JP2013111104A - マイクロニードルデバイスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】成形材料として環状オレフィン系樹脂であるシクロオレフィンポリマーを用い、該環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度に加熱し、マイクロニードルデバイスの微細突起部形状の凹部を有する成形型部材をシクロオレフィンポリマーのガラス転移温度(Tg)以上の温度に加熱しながら、シクロオレフィンポリマーをプレス成形し、マイクロニードルデバイスを製造する。
【選択図】なし
Description
本発明は、具体的には、成形材料に環状オレフィン構造を有し、非晶性である環状オレフィン系樹脂を採用し、成形型部材に加熱加圧して充填することを特徴とする針状等の微細突起部を有するマイクロニードルデバイスの製造方法に関するものである。
そこで、非経口投与であって、苦痛が少なくかつ広範の薬剤にも利用できる皮膚から薬剤を投与する経皮投与が求められ、開発が進められている。
このため、経皮吸収型の薬理活性物質等は、比較的皮膚からの浸透性、透過性の高いものが選択されており、皮膚からの浸透性、透過性の低い薬理活性物質等の経皮投与への適用は難しいとされている。
クス材料と組み合わせた懸濁液をマイクロニードル型に流延し、遠心分離することにより先端部に高濃度で薬物が存在するマイクロニードルを製造し、乾燥させた後に剥離するキャスト法(特許文献2)が提案されている。
また、ポリ乳酸は、金属やその他の樹脂と密着しやすく、剥離が困難になることで高アスペクト比かつ、先端径が細い形状を製造する場合には、欠けや折れなどの不良が発生する場合が想定される。
特許文献3の手法では、型成形とは異なり、剥離による破損などの問題は生じないものの、生分解性ポリマーを溶融させ、溶融樹脂を伸展させて、先端部を針状にするもので、その形状は限定され、しかも、樹脂の吐出量、溶融樹脂の温度や粘度、基板と吐出ノズルの引き離し速度、製造時の環境条件など様々な条件を制御する必要があり、均一な形状の針の安定的な製造、さらには量産性も課題がある。
成形方法として、型に離型処理を特に行わず、成形材料及び又は成形型部材を加熱加圧して樹脂材料を成形型部材に充填するという簡易で、低コストである成形加工方式を適用し、微細突起部形状を容易に転写、成形し、離型すること、及び上記成形材料を充填する工程が、材料へ型を押し込むあるいは型へ材料を充填する際の圧力を比較的低圧条件で実施可能であること
を見出し、本発明に至った。
スペクト比の針状等の形状の微細突起部を正確かつ精密に成形することが可能となり、穿刺性の高いマイクロニードルデバイスを得ることができる。
また、製造時に、離型処理を行わない成形型部材を用いても十分に良好な形状に転写可能となり、しかも低圧充填処理でも良好に成形できることから、製造工程が少なく、製造効率のよい、低コストでのマイクロニードルデバイスが製造可能となる。
しかも、表面自由エネルギーが低く、水に対する接触角が高く、離型性にも優れていることから、離型処理などの前処理等を施す必要なく、マイクロニードルデバイスの微細突起部の先端部から基端部にかけて正確に形状を転写でき、かつ先端部の折損、欠損のないマイクロニードルデバイスを確実に簡易に製造できる。
なお、以下の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、当然のことながら、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
針状等の微細突起部の形状は、穿刺に好ましい形状であることが望ましい。しかし、針状等の微細突起部は、ミクロン単位の微細突起体であることから、その形状は、特に限定されず、例えば、円錐状又は角錐状などの各種錐形状、円柱状や角柱状などの柱状、及び
これらに準ずる形状であってよく、あるいは別の形状でもよい。
本発明の目的と合致する限り、微細突起部の形状・構造は、これに限定されない。
微細突起部の列は、列内の微細突起部の空間に対し実質等しい距離だけ離れているものであってもよいし、なんらかの規則性をもって配列されていてもよい。微細突起部は、例えば、格子状、最密充填配列、同心円状、ランダムなどの配列を採用できる。その配列の仕方は限定されない。
また、痛みを軽減する観点から、微細突起部の先端が鋭く尖った高さ、アスペクト比の構造であることが好ましい。
具体的には、微細突起部の高さは、100〜1000μmの範囲が好ましく、アスペクト比としては、1.5以上の微細突起部の形状であり、微細突起部の先端の径は、0.5〜50μm、より好ましくは20μm以下の細く鋭く尖った形状であることが好ましい。
