JP5342344B2 - 新規ペリクル及びその製法 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体素子のパターン形成に用いられるフォトリソグラフィ技術、半導体集積回路、フラットパネルディスプレー、FPB(Flexible Printed Board)、光学レンズ等の製造に使用されるリソグラフィ技術において使用される、クロムでパターンを形成したフォトマスク用のペリクル、及びその製造方法に関する。本発明は、特に、TFT液晶型、有機EL型、プラズマ型などのITO電極層を有するフラットパネルディスプレー製造用基板に使用されるリソグラフィ技術において使用される、クロムでパターンを形成したフォトマスク用のペリクル及びその製造方法に関する。
従来、シリコンウエハ(以下、単に「ウエハ」ともいう。)への半導体素子パターン形成、及び液晶パネル等のフラットパネルディスプレー基板にパターンを形成するためのフォトリソグラフィー技術においては、一般にペリクルと呼ばれる防塵手段を用いて、フォトマスク(以下、単に「マスク」ともいう。)への異物の付着を防止することが行われている。
ペリクルとは、マスクの形状に合わせた形状を有する厚さ数ミリ程度の枠体(以下「フレーム」ともいう。)の上縁面に、厚さ10μm以下の透明な高分子膜(以下、「ペリクル膜」という。)を展張して接着し、かつ該枠体の下縁面に粘着材層を積層したものである。液晶パネル等の製造に使用されるペリクルは、半導体素子製造に使用されるペリクルに比較して大型であり、そのペリクル膜の面積は1000〜30000cmである。
フォトリソグラフィ技術による半導体素子の製造方法では、フォトレジストの成膜工程、露光工程、現像工程、エッチング工程、フォトレジストの剥離工程からなるフォトリソグラフィ工程を経ることによって、素子回路が形成されている。フォトリソグラフィの各工程では、フォトレジストを塗布するための各種有機溶媒や、エッチング又はフォトレジストを現像したり剥離したりするための薬液が使用され、化学反応や光化学反応を利用することによって効率的に素子回路が生産されている。このため、製造環境雰囲気中には、前記した各種有機溶媒や薬液の使用によって、揮発、飛散した化学物質が微量ながら存在している。
製造環境雰囲気中に存在するこれらの化学物質は、主にペリクル膜を通って、マスク表面上に到達し、マスク製造工程で残留した化合物やその他マスク表面上に存在する化合物と反応して固化し、異物を発生させることがある。マスクは、長い場合には数年単位の長期にわたり使用されるため、これらの異物の初期発生量が例え微量であったとしても、次第に蓄積、増大して成長する異物(以下、「成長性異物」ともいう。)となる。そして、この成長性異物が、結果的にマスク表面上のパターンの紫外線透過部に発生すると、露光欠陥となり、不良デバイスや欠陥を生じる原因となる。
近年、LSIパターンの微細化・高集積化に伴い、露光装置の光源に関して、高圧水銀灯のg線(436nm)、i線(365nm)から、KrFエキシマレーザ(248nm)、ArFエキシマレーザ(193nm)へと短波長化が進んでいる。このような短波長の露光光源は高エネルギーかつ高出力のために、光のエネルギー密度が高く、光化学反応を誘起しやすい。その結果として上記成長性異物の発生は、露光光源が短波長であるほど顕著となることが指摘されている。
短波長の露光光源を用いたときにマスクに発生する成長性異物発生の原因の一つとして、マスク製造後にマスク表面に残存する硫酸イオン(マスク洗浄に使用する)と、マスク使用雰囲気に存在するアンモニア(現像液に使用する)とが、パターン転写の際のエキシマレーザ照射により反応を起こし、硫酸アンモニウムを生じることにより異物となることが報告されている(以下、非特許文献1、特許文献1を参照のこと)。
またペリクルのフレームとして使用されるアルミニウム合金の表面の陽極酸化被膜中には硫酸、硝酸、有機酸等の酸が取り込まれており、これが露光環境下で該陽極酸化被膜中から脱離して、ペリクルとマスクの間の閉空間内に滞留して、このものに露光時の短波長紫外線が当たることによって、硫酸化合物、例えば硫酸アンモニウムなどを発生する等の報告がある(以下、特許文献2を参照のこと)。
このため、マスク製造後の検査では無欠陥の良好な品質状態のマスクであっても、露光装置でエキシマレーザ照射を繰り返すうちに、マスク上に成長性異物が生じ、ウェハへの良好なパターン転写像が得られなくなるという問題がある。この対策として、マスク製造時の硫酸残量を低下させることや、環境中のアンモニアをケミカルフィルターなどで除去する方法、マスクとペリクルの間の閉空間内に窒素ガスを導入する方法、マスク使用環境の湿度を低下させる方法等によって、成長性異物の発生を抑制する方法が提案されている。
しかしながら、フラットパネルディスプレー用のTFT液晶パネルの製造工程においては、半導体素子の製造工程と比較して、転写パターンの線幅やピッチが比較的大きいことから、上記のようなエネルギー密度の高い短波長の露光光を用いる必要はなく、露光面積が広く露光光量が必要なことから、一般には超高圧水銀灯のi線〜g線の波長域を有するブロードバンドな露光光を用いてマスクパターンを転写している。したがって、フラットパネルディスプレー用のTFT液晶パネルの製造工程においては、半導体素子製造用の場合のようにエネルギーの高い露光光の照射による化学物質の生成が、マスク上の異物を生じさせることがほとんどなく、深刻な問題とはされてこなかった。
一方、ペリクル膜の材料としては、セルロース系、フッ素樹脂系のものが広く使用されているが、他の材料のものも提案されている。その一例として、シクロオレフィン系樹脂、例えばノルボルネン系モノマー重合体、及びエチレン・ノルボルネン共重合体、からなるペリクル膜が提案されており、光線透過率、耐光性、耐エアブロー性、及び/又は接着性に優れるとされている(以下、特許文献3〜6を参照のこと)。
特開2006−11048号公報 特開2007−333910号公報 特開平2−42441号公報 特開平3−168642号公報 特開平8−101497号公報 特開平11−295879号公報
Advanced Microlithography Technologies, Proc. of SPIE, Vol. 5645 (2005), p109-113
前記したように、フラットパネルディスプレー用のTFT液晶パネルの製造工程においては、半導体素子製造用の場合のようにエネルギーの高い露光光の照射による化学物質の生成が、マスク上の異物を生じさせることがほとんどなく、深刻な問題とはされてこなかったが、近年、i線〜g線の露光光を用いる、TFT液晶パネル製造用の大型マスク使用現場においても、半年から数年といった期間のマスク保存又は使用によりマスクのペリクル内部、パターン形成面に、成長性異物が生じる問題が発見されてきた。この成長性異物の発生は、保管環境と相関をもち、一方で、露光回数とは明確な相関がみられなかった。
半導体素子製造用のマスクにおいて生じたように、成長性異物の原因が硫酸アンモニウムであれば、ペリクルとマスクの間の閉空間内に硫酸イオンが残留しないような対策をとることで成長性異物を抑制することが可能である。しかしながら、本発明者らが検討した結果、硫酸イオン対策をとったとしても、なおかつハードクロムマスク上に成長性異物が発生する場合があることが判明した。
すなわち、TFT液晶パネル製造用の大型マスクの使用に際して、パターン形成面に生じる成長性異物は、従来半導体素子製造用の小型マスクの使用に際して知られていたものとは異質のものであり、異なった対策が必要であることを、本願発明者らは発見し、本願発明を完成するに至った。
したがって、本願発明が解決しようとする課題は、半導体素子又は液晶パネルの製造工程、特にITO電極層を有するフラットパネルディスプレー製造用基板の製造工程において、ハードクロムマスク上に上記成長性異物が発生することを防止できるとともに、平均光線透過率が高いペリクル及びその製造方法を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討を進めた結果、フォトリソグラフィ技術を使用したTFT液晶パネル製品の製造工程において、ハードクロムマスク表面に発生する成長性異物の一つの原因が、製造環境に含まれる蓚酸が、該ハードクロムマスクにおける遮光材であるクロム又はその化合物と反応して生じた蓚酸クロム錯体に由来しているものであることを発見した。
