JP5343432B2 - タールからの有価金属回収方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、オイルサンドやペトロコーク、オリノコタール等の炭素を多く含む石油系の未利用資源に含まれるニッケル及びバナジウム等の有価金属を効果的に別個に回収するようにしたタールからの有価金属回収方法に関するものである。
従来、オイルサンドやペトロコーク、オリノコタール等の炭素を多く含む石油系未利用資源は、有価金属であるニッケルNi及びバナジウムVを他の重金属に比して多く含む特徴を有しているが、燃焼時に金属製機器に悪影響を及ぼす硫黄も多く含んでいるため、単純に燃焼させてその熱を有効利用するには問題があり、よってニッケルやバナジウムを多く含んでいるにもかかわらず、未燃焼のまま放置されているのが現状である。
近年において、上記したような石油系未利用資源からニッケルなどの有価金属を回収しようとする試みが成されており、一例として、石油系未利用資源を部分酸化するガス化炉本体から排出される未反応物と気相からの析出物をポーラスフィルタで分離し、別置きの燃焼/ガス化炉へ導いて熱又は高カロリーガスとしてエネルギを回収し、燃焼/ガス化炉からの排ガスを通過させる水浴をこの燃焼/ガス化炉の下方に設けて未燃焼分に含まれている金属を分離するようにしたガス化装置がある(例えば、特許文献1参照)。
特開平7−150148公報
しかし、上記ガス化装置では、燃焼/ガス化炉からの排ガスを水浴を通過させることで、未燃焼分に含まれている金属を回収するのみであるため、重金属類やアルカリ金属類を主成分とする化合物を回収することはできるものの、特定の有価金属を別個に分離して回収することはできない。従って、複数種の金属が混在した状態の化合物を回収することができても、特定の有価金属を分離して取り出すためには多大な手間がかかり、よって、特定の有価金属を回収して利用するには至っていないのが現状である。
本発明は、上記した課題を解決するためになされたもので、例えば、オイルサンドやペトロコーク、オリノコタール等の炭素を多く含む石油系の未利用資源に含まれるニッケル及びバナジウム等の有価金属を効果的に別個に回収できるようにしたタールからの有価金属回収方法を提供することを目的としている。
石油系未利用資源をガス化して生成されるガスを冷却することによりニッケル及びバナジウムを含むタールを回収するタール回収工程と、
回収したタールを第1酸液で処理することによりニッケル及びバナジウムを第1酸液側に溶解させ、これによってニッケル及びバナジウムが溶解した第1酸液とタールとに比重差分離する第1分離工程と、
第1分離工程で分離したニッケル及びバナジウムが溶解した第1酸液を抽出剤で抽出することによりバナジウムを抽出剤側に移行させ、バナジウムを含む抽出剤とニッケルを含む第1酸液とに比重差分離する第2分離工程と、
第2分離工程で分離した第1酸液を濃縮してニッケルを得るニッケル分離工程と、
第2分離工程で分離した抽出剤を第2酸液で再抽出することによりバナジウムを第2酸液側に溶解させ、バナジウムを含む第2酸液と抽出剤とに比重差分離する第3分離工程と、
第3分離工程で分離した第2酸液を濃縮してバナジウムを得るバナジウム分離工程と、
を有することを特徴とするタールからの有価金属回収方法、に係るものである。
上記タールからの有価金属回収方法において、第1分離工程でタールを回収しガス化の原料に供することは好ましい。
又、上記タールからの有価金属回収方法において、ニッケル分離工程で第1酸液を回収し第1分離工程でのニッケル及びバナジウムの溶解に供することは好ましい。
又、上記タールからの有価金属回収方法において、第3分離工程で抽出剤を回収し第2分離工程でのバナジウムの抽出に供することは好ましい。
又、上記タールからの有価金属回収方法において、バナジウム分離工程で第2酸液を回収し第3分離工程でのバナジウムの再抽出に供することは好ましい。
又、上記タールからの有価金属回収方法において、抽出剤が、リン系抽出剤であることは好ましい。
又、上記タールからの有価金属回収方法において、リン系抽出剤が、ジイソデシルリン酸であることは好ましい。
又、上記タールからの有価金属回収方法において、タールが、石油系未利用資源を水蒸気ガス化設備でガス化し生成したガス化ガスを冷却することによって得られることは好ましい。
