JP5342470B2 - 電界放射型電子源およびそれを用いた発光装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電界放出により電子を放射する電界放射型電子源およびそれを用いた発光装置に関するものである。
従来より、加速されたホットエレクトロンが表面電極をトンネルして放出されるMIM(Metal InsulatorMetal)型、MOS(Metal Oxide Semiconductor)型やBSD(Ballistic electron Surface-emittingDevice)型などの平面型の電界放射型電子源が知られている。
この種の電界放射型電子源としては、たとえば、下部電極と、該下部電極に対向する表面電極と、上記下部電極と上記表面電極との間に介在し上記下部電極と上記表面電極との間に上記表面電極を高電位側とした電圧を印加したときに作用する電界により電子が通過する電子通過層とを備え、該電子通過層を通過した電子が上記表面電極を通して放出されるものが知られている(たとえば、特許文献1を参照。)。
図4に示すBSD型の電界放射型電子源10’では、絶縁性の基板1の一表面側に形成された下部電極2と、該下部電極2に対向する表面電極4’との間に介在する電子通過層3’が、ノンドープの多結晶シリコン層31上に酸化した多孔質多結晶シリコンよりなる強電界ドリフト層32を備え、該強電界ドリフト層32が図示していないナノメータオーダの多数のシリコン微結晶と各シリコン微結晶それぞれの表面に形成されシリコン微結晶の結晶粒径よりも小さな膜厚の多数のシリコン酸化膜からなる絶縁膜とを有している。また、電界放射型電子源10’の表面電極4’は、強電界ドリフト層32上に積層された導電性炭化物層41と、導電性炭化物層41に積層された貴金属層42との多層膜に構成している。
電界放射型電子源10’は、表面電極4’を真空中に配置するとともに表面電極4’に対向してコレクタ電極(図示していない)を配置し、表面電極4’と下部電極2との間に表面電極4’を高電位側として直流電圧を印加させるとともに、上記コレクタ電極と表面電極4’との間に上記コレクタ電極を高電位側として直流電圧を印加させることにより、下部電極2側から注入された電子が、多結晶シリコン層31上の強電界ドリフト層32をドリフトし表面電極4’を通して放出される。
通常、電界放射型電子源10’の表面電極4’は、表面が酸化などの変質を起こすと電子放出効率が減少するので、化学的に安定な金属(たとえば、Auなどの貴金属)が採用されている。また、表面電極4’は、表面電極4’の膜厚を電子を透過しやすい厚さ(たとえば、10nm程度)に設定させている。
しかしながら、電界放射型電子源10’は、真空封止して使用される場合が多い。電界放射型電子源10’は、組立時の真空封止工程などの熱工程によって、表面電極4’として一般的に用いられているAu薄膜では400℃以上の温度領域で凝集が起こり、膜厚の均一性の低下および膜連続性の低下を引き起こす。そのため、電界放射型電子源10’は、表面電極4’の抵抗値が上昇し、結果的にエミッション特性(放出電子電流密度、電子放出効率、電子エネルギーなど)が低下してしまう場合がある。このような凝集の起こりにくい金属材料としては、WやAlなどが知られているが、表面電極4’としてWやAlを用いた電界放射型電子源10’は、表面電極4’の表面が酸化されやすく、電子放出効率が低くなってしまう。また、製造プロセスの途中などに電子通過層3’から表面電極4’が剥離してしまうと、歩留まりが低下してコストが増加したり、経時安定性および信頼性が低下してしまう。
また、製造プロセスの途中などに電子通過層3’から表面電極4’が剥離してしまうと、歩留まりが低下してコストが増加したり、経時安定性および信頼性が低下してしまう。
図4に示す、電界放射型電子源10’では、強電界ドリフト層32上に積層された導電性炭化物層41と、導電性炭化物層41に積層された貴金属層42との多層膜に表面電極4’を構成することで、エミッション特性の低下を抑制しながらも耐熱性を向上させることができる、としている。
特開2003−187688号公報
ところで、電界放射型電子源10’における表面電極4’を強電界ドリフト層32上に積層された導電性炭化物層41と、導電性炭化物層41に積層された貴金属層42との多層膜に構成することで、エミッション特性の低下を抑制しながらも耐熱性を向上させることができるものの、表面電極4’の膜厚は、電子を透過させるために数nmや十数nmでしかなく、制御性よく成膜することが難しいことに変わりはない。
また、上述のBSD型の電界放射型電子源10’と同様、MIM型、MOS型などの平面型の電界放射型電子源では、電子通過層で加速されたホットエレクトロンが表面電極4’をトンネルして放射される。そのため、いずれの電界放射型電子源においても表面電極4’の膜厚は、電界放射型電子源のエミッション特性に対して特に大きな影響を与える。すなわち、表面電極4’の膜厚を薄くするほど、表面電極4’での電子のトラップが減少し、エミッション特性は向上する。
しかしながら、更なるエミッション特性の向上ために表面電極4’の膜厚をより薄くすると、成膜プロセスの製造ばらつきなどによって表面電極4’が薄くなりすぎたり、表面電極4’の形成後の熱プロセスの影響によって表面電極4’が凝集したりして、表面電極4’の導通がとれなくなるという問題が再び顕在化する傾向にある。また、表面電極4’が断線すると電界放射型電子源10’として全く機能しなくなる恐れがあり、信頼性の高い電界放射型電子源10’を量産性よく製造することは難しい。
