(第1実施形態)
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
(アキューム診断装置の機械的構成)
図1に示すように、本実施形態に係るアキューム診断装置10は、鋼板、銅板、アルミ板などの帯状体2の帯状体生産ライン1(図2参照)に設置されたアキューム30に設けられ、帯状体2の振動を直接測定している。
アキューム30は、4個の移動ロール11,12,13,14から構成される一方側ロール15と、3個の固定ロール21,22,23から構成される他方側ロール25と、からなるロール対を複数有している。なお、一方側ロール15および他方側ロール25の数はこれに限定される必要はない。一方側ロール15は、図示しない駆動装置に接続された架台20に設置されており、駆動装置の駆動によって架台20は、上限位置と下限位置の間を昇降することができる。これにより、一方側ロール15は、他方側ロール25に対して、近づいたり、遠ざかったりすることができるため、ロール対のロール間隔が伸縮可能になっている。また、帯状体2は、一方側ロール15と他方側ロール25とに交互に掛け渡されている。
アキューム30のロール対に掛け渡された各帯状体2の振動は、アキューム診断装置10によって測定される。アキューム診断装置10は、図1に示すように、複数の振動センサA,B,C,・・・、センサケーブル8、支持部材7、シリンダ装置5、および診断コントローラ100を有している。
振動センサA,B,C,・・・は、各帯状体2における幅方向の両端部に夫々設けられている。具体的には、各帯状体2の一方の端には8個の振動センサA,B,C,D,E,F,G,Hが夫々設けられており、もう一方の端にも8個の振動センサA’,B’,C’,D’,E’,F’,G’,H’が夫々設けられている。また、振動センサA,B,C,D,E,F,G,Hと振動センサA’,B’,C’,D’,E’,F’,G’,H’とは、夫々が対になるように、各帯状体2の両端部に2個づつ設けられている。
また、振動センサA,B,C,・・・は、各ロールに掛け渡された各帯状体2の振動を夫々測定して振動データとする役割を有する。具体的には、ロール対のロール間隔が伸縮していない帯状体2の通板時において、各ロールに掛け渡された各帯状体2には、帯状体2の通板時の振動が伝わる。この各帯状体2に伝わった振動は振動センサA,B,C,・・・によって夫々測定され、その振動データが後述する振動分析器50によって分析されるようになっている。なお、振動センサA,B,C,・・・には、レーザ変位計、過電流式変位計、カメラを用いた画像による変位測定装置といった非接触式の装置を用いることができる。さらに、各帯状体2に直接接触することによって振動を測定することも可能だが、帯状体2に疵が生じる要因となりえるため、非接触式の方が好ましい。
センサケーブル8は、各振動センサA,B,C,・・・に夫々設けられており、各振動センサA,B,C,・・・からの振動データを振動分析器50に伝送する役割を有する。
支持部材7は、センサケーブル8を配線すると共に、振動センサA,B,C,・・・を支持している。
シリンダ装置5は、支持部材7に設けられ、矢印方向Sに伸縮することによって、振動センサA,B,C,・・・を帯状体2に近づけたり、遠ざけたりする。具体的には、図2に示すように、巻き出し側のアキューム30において、通常帯状体2の生産時はアキューム30の一方側ロール15は上限位置にある。しかし、ロール交換時には、一方側ロール15は上限位置から下限位置に昇降移動するようになっている。この時、一方側ロール15が下がってくると、各帯状体2に設けられ、その振動を測定していた振動センサA,B,C,・・・は、一方側ロール15にぶつかってしまう。そこで、図1に示すシリンダ装置5によって、振動センサA,B,C,・・・は、帯状体2から遠ざかって退避位置に移動するように回避動作を行うようになっている。また、ロール交換後には、一方側ロール15が今度は下限位置から上限位置に移動するため、その移動に伴い、シリンダ装置5によって、振動センサA,B,C,・・・は、帯状体2に近づけられ、再度各帯状体2の振動を測定するようになっている。
診断コントローラ100は、振動分析器50と測定制御装置60とを有している。振動分析器50は、振動センサA,B,C,・・・からの振動データを周波数分析する。なお、振動分析器50によって分析された周波数分析結果からは、ロールの回転数成分、ロール軸受けの回転体の回転数成分、帯状体2にかかる張力に対応した周波数成分が検出され、ロールなどに全く異常が無い場合は、各帯状体2の周波数分析結果はほぼ同じ結果を示すことになる。一方、ロールなどに異常が生じた場合、各帯状体2間での周波数分析結果には差異が生じるため、この差異を検知することによって、振動分析器50は、アキューム30の異常を診断する。また、測定制御装置60は、シリンダ装置5を制御して、振動センサA,B,C,・・・の振動測定を開始、または停止をする。
(アキューム診断装置の内部構成)
図3に示すように、アキューム診断装置10が有する診断コントローラ100は、各振動センサA,B,C,・・・(図1参照)に設けられた複数のセンサケーブル8と、振動センサA,B,C,・・・の回避動作をするシリンダ装置5と、に接続されている。
診断コントローラ100における測定制御装置60(図1参照)は、コントローラ107と、センサ駆動部101と、移動駆動部102と、から構成される。
コントローラ107は、アキューム30の昇降移動に伴い、センサ駆動部101を制御して、各振動センサA,B,C,・・・による帯状体2の振動測定を開始、または停止させる。また、コントローラ107は、アキューム30の昇降移動に伴い、移動駆動部102を制御して、シリンダ装置5を駆動し、各振動センサA,B,C,・・・を帯状体2に近づけたり遠ざけたりする。
センサ駆動部101は、コントローラ107の制御信号に基づき、振動センサA,B,C,・・・による帯状体2の振動測定を開始、または停止する。
移動駆動部102は、コントローラ107の制御信号に基づき、シリンダ装置5を駆動し、各振動センサA,B,C,・・・を帯状体2に近づけたり遠ざけたりする。
また、診断コントローラ100における振動分析器50(図1参照)は、コントローラ107と、選択部105と、セレクタ部103と、D/A変換部104と、振動分析部106と、から構成される。
コントローラ107は、選択部105を制御して、セレクタ部103を駆動し、帯状体2の振動を測定する振動センサA,B,C,・・・を決定させる。
また、コントローラ107は、振動分析部106を制御して、振動センサA,B,C,・