請求項1に係る発明によれば、石油系未利用資源をガス化して生成されるガスを冷却することによりニッケル及びバナジウムを含むタールを回収するタール回収工程と、回収したタールを第1酸液で処理することによりニッケル及びバナジウムを第1酸液側に溶解させ、これによってニッケル及びバナジウムが溶解した第1酸液とタールとに比重差分離する第1分離工程と、第1分離工程で分離したニッケル及びバナジウムが溶解した第1酸液を抽出剤で抽出することによりバナジウムを抽出剤側に移行させ、バナジウムを含む抽出剤とニッケルを含む第1酸液とに比重差分離する第2分離工程と、第2分離工程で分離した第1酸液を濃縮してニッケルを得るニッケル分離工程と、第2分離工程で分離した抽出剤を第2酸液で再抽出することによりバナジウムを第2酸液側に溶解させ、バナジウムを含む第2酸液と抽出剤とに比重差分離する第3分離工程と、第3分離工程で分離した第2酸液を濃縮してバナジウムを得るバナジウム分離工程とを有しているので、石油系未利用資源からニッケルとバナジウムを別個に高濃度で回収できる効果がある。
つまり、従来成す術なく放置されていた石油系未利用資源中のニッケルとバナジウムを容易且つ迅速にそして高純度で回収することができる。
請求項2に係る発明によれば、第1分離工程で回収したタールはガス化の原料として用いることができる。
請求項3に係る発明によれば、ニッケル分離工程において回収した第1酸液は第1分離工程でのニッケル及びバナジウムの溶解に用いることができる。
請求項4に係る発明によれば、第3分離工程において回収した抽出剤は第2分離工程でのバナジウムの抽出に用いることができる。
請求項5に係る発明によれば、バナジウム分離工程において回収した第2酸液は第3分離工程でのバナジウムの再抽出に用いることができる。
請求項6及び7に係る発明によれば、抽出剤にはリン系抽出剤を用いることかでき、更にジイソデシルリン酸を用いることによりバナジウムを効果的に抽出することができる。
請求項8に係る発明によれば、石油系未利用資源を水蒸気ガス化設備でガス化し生成したガス化ガスを冷却することにより二次的に得られるタールから、ニッケルとバナジウムを効果的に回収することができる。
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1は、石油系未利用資源から有価金属を回収する本発明の方法を実施する形態の一例を示しており、この形態では、石油系未利用資源であるペトロコークを原料として水蒸気ガス化を行う水蒸気ガス化設備から導出されるガス化ガスに含まれるタールからニッケル及びバナジウムの二種類の金属を別個に回収する場合を示している。
図1に示す水蒸気ガス化設備1は、水蒸気供給源2からの水蒸気を下部から導入し且つ資源供給部3により石油系未利用資源であるペトロコーク(原料)を供給してこの原料に含まれる有機物を水蒸気ガス化すると共に有機物に結合しているニッケル及びバナジウムを揮発させる流動層ガス化炉4と、この流動層ガス化炉4で生じたガス化ガス5を水と接触させて冷却し、ニッケル及びバナジウムを含有するタールを分離するためのガス精製装置としてのスクラバー6とを有している。スクラバー6ではスプレーノズル7から水を噴射して前記ガス化ガス5を冷却することによりタールを除去するようにしている。
又、この水蒸気ガス化設備1は、流動層ガス化炉4でガス化されなかった未反応の炭素(チャー)を導入可能とした燃焼炉8を備えている。この燃焼炉8には循環媒体としての砂が収容してあり、酸素供給源9から所定量の例えば空気を導入して上記チャーを燃焼させると共に、流動媒体を加熱するようにしている。
更に、この水蒸気ガス化設備1は、燃焼炉8からの燃焼ガス10を導入して循環媒体11を補集すると共に排ガス12を排出する分離器13を備えており、捕集された高温の循環媒体11は前記流動層ガス化炉4に戻すようにしている。この水蒸気ガス化設備1では、流動層ガス化炉4において循環媒体11が有する熱を用いて原料を加熱することにより水蒸気ガス化させてガス化ガス5を得るようにしており、この時原料に含まれるニッケル及びバナジウムは揮発してタールとしてガス化ガス5と共に導出され、スクラバー6によって補集されるようになっている。
前記スクラバー6で回収されたニッケル及びバナジウムを含むタールと水とが混合したタール混合水T'は、タール取出タンク14に供給して水とタールTとに分離するようにしている(タール回収工程)。タール取出タンク14で分離された上澄みは冷却水として前記スクラバー6のスプレーノズル7に供給することができる。
タール取出タンク14で分離されたタールTは、例えば硝酸、硫酸等の第1酸液15が供給された第1分離器16に供給される。第1分離器16では、タールTに含まれるニッケルNi及びバナジウムVが第1酸液15側に溶解され、よってニッケルNi及びバナジウムVが溶解した第1酸液15'とタールTとに比重差分離されるようになっている(第1分離工程)。第1分離器16で分離されたタールTは、前記流動層ガス化炉4の原料として供給することができる。