すなわち、表面電極4’の膜厚を厚く形成すれば、信頼性を向上させることができるものの、更なるエミッション特性の向上を図ることが難しいというトレードオフの関係となる。特に、電子放射型電子源10’を電子放射型電子源10’から放射した電子で蛍光体層を発光させる発光装置に用い、該発光装置を光出力のより高い照明器具への応用を考慮すると、上記構成の電界放射型電子源10’だけでは十分ではなく更なる改良が求められている。
本発明は、上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、エミッション特性の向上を図りつつ、より信頼性の高い電界放射型電子源およびそれを用いた発光装置を提供することにある。
上記課題を解決するために第1の発明は、下部電極と、該下部電極に対向する表面電極と、前記下部電極と前記表面電極との間に介在し前記下部電極と前記表面電極との間に電圧を印加したときに作用する電界により電子が通過する電子通過層とを備え、前記電子通過層を通過した電子が前記表面電極を通して放出される電界放射型電子源であって、前記表面電極は、前記電子通過層と接する最下部と、前記電子通過層から最も離れた最上部とを備えた少なくとも2層以上の多層膜からなり、前記最下部が前記最上部よりも前記電子通過層との密着性の良い第1の材料からなるとともに、前記最上部が前記最下部よりも電子透過率の高い第2の材料からなり、前記最上部と前記最下部の膜厚を前記表面電極の主表面に沿った方向において、互いに逆方向に連続的または段階的に変化させてなることを特徴とする。
第2の発明は、下部電極と、該下部電極に対向する表面電極と、前記下部電極と前記表面電極との間に介在し前記下部電極と前記表面電極との間に電圧を印加したときに作用する電界により電子が通過する電子通過層とを備え、前記電子通過層を通過した電子が前記表面電極を通して放出される電界放射型電子源であって、前記表面電極は、少なくとも前記電子通過層との密着性が良い第1の材料と、該第1の材料よりも電子透過率の高い第2の材料との合金であり、前記第1の材料と第2の材料との合金比率を前記表面電極の主表面に沿った方向において、連続的または段階的に変化させてなることを特徴とする。
第3の発明は、上記第1の発明または上記第2の発明において、前記表面電極は、前記第1の材料がCrまたはTiであり、前記第2の材料がAuであることを特徴とする。
第4の発明は、下部電極と、該下部電極に対向する表面電極と、前記下部電極と前記表面電極との間に介在し前記下部電極と前記表面電極との間に電圧を印加したときに作用する電界により電子が通過する電子通過層とを備え、前記電子通過層を通過した電子が前記表面電極を通して放出される電界放射型電子源であって、前記表面電極は、化合物からなり、該化合物の組成比を前記表面電極の主表面に沿った方向において、連続的または段階的に変化させてなることを特徴とする。
第5の発明は、上記第4の発明において、前記化合物は、導電性窒化物であることを特徴とする。
第6の発明は、上記第5の発明において、前記導電性窒化物は、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、窒化ニオブ、窒化タンタルから選択される1種からなることを特徴とする。
第7の発明は、上記第1の発明ないし上記第6の発明のいずれかにおいて、絶縁性の基板の一表面側に前記下部電極が形成されているとともに、前記電子通過層は、強電界ドリフト層を備え、該強電界ドリフト層がナノメータオーダの多数の半導体微結晶と各半導体微結晶それぞれの表面に形成され半導体微結晶の結晶粒径よりも小さな膜厚の多数の絶縁膜とを有し、前記下部電極と前記表面電極との間に前記表面電極を高電位側として電圧を印加することにより前記下部電極から注入された電子が前記強電界ドリフト層をドリフトし前記表面電極を通して放出されることを特徴とする。
第8の発明は、上記第1の発明ないし上記第7の発明のいずれかに記載の電界放射型電子源と、Xeガスが封入され少なくとも一部が透光性材料により形成された気密容器と、該気密容器内においてXeガスを直接励起させる電子を供給する前記電界放射型電子源と対向配置されたコレクタ電極と、前記気密容器の内面側に配置され励起されたXeガスの発光過程で放射される励起光によって励起され蛍光を発する蛍光体を有する蛍光体層と、前記電界放射型電子源へ供給する電圧および前記コレクタ電極と前記電界放射型電子源との間の電圧を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする。
上記第1の発明は、エミッション特性の向上を図りつつ、より信頼性を高い電界放射型電子源とすることが可能になるという効果がある。
上記第2の発明は、エミッション特性の向上を図りつつ、より信頼性を高い電界放射型電子源とすることが可能になるという効果がある。
上記第4の発明は、エミッション特性の向上を図りつつ、より信頼性を高い電界放射型電子源とすることが可能になるという効果がある。
上記第8の発明では、エミッション特性の向上を図りつつ、より信頼性を高い発光装置とすることが可能になるという効果がある。
実施形態1の発光装置を示し、(a)は模式的断面図、(b)は電界放射型電子源の要部模式断面図である。 同上の発光装置に用いられる電界放射型電子源の他の要部模式断面図である。 同上の発光装置に用いられる電界放射型電子源の別の要部模式断面図である。 従来の電界放射型電子源の模式的断面図である。
(実施形態1)
以下、本実施形態の発光装置を図1ないし図3に基づいて説明する。
