JP5345813B2 - オキシコドン経皮吸収医薬組成物、医薬組成物貯蔵ユニットおよびこれを利用する経皮吸収製剤 - Google Patents

オキシコドン経皮吸収医薬組成物、医薬組成物貯蔵ユニットおよびこれを利用する経皮吸収製剤 Download PDF

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Description

本発明は、経皮吸収医薬組成物、医薬組成物貯蔵ユニットおよびこれらを利用する経皮吸収製剤に関し、更に詳細には、オキシコドンまたはその塩を持続的に経皮投与可能とした製剤経皮吸収医薬組成物、医薬組成物貯蔵ユニットおよび経皮吸収製剤に関する。
オキシコドン(化学名:(5R)‐4,5‐エポキシ‐14‐ヒドロキシ‐3‐メトキシ‐17‐メチルモルフィナン‐6‐オン)またはその塩に代表される麻薬類は、古くから手術後の疼痛やがんの疼痛を和らげる目的で、臨床的に使用されてきたが、近年、患者のQOLの向上が叫ばれ、疼痛緩和療法(緩和ケア)の普及が推進される中、その使用量は著しく増加している。
1986年に世界保健機関から公表された「WHO方式がん疼痛治療法」には、がん疼痛治療における5つの基本原則として、以下の5点が挙げられている。
(1)経口的に(by the mouth)
(2)時間を決めて定期的に(by the clock)
(3)除痛ラダーに沿って(by the ladder)
(4)患者ごとの個別的な量で(for the individual)
(5)以上の4原則を守ったうえで細かい配慮を行う(with attention to detail)
ここで、「(1)経口的に」と規定されている理由は、発表当時において、鎮痛薬の投与方法の中で、もっとも患者のQOLが優れているものが経口投与であったからである。この他の投与方法もあるが、例えば直腸投与は下痢、下血、人工肛門を有する患者に対しては実施が困難であり、大量投与が難しいという問題を有しており、また、持続皮下注や持続静注は、注入速度をコントロールしやすいというメリットがある反面、患者の行動が制限されるため、QOLは著しく劣るものである。そのため、経口投与が第一選択として用いられるのが通常である。
しかしながら、現実的には、がん患者は、特にその病末期において、経口による薬物の摂取が困難となるケースがしばしばあり、上記したQOLの面で劣る直腸投与や持続皮下注、持続静注を選択せざるを得ないことがあるため、より患者のQOLを高めた新投与経路が模索されてきた。
この問題を解決する一手段として、皮膚を通して全身的に薬物を投与する経皮吸収治療システム(TTS:Transdermal Therapeutic System)が挙げられる。このTTSは、経口投与と比較して、(1)血中濃度を長時間にわたり一定に維持することができる、(2)肝臓での初回通過効果を回避できる、(3)消化管への副作用が低減できる、(4)小児や高齢者など嚥下困難な患者へも投与可能である、(5)副作用が発現した場合にも剥離により簡単に投与中断ができる、などの数多くのメリットを有するため、近年、その開発がさかんである。
日本では2001年に発売されたフェンタニルの経皮吸収型持続性癌疼痛治療剤(商品名「デュロテップパッチ」)は、このTTSによって、上記問題を一定レベルで解決するものであった。
このフェンタニルは、一般的に、モルヒネ、オキシコドンまたはそれらの塩よりも便秘、吐き気、めまいなどの副作用が少ないという有利な点を有するが、これはモルヒネ、オキシコドンまたはその塩とフェンタニルでは、その作用機序が異なることに起因すると考えられている。より詳細には、いずれの薬物もμ受容体作動薬であり、マウスにおいてこのμ受容体は跳躍や身震いなどの身体依存性の発現に関与するμ1受容体と下痢や体重減少などの身体依存性および精神依存性の発現に関与するμ2受容体の2種類のサブタイプに分類される。フェンタニルはモルヒネやオキシコドンに比べてμ1受容体に比較的選択性の高いことが知られていることから、ヒトでもμ2受容体を介する薬理作用が軽度であると考えられており、この面から、モルヒネ、オキシコドンについての必要性がなくなるわけではない。
さらに、比較的少数ではあるが、他のオピオイドから、フェンタニルへの薬剤切り換え時に、身体依存性に起因する退薬症状とみられる症状を発現した例が報告されており(非特許文献1)、これは医師がフェンタニルへの切替えを躊躇する要因ともなっている。よって、フェンタニルはモルヒネ、オキシコドンの完全な代替薬とはなり得ない。
ここで、オキシコドンはモルヒネに比べて、(1)副作用が同等または軽度であるという報告がある、(2)モルヒネと異なり主代謝物質に活性がないため、腎機能低下時でも使用しやすい、(3)経口時のバイオアベイラビリティが高い(約60〜90%)ため、経口時にはモルヒネよりも大きな鎮痛効果を有する、(4)オキシコドン塩酸塩の徐放錠であるオキシコンチン錠は、多様な含有量を選択でき、徐放製剤にも拘わらず、効果発現時間が投与後1時間程度と短い、などの利点を有するため、米国では癌性疼痛治療薬として最も汎用される製剤となっている。(非特許文献2)
以上から、仮に、オキシコドンまたはその塩の有効量を持続的に経皮投与可能とした製剤が存在すれば、上記の種々の問題が全て解決でき、また、同成分の経口製剤からの切り換え時にも退薬症状を気にすることなく利用できることになるため、このような製剤が切望されていた。
