及び三つ目の条件判定処理を再開する。
最後の条件(四つ目の条件(J4))では、信号の強度データPを利用して四つ目の条件判定処理を行う。通常のFMレンジングでは不要波である、目標信号を中心とした高調波に対しては、目標と同じレンジ計算結果が算出されてしまう。これによって、同一のレンジ計算結果が複数得られてしまう場合があり、その中から真の目標信号を見つけ出す処理が必要となる。
そこで、目標信号を中心とした高調波群の強度が、総じて目標信号より小さいことを利用する。
すなわち、四つ目の条件判定処理では、目標候補ファイル14に同値のfcbが複数登録されていた場合、四つ目の条件(J4)として「最もPの強度が大きいデータを残し、他は除外する」ことで、目標信号を抽出する。なお、この手法はFMレンジングだけでなく、一般的なパルスドップラレーダの処理にも応用可能である。
目標判定アルゴリズム50において四つの条件判定処理を行うことにより、最終的に目標候補ファイル14に登録されているデータを使用して、式(1)で示したレンジ計算処理100を実行する。
例えば図4の例では、ドップラ周波数データf(1)、f(4)、f(5)が目標信号と判断され、それらに対応したC、Bフェーズのドップラ周波数データの差分fcb(1)(=f(1)−f(l))、fcb(2)(=f(4)−f(m))、fcb(3)(=f(5)−f(n))、及び強度データP(1)、P(4)、P(5)が格納されている。
レンジ計算処理100では、送信周波数の変化率が大きく、精度の高くなるBフェーズでの結果を優先させるため、式(1)及び周波数変化率fka、fkbに基づき、各目標信号fcb(1)、fcb(2)、fcb(3)についてそれぞれレンジRcbのみを算出して、算出したレンジRcbを目標までの距離情報として出力する。
すなわち、式(1)、(2)に示したB、Aフェーズのレンジ計算を両方とも行ってRcb、及びRcaを求める必要がなく、式(1)に示すBフェーズのみのレンジ計算によって、レンジRcbのみを算出することができる。
次いで、この発明の実施の形態1による判定処理についてフロー図を用いて再度説明する。図5はデータ処理部10での判定処理フローを示す図である。
まず、ドップラ周波数データfとfの差分fcbについて一つ目の条件(J1)、二つ目の条件(J2)による判定処理を行う(S102)。
このとき、fとfは総当りで判定を行っていくので、ループの開始時には取得データファイル13からfとfの最初のデータ(例えばf(1)、f(1))を選択する(S100、S101)。
また、fとfの最初のデータについて各判定処理が行われた後、次に判定処理を再開する際には、fとfの次のデータ(例えば前のデータがf(n)ならばf(n+1)、前のデータがf(m)ならばf(m+1))が選択される(S108、S109)。
このfとfの次のデータが選択される際には、全てのデータに対して判定が終了したかどうかが逐一判定され(S110、S111)、全てのデータに対して判定が終了していない場合に限り、S108、S109にてfとfの次のデータが選択されることとなる。
また、S102の判定処理にて、fとfの差分fcbが条件J1、J2を満たしていない場合にも、fとfの次のデータが選択されることとなる(S108、S109)。
次に、S102の判定処理にて、ドップラ周波数データfとfの差分fcbが条件J1、J2を満たした場合のみ、fが判定条件に関わってくる。
このとき、取得データファイル13中のfの最初のデータが選択され(S103)、三つ目の条件(J3)による判定処理が実行される(S104)。