本実施形態の図1(a)に示す発光装置20は、Xeガスが封入され少なくとも一部が透光性材料により形成された気密容器21と、該気密容器21内においてXeガスを直接励起させる電子を供給する電界放射型電子源10と対向配置された透光性電極(たとえば、ITO膜など)からなるコレクタ電極23と、気密容器21の内面側に配置され励起されたXeガスの発光過程で放射される励起光によって励起され発光する蛍光体を有する蛍光体層24とを備えている。また、発光装置20は、駆動用電源Vpsから電界放射型電子源10の表面電極4(上部電極)と下部電極2との間へ供給する電圧およびコレクタ電極用電源Vaからコレクタ電極23と電界放射型電子源10の表面電極4との間へ供給する電圧を制御する制御手段25aを有する制御装置25とを備えている。
また、発光装置20の電界放射型電子源10は、図1(b)に示すように、下部電極2と、該下部電極2に対向する表面電極4と、下部電極2と表面電極4との間に介在し下部電極2と表面電極4との間に電圧を印加したときに作用する電界により電子が通過する電子通過層3とを備え、電子通過層3を通過した電子が表面電極4を通して放出されるものである。また、表面電極4は、電子通過層3と接する最下部41と、電子通過層3から最も離れた最上部42とを備えた少なくとも2層以上の多層膜からなっている。最下部41は、最上部42よりも電子通過層3との密着性の良い第1の材料(たとえば、CrやTiなど)であるとともに、最上部42が上記第1の材料よりも電子透過率の高い第2の材料(たとえば、Au)であって、最上部42と最下部41の膜厚を互いに逆方向に連続的に変化させてなる。ここで、表面電極4のトータル膜厚は、表面電極4の主表面に沿った方向において、略一定にしている。したがって、最下部41と最上部42との界面となる最下部41の表面4aは、電子通過層3に対して傾斜しているものの、最上部42の表面42aは、電子通過層3と略平行となっている。
本実施形態の発光装置20に用いられる電界放射型電子源10は、BSD型、すなわち弾道電子面放出型電子源であり、絶縁性の基板(たとえば、ガラス基板やセラミック基板)1の一表面1a側に下部電極2が形成されているとともに、電子通過層3が、強電界ドリフト層32(図2を参照)となっている。電界放射型電子源10は、より詳細な図2で例示するように、強電界ドリフト層がナノメータオーダの多数の半導体微結晶313と各半導体微結晶313それぞれの表面に形成され半導体微結晶313の結晶粒径よりも小さな膜厚の酸化膜よりなる多数の絶縁膜314とを有している。
電界放射型電子源10は、下部電極2と表面電極4との間に表面電極4を高電位側となるように駆動用電源Vpsから電圧を印加することにより下部電極2から注入された電子eが強電界ドリフト層32をドリフトし表面電極4を通して放出する。
ここで、発光装置20の制御装置25における駆動用電源Vpsから電界放射型電子源10の表面電極4と下部電極2との間に表面電極4側を高電位とする10〜20V程度の電圧を印加することにより、電界放射型電子源10は電子eを放出することができる。また、制御装置25によってコレクタ電極用電源Vaからコレクタ電極23と電界放射型電子源10の表面電極4との間にコレクタ電極23を高電位側とする電圧を印加させることで、発光装置20は、電界放射型電子源10から放出された電子eを、コレクタ電極23と表面電極4との間の電界によって加速させて、コレクタ電極23と表面電極4との間に存在するXeガスの原子に衝突させることができる。
電子eが衝突されたXeガスは、電子eによって励起され、Xeガスの発光過程で励起光たる紫外線を放射する。紫外線は、蛍光体層24の蛍光体で可視光に波長変換され気密容器21を通して外部に放射される。なお、図1および図2中の直線の矢印は、電界放射型電子源10から放出される電子eを示し、図1中の波線の矢印は励起されたXeガスが基底状態に戻る過程(発光過程)で放射される紫外線を例示している。
なお、気密容器21は、透光性材料(たとえば、ガラスなど)からなる矩形板状のリヤプレート26と、リヤプレート26の一表面26a側と対向配置された透光性材料(たとえば、ガラスなど)からなる矩形板状のフェースプレート22と、リヤプレート26とフェースプレート22との間に介在する矩形枠状のスペーサ27とで構成されている。また、リヤプレート26の上記一表面26a側に上述した電界放射型電子源10が配置されている。フェースプレート22における電界放射型電子源10との対向面側は、コレクタ電極23が形成され、コレクタ電極23における電界放射型電子源10との対向面側に蛍光体層24が形成されている。
なお、気密容器21の形状は、特に限定するものではない。また、リヤプレート26、フェースプレート22およびスペーサ27の材料は、ガラスに限らず、たとえば、透光性セラミックを用いてもよい。また、本実施形態の発光装置20において、気密容器21は、気密容器21の全体を透光性材料により形成させているが、必ずしも気密容器21の全体を透光性材料により形成させる必要はなく、少なくとも一部が透光性材料により形成され蛍光体層24からの光を外部に放出できればよい。
以下、本実施形態の発光装置20に用いられる各構成について詳述する。
本実施形態の発光装置20に用いられる電界放射型電子源10は、基板1の一表面1a側に形成された下部電極2と、下部電極2上に形成された半導体層としてノンドープの多結晶シリコン層を用いて形成させた強電界ドリフト層32たる電子通過層3と、電子通過層3上に形成された表面電極4とで構成されている。
本実施形態の電界放射型電子源10における基板1の材料としては、たとえば、基板1上に形成させる下部電極2、電子通過層3や表面電極4の成膜温度、発光装置20における真空封止工程の熱工程など製造プロセス時の温度条件に応じて、石英ガラス基板、無アルカリガラス基板、低アルカリガラス基板、ソーダライムガラス基板などから適宜選択すればよく、セラミック基板を用いる場合には、アルミナ基板などを用いることができる。