しかしながら、オキシコドンまたはその塩は、皮膚透過性が極めて低い性質を有する薬物であるため、その開発は困難を極めた。すなわち、オキシコドンもしくはその塩、またはその関連物質を、経皮もしくは経粘膜吸収製剤化する試みは古くから広く行われているが、医薬製剤としては、オキシコドンもしくはオキシコドン類似の有効成分、またはオキシコドンもしくは前記医薬的に類似の有効成分の治療に適する塩を口腔内に経粘膜投与することのできる、水性媒体中において崩壊可能なシート、フィルム、紙またはウェハの形状である平面状医薬製剤(特許文献1)が開示されている程度である。
特表2003−516961 Pain Med. 2006 Mar-Apr;7(2):164-5. 国立がんセンター中央病院薬剤部編著 2006『オピオイドによるが ん疼痛緩和』エルゼビア・ジャパン p199-202
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、ヒトに適用した際に、オキシコドンの有効レベルの血中濃度を少なくとも48時間にわたって持続可能である経皮吸収医薬組成物を提供することをその課題とする。
さらに、本発明は、上記組成物を貯蔵するための医薬組成物貯蔵ユニットおよび該医薬組成物貯蔵ユニットを用いた経皮吸収製剤を提供することをその課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、オキシコドンまたはその塩を有効成分とする経皮吸収製剤に関し鋭意検討を行った結果、オキシコドンまたはその塩を、所定条件下で特定の有効成分保持媒体中に配合することにより、長期間にわたりオキシコドンを放出しうることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、オキシコドンまたはその塩から選択される有効成分を、ヒト皮膚表面温度付近の温度において流動性を有する有効成分保持媒体中に、飽和溶解度以上の配合量で配合し、かつ該有効成分の少なくとも一部を結晶型で保持した経皮吸収医薬組成物であって、
前記経皮吸収医薬組成物を、一枚あたりの有効成分含量がオキシコドン塩基換算で31.1mg、有効経皮吸収範囲が一辺が1.5cmの正方形となるよう製剤化し、これをヘアレスラットの無傷の腹部の皮膚に48時間適用した際の有効成分の平均透過速度が、オキシコドン塩基換算で、少なくとも150μg/hr/cm以上であることを特徴とする経皮吸収医薬組成物である。
また本発明は、上記の経皮吸収医薬組成物を、空隙を有する坦体に担持させてなる医薬組成物貯蔵ユニットである。
更に本発明は、上記の医薬組成物貯蔵ユニットの皮膚適用面の反対側に、有効成分および有効成分保持媒体を実質的に透過しない不透過層、粘着剤層および粘着剤保持層を、順に積層してなる経皮吸収製剤である。
本発明によれば、ヒトに適用した際に、臨床有効量レベルのオキシコドン血中濃度を少なくとも48時間にわたって持続可能である持続型経皮吸収医薬組成物を提供することが可能となる。したがって、オキシコドンまたはその塩の経口投与剤に変わるものとして、切り換え時の退薬症状を気にすることなく利用できることになり、医療上極めて有用である。
以下に、本発明を更に詳しく説明する。
本発明の経皮吸収医薬組成物における有効成分は、オキシコドンまたはその塩から選択されるものである。有効成分としては、オキシコドンおよびその塩のいずれもが利用可能であるが、特にオキシコドンの塩であることが好ましい。
ここでオキシコドンの塩とは、塩基であるオキシコドンと酸の付加化合物であり、具体的には、オキシコドン塩酸塩、オキシコドン硫酸塩、オキシコドングルコン酸塩、オキシコドン酒石酸塩、オキシコドン乳酸塩、オキシコドンメタンスルホン酸塩、オキシコドンリン酸塩が例示できる。この中でも、オキシコドン塩酸塩、オキシコドン硫酸塩が、過去に広く使用され、安全性に関するデータが多く蓄積されていることや、入手容易性の面から好ましい。さらに、必要であれば、上記成分の1種または2種以上の混合物を有効成分として用いることも可能である。
一方、本発明で用いる有効成分保持媒体は、ヒト皮膚表面温度付近の温度において流動性を有する組成物または物質であり、その流動性は組成物中に結晶型で保持された上記のオキシコドンまたはその塩(以下、「有効成分」ということがある)を皮膚面まで運ぶ搬送体としての役割を果たすために十分な程度高く、有効成分の少なくとも一部を結晶型で保持できるものである。
ここで「ヒト皮膚表面温度付近の温度」とは、本発明の経皮吸収医薬組成物や、後記する医薬組成物貯蔵ユニットまたは経皮吸収製剤が適用される箇所の皮膚が、通常の使用条件下において取り得る温度を意味するものであり、通例28℃〜38℃、より一般的な温度帯としては30℃〜36℃、もっとも一般的な温度帯としては31℃〜35℃を意味する。また、「搬送体としての役割を果たすために十分な程度流動性が高い」とは、上記温度範囲内において、粘度が0.001Pa・sから2Pa・s程度(円錐−平板型回転粘度計 Rheometer RC20使用、コーン直径50mm、コーン角1°、液温31℃、100rpm、6回測定平均値による;以下同じ)、好ましくは0.01Pa・sから1Pa・s程度、より好ましくは0.05Pa・sから0.3Pa・s程度であることを意味する。
このような有効成分保持媒体の利用によって、有効成分は、有効成分保持媒体中に飽和溶解度以上の配合量で配合され、少なくともその一部が結晶型で保持されることになる。
