JP5344049B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、制御量の目標値に従って内燃機関を制御する制御装置に関し、詳しくは、制御量の目標値を決定するにあたって内燃機関の性能に関する種々の要求を目標値に反映させることのできる制御装置に関する。
自動車用の内燃機関には、例えばドライバビリティ、排気ガス性能、燃料消費率といった種々の性能が求められている。内燃機関の制御装置にはこれら種々の性能に関する要求が車両全体を制御する制御装置から出されていて、内燃機関の制御装置はそれら要求を満たすべく内燃機関の制御量を制御している。しかしながら、実際には全ての要求を同時に完全に実現することは難しく、各種の要求を内燃機関の制御量に上手く反映させるための工夫が必要とされる。
特開2009−162199号公報や特開2008−169825号公報には、そのような工夫の一例が開示されている。これら公報に記載された内燃機関の制御装置は、要求の調停という処理によって各種の要求を内燃機関の制御量に反映させている。要求の調停では、まず、各要求が所定の物理量によって表現される。ここで用いられる物理量は内燃機関の制御量として使用される物理量である。例えばトルク、効率、空燃比がそれに含まれる。効率とは内燃機関が潜在的に出力しうるトルクに対する実際に出力されるトルクの割合を意味する。次に、同じ物理量で表現された要求の値が集められ、集められた複数の要求値から所定の計算規則に従って1つの値が決定される。この決定のプロセスが調停と称されている。
調停における計算規則は任意に設定することができる。ただし、計算規則が適切でない場合には、比較的優先順位の低い要求が反映されずに、比較的優先順位の高い要求のみが最終的な調停値、すなわち、制御量の目標値に反映される可能性がある。内燃機関を適切に制御するためには、比較的優先順位の高い要求だけでなく、比較的優先順位の低い要求も目標値に適宜に反映させる必要がある。
この問題に関しては、前述の特開2009−162199号公報において有効な解決策が示されている。この公報に開示された調停の方法によれば、要求は1つの数値で表現されるのではなく、要求値の範囲と、その範囲内の各要求値の期待度を表す期待値の分布とで表現される。そして、同じ物理量で表現された全ての要求の期待値の加算和が算出され、その加算和が最大となるときの要求値が調停値、すなわち、制御量の目標値として算出される。このような調停の方法によれば、制御量の目標値を決定するにあたって、比較的優先順位の低い要求も含めた全ての要求をその重要度に応じて適宜、目標値に反映させることができる。
上述した“要求の調停”は、調停対象となる要求が全て同じ物理量、より正確には、制御量として使用される物理量で表されていることが前提となる。このため、車両の制御装置から内燃機関の制御装置へ出される全ての要求が制御量の要求値という形式で表現されている必要がある。しかしながら、要求の種類や内容によっては必ずしも特定の制御量の要求値という形式をとることが妥当ではないことも考えられる。そのようなケースでは要求を制御量の目標値に適切に反映させることができないおそれがある。
本発明は、上述のような課題に鑑みなされたものである。そして、その目的は、内燃機関の性能に関する種々の要求を制御量の目標値に適切に反映させることが可能であり、しかも、それら要求が制御量の要求値という形式で表現されている必要のない内燃機関の制御装置を提供することである。
そのような目的において、本発明の1つ目の態様によれば、内燃機関の制御装置は、内燃機関の性能に関する種々の要求を取得し、それぞれの要求に応じた制約を制御量の値に対して設ける。より詳しくは、制御量の値に対して設ける制約を制御量の値ごとに当てた制約指標値の集合として表現し、要求の種類に応じて制御量の各値に当てる制約指標値の分布を異ならせる。次に制御装置は、制御量の各値に対して要求ごとに当てられている制約指標値を制御量の値ごとに積算する。続いて制御装置は、制御量に対する積算制約指標値の分布に基づいて、上限値及び下限値によって規定される制御量の制約範囲を決定する。そして制御装置は、決定した制約範囲の中で制御量の目標値を決定する。
以上の処理によれば、内燃機関の性能に関する種々の要求は制御量の値に対する制約という形式に変換され、その制約を介して制御量の目標値に反映される。このため、各要求が予め制御量の要求値という形式で表現されている必要はない。また、積算制約指標値は制御量の各値に対して要求ごとに当てられている制約指標値の制御量の値ごとの積算値であることから、積算制約指標値によれば、制御量の各値の要求全体としての満足度を定量的に評価することができる。制御量の目標値の決定に用いられる制約範囲は、そのような積算制約指標値の制御量に対する分布に基づいて決定されるので、比較的優先順位の低い要求も含めた全ての要求が制御量の目標値に適切に反映される。
上述の態様において制御量の値ごとに当てるべき制約指標値は、制御量を複数の帯域に分けたときの帯域ごとに当てた離散値であってもよいし、制御量の各値において連続する連続値であってもよい。
また、制御量の各値に当てる制約指標値の分布は、要求の種類に応じて異ならせるだけでなく、要求の内容の変化に応じて変化させるのが好ましい。例えば、制約指標値が帯域ごとに当てた離散値であるならば、要求の内容の変化に応じて各帯域の制約指標値を別の数値に変えたり、各帯域の幅を変えたり、或いはそれらを組み合わせたりすることができる。制約指標値が連続値であるならば、その分布の形状は高い自由度で変えることができる。
また、上述の態様においては、制御量の各値に対して要求ごとに当てられている制約指標値に、各要求の重要度に応じた重みを掛けることもできる。その場合、制御装置は、重みを掛けられた制約指標値を制御量の値ごとに積算し、そうして得られる積算制約指標値の分布に基づいて制御量の制約範囲を決定する。このような処理を行うことで、各要求の重要度を制御量の目標値の設定に反映させることが可能になる。
上述の態様において制御量の各値に制約指標値を当てる際の指針としては、次の2つの指針の何れか一方を採ることが好ましい。1つ目の指針は、制御量の値が要求の内容により相応しい値であるほど、その値には所定の有限値、例えばゼロを基準にしてより大きな制約指標値を当てるようにすることである。この1つ目の指針を採ることで、制御量の値に当てる制約指標値を大きくするほど、制御量の目標値がその値に近づくように仕向けることができる。