三つ目の条件(J3)による判定処理は、fの最初のデータからfの次のデータ、更にfのその次のデータと選択が行われ(S106)、fについて一つずつ条件J3の判定処理が実行されて行く(S104)。
全てのfに対して条件J3による判定が終わるか(S105)、fcaとfcbが条件J3を満たすと、再びS102の条件J1、J2の判定処理に戻る。
S104にて、条件3を満たした場合は、fcbを目標候補ファイル14に格納する(S107)。
そして全てのfに対して条件J3による判定処理が終了すると(S111)、目標候補ファイル14の確認を行う(S112)。
S112の判定処理にて四つ目の条件(J4)による判定が行われ、目標候補ファイル14中に信号が存在し、かつ同値のものが複数あった場合、強度Pが最大であるものを除いて消去する(S113)。
最終的に、目標候補ファイル14に格納されているデータに対してレンジ計算を実施し、目標として登録し(S114)、終了する。
ところで、上記の実施の形態はあくまでも一例であって、パルスドップラ方式のレーダ装置であれば、航空機搭載用のレーダ装置のみならず、地上設置型のレーダ装置などに対しても、上記の実施の形態を同様に適用できるのは言うまでもない。
以上説明した通り、この実施の形態によれば、送信周波数が一定となるフェーズCと、送信周波数が互いに異なる一定の周波数変化率を有して当該フェーズCに連続したフェーズB、Aとから成る3つのフェーズを有して、周波数変調を施した送信波を発生する励振受信機と、励振受信機の受けた目標信号を含む受信信号を検波し、ドップラ周波数データと強度データを得て、FMレンジング処理を施す信号処理器とを備え、信号処理器は、フェーズC、B間のドップラ周波数データの差分結果とフェーズC、A間のドップラ周波数データの差分結果との比が、フェーズC、Aの周波数変化率の比に概ね等しくなる条件に基づいて、目標信号候補となるフェーズC、B間のドップラ周波数データの差分結果を選択し、選択したドップラ周波数データの差分結果とフェーズCでの周波数変化率とから目標までの距離(レンジ)を求めることを特徴とする。このように、FMレンジングにおいて、フェーズ間での周波数の組合せが目標信号の持つ周波数の特徴と一致するもののみ抽出することによって、不要波が複数存在する状況であっても、正確な目標信号を検出して、目標信号についてのみレンジ計算を行うことが可能となる。
また、この実施の形態によれば、観測すべき最大距離を周波数データに変換して予め比較基準値として設定し、上記ドップラ周波数データの差分結果が当該比較基準値以内となるドップラ周波数データを目標信号として抽出することで、周波数データにてレンジ計算結果が一定距離以遠となるデータを除外することができ、レンジ計算を行った結果、不要波によって実際には目標が存在し得ない遥か遠方の値が算出され、誤目標となってしまうようなケースを防ぐことができる。
また、この実施の形態によれば、目標抽出にレンジ計算する前の周波数データを用いることから、目標信号でない信号に対するレンジ計算の手間を省くことが可能となる。
また、この実施の形態によれば、周波数データにてBフェーズ、Aフェーズでの受信結果を比較できることから、B、Aフェーズ共にレンジ計算を行う必要がなくなり、Bフェーズのみの計算で目標判定と正確な目標検出を実現することができる。
さらに、この実施の形態によれば、目標信号候補となるドップラ周波数データの中から、受信信号強度の最も大きい信号のみを目標信号として抽出することで、複数の同一レンジ計算結果が算出されてしまう不要波群の中から、強度データを用いて最も強度の大きいドップラ周波数データの差分fcbから目標信号を検出することが可能となる。
実施の形態2.