・・で測定された振動に基づく振動データを周波数分析させる。そして、コントローラ107は、その周波数分析結果を振動分析部106により後述する記憶部108に格納させる。さらに、コントローラ107は、振動分析部106を制御して、周波数分析結果を各帯状体2ごとに比較させる。そして、コントローラ107は、その比較結果からアキューム30の異常を診断し、その結果を振動分析部106により記憶部108に格納させる。
選択部105は、コントローラ107の制御信号に基づき、セレクタ部103を駆動し、帯状体2の振動を測定する振動センサA,B,C,・・・を決定させる。
セレクタ部103は、選択部105の制御信号に基づき、帯状体2の振動を測定する振動センサA,B,C,・・・を決定する。
D/A変換部104は、振動センサA,B,C,・・・からの振動データをデジタル信号に変換して、振動分析部106に出力する。
振動分析部106は、コントローラ107の制御信号に基づき、D/A変換部104によって変換されたデジタルの振動データを周波数分析し、その周波数分析結果を記憶部108に格納する。また、振動分析部106は、コントローラ107の制御信号に基づき、周波数分析結果を各帯状体2ごとに比較し、その比較結果からアキューム30の異常を診断し、その結果を記憶部108に格納する。
また、診断コントローラ100は、記憶部108と、操作部109と、表示部110と、を有している。
記憶部108は、後述する図4に示す周波数分析テーブルと、図5に示す異常報知テーブルと、図6に示す報知内容テーブルと、を記憶している。周波数分析テーブルには、上記の周波数分析結果が格納されており、異常報知テーブルには、上記の比較結果に基づくアキューム30の異常診断の結果が格納されている。また、報知内容テーブルには、異常報知テーブルに格納されたアキューム30の異常診断の結果に基づき、後述する表示部110に報知されるアキューム30の異常内容が格納されている。
操作部109は、図示しない操作スイッチと接続されており、作業者による操作スイッチの操作に基づき、コントローラ107に操作信号を出力する。
表示部110は、図示しない液晶表示装置と接続されており、コントローラ107の制御に基づき、アキューム30の異常診断結果を液晶表示装置に表示させて、作業者にアキューム30の異常を報知する。
図1に示すように、上記の構成を有するアキューム診断装置10によれば、アキューム30の外部に設けられた振動センサA,B,C,・・・によって、各ロールに掛け渡された各帯状体2の振動が直接的に測定され、振動分析器50によってその振動データが周波数分析、比較されることでアキューム30の異常が検出される。このように、アキューム30の動きに依存することなく、各帯状体2の振動を直接測定することでアキューム30の異常を診断できるため、従来の様な移動ロール11,12,13,14やそのロール軸受けに異常を検出する装置を設けた場合に必要となる、アキューム30に合わせて動くケーブルや、そのケーブルが絡まったり他装置に接触したりしないようにケーブルを巻き出し巻き取りする装置を別に準備する必要がない。従って、ケーブルやそれに伴う装置を準備する必要がない分、コストが掛からず、容易にアキューム30の異常を検出することができる。
(周波数分析テーブル)
図4に示す周波数分析テーブルは、振動センサA,B,C,・・・毎に対応して、周波数分析結果欄、1次ピーク欄および2次ピーク欄を有している。
周波数分析結果欄には、各振動センサA,B,C,・・・で測定された振動に基づく振動データの周波数分析結果が格納されており、具体的には、周波数fと周波数ごとの振幅xが格納されている。
1次ピーク欄には、周波数分析結果に基づいて、最初に共振する1次ピークでの周波数fp1とその振幅xp1が格納されている。
2次ピーク欄には、周波数分析結果に基づいて、2回目に共振する2次ピークでの周波数fp2とその振幅xp2が格納されている。
(異常報知テーブル)
図5に示す異常報知テーブルは、報知番号毎に対応して、報知パターン欄を有している。なお、報知番号とは、報知番号a〜dまであり、後述する報知内容テーブルに格納されたアキューム30の異常内容に対応する番号である。
報知パターン欄には、15通りの報知パターンが格納されている。具体的には、報知パターン1の場合、報知番号aのみフラグが立っているため、報知番号aに対応する異常内容のみ報知されるようになっている。また、例えば、報知パターン5の場合、報知番号aと報知番号bのフラグが立っているため、報知番号aと報知番号bに対応する2つの異常内容が報知されるようになっている。このように、報知番号a〜dに対応する異常内容が単独、若しくは重複して報知されるようになっている。
(異常内容テーブル)
図6に示す異常内容テーブルは、報知番号毎に対応して、異常内容欄を有している。
異常内容欄には、報知番号a〜dに対応して、アキューム30の異常内容が格納されている。具体的には、報知番号aに対応する欄に、「特定ロールおよびロール軸受けなどの回転体に疵が発生」という異常内容が格納されている。また、報知番号bに対応する欄には、「ある特定ロールの回転抵抗トルクが増大」という異常内容が格納されている。また、報知番号cに対応する欄には、「ある特定ロールに傾きが発生」という異常内容が格納されている。さらに、報知番号dに対応する欄には、「ロール架台に異常が発生」という異常内容が格納されている。
(アキューム診断装置の動作)
次に、本実施形態に係るアキューム診断装置10の動作について説明する。
(アキューム診断装置の動作:帯状体診断処理ルーチン)
図7を用いて、帯状体診断処理ルーチンについて説明する(なお、アキューム診断装置10の各構成要素については図1を参照)。
帯状体診断処理ルーチンにおいて、先ず、診断コントローラ100は、振動測定処理を実行する(S10)。この処理では、各振動センサA,B,C,・・・によって、各帯状体2の振動が測定され、その振動データが周波数分析されて周波数分析テーブルに格納される。
次に、診断コントローラ100は、比較処理を実行する(S11)。この処理では、周波数分析テーブルに格納された周波数分析結果に基づいて、1次ピークおよび2次ピークでの周波数とその振幅が特定され、周波数分析テーブルに格納される。そして、その特定結果を用いて、各振動センサA,B,C,・・・における振動の比較がされる。
次に、診断コントローラ100は、異常特定処理を実行する(S12)。この処理では、S11の比較処理で実行された各振動センサA,B,C,・・・における振動の比較結果に基づき、アキューム30の異常が診断され、その結果が異常報知テーブルに格納される。
次に、診断コントローラ100は、報知処理を実行する(S13)。この処理では、異常報知テーブルに格納されたアキューム30の異常診断の結果により、15通りの報知パターンのうちの何れかの報知パターンに基づいて、アキューム30の異常内容が報知される。S13の処理を実行した後、診断コントローラ100は、本処理を終了する。
(アキューム診断装置の動作:振動測定処理ルーチン)