そして、この1つ目の指針をとった場合には、次のような方法で制御量の制約範囲を決定することが好ましい。1つの方法は積算制約指標値が所定の閾値を上回る帯域を制約範囲とする方法である。そして、もう1つの方法は制約指標値が閾値を上回る帯域の幅が所定の幅になるような閾値を選択し、その閾値によって決まる帯域を制約範囲とする方法である。前者の方法をとる場合、より好ましくは、所定閾値を内燃機関の動作環境に応じて変化させる。後者の方法をとる場合は、所定幅を内燃機関の動作環境に応じて変化させることがより好ましい。
2つ目の指針は、制御量の値が要求の内容により相応しくない値であるほど、その値には所定の有限値、例えばゼロを基準にしてより大きな制約指標値を当てるようにすることである。この2つ目の指針を採ることで、制御量の値に当てる制約指標値を大きくするほど、制御量の目標値がその値から外れるように仕向けることができる。
そして、この2つ目の指針をとった場合には、次のような方法で制御量の制約範囲を決定することが好ましい。1つの方法は積算制約指標値が所定の閾値を下回る帯域を制約範囲とする方法である。そして、もう1つの方法は制約指標値が閾値を下回る帯域の幅が所定の幅になるような閾値を選択し、その閾値によって決まる帯域を制約範囲とする方法である。前者の方法をとる場合、より好ましくは、所定閾値を内燃機関の動作環境に応じて変化させる。後者の方法をとる場合は、所定幅を内燃機関の動作環境に応じて変化させることがより好ましい。
また、前述の目的において、本発明の2つ目の態様によれば、内燃機関の制御装置は、内燃機関の性能に関する種々の要求を取得し、それぞれの要求の種類に応じた制約を制御量の値に対して設ける。より詳しくは、制御量の値に対して設ける制約を制御量の値ごとに当てた制約指標値の集合として表現し、要求の種類に応じて制御量の各値に当てる制約指標値の分布を異ならせる。次に制御装置は、複数の要求を1つのグループとした要求グループを複数設定する。そして、制御量の各値に対して要求ごとに当てられている制約指標値を各要求グループにおいて制御量の値ごとに積算し、得られた積算制約指標値の分布に基づいて各要求グループにおける制約指標値の分布を再設定する。次に制御装置は、制御量の各値に対して要求グループごとに当てられている制約指標値を制御量の値ごとに積算する。続いて制御装置は、制御量に対する積算制約指標値の分布に基づいて、上限値及び下限値によって規定される制御量の制約範囲を決定する。そして制御装置は、決定した制約範囲の中で制御量の目標値を決定する。
以上の処理によれば、内燃機関の性能に関する種々の要求は制御量の値に対する制約という形式に変換され、その制約を介して制御量の目標値に反映される。その際、各要求は複数の要求グループにグループ分けされ、要求グループの単位で制約指標値の分布が再計算され、その要求グループの単位での制約指標値の分布に基づいて制御量の制約範囲が決定されるので、各要求を階層的に制御量の目標値へ反映することができる。
この2つ目の態様において制御量の値ごとに当てるべき制約指標値は、制御量を複数の帯域に分けたときの帯域ごとに当てた離散値であってもよいし、制御量の各値において連続する連続値であってもよい。
また、この2つ目の態様において制御量の各値に制約指標値を当てる際の指針としては、制御量の値が要求の内容により相応しい値であるほど、その値には所定の有限値、例えばゼロを基準にしてより大きな制約指標値を当てるようにするのが好ましい。また、制御量の値が要求の内容により相応しくない値であるほど、その値には所定の有限値、例えばゼロを基準にしてより大きな制約指標値を当てるようにすることも好ましい。
さらに、前述の目的において、本発明の3つ目の態様によれば、内燃機関の制御装置は、内燃機関の性能に関する種々の要求を取得し、それぞれの要求について上限値及び下限値によって規定される制御量の制約範囲を制約の厳緩を変えて複数設定する。次に制御装置は、要求間での制約範囲の重なりと各制約範囲に設定されている制約の厳緩とに基づいて、制御量の制約範囲を最終決定する。そして、制御装置は、最終決定された制約範囲の中で制御量の目標値を決定する。
以上の処理によれば、内燃機関の性能に関する種々の要求は制約の厳緩が異なる複数の制約範囲に変換され、それら制約範囲による制約を介して制御量の目標値に反映される。このため、各要求が予め制御量の要求値という形式で表現されている必要はない。また、制御量の目標値の決定に用いられる最終的な制約範囲は、要求間での制約範囲の重なりと各制約範囲に設定されている制約の厳緩とに基づいて決定されるので、比較的優先順位の低い要求も含めた全ての要求が制御量の目標値に適切に反映される。
さらに、前述の目的において、本発明の4つ目の態様によれば、内燃機関の制御装置は、内燃機関の性能に関する種々の要求を取得し、それぞれの要求について上限値及び下限値によって規定される制御量の制約範囲を制約の厳緩を変えて複数設定する。次に制御装置は、複数の要求を1つのグループとした要求グループを複数設定する。そして、各要求グループにおける要求別の制約範囲を集約して要求グループ別の制約範囲を再設定する。続いて制御装置は、要求グループ間での制約範囲の重なりと各制約範囲に設定されている制約の厳緩とに基づいて、制御量の制約範囲を最終決定する。そして、制御装置は、最終決定された制約範囲の中で制御量の目標値を決定する。
以上の処理によれば、内燃機関の性能に関する種々の要求は制約の厳緩が異なる複数の制約範囲に変換され、それら制約範囲による制約を介して制御量の目標値に反映される。その際、各要求は複数の要求グループにグループ分けされ、要求グループ別に制約範囲が再設定され、その要求グループ別の制約範囲に基づいて最終的な制約範囲が決定される。これにより、各要求を階層的に制御量の目標値へ反映することができる。