本実施形態の電界放射型電子源10では、絶縁性の基板1を用いているが、シリコン基板などの半導体基板を用い、該半導体基板に積層した導電性層とで下部電極2を構成するようにしてもよい。また、強電界ドリフト層32と下部電極2との間には、多結晶シリコン層を介在させた構成を採用して、強電界ドリフト層32と多結晶シリコン層とで電子通過層3を構成してもよい。すなわち、本実施形態の発光装置20に用いられる電界放射型電子源10では、後述する陽極酸化技術により、多結晶シリコン層の全部(下部電極2に達する深さまで)を強電界ドリフト層32として形成しているが、多結晶シリコン層の一部(所定深さまで)のみを酸化させ、図4のごとく、下部電極2上に多結晶シリコン層31を備えた構成としていてもよい。
電界放射型電子源10の下部電極2は、金属材料からなる単層(たとえば、Mo,Cr,W,Ti,Ta,Ni,Al,Cu,Au,Ptなどの金属あるいは合金あるいはシリサイドなど金属間化合物からなる単層)の薄膜により構成することができる。また、下部電極2は、多層(たとえば、Mo,Cr,W,Ti,Ta,Ni,Al,Cu,Au,Ptなどの金属あるいは合金あるいはシリサイドなど金属間化合物からなる多層)の薄膜により構成してもよい。下部電極2の材料として、金属あるいは合金を採用する場合、たとえば、スパッタ法や蒸着法により形成することができる。
また、下部電極2は、下部電極2を半導体材料により構成する場合、高濃度ドープのn形多結晶シリコンにより形成させてもよいし、p形不純物をドーピングしたp形多結晶シリコン層により構成してもよい。下部電極2は、不純物をドープした半導体材料として多結晶シリコン層に限らず、不純物をドーピングした多結晶シリコン以外の半導体材料により構成させてもよい。
電界放射型電子源10の電子通過層3は、下部電極2上に各種のCVD法などで成膜させた多結晶シリコン層に対して後述の陽極酸化技術を利用したナノ結晶化プロセスおよび酸化プロセスを行うことにより、酸化した強電界ドリフト層32として形成することができる。強電界ドリフト層32は、少なくとも、図2で示すような柱状の多結晶シリコンである複数のグレイン(半導体結晶)311と、各グレイン311それぞれの表面に形成された薄いシリコン酸化膜たる絶縁膜312と、隣り合うグレイン311間に介在する多数のナノメータオーダのナノ結晶シリコンよりなる半導体微結晶313と、各半導体微結晶313の表面に形成され当該半導体微結晶313の結晶粒径よりも小さな膜厚の絶縁膜である多数のシリコン酸化膜たる絶縁膜314とを含んでいる。すなわち、電子通過層3は、多結晶シリコンおよび多結晶シリコンの粒界付近に存在する多数のナノ結晶シリコンが混在している。なお、各グレイン311は、基板1の厚み方向に沿って延びている。
なお、強電界ドリフト層32では、酸化プロセスを採用してシリコン酸化膜からなる絶縁膜314を形成しているが、酸化プロセスの代わりに窒化プロセスないし酸窒化プロセスを採用してもよい。絶縁膜314の形成において、窒化プロセスを採用した場合、上述の各絶縁膜312,314は、いずれもシリコン窒化膜となる。同様に、酸窒化プロセスを採用した場合には、上述の各絶縁膜312,314は、いずれもシリコン酸窒化膜とすることができる。
また、本実施形態の発光装置20に用いられる電界放射型電子源10では、強電界ドリフト層32が電子通過層3を構成しているが、電子通過層3として、たとえば、Al、SiOなどからなる絶縁体層を採用するとともに、電子通過層3と下部電極2との間に多結晶シリコン層を介在させることで、MIS(Metal Insulator Semiconductor)構造の電界放射型電子源とすることができる。また、電子通過層3として、たとえば、Al、SiOなどからなる絶縁体層を採用するとともに、電子通過層3と下部電極2との間に上記多結晶シリコン層を介在させない場合には、MIM型の電界放射型電子源とすることができる。
本実施形態に用いられる電界放射型電子源10の表面電極4は、多層膜として、電子通過層3と接する最下部41となる下層側が電子通過層3との密着性が良い第1の材料からなるCr膜で、電子通過層3から最も離れた最上部42となる表層側が上記第1の材料よりも電子透過率の高い第2の材料からなるAu膜の2層構造で形成している。Cr膜とAu膜とのそれぞれの膜厚は、表面電極4の主表面に沿った方向において、互いに逆方向に傾斜して形成されている。言い換えれば、図1(b)で示すように表面電極4の主表面に沿った方向において、最下部41のCr膜の膜厚がより厚い部分では、最上部42のAu膜の膜厚がより薄い。また、最下部41のCr膜の膜厚がより薄い部分では、最上部42のAu膜の膜厚がより厚い。ここでは、最上部42と最下部41とを合わせた表面電極4のトータル膜厚は、略均一となっている。表面電極4は、より具体的には、たとえば、最下部41のCr膜が2nmで最上部42のAu膜が8nmの部分(図1(b)中の左側)から、最下部41のCr膜が0.5nmで最上部42のAu膜が9.5nmの部分(図1(b)中の右側)まで傾斜的に連続して変化させている。ここにおいて、表面電極4は、Cr膜とAu膜で形成されているが、最下部41は電子通過層3との密着性が良く、耐熱性の高いTiなどの材料を用いてもよい。また、最上部42の材料は、Auに限らず、たとえば白金、イリジウムなどの他の貴金属により形成してもよい。また、表面電極4の最上部41および最下部42は、それぞれ金属の単体だけでなくそれぞれ合金を用いて構成しても良い。