基材の形状は、例えば、角板状、円板状などにすることができる。
しかしながら、本発明のように微細突起部を特定の成形材料を採用する場合、基材の材料として微細突起部を成形する材料と別材料を用いることが可能であり、例えば、合成樹脂、天然樹脂、金属、セラミックなど、公知の汎用される安価な材料を選択し、用いることができる。
ある。また、滅菌時に、変色や強度の劣化などが起きにくくなる。
の水素添加物などを挙げることができる。
環状オレフィン系樹脂100重量部に対して10から200重量部含有されるのが好ましい。
コーティングされた薬理活性物質等の薬剤は、本発明のマイクロニードルデバイスの製造方法により製造されたマイクロニードルデバイスを用い、皮膚の表皮に微細突起部に付着した薬剤が接触することにより皮膚に薬剤が付着し、表皮内へ浸透することにより所定の薬剤が投与される。
マスタ原版の作製工程は、樹脂又は金属を成形材料として用いて、機械切削加工、射出成型加工、ホットエンボス加工、放電加工、レーザー加工、ダイシング加工等の精密成形加工、シリコン基板を用いたウエットエッチング加工又はドライエッチング加工等の加工法を用いて、基板にリソグラフィ技術、ドライエッチングプロセスを用いて針状等の微細突起部となる凸部形状を形成してマスタブロックとすることができる。
凹部を有するマスタ原版の製造を転写方法により製造する方法を中心に説明してきたが、マイクロニードルデバイスのマスタ原版を製造する方法としては、成形型部材の基材ブロックに凸部形状を形成したマスタブロックを製造する加工法を用いて針状等の微細突起部となる凹部形状を直接加工して、成形型部材の凹部を形成してもよいことは当然のことである。
マスタ原版を作製することができる。
この成形法としては、例えば、ホットプレス(熱インプリント)法により加熱して軟化した成形材料と該成形型部材を押し当てて、微細突起部の形状を転写した凹部に成形材料を充填し、成形材料基板に微細突起部を成形する方法、成形材料と成形型部材を押し当てる際に、成形材料を真空又は減圧吸引しつつ該成形型部材の凹部に成形材料を充填する方法、あるいは、該マスタ原版の成形型部材凹部に溶融した成形材料を流し込むキャスティング方法、又は従来周知の射出成形法など、成形材料及び又は成形型部材をガラス転移温度(Tg)以上に加熱し、加圧して成形材料をマスタ原版の成形型部材の凹部に充填する成形法が広く適用できる。
該圧力として20MPaより高い圧力を加えても転写性が向上するものではなく、むしろ、成形材料と成形型部材との間の密着性が増し、離型時に微細突起部が折損、欠損することなく、離型し難くなる。また、本発明において、環状オレフィン系樹脂材料を成形材料として採用し、離型性を付与した効果を減殺する恐れがある。
該離型工程において、成形材料をガラス転移温度(Tg)以下に冷却せずに、成形時の温度に近い状態で離型しようとすると、成形材料と成形型部材との間の剥離性が十分でなく、正確に形状を転写した微細突起部の形状が崩れる恐れがある。
ガラス転移温度(針状等の微細突起部となる凸部形状を形成Tg)まで十分に冷却し、離型することにより成形材料の特性を生かし、微細突起部の形状が正確に転写され、寸法安定性が保持され、また、離型時の成形体と成形型部材の動きのぶれ等による変形も起こさず、スムーズに離型できる。
冷却の温度制御についても、冷媒として水冷、空冷いずれでもよく、冷媒の温度は、成形温度や冷却速度などにより適宜選択され得るもので、所定の温度に調整し、一定温度に正確に保持できるものであればよく、通常、10〜80℃である。公知の成形型の冷却制御機構を用いることができる。
イスの厚みを可変制御可能とすることで、マイクロニードルデバイスに剛直性やフレキシブル性を適宜変更して付与することが可能となる熱インプリント法が好ましい。
該熱インプリント法は、樹脂シートを軟化し、プレス成形することにより成形型部材に充填し、成形するものであり、溶融することによる樹脂が劣化するのを防ぐことができ、材料の変質を生じさせない成形法でもあることから、上記した賦形性、生産性だけでなく、医療用具としての材質の安全性、安定性においても優れた成形法であるため好ましい。
さらに、熱インプリント法では、成形条件として成形材料が軟化し、微細突起部形状に賦形できる状態にするようにガラス転移温度(Tg)以上に加熱するだけでよく、しかも、その賦形のために加える圧力も比較的低圧で済むことからも、好ましい成形法である。
本発明における実施例は、下記のように環状オレフィン系樹脂を成形材料とし、下記のとおり形成した、針状等の微細突起部を形成する凹部を有する成形型部材に充填し、マイクロニードルデバイスを成形する実験を行い、また、記載のような測定又は評価方法を用いて成形結果を測定又は観察を行い、評価した。