図3に示した実施の形態1によるFMレンジングのCフェーズでは、通常、一定の送信周波数を用いている。しかし、この実施の形態2では、送信周波数を励振受信機7によって変調させ、Cフェーズにおいて2種類以上の送信周波数を用いることによって、目標機2の目標機送信波5の影響を低減することを特徴とする。なお、この実施の形態2では、励振受信機7及び信号処理部9に追加機能があることを除き、実施の形態1と同一のレーダ装置を構成している。
図6は、Cフェーズにおいて2種類の送信周波数を用いた際の受信信号の様子を示す図であり、(a)は第1の送信周波数を用いた受信信号の例、(b)は第2の送信周波数を用いた受信信号の例、(c)は2種類の送信周波数による受信信号の積の結果の例を示す図である。
図6の(a)、(b)に示すように、送信周波数を変化させても、受信領域は送信周波数を中心に定まるため、送信周波数の違いに関わらず目標信号15は同じ位置に現れる。
一方、不要波である目標機送信波(目標送信信号)5とその高調波16は周波数が変化しないものの、受信帯域は自機1の送信周波数に伴って変化していくため、相対的に現れる位置が変化する。
このことを利用して、実施の形態2による信号処理部9は、複数(図6の例では2種類)の送信周波数により得られた受信信号の積を取る。この結果、同じ位置に存在する目標信号15の強度が大幅に増加するのに対して、目標送機信信号とその高調波16のレベルはほぼ0まで低下するので、信号処理部9にて高調波16を除去することができる。
この実施の形態によれば、Cフェーズにて複数種類の送信周波数でFMレンジング処理を行い、各送信周波数で得られたそれぞれの受信信号の積を取ることによって、目標機送信波5及びその高調波が自機のレーダ装置3で受信されても、その影響を受けることなく、目標信号のみを処理することが可能となる。
なお、この手法はFMレンジング処理のみならず、一般的なレーダに応用することが可能である。
この発明の実施の形態1によるレーダ装置の電波の送受信の様子を説明するための図である。 この発明の実施の形態1によるレーダ装置の構成を示す図である。 この発明の実施の形態1によるFMレンジングの送信周波数の送信パターンを示す図である。 この発明の実施の形態1によるデータ処理部におけるデータフローの概念を示す図である。 この発明の実施の形態1によるデータ処理部における判定処理フローを示す図である。 この発明の実施の形態2によるフェーズCでの周波数変調による不要波の除去を示す図である。
1 自機、2 目標機、3 レーダ装置、6 アンテナ、7 励振受信機、8 信号処理器、9 信号処理部、10 データ処理部、13 取得データファイル、14 目標候補ファイル。

Claims (4)

  1. 周波数の時間変化率がそれぞれ異なる少なくとも3つの連続したフェーズで、周波数の時間変化率がそれぞれ一定となる周波数変調を施した送信波を発生する励振受信機と、
    上記励振受信機の受けた目標信号を含む受信信号を検波し、ドップラ周波数データと強度データを得て、FMレンジング処理を施す信号処理器と、
    を備え、
    上記信号処理器は、フェーズ間で組み合わせたドップラ周波数データの差分結果と周波数の時間変化率との相関関係から規定される、目標信号に特有の判定条件に基づき、目標信号候補のドップラ周波数データを選択し、選択したドップラ周波数データと周波数の時間変化率とから目標の距離情報を求める、
    ことを特徴としたレーダ装置。
  2. 観測すべき最大距離を周波数データに変換して予め比較基準値として設定し、上記ドップラ周波数データの差分結果が当該比較基準値以内となるドップラ周波数データを、目標信号として抽出することを特徴とした請求項1記載のレーダ装置。
  3. 目標信号候補となるドップラ周波数データの中から、受信信号強度の最も大きい信号のみを目標信号として抽出することを特徴とした請求項1記載のレーダ装置。
  4. 送信周波数が一定となる第1のフェーズと、送信周波数が互いに異なる一定の周波数の時間変化率を有して当該第1のフェーズに連続した第2、第3のフェーズと、から成る3つのフェーズを有して、周波数変調を施した送信波を発生する励振受信機と、
    励振受信機の受けた目標信号を含む受信信号を検波し、ドップラ周波数データと強度データを得て、FMレンジング処理を施す信号処理器と、
    を備え、
    上記信号処理器は、上記第1、第2のフェーズ間のドップラ周波数データの差分結果と上記第1、第3のフェーズ間のドップラ周波数データの差分結果との比が、上記第2、第3のフェーズの周波数の時間変化率の比に概ね等しくなる条件に基づいて、目標信号候補となる第1、第2のフェーズ間のドップラ周波数データの差分結果を選択し、選択したドップラ周波数データの差分結果と第2のフェーズでの周波数変化率とから目標の距離情報を求める、
    ことを特徴としたレーダ装置。
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