前記第1分離器16で分離されたニッケルNi及びバナジウムVが溶解した第1酸液15'は、抽出剤17が供給された第2分離器18に供給される。第2分離器18に供給される抽出剤17には、リン系抽出剤を用いることができ、例えばジイソデシルリン酸(DIDPA)が用いられる。第2分離器18では、抽出剤17による抽出によってバナジウムVのみが抽出剤17側に移行し、これにより、バナジウムVを含む抽出剤17'とニッケルNiを含む第1酸液15"とに比重差分離されるようになっている(第2分離工程)。
第2分離器18で分離されたニッケルNiを含む第1酸液15"は、蒸発器19に供給して加熱することにより濃縮したニッケルNiを取り出せるようになっている(ニッケル分離工程)。
蒸発器19の加熱で蒸発した第1酸液15は冷却器20により冷却され、冷却した第1酸液15は前記第1分離器16に供給することができる。この時、第1分離器16に供給する第1酸液15はpH調節器21によってpHを調整するようにしている。
第2分離器18で分離されたバナジウムVを含む抽出剤17'は、例えば硝酸、硫酸等の第2酸液22が供給された第3分離器23に供給される。第3分離器23では、抽出剤17'含まれるバナジウムVが第2酸液22による再抽出によって第2酸液22側に溶解され、これによって、バナジウムVを含む第2酸液22'と抽出剤17とに比重差分離されるようになっている(第3分離工程)。第3分離器23で分離された抽出剤17は第2分離器18に供給することかできる。
第3分離器23で分離したバナジウムVを含む第2酸液22'は、蒸発器24に供給して加熱することにより濃縮したバナジウムVを取り出せるようになっている(バナジウム分離工程)。
蒸発器24の加熱で蒸発した第2酸液22は冷却器25により冷却され、冷却した第2酸液22は前記第3分離器23に供給することができる。この時、第3分離器23に供給する第2酸液22はpH調節器26によってpHを調整するようにしている。
以下、図1の形態の作用を説明する。
本発明者らは、図1の水蒸気ガス化設備1の流動層ガス化炉4を大気圧で約830℃に設定して、この水蒸気ガス化設備1を作動させたところ、図2に示すように、バナジウムVが約60%揮発し、ニッケルNiが約55%揮発することを得、更に、これらの有価金属はタールの状態でガス化ガス5と共に流動層ガス化炉4から導出されることを得た。図2中Cはガス化されずに流動層ガス化炉4内に残る炭素である。
従って、前記スクラバー6で回収されるタールには、石油系未利用資源が含有していたニッケルの約55%及びバナジウムの約60%が含まれているので、スクラバー6で回収したタールと水とが混合したタール混合水T'は、先ずタール取出タンク14に供給して水とタールTとに分離する(タール回収工程)。この時、タール取出タンク14で分離された上澄みは冷却水として前記スクラバー6のスプレーノズル7に供給することにより再利用される。
タール取出タンク14で分離したタールTは、例えば硝酸からなる第1酸液15が供給された第1分離器16に供給することにより、タールTに含まれるニッケルNi及びバナジウムVを第1酸液15側に溶解させる。これにより、第1分離器16では、ニッケル及びバナジウムが溶解した第1酸液15'とタールTとに比重差分離される(第1分離工程)。第1分離器16で分離されたタールTは、前記流動層ガス化炉4の原料として供給される。
前記第1分離器16で分離したニッケルNi及びバナジウムVが溶解された第1酸液15'は、例えばジイソデシルリン酸(DIDPA)からなる抽出剤17が供給された第2分離器18に供給され、抽出剤17の抽出によってバナジウムVのみが抽出剤17側に移行される。これにより、第2分離器18では、バナジウムVを含む抽出剤17'とニッケルNiを含む第1酸液15"とに比重差分離される(第2分離工程)。
第2分離器18で分離されたニッケルNiを含む第1酸液15"は、蒸発器19に供給され、加熱により濃縮されてニッケルNiが取り出される(ニッケル分離工程)。これにより、前記タールTに含まれていたニッケルNiの略全量を回収することかできる。
蒸発器19の加熱によって蒸発した第1酸液15は冷却器20により冷却され、冷却した第1酸液15はpH調節器21によってpHが調整された後、前記第1分離器16に供給される。