次に、図8を用いて、振動測定処理ルーチンについて説明する。なお、図8に示す振動測定処理ルーチンは、巻き出し側におけるアキューム診断装置10についての処理である。
振動測定処理ルーチンにおいて、先ず、診断コントローラ100は、ロール位置の取得をする(S20)。即ち、上限位置と下限位置の間を昇降する移動ロール11,12,13,14の位置を取得する。
次に、診断コントローラ100は、S20において取得したロール位置から、ロール位置が上限位置であるか否かを判定する(S21)。診断コントローラ100は、ロール位置が上限ではないと判定した場合は、シリンダ装置5を制御して、振動センサA,B,C,・・・を退避位置に移動させる(S22)。なお、S21の処理において、診断コントローラ100は、ロール位置が上限位置であるか否かを判定しているが、これに限らず、ロール位置が予め設定された定常通板位置であるか否かを判定してもよい。
次に、診断コントローラ100は、振動センサA,B,C,・・・による帯状体2の振動測定を中止させる(S23)。その後、診断コントローラ100は、再び、ロール位置が上限位置であるか否かを判定する(S24)。診断コントローラ100は、ロール位置が上限位置にまだ達していないと判定した場合は、ロール位置が上限位置に達するまで待機する。
一方、診断コントローラ100は、S24において、ロール位置が上限位置であると判定した場合は、測定番号をAにセットする(S25)。なお、この測定番号は、各振動センサA,B,C,・・・に対応しており、S25においてセットされた測定番号Aには、振
動センサAが対応している。
次に、診断コントローラ100は、シリンダ装置5を制御して、振動センサA,B,C,・・・を帯状体2に近づけて振動測定位置にセットさせる(S26)。
S21において、ロール位置が上限であると判定した場合、若しくはS26の後、診断コントローラ100は、測定番号に対応する振動センサからの振動データを取得する(S27)。
次に、診断コントローラ100は、S27において取得した振動データの周波数分析を実行する(S28)。そして、診断コントローラ100は、周波数分析テーブルにおける測定番号に対応する周波数分析結果欄に、周波数分析結果を格納する(S29)。
次に、診断コントローラ100は、全ての振動センサによる振動測定が完了したか否かを判定する(S30)。S30において、診断コントローラ100は、まだ全ての振動センサによる振動測定が完了していないと判定した場合は、測定番号を更新し(S31)、S20の処理に戻る。一方、S30において、診断コントローラ100は、全ての振動センサによる振動測定が完了したと判定した場合は、本処理を終了する。
(アキューム診断装置の動作:比較処理ルーチン)
次に、図9を用いて、比較処理ルーチンについて説明する。
比較処理ルーチンにおいて、先ず、診断コントローラ100は、読出番号をAにセットする(S40)。なお、この読出番号は、各振動センサA,B,C,・・・に対応しており、S40においてセットされた読出番号Aには、振動センサAが対応している。
次に、診断コントローラ100は、読出番号に対応する周波数分析テーブルの周波数分析結果欄から周波数分析結果を読み出す(S41)。
次に、診断コントローラ100は、読み出した周波数分析結果から、共振点である1次ピークと2次ピークでの周波数とその振幅を特定する(S42)。その後、診断コントローラ100は、特定した1次ピークと2次ピークでの周波数とその振幅を、周波数分析テーブルにおける読出番号に対応する1次ピーク欄および2次ピーク欄に格納する(S43)。
次に、診断コントローラ100は、全ての読出番号の特定が完了したか否かを判定する(S44)。診断コントローラ100は、まだ全ての読出番号の特定が完了していないと判定した場合は、読出番号を更新し(S45)、S40の処理に戻る。一方、診断コントローラ100は、S44において、全ての読出番号の特定が完了したと判定した場合は、全ての特定結果を比較する(S46)。その後、診断コントローラ100は、本処理を終了する。
(アキューム診断装置の動作:異常特定処理ルーチン)
次に、図10を用いて、異常特定処理ルーチンについて説明する。
異常特定処理ルーチンにおいて、先ず、診断コントローラ100は、ある特定ロールに掛け渡された帯状体2の振動と、他のロールに掛け渡された帯状体2の振動と、の差が所定値を超えているか否かを判定する(S50)。ここで、図12は、移動ロール12に疵が生じた場合の周波数分析結果を示すグラフである。
移動ロール12に疵が生じた場合、移動ロール12に掛け渡された帯状体2は、移動ロール12やロール軸受けに生じた疵の周期で強制加振されるようになる。この時、図12に示すように、移動ロール12に掛け渡された帯状体2を測定する振動センサCによる周波数分析結果と他の帯状体2を測定する振動センサA,Eによる周波数分析結果とを比較すると、2次ピーク点において、振動センサCにより測定された振動の振幅と、振動センサA,Eにより測定された振動の振幅と、の差L1が所定値L10を超える。このように、診断コントローラ100は、ある特定ロールに掛け渡された帯状体2の振動と、他のロールに掛け渡された帯状体2の振動と、の差が所定値を超えていると判定した場合は、異常報知テーブルにおける報知番号aに”1”のフラグをセットする(S51)。なお、所定値L10は適宜設定可能である。
一方、診断コントローラ100は、全てのロールに掛け渡された帯状体2において、帯状体2の振動差が所定値を超えていないと判定した場合は、S52に処理を移行する。
次に、診断コントローラ100は、ある特定ロールの上流側における帯状体2にかかる張力に対応した振動成分の周波数と、下流側における帯状体2にかかる張力に対応した振動成分の周波数と、の差が所定値を超えているか否かを判定する(S52)。ここで、図13は、移動ロール12の摩擦などにより抵抗トルクが増加した場合の周波数分析結果を示すグラフである。
移動ロール12に摩擦などが生じた場合、移動ロール12の上流側に掛け渡された帯状体2と下流側に掛け渡された帯状体2との間に張力差が生じる。ここで、帯状体2にかかる張力と、その張力に対応した振動成分の周波数と、の関係式は数1で示されるようになる。
ここで、L:ロール間隔、T:帯状体張力、ρ:帯状体比重、A:帯状体断面積である。
この時、図13に示すように、移動ロール12の上流側である振動センサA,Cによる周波数分析結果と下流側である振動センサE,Gによる周波数分析結果とを比較すると、振動センサA,Cにより測定された振動に対応する周波数と、振動センサE,Gにより測定された振動に対応する周波数と、の差f1が所定値f10を超える。これは、移動ロール12の摩擦などにより抵抗トルクが増加したために、移動ロール12の下流側における帯状体2にかかる張力が上流側における帯状体2にかかる張力よりも高くなった結果、数1の計算式から、下流側における当該帯状体にかかる張力に対応した振動成分の周波数が、上流側における当該帯状体にかかる張力に対応した振動成分の周波数よりも高くなっている。