本発明の有効成分保持媒体としては、上記したような性質を有し、かつ医薬的に受け入れ可能な組成物あるいは物質であれば、特に制限無く使用することができるが、具体的には、炭化水素の混合物を主成分とする物質、グリコール類、ポリエーテル、シリコーンオイル、細胞間脂質構成成分、長鎖脂肪酸アルキルエステル、飽和高級脂肪酸、不飽和高級脂肪酸、高級アルコール、高級アルコールのアルキルレンオキサイド付加物、クロトノトルイジン誘導体、ヒドロキシ酸、および水から選択される1種または2種以上の混合物を例示することができる。より具体的には、流動パラフィン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、シリコーンオイル、グリセリン、セラミド、コレステロール、パルミチン酸イソプロピル、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、オレイルアルコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、クロタミトン、乳酸、ミリスチン酸イソプロピル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノラウリン酸ソルビタン、および水から選択される1種または2種以上が例示できる。上記ポリエチレングリコールの分子量としては、その融点および粘度から、通例4000以下が好ましく、1500以下がより好ましく、更に1000以下が特に好ましい。
このうち特に好ましいものとしては、プロピレングリコール、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、シリコーンオイル、グリセリン、水等を組み合わせた組成物が挙げられる。
なお、有効成分保持媒体中にグリセリンまたは水を含有させる場合は、これらにより経皮吸収性、および有効成分の利用率を低下させないよう配慮することが好ましい。すなわち、グリセリンや水の含有量が増すと皮膚刺激性が低くなるが、反面、有効成分の経皮吸収性が低下する傾向があるため、その配合率は極端に高くないことが好ましい。
具体的には、最終的な医薬組成物全体に占めるグリセリンまたは水の含有率が70質量%を越えると、上記理由により実用性が低下するため、医薬組成物中のグリセリンまたは水の含有率は、合計70質量%以下であることが好ましく、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下であるので、これを考慮して有効成分保持媒体中にグリセリンや水を配合することが望ましい。
本発明において上記有効成分保持媒体の働きは必ずしも解明されているわけではないが、皮膚には直接接触していない位置に存在する、結晶型で保持された有効成分および経皮吸収促進剤を、皮膚面まで運ぶ搬送体としての役割を担っていると推測される。従って、有効成分保持媒体は、実際の適用条件下において、この目的に適う程度の適度な流動性を有することが必要である。
なお、ヒト皮膚表面温度付近の温度において有効成分保持媒体の流動性が低い、すなわち、有効成分保持媒体が、上記温度においてそれ単独で保形性を有する程度の物質である場合、有効成分保持媒体が搬送体としての役目を果たせず、結果として有効成分の利用率が低下するため好ましくない。しかしながら、有効成分保持媒体が、それ単独で弱い保形性を有する物質であっても、実際に、経皮吸収医薬組成物、医薬組成物貯蔵ユニット、もしくは経皮吸収製剤のいずれかを、ヒトに適用した場合に、当該患者の運動や、皮膚温と外気温の差に起因する医薬組成物貯蔵ユニット内の対流によって、有効成分保持媒体が十分に撹拌され、もしくは流動する程度の物質であれば問題なく使用可能である。
本発明の経皮吸収医薬組成物(以下、「医薬組成物」ということがある)は、前記有効成分を、必要により配合される後記経皮吸収促進剤や他の成分と共に、常法に従い有効成分保持媒体中に配合することにより製造されるが、その組成物は、前記経皮吸収医薬組成物を、一枚あたりの有効成分含量がオキシコドン塩基換算で31.1mg、有効経皮吸収範囲が一辺が1.5cmの正方形となるよう製剤化し、これをヘアレスラットの無傷の腹部の皮膚に48時間適用した際の有効成分の平均透過速度が、オキシコドン塩基換算で、少なくとも150μg/hr/cm以上となるものである。
ここで、有効成分の平均透過速度とは、上記条件で製剤を48時間貼付した後にオキシコドンの残存量を測定し、配合量から残存量を差し引いて求めたオキシコドン利用量に基づいて計算される。
このオキシコドン塩基換算の、上記条件における有効成分の平均透過速度は少なくとも150μg/hr/cm以上であるが、より好ましくは175μg/hr/cm以上、特に好ましくは200μg/hr/cm以上である。
上記医薬組成物を製剤化した後のオキシコドン塩基換算の有効成分の平均透過速度が、150μg/hr/cmを下回ると、当該製剤をヒトに適用した場合の有効成分の血漿中濃度が、鎮痛作用を発現するには不十分となるため、好ましくない。
なお、上記ヘアレスラットを利用した試験において、脱毛クリーム等は使用しない。脱毛クリーム等を使用すると、皮膚が損傷して有効成分の経皮吸収速度が高まり、有効成分利用可能量および血漿中濃度に大きな影響を与えるので注意が必要である。
更に本発明の医薬組成物には、前記条件において、製剤適用後24時間の時点および48時間の時点での、該有効成分の血漿中濃度が少なくともオキシコドン塩基換算で50ng/mLであることが、安定した鎮痛効果をもたらす観点から好ましい。
ここで、製剤適用後24時間の時点および48時間の時点での有効成分の血漿中濃度は、製剤の用量によっても異なるが、通例オキシコドン塩基換算で50ng/mL以上、好ましくは100ng/mL以上、より好ましくは150ng/mL以上である。製剤適用後24時間の時点および48時間の時点のいずれかにおける有効成分の血漿中濃度が50ng/mLを下回ると、当該製剤をヒトに適用した場合の製剤適用後24時間の時点または48時間の時点での有効成分の血漿中濃度が、鎮痛作用を発現するには不十分となり好ましくない。