マスクの保管環境によってはこの成長性異物の発生はほとんど見られず、さらに液晶パネル製造マスク用ペリクルにおいて、過去にはこの種の成長性異物が発生しなかったことから、液晶パネル製造メーカのもつマスクの保管環境又は使用環境の変化に応じて異物が成長することが推測された。
TFT液晶パネルの製造においては、TFT基板のITO(インジウムスズオキサイド)電極パターン形成とカラーフィルターのパターン形成とにフォトリソグラフィ技術が使用されている。このうち、ITO電極のパターン形成におけるエッチング工程においては、従来、エッチング液として塩酸が使用されていたが、近年、ITO電極の主流がアモルファスITOとなったためエッチング液として蓚酸が使用されるようになってきた。従って、本発明者らは、TFT液晶パネルの製造工程においてハードクロムマスク上に発生する成長性異物の発生原因の一つは、かかる製造工程の変化に伴ってエッチング液として新たに使用されるようになった蓚酸ではないかと考えた。ITO電極層のエッチング液として蓚酸を使用する限り、前記した成長性異物発生の問題は、TFT液晶型のみならず、ITO電極層を有する基板を使用するフラットパネルディスプレー、例えば有機EL型やプラズマ型の製造においても存在すると思われる。
ハードクロムマスクを使用する場合には、クロムはペリクルとマスクの間の閉空間内に必然的に存在する。そこで、雰囲気に存在する蓚酸が該閉空間内に入らないようなガスバリヤ性を有するペリクル膜を有するペリクルを使用すればよいとの着想に基づいてさらに検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の[1]〜[12]である:
[1]枠体、該枠体の下縁面側に積層された粘着材層、及び該枠体の上縁面側に展張されたペリクル膜を含むペリクルであって、
該ペリクル膜は、シクロオレフィン系樹脂を有機溶媒に溶解させてなる吸光度0.05以下のポリマー溶液を、基材上に塗布乾燥させて形成され、形成された該ペリクル膜の突刺強度は、0.15N/μm以上であり、かつ、形成された該ペリクル膜の厚さは、0.5〜8μmであることを特徴とする前記ペリクル。
[2]前記ペリクル膜の片面又は両面に、前記シクロオレフィン系樹脂の屈折率よりも低い屈折率を有する材料から形成された厚さ10〜500nmの反射防止層をさらに設けてなる、前記[1]に記載のペリクル。
[3]枠体、該枠体の下縁面側に積層された粘着材層、及び該枠体の上縁面側に展張されたペリクル膜を含むペリクルであって、該ペリクル膜は、シクロオレフィン系樹脂と該シクロオレフィン系樹脂の全重量に対し0.1重量%以上15重量%以下の光安定剤とを有機溶媒に溶解させてなる吸光度0.05以下のポリマー溶液を、基材上に塗布乾燥させて形成され、形成された該ペリクル膜の突刺強度は、0.15N/μm以上であり、かつ、形成された該ペリクル膜の厚さは、0.5〜8μmであることを特徴とする前記ペリクル。
[4]前記光安定剤が常温で液状である、前記[3]に記載のペリクル。
[5]ポリマー溶液に、前記シクロオレフィン系樹脂の全重量に対し0.1重量%以上10重量%以下の酸化防止剤をさらに添加する、前記[3]又は[4]に記載のペリクル。
[6]前記ペリクル膜の片面又は両面に、前記シクロオレフィン系樹脂の屈折率よりも低い屈折率を有する材料から形成された厚さ10〜500nmの反射防止層をさらに設けてなる、前記[3]〜[5]のいずれかに記載のペリクル。
[7]枠体、該枠体の下縁面側に積層された粘着材層、及び該枠体の上縁面側に展張されたペリクル膜を含むペリクルの製造方法であって、以下のステップ:
シクロオレフィン系樹脂を有機溶媒に溶解させて吸光度0.05以下のポリマー溶液を調製する調製ステップ、及び
得られたポリマー溶液を、基材上に塗布乾燥させて、厚さ0.5〜8μm、かつ、突刺強度は、0.15N/μm以上のペリクル膜を成膜する成膜ステップ、含むことを特徴とするペリクルの製造方法。
[8]前記成膜ステップの後に、前記ペリクル膜の片面又は両面に、前記シクロオレフィン系樹脂の屈折率よりも低い屈折率を有する材料から形成された厚さ10〜500nmの反射防止層を成膜するステップを、さらに含む、前記[7]に記載のペリクルの製造方法。
[9]枠体、該枠体の下縁面側に積層された粘着材層、及び該枠体の上縁面側に展張されたペリクル膜を含むペリクルの製造方法であって、以下のステップ:
シクロオレフィン系樹脂と該シクロオレフィン系樹脂の全重量に対し0.1重量%以上15重量%以下の光安定剤とを有機溶媒に溶解させて吸光度0.05以下のポリマー溶液を調製する調製ステップ、及び
得られたポリマー溶液を、基材上に塗布乾燥させて、厚さ0.5〜8μm、かつ、突刺強度は、0.15N/μm以上のペリクル膜を成膜する成膜ステップ、含むことを特徴とするペリクルの製造方法。
[10]前記光安定剤が常温で液状である、前記[9]に記載のペリクルの製造方法。
[11]前記調製ステップにおいて、前記ポリマー溶液に、前記シクロオレフィン系樹脂の全重量に対し0.1重量%以上10重量%以下の酸化防止剤をさらに添加する、前記[9]又は[10]に記載のペリクルの製造方法。
[12]前記成膜ステップの後に、前記ペリクル膜の片面又は両面に、前記シクロオレフィン系樹脂の屈折率よりも低い屈折率を有する材料から形成された厚さ10〜500nmの反射防止層を成膜するステップを、さらに含む、前記[9]〜から[11]のいずれかに記載のペリクルの製造方法。
本発明に係るペリクルをハードクロムマスクに適用することで、半導体素子又は液晶パネルの製造工程、特にITO電極層を有するフラットパネルディスプレー製造用基板の製造工程において、平均透過率を高く保ったままで成長性異物の発生を防止することができる。
成長性異物発生の加速試験法の説明図である。 蓚酸クロム錯体からなる成長性異物のIRスペクトルの一例である。
まず、フォトマスク、及びフォトマスクへのペリクルの貼り付けについて説明する。以下、ITO電極層を有するフラットパネルディスプレー製造用基板の代表例として、TFT液晶パネル用基板の製造例について説明する。
TFT液晶パネルの製造に使用されるフォトマスクは、合成石英ガラス又はソーダライムガラスからなる基板上に微細パターンを形成したものが用いられる。また、パターンの精度に応じて、エマルジョンマスクとハードクロムマスクが使い分けられる。本発明に係るペリクルは、好ましくは、合成石英ガラス又はソーダライムガラスの表面に形成されたハードクロムマスク、特に合成石英上に形成されたハードクロムマスクに、適用される。
一般に、ハードクロムマスクは、基板上にCr(Chromium)金属膜を反応性スパッタリングで形成する。その際、反射防止層を形成する場合には、まずCrのみをスパッタリングした後、スパッタリング中に酸素を導入することによって表面にクロム酸化物からなる反射防止層を形成する。同様に、各種ガスを導入することによってCr金属膜の組成を変更することができ、これによって、Cr化合物からなるハードクロムマスクを製造することができる。Cr金属膜として、クロム単体又はクロムに窒素、酸素若しくは炭素等が含有された材料からなる単層膜又は該膜の積層膜が挙げられる。
この基板上のCr又はCr化合物からなる金属膜面上にフォトレジストを塗布し、レーザービームにて微細パターンを描画し、現像し、レジストで保護されていないCr又はCr化合物からなる金属膜をエッチングで除去する。その後、Cr又はCr化合物からなる金属膜上に残っているフォトレジストを、レジストストリッパー液によって剥離除去し、さらに洗浄して、検査を行い、ハードクロムマスクを完成させる。