このように、診断コントローラ100は、ある特定ロールの上流側における帯状体2にかかる張力に対応した振動成分の周波数と、下流側における帯状体2にかかる張力に対応した振動成分の周波数と、の差が所定値を超えていると判定した場合は、異常報知テーブルにおける報知番号bに”1”のフラグをセットする(S53)。なお、所定値f10は適宜設定可能である。また、図13に示す周波数分析結果は一例に過ぎず、移動ロール12の上下流側での周波数分析結果に限らず、他のロールの上下流側での周波数分析結果においても本処理は適用される。
一方、診断コントローラ100は、ある特定ロールの上流側における帯状体2にかかる張力に対応した振動成分の周波数と、下流側における帯状体2にかかる張力に対応した振動成分の周波数と、の差が所定値を超えていないと判定した場合は、S54に処理を移行する。
次に、診断コントローラ100は、ある特定ロールに掛け渡された帯状体2の幅方向の両端部にかかる張力に対応した振動成分の周波数の差が所定値を超えるか否かを判定する(S54)。ここで、図14は、移動ロール12において、振動センサCが測定する側が下がるように傾いた場合の周波数分析結果を示すグラフである。
移動ロール12に上記のような傾きが生じた場合、移動ロール12の幅方向で張力差が生じる。この時、図14に示すように、正常な移動ロール11に掛け渡された帯状体2の振動を測定する振動センサA,A’による周波数分析結果は互いに変化は無いが、異常が発生した移動ロール12に掛け渡された帯状体2の振動を測定する振動センサC,C’による周波数分析結果は1次ピーク点において互いに異なる。具体的には、振動センサCにより測定された振動に対応する周波数と、振動センサC’により測定された振動に対応する周波数と、の差f2が所定値f20を超える。これは、移動ロール12の傾きにより、移動ロール12に掛け渡された帯状体2において、振動センサC側の張力が振動センサC’側の張力よりも小さくなった結果、数1の計算式から、振動センサC側の帯状体2にかかる張力に対応した振動成分の周波数が、振動センサC’側の帯状体2にかかる張力に対応した振動成分の周波数よりも小さくなっている。
このように、診断コントローラ100は、ある特定ロールに掛け渡された帯状体2の幅方向の両端部にかかる張力に対応した振動成分の周波数の差が所定値を超えると判定した場合は、異常報知テーブルにおける報知番号cに”1”のフラグをセットする(S55)。なお、所定値f20は適宜設定可能である。また、図14に示す周波数分析結果は一例に過ぎず、移動ロール12で発生した傾きに限らず、他のロールで発生した傾きにおいても本処理は適用される。
一方、診断コントローラ100は、ある特定ロールに掛け渡された帯状体2の幅方向の両端部にかかる張力に対応した振動成分の周波数の差が所定値を超えていないと判定した場合は、S56に処理を移行する。
次に、診断コントローラ100は、複数のロールに掛け渡された帯状体2の幅方向の各両端部にかかる張力に対応した振動成分の周波数の差が所定値を超えるか否かを判定する(S56)。ここで、図15は、アキューム30が設置される架台20が、振動センサA,B,C,・・・が測定する側に下がるように傾いた場合の周波数分析結果を示すグラフである。
架台20に上記のような傾きが生じた場合、複数の帯状体2の幅方向で張力差が生じる。この時、図15に示すように、帯状体2の一端の振動を測定する振動センサA,Cによる周波数分析結果と、もう一端の振動を測定する振動センサA’,C’による周波数分析結果と、の間に差異が生じる。具体的には、振動センサA,Cにより測定された振動に対応する周波数と、振動センサA’,C’により測定された振動に対応する周波数と、の差f3が所定値f30を超える。これは、架台20の幅方向での傾きにより、振動センサA,C側の帯状体2にかかる張力が振動センサA’,C’側の帯状体2にかかる張力よりも小さくなった結果、数1の計算式から、振動センサA,C側の帯状体2にかかる張力に対応した振動成分の周波数が、振動センサA’,C’側の帯状体2にかかる張力に対応した振動成分の周波数よりも小さくなっている。
このように、診断コントローラ100は、複数のロールに掛け渡された帯状体2の幅方向の各両端部にかかる張力に対応した振動成分の周波数の差が所定値を超えると判定した場合は、異常報知テーブルにおける報知番号dに”1”のフラグをセットする(S57)。なお、所定値f30は適宜設定可能である。
一方、診断コントローラ100は、複数のロールに掛け渡された帯状体2の幅方向の各両端部にかかる張力に対応した振動成分の周波数の差が所定値を超えていないと判定した場合は、S58に処理を移行する。
次に、診断コントローラ100は、上流/下流側において、各帯状体2にかかる張力に対応した振動成分の周波数の差が所定値を超えるか否かを判定する(S58)。ここで、図16は、アキューム30が設置される架台20が、下流側の方が上流側よりも下がるように傾いた場合の周波数分析結果を示すグラフである。
架台20に上記のような傾きが生じた場合、複数の帯状体2の上流/下流方向で張力差が生じる。この時、図16に示すように、帯状体2の上流側の振動を測定する振動センサA,A’による周波数分析結果と、下流側の振動を測定する振動センサG,G’による周波数分析結果と、の間に差異が生じる。具体的には、振動センサA,A’により測定された振動に対応する周波数と、振動センサG,G’により測定された振動に対応する周波数と、の差f4が所定値f40を超える。これは、架台20の上下流側方向での傾きにより、上流側におけるロール間隔よりも下流側におけるロール間隔の方が小さくなった結果、数1の計算式から、振動センサA,A’側の帯状体2にかかる張力に対応した振動成分の周波数が、振動センサG,G’側の帯状体2にかかる張力に対応した振動成分の周波数よりも小さくなっている。
このように、診断コントローラ100は、上流/下流側において、各帯状体2にかかる張力に対応した振動成分の周波数の差が所定値を超えると判定した場合は、異常報知テーブルにおける報知番号dに”1”のフラグをセットする(S59)。なお、所定値f40は適宜設定可能である。
一方、診断コントローラ100は、上流/下流側において、各帯状体2にかかる張力に対応した振動成分の周波数の差が所定値を超えていないと判定した場合は、本処理を終了する。
(アキューム診断装置の動作:異常特定処理ルーチン)
次に、図11を用いて、報知処理ルーチンについて説明する。