本発明の実施の形態1の内燃機関の制御装置の構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態1で採られている制約範囲の決定方法を説明するための図である。 本発明の実施の形態2で採られている制約範囲の決定方法を説明するための図である。 本発明の実施の形態2で採られている制約範囲の決定方法を説明するための図である。 本発明の実施の形態3における制御量の制約範囲の決定方法を説明するための図である。 本発明の実施の形態3で採られている制約範囲の決定方法を説明するための図である。 本発明の実施の形態4で採られている制約範囲の決定方法を説明するための図である。 本発明の実施の形態4で採られている制約範囲の決定方法を説明するための図である。 本発明の実施の形態4で採られている制約範囲の決定方法を説明するための図である。 本発明の実施の形態5で採られている制約範囲の決定方法を説明するための図である。 本発明の実施の形態6で採られている制約範囲の決定方法を説明するための図である。 本発明の実施の形態6で採られている制約範囲の決定方法を説明するための図である。 本発明の実施の形態6で採られている制約範囲の決定方法を説明するための図である。 本発明の実施の形態7で採られている制約範囲の決定方法を説明するための図である。 本発明の実施の形態8で採られている制約範囲の決定方法を説明するための図である。 本発明の実施の形態9で採られている制約範囲の決定方法を説明するための図である。 本発明の実施の形態10で採られている制約範囲の決定方法を説明するための図である。 本発明の実施の形態11で採られている制約範囲の決定方法を説明するための図である。 本発明の実施の形態12で採られている制約範囲の決定方法を説明するための図である。 本発明の実施の形態12で採られている制約範囲の決定方法を説明するための図である。 本発明の実施の形態13で採られている制約範囲の決定方法を説明するための図である。
実施の形態1.
本発明の実施の形態1について図1及び図2を参照して説明する。
本実施の形態の制御装置は自動車用の内燃機関(以下、エンジンという)に適用される。適用されるエンジンの種別には限定はなく、火花点火式エンジン、圧縮着火式エンジン、4ストロークエンジン、2ストロークエンジン、レシプロエンジン、ロータリーエンジン、単気筒エンジン、多気筒エンジン等、様々な種別のエンジンに適用することができる。本実施の形態の制御装置は、そのようなエンジンに備えられる1以上のアクチュエータ、例えばスロットルや点火装置をエンジン制御量、例えばトルクの目標値に従って制御する。
図1は本実施の形態の制御装置の構成を示すブロック図である。制御装置には、エンジンの制御量であるトルクの要求値(以下、要求トルク)が供給される。この要求トルクは、エンジンの性能の1つであるドライバビリティに関する要求をエンジンの制御量の1つであるトルクで表現したものと解釈することができる。また、それとは別に排気ガス性能に関する要求や燃料消費率に関する要求等、エンジンの性能に関するその他の種々の要求が制御装置には供給される。これらの要求は、車両全体を制御する上位の制御装置から供給されている。制御装置は、供給された要求トルクを基礎としてトルクの目標値(以下、目標トルク)を決定する。そして、決定した目標トルクに従ってトルクに関係する各種のアクチュエータを操作し、それらの操作を介してエンジンのトルクを制御する。
要求トルクとともに制御装置に供給されたエンジンの性能に関する種々の要求は、要求トルクから目標トルクを決定する過程において参酌される。それら要求は、図1に示すように、上限値及び下限値で規定されるトルクの制約範囲(limitation)という形式に変換され、その制約範囲による制約(constraint)を介して目標トルクに反映される。ここで着目すべきなのは、複数の要求が供給されているにも関わらず、目標トルクの決定に用いられる制約範囲は1つだけという点である。これは、この1つの制約範囲に全ての要求が反映されていることを意味している。以下、エンジンの性能に関する種々の要求からトルクの制約範囲を決定する方法について詳しく説明する。
図2は、本実施の形態で採られている制約範囲の決定方法を説明するための図である。この図2において縦の軸はトルクの値であり、多数の横線はトルクの制約範囲を示している。図2には、Constraint1、Constraint2、Constraint3、Constraint4で示す4つの制約が示されている。各制約はそれぞれ異なる種類の要求から変換されている。言い換えれば、1つの要求から1つの制約が得られるようになっている。
各制約はそれぞれ複数段の制約範囲(図2では3段の制約範囲)から構成されている。1つの制約範囲はトルクの上限値と下限値との対で構成されている。図では、上限値と下限値との対応が分かりやすいように、制約範囲ごとに限界値を示す横線の太さを異ならせている。最も太い横線は第1の制約範囲の上限値と下限値とを示し、次に太い横線は第2の制約範囲の上限値と下限値とを示し、最も細い横線は第3の制約範囲の上限値と下限値とを示している。各制約範囲の幅から分かるように、最も制約が厳しいのが第1の制約範囲であり、次に制約が厳しいのが第2の制約範囲であり、最も制約が緩いのが第3の制約範囲である。
図2から分かるように、制約範囲の設定は制約ごとに、すなわち、要求ごとに異なっている。これは、要求の種類によって許容されるトルクの範囲が異なるためである。例えば、Constraint1とConstraint4とを比較した場合、Constraint4のほうがConstraint1よりも制約範囲の設定はより低い値にされている。これは、Constraint4の基礎となった要求において許容されるトルクは、Constraint1の基礎となった要求において許容されるトルクよりも低いことを意味している。
さて、図2に示すように、制約間で制約範囲にずれがある場合、最終的な制約範囲をどのように設定するかが問題となる。ある制約と目標トルクとの関係において、目標トルクがより厳しい制約範囲内に収まっていれば、その制約の基礎とった要求の満足度は高くなる。逆に、目標トルクが緩い制約範囲にしか入っていなければ、その制約の基礎とった要求の満足度は低くなる。したがって、最も望ましいのは、全ての制約において最も厳しい制約範囲に目標トルクが入ることである。しかしながら、図2に示す例からも明らかなように、各制約の最も厳しい制約範囲(第1の制約範囲)の集合をとった場合に、その集合が空集合になってしまうことは容易に考えられる。