次いで、上記マスクを必要に応じて再度洗浄し、パターン表面への異物の付着防止を目的としたペリクルを、ペリクルマウンタを使用して貼り付ける。この後、ペリクルの内側に異物の混入がないかどうかを欠陥検査機にて確認する。
以下、雰囲気中の蓚酸について説明する。
従来、TFT液晶パネルを製造する雰囲気中に濃度の高い蓚酸が存在することはなかった。しかしながら、前述したパネル製造における工程の変更により、製造雰囲気は変化し、製造雰囲気中の蓚酸含有濃度が高くなることがある。
蓚酸は、ガス状、微粒粉体状又はミスト状で製造雰囲気中に存在し、主にペリクル膜を通って、マスク表面に到達すると考えられる。
TFT液晶パネル製品の製造工程においては、前述したITOエッチング液としての蓚酸が、雰囲気中の蓚酸の大部分の供給源と考えられるが、フォトリソグラフィ工程において使用される薬液、すなわちフォトレジスト材、フォトレジストの反応促進剤、エッチング液、洗浄液、現像液、剥離液、リンス液等の主剤、溶媒、希釈剤等やその揮発分中の蓚酸、また、これらの薬液及び揮発分中の有機化合物がフォトリソグラフィ工程の高圧水銀光等の光源から照射される紫外線によって、分解または変質されたものから生成される蓚酸も一部の供給源となっている可能性がある。
以下、これらの蓚酸が成長性異物を生成するメカニズムを説明する。
前述の環境雰囲気中に存在する、又は雰囲気中の薬液及び揮発分からマスク表面近くで高圧水銀光等の光源から照射される紫外線によって発生した蓚酸は、ガス状、微粒粉体状又はミスト状で空気中に存在する。蓚酸が、マスク表面に付着し、マスク表面の遮光材として利用されるクロム又はその化合物と反応して、錯体が形成される。この反応では、蓚酸が吸湿、含水又は吸水し、蓚酸イオンとなることでクロム又はその化合物との反応性が高まって成長性異物が生じやすくなる。特に蓚酸の反応性は蓚酸の吸湿状態によって変化し、環境雰囲気の湿度が上昇し、蓚酸が過剰な水分を含む状態になると成長性異物が生成しやすくなる。したがって、成長性異物を抑制する方法としては、マスクパターンの静電破壊が発生しない程度に環境雰囲気の湿度を低くすることも有効であるが、TFT液晶パネル用途マスクの場合には、この方法は採用し難い。
本願明細書中、「蓚酸クロム錯体」とは、蓚酸と、クロム又はクロムの化合物とが反応して生成した錯体、及び該錯体が雰囲気に存在するアンモニア、アミン等の有機塩基性物質やLi、Na、K、Ca等を含む無機塩基性物質と反応して形成した塩を意味する。
以下、生成しうる成長性異物の塩を示す。M及びXは、それぞれ、1価陽イオン及び1価陰イオンを、そしてnは整数を示す。該成長性異物の塩として、トリス(オキサラト)クロム(III )酸塩M 3[Cr(C2O4)3]とその水和物、例えば、(NH4)3[Cr(C2O4)3]・2H2O、(NH4)3[Cr(C2O4)3]・3H2O、K3[Cr(C2O4)3]・3H2O、Li3[Cr(C2O4)3]・5.5H2O、Na3[Cr(C2O4)3]・4.5H2O、Na3(NH4)3[Cr(C2O4)32・7H2O、K3(NH4)3[Cr(C2O4)32・5H2O、Rb3[Cr(C2O4)3]・3H2O、Na3Rb3[Cr(C2O4)32・7H2O、Ag3[Cr(C2O4)3]・nH2O、K(C21H23N2O22[Cr(C2O4)3]・4H2O、(C21H23N2O23[Cr(C2O4)3]・11H2O、Ca3[Cr(C2O4)32・18H2O、Ca3[Cr(C2O4)32・36H2O、CaK[Cr(C2O4)3]・3H2O、CaK[Cr(C2O4)3]・4H2O、Sr3[Cr(C2O4)32・12H2O、Sr(NH4)[Cr(C2O4)3]・4H2O、Sr(NH4)[Cr(C2O4)3]・5H2O、KSr[Cr(C2O4)3]・6H2O、Ba3[Cr(C2O4)32・6H2O、Ba3[Cr(C2O4)32・7H2O、Ba3[Cr(C2O4)32・12H2O、BaK[Cr(C2O4)3]・2H2O、BaK[Cr(C2O4
)3]・3H2Oなどが挙げられる。
また、該成長性異物の塩として、エチレンジアミンビス(オキサラト)クロム(III )酸M[Cr(C2O4)2(C2H8N2)]とその水和物、例えば、(NH4)[Cr(C2O4)2(C2H8N2)]・(NH4)HC2O4・H2Oが挙げられる。また、該成長性異物の塩として、ジアクアビス(オキサラト)クロム(III )酸塩M[Cr(C2O4)2(H2O)2]とその水和物、例えば、K[Cr(C2O4)2(H2O)2]・2H2O、K[Cr(C2O4)2(H2O)2]・3H2O、Na[Cr(C2O4)2(H2O)2]・5H2O、(NH4)[Cr(C2O4)2(H2O)2]・3H2O、Li[Cr(C2O4)2(H2O)2]、Rb[Cr(C2O4)2(H2O)2]、Cs[Cr(C2O4)2(H2O)2]、Mg[Cr(C2O4)2(H2O)2]、Ca[Cr(C2O4)2(H2O)2]、Sr[Cr(C2O4)2(H2O)2]、Ba[Cr(C2O4)2(H2O)2]など挙げられる。また、該成長性異物の塩として、ジヒドロキソビス(オキサラト)クロム(III )酸塩M 3[Cr(C2O4)2(OH)2]とその水和物、例えば、Ag3[Cr(C2O4)2(OH)2]・3H2O、Ca3[Cr(C2O4)2(OH)22・4H2O、K3[Cr(C2O4)2(OH)2]・6H2O、Ag3[Cr(C2O4)2(OH)2]、Pb3[Cr(C2O4)2(OH)2]などが挙げられる。また、該成長性異物の塩として、アクア(ヒドロキソ)ビス(オキサラト)クロム(III )酸塩M 2[Cr(C2O4)2(OH)(H2O)]とその水和物、例えば、K2[Cr(C2O4)2(OH)(H2O)]・2H2O、(NH4)2[Cr(C2O4)2(OH)(H2O)]・H2Oなども挙げられる。
成長性異物として特に生じやすいものは、アンモニウム塩であり、その中でも特にトリス(オキサラト)クロム(III )酸塩M 3[Cr(C2O4)3]とその水和物、例えば、(NH4)3[Cr(C2O4)3]・nH2Oである。
前記の蓚酸クロム錯体のほとんどは、吸湿性、吸水性、及び/又は潮解性があり、湿度によって形状は異なるが、結晶状や液状となる。これらの蓚酸クロム錯体からなる成長性異物は、露光開口部にも生じ、その結果、露光が正常に行われないために、露光欠陥となり、作成された半導体素子や液晶パネルは不良又は欠陥品となる。この露光欠陥が発生するまでの時間は、マスクパターンの形状や種類、大きさ、パターンの種類、工程などで異なり、発生には幅があるが、早い場合には1年〜2年で発生することがある。また、雰囲気中の蓚酸濃度が低い場合、該異物の発生に因り露光欠陥が生じるまでの時間は長くなる。
以下、上記成長性異物の抑制方法について具体的に説明する。
該成長性異物を抑制する方法としては、ペリクル膜の蓚酸透過性を低下させる方法、TFT液晶パネルの製作環境の蓚酸濃度や湿度を低下させる方法、マスクのクロム表面を保護する方法、マスクパターンや遮光材を蓚酸に対して反応しないものに変更する方法、マスク基板とペリクル膜の間の空間を、蓚酸を含まない気体で置換する方法、マスクに乾燥空気を当てる方法などが考えられる。
これらの方法の中で、ペリクル膜の蓚酸透過性を低下させることで、成長性異物の発生を抑制する方法について説明する。成長性異物を抑制する方法には、マスク上のクロムと蓚酸を接触させないことが必要であり、そのためには蓚酸を透過しにくいペリクル膜を使用すれば、マスクのクロム上に到達する蓚酸量を少なくできるので、成長性異物が発生し、露光欠陥を生じるまでの期間を大幅に延長できると考えられる。また成長性異物が発生し、露光欠陥を生じるまでの期間は、ペリクル膜の透過性に関係しており、70℃72時間における蓚酸透過量が1×10−4mg/cm以下のペリクル膜を用いれば、蓚酸クロム錯体からなる成長性異物が発生して露光欠陥を生じるまでの期間を大幅に延長することができ、またそのマスクの使用上の問題もない。本願発明に係るペリクル膜は、より好ましくは、70℃72時間における蓚酸透過量が5×10−5mg/cm以下であり、光安定剤、又は光安定剤及び酸化防止剤を添加しても蓚酸透過量が5×10−5mg/cm以下である。また、光安定剤(好ましくは光安定剤及び酸化防止剤)を添加することにより、蓚酸透過性の抑制が更に有効に行われる。さらに、超高圧UVランプ光を照射しても蓚酸透過量が5×10−5mg/cm以下である。
