JP5343682B2 - インプリント用モールドおよびその製造方法 - Google Patents
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それゆえ、近年、別の微細加工技術として、可塑性の樹脂を鋳型(モールド)で押圧等して、所望の微細な構造(パターン)を転写・成型するナノインプリント技術が注目を集めている。
熱ナノインプリント技術は、熱可塑性樹脂をガラス転移温度以上に加熱した状態で、モールドを押圧することによりインプリントし、冷却後にモールドを離型して、パターンを転写・成型する技術である。モールド、被転写体ともに材料の選択性が広いという長所がある。
一方、光ナノインプリントは、光硬化性樹脂にモールドを押圧した状態で光を照射して光硬化させることによりパターンを転写・成型する技術である。高温加熱を必要としないが、モールドもしくは被転写体は光に対し、透明である必要がある。実用的には、光としては紫外線を用いる。
しかし、半導体リソグラフィー技術の応用ゆえ、モールドの大きさは、現状、6インチ角程度以下の小面積にしか対応できず、大面積に所望の微細構造(パターン)を転写・成型するためには、前記モールドの転写面積に応じた大きさの領域でインプリントして、その後次の領域へ移動し、そこでまたインプリントするという工程を繰り返す必要があり、時間がかかるという問題がある(特許文献3)。
したがって、上述のようなモールドは、大画面のディスプレイ等、光学部材の工業的生産という用途には適さない。
現在、ナノインプリント技術で提案されている転写・成型の例では、インプリントされる被転写体は、シリコン基板や化合物半導体基板など、柔軟性の乏しい基板である場合が多い。
しかし、モールドおよび被転写体の両者に柔軟性が欠ける場合、インプリント後、雌雄関係に嵌合している転写パターンに損傷を与えずに、密着した両者を離型することは困難性を伴う場合が多く、この離型工程での欠陥発生や、モールド損傷等の問題がある。
また、インプリントの際に、両者の界面に異物が混入していると、柔軟性が欠けるモールドおよび被転写体の両者が大きな損傷を受けることになる。そして、損傷を受けたモールドは通常、再使用できない。一般に転写面積が大面積になるほど、異物混入の危険性は高くなる。
このモールドは環状オレフィン共重合体から成り、柔軟性を有するため、化合物半導体基板のような比較的脆く、非可撓性の被転写体からも離型させ易くなり、物理的損傷を軽減することができる。
したがって、前記環状オレフィン共重合体は、モールドの材料として使用することも可能であるが、光学部材となる被転写体の材料として使用することがより好ましいものである。
熱可塑性樹脂である環状オレフィン共重合体を、所望の形状に加工するためには、そのガラス転移温度以上の条件でモールドを押圧する、熱インプリント技術を用いる必要があるが、モールドの材料も同じ環状オレフィン共重合体である場合、そのガラス転移温度以上では、転写すべきモールドの形状も押圧により変形して原型を保つことはできず、モールドとして機能できないからである。
また、インプリント後の離型工程においては、例え被転写体が柔軟性に乏しい場合でも、モールドが柔軟性を有しているため、離型させ易く、物理的損傷の発生を軽減することができる。
また、前記硬化した樹脂には、紫外線硬化性樹脂を用いることができ、この場合には、硬化に高温加熱等を必要とせず、室温近傍であっても、紫外線を照射することにより架橋反応を生じさせて、樹脂を硬化させることが出来る。
本発明に係るインプリント用モールドは、例えば、図1に示すように、繊維状構造体2と硬化した樹脂3から成り、少なくとも、転写パターン10の存在する領域で、繊維状構造体2の空隙が、硬化した樹脂3によって満たされており、繊維状構造体2の表面に、硬化した樹脂3からなる三次元形状の転写パターン10が形成されていることを特徴とする。
さらには、前記環状オレフィン共重合体には、表面エネルギーが小さいものを用いることができ、硬化した樹脂3との離型性において、より優れた効果を発揮できる。
本発明に係るインプリント用モールドを構成する繊維状構造体2については、例えば、木材パルプや綿等の植物起因の繊維や、生糸や羊毛等の動物起因の繊維からなる紙や布のように、柔軟性を有し、ディスプレイ画面のような大面積に対応可能なものであれば用いることができ、他にも炭素繊維やガラス繊維からなる各種のフィルム状の構造体を使用することができる。
