JP5339705B2 - エレベータの安全停止方法および安全停止システム - Google Patents

エレベータの安全停止方法および安全停止システム Download PDF

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本発明は、エレベータの安全停止方法および安全停止システムに係り、特に巻上機ブレーキや非常止め装置で構成されるオーバースピードに対する安全停止方法および安全停止システムに関する。
エレベータのオーバースピードに対する従来の安全システムは、例えば、非特許文献1に開示されているように、概略次の通りである。まず、乗りかごの昇降速度は、機械式ガバナ(調速機)によって常時検出されている。仮に、異常過速状態となり、かごの速度が定格速度の125%を超えると、過速検出スイッチが働いてモータの電源が遮断され、同時に巻上機に設けられたブレーキが作動してかごが非常停止させられる。さらに、万一ロープの異常等で下降時に定格速度の135%を超えた場合には、遠心力でガバナの振り子が大きく広がり、ロープキャッチがガバナロープをつかんで非常止め装置が作動する。非常止め装置は、くさびによってレールを強く引き締めてかごを直接に非常停止させる。
これが従来の一般的なエレベータの安全システムであるが、これに加えて、以下のような安全システムの技術が提案されている。
まず、特許文献1には、乗りかごのと昇降路内の位置に応じて過速を検出する第1および第2の設定速度を定める例が記載されている。それぞれの設定速度を超えた場合に、機械的ブレーキ、非常止め装置を作動させる。
また、特許文献2にも、かごの運転状態(かごの位置情報)によって過速度検出レベルを容易に変化させる例が開示されている。
また、特許文献3には、同様に過速度検出パターンをかごの位置に応じて連続的に変化させる安全システムで、不要に制動装置を作動させることがないように、マージンを与えて、第1〜第4の過速度検出パターンを設定した例が示されている。この場合も、第1および第2のパターンを超えたときにブレーキを作動させて、第3、第4のパターンを超えたときには非常止めを作動させている。
さらに、特許文献4には、エレベータ乗りかごの過速度運転をガバナが検出して、乗りかごが非常停止した場合に、非常止め装置の作動を検出して、非常止め装置が作動していない場合には、最寄り階に乗りかごを誘導する例が開示されている。
一方、特許文献5には、一端を乗りかご、他端を釣合錘に連結されたコンペンロープに対して、コンペンロープの異常な振れなどを検出した場合に非常停止をせずに隣接する最寄階に停止させる例が開示されている。
また、特許文献6には、地震計により地震を感知した場合に、直ちにエレベータを最寄階に停止させる例が開示されている。
:国際公開WO2004/031064 :特開2003−10648号公報 :国際公開WO2004/028947 :特開平4−327481号公報 :特公昭61−38116号公報 :特開昭61−69678号公報 「エレベーター・エスカレータ入門」竹内照男著、株式会社広研社
上に列挙した従来技術は、いずれも過速度(オーバースピード)を検出すると巻上機ブレーキまたはかごとガイドレール間の非常止め装置によって非常停止させることを基本としている。例えば、特許文献1、特許文献2、および特許文献3に開示された技術では、乗りかごの昇降路内の位置に応じて決まる過速度検出レベルを超えると、そのレベルに応じて巻上機ブレーキまたは非常止め装置を作動させて非常停止させる。この結果、乗りかご内の乗客は、かご内にある時間、閉じ込められることになり、心理的・身体的に過大な負担を受ける可能性がある。また、非常停止において急激な制動をかける場合には、乗客に急激な減速度(dv/dt)がかかることになり、身体的な負担を強いる可能性がある。
特許文献4に開示された技術では、非常止め装置が作動していない非常停止(従って、巻上機ブレーキによる非常停止)の場合は、所定時間後に最寄階にエレベータを誘導して戸を開いて停止させる例が示されている。しかし、非常止め装置が作動していない場合でも、例えばインバータやマイコン、制御装置に異常があるために過速状態に達した可能性があり、自動でエレベータを最寄階まで運転させることはリスク(潜在的な危険性)を伴う可能性がある。また、非常止め装置が作動した場合には、非常停止後もかご内に乗客を閉じ込めることになる。加えてこの方法では、非常停止は実施するため、急激な制動による乗客への身体的な負担も回避できない。