蓚酸透過性を低くしたペリクル膜は、膜材料を選択することによって実現できる。具体的に使用できる膜材料としては、無機系材料、有機系材料ともに使用できるが、取り扱い性などの観点から、有機性の高分子材料が好ましい。
そのような材料の中でも蓚酸透過量が少なく、光学物性が優れた材料として、シクロオレフィン系樹脂が挙げられ、ノルボルネンの重合体または共重合体(水素添加したものを含む)、例えば、アペル(登録商標)(三井化学社製)、トパス(登録商標)(ポリプラスチックス株式会社製)、ゼオネックス(登録商標)又はゼオノア(登録商標)(日本ゼオン社製)、アートン(登録商標)(JSR社製)が好ましい。
上記材料を使用するうえで、耐光性をさらに向上させるためには、光安定剤を添加することが好ましい。通常、ペリクル膜の膜材料にはブリードアウトの恐れがあるため、光安定剤の添加は行われないが、光安定剤が液状の光安定剤であると、光安定剤のブリードアウト現象を抑えることができる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系がよく、特に2,2´−5,5´テトラメチルピペリジン誘導体を含んだ化合物が好ましい。例えば、TINUVIN(登録商標)(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)、アデカスタブLAシリーズ(株式会社ADEKA製)、CHIMASSORB(登録商標)(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)、Hostavin(Clariant製)が好ましい。
光安定剤の効果を向上させるために、酸化防止剤であるフェノール系、ホスファイト系を光安定剤とともに添加してもよい。フェノール系酸化防止剤として、例えば、アデカスタブAOシリーズ(株式会社ADEKA製)、IRGANOX(登録商標)(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)が好ましい。ホスファイト系として、例えば、IRGAFOS(登録商標)(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)アデカスタブPEPシリーズ(株式会社ADEKA製)が好ましい。
これらの中で、ペリクル膜とした時の突刺強度が0.15N/μm以上となる材料は、製膜性、及び機械物性に優れるため、ペリクル膜製造の容易性の観点から、好ましい。該強度が低い材料で成膜する場合には、厚くせざるをえず、その結果として光線透過率が低下することになる。
ペリクル膜の作成には、該シクロオレフィン系樹脂を有機溶媒に溶解させたポリマー溶液を使用する。ペリクル膜の耐光性をさらに向上させるためには、前記ポリマー溶液に光安定剤を添加した溶液を使用するか、又は光安定剤及び酸化防止剤を添加した溶液を使用する。使用できる有機溶媒としては、飽和脂肪族炭化水素系化合物、芳香族系化合物、ハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
飽和脂肪族炭化水素系化合物としては、ヘキサン、2-メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、ヘプタン異性体、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、デカン、オクタン異性体、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、4-メチルヘプタン、3-エチルヘキサン、2,2-ジメチルヘキサン、2,3-ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン、3,3−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、2-メチル−3−エチルペンタン、3-メチル−3−エチルペンタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2,2,3,3−テトラメチルブタン、2,2,5−トリメチルヘキサン、ドデカンなどが挙げられる。
芳香族系化合物としては、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、ナフタレン、テトラリン、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、ドデシルベンゼン、パラシメン、リモネンなどが挙げられる。
上記以外の有機溶媒として、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p−ペンタン、ジシクロヘキシル、シクロヘキセン、αーピネン、ジペンテン、デカリン、石油エーテル、石油ベンジン、石油ナフサ、ソルベントナフサ、ケロシン、ショウノウ油、テレビン油、テレビン油類、パイン油、ハロゲン化炭化水素類なども使用できる。
この中で、溶解性が高く、成膜に適した性質を示す等の観点から好適に使用できるのは、非極性有機溶媒であり、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、パラシメン、リモネン、デカリン等が好ましい。製造上の観点から、沸点が110〜200℃の溶媒がより好ましい。使用する溶媒の沸点が110℃以上であると乾燥時の該有機溶媒の回収が行いやすく、一方、使用する溶媒の沸点が200℃以下であると乾燥による溶媒のペリクル膜からの除去が行いやすい。
これらの有機溶媒に前記したシクロオレフィン系樹脂を、室温で又は加温し、攪拌して、溶解せせることにより、成膜に適したポリマー溶液を得ることができる。特に、適正な粘度を得るためには、室温で攪拌し、均一に溶解又は分散した溶液を再加熱することが好ましい。
膜材として使用される該シクロオレフィン系樹脂を有機溶媒に溶かしてなるポリマー溶液の濃度は、使用する有機溶媒によって得られる粘度が異なるため、成膜に適正な粘度をなるように調整する。該濃度は、5wt%〜20wt%が好ましく、さらに均一な膜を得るためには、7wt%〜15wt%が好ましい。
ペリクル膜の膜材のポリマー溶液は、成膜工程によって膜化される。その際に使用するポリマー溶液は、ペリクル膜の透過率を大きく、かつペリクル膜中の異物を少なくするため、吸光度が0.05以下のものが好ましい。
膜の耐光性をさらに向上させるために、前記ポリマー溶液に光安定剤を添加した溶液、又は光安定剤及び酸化防止剤を添加した溶液についても、吸光度0.05以下のものが好ましい。通常、ペリクル膜の膜材料にはブリードアウトの恐れがあるため光安定剤の添加は行われないが、溶液の吸光度0.05以下になるようにシクロオレフィン系樹脂の全重量に対し、0.1重量%以上15重量%以下になるように添加するとブリードアウトを抑制し、且つ、耐光性を向上させることができ、好ましく、1重量%以上10重量%以下になるように添加することがより好ましい。耐光性向上効果を得て、かつブリードアウトしないようにするためには、2重量%以上8重量%以下になるように添加することがさらに好ましい。
酸化防止剤は、光安定剤との相乗効果で光安定剤単独使用よりさらに耐光性向上効果を得るために、シクロオレフィン系樹脂の全重量に対し、0.1重量%以上10重量%以下になるように添加することが好ましく、0.1重量%以上5重量%以下になるように添加することがより好ましい。相乗効果を強め、溶液の吸光度0.05以下およびブリードアウトしないようにするためには、0.1重量%以上3重量%以下になるように添加することがさらに好ましい。