本実施の形態において各制約を厳緩の異なる複数段の制約範囲で構成している理由は、上記のような空集合を避けて全ての要求を目標トルクの設定に反映させることを可能にするためである。一部の制約において目標トルクが最も厳しい第1の制約範囲から外れたとしても、次に厳しい第2の制約範囲内に収まっていれば、その制約の基礎となった要求はある程度満足させることができる。また、それにより他の大部分の制約において目標トルクが最も厳しい第1の制約範囲内に収まるのであれば、エンジン全体としては高い満足度で要求が満たされることになる。図2に示す例では、Constraint1,2の各第1の制約範囲に含まれ、且つ、Constraint3,4の第2の制約範囲に含まれるトルクの範囲(図2中にハッチングを掛けて示す範囲)が最終的な制約範囲として設定される。そして、この最終的な制約範囲の中で目標トルクの設定が行なわれる。
以上述べたように、本実施の形態によれば、エンジンの性能に関する種々の要求は制約の厳緩が異なる複数の制約範囲に変換され、それら制約範囲による制約を介して目標トルクの設定に反映される。このため、各要求が予め制御量の要求値という形式で表現されている必要はない。また、目標トルクの決定に用いられる最終的な制約範囲は、要求間での制約範囲の重なりと各制約範囲に設定されている制約の厳緩とに基づいて決定されるので、比較的優先順位の低い要求も含めた全ての要求が目標トルクに適切に反映されることになる。
なお、図2に示す例では、制約間で各制約範囲の幅に差は設けられていない。しかし、制約ごと、すなわち、要求ごとに制約範囲の幅を異ならせることも可能である。例えば、Constraint2のみ第1の制約範囲を狭くしたり、或いは、第3の制約範囲を広くしたりすることもできる。また、例えば第1の制約範囲を狭くする場合に、上限値と下限値の両方を変えることもできるし、上限値と下限値の何れか一方のみを変えることもできる。制約範囲の幅やその上限値/下限値をどう設定するかは要求の種類や内容に応じて決めればよい。
また、図2に示す例では、制約範囲を3段に設けているが、より多段に制約範囲を設けることも可能である。本発明の観点からは制約範囲は複数あればよいので、第1と第2の制約範囲のみを設けることも許容される。また、制約ごと、すなわち、要求ごとに制約範囲の段数を異ならせることも可能である。例えば、Constraint2のみ制約範囲を2段にしたり、逆に、Constraint2のみ制約範囲を4段にしたりすることも可能である。制約範囲を何段にするかは要求の種類や内容に応じて決めればよい。
実施の形態2.
本発明の実施の形態2について図3及び図4を参照して説明する。
本実施の形態の制御装置は、実施の形態1と同様、図1に示すブロック図でその構成を示すことができる。本実施の形態と実施の形態1との相違は、目標トルクの決定に用いられるトルクの制約範囲の決定方法にある。このことは後述する他の実施の形態に関しても同様であって、何れの実施の形態についてもその特徴はエンジンの性能に関する種々の要求からトルクの制約範囲を決定する方法にある。
図3は、本実施の形態で採られている制約範囲の決定方法を説明するための図である。図3には、実施の形態1と同様に4つの制約(Constraint1,2,3,4)が示されているが、その内容は実施の形態1のものとは異なっている。本実施の形態では、各制約は制御量であるトルクの値ごとに当てた制約指標値の集合として表現されている。より詳しくは、それぞれの制約においてトルク域は複数の帯域(図では5つの帯域)に分けられ、中央の帯域には10、その両脇の帯域には5、両外側の帯域には2がそれぞれ制約指標値として当てられている。本実施の形態では制約指標値はゼロを基準に設定されていて、その値が大きいほど、それが当てられるトルクの値は要求の内容に“より相応しい値”であることを意味している。また、トルク軸上での各帯域の位置は制約ごと、すなわち、要求ごとに異なっていて、要求の種類に応じた設定が行われている。
本実施の形態の制御装置は、トルクの各値に対して制約ごと、すなわち、要求ごとに当てられている制約指標値をトルクの値ごとに積算する。その結果、図3の右端にConstraint−totalとして示す積算制約指標値の分布ができあがる。積算制約指標値は、その値が大きいほど、それが当てられるトルクの値は各要求を全体として満足させる上でより相応しい値であることを意味している。つまり、積算制約指標値は、各トルク値の要求全体としての満足度を定量的に評価するための指標値である。したがって、ある帯域において積算制約指標値の最大値が与えられる場合には、その帯域が目標トルクを設定するのに最も相応しい帯域、すなわち、トルクの制約範囲ということになる。図3に示す積算制約指標値の分布によれば、積算制約指標値の最大値は30であることから、この最大値の30を与えている帯域がトルクの制約範囲として設定される。そして、この制約範囲の中で目標トルクの設定が行なわれる。
以上述べたように、本実施の形態によれば、エンジンの性能に関する種々の要求はトルクの値に対する制約という形式に変換され、その制約を介して目標トルクの設定に反映される。このため、各要求が予め制御量の要求値という形式で表現されている必要はない。また、積算制約指標値によれば各トルク値の要求全体としての満足度を定量的に評価することができるので、この積算制約指標値の分布に基づいて目標トルクが決定されることで、比較的優先順位の低い要求も含めた全ての要求が目標トルクに適切に反映されることになる。
ところで、図4に示すように、制約ごと、すなわち、要求ごとに各帯域に当てる制約指標値の値を異ならせることも可能である。各帯域に当てる制約指標値の値が可変である場合、ある帯域に当てる制約指標値を大きくするほど、目標トルクがその帯域内のトルク値に近づくように仕向けることができる。逆に、ある帯域に当てる制約指標値を小さくするほど、目標トルクがその帯域内のトルク値から外れるように仕向けることができる。したがって、各帯域に当てる制約指標値の値を要求の種類や内容に応じて可変とすることで、各要求の目標トルクへの反映具合をより細かく調整することが可能となる。
また、図3や図4に示す例では、制約間で各帯域の幅に差は設けられていない。しかし、制約ごと、すなわち、要求ごとに帯域の幅を異ならせることも可能である。例えば、図3に示す例において、Constraint2のみ中央の帯域(制約指標値が10の帯域)を狭くしたり、両脇の帯域(制約指標値が5の帯域)のうち上側の帯域を下側の帯域よりも狭くしたりすることもできる。各帯域の幅をどう設定するかは、そこに当てる制約指標値の値とともに要求の種類や内容に応じて決めればよい。
実施の形態3.