報知処理ルーチンにおいて、先ず、診断コントローラ100は、異常報知テーブルにおいて、報知パターンがセットされているか否かを判定する(S60)。即ち、診断コントローラ100は、異常特定処理ルーチンの実行によって、アキューム30の異常があると診断され、異常報知テーブルにフラグがセットされているか否かを判定する。診断コントローラ100は、報知パターンがセットされていないと判定した場合は、本処理を終了する。
一方、診断コントローラ100は、報知パターンがセットされていると判定した場合は、セットされた報知パターンに基づいて、図示しない液晶表示装置からアキューム30の異常を作業者に報知する(S61)。その後、本処理を終了する。
このように、本実施形態のアキューム診断装置10は、特定のロールに掛け渡された帯状体2の振動の大きさと、他のロールに掛け渡された帯状体2の振動の大きさと、を比較することによって、その特定のロールやそのロール軸受けにおいて発生した疵などで生じた帯状体2の強制加振による振動成分を検知して、その特定のロールでの異常を検出することができる。
また、本実施形態のアキューム診断装置10は、特定のロールに掛け渡された上流側の帯状体2にかかる張力に対応した振動成分の周波数と、下流側の帯状体2にかかる張力に対応した振動成分の周波数と、を比較することによって、その特定のロールにおいて回転抵抗が増大したことなどにより生じた上下流側での帯状体2にかかる張力に対応した振動成分の周波数の違いを検知して、その特定のロールでの異常を検出することができる。
また、本実施形態のアキューム診断装置10は、特定のロールに掛け渡された帯状体2の幅方向の両端部にかかる張力に対応した振動成分の周波数を、その両端部で比較することによって、その特定のロールにおいて発生した傾きなどの影響を受けた帯状体2の両端部にかかる張力に対応した振動成分の周波数の違いを検知して、その特定のロールでの異常を検出することができる。
また、本実施形態のアキューム診断装置10は、複数のロールに掛け渡された各帯状体2の幅方向の各両端部にかかる張力に対応した振動成分の周波数を、各両端部で比較することによって、アキューム30が設置された架台の幅方向への傾きなどの影響を受けた複数の帯状体2の各両端部にかかる張力に対応した振動成分の周波数の違いを検知して、アキューム30が設置された架台の異常を検出することができる。
また、本実施形態のアキューム診断装置10は、複数のロールに掛け渡された各帯状体2の幅方向の各両端部にかかる張力に対応した振動成分の周波数を、帯状体2が送出される上流側および下流側で比較することによって、アキューム30が設置された架台の上下流側方向への傾きなどの影響を受けた上下流側での複数の帯状体2にかかる張力に対応した振動成分の周波数の違いを検知して、アキューム30が設置された架台の異常を検出することができる。
(本実施形態の概要)
以上のように、本実施形態に係るアキューム診断装置10は、帯状体2が掛け渡された一方側ロール15と他方側ロール25とのロール対を複数有し、各ロール対におけるロール間隔を伸縮可能なアキューム30の異常を検出するアキューム診断装置10であって、アキューム30の外部に設けられ、各ロールに掛け渡された各帯状体2の振動を夫々測定して振動データとする振動センサA,B,C,・・・と、各帯状体2の振動データを周波数分析し、その分析結果を比較することによりアキューム30の異常を検出する振動分析器50と、を備える。
上記の構成を有するアキューム診断装置10によれば、アキューム30の外部に設けられた振動センサA,B,C,・・・によって、各ロールに掛け渡された各帯状体2の振動が直接的に測定され、振動分析器50によってその振動データが周波数分析、比較されることでアキューム30の異常が検出される。このように、アキューム30の動きに依存することなく、各帯状体2の振動を直接測定することでアキューム30の異常を診断できるため、従来の様な移動ロール11,12,13,14やそのロール軸受けに異常を検出する装置を設けた場合に必要となる、アキューム30に合わせて動くケーブルや、そのケーブルが絡まったり他装置に接触したりしないようにケーブルを巻き出し巻き取りする装置を別に準備する必要がない。従って、ケーブルやそれに伴う装置を準備する必要がない分、コストが掛からず、容易にアキューム30の異常を検出することができる。
また、本実施形態に係るアキューム診断装置10において、振動分析器50は、特定のロールに掛け渡された帯状体2の振動の大きさと、他のロールに掛け渡された帯状体2の振動の大きさと、の比較に基づいて、その特定のロールでの異常を検出する。
上記の構成を有するアキューム診断装置10によれば、特定のロールに掛け渡された帯状体2の振動の大きさと、他のロールに掛け渡された帯状体2の振動の大きさと、を比較することによって、その特定のロールやそのロール軸受けにおいて発生した疵などで生じた帯状体2の強制加振による振動成分を検知して、その特定のロールでの異常を検出することができる。
また、本実施形態に係るアキューム診断装置10において、振動分析器50は、特定のロールに掛け渡された上流側における帯状体2にかかる張力に対応した振動成分の周波数と、特定のロールに掛け渡された下流側における帯状体2にかかる張力に対応した振動成分の周波数と、の比較に基づいて、特定のロールでの異常を検出する。
上記の構成を有するアキューム診断装置10によれば、特定のロールに掛け渡された上流側の帯状体2にかかる張力に対応した振動成分の周波数と、下流側の帯状体2にかかる張力に対応した振動成分の周波数と、を比較することによって、その特定のロールにおいて回転抵抗が増大したことなどにより生じた上下流側での帯状体2にかかる張力に対応した振動成分の周波数の違いを検知して、その特定のロールでの異常を検出することができる。
また、本実施形態に係るアキューム診断装置10において、振動センサA,B,C,・・・は、帯状体2における幅方向の両端部での振動を測定し、振動分析器50は、特定のロールに掛け渡された帯状体2の幅方向の両端部にかかる張力に対応した振動成分の周波数を、両端部で比較することにより、特定のロールでの異常を検出する。
上記の構成を有するアキューム診断装置10によれば、特定のロールに掛け渡された帯状体2の幅方向の両端部にかかる張力に対応した振動成分の周波数を、その両端部で比較することによって、その特定のロールにおいて発生した傾きなどの影響を受けた帯状体2の両端部にかかる張力に対応した振動成分の周波数の違いを検知して、その特定のロールでの異常を検出することができる。
また、本実施形態に係るアキューム診断装置10において、振動センサA,B,C,・・・は、帯状体2における幅方向の両端部での振動を測定し、振動分析器50は、複数のロールに掛け渡された各帯状体2の幅方向の各両端部にかかる張力に対応した振動成分の周波数を、各両端部で比較することにより、アキューム30が設置された架台20の異常を検出する。