また、ペリクル膜の膜材のポリマー溶液にこれらの光安定剤を添加することは、光安定剤を微細かつ均一に分散させることができ、光線透過の障害となりにくいので、この溶液を用いてペリクル膜を作成した場合、従来のポリマーへの直接練りこみ法に比較して、光線透過率を低下させることなく、添加量を高めることができる。さらに、微細かつ均一に分散した光安定剤を添加した膜材料は、膜材ポリマーへの均一な接触を長期に亘って可能ならしめるので、少ない量でも耐光性を向上させることができる。さらにペリクル膜の膜材のポリマー溶液に光安定剤を添加して作製したペリクル膜を実際のペリクルの使用時においても、光安定剤のブリードアウトや異物の析出も抑制できるため、ペリクル膜用の溶液に安定剤を添加する方法と有効な方法である。常温で液状の光安定剤を使用することは、均一な溶液を作成しやすく、成膜したペリクル膜材中で均一化され易いため、ブリードアウトや異物の析出を抑制できる。また、万が一ブリードアウトした場合にも、液状であるため結晶化することが少なく、露光障害となる異物を生じにくい。
均一に分散させた光安定剤は、不均一に分散した光安定剤に比較して、ペリクル膜の突刺強度などの力学物性に与える影響を小さくすることができる。さらにこれらの均一に分散した光安定剤を含むペリクル膜は耐光性を向上させることができ、この耐光性の指標であるポリマー劣化を抑制することができる。ペリクル膜は露光時に直接露光光源(超高圧水銀灯)から光を受けるため、その紫外線によって、ペリクル膜の膜材ポリマーは劣化する。その劣化によって、ペリクル膜の膜材ポリマーは、吸水性を持つように変化する。これらの現象は耐湿性試験として観察され、均一に分散した光安定剤を含むペリクル膜は、それを含まないペリクル膜に対して、耐湿性を向上させることができる。
ポリマー溶液の吸光度が0.05を超えるものは、成膜後のペリクル膜中にポリマーの未溶解分、ポリマーのゲル状成分が残留している可能性があり、得られるペリクル膜の透過率も低下するため、ペリクル膜を作成する溶液として適していない。
吸光度の高いポリマー溶液であっても、適正な孔径のフィルターでろ過することによって、吸光度を小さくでき、結果的にペリクル膜の成膜に使用可能なポリマー溶液とすることができる場合もある。この場合のろ過方法としては、平均孔径が1μm〜10μmのフィルターで粗ろ過を実施した後に、平均孔径が0.05〜0.5μmの高精度のフィルターでろ過を行う2段ろ過や、3段又は4段以上の数段のフィルターを使用してろ過することも可能である。これらのろ過によって吸光度を悪化させていたポリマー未溶解部、不純物、異物などを除去し、ポリマー溶液の吸光度を小さくすることができれば、成膜後の膜中に異物のないペリクル膜として、成膜することも可能となる。
しかしながら、このようなポリマー溶液のフィルターによるろ過は、費用が高くなること、工程が煩雑となること、異物、気泡の混入源となることなどの理由から成膜の障害となる。また、吸光度を増加させている要因がフィルターろ過によって、完全に除去できない場合には、その後のポリマー溶液の吸光度が、経時的に増加することがある。このため、ペリクル膜の膜材溶液としては、フィルターなどでろ過する前から低い吸光度をもつ溶液が好ましく、前記したように、ペリクル膜の膜材のポリマー溶液としては吸光度が0.05以下の溶液が好ましい。耐光性をさらに向上させるために、前記ポリマー溶液に光安定剤を添加した溶液、又は光安定剤及び酸化防止剤を添加した溶液についても、同じような理由で吸光度0.05以下のものが好ましい。
本発明に係るペリクル膜の成膜に適したポリマー溶液としては、ペリクル膜の突刺強度とポリマー溶液の吸光度の両方を満たす材料として、パラシメン、リモネン、デカリン等の高沸点溶媒に溶解したゼオノア(登録商標)が好適に使用できる。
本発明に係る光安定剤としては、添加してもペリクル膜の突刺強度とポリマー溶液の吸光度の両方を満たす材料として、TINUVIN(登録商標)(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)、アデカスタブLAシリーズ(株式会社ADEKA製)などが好適に使用できる。酸化防止剤としては、IRGANOX(登録商標)(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)が好ましい。
ペリクル膜を成膜する方法としては、シリコンウエハ、石英ガラス、ソーダーライムガラスなどを基板とした、キャスト法、コーティング法、スピンコート法等が用いられるが、膜厚の均一性、製造方法の簡便性からスピンコート法が好ましい。
好ましい成膜条件は使用するシクロオレフィン系樹脂と有機溶媒の性質から変化するが、主膜作製時のスピン時の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、膜厚の均一性を得るために、特に好ましくは100rpm〜500rpmである。またスピン時間はスピン回転数、成膜したペリクル膜の厚み、厚み分布、ペリクル膜の品位などの要素を勘案して調整でき、好ましくは5sec〜2minであり、膜厚を均一にするには10sec〜1minが好ましい。
前記した光安定剤を添加した溶液を用いて成膜した場合においても、上記と同様の成膜条件で行うことが可能である。
スピンコートされた膜は、スピン回転させながらの乾燥、室温乾燥、送風乾燥、ホットプレート上での乾燥又はオーブン乾燥によって有機溶媒を除去し、ペリクル膜となる。乾燥条件は、使用する溶媒や膜材によって異なるが、均一な膜厚を得るために好ましい条件としては、室温で又はポリマー溶液の溶媒の沸点の1/2程度の温度で十分に乾燥させた後、それ以上の温度で乾燥させる2段乾燥又は3段乾燥が好ましい。
また、この膜材から形成されるペリクル主膜の表面に、光学的反射を防止する目的で主膜材より低屈折率の材料からなる反射防止材を片面又は両面に反射防止層として積層させることができる。反射防止材としては、環式又は直鎖状のフッ素置換フルオロアルキルポリエーテルが好適に使用される。反射防止層は、主膜上にスピンコート法により適正な厚みで形成されることにより、ペリクル膜の透過率を向上させることができる。この反射防止層の膜厚は10nm〜500nmであり、反射防止効果を高める観点から、特に好ましくは20nm〜180nmである。TFT液晶パネル製造マスク用のペリクルのように、g線〜i線のブロードバンド露光を使用する場合は、広い波長範囲での平均透過率を向上させるために反射防止層を設けた構成とすることが好ましい。
反射防止層をさらに有する場合を含めて、ペリクル膜の膜厚は0.5〜8μmであることが好ましく、2〜6μmであることがより好ましい。ペリクル膜の膜厚が厚いほど、蓚酸透過性を抑制することができ、膜強度物性を向上させられるため0.5μm以上であることが好ましいが、透過率は厚くするほど低下するため8μm以下が好ましい。
ペリクル膜の平均透過率は、波長350〜700nm間の平均の透過率(%)として表し、この値が低いほど透過率が低く、値が高いほど透過率が高くなる。平均透過率は従来のペリクル膜用途では93%程度が必要であり、好ましくは94%以上必要である。
ペリクル膜の突刺強度は、膜の強度を表す指標であり、値が大きいほど好ましい。ペリクル膜の突刺強度として0.075N/μm以上の強度があれば、十分に注意深く取り扱うことによってペリクル膜として使用することが可能ではあるが、ペリクル膜は、0.15N/μm以上の突刺強度を有することが好ましく、0.20N/μm以上の突刺強度を有することがより好ましい。
枠体の材質としては、アルミニウムやその合金、例えばジュラルミン、或いは、鉄や鉄系合金、例えばステンレスといったペリクルに用いられる公知の材料が挙げられる。これらの中で大型化による枠体の自重の増加を考慮すれば、軽量で、かつ、剛性を有するものを用いることが好ましく、例えば、アルミニウムやその合金が好ましい。