第2分離器18で分離したバナジウムVを含む抽出剤17'は、例えば硝酸からなる第2酸液22が供給された第3分離器23に供給され、抽出剤17'に含まれるバナジウムVが第2酸液22による再抽出によって第2酸液22側に溶解される。これにより、第3分離器23では、バナジウムVを含む第2酸液22'と抽出剤17とに比重差分離される(第3分離工程)。第3分離器23で分離された抽出剤17は第2分離器18に供給される。
第3分離器23で分離したバナジウムVを含む第2酸液22'は、蒸発器24に供給して加熱により濃縮されてバナジウムVが取り出される(バナジウム分離工程)。これにより、前記タールTに含まれていたバナジウムVは、略全量を回収することかできる。
蒸発器24の加熱によって蒸発した第2酸液22は冷却器25により冷却され、冷却した第2酸液22はpH調節器26によってpHが調整された後、前記第3分離器23に供給される。
上記したように、本発明のタールからの有価金属回収方法によれば、石油系未利用資源をガス化する際に二次的に生じるタールからニッケルとバナジウムを別個にしかも連続的に高濃度で回収することができる。
つまり、従来成す術なく放置されていた石油系未利用資源中のニッケルとバナジウムを容易且つ迅速にそして高純度で回収することができる。
なお、上記した実施形態では、未利用資源として石油系未利用資源であるペトロコークからニッケル及びバナジウムを回収する場合を例に挙げて説明したが、上記以外の種々の石油系未利用資源からの有価金属の回収にも適用できること、石油系未利用資源をガス化する種々のガス化設備において適用できること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更し得ることは勿論である。
本発明に係る石油系未利用資源を用いたタールからの有価金属回収方法の一例を示す概略構成説明図である。 図1における石油系未利用資源による有価金属の揮発率を示すグラフである。
符号の説明
1 水蒸気ガス化設備
5 ガス化ガス
6 スクラバー
14 タール取出タンク
15 第1酸液
15' 第1酸液(含Ni,V)
15" 第1酸液(含Ni)
16 第1分離器
17 抽出剤(リン系抽出剤)
17' 抽出剤(含V)
18 第2分離器
19 蒸発器
22 第2酸液
22' 第2酸液(含V)
23 第3分離器
24 蒸発器
T タール

Claims (8)

  1. 石油系未利用資源をガス化して生成されるガスを冷却することによりニッケル及びバナジウムを含むタールを回収するタール回収工程と、
    回収したタールを第1酸液で処理することによりニッケル及びバナジウムを第1酸液側に溶解させ、これによってニッケル及びバナジウムが溶解した第1酸液とタールとに比重差分離する第1分離工程と、
    第1分離工程で分離したニッケル及びバナジウムが溶解した第1酸液を抽出剤で抽出することによりバナジウムを抽出剤側に移行させ、バナジウムを含む抽出剤とニッケルを含む第1酸液とに比重差分離する第2分離工程と、
    第2分離工程で分離した第1酸液を濃縮してニッケルを得るニッケル分離工程と、
    第2分離工程で分離した抽出剤を第2酸液で再抽出することによりバナジウムを第2酸液側に溶解させ、バナジウムを含む第2酸液と抽出剤とに比重差分離する第3分離工程と、
    第3分離工程で分離した第2酸液を濃縮してバナジウムを得るバナジウム分離工程と、
    を有することを特徴とするタールからの有価金属回収方法。
  2. 第1分離工程においてタールを回収しガス化の原料に供する請求項1に記載のタールからの有価金属回収方法。
  3. ニッケル分離工程において第1酸液を回収し第1分離工程でのニッケル及びバナジウムの溶解に供する請求項1又は2に記載のタールからの有価金属回収方法。
  4. 第3分離工程において抽出剤を回収し第2分離工程でのバナジウムの抽出に供する請求項1〜3のいずれか1つに記載のタールからの有価金属回収方法。
  5. バナジウム分離工程において第2酸液を回収し第3分離工程でのバナジウムの再抽出に供する請求項1〜4いずれか1つに記載のタールからの有価金属回収方法。
  6. 抽出剤はリン系抽出剤である請求項1〜5のいずれか1つに記載のタールからの有価金属回収方法。
  7. リン系抽出剤はジイソデシルリン酸である請求項6に記載のタールからの有価金属回収方法。
  8. タールが、石油系未利用資源を水蒸気ガス化設備でガス化し生成したガス化ガスを冷却することによって得られる請求項1〜7のいずれか1つに記載のタールからの有価金属回収方法。
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