更にまた、本発明の医薬組成物においては、有効成分の少なくとも一部が結晶型で保持されているものであり、前述した有効成分保持媒体中に保持される、有効成分全量に対する結晶型の割合は、製剤適用時に適当な経皮吸収速度が得られる割合であれば特に問わないが、通例10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上である。
有効成分が結晶型で保持される割合が10質量%を下回ると、有効成分の徐放性が悪化するため好ましくない。
本発明の医薬組成物は、前記したように有効成分であるオキシコドンまたはその塩を、常法に従い前記有効成分保持媒体中に配合することにより製造されるが、更に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンセチル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンべへニルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルキルエーテル等の高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物を経皮吸収促進剤として含有せしめることが好ましい。上記高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物の酸化エチレンの付加モル数は、およそ2から40の間で任意のものを使用することができる。
また、本発明の医薬組成物には、本発明の効果を妨げない限り、他の有効成分や医薬品の添加物として許容される各種任意成分を、所望に応じて、適宜その必要量を添加することが可能である。
配合させうる任意成分の例としては、他種の医薬有効成分や、皮膚刺激低減剤、安定化剤、pH調整剤、粘度調整剤、架橋剤、酸化防止剤、保存剤、乳化剤、防腐剤、溶解剤等を挙げることができる。
このうち、酸化防止剤の具体例としては、チオ硫酸ナトリウム、ブチルヒドロエシトルエン等が挙げられる。
添加できる他種の医薬有効成分例としては、例えば、アスピリン、ナプロキセン、アセトアミノフェン、ロキソプロフェン、イブプロフェン、ジクロフェナク、インドメタシン、またはこれらの塩から選択される非オピオイド鎮痛薬;アヘン、アヘンアルカロイド、スコポラミン、エチルモルヒネ、オキシコドン、ペチジン、コデイン、ジヒドロコデイン、フェンタニル、ドロペリドール、オキシメテバノール、レボルファノール、プロポキシフェン、メサドン、ヒドロモルホン、メペリジン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ペンタゾシン、デゾシン、トラマドール、エプタゾシン、またはこれらの塩から選択されるオピオイド鎮痛薬;カルバマゼピン、バルプロ酸、クロナゼパム、アミトリプチリン、イミプラミン、アモキサピン、メキシレチン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、またはこれらの塩から選択される、抗てんかん薬、抗うつ薬、抗不整脈薬、または副腎皮質ステロイドのカテゴリに属する鎮痛補助薬等を挙げることができる。
以上のようにして得られる医薬組成物は、簡易的には、その適量を、例えばプラスチック製の容器に格納して、これを適用対象患者の皮膚に、テープ等で固定することにより使用可能であるが、更に剤型を工夫することにより、より高い効果を期待することができる。
上記した剤型の一つの例としては、この医薬組成物を空隙を有する坦体に担持させて、坦体内を有効成分保持媒体が移動できる構造とした医薬組成物貯蔵ユニットが挙げられ、このようにすることにより、本発明医薬組成物をより有利に利用できる。
この空隙を有する坦体としては、繊維状物質の圧縮体、粉末状物質の圧縮体、または連続気泡構造のスポンジフォームから選択される1種または2種の混合物もしくは複合体を例示できる。
ここで、繊維状物質の圧縮体は、ろ紙等に代表される、セルロース繊維からなる平板であることが、コスト面から好ましい。
また、坦体として連続気泡構造のスポンジフォームを用いる場合には、プラスチックまたはゴムから選択される1種または2種以上の素材からなることがより好ましく、特に、プラスチックがポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ酢酸ビニルから選択される1種または2種以上であることが好ましい。
加えて、上記の手法の他、WO99/14283、WO00/06659等に開示される技術によって、空隙を有する坦体として種々のゲルを用い、その網目状組織中に、本発明の医薬組成物を保持させてもよい。
また、医薬組成物貯蔵ユニットをヒトに適用する場合、その有効経皮吸収範囲の面積は、3cm〜100cmの範囲であり、通例4cm〜80cmが好ましく、更に、5cm〜60cm、より好ましくは6cm〜50cmであり、特に好ましくは7cm〜40cmである。有効経皮吸収範囲の面積が、3cmを下回ると、有効成分の高用量投与時に、単位面積当たりの薬物吸収量を著しく高く設定する必要があり、皮膚に過度の負担をかけることとなるため好ましくなく、また、100cmを上回ると、その大きさによって、経皮吸収製剤適用時の患者のQOLを損ねるため好ましくない。