本発明の実施の形態3について図5及び図6を参照して説明する。
図5は、本実施の形態で採られている制約範囲の決定方法を説明するための図である。本実施の形態では、実施の形態2と同様、それぞれの制約(Constraint1,2,3,4)においてトルク域は複数の帯域に分けられ、それぞれの帯域に制約指標値が当てられている。ただし、本実施の形態と実施の形態2とでは、各帯域に制約指標値を当てる際の指針が異なっている。本実施の形態では制約指標値はゼロを基準に設定されていて、その値が大きいほど、それが当てられるトルクの値は要求の内容に“より相応しくない値”であることを意味している。図5に示す例では、何れの制約においても中央の帯域には0、その両脇の帯域には5、両外側の帯域には8がそれぞれ制約指標値として当てられている。そして、さらにその外側に広がる帯域には10がそれぞれ制約指標値として当てられている。なお、トルク軸上での各帯域の位置は制約ごと、すなわち、要求ごとに異なっていて、要求の種類に応じた設定が行われている。
図5の右端のConstraint−totalは、制約指標値をトルクの値ごとに積算することで得られる積算制約指標値の分布を示している。本実施の形態の積算制約指標値は、実施の形態2のそれとは反対に、その値が小さいほど、それが当てられるトルクの値は各要求を全体として満足させる上でより相応しい値であることを意味している。したがって、ある帯域において積算制約指標値の最小値が与えられる場合には、その帯域が目標トルクを設定するのに最も相応しい帯域、すなわち、トルクの制約範囲ということになる。図5に示す積算制約指標値の分布によれば、積算制約指標値の最小値は10であることから、この最小値の10を与えている帯域がトルクの制約範囲として設定される。そして、この制約範囲の中で目標トルクの設定が行なわれる。
各帯域に当てる制約指標値の値は制約ごとに異ならせることができる。図6にはその一例を示している。各帯域に当てる制約指標値の値が可変である場合、ある帯域に当てる制約指標値を大きくするほど、目標トルクがその帯域内のトルク値から外れるように仕向けることができる。逆に、ある帯域に当てる制約指標値を小さくするほど、目標トルクがその帯域内のトルク値に近づくように仕向けることができる。したがって、各帯域に当てる制約指標値の値を要求の種類や内容に応じて可変とすることで、各要求の目標トルクへの反映具合をより細かく調整することが可能となる。
なお、図5や図6に示す例では、制約間で各帯域の幅に差は設けられていない。しかし、本実施の形態においても、制約ごと(要求ごと)に帯域の幅を異ならせることも可能である。各帯域の幅をどう設定するかは、そこに当てる制約指標値の値とともに要求の種類や内容に応じて決めればよい。
実施の形態4.
本発明の実施の形態4について図7乃至図9の各図を参照して説明する。
図7は、本実施の形態で採られている制約範囲の決定方法を説明するための図である。本実施の形態では、実施の形態2と同様、各制約(Constraint1,2,3,4)は制御量であるトルクの値ごとに当てた制約指標値の集合として表現されている。ただし、実施の形態2における制約指標値は、トルク域を複数の帯域に分けたときの帯域ごとに当てた離散値とされているのに対し、本実施の形態における制約指標値は、各トルク値において連続する連続値とされている。本実施の形態では制約指標値はゼロを基準に設定されていて、その値が大きいほど、それが当てられるトルクの値は要求の内容に“より相応しい値”であることを意味している。
図7の右端のConstraint−totalは、制約指標値をトルクの値ごとに積算することで得られる積算制約指標値の分布を示している。本実施の形態の積算制約指標値は、実施の形態2のそれと同様、その値が大きいほど、それが当てられるトルクの値は各要求を全体として満足させる上でより相応しい値であることを意味している。したがって、積算制約指標値の最大値を与えるトルク値が目標トルクを設定するのに最も相応しいトルク値と判断することもできる。しかし、積算制約指標値はあくまでも要求トルク以外の種々の要求を目標トルクの設定に反映させるための指標値であるので、最終的には要求トルクそのものとの兼ね合いから目標トルクを決定する必要がある。そのためには、ある程度の幅の帯域から目標トルクを選択できるようにする必要があり、それが上限値及び下限値で規定されるトルクの制約範囲である。
本実施の形態では、図8に示すように、積算制約指標値が所定の閾値α1を上回る帯域をトルクの制約範囲として設定される。そして、この制約範囲の中で目標トルクの設定が行なわれる。なお、閾値α1は固定でも良いが、エンジンの動作環境に応じて閾値α1を変化させることも可能である。
なお、各トルク値に当てる制約指標値の値は制約ごとに異ならせることができる。別の表現を用いれば、トルク値に対する制約指標値の分布の形状は制約ごとに異ならせることができる。図9にはその一例を示している。各トルク値に当てる制約指標値の値が可変である場合、あるトルク値に当てる制約指標値を大きくするほど、目標トルクがそのトルク値に近づくように仕向けることができる。逆に、あるトルク値に当てる制約指標値を小さくするほど、目標トルクがそのトルク値から外れるように仕向けることができる。したがって、制約指標値の分布の形状を要求の種類や内容に応じて可変とすることで、各要求の目標トルクへの反映具合をより細かく調整することが可能となる。
実施の形態5.