また、表面電極4の膜厚は、表面電極4のトータルの膜厚が一定になるように多層膜の膜厚を変化させる必要はない。そのため、表面電極4は、図3(a)で例示するように、たとえば、最下部41となるCr膜の膜厚が2nmで、最上部42となるAu膜の膜厚が8nmとなるトータル膜厚が10nm(図3(a)中の左側)から最下部41となるCr膜の膜厚が0.5nmで、最上部42となるAu膜の膜厚が10nmのトータル膜厚が10.5nm(図3(a)中の右側)まで変化させた構造とすることができる。また、表面電極4は、図3(b)で例示するように、たとえば、最下部41となるCr膜の膜厚が2nmで、最上部42となるAu膜の膜厚が8nmとなるトータル膜厚が10nm(図3(b)中の左側)から最下部41となるCr膜の膜厚が0.5nmで、最上部42となるAu膜の膜厚が9nmとなるトータル膜厚が9.5nm(図3(b)中の右側)まで変化させた構造としてもよい。
なお、表面電極4のトータル膜厚や多層膜の各膜厚は、表面電極4の主表面に沿って、連続的に一方向に変化させるばかりでなく、表面電極4の膜厚が表面電極4の断面において、階段状に段階的に変化させてもよい。また、表面電極4の膜厚は、表面電極4の中央部で薄く、該中央部の周部で厚くなるように連続的に変化させてもよい。さらに、表面電極4の膜厚は、表面電極4の膜厚が表面電極4の断面において、階段状に段階的に変化させ厚い部分と薄い部分とを表面電極4の主表面に沿った方向において、繰り返すように段階的に変化させても良い。また、表面電極4には、電子通過層3との密着性を向上させるために、導電性炭化物層を更に備えてもよい。
本実施形態の発光装置20では、電界放射型電子源10の基板1をリヤプレート26の一表面26a側に配置して構成しているが、発光装置20のガラス基板からなるリヤプレート26を基板1として、リヤプレート26の一表面26a側に電界放射型電子源10の下部電極2、電子通過層3や表面電極4を直接形成させてもよい。
本実施形態の発光装置20に用いられる制御装置25は、電界放射型電子源10の表面電極4と下部電極2との間に電圧を印加する駆動用電源Vpsと、コレクタ電極23と電界放射型電子源10の表面電極4との間に電圧を印加するコレクタ電極用電源Vaと、駆動用電源Vpsおよびコレクタ電極用電源Vaそれぞれを制御するマイクロコンピュータなどにより構成される制御手段25aとで構成することができる。
ここで、制御手段25aは、電子eのエネルギー分布のピークエネルギーが、気密容器21内に封入されているXeガスの励起エネルギーよりも大きく、Xeガスのイオン化エネルギーよりも小さくなるように電界放射型電子源10の表面電極4と、下部電極2との間の電圧を制御することでXeガスを放電させずに励起させることができる。
本実施形態の発光装置20では、電界放射型電子源10とコレクタ電極23との間隔をパッシェン・ミニマムよりも大きな間隔(たとえば、1cm)に設定してあり、Xeガスの放電が起こりにくくしている。なお、電界放射型電子源10とコレクタ電極23との間の間隔は1cmに限定するものではない。また、本実施形態の発光装置20では、気密容器21内に封入するXeガスの圧力を5kPaに設定してあるが、当該ガス圧は5kPaに限定するものではなく、ガス圧を2kPa〜20kPaの範囲内で適宜に設定すれば、Xeガスの放電を防止することができるとともに発光効率の向上を図れることが可能となる。
なお、本実施形態の発光装置20における制御装置25は、電界放射型電子源10から気密容器21内に周期的に電子が供給されるように、上述の駆動用電源Vpsから電界放射型電子源10の表面電極4と下部電極2との間に表面電極4を高電位側として矩形波電圧を印加させて、電界放射型電子源10を間欠的に駆動させてもよい。
本実施形態の発光装置20では、電界放射型電子源10から放出された電子eでXeガスを直接励起し、Xeガスから放射される紫外線によって蛍光体層24の蛍光体を発光させる。そのため、本実施形態の発光装置20は、電界放射型電子源10におけるエミッション特性の面内均一性が悪くても、蛍光体層24から発せられる蛍光の均一性には影響が及びにくく、面内均一性に優れた光を発光することが可能な平面型の照明器具として利用することができる。
以下、本実施形態の発光装置20に用いられる電界放射型電子源10の製造方法について説明する。
まず、石英ガラス基板からなる絶縁性の基板1の一表面1a上に、たとえば、スパッタ法によって、膜厚が500ÅのTi膜と2500ÅのW膜との積層膜からなる金属薄膜たる下部電極2を形成する。続いて、下部電極2上に所定膜厚(たとえば、1.5μm)のノンドープの多結晶シリコン層を形成する。なお、ノンドープの多結晶シリコン層の形成方法としては、たとえば、各種のCVD法(LPCVD法、プラズマCVD法や触媒CVD法など)やスパッタ法により、アモルファスシリコンを堆積させた後にレーザアニール処理する方法などを採用すればよい。
続いて、多結晶シリコン層に、多数のグレイン311と多数のシリコン微結晶たる半導体微結晶313とが混在する複合ナノ結晶層を形成する図示していないナノ結晶化工程を行う。ナノ結晶化工程は、下部電極2を陽極とし第1の電解液(たとえば、55wt%のフッ化水素水溶液とエタノールとを略1:1で混合した混合液)中において、上記多結晶シリコン層に白金電極よりなる陰極を対向配置するとともに、電源から下部電極2と上記白金電極との間に定電流(たとえば、電流密度が12mA/cmの電流)を所定時間(たとえば、10秒)だけ流す。また、500Wのタングステンランプからなる光源により、上記多結晶シリコン層の主表面に光照射を行っている。これにより、多結晶シリコンのグレイン311およびシリコン微結晶たる半導体微結晶313を含む複合ナノ結晶層を形成することができる。