次に、本発明に係るインプリント用モールドを構成する、硬化した樹脂3について説明する。本発明における硬化した樹脂とは、硬化前の状態では流動性を有し、滴下や浸漬等の処理により繊維状構造体に含ませることができるが、硬化後の状態では、架橋反応により硬化過程で成型された形状を保持する機能を有する硬化性樹脂を、硬化させたものであり、例えば、加熱により硬化した樹脂、紫外線などの電磁波の照射により硬化した樹脂、電子線などの荷電粒子線の照射で硬化した樹脂などを用いることが出来る。中でも、紫外線により硬化した樹脂が、高温過熱や真空を必要としないことなどから、本発明における硬化した樹脂として、好ましい。
紫外線(Ultra Violet)とは10〜400nmの波長を有する電磁波であり、紫外線により硬化した樹脂とは、紫外線を照射されることにより架橋反応を起こして硬化した合成樹脂のことであり、光ナノインプリント用として、一般に知られている各種の紫外線硬化性樹脂を用いることができる。また、紫外線硬化性樹脂は、複数の異なる種類の樹脂からなる混合物であっても良い。
例えば、被転写体となる熱可塑性樹脂に、環状オレフィン共重合体であるZEONOR(登録商標)フィルムZF14(日本ゼオン株式会社製、ガラス転移温度136℃)を用いる場合には、前記硬化した樹脂のガラス転移温度が、140℃以上であることが必要となる。
さらに好ましくは、硬化した樹脂の硬化後のガラス転移温度が、被転写体となる熱可塑性樹脂の有するガラス転移温度よりも10℃以上高いことが、熱インプリント工程の制御性や安定性の点から、好ましい。
次に、本発明に係るインプリント用モールドを製造する方法について説明する。
本発明においては、まずモールド原版を製造し、このモールド原版を用いてインプリント技術により、本発明に係るインプリント用モールドを製造する。
モールド原版は、光ナノインプリント用モールドとして、一般に知られている各種のモールドを用いることができ、例えば、石英や金属酸化物などの無機物からなるモールドや、紫外線透過性樹脂等の有機物からなるモールドを用いることができる。
モールド原版に形成される転写パターンは、本発明に係るインプリント用モールドとは雌雄関係にあり、反転したパターンである。半導体用リソグラフィー技術における電子線等によるビーム加工とエッチング加工により、数10nmレベルの三次元形状のパターンを形成することが可能である。
前記インプリントには、光ナノインプリントとして一般に知られている技術を用いることができ、例えば、図2に示すように、本発明に係る紫外線硬化性樹脂を含ませた繊維状構造体2に、モールド原版4を押圧して紫外線6を照射し、その後、モールド原版4を離型することにより、本発明に係るインプリント用モールド1を製造することができる。
本発明においては、繊維状構造体2に含ませた紫外線硬化性樹脂を完全に硬化させる目的で、繊維状構造体2の裏面側からも紫外線を照射してもよい。
離型用支持体5の厚みは、特に限定されないが、5〜200μm程度であることが、フィルム欠陥が無いという信頼性や、積層および剥離等の作業性の点から好ましい。
この場合には、例えば、モールド原版の転写面積に応じた大きさの領域でインプリントをして、その後次の領域へ移動し、そこでまたインプリントするという工程を繰り返す方法を用いることができる。
次に、本発明に係るインプリント用モールドを用いて、熱可塑性樹脂に熱インプリントする方法について説明する。
本発明においては、特に限定されず、既知の各種の熱インプリント法を用いることができる。例えば、本発明に係るインプリント用モールドと被転写体となる熱可塑性樹脂を、真空状態で密着させ、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上で、かつ、本発明に係るインプリント用モールドの紫外線硬化性樹脂の硬化後のガラス転移温度以下に加熱しつつ、前記熱可塑性樹脂に本発明に係るインプリント用モールドを押圧し、冷却後に前記熱可塑性樹脂から本発明に係るインプリント用モールドを離型することで、前記熱可塑性樹脂の表面に、本発明に係るインプリント用モールドの転写パターンと雌雄関係となる微細な三次元形状を転写形成できる。
まず、本発明に係るインプリント用モールドに転写パターンを形成するためのモールド原版を製造した。モールド原版の材料にはフォトマスクに使用される石英基板を用い、転写パターンは、半導体用リソグラフィー技術により形成した。
具体的には、外形が縦6インチ、横6インチ、厚さ0.25インチの石英基板の表面にノボラック樹脂系の電子線レジスト(日本ゼオン株式会社製、ZEP−520)を厚さ100nm となるように塗布し、電子線描画し、その後現像して、幅100nm、深さ100nm、ピッチ400nmのライン・アンド・スペース状のレジストパターンを形成した。
次に、エッチング・ガスとして四フッ化炭素(CF4) を用いて石英基板をドライエッチングし、その後不要となった電子線レジストを酸素ガスでアッシングして除去し、幅100nm、深さ500nm、ピッチ400nmの三次元形状のライン・アンド・スペース・パターンを有するモールド原版を得た。