成形したマイクロニードルデバイスの微細突起部が、マスタ原版の凹部形状を正確に転写でき、成形した該微細突起部形状として正確に転写されていることを評価するためマイクロニードルデバイスの微細突起部の先端部の先端径を測定した。
その先端の観察には、使用装置として走査型電子顕微鏡(SEM)を用いる。ここでは、実施例に挙げた例を用いて先端平均径の求め方を示す。
実際に形成される四角錐の微細突起部の先端は、先端まで形成されず、又は折損、欠損して、理想的な三角形の直線から離れるように先端輪郭が形成される。そこで、先端径の測定方法として、図5(a)、(b)に示したSEM画像のように、まずは該実際に形成された微細突起部の四角錐の各面にて直線を延ばし、理想的な四角錐(各面に形成される形状は三角形となる)を想定し、先端部の先端径は理想的に成形された場合、ゼロとなるものとした。
直線の長さを先端部位における「先端径」と定義する。
同様にして、四角錐の他の辺の2直線の先端点もSEMを用いて観察し、1つの微細突起部について「先端点」を4つ求めることができる。こうして求めた4つの四角錐の各辺の先端点間の直線の長さを平均し、成形されたマイクロニードルデバイスの1つの微細突起部の「先端平均径」と定義した。
なお、マイクロニードルデバイスの微細突起部の形状として、各種形状のものを採用することができる。そのような各種形状の先端径の測定は、上記した方法を応用して適宜求めることができる。例えば、多角形錐体の場合の3角形の数がn個からなる多面体であるが、任意の4つあるいはn個などの3角形について、先端点、先端点間距離を求め先端平均径を求め、1つのマイクロニードルデバイスの微細突起部すべてについて同様に求め、平均し、平均先端径を求める。円錐の場合は、精度との兼ね合いで多方面からSEM画像を得て、投影3角形から上記と同様に求めることができる。長方形の四角錐ように底面形状が異形の場合は、同じような3角形が2組できることから、特異形状を特定する立体形状を構成する面毎に平均値を求め、複数の平均先端径の組み合わせとして微細突起部の成形できた先端径を特定することもできる。
成形材料の離型性を評価するため成形材料の表面自由エネルギーγsを求めた。
表面自由エネルギーは、液滴法により接触角計(協和界面科学(株)製:DM500)を用い、シート化した各成形材料に対する、気温25℃、湿度40%の条件下、水1.5μL、ジヨードメタン2.0μLおよびエチレングリコール2.0μLのそれぞれの接触角を測定し、それぞれの接触角の測定値から協和界面科学(株)製のソフトウェア(FAMAS)のkitazaki-Hata理論を用いて算出した。
マイクロニードルデバイスに形成された微細突起部の先端部を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて1500倍で観察し、成形した各マイクロニードルデバイスに形成された100本の微細突起部の先端部が欠損した本数を計数する方法により、同じ針状等の微細突起部となる凸部形状を形成材料で成形した別ロットのマイクロニードルデバイスについて5ロット測定し、その平均値を算出した。
本発明において、本発明の製造方法によるマイクロニードルデバイスの成形性、寸法安定性、機械的強度を測定、評価するために使用したマイクロニードルデバイスは、以下の公知の製造方法により製造した。
まず、アルミ金属板を切削加工にて底辺が0.25×0.25mm、高さ0.5mmの四角錘形状のニードルを1mmピッチで縦横に10本ずつ配置した100本のマイクロニードルのマスタ形状を作製した。該四角錐形状の微細突起部のマスタ形状の平均先端径は3.4μmである。
次に、作成したマイクロニードルデバイスのマイクロニードルの微細突起部を複製するために、作成したマスタを母型とし、該母型から複製原版を造るためニッケルを用いて電鋳を行い、該マスタ形状とは逆の凹版のマスタ原版を複製した。
本発明の実施例で用いるマイクロニードルデバイスの成形材料として、環状オレフィン系樹脂である、シクロオレフィンポリマーであるゼオノア(日本ゼオン社製:型番Zeonor 1060R)の厚さ2mmのシートを準備した。因みに、使用したシクロオレフィンポリマー1060Rはガラス転移温度:100℃、MFR:280℃、21.18N、60g/minである。
また、比較例で用いるマイクロニードルデバイスの成形材料として、ポリ乳酸(ユニチカ社製:テラマックTP−4000)のペレットを射出成形し、厚さ1mmのシートに成形したものを準備した。
(実施例1)