ペリクル膜を枠体に接着するための接着剤としては、紫外線硬化型接着剤、フッ素樹脂系接着剤などの従来一般的に用いられているものを使用することができる。また、ペリクルをマスクに取り付けるための粘着材としては、公知のものを用いることが可能である。一般的には、粘着材として、スチレンエチレンブチレンスチレン系、スチレンエチレンプロピレンスチレン系、オレフィン系等のホットメルト粘着材、シリコーン系粘着材、アクリル系粘着材、発泡フィルム等の基材からなる両面粘着テープを用いることが可能である。ホットメルト粘着材に関しては、通常のシリンジ等を用いる押出し塗布によって枠体に配置することができる。さらに、押出し塗布後、熱、圧力をかけながら平面板のような成型盤でプレス等を行ってもよい。
本発明においては、蓚酸の透過を抑制するペリクル膜として、蓚酸の透過性が少ないものほど蓚酸クロム錯体とその塩の発生が抑制される。すなわち70℃72時間における蓚酸透過量が1×10−4mg/cm以下のペリクル膜は、後述の比較例で示す従来使用さていたペリクル膜に比較して、成長性異物発生が発生し露光欠陥を生じるまでの期間を大幅に延長することができる。
加速実験法は、蓚酸クロム錯体からなる成長性異物の発生を簡易的に確認する方法であり、本発明に係るペリクルと、従来使用されていたペリクルとの成長性異物の発生の差を実際の成長性異物の発生の有無をもって簡便に確認できるため、かかる加速実験法により、本発明のペリクルの効果を実証することができる。
本願発明に係るペリクルは、半導体素子の製造にも用いることができるが、ペリクルを粘着材層でハードクロムマスクに貼り付ける工程、ITO電極を有し感光性レジストが塗布されてなるフラットディスプレーパネル基板を該マスクを通して露光する工程、該感光性レジストを現像する工程、該ITO電極を、蓚酸を含むエッチング液でエッチングする工程を含むフラットパネルディスプレーの製造方法に好適に使用される。
TFT液晶パネル基板等のフラットパネルディスプレー基板には、透明かつ導電性を有する材料としてITO(インジウムスズオキサイド)が電極に使用されている。ITOからなる電極層のパターニングにもフォトリソグラフィ技術が使用されるが、前述したように近年ではITOのエッチング液として蓚酸が使用されている。従って、フラットディスプレーパネル基板の製造環境は、クロムマスクを長期間にわたって使用すると、雰囲気中の微量の蓚酸により成長性異物が発生しうる環境であるが、上述のペリクルを使用することによって、該成長性異物の発生を防止し、また、使用期間中の発生がない程度にまで遅らせることが可能となる。
(溶液の吸光度測定方法)
樹脂を、溶媒に所定濃度で溶解し、1日間静置脱泡したポリマー溶液をUV−2450(島津製作所製)を用いて、光路長50mmの石英セルに、測定するポリマー溶液の溶媒と同一溶媒を入れたときをリファレンスとし、同じく光路長50mmの石英セルに、測定ポリマー溶液を入れて、測定したときの850nmの吸光度(ABS)を測定した。
(蓚酸透過量の測定方法)
ペリクル(フレームの外寸、縦149mm×横113mm×高さ4.2mm、フレームの幅2mm)のフレームの内寸法と同じ大きさの濾紙(NO.4A,東洋濾紙株式会社)、を50℃の純水で1hr、3回洗浄し乾燥させた。この濾紙をペリクルのフレーム内を完全に覆うように入れ、該ペリクルを3mm厚のガラス板(縦152mm×横152mm)上に気密性が保たれるように2液混合型エポキシ系接着剤で固定した。これを、ガラス容器(容積3.8L)に、無水蓚酸(和光純薬工業株式会社製)2gと共に常圧下で入れ、密閉した状態で、70℃72時間処理し、ペリクル膜を透過した蓚酸が濾紙に吸着するようにした。
上記処理後の濾紙を取り出した後、濾紙が吸着した蓚酸を、40℃、50mlの純水で抽出し、この水の中の蓚酸量(mg)をイオンクロマトグラフィ法で測定した。この蓚酸量をペリクル膜の面積(cm)で割って、70℃で72時間における蓚酸透過量(mg/cm)とする。尚、測定に使用した膜厚を付記する。また、密閉したガラス容器に無水蓚酸を入れず、またペリクル膜無しで接着剤付きフレームのみ実験した場合の蓚酸量の測定結果は、1×10−6(mg/cm)以下であった。
(成長性異物発生の加速試験法)
成長性異物発生の加速試験法は、ペリクルを低反射タイプのマスクブランクス(クリーンサアフェイス技術株式会社製:品番CQL6012BU、縦152.0mm、横152.0mm、厚み3.0mmの片面に酸化クロム膜を形成したもの)に貼り付け、密閉したガラス容器(容積3.8L)に2gの無水蓚酸(和光純薬工業株式会社製)と共に入れ、70℃で3日間処理した。次にこのペリクルを除去した後、このマスクブランクスを純水50ccと共に密閉したガラス容器中に入れ、24時間保管した。さらに、このマスクブランクスを10%アンモニア水溶液10gを入れたガラス密閉容器に入れ、70℃で2時間保管した(図1参照)。
このマスクブランクスの酸化クロム面の表面の、ペリクルで保護されていた部分を水で洗浄し、この洗浄水を回収後、70℃で乾燥させた。また乾燥した残留物が得られた場合には、この残留物のIRスペクトルをSpectrum100(株式会社パーキンエルマージャパン製)を用い、ATR法で測定し、IRスペクトルの1640〜1670cm−1、1360〜1390cm−1、1240〜1260cm−1の3箇所すべてにピークトップが見られるか否かで、蓚酸クロム錯体からなる成長性異物の発生を確認した。蓚酸クロム錯体からなる成長性異物の一例のIRスペクトルを図2に示す。
(平均透過率測定方法)
透過率は、UV−2450(島津製作所製)を用いて膜のない状態をブランク(100%)として、膜のある状態との比を百分率で表し、波長350〜700nmでの透過率を波長0.5nmおきに測定した値の平均値を平均透過率とした。
(突刺強度測定方法)
突刺強度の測定は直径6mmの穴を開けた保持器具にペリクル膜を固定し、先端が1mmφの半球状で太さ2mmの突刺棒で0.5mm/minの速度で突き刺すときの力の最大値(N)を測定することで行った。また測定値は突き刺した膜の厚みで割ったもので表す。また測定は23℃、相対湿度45%RH下の雰囲気に24hr以上放置した後に実施した。
(紫外光照射方法)
光源として、超高圧UVランプ(ウシオ電機株式会社製)を用いて、直径11cm程度の円状に光が照射されるようにした。その円内にペリクル膜を照射面が何物にも直接接触しないように置いて、紫外光をペリクル膜に照射した。
ペリクル膜の照射量は、紫外線照度計(株式会社オーク製作所製)の受光器UV−SD35(測定波長領域310nmから385nm)を用いて計測し、得られた照度(mW/cm)に照射時間(sec)をかけて、得られる照射量(mJ/cm)を1000で割った値を照射量(J/cm)とした。
(光安定剤のブリードアウト実験)
ぺリクル(フレームの外寸、縦149mm×横113mm×高さ4.2mm、フレームの幅2mm)を十分に洗浄した石英ガラス板(厚み3mm,縦152mm×横152mm)に貼り付け、密閉したガラス容器(容積3.8L)に膜が接触しないように入れ、密閉して70℃で6日間加熱した。この膜を顕微鏡観察、集光灯下、及び単色光下での目視検査などを任意に実施し、処理前の膜面と比較することで、異物の有無を判定した。必要に応じて平均透過率測定を加熱前後の膜で実施した。
(耐湿性試験)
ぺリクル(フレームの外寸、縦149mm×横113mm×高さ4.2mm、フレームの幅2mm、フレーム粘着材なし)の中央部に直径95mm2の超高圧水銀灯光5万J/cm2を照射したものを準備し、これらを恒温恒湿器で温度22℃、相対湿度45%の状態に1時間置いて観察した後、同温度で相対湿度を97%まで20分かけて増加させたときの膜面しわを観察した。
(実施例1)
シクロオレフィン系樹脂であるZeonor1060R(日本ゼオン社製ゼオノア(登録商標))10gをリモネン(和光純薬工業株式会社製)90gに入れ、室温で4時間攪拌し溶解させ、70℃で4時間攪拌し、溶解させた。この溶液の吸光度は0.04と透明な溶液であった。この溶液をシリコンウエハ上に滴下し、スピンコーター約300rpmで回転塗布した後、160℃のホットプレートで30分間乾燥させペリクル膜を得た。
得られた膜上にアモルファスフッ素樹脂を含む溶液であるサイトップ CTX−809SP2(旭硝子(株)製商品名)をパーフルオロトリブチルアミン(フロリナートFC−43住友スリーエム(株)製商品名)で固形分2%に希釈したものを滴下し、スピンコーター上で300rpmで回転塗布した後、120℃で乾燥させ厚み4.0μmのペリクル膜を得た。