上記の構成を有するアキューム診断装置10によれば、複数のロールに掛け渡された各帯状体2の幅方向の各両端部にかかる張力に対応した振動成分の周波数を、各両端部で比較することによって、アキューム30が設置された架台20の幅方向への傾きなどの影響を受けた複数の帯状体2の各両端部にかかる張力に対応した振動成分の周波数の違いを検知して、アキューム30が設置された架台20の異常を検出することができる。
また、本実施形態に係るアキューム診断装置10において、振動センサA,B,C,・・・は、帯状体2における幅方向の両端部での振動を測定し、振動分析器50は、複数のロールに掛け渡された各帯状体2の幅方向の各両端部にかかる張力に対応した振動成分の周波数を、帯状体2が送出される上流側および下流側で比較することにより、アキューム30が設置された架台20の異常を検出する。
上記の構成を有するアキューム診断装置10によれば、複数のロールに掛け渡された各帯状体2の幅方向の各両端部にかかる張力に対応した振動成分の周波数を、帯状体2が送出される上流側および下流側で比較することによって、アキューム30が設置された架台20の上下流側方向への傾きなどの影響を受けた上下流側での複数の帯状体2にかかる張力に対応した振動成分の周波数の違いを検知して、アキューム30が設置された架台20の異常を検出することができる。
以上、本発明の一実施形態を説明した。なお、本発明は上記の実施形態に限定される必要はない。
(アキューム診断装置の別の実施形態(第1実施形態の変形例))
例えば、図17に示す別の実施形態に係るアキューム診断装置200の様に、振動センサA,B,C,・・・を帯状体2から遠ざけるように回避する手段として、駆動モータ250の回転軸260を利用してもよい。アキューム診断装置200が有する駆動モータ250の回転軸260は、支持部材7に連結されており、駆動モータ250の駆動力によって回転軸260がS’方向に回転すると、支持部材7も同時にS’方向に回転する。これにより、支持部材7に支持された振動センサA,B,C,・・・は、各帯状体2から遠ざかるように回避動作をすることが可能となる。
これにより、ロールやそのロール軸受けに異常を検出する装置を設けた場合に必要となる、アキューム30に合わせて動くケーブルや、そのケーブルが絡まったり他装置に接触したりしないようにケーブルを巻き出し巻き取りする装置を別に準備する必要がないため、ケーブルやそれに伴う装置を準備する必要がない分、コストが掛からず、容易にアキューム30の異常を検出することができる。
また、レーザー光線などを用いた振動センサによって、アキューム30の外部から帯状体2の振動を測定するようにしてもよい。この場合、アキューム30の昇降移動に伴って、振動センサの回避動作をする必要がないため、より装置を簡略化することができる。さらに、他の回避手段を用いて、振動センサの回避動作をしてもよい。即ち、アキューム30の昇降動作に依存することなく、振動センサが帯状体2の振動を直接的に測定する手段であれば、何れの手段を用いていてもよい。
また、本実施形態において、アキューム30の上側に位置する一方側ロール15が昇降することによって、ロール間隔を伸縮しているが、本発明はこれに限定されることはなく、アキューム30の下側に位置する他方側ロール25が昇降することによって、ロール間隔を伸縮してもよい。
また、本実施形態において、図4に示す周波数分析テーブルに、特定した1次ピークおよび2次ピークでの周波数とその振幅を格納して、その結果を用いてアキューム30の異常を診断しているが、本発明はこれに限定されることはない。例えば、1次ピークおよび2次ピークに加えて、さらに3次ピーク、4次ピーク、・・・という様に周波数を特定し、その結果を用いてアキューム30の異常を診断してもよい。
また、本実施形態において、図示しない液晶表示装置に異常内容を報知することによって、作業者にアキューム30の異常を報知しているが、本発明はこれに限定されることはない。例えば、ランプの点灯やスピーカからの音声出力などによって、アキューム30の異常を報知してもよい。
また、本実施形態において、図8に示す振動測定処理ルーチンのように、各振動センサA,B,C,・・・は、診断コントローラ100から選択された順に振動を測定しているが、本発明はこれに限定されることはない。例えば、全ての振動センサA,B,C,・・・が一括して同時に各帯状体2の振動を測定してもよい。これにより、さらに短時間で各帯状体2の振動を測定することができる。
また、本実施形態において、図9に示す比較処理ルーチンのように、各振動センサA,
B,C,・・・が取得した各帯状体2の振動データを夫々比較することによって、アキューム30の異常を診断しているが、本発明はこれに限定されることはない。例えば、本実施形態と同じ条件の部材(帯状体2、帯状体生産ライン1、アキューム30などと同じ明細を有する部材)、同じ通板条件(温度や湿度などの環境、通板速度など)で測定され、アキュームの異常が発生しなかった時の過去のデータと、新たに取得した振動データと、を比較することによって、アキューム30の異常を診断してもよい。これにより、過去の測定データを有効活用することができ、さらに効率良く短時間でアキューム30の異常を診断することができる。
(第2実施形態)
図18〜図23を参照して、第2実施形態のアキューム診断装置およびアキューム診断方法について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。なお、図18ではアキューム診断装置を省略している。図19では、フレーム385の一部を省略し、また、図1に示す帯状体2、架台20、及び他方側ロール25を省略している。
(アキューム診断装置等の機械的構成)
以下、図18及び図19に示すアキューム30が設置されたフレーム385、アキューム30、及び、図19に示すアキューム診断装置310について説明する。
フレーム385は、図18及び図19に示すように、アキューム30を設置するための部材である。フレーム385は、アキューム30の外部に配置され、アキューム30を支持する。フレーム385には、一方側ロール15の振動が伝わる。具体的には例えば、図18に示すように、フレーム385は、巻き込み巻き取り可能なロープ20bを介してフレーム385上部から架台20を吊り下げ、架台20の両端部の架台摺動ローラ20aが接するように架台20を挟むように支持する。なお、架台20(昇降移動可能)はフレーム385(固定)の構成要素ではない。また、フレーム385は、例えば棒状の複数の部材を組み合わせて全体として直方体状に形成された部材であり、主柱386と、図19に示すように、主柱386に取り付けられた支持部材387とを備える。