本発明の実施の形態5について図10を参照して説明する。
本実施の形態は、実施の形態4を基礎とする。実施の形態4との違いは、積算制約指標値の分布からトルクの制約範囲を決定する方法にある。本実施の形態では、図10に示すように、まず、制約指標値が閾値を上回る帯域の幅が所定の幅β1になるような閾値γ1が選択される。そして、この閾値γ1によって決まる帯域が制約範囲として設定される。つまり、実施の形態4の方法によれば積算制約指標値の分布の形状によって制約範囲の帯域幅は変化するに対し、本実施の形態によれば常に一定の帯域幅β1の制約範囲を得ることができる。なお、制約範囲の帯域幅β1は固定でも良いが、エンジンの動作環境に応じて制約範囲の帯域幅β1を変化させることも可能である。
実施の形態6.
本発明の実施の形態6について図11乃至図13の各図を参照して説明する。
図11は、本実施の形態で採られている制約範囲の決定方法を説明するための図である。本実施の形態では、実施の形態4と同様、各制約(Constraint1,2,3,4)は制御量であるトルクの値ごとに当てた制約指標値の集合として表現され、制約指標値は各トルク値において連続する連続値とされている。ただし、本実施の形態と実施の形態4とでは、各帯域に制約指標値を当てる際の指針が異なっている。本実施の形態では制約指標値はゼロを基準に設定されていて、その値が大きいほど、それが当てられるトルクの値は要求の内容に“より相応しくない値”であることを意味している。このため、各制約におけるトルクの値に対する制約指標値の分布の形状は、実施の形態4のそれを左右反転したような形状になっている。
図11の右端のConstraint−totalは、制約指標値をトルクの値ごとに積算することで得られる積算制約指標値の分布を示している。本実施の形態の積算制約指標値は、実施の形態4のそれとは反対に、その値が小さいほど、それが当てられるトルクの値は各要求を全体として満足させる上でより相応しい値であることを意味している。したがって、積算制約指標値の最小値を与えるトルク値が目標トルクを設定するのに最も相応しいトルク値のように思われる。しかし、実施の形態4の場合と同様の理由により、ある程度の幅の帯域から目標トルクを選択できるようにする必要があり、それが上限値及び下限値で規定されるトルクの制約範囲である。
本実施の形態では、図12に示すように、積算制約指標値が所定の閾値α2を下回る帯域をトルクの制約範囲として設定される。そして、この制約範囲の中で目標トルクの設定が行なわれる。なお、閾値α2は固定でも良いが、エンジンの動作環境に応じて変化させることも可能である。
なお、トルク値に対する制約指標値の分布の形状は制約ごとに異ならせることができる。図13にはその一例を示している。本実施の形態において各トルク値に当てる制約指標値の値が可変である場合、あるトルク値に当てる制約指標値を大きくするほど、目標トルクがそのトルク値から外れるように仕向けることができる。逆に、あるトルク値に当てる制約指標値を小さくするほど、目標トルクがそのトルク値に近づくように仕向けることができる。したがって、制約指標値の分布の形状を要求の種類や内容に応じて可変とすることで、各要求の目標トルクへの反映具合をより細かく調整することが可能となる。
実施の形態7.
本発明の実施の形態7について図14を参照して説明する。
本実施の形態は、実施の形態6を基礎とする。実施の形態6との違いは、積算制約指標値の分布からトルクの制約範囲を決定する方法にある。本実施の形態では、図14に示すように、まず、制約指標値が閾値を下回る帯域の幅が所定の幅β2になるような閾値γ2が選択される。そして、この閾値γ2によって決まる帯域が制約範囲として設定される。つまり、実施の形態6の方法によれば積算制約指標値の分布の形状によって制約範囲の帯域幅は変化するのに対し、本実施の形態によれば常に一定の帯域幅β2の制約範囲を得ることができる。なお、制約範囲の帯域幅β2は固定でも良いが、エンジンの動作環境に応じて変化させることも可能である。
実施の形態8.
本発明の実施の形態8について図15を参照して説明する。
本実施の形態は、実施の形態2を基礎としつつ、制約間、すなわち、要求間で重み付けを行なうことに特徴がある。図15に示す例では、Constraint1には3の重み、Constraint2には5の重み、Constraint3には2の重み、Constraint4には1の重みが付けられている。各要求に付ける重みは可変であって各要求の重要度に応じた重み付けが行なわれる。図5に示す例からは、重みが5のConstraint2に対応する要求が最も重要であり、重みが1のConstraint1に対応する要求は比較的重要度が低いことがわかる。
本実施の形態の制御装置は、各帯域に当てたられた制約指標値に制約間の重みを掛け、その上でトルクの値ごとに積算する。その結果、図15の右端にConstraint−totalとして示す積算制約指標値の分布ができあがる。図15に示す積算制約指標値の分布によれば、積算制約指標値の最大値は95であることから、この最大値の95を与えている帯域がトルクの制約範囲として設定される。このように設定された制約範囲の中で目標トルクの設定を行なうことで、各要求の重要度を目標トルクの設定に反映させることが可能となる。
実施の形態9.