更に、医薬組成物貯蔵ユニットで使用する坦体の空隙率は、保形性、可撓性、坦体単位体積あたりの有効成分保持媒体の保持性能、および適用終了時の医薬組成物の肌残り量のバランスが良好であれば任意のものが使用できるが、通例50%〜95%であり、好ましくは60〜90%、より好ましくは70%〜85%である。空隙率が50%より低いと、可撓性および坦体単位体積あたりの有効成分保持媒体の保持性能の面で劣るため好ましくなく、また95%を越えると保形性が低く、また、適用終了時に医薬組成物の肌残り量が増加するため好ましくない。
以上説明した医薬組成物貯蔵ユニット内で、結晶型の有効成分は均一に担持されていてもよいし、局在化して担持されていても良いが、特に局在化して担持されていることが好ましい。有効成分が局在化して担持されていることにより、有効成分と有効成分保持媒体との接触率が低下し、有効成分の徐放性能が高まると考えられる。有効成分を局在化させる位置は、医薬組成物貯蔵ユニットを構成する担体の内部であっても、その表面であっても、いずれでも問題なく使用できるが、特に表面であることが、製造コストおよび徐放性の面から好ましい。
以上説明した本発明の医薬組成物貯蔵ユニットは、種々の公知の手法により、製造可能であるが、具体的な手法としては、予め調製しておいた医薬組成物を一定量、空隙を有する坦体に滴下、もしくは注入して、製する方法を例示できる。より具体的には、例えば、坦体が連続気泡構造のプラスチック製スポンジフォームの場合、予め調製しておいた経皮吸収医薬組成物を一定量、このスポンジフォーム上に滴下して製することが可能である。加えて、上述したとおり、WO99/14283、WO00/06659等に開示される技術によって製することも可能である。
上述した医薬組成物貯蔵ユニットは、これが十分な粘着性を有する場合は、そのまま皮膚に貼付すれば良く、また粘着性が弱いか粘着性を有さない場合は、これをテープ等で適用対象患者の皮膚に固定することにより使用可能である。
次に、医薬組成物貯蔵ユニットを利用する本発明の経皮吸収製剤の一実施態様について、図面と共に更に説明する。
図1は、経皮吸収製剤の断面を模式的に示した図面である。図中、1は経皮吸収製剤、2は医薬組成物貯蔵ユニット、3は不透過層、4は薬剤保護層、5は粘着剤層、6は粘着剤保持層、7は剥離フィルムをそれぞれ示す。
図1に示されるように、医薬組成物貯蔵ユニット2の皮膚適用面の反対側に、有効成分および有効成分保持媒体を実質的に透過しない不透過層3、粘着剤層5、粘着剤保持層6を順に積層し、医薬組成物貯蔵ユニット2の皮膚適用面側に、薬剤保護層4および剥離フィルム7を積層した経皮吸収製剤1とすることがより好ましい。
この経皮吸収製剤1において使用される不透過層3としては、有効成分および有効成分保持媒体を実質的に透過しない材料であれば任意の素材が使用できるが、具体的には塩化ビニール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック、ステンレス、アルミニウム等の金属、セロファン、およびシリコーン樹脂を例示でき、これらの中でも特に、塩化ビニール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アルミニウムが好ましい。
先に述べたように、有効成分を局在化させる位置は、医薬組成物貯蔵ユニット2を構成する担体の内部であっても、その表面であっても、問題なく使用できる。しかし、坦体上に経皮吸収組成物を滴下して医薬組成物貯蔵ユニット2を製する場合、坦体の孔径が、有効成分粒径より十分大きくない限り、坦体表面付近に有効成分の結晶が捕取される結果、有効成分が坦体表面付近に局在化することになる。従って、このような場合には医薬組成物貯蔵ユニット2の表面に有効成分を局在化させることが好ましい。
また、このように有効成分を表面に局在化させた場合には、有効成分担持側を皮膚面に向けてそのまま製剤を適用すると、有効成分の利用率によっては、製剤適用終了時に有効成分の粉末が肌残りする可能性があるため好ましくない。そのため有効成分粉末を皮膚面と反対側に位置させるか、もしくは、有効成分の粉末を覆う形で、有効成分の粉末を保定するための液透過性を有する薬物保護層4を設けることが好ましい。
上記の液透過性を有する薬物保護層4の具体例としては、セルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース、または有孔プラスチックフィルム製のフィルムを例示でき、中でもセルロース繊維からなる平板、セルロース混合エステル(酢酸セルロース、ニトロセルロース)製メンブランフィルター、微多孔質プラスチックフィルムが好ましく、特に微多孔質プラスチックフィルムが好ましい。
更に本発明の経皮吸収製剤は、医薬組成物貯蔵ユニット2の皮膚適用面側に、使用時に剥離される剥離フィルム7を有することが好ましい。
以上説明した経皮吸収製剤は公知の種々の公知の手法により、製造可能であり、これに使用される粘着剤層5、粘着剤保持層6および剥離フィルム7は公知のものを使用できる。具体的な製法の一例として、予め製した医薬組成物貯蔵ユニット2上に、必要に応じて薬物保護層4を設け、さらに、皮膚適用面の反対側に、種々の薬物不透過層3、粘着剤層5、粘着剤保持層6を積層する方法を挙げることができる。特に、粘着剤層5および粘着剤保持層6は予め一体となっているものを用いるとより効率的に製することが出来る。
本発明により、過去に世界中で幾度となく試みられたにもかかわらず、これまで誰もがなしえなかった、オキシコドンまたはその塩の徐放性経皮吸収製剤を提供することが可能となった。これは、痛み、特に癌性疼痛に苦しむ世界中の患者のQOLを著しく向上させる画期的な製剤である。