支持部材387は、回転数測定装置370を所定位置(後述)に支持する部材、すなわちセンサ設置用治具である。支持部材387には、回転数測定装置370と分析器390とをつなぐケーブル(図示なし)が配線される。支持部材387は、例えば棒状部材であり、フレーム385の主柱386に両端が固定されること等により固定される。支持部材387は、一方側ロール15の横(ロール軸方向外側)に、一方側ロール15との間に所定間隔を開けて配置される。
アキューム30の一方側ロール15は、図18に示すように、本実施形態では8個である。図19に示すように、一方側ロール15の軸方向一方側端面には、反射テープ316が貼り付けられる(図19では、8枚の反射テープ316のうち3枚にのみ符号を付している)。なお、図20において、帯状体2の下流側(図2の左側の巻き出し側アキューム30においては「中央側」)から上流側(入り側)に順に数えて1番目の一方側ロール15の符号を「15−1」、同2番目を「15−2」、同3番目を「15−3」、同n番目を「15−n」と示す。また、一方側ロール15のロール番号を、下流側から上流側に順に、1、2、3、・・・とする。
アキューム30の他方側ロール25は、図18に示すように、本実施形態では9個である。他方側ロール25は床等に固定される(フレーム385に固定しても良い)。なお、図20において、下流側から上流側に順に数えて1番目の他方側ロール25の符号を「25−1」、同2番目を「25−2」、同3番目を「25−3」、同m番目を「25−m」と示す。
アキューム診断装置310は、図19に示すように、アキューム30の異常を検出する装置であり、複数の一方側ロール15のうち特定の一方側ロール15でのバランス(重量バランス。以下単に「バランス」という)の異常を検出する。すなわち、正常な一方側ロール15に比べアンバランスが増加した特定の一方側ロール15を検出する。さらに詳しくは、一方側ロール15が正常な状態では、一方側ロール15を軸方向に見た断面は円形であるとともに、この円の中心は一方側ロール15の回転中心と一致する。しかし、一方側ロール15は、経年劣化等により、上記の円の中心と回転中心とがずれる、または上記の断面が円形でなくなる。このため、バランスの異常がある(アンバランスが増加した)一方側ロール15は、正常な一方側ロール15に比べ大きく振動する。アキューム診断装置310では、このような異常がある一方側ロール15を検出する。
アキューム診断装置310は、一方側ロール15の回転数を測定する回転数測定装置370と、フレーム385の振動を測定するフレーム振動測定装置380と、周波数分析や異常の検出を行う分析器390と、を備える。
回転数測定装置370は、一方側ロール15の回転数を測定する回転センサである。回転数測定装置370は、アキューム30の可動部(一方側ロール15)の外部に設けられ、複数の一方側ロール15の回転数を夫々非接触に測定して回転数データとし、回転数データを分析器390に出力する。回転数測定装置370は、一方側ロール15の軸方向端面に貼り付けられた反射テープ316に対してレーザ光などの光を照射し、一方側ロール15の回転に同期した反射光を検出することで、一方側ロール15の回転を1回転あたり1パルスの電気信号に変換するタイプが適している。配置についてさらに説明すると、回転数測定装置370は、一方側ロール15の昇降移動に干渉しないように一方側ロール15(及び架台20)との間に所定の間隔をあけて配置される。回転数測定装置370は、図2に示す上限位置と下限位置との間の所定位置に配置された一方側ロール15の横(ロール軸方向外側)に、図19に示すように複数(8個)の一方側ロール15の反射テープ316を貼り付けた軸方向端面に対向して複数(8個)配置される。回転数測定装置370は、支持部材387(センサ設置用治具)の例えば上面に固定される。
フレーム振動測定装置380は、アキューム30が設置されたフレーム385の振動を測定してフレーム振動データとする振動計である。フレーム振動測定装置380は、フレーム385の振動を電気信号に変換し、この電気信号をフレーム振動データとして分析器390に出力する。フレーム振動測定装置380は、フレーム385のうち一方側ロール15の振動を測定可能な位置(例えば支持部材387の近傍など)に固定される。
分析器390は、周波数分析、および、異常な一方側ロール15の特定を行う装置である。分析器390には、フレーム振動測定装置380および回転数測定装置370が接続され、フレーム振動データおよび回転数データが入力される。そして、分析器390は、フレーム振動データおよび回転数データを周波数分析することでフレーム385の振動のピーク周波数および複数の一方側ロール15の回転数を求め、このピーク周波数とこの回転数とを比較することにより、複数の一方側ロール15のうち特定の一方側ロール15での異常を検出する。次に、この分析器390の動作等をさらに説明する。
(アキューム診断装置の動作)
図23にアキューム診断装置310の動作のフローチャートを示す(以下、アキューム診断装置310等の各構成要素については図19参照)。アキューム診断装置310の動作の概略を説明すると、一方側ロール15の回転数を計測し(ステップS71)、フレーム385の振動を計測する(ステップS72)。次に、分析器390で、回転数データとフレーム振動データとの周波数分析を行い(ステップS73)、所定の場合(ステップS74)に分析結果の比較を行い(ステップS76)、異常のある一方側ロール15を特定する(ステップS77)。以下、順に説明する。
まず、一方側ロール15の回転数を計測する(ステップS71)。回転数測定装置370を用いて、複数の一方側ロール15の回転数を測定して回転数データとし、回転数データを分析器390に入力する。
次に、フレーム385の振動を計測する(ステップS72)。フレーム振動測定装置380を用いて、フレーム385の振動を測定してフレーム振動データとし、フレーム振動データを分析器390に入力する。
なお、ステップS71とS72とは、上記の順序で行う必要はなく、上記の順序とは逆の順序で行っても良く、また、ステップS71とS72とを同時に行っても良い。
次に、分析器390により、一方側ロール15の回転数データ、および、フレーム385のフレーム振動データを周波数分析する(ステップS73)。
このステップS73では、一方側ロール15の回転数データを周波数分析することで、複数の一方側ロール15の回転数がそれぞれ算出される。図20に、一方側ロール15の(架台20の)昇降速度uと、帯状体2の速度と、一方側ロール15の周速度との関係を示す(他方側ロール25の周速度も示す)。
また、一方側ロール15の周速度と回転数との関係は次式(数2及び数3)の通りである。
R
n :下流側から上流側に順に数えてn番目の一方側ロール15の周速度
f
n :同n番目の一方側ロール15の回転数
r
n :同n番目の一方側ロール15の半径
V :最下流側での帯状体2の速度(ライン速度)
u :一方側ロール15の(架台20の)昇降速度