ナノ結晶化プロセスが終了した後に、酸化プロセスを行うことによって上述の複合ナノ結晶層を備えた強電界ドリフト層32が電子通過層3として形成される。酸化プロセスでは、たとえば、下部電極2を陽極とし、第2の電解液(たとえば、エチレングリコールからなる有機溶媒中に0.04mol/lの硝酸カリウムからなる溶質を溶かした溶液)中において上述の複合ナノ結晶層に白金電極よりなる陰極を対向配置する。また、電源から下部電極2と白金電極との間に定電流(たとえば、電流密度が10mA/cmの電流)を流し、下部電極2と白金電極との間の電圧が20Vだけ上昇するまで複合ナノ結晶層を電気化学的に酸化することによって、強電界ドリフト層32を形成することができる。
なお、上述の酸化プロセスは、上記電気化学的な酸化方法に限らず、急速加熱法により複合ナノ結晶層を酸化することによって、グレイン311、半導体微結晶313、各シリコン酸化膜たる絶縁膜312、314を含む強電界ドリフト層32として電子通過層3を形成してもよい。
ここにおいて、急速加熱法による酸化プロセスでは、ランプアニール装置を用い、炉内をOガス雰囲気(たとえば、標準状態での酸素ガス流量を0.2〜0.4L/min)として、基板1の温度を室温から所定の酸化温度(たとえば、900℃)まで規定の昇温速度(たとえば、80℃/s)で上昇させて所定の酸化時間(たとえば、1時間)だけ維持することで急速熱酸化(Rapid Thermal Oxidation : RTO)を行うことができる。
また、酸化プロセスで強電界ドリフト層32を酸化により形成させる代わりに、強電界ドリフト層32を窒化プロセス、あるいは酸窒化プロセスにより強電界ドリフト層32を形成してもよい。
強電界ドリフト層32を窒化プロセスにより形成させる場合には、多結晶シリコン半導体をOガスを利用した急速加熱法により酸化する酸化工程の代わりに、たとえば、NHガスを利用した急速加熱法により窒化する窒化工程を採用すればよい。窒化工程の場合、図2にて説明した各絶縁膜312,314は、いずれもシリコン窒化膜とすることができる。
同様に、強電界ドリフト層32を酸窒化プロセスにより形成させる場合には、多結晶シリコン半導体を急速加熱法により酸化する工程の代わりに、たとえば、OガスとNHガスとの混合ガスを利用した急速加熱法により酸窒化する酸窒化工程を採用すればよい。酸窒化工程の場合、図2にて説明した各絶縁膜312,314は、いずれもシリコン酸窒化膜とすることができる。
強電界ドリフト層32として電子通過層3を形成した後は、Cr薄膜とAu薄膜とを順次スパッ夕法などによって成膜することにより、本実施形態の発光装置20に用いられる電界放射型電子源10における所定形状の表面電極4を形成することができる。ここで、スパッタリング装置としては、スパッタターゲットと表面電極4を形成させるための電子通過層3との間に、スリットが形成された平板を備えた可動式のシャッターを設置している。
スパッタリング装置は、上記平板と略平行に配置させたシャッターを移動させことにより、スリットを介して電子通過層3側に最初に最下部41としてCr膜が成膜できるように構成してある。すなわち、スパッタリング装置は、可動式のシャッターを動かして、スリットの開口部分の位置を徐々に移動させることにより、電子通過層3の表面に成膜されるCr膜の場所も移動する。スパッタリング装置は、上述のシャッターにおけるシャッターの移動速度を変えれば、シャッターの移動速度が遅いスリットの開口部分では成膜されるCr膜の膜厚が厚くなり、シャッターの移動速度が速いスリットの開口部分では、成膜されるCr膜の膜厚を薄くすることができる。すなわち、スパッタリング装置は、スリットが形成された平板を備えた可動式のシャッターの移動速度を制御することによって、表面電極4の最下部41たるCr膜の膜厚を連続的または段階的に変化させることが可能となる。このようにしてCr膜を形成した後、スパッタターゲットをCrからAuに代えて、Cr膜とAu膜との厚みが表面電極4の主表面に沿った方向において逆となるよう、同様の方法で表面電極4の最上部42たるAu膜を成膜させればよい。
また、スパッタリング装置は、スリットが形成された平板を備えた可動式のシャッターにおける移動速度を変えるのではなく、シャッターの移動に合わせてスパッタ条件を変えることで、表面電極4における最下部41や最上部42の膜厚を連続的または段階的に変化させることもできる。さらに、スパッタリング装置は、スリット幅の広い部分と、スリット幅の狭い部分とを備え、一定の速度で移動させる移動式のシャッターで構成することもできる。このようなスパッタリング装置のシャッターを移動させてスリットを開口させる場合、スリット幅が広い部分ほどシャッターがスリットを全て開口させるまでの時間が長く、スリット幅の狭い部分ほどシャッターがスリットを全て開口させるまでの時間が短くなる。
したがって、スリット幅が広い部分は、スリット幅の狭い部分と比較して、金属薄膜の成膜される時間が長く金属薄膜の厚く形成される部分ができるため、表面電極4における最下部41や最上部42の膜厚を連続的または段階的に変化させることができる。すなわち、スパッタリング装置は、スリットの形状によって膜厚の分布を制御することも可能である。なお、スパッタリング装置は、シャッターを固定しておいて、表面電極4における最下部41や最上部42を成膜させるための電子通過層3側を移動させてもよい。このような、電界放射型電子源10における表面電極4の成膜は、スパッタ法に限らず蒸着法やイオンプレーティング法等を用いても同様にして形成することができる。
(実施形態2)