このペリクル膜を展張して、上縁面に接着剤を塗布したアルミ製の枠体(寸法)(外形、縦149mm×横113mm×高4.2mm、枠幅2mm)に貼り付け、枠体からはみ出た不要部分のペリクル膜を切断除去した。このペリクル膜の70℃72時間における蓚酸透過量は4.5×10−5mg/cm(膜厚4.0μ)であった。平均透過率は94%であり、ペリクル膜として好適に使用できる光透過性を示した。ペリクル膜の突刺強度は0.42N/μmであり、十分な強度を有していた。
このペリクルに紫外光を1万J/cm照射し、平均透過率を測定したところ、94%であった。突刺強度は0.31N/μmであり、十分な強度を有していた。また、紫外光を照射したペリクルの70℃72時間における蓚酸透過量は4.4×10−4mg/cm(膜厚4.0μm)であった。
次に成長性異物発生の加速試験法で成長性異物の発生の有無を確認したところ、マスクブランクスから得た洗浄水の残留物は、得られなかった。
(実施例2)
シクロオレフィンポリマーであるZeonor1060R(日本ゼオン社製ゼオノア(登録商標))10gをデカヒドロナフタレン(キシダ化学株式会社製)90gに添加し、室温で4時間攪拌し溶解させ、70℃で4時間攪拌し、溶解させた。この溶液の吸光度は0.02であり、透明な溶液であった。この溶液をシリコンウエハ上に滴下し、スピンコーターを用いて300rpmで回転塗布した後、160℃のホットプレートで30分間乾燥させ。ペリクル膜を得た。得られた膜上にアモルファスフッ素樹脂を含む溶液であるサイトップ CTX−809SP2(旭硝子(株)製商品名)をパーフルオロトリブチルアミン(フロリナートFC−43 住友スリーエム(株)製商品名)で固形分2%に希釈したものを滴下し、スピンコーター上で、300rpmで回転塗布した後120℃で乾燥させ、厚み4μmのペリクル膜を得た。
このペリクル膜を展張して、上縁面に接着剤を塗布したアルミ製の枠体(外形、縦149mm×横113mm×高4.2mm、枠幅2mm)に貼り付け、枠体からはみ出た不要部分のペリクル膜を切断除去した。
このペリクルの70℃72時間における蓚酸透過量は4.4×10−5mg/cm(膜厚4.0μm)であった。該ペリクル膜の光線透過率はUV−2450(島津製作所製)を用いて波長350〜700nmでの透過率の平均値を測定したところ、94%であった。突刺強度は0.42N/μmであり、十分な強度を有していた。
このペリクルに紫外光を1万J/cm照射し、平均透過率を測定したところ、94%であった。突刺強度は0.31N/μmであり、十分な強度を有していた。また、紫外光を照射したペリクルの70℃72時間における蓚酸透過量は4.5×10−4mg/cm(膜厚4.0μm)であった。
次に成長性異物発生の加速試験法で成長性異物の発生の有無を確認したところ、マスクブランクスから得た洗浄水の残留物は、得られなかった。
(実施例3)
シクロオレフィンポリマーであるZeonor1060R(日本ゼオン社製ゼオノア(登録商標))10gをデカヒドロナフタレン(キシダ化学株式会社製)90gに添加し、室温で4時間攪拌し溶解させ、70℃で4時間攪拌し、溶解させた。この溶液に25℃で液状のTINUVIN292(チバスペシャリティケミカル)0.5gを添加し、室温で6時間攪拌し、溶解させた。この溶液の吸光度は0.002であり、透明な溶液であった。この溶液をシリコンウエハ上に滴下し、スピンコーターを用いて300rpmで回転塗布した後、160℃のホットプレートで30分間乾燥させ。ペリクル膜を得た。得られた膜上にアモルファスフッ素樹脂を含む溶液であるサイトップ CTX−809SP2(旭硝子(株)製商品名)をパーフルオロトリブチルアミン(フロリナートFC−43 住友スリーエム(株)製商品名)で2%に希釈したものを滴下し、スピンコーター上で、300rpmで回転塗布した後120℃で乾燥させ、厚み6μmのペリクル膜を得た。
このペリクル膜を展張して、上縁面に接着剤を塗布したアルミ製の枠体(外形、縦149mm×横113mm×高4.2mm、枠幅2mm)に貼り付け、枠体からはみ出た不要部分のペリクル膜を切断除去した。
このペリクルの70℃72時間における蓚酸透過量は4.3×10−6mg/cm(膜厚6.0μm)であった。該ペリクル膜の光線透過率はUV−2450(島津製作所製)を用いて波長350〜700nmでの透過率の平均値を測定したところ、94%であった。突刺強度は0.42N/μmであり、十分な強度を有していた。
このペリクルに紫外光を1万J/cm照射し、平均透過率を測定したところ、94%であった。突刺強度は0.37N/μmであり、十分な強度を有していた。また、紫外光を照射したペリクルの70℃72時間における蓚酸透過量は4.4×10−6mg/cm(膜厚6.0μm)であった。
次に成長性異物発生の加速試験法で成長性異物の発生の有無を確認したところ、マスクブランクスから得た洗浄水の残留物は、得られなかった。
また光安定剤のブリードアウト試験方法を行い、膜面を顕微鏡観察したが、異物は認められなかった。また集光灯、単色光下で目視観察した結果、加熱後での変化は認められなかった。また平均透過率は、加熱前94.8%で、加熱後94.8%であり、変化は認められなかった。
さらに耐湿性試験で膜面中央部のしわの発生状況を目視観察したところ、相対湿度45%から97%ではしわの発生は認められなかった。
(実施例4)
シクロオレフィンポリマーであるZeonor1060R(日本ゼオン社製ゼオノア(登録商標))10gをデカヒドロナフタレン(キシダ化学株式会社製)90gに添加し、室温で4時間攪拌し溶解させ、70℃で4時間攪拌し、溶解させた。この溶液に25℃で液状のTINUVIN292(チバスペシャリティケミカル)0.5g及びirganox1010(チバスペシャリティケミカル)0.05gを添加し、室温で6時間攪拌し、溶解させた。この溶液の吸光度は0.002であり、透明な溶液であった。この溶液をシリコンウエハ上に滴下し、スピンコーターを用いて300rpmで回転塗布した後、160℃のホットプレートで30分間乾燥させ。ペリクル膜を得た。得られた膜上にアモルファスフッ素樹脂を含む溶液であるサイトップ CTX−809SP2(旭硝子(株)製商品名)をパーフルオロトリブチルアミン(フロリナートFC−43 住友スリーエム(株)製商品名)で2%に希釈したものを滴下し、スピンコーター上で、300rpmで回転塗布した後120℃で乾燥させ、厚み6μmのペリクル膜を得た。
このペリクル膜を展張して、上縁面に接着剤を塗布したアルミ製の枠体(外形、縦149mm×横113mm×高4.2mm、枠幅2mm)に貼り付け、枠体からはみ出た不要部分のペリクル膜を切断除去した。
このペリクルの70℃72時間における蓚酸透過量は4.5×10−6mg/cm(膜厚6.0μm)であった。該ペリクル膜の光線透過率はUV−2450(島津製作所製)を用いて波長350〜700nmでの透過率の平均値を測定したところ、94%であった。突刺強度は0.42N/μmであり、十分な強度を有していた。
このペリクルに紫外光を1万J/cm照射し、平均透過率を測定したところ、94%であった。突刺強度は0.37N/μmであり、十分な強度を有していた。また、紫外光を照射したペリクルの70℃72時間における蓚酸透過量は4.4×10−6mg/cm(膜厚6.0μm)であった。
次に成長性異物発生の加速試験法で成長性異物の発生の有無を確認したところ、マスクブランクスから得た洗浄水の残留物は、得られなかった。
また、光安定剤のブリードアウト実験を行い、膜面を顕微鏡観察したが、異物は認められなかった。集光灯、単色光下で目視観察した結果、加熱残後での変化も認められなかった。平均透過率は、加熱前94.8%で、加熱後94.7%であり、ほとんど変化は認められなかった。
さらに耐湿性試験で膜面中央部のしわの発生状況を目視観察したところ、相対湿度45%時、97%時の両条件でしわの発生は認められなかった。
(比較例1)