上記シクロオレフィンポリマーであるゼオノアシートをガラス転移温度(100℃)以上の120℃に加熱し、電鋳で作成した針状等の微細突起部形状の凹部を有するマスタ原版の成形型部材を、ガラス転移温度以上の120℃に加熱しながら、12MPaの圧力でゼオノアシートをプレス成形し、該加圧プレスした状態のまま成形型部材を冷却し、十分に室温付近まで温度が下がってから、垂直方向に剥離するホットプレス(熱インプリント)を実施することで、ゼオノア製のマイクロニードルを得た。
SEM写真(図1)から求められるように成形されたマイクロニードルデバイスの微細突起部の平均先端径は3.9μm、先端部の欠損はみられなかった。
プレスする圧力を2.4MPaとした以外は、実施例1と同じ条件でマイクロニードルデバイスを成形し、ゼオノア製のマイクロニードルデバイスを得た。
SEM写真(図2)から求められるように、成形されたマイクロニードルデバイスの微細突起部の平均先端径は5.8μm、先端部の欠損はみられなかった。
該ポリ乳酸のシートをガラス転移温度以上の90℃に加熱したポリ乳酸のシートを、電鋳で複製した該マスタ原版の成形型部材をガラス転移温度以上の90℃に加熱しながら重ね合わせ、前記ポリ乳酸の基材に対して熱をかけながらプレス成形し、該加圧プレスした状態のまま成形型部材を徐冷し、室温付近まで温度が下がってから、垂直方向に剥離することで、ポリ乳酸からなるマイクロニードルデバイスを得た。
SEM写真(図3)から求められるように成形されたマイクロニードルデバイスの微細突起部の平均先端径は24.2μm、先端部の欠損は平均で12本みられた。
プレスする圧力を2.4MPaとした以外は、比較例1と同じ条件で製造し、ポリ乳酸製のマイクロニードルデバイスを得た。
SEM写真(図4)にみられるように成形されたマイクロニードルデバイスの微細突起部の先端径は、先端平均径200μm以上で微細突起部の先端部がほとんど成形できなかった。
上記本発明の実施例及び比較例に示したマイクロニードルデバイスの製造方法による針状等の微細突起部の成形性、寸法安定性及び歩留まりについて、微細突起部の形成状態を上記測定方法又は評価方法に従い測定し、それぞれの評価を行った。
〜4に示した。
また、先端部の欠損の結果から、比較例1では成形できたものの12本の欠損が観察され、ポリ乳酸のマイクロニードルデバイスは、成形時、先端部まで樹脂が侵入できないにもかかわらず、成形できた微細突起部が、離型時に微細突起部の先端部で折れを生じていることがわかる。これは、成形材料の表面自由エネルギーを比較すると明らかなとおり、結晶性のポリ乳酸は非晶性のシクロオレフィンポリマーと比較して、表面自由エネルギーが高く、成形型部材とポリ乳酸との密着性が強く、高アスペクト比の微細突起部の先端や根元で剥がれ難く、欠けや折れが発生し易くなっているためと考えられる。
マイクロニードルデバイスを製造する熱インプリント法等は、成形性及び離型性に優れた経皮吸収に有効に機能できるマイクロニードルデバイスを、安定的に製造できる方法である。
得られたマイクロニードルデバイスは、マイクロニードルデバイス上の微細突起部の先端部形状が正確に転写でき、穿刺性の優れた経皮吸収効率を発揮できるものである。
本発明の環状オレフィン系樹脂製のマイクロニードルデバイスの製造方法は形状及び構造が異なる微細突起部を有するマイクロニードルデバイスの製造及びその用途に広く用いることができる。
Claims (6)
- 少なくとも環状オレフィン構造を有し、非晶性である環状オレフィン系樹脂を含む成形材料を準備し、該成形材料及び又は微細突起部形状の凹部を有する成形型部材を成形材料のガラス転移温度(Tg)以上に加熱し、加圧下、成形型部材に該成形材料を充填し、ガラス転移温度(Tg)以下まで冷却後、離型することを特徴するマイクロニードルデバイスの製造方法。
- 成形材料を充填する工程において、充填する圧力が20MPa以下である請求項1に記載のマイクロニードルデバイスの製造方法。
- 環状オレフィン系樹脂の表面自由エネルギーが42mJ/m2以下である請求項1又は2に記載のマイクロニードルデバイスの製造方法。
- 環状オレフィン系樹脂が、少なくとも環状オレフィン構造を有し、非晶性であるシクロオレフィンポリマー(COP)又はシクロオレフィン共重合体(COC)である請求項1〜3のいずれか1項に記載のマイクロニードルデバイスの製造方法。
- 成形材料を充填する工程が、熱インプリント法である請求項1〜4のいずれか1項に記載のマイクロニードルデバイスの製造方法。
- 前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の、平均先端径20μm以下であるマイクロニードルデバイス。
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