特許文献5や6に開示された技術は、過速度状態とは別の異常の場合に最寄り階に停止させる例であり、この場合は速度制御系(モータ、インバータ、速度制御のコントローラ)は正常に働いている。このため、速度制御系の通常制御の処理に基づいて最寄階に停止させることが可能である。しかし、速度異常のように速度制御系に異常がある場合やロープ等に異常がある場合にはこの方法は適用できない。従って、速度異常時には非常停止を実施することになり、乗りかご内に乗客を閉じ込めることになる。また、非常停止時の急激な制動による乗客への身体的な負担も回避できない。
以上のように、従来の公知技術にあるエレベータの安全システムでは、過速異常時(過速度検出時)にはエレベータ乗りかごを即時に非常停止させねばならず、乗りかご内に乗客を閉じ込めることなり、心理的・身体的に過大な負担を与えてしまう可能性があった。さらに、非常停止により急激な制動がかかるため、乗客に急激な減速度(dv/dt)がかかり、身体的な負担を強いる可能性があった。
これに対して本発明の目的は、エレベータの乗りかごが過速度異常の状態となった場合でも、乗りかご内の乗客閉じ込める機会を減らすことが可能なエレベータの安全停止方法または安全停止システムを実現することにある。さらに、非常停止によって、急激な制動がかかることによる乗客への身体的な負担を強いる機会を軽減できるエレベータの安全停止方法やシステムを実現することにある。
本発明はその一面において、エレベータ乗りかごの速度が第1の所定値を超えた場合に、巻上機ブレーキで非常停止させる非常停止と、乗りかごの速度が第1の所定値よりも高い第2の所定値を超えた場合に、かごとレールとの間に設けられた非常止め装置で乗りかごを停止させる非常止めとを備えたエレベータにおいて、乗りかごの速度が第2の所定値よりも低い所定値を超えた場合に、前記非常止め装置による減速度よりも小さい減速度でエレベータ乗りかごを停止させるように、乗りかごの走行に作用する制動力を制御することを特徴とする。
本発明の望ましい実施態様においては、前記制動力の制御においては、前記巻上機ブレーキまたは前記非常止め装置の制動力を調整し、また、これによって、かご位置の前方の乗り場のドアゾーン内を目標停止位置として制動力を調整することが望ましい。
本発明の他の望ましい実施態様による前記制動力の制御は、乗りかごの速度が前記第1の所定値よりも低い所定値を超えた場合に、巻上機ブレーキによる減速度よりも小さい減速度でエレベータ乗りかごを停止させるように、乗りかごの走行に作用する制動力を制御する。
本発明のさらに他の望ましい実施態様による前記制動力の制御は、乗りかごの速度が前記第2の所定値よりも低く前記第1の所定値よりも高い所定値を超えた場合に、非常止め装置による減速度よりも小さく巻上機ブレーキによる減速度よりも大きい減速度でエレベータ乗りかごを停止させるように、乗りかごの走行に作用する制動力を制御する。
本発明の望ましい実施態様においては、エレベータの乗りかごが過速度異常の状態となった場合でも、乗りかご内の乗客閉じ込めの機会を減らすことが可能であり、さらに、非常停止において、急激な制動がかかることによる乗客への身体的な負担を強いる機会を減らすことが可能である。
本発明によるその他の目的と特徴は、以下に述べる実施形態の中で明らかにする。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施例によるエレベータの安全停止システムの主要部となる安全制御に関わる部分の構成例を表している。ここで図1を説明する前に、まず、図2により、本発明の一実施例によるエレベータシステムの全体構成について説明する。
図2は、本実施例によるエレベータシステムの構成図である。主要な構成は、乗りかご1、昇降路2、機械室3、巻上機4、および制御盤5である。ここでは、機械室有りを例に採るが、機械室無しの場合も同様に適用可能である。巻上機4は、モータ6、シーブ7、および巻上機ブレーキ14等で構成される。巻上機ブレーキ14は、後述する主ブレーキ14aと補助ブレーキ14bとからなる。制御盤5は、モータ6へ電力を供給するインバータ、このインバータを制御するマイコン等で構成されている。乗りかご1は、釣合錘10と主ロープ9で結合されており、シーブ7、プーリ8を介してシーブ7の回転まさつ力によって主ロープ9が駆動されて乗りかご1が昇降する仕掛けとなっている。尚、エレベータの乗りかご1は、レール11によってガイドされており、レール11に沿って昇降する。