本実施形態の発光装置20に用いられる電界放射型電子源10は、図1に示す実施形態1の電界放射型電子源10と略同一であり、表面電極4が多層膜により構成させたものの代わりに、表面電極4が、電子通過層3との密着性が良い第1の材料と、該第1の材料よりも電子透過率の高い第2の材料との合金であり、第1の材料と第2の材料との合金比率を表面電極4の主表面に沿った方向において、連続的または段階的に変化させてなる構成とした点が異なる。なお、実施形態1と同様の構成要素には、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
本実施形態の発光装置20に用いられる電界放射型電子源10は、図1と同様に、下部電極2と、該下部電極2に対向する表面電極4と、下部電極2と表面電極4との間に介在し下部電極2と表面電極4との間に電圧を印加したときに作用する電界により電子が通過する電子通過層3とを備え、電子通過層3を通過した電子が表面電極4を通して放出されるものである。
ここで、電界放射型電子源10の表面電極4は、電子通過層3との密着性が良い第1の材料(たとえば、CrやTi)と、該第1の材料よりも電子透過率の高い第2の材料(たとえば、Au)との合金であり、第1の材料と第2の材料との合金比率を表面電極4の主表面に沿った方向において、連続的または段階的に変化させてなる合金の構成としている。
本実施形態に用いられる電界放射型電子源10の表面電極4を形成させるためには、多元同時スパッ夕装置を用いることができる。ここで、多元同時スパッタリング装置は、実施形態1の表面電極4を成膜させたスパッタリング装置と同様のスリットが形成された平板を備えた可動式のシャッターを複数個備えている。表面電極4の成膜にあたっては、たとえば、各シャッターの移動に合わせてCrと、Auへのスパッタ条件を制御することで、Crと、Auとの合金の合金比率が表面電極4の主表面に沿った方向において、連続的または段階的に変化するように成膜させることができる。
本実施形態の発光装置20に用いられる電界放射型電子源10では、表面電極4の主表面に沿った方向において、電子通過層3との密着性が高い第1の材料(たとえば、CrやTi)が少なく、該第1の材料よりも電子透過率の高い第2の材料(たとえば、Au)が多い合金比率の表面電極4の部分では、表面電極4での電子トラップが少なくなるため良好なエミッション特性を得ることが可能となる。また、表面電極4の成膜後に行われる真空封止などの加熱を伴うプロセスの途中に、第2の材料の膜厚が厚くなっている部分が凝集し断線が発生したとしても、断線部分と隣接する表面電極4の部分では、密着性が高い第1の材料(たとえば、CrやTi)の合金比率を高くすることができるため、密着性の高い第1の材料が電子通過層3と密着を維持して表面電極4の全体での断線が生ずることを抑制することが可能となる。
このような、本実施形態に用いられる電界放射型電子源10は、上述の実施形態1における電界放射型電子源10と同様に、気密容器21内に配置させることで発光装置20を構成することができる。
(実施形態3)
本実施形態の発光装置20に用いられる電界放射型電子源10は、図1に示す実施形態1の電界放射型電子源10と略同一であり、表面電極4が多層膜により構成させたものの代わりに、表面電極4が、化合物からなり、該化合物の組成比を表面電極4の主表面に沿った方向において、連続的または段階的に変化させてなる構成とした点が異なる。なお、実施形態1と同様の構成要素には、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
本実施形態の発光装置20に用いられる電界放射型電子源10は、図1と同様に、下部電極2と、該下部電極2に対向する表面電極4と、下部電極2と表面電極4との間に介在し下部電極2と表面電極4との間に電圧を印加したときに作用する電界により電子が通過する電子通過層3とを備え、電子通過層3を通過した電子が表面電極4を通して放出されるものである。
ここで、電界放射型電子源10の表面電極4は、化合物たる導電性窒化物として、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、窒化ニオブ、窒化タンタルから選択される1種を用い、該化合物の組成比を表面電極4の主表面に沿った方向において、連続的または段階的に変化させてなる構成としている。
本実施形態の発光装置20に用いられる電界放射型電子源10の表面電極4を形成させるためには、金属材料よりなるタ−ゲットを用いて、窒素を含むガスを利用した反応性スパッ夕法により成膜させることができる。ここで、スパッタリング装置は、実施形態1の表面電極4を成膜させたスパッタリング装置と同様のスリットが形成された平板を備えた可動式のシャッターを備えている。表面電極4の成膜にあたっては、反応性スパッ夕において、不活性ガス(たとえば、Arガス)と、窒素原子を含む反応性ガス(たとえば、窒素ガス)との混合比や放電パワーなどにより、上記導電性窒化物層における窒素の組成比を制御することができる。したがって、表面電極4は、シャッターの移動に合わせて反応性スパッ夕条件を制御して成膜させれば、表面電極4の主表面に沿った方向において、上記導電性窒化物の組成比を連続的または段階的に変化させることができる。
ところで、金属と窒素との化合物である導電性窒化物は、Auなどの貴金属に比べて融点が高く電子通過層3との密着性をよくすることができる。また、金属と窒素との化合物である導電性窒化物は、導電率も比較的高くすることができる。しかしながら、金属と窒素との化合物である導電性窒化物を表面電極4に用いた場合、表面電極4における電子透過率は、窒化が進むほど低下する傾向にある特徴を利用している。