本発明の、医薬組成物、医薬組成物ユニットあるいは経皮吸収製剤を適用した際に、どのような機序によって、オキシコドンまたはその塩が経皮的に吸収され、またその放出が持続的なものとなるかは、現時点では必ずしも明確ではない。従って、以下は発明者らの推測に過ぎないが、概ね次の様な機序によるものであると考えられる。
(1)一般的な経皮吸収製剤と比較して、流動性を有する有効成分保持媒体(通常は液
または半固体)が過剰に存在することにより、皮膚が強度の湿潤状態におかれ、皮
膚のバリヤ機能が低下する。
(2)経皮吸収促進剤とともに、溶解型の有効成分が皮膚下の血管に浸透し、吸収される

(3)溶解型の有効成分が減少することにより、これを補うように結晶型の有効成分が
有効成分保持媒体中に溶解する。これにより徐放性が得られる。
(4)さらに空隙を有する坦体に医薬組成物を担持させた医薬組成物貯蔵ユニットの形
とすることにより、有効成分保持媒体の流動が適度に妨げられ、より高い徐放性が
実現される。
(5)加えて、医薬組成物貯蔵ユニットの背面に薬物不透過層を配置することにより、
密封包帯法(ODT;occlusive dressing technique)となり、一層経皮吸収性が
向上する。
以下に実施例を示して、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
実 施 例 1
オキシコドン塩酸塩水和物 20質量部、プロピレングリコール 15質量部、1,3−ブチレングリコール 5質量部、濃グリセリン 40質量部、水 10質量部およびポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル 10質量部を混合した後、超音波槽中で約1分間撹拌してオキシコドン塩酸塩水和物を均一分散し、白色懸濁状液体の経皮吸収医薬組成物を得た。
次に、この経皮吸収医薬組成物約0.2gをパスツールピペットでとり、連続気泡ポリエチレン製スポンジフォーム(イノアックコーポレーション社製、商品名:MAPS、型番:ST−15、セル径約55μm、空隙率約85%、厚さ約1mm)を1辺1.5cmの角型に打ち抜いたものの上に、全面に均一となるよう滴下し、医薬組成物貯蔵ユニットを製した。
更に、この医薬組成物貯蔵ユニットの、経皮吸収医薬組成物が滴下された面に薬物保護層として、不織布(日本バイリーン株式会社製、型番CS−018)を載せた。一方、経皮吸収医薬組成物が滴下された面と反対の面には、不透過層としてアルミ蒸着フィルム(PE 12μm/PET 15μm /Al 9μm /PE 30μm)を1辺3cmの角型にカットしたものを配置し、さらにその背面に、粘着剤層および粘着剤保持層として、ポリウレタンフィルム(株式会社共和製 ミリオンエイド ドレッシングテープ、型番MA−E150−A、厚さ30μm)を約10cm×10cmにカットしたものを配置して経皮吸収製剤を得た。
本製剤は、適用時に得られた製剤1枚を一投与単位として用いるものであり、この一投与単位あたりの有効成分配合量(塩基換算)は31.1mgであった。
実 施 例 2
オキシコドン塩酸塩水和物 20質量部、流動パラフィン 20質量部、濃グリセリン 40質量部、水 10質量部およびポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル 10質量部、を混合した後、超音波槽中で約1分間撹拌してオキシコドン塩酸塩水和物を均一分散し、白色懸濁状液体の経皮吸収医薬組成物を得た。
以下、実施例1と同様の手順で医薬組成物貯蔵ユニット、および経皮吸収製剤を得た。
本製剤は、適用時に得られた製剤1枚を一投与単位として用いるものであり、この一投与単位あたりの有効成分配合量(塩基換算)は31.1mgであった。
実 施 例 3
オキシコドン塩酸塩水和物 20質量部、ポリエチレングリコール400 20質量部、濃グリセリン 40質量部、水 10質量部およびポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル 10質量部、を混合した後、超音波槽中で約1分間撹拌してオキシコドン塩酸塩水和物を均一分散し、白色懸濁状液体の経皮吸収医薬組成物を得た。
以下、実施例1と同様の手順で医薬組成物貯蔵ユニット、および経皮吸収製剤を得た。
本製剤は、適用時に得られた製剤1枚を一投与単位として用いるものであり、この一投与単位あたりの有効成分配合量(塩基換算)は31.1mgであった。
実 施 例 4
オキシコドン塩酸塩水和物 20質量部、1,3−ブチレングリコール 20質量部、濃グリセリン 40質量部、水 10質量部およびポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル 10質量部を混合した後、超音波槽中で約1分間撹拌してオキシコドン塩酸塩水和物を均一分散し、白色懸濁状液体の経皮吸収医薬組成物を得た。
以下、実施例1と同様の手順で医薬組成物貯蔵ユニット、および経皮吸収製剤を得た。
本製剤は、適用時に得られた製剤1枚を一投与単位として用いるものであり、この一投与単位あたりの有効成分配合量(塩基換算)は31.1mgであった。
実 施 例 5
オキシコドン塩酸塩水和物 20質量部、シリコーンオイル 20質量部、濃グリセリン 40質量部、水 10質量部およびポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル 10質量部を混合した後、超音波槽中で約1分間撹拌してオキシコドン塩酸塩水和物を均一分散し、白色懸濁状液体の経皮吸収医薬組成物を得た。
以下、実施例1と同様の手順で医薬組成物貯蔵ユニット、および経皮吸収製剤を得た。
本製剤は、適用時に得られた製剤1枚を一投与単位として用いるものであり、この一投与単位あたりの有効成分配合量(塩基換算)は31.1mgであった。