次に、本発明に係るインプリント用モールドを構成する紫外線硬化性樹脂として、表1に示すように、ウレタンアクリレート(日本合成化学工業株式会社製、ゴーセラック(登録商標)UV−7500B)35重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬株式会社製)35重量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成株式会社製)10重量部、ビニルピロリドン(東亜合成株式会社製)15重量部、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルテイ・ケミカルズ株式会社製、イルガキュア(登録商標)184)2重量部、ベンゾフェノン(日本化薬株式会社製)2重量部、ポリエーテル変性シリコーン(GE東芝シリコーン株式会社製、TSF4440)1重量部からなる組成物を準備した。
次に、本発明に係るインプリント用モールドを構成する繊維状構造体として、クリーンルーム用無塵紙(王子特殊紙株式会社製、OKクリーンRN)を用い、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの上に前記クリーンルーム用無塵紙を重ね、前記紫外線硬化性樹脂を滴下し、5分間放置して繊維状構造体に紫外線硬化性樹脂を浸漬させた。
次いで、前記モールド原版を用いて、圧力500kN/m2で押圧し、365nmの波長の紫外線を、露光量100mJ/cm2の条件で照射して、光インプリントを行った。
その後モールド原版を離型し、次いで、転写面とは反対側の面に365nmの波長の紫外線を露光量2J/cm2の条件で照射して、紫外線硬化性樹脂を完全に硬化させ、最後に、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを剥離して、本発明に係るインプリント用モールドを得た。
得られた本発明に係るインプリント用モールドにおいては、紫外線硬化性樹脂は、架橋反応により硬化して、クリーンルーム用無塵紙と一体化しており、硬化した紫外線硬化性樹脂の表面には、モールド原版のライン・アンド・スペース・パターンと雌雄関係となる三次元形状のパターンが転写形成されていた。
上記のようにして得られた本発明に係るインプリント用モールドを用いて、被転写体に環状オレフィン共重合体であるZEONOR(登録商標)フィルムZF14(日本ゼオン株式会社製、ガラス転移温度136℃)を用い、温度150℃、圧力50barで3分間押圧して、熱インプリントを実施した。
その後、室温まで冷却し、インプリント用モールドを離型したところ、ZF14フィルムの表面には、インプリント用モールドのパターンと雌雄関係となる三次元形状のパターンが転写成型されていた。
2 繊維状構造体
3 硬化した樹脂
4 モールド原版
5 離型用支持体
6 紫外線
10 転写パターン
Claims (6)
- 繊維状構造体と硬化した樹脂から成り、
少なくとも、転写パターンの存在する領域で、
前記繊維状構造体の空隙が、前記硬化した樹脂によって満たされており、
前記繊維状構造体の表面に、前記硬化した樹脂からなる三次元形状の転写パターンが形成されていることを特徴とするインプリント用モールド。 - 前記繊維状構造体が、植物繊維、動物繊維、炭素繊維、またはガラス繊維の1種または2種以上からなる構造体であることを特徴とする請求項1に記載のインプリント用モールド。
- 前記硬化した樹脂のガラス転移温度が、140℃以上であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のインプリント用モールド。
- 前記硬化した樹脂が、紫外線により硬化した樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインプリント用モールド。
- 離型用支持体上に設けられた繊維状構造体に、紫外線硬化樹脂を含ませて、
少なくとも、転写パターンが形成される領域にある前記繊維状構造体の空隙を、
前記紫外線硬化性樹脂で満たした後に、
前記繊維状構造体に、紫外線を透過する材料からなるモールド原版を密着し、
所定の圧力により押圧し、かつ、紫外線を所定量照射して、
前記繊維状構造体の表面に、
三次元形状の転写パターンを形成することを特徴とするインプリント用モールドの製造方法。 - 前記インプリント用モールドの製造方法において、前記繊維状構造体に表裏両側から紫外線を照射することを特徴とする請求項5に記載のインプリント用モールドの製造方法。
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