本発明の実施の形態9について図16を参照して説明する。
本実施の形態は、実施の形態3を基礎としつつ、制約間、すなわち、要求間で重み付けを行なうことに特徴がある。実施の形態8と同様、各要求に付ける重みは可変であって各要求の重要度に応じた重み付けが行なわれる。図16の右端のConstraint−totalは、各帯域に当てられた制約指標値に制約間の重みを掛け、その上でトルクの値ごとに積算することで得られる積算制約指標値の分布を示している。図16に示す積算制約指標値の分布によれば、積算制約指標値の最小値は15であることから、この最小値の15を与えている帯域がトルクの制約範囲として設定される。本実施の形態によれば、実施の形態3による効果に加え、さらに、各要求の重要度を目標トルクの設定に反映させることも可能になる。
実施の形態10.
本発明の実施の形態10について図17を参照して説明する。
本実施の形態は、実施の形態4を基礎としつつ、制約間、すなわち、要求間で重み付けを行なうことに特徴がある。実施の形態8,9と同様、各要求に付ける重みは可変であって各要求の重要度に応じた重み付けが行なわれる。図17の右端のConstraint−totalは、トルクの各値に当てたられた制約指標値に制約間の重みを掛け、その上でトルクの値ごとに積算することで得られる積算制約指標値の分布を示している。この積算制約指標値の分布から、実施の形態4或いは実施の形態5で説明した方法にてトルクの制約範囲が決定される。本実施の形態によれば、実施の形態4による効果に加え、さらに、各要求の重要度を目標トルクの設定に反映させることも可能になる。
実施の形態11.
本発明の実施の形態11について図18を参照して説明する。
本実施の形態は、実施の形態6を基礎としつつ、制約間、すなわち、要求間で重み付けを行なうことに特徴がある。実施の形態8−10と同様、各要求に付ける重みは可変であって各要求の重要度に応じた重み付けが行なわれる。図18の右端のConstraint−totalは、トルクの各値に当てられた制約指標値に制約間の重みを掛け、その上でトルクの値ごとに積算することで得られる積算制約指標値の分布を示している。この積算制約指標値の分布から、実施の形態6或いは実施の形態7で説明した方法にてトルクの制約範囲が決定される。本実施の形態によれば、実施の形態6による効果に加え、さらに、各要求の重要度を目標トルクの設定に反映させることも可能になる。
実施の形態12.
本発明の実施の形態12について図19及び図20を参照して説明する。
本実施の形態は、実施の形態1を基礎としつつ、複数の要求を1つのグループとした要求グループを作成し、その要求グループにおける要求別の制約範囲を集約して要求グループの制約範囲を再設定することに特徴がある。図19に示す例では、Constraint1,2,3,4が1つの要求グループとされていて、それらを集約した結果がConstraintXとして図示されている。要求グループの制約であるConstraintXは、要求別の各制約と同様、3段の制約範囲から構成されている。最も制約が厳しい第1の制約範囲は、各要求の第1の制約範囲を可能な限り満たすことのできる範囲であり、次に制約が厳しい第2の制約範囲は、各要求の第2の制約範囲を可能な限り満たすことのできる範囲であり、そして、最も制約が緩い第3の制約範囲は、各要求の第3の制約範囲を可能な限り満たすことのできる範囲である。
本実施の形態の制御装置は、以上述べた処理を他の要求に関しても行い、図19に示すような要求グループ別の制約範囲を複数設定する。その際、1つのグループとする要求は、その種類や内容が似ているものとするのが好ましい。そして、要求グループ間での制約範囲の重なりと各制約範囲に設定されている制約の厳緩とに基づいて、トルクの制約範囲を最終決定する。これによれば、図20に示すような階層構造を得ることができ、トルクの値に対する制約を階層的に考慮していくことが可能となる。なお、図20に示す階層構造は2階層であるが、階層数には限定はなく、要求の数や種類に応じて階層数を増やすことも可能である。
実施の形態13.
本発明の実施の形態13について図21を参照して説明する。
本実施の形態は、実施の形態2を基礎としつつ、複数の要求を1つのグループとした要求グループを作成し、その要求グループにおける制約指標値の分布を再設定することに特徴がある。図21に示す例では、Constraint1,2,3,4が1つの要求グループとされていて、それらを集約した結果がConstraintXとして図示されている。ConstraintXは、Constraint−total、すなわち、各要求の制約指標値をトルクの値ごとに積算して得られる積算制約指標値の分布に基づいて設定されている。
本実施の形態の制御装置は、以上述べた処理を他の要求についても同様に行い、図21に示すような要求グループ別の制約範囲を複数設定する。そして、トルクの各値に対して要求グループごとに当てられている制約指標値をトルクの値ごとに積算する。そうして得られるトルク値に対する積算制約指標値の分布に基づいて、制御装置は、トルクの制約範囲を決定してその中で目標トルクの設定を行なう。これによれば、実施の形態12の場合と同様、図20に示すような階層構造を得ることができ、トルクの値に対する制約を階層的に考慮していくことが可能となる。また、本実施の形態の場合であれば、各制約は制約指標値によって定量化されているので、要求グループ間での重み付けを行ない、要求グループ単位での重要度を目標トルクの設定に反映させることも可能になる。
その他.