また、図21に、複数の一方側ロール15(架台20)それぞれの上昇時および下降時の実際の回転数(ロール回転数)を示す。
図18に示すように、アキューム30の複数のロールは一般的にはほとんど同じ直径のロールが使用されるので、一方側ロール15および他方側ロール25がいずれもフレーム385等に固定されていれば、各ロールの回転数も同じとなってしまう。しかしながら、一方側ロール15の直径が同じであっても、一方側ロール15が昇降すれば、帯状体2の上流側(ライン入り側)と下流側(図2に示す巻き出し側のアキュームにおいてはライン中央側)とで一方側ロール15に回転数差が生じる(後述するが、他方側ロール25でも回転数差が生じる)。
また、図23に示すように、ステップS73では、フレーム385(図19参照)のフレーム振動データを周波数分析し、周波数と振動の大きさ(フレーム振動レベル)との関係を求める。図22にフレーム振動データを高速フーリエ変換(FFT)により周波数分析した結果の一例を示す。この周波数分析により、フレーム385の振動のピークの大きさ、及び、ピーク周波数(卓越周波数)が算出される。
次に、図23に示すように、フレーム385の振動のピークの大きさ(図22に示すフレーム振動レベルL2)が基準値L20を超えたか否かが判定される(ステップS74)。フレーム振動レベルL2が基準値L20を超えた場合、分析器390はアキューム30の異常を知らせる警報を作動させる(ステップS75)。具体的には、分析器390が所定の電気信号を出力する。フレーム振動レベルL2の基準値L20は、例えばアキューム30の正常時(一方側ロール15のバランスの正常時)の振動レベルの2倍程度に設定する(その他様々な値に設定しても良い)。
フレーム振動レベルL2が基準値L20を超えない場合、ステップS71へ戻る。
次に、分析器390は、分析結果の比較(ステップS76)、および、異常のある一方側ロール15の特定を行う(ステップS77)。すなわち、分析器390は、フレーム385の振動のピーク周波数(図22参照)と、複数の一方側ロール15の回転数(図21参照)とを比較することにより、複数の一方側ロール15のうち特定の一方側ロール15での異常を検出する。具体的には、図22に示すように、フレーム振動レベルL2が基準値L20以上のピークのピーク周波数と一致する回転数で回転する一方側ロール15を、異常ロールであると特定する(ステップS77)。なお、上記比較に用いるロール回転数として一方側ロール15の「上昇時」のロール回転数(図21のグラフ中の破線参照)を用いる場合は、フレーム振動のピーク周波数(図22参照)についても一方側ロール15の「上昇時」のピーク周波数を比較に用いる。同様に、同「下降時」のロール回転数(図21のグラフ中の一点鎖線参照)を比較に用いる場合は、同「下降時」のピーク周波数を比較に用いる。また、一方側ロール15の上昇時および下降時のロール回転数の「平均」(図21のグラフ中の実線参照)を比較に用いる場合は、上昇時および下降時のピーク周波数の「平均」を比較に用いる。
次に、分析器390は、異常ロールであると特定した一方側ロール15のロール番号などの分析結果を出力する。なお、この分析結果の出力と同時に、フレーム振動レベルが基準値を超えたことを知らせる警報の作動(ステップS75)を行っても良い。
次に、診断を終了する、または、診断を終了しない場合はステップS71へ戻る(ステップS78)。
(本実施形態の概要)
以上のように、図19に示すように、本実施形態に係るアキューム診断装置310では、回転数測定装置370は、アキューム30の可動部(一方側ロール15)の外部に設けられ、複数の一方側ロール15の回転数を夫々非接触に測定して回転数データとする。また、フレーム振動測定装置380は、アキューム30が設置されたフレーム385の振動を測定してフレーム振動データとする。すなわち、回転数測定装置370およびフレーム振動測定装置380は、アキューム30の動き(一方側ロール15の昇降移動)に依存することがない。このように、アキューム30の動きに依存することなくアキューム30の異常を診断できるため、従来の様なアキューム30のロールやそのロール軸受けに異常を検出する装置を設けた場合に必要となる、アキューム30に合わせて(一方側ロール15に合わせて)動くケーブルや、そのケーブルが絡まったり他装置に接触したりしないようにケーブルを巻き出し巻き取りする装置を別に準備する必要がない。従って、ケーブルやそれに伴う装置を準備する必要がない分、コストが掛からず、容易にアキューム30の異常を検出することができる。
また、アキューム診断装置310では、分析器390は、フレーム振動データおよび回転数データを周波数分析することで、フレーム385の振動のピーク周波数(図22参照)および複数の一方側ロール15の回転数(図21参照)を求め(ステップS73。図23参照)、当該ピーク周波数と当該回転数とを比較する(ステップS76)。ここで、このアキューム診断装置310を用いるアキューム30は、図18に示す各ロール対(一方側ロール15および他方側ロール25)におけるロール間隔を伸縮可能である。このアキューム30では、少なくともロール間隔を伸縮させれば、各一方側ロール15の回転数に相違が生じる(なお、複数の一方側ロール15の半径がそれぞれ異なる場合は、ロール間隔を伸縮させなくても回転数に相違が生じる)。したがって、上記のようにフレーム385の振動のピーク周波数と一方側ロール15の回転数とを比較することで、複数の一方側ロール15のうち、異常な大きさの振動をフレーム385に伝えている一方側ロール15を特定できる。その結果、複数の一方側ロール15のうち特定の一方側ロール15でのバランスの異常(アンバランスの増加)を検出することができる。
(第2実施形態の変形例)
上記実施形態では、他方側ロール25を床面に配置した構成を示した。しかしながら、他方側ロール25をフレーム385で支持(固定)し、他方側ロール25の回転数を計測することで他方側ロール25の異常を検出しても良い。なお、一方側ロール15が昇降移動した時、一方側ロール15と同様に、複数の他方側ロール25にも回転数差が生じる。具体的には、図20に示すように、最下流側での帯状体2の速度をV、一方側ロール15の昇降速度をuとすると、下流側から上流側に順に数えてm番目の他方側ロール25の周速度Rmは、Rm=V+2(m−1)uとなり、複数の他方側ロール25ごとに周速度が異なるので、複数の他方側ロール25に回転数差が生じる。
以上、本発明の実施例を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施形態に記載された、作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用および効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。