そこで、本実施形態の発光装置20に用いられる電界放射型電子源10の表面電極4では、表面電極4となる化合物たる導電性窒化物の組成比を、表面電極4の面方向で変化させ、窒化があまり進まずに耐熱性や密着性は悪いがエミッション特性の良い部分から、窒化が進んで耐熱や密着性は良いがエミッション特性は悪い部分に連続的または段階的に変化させて形成している。
したがって、本実施形態の発光装置20に用いられる電界放射型電子源10は、化合物の組成比が耐熱性や密着性は悪いがエミッション特性が良い部分から耐熱性や密着性は良いがエミッション特性が悪い部分まで備えてなる。上記化合物の組成比のうち、耐熱性や密着性は悪いがエミッション特性が良い部分で断線が発生しても、断線部分と隣接する部分では、耐熱性や密着性が高い部分とすることができるため、表面電極4の全体での断線が生ずることを抑制することが可能となる。また、表面電極4のいずれかで電気的接続を維持しつつ、表面電極4で耐熱性や密着性は悪いがエミッション特性が良い部分で良好なエミッション特性を得ることができることが可能になる。
このような、本実施形態に用いられる電界放射型電子源10は、上述の実施形態1における電界放射型電子源10と同様に、気密容器21内に配置させることで発光装置20を構成することができる。
1 基板
1a 一表面
2 下部電極
3 電子通過層
4 表面電極
10 電界放射型電子源
20 発光装置
21 気密容器
23 コレクタ電極
24 蛍光体層
25 制御装置
32 強電界ドリフト層
41 最下部
42 最上部
313 半導体微結晶
314 絶縁膜

Claims (8)

  1. 下部電極と、該下部電極に対向する表面電極と、前記下部電極と前記表面電極との間に介在し前記下部電極と前記表面電極との間に電圧を印加したときに作用する電界により電子が通過する電子通過層とを備え、前記電子通過層を通過した電子が前記表面電極を通して放出される電界放射型電子源であって、前記表面電極は、前記電子通過層と接する最下部と、前記電子通過層から最も離れた最上部とを備えた少なくとも2層以上の多層膜からなり、前記最下部が前記最上部よりも前記電子通過層との密着性の良い第1の材料からなるとともに、前記最上部が前記第1の材料よりも電子透過率の高い第2の材料からなり、前記表面電極の主表面に沿った方向において、前記最上部と前記最下部の膜厚を互いに逆方向に連続的または段階的に変化させてなることを特徴とする電界放射型電子源。
  2. 下部電極と、該下部電極に対向する表面電極と、前記下部電極と前記表面電極との間に介在し前記下部電極と前記表面電極との間に電圧を印加したときに作用する電界により電子が通過する電子通過層とを備え、前記電子通過層を通過した電子が前記表面電極を通して放出される電界放射型電子源であって、前記表面電極は、少なくとも前記電子通過層との密着性が良い第1の材料と、該第1の材料よりも電子透過率の高い第2の材料との合金であり、前記第1の材料と前記第2の材料との合金比率を前記表面電極の主表面に沿った方向において、連続的または段階的に変化させてなることを特徴とする電界放射型電子源。
  3. 前記表面電極は、前記第1の材料がCrまたはTiであり、前記第2の材料がAuであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電界放射型電子源。
  4. 下部電極と、該下部電極に対向する表面電極と、前記下部電極と前記表面電極との間に介在し前記下部電極と前記表面電極との間に電圧を印加したときに作用する電界により電子が通過する電子通過層とを備え、前記電子通過層を通過した電子が前記表面電極を通して放出される電界放射型電子源であって、前記表面電極は、化合物からなり、該化合物の組成比を前記表面電極の主表面に沿った方向において、連続的または段階的に変化させてなることを特徴とする電界放射型電子源。
  5. 前記化合物は、導電性窒化物であることを特徴とする請求項4に記載の電界放射型電子源。
  6. 前記導電性窒化物は、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、窒化ニオブ、窒化タンタルから選択される1種からなることを特徴とする請求項5に記載の電界放射型電子源。
  7. 絶縁性の基板の一表面側に前記下部電極が形成されているとともに、前記電子通過層は、強電界ドリフト層を備え、該強電界ドリフト層がナノメータオーダの多数の半導体微結晶と各半導体微結晶それぞれの表面に形成され半導体微結晶の結晶粒径よりも小さな膜厚の多数の絶縁膜とを有し、前記下部電極と前記表面電極との間に前記表面電極を高電位側として電圧を印加することにより前記下部電極から注入された電子が前記強電界ドリフト層をドリフトし前記表面電極を通して放出されることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の電界放射型電子源。
  8. 請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の電界放射型電子源と、Xeガスが封入され少なくとも一部が透光性材料により形成された気密容器と、該気密容器内においてXeガスを直接励起させる電子を供給する前記電界放射型電子源と対向配置されたコレクタ電極と、前記気密容器の内面側に配置され励起されたXeガスの発光過程で放射される励起光によって励起され蛍光を発する蛍光体を有する蛍光体層と、前記電界放射型電子源へ供給する電圧および前記コレクタ電極と前記電界放射型電子源との間の電圧を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする発光装置。
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