実 施 例 6
オキシコドン塩酸塩水和物 20質量部、濃グリセリン 60質量部、水 10質量部、およびポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル 10質量部を混合した後、超音波槽中で約1分間撹拌してオキシコドン塩酸塩水和物を均一分散し、白色懸濁状液体の経皮吸収医薬組成物を得た。
以下、実施例1と同様の手順で医薬組成物貯蔵ユニット、および経皮吸収製剤を得た。
本製剤は、適用時に得られた製剤1枚を一投与単位として用いるものであり、この一投与単位あたりの有効成分配合量(塩基換算)は31.1mgであった。
比 較 例 1
オキシコドン塩酸塩水和物 20質量部、プロピレングリコール 17質量部、1,3−ブチレングリコール 8質量部、濃グリセリン 45質量部および水 10質量部を混合した後、超音波槽中で約1分間撹拌してオキシコドン塩酸塩水和物を均一分散し、白色懸濁状液体の経皮吸収医薬組成物を得た。
以下、実施例1と同様の手順で医薬組成物貯蔵ユニット、および経皮吸収製剤を得た。
本製剤は、適用時に得られた製剤1枚を一投与単位として用いるものであり、この一投与単位あたりの有効成分配合量(塩基換算)は31.1mgであった。
比 較 例 2
オキシコドン塩酸塩水和物 20質量部、プロピレングリコール 15質量部、1,3−ブチレングリコール 5質量部、濃グリセリン 40質量部、水 10質量部およびオレイルアルコール 10質量部を混合した後、超音波槽中で約1分間撹拌してオキシコドン塩酸塩水和物を均一分散し、白色懸濁状液体の経皮吸収医薬組成物を得た。
以下、実施例1と同様の手順で医薬組成物貯蔵ユニット、および経皮吸収製剤を得た。
本製剤は、適用時に得られた製剤1枚を一投与単位として用いるものであり、この一投与単位あたりの有効成分配合量(塩基換算)は31.1mgであった。
比 較 例 3
塩酸オキシコドン 20質量部、プロピレングリコール 15質量部、流動パラフィン 5質量部、ポリエチレングリコール400 5質量部、ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル 10質量部、エステルガム 25質量部、ポリ酢酸ビニル 15質量部、およびカオリン 5質量部を約50℃で加温混合し、泥状の経皮吸収医薬組成物を得た。
この組成物を、不織布にポリエチレンテレフタレートフィルムをラミネートしたフィルムに、1辺が1.5cmの角型となるよう塗膏して、経皮吸収製剤を得た。
本製剤は、適用時に1枚を一投与単位として用いた。この一投与単位あたりのオキシコドン配合量(塩基換算)は31.1mgであった。
試 験 例 1
有効成分利用性試験:
実験動物としてヘアレスラットを用い、以下の手順に従い、上述の実施例および比較例で得られた製剤について、製剤貼付後の血漿中の有効成分濃度を経時的に測定した。また、この試験に使用した後の製剤について、残存有効成分量を測定し、有効成分残存量を測定した。これらの試験について、その結果を表1に示す。
( 実験動物処置 )
体重0.2kg前後のヘアレスラットの雄を、非絶食下で実験に使用した。動物の例数は各群3匹とした。ヘアレスラットは原則として実験期間を通じて固形試料および水を自由に摂取させた。ヘアレスラットの腹部については、毛刈りを行わず、水で清拭した。
まず、ヘアレスラットの腹部に、経皮吸収製剤を貼付した。この経皮吸収製剤の上から不織布粘着性包帯(メッシュポアテープ、ニチバン株式会社、型番No.50F、幅5.0cm×長さ約30cm)で幅約8cmにわたり、ヘアレスラットの胴を1ないし2周させて固定した。貼付時間は48時間とした。貼付後は、経時的に採血を行った。
( 採血および血液処理 )
経皮吸収製剤貼付直前(0時間)、貼付後24、48時間目にヘアレスラットの頚静脈から約1mL採血し、あらかじめヘパリン40U/40μL(生理食塩水)を加えたチューブに入れ、採血管に移し、氷冷した。その後、3000rpm、20分間遠心分離し血漿を得、必要に応じて有効成分濃度測定時まで−20℃で凍結保存した。
( 血漿中有効成分濃度測定 )
血漿1mLに0.1M ホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)を1mL加え、ミキサーで混合した。次に、酢酸エチル/アセトン(3:1(v/v))を10mL加え、振とう機で室温下、10分間振とうした。その後、20℃で3000rpm、10分間遠心分離し、上清の有機層を採取した。さらに残渣に、酢酸エチル/アセトン(3:1(v/v))を10mL加え、振とう機で室温下、10分間振とうし、20℃で3000rpm、10分間遠心分離後の上清を採取し、上清を合わせた。得られた上清をエバポレーターで濃縮後、0.4mLの移動相で溶解し、4℃で14,800rpm、10分間遠心分離した上清を高速液体クロマトグラフィーにより測定し、血漿中有効成分濃度を測定した。高速液体クロマトグラフィーの測定条件は下のとおりである。
検出器: 紫外吸光光度計(測定波長:205nm)
カラム: 内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に、粒径5μmの含フッ素
化シリコンで化学修飾した液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル
化シリカゲルを充てんしたもの
カラム温度: 40℃付近の一定温度
移動相: ラウリル硫酸ナトリウム3.25g及び酢酸(100)2.6mLを水
650mLに溶かす.この液にアセトニトリル350mLを加える.