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、本実施の形態ではトルクをエンジンの制御量としているが、本発明はトルク以外の制御量の目標値の決定にも適用することができる。例えば、空燃比や効率といった制御量の目標値の決定にも適用することができる。
また、実施の形態13は実施の形態2を基礎としているが、実施の形態13が有する技術的特徴は、実施の形態2と同様に各制約が制約指標値によって定量化されている実施の形態3−11にも適用することができる。

Claims (18)

  1. 制御量の目標値に従って内燃機関を制御する制御装置において、
    前記内燃機関の性能に関する種々の要求を取得し、それぞれの要求に応じた制約を前記制御量の値に対して設ける手段であって、前記制約を前記制御量の値ごとに当てた制約指標値の集合として表現し、要求の種類に応じて前記制御量の各値に当てる制約指標値の分布を異ならせる制約設定手段と、
    前記制御量の各値に対して要求ごとに当てられている制約指標値を前記制御量の値ごとに積算する積算手段と、
    前記制御量に対する積算制約指標値の分布に基づいて、上限値及び下限値によって規定される前記制御量の制約範囲を決定する制約範囲決定手段と、
    前記制約範囲の中で前記制御量の目標値を決定する目標値決定手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 前記制約設定手段は、前記制御量を複数の帯域に分け、前記制約指標値を帯域ごとに当てた離散値とすることを特徴とする請求の範囲1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 前記制約設定手段は、前記制約指標値を前記制御量の各値において連続する連続値とすることを特徴とする請求の範囲1に記載の内燃機関の制御装置。
  4. 前記制約設定手段は、要求の内容の変化に応じて前記制御量の各値に当てる制約指標値の分布を変化させることを特徴とする請求の範囲1乃至3の何れか1つに記載の内燃機関の制御装置。
  5. 前記制御量の各値に対して要求ごとに当てられている制約指標値に、各要求の重要度に応じた重みを掛ける重み付け手段をさらに備え、
    前記積算手段は、重みを掛けられた制約指標値を前記制御量の値ごとに積算することを特徴とする請求の範囲1乃至4の何れか1つに記載の内燃機関の制御装置。
  6. 前記制約設定手段は、前記制御量の値が要求の内容により相応しい値であるほど、その値には所定の有限値を基準にしてより大きな制約指標値を当てることを特徴とする請求の範囲1乃至5の何れか1つに記載の内燃機関の制御装置。
  7. 前記制約範囲決定手段は、積算制約指標値が所定の閾値を上回る帯域を前記制約範囲とすることを特徴とする請求の範囲6に記載の内燃機関の制御装置。
  8. 前記制約範囲決定手段は、制約指標値が閾値を上回る帯域の幅が所定の幅になるような閾値を選択し、その閾値によって決まる帯域を前記制約範囲とすることを特徴とする請求の範囲6に記載の内燃機関の制御装置。
  9. 前記制約範囲決定手段は、前記の所定閾値を前記内燃機関の動作環境に応じて変化させることを特徴とする請求の範囲7に記載の内燃機関の制御装置。
  10. 前記制約範囲決定手段は、前記の所定幅を前記内燃機関の動作環境に応じて変化させることを特徴とする請求の範囲8に記載の内燃機関の制御装置。
  11. 前記制約設定手段は、前記制御量の値が要求の内容により相応しくない値であるほど、その値には所定の有限値を基準にしてより大きな制約指標値を当てることを特徴とする請求の範囲1乃至5の何れか1つに記載の内燃機関の制御装置。
  12. 前記制約範囲決定手段は、積算制約指標値が所定の閾値を下回る帯域を前記制約範囲とすることを特徴とする請求の範囲11に記載の内燃機関の制御装置。
  13. 前記制約範囲決定手段は、制約指標値が閾値を下回る帯域の幅が所定の幅になるような閾値を選択し、その閾値によって決まる帯域を前記制約範囲とすることを特徴とする請求の範囲11に記載の内燃機関の制御装置。
  14. 前記制約範囲決定手段は、前記の所定閾値を前記内燃機関の動作環境に応じて変化させることを特徴とする請求の範囲12に記載の内燃機関の制御装置。
  15. 前記制約範囲決定手段は、前記の所定幅を前記内燃機関の動作環境に応じて変化させることを特徴とする請求の範囲13に記載の内燃機関の制御装置。
  16. 制御量の目標値に従って内燃機関を制御する制御装置において、
    前記内燃機関の性能に関する種々の要求を取得し、それぞれの要求の種類に応じた制約を前記制御量の値に対して設ける手段であって、前記制約を前記制御量の値ごとに当てた制約指標値の集合として表現し、要求の種類に応じて前記制御量の各値に当てる制約指標値の分布を異ならせる制約設定手段と、
    複数の要求を1つのグループとした要求グループを複数設定し、前記制御量の各値に対して要求ごとに当てられている制約指標値を各要求グループにおいて前記制御量の値ごとに積算し、得られた積算制約指標値の分布に基づいて各要求グループにおける制約指標値の分布を再設定する制約再設定手段と、
    前記制御量の各値に対して要求グループごとに当てられている制約指標値を前記制御量の値ごとに積算する積算手段と、
    前記制御量に対する積算制約指標値の分布に基づいて、上限値及び下限値によって規定される前記制御量の制約範囲を決定する制約範囲決定手段と、
    前記制約範囲の中で前記制御量の目標値を決定する目標値決定手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  17. 制御量の目標値に従って内燃機関を制御する制御装置において、
    前記内燃機関の性能に関する種々の要求を取得し、それぞれの要求について上限値及び下限値によって規定される前記制御量の制約範囲を制約の厳緩を変えて複数設定する要求別制約範囲設定手段と、
    要求間での制約範囲の重なりと各制約範囲に設定されている制約の厳緩とに基づいて、前記制御量の制約範囲を最終決定する制約範囲最終決定手段と、
    最終決定された制約範囲の中で前記制御量の目標値を決定する目標値決定手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  18. 制御量の目標値に従って内燃機関を制御する制御装置において、
    前記内燃機関の性能に関する種々の要求を取得し、それぞれの要求について上限値及び下限値によって規定される前記制御量の制約範囲を制約の厳緩を変えて複数設定する要求別制約範囲設定手段と、
    複数の要求を1つのグループとした要求グループを複数設定し、各要求グループにおける要求別の制約範囲を集約して要求グループ別の制約範囲を再設定する要求グループ別制約範囲設定手段と
    要求グループ間での制約範囲の重なりと各制約範囲に設定されている制約の厳緩とに基づいて、前記制御量の制約範囲を最終決定する制約範囲最終決定手段と、
    最終決定された制約範囲の中で前記制御量の目標値を決定する目標値決定手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
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