シクロオレフィン系樹脂であるZeonex480R(日本ゼオン社製ゼオネックス(登録商標))10gをリモネン(和光純薬工業株式会社製)90gに添加し、室温で4時間攪拌し溶解させ、70℃で4時間攪拌し、溶解させた。この溶液の吸光度は0.04であり、透明な溶液であった。この溶液をシリコンウエハ上に滴下し、スピンコーターを用いて300rpmで回転塗布した後、160℃のホットプレートで30分間乾燥させ、ペリクル膜を得た。得られた主膜上にアモルファスフッ素樹脂を含む溶液であるサイトップCTX−809SP2(旭硝子(株)製商品名)をパーフルオロトリブチルアミン(フロリナートFC−43 住友スリーエム(株)製商品名)で固形分2%に希釈したものを滴下し、スピンコーター上で、300rpmで回転塗布した後、120℃で乾燥させた。このペリクル膜は強度が低く、シリコンウエハから剥離することが難しく、膜には剥離時に生じた欠陥が多数あり、ペリクル膜として使用できるものではなかった。またこの膜の平均透過率は80%であり、突刺強度は0.02N/μmであり、ペリクル膜として透過率、強度共に十分なものではなかった。
(比較例2)
シクロオレフィン系樹脂であるZeonex480R(日本ゼオン社製ゼオネックス(登録商標))10gをリモネン(和光純薬工業株式会社製)90gに添加し、室温で4時間攪拌し溶解させ、70℃で4時間攪拌し、溶解させた。この溶液に25℃で粉末状のアデカスタブLA−62P(株式会社ADEKA製)0.5gを添加し、室温で6時間攪拌し、溶解させた。この溶液の吸光度は0.04であり、透明な溶液であった。この溶液をシリコンウエハ上に滴下し、スピンコーターを用いて100rpmで回転塗布した後、160℃のホットプレートで45分間乾燥させ、ペリクル膜を得た。得られた主膜上にアモルファスフッ素樹脂を含む溶液であるサイトップ CTX−809SP2(旭硝子(株)製商品名)をパーフルオロトリブチルアミン(フロリナートFC−43 住友スリーエム(株)製商品名)で固形分2%に希釈したものを滴下し、スピンコーター上で、300rpmで回転塗布した後、120℃で乾燥させ、厚み10.0μmのペリクル膜を得た。
このペリクル膜を展張して、上縁面に接着剤を塗布したアルミ製の枠体(外形、縦149mm×横113mm×高4.2mm、枠幅2mm)に貼り付け、枠体からはみ出た不要部分のペリクル膜を切断除去した。この膜の70℃72時間における蓚酸透過量は2.5×10−5mg/cm(膜厚10μ)であった。膜はわずかに白化しており、平均透過率は80%であった。突刺強度は0.04N/μmであり、ペリクル膜として透過率、強度共に十分なものではなかった。
(比較例3)
アモルファスフッ素樹脂を含む溶液であるサイトップ(旭硝子(株)製商品名)CTX−809SP2をシリコンウエハ上に滴下し、スピンコーター上で300rpmで回転塗布した後、70℃で10分間乾燥させた後、180℃40分で乾燥させ、厚み4μmのペリクル膜を得た。
このペリクル膜を展張し、上縁面に接着剤を塗布したアルミ製の枠体(外形、縦149mm×横113mm×高4.2mm、枠幅2mm)に貼り付け、枠体からはみ出た不要部分のペリクル膜を切断除去した。このペリクルの70℃72時間における蓚酸透過量は5×10−4mg/cm(膜厚4.0μ)であった。該ペリクル膜の平均透過率は94%、突刺強度は0.20N/μmであり、ペリクル膜として突刺強度は十分なものの、蓚酸透過量が大きかった。
次に成長性異物発生の加速試験法で成長性異物の発生の有無を確認したところ、マスクブランクスから得た洗浄水の残留物では、IRスペクトルの1640〜1670cm−1、1360〜1390cm−1、1240〜1260cm−1の3箇所すべてにピークトップが見られ、蓚酸クロム錯体からなる成長性異物の発生が認められた。
本発明に係るペリクルは、半導体素子の製造分野、及び大型のフラットパネルディスプレー用の液晶パネルの製造分野において好適に使用できる。
1 ペリクルを取り付けたマスクブランクス
2 ペリクルをはずしたマスクブランクス
3 密閉容器
4 無水蓚酸
5 純水
6 10%アンモニア水溶液

Claims (12)

  1. 枠体、該枠体の下縁面側に積層された粘着材層、及び該枠体の上縁面側に展張されたペリクル膜を含むペリクルであって、該ペリクル膜は、シクロオレフィン系樹脂を有機溶媒に溶解させてなる吸光度0.05以下のポリマー溶液を、基材上に塗布乾燥させて形成され、形成された該ペリクル膜の突刺強度は、0.15N/μm以上であり、かつ、形成された該ペリクル膜の厚さは、0.5〜8μmであることを特徴とする前記ペリクル。
  2. 前記ペリクル膜の片面又は両面に、前記シクロオレフィン系樹脂の屈折率よりも低い屈折率を有する材料から形成された厚さ10〜500nmの反射防止層をさらに設けてなる、請求項1に記載のペリクル。
  3. 枠体、該枠体の下縁面側に積層された粘着材層、及び該枠体の上縁面側に展張されたペリクル膜を含むペリクルであって、該ペリクル膜は、シクロオレフィン系樹脂と該シクロオレフィン系樹脂の全重量に対し0.1重量%以上15重量%以下の光安定剤とを有機溶媒に溶解させてなる吸光度0.05以下のポリマー溶液を、基材上に塗布乾燥させて形成され、形成された該ペリクル膜の突刺強度は、0.15N/μm以上であり、かつ、形成された該ペリクル膜の厚さは、0.5〜8μmであることを特徴とする前記ペリクル。
  4. 前記光安定剤が常温で液状である、請求項3に記載のペリクル。
  5. 前記ポリマー溶液に、前記シクロオレフィン系樹脂の全重量に対し0.1重量%以上10重量%以下の酸化防止剤をさらに添加する、請求項3又は4に記載のペリクル。
  6. 前記ペリクル膜の片面又は両面に、前記シクロオレフィン系樹脂の屈折率よりも低い屈折率を有する材料から形成された厚さ10〜500nmの反射防止層をさらに設けてなる、請求項3〜5のいずれか1項に記載のペリクル。
  7. 枠体、該枠体の下縁面側に積層された粘着材層、及び該枠体の上縁面側に展張されたペリクル膜を含むペリクルの製造方法であって、以下のステップ:
    シクロオレフィン系樹脂を有機溶媒に溶解させて吸光度0.05以下のポリマー溶液を
    調製する調製ステップ、及び
    得られたポリマー溶液を、基材上に塗布乾燥させて、厚さ0.5〜8μm、かつ、突刺強度は、0.15N/μm以上のペリクル膜を成膜する成膜ステップ、
    含むことを特徴とするペリクルの製造方法。
  8. 前記成膜ステップの後に、前記ペリクル膜の片面又は両面に、前記シクロオレフィン系樹脂の屈折率よりも低い屈折率を有する材料から形成された厚さ10〜500nmの反射防止層を成膜するステップを、さらに含む、請求項7に記載のペリクルの製造方法。
  9. 枠体、該枠体の下縁面側に積層された粘着材層、及び該枠体の上縁面側に展張されたペリクル膜を含むペリクルの製造方法であって、以下のステップ:
    シクロオレフィン系樹脂と該シクロオレフィン系樹脂の全重量に対し0.1重量%以上15重量%以下の光安定剤とを有機溶媒に溶解させて吸光度0.05以下のポリマー溶液を調製する調製ステップ、及び
    得られたポリマー溶液を、基材上に塗布乾燥させて、厚さ0.5〜8μm、かつ、突刺強度は、0.15N/μm以上のペリクル膜を成膜する成膜ステップ、
    含むことを特徴とするペリクルの製造方法。
  10. 前記光安定剤が常温で液状である、請求項9に記載のペリクルの製造方法。
  11. 前記調製ステップにおいて、前記ポリマー溶液に、前記シクロオレフィン系樹脂の全重量に対し0.1重量%以上10重量%以下の酸化防止剤をさらに添加する、請求項9又は10に記載のペリクルの製造方法。
  12. 前記成膜ステップの後に、前記ペリクル膜の片面又は両面に、前記シクロオレフィン系樹脂の屈折率よりも低い屈折率を有する材料から形成された厚さ10〜500nmの反射防止層を成膜するステップをさらに含む、請求項9〜11のいずれか1項に記載のペリクルの製造方法。
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