流 量: 有効成分の保持時間が約20分になるように調整した。
( 有効成分残存率および利用可能率の算出 )
試験例1で、ヘアレスラットに貼付した後の経皮吸収製剤を回収し、医薬組成物が付着していない部分を切り取り、もしくは取り除き、これを試験検体とした。次に、この試験検体に、メタノール15mL、ヘキサン15mLおよび水15mLを加え、振とう機で室温下、10分間振とうした後、20℃で3000rpm、10分間遠心分離し、下清を採取した。さらに残渣に、メタノール10mL、ヘキサン10mLおよび水10mLを加え、振とう機で室温下、10分間振とうした後、20℃で3000rpm、10分間遠心分離後の下清を採取し、下清を合わせた。
得られた下清をエバポレーターで濃縮後、100mLの蒸留水で溶解し、0.45μmのメンブランフィルターでろ過した。ろ液を希釈後、高速液体クロマトグラフィーにより測定し、試験検体中の有効成分濃度を測定し、有効成分残存量を求めた。高速液体クロマトグラフィーの測定条件は前記と同一である。
有効成分残存率は、ヘアレスラットに貼付しなかった未使用の経皮吸収製剤を対照とし、この対照製剤の有効成分残存量を100%として貼付済み製剤の定量結果から算出した。また、経皮吸収製剤中の有効成分利用可能率は、製剤中に残存していない有効成分は全て利用されたものとみなして、得られた残存率から算出した。
( 結 果 )
製剤貼付後の血漿中の有効成分濃度を経時的に測定した結果並びにこの試験に使用した後の製剤の有効成分残存率および有効成分利用可能率を算出した結果について表1に示す。
Figure 0005345813
上記の結果から、比較例3のように、基剤が保形性を有するもの、すなわち有効成分保持媒体が流動性を有さないものについては、有効成分の血漿中濃度が不十分であった。
また、比較例1のように、経皮吸収促進剤を含有しないものについては、24時間経過時点(24hr)において、全く有効成分の経皮吸収が認められず、48時間経過時点(48hr)においても、有効成分の血漿中濃度が不十分であった。
さらに、比較例2のように、経皮吸収促進剤としてオレイルアルコールを用いたものは、経皮吸収促進剤としてポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテルを含有する実施例群と比較して、有効成分の血漿中濃度が不十分であった。
他方、実施例1〜6のように、ヒト皮膚表面温度付近の温度において流動性を有する有効成分保持媒体中に、有効成分を飽和溶解度以上の配合量で配合し、該有効成分の少なくとも一部を結晶型で保持させた経皮吸収医薬組成物を空隙を有する坦体に担持させたものについては、いずれも、十分な有効成分血漿中濃度が得られた。
本発明により、過去に世界中で幾度となく試みられたにもかかわらず、これまで誰もがなしえなかった、オキシコドンまたはその塩の徐放性経皮吸収製剤を提供することが可能となった。そしてこれは、痛み、特に癌性疼痛に苦しむ世界中の患者のQOLを著しく向上させる画期的な製剤であり、臨床医療の場において広く利用可能なものである。

本発明の一実施態様である経皮吸収製剤を模式的に示した断面図
符号の説明
1……経皮吸収製剤
2……医薬組成物貯蔵ユニット
3……不透過層
4……薬剤保護層
5……粘着剤層
6……粘着剤保持層
7……剥離フィルム

Claims (11)

  1. オキシコドンまたはその塩から選択される有効成分を、ヒト皮膚表面温度付近の温度において流動性を有する有効成分保持媒体中に、飽和溶解度以上の配合量で配合し、かつ該有効成分の少なくとも一部を結晶型で保持した経皮吸収医薬組成物であって、
    前記ヒト皮膚表面温度付近の温度において流動性を有する有効成分保持媒体が、次の成分(B)および(C)
    (B)プロピレングリコール、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、1,3−ブ
    チレングリコール、シリコーンオイル、グリセリンおよび水から選択される1種ま
    たは2種以上の媒体
    (C)ポリオキシエチレンラウリルエーテル
    であることを特徴とする経皮吸収医薬組成物。
  2. オキシコドンまたはその塩から選択される有効成分が、オキシコドン塩酸塩、オキシコドン硫酸塩、オキシコドングルコン酸塩、オキシコドン酒石酸塩、オキシコドン乳酸塩、オキシコドンメタンスルホン酸塩およびオキシコドンリン酸塩よりなる群から選択される1種または2種以上の混合物であるであることを特徴とする請求項に記載の経皮吸収医薬組成物。
  3. 液体である請求項1または2に記載の経皮吸収医薬組成物。
  4. 請求項1〜3の何れかに記載の経皮吸収医薬組成物を、空隙を有する坦体に担持させてなる医薬組成物貯蔵ユニット。
  5. 空隙を有する坦体が、繊維状物質の圧縮体、粉末状物質の圧縮体および連続気泡構造のスポンジフォームよりなる群から選択される1種または2種以上の混合物または複合体である請求項に記載の医薬組成物貯蔵ユニット。
  6. スポンジフォームが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレートおよびポリ酢酸ビニルよりなる群から選択される1種または2種以上のプラスチックからなる請求項に記載の医薬組成物貯蔵ユニット。
  7. 結晶型の有効成分が、空隙を有する担体の内部またはその表面に局在化し、担持されているものである請求項4〜6の何れかに記載の医薬組成物貯蔵ユニット。
  8. 請求項4〜7の何れかに記載の医薬組成物貯蔵ユニットの皮膚適用面の反対側に、有効成分および有効成分保持媒体を実質的に透過しない不透過層、粘着剤層および粘着剤保持層を、順に積層してなる経皮吸収製剤。
  9. 更に、医薬組成物貯蔵ユニットの皮膚適用面側に液透過性を有する薬物保護層を設けた請求項に記載の経皮吸収製剤。
  10. 液透過性を有する薬物保護層が、有孔プラスチックフィルムまたは不織布のいずれかである請求項に記載の経皮吸収製剤。
  11. さらに医薬組成物貯蔵ユニットの皮膚適用面側に、使用時に剥離される剥離フィルムを有する請求項8〜10の何れかに記載の経皮吸収製剤。
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