次に、図2に示されているエレベータの安全装置について説明する。エレベータの乗りかごの速度を直接的に検出するのがガバナ(調速機)13である。乗りかごに連動して動くガバナロープ20を通じて、その移動がガバナ13で回転運動に変換されて、その回転量をエンコーダで検出することによって乗りかごの速度および移動距離を検出する。エンコーダで検出できる量は移動距離のため、昇降路内に絶対位置を示すマーカ(図示せず)を設けることによって、両者を組合せて常時連続的に乗りかごの絶対位置を検出することができる。この絶対位置の算出処理は、制御盤5や図1にて後述するエレベータ電子安全装置S10において実行される。このようなガバナによって検出される乗りかごの速度と絶対位置に基づいて、オーバースピードに対する保護動作が実施される。尚、ガバナロープ20は正確に乗りかご1の動きと連動するように緊張用プーリ12によって適切な張力がかけられるようになっている。
ここで、図2では、機械式ガバナにエンコーダを取り付けた装置によって速度と絶対位置を検出する例を示したが、検出装置はこの例に限らない。例えば、レールなどに磁気的または光学的なマーカ(連続的な位置情報を表す)を付けてそれを乗りかご上から読み取ることで、乗りかごの絶対値や速度を検出することもできる。
ガバナ13で検出された乗りかごの速度と絶対位置(実際は移動距離)の情報は、電子安全装置S10に送られる。この電子安全装置S10で、過速異常が発生しているかどうかが判定され、非常停止のための巻上機ブレーキ14や、かごとレール間の非常止め装置15が動作させられる。この電子安全装置S10の制御が本実施例の特徴であり、図1の説明において後述する。
速度および位置の検出情報から過速度異常を検出した場合は、まず、巻上機ブレーキ14を動作させて非常制動をかける。具体的には、ブレーキシューがブレーキドラム(モータ軸に取り付けられる)を押さえつけることにより巻上機4の回転が抑制される。さらに、ロープ異常などで過速異常が継続する場合は、乗りかご1とガイドレール11との間に取り付けられた非常止め装置15を動作させて乗りかごを直接停止させるように非常制動をかける。非常止め装置15は、レールを噛みこむようにして乗りかごを停止させる。尚、それでも乗りかごの下降が抑えられない万一の場合に備えて、昇降路の底部に緩衝器16が設けられており、衝突によるかごへの衝撃を緩和するように働く。
以上が図2に示された本実施例に関わる安全装置である。以下補足として、まず、本実施例で対象とする巻上機ブレーキ14は、その制動力を電子装置(例えばマイコン)などの制御により調整できるものとする。このために、従来からの主ブレーキ14aの外に、補助ブレーキ14bを設けて、PWM制御によるブレーキ力の制御を実現している。また、本実施例で対象とする非常止め装置15についても、その制動力を電子装置(例えばマイコン)などの制御により調整できるものとする。制動力調整法の詳細は図12を用いて後述する。
図2において、各階の乗り場の床が乗り場床H01、H02であり、主ロープ9の張力異常などを検出する装置がロープ異常検出装置17である。また、制御盤5、モータ6などの巻上機4にも、異常状態を検出する仕掛け(図示せず)が施されており、これらの情報は制御盤5(一般には入力情報から制御盤自身で判定する)、電子安全装置S10に送られる。その他、乗りかご1内の荷重は、かご床下の荷重センサ18によって検出され、また乗りかご内の乗客情報がカメラによる画像認識や個人認証など(共に図示せず)により検出される。
以上、図2により、本実施例に関わるエレベータシステムの全体構成について説明した。次に、図1に戻り、本実施例の主要部となる電子安全装置S10を含めた安全制御系の構成について説明する。まず、その構成は、検出部分と安全制御を担う電子安全装置S10の2つに大きく分けられる。
検出部分には、かご位置検出手段S1、かご速度検出手段S2、駆動装置異常検出手段S3、主ロープ異常検出手段S4、かご内乗り人数検出手段S5、かご内乗客情報検出手段S6、および乗りかご荷重検出手段S7がある。かご位置検出手段S1とかご速度検出手段S2は、ガバナ13(図2)に対応する。尚、より詳細にはガバナ13では移動距離情報のみが分かるため、絶対位置を示す昇降路内に設置されたマーカなどの検出情報と組合せて連続的な絶対位置情報を得ることができる。駆動装置異常検出手段S3は、巻上機、インバータ、および制御装置に対する異常状態を検出する。この制御装置とは、インバータなどの速度制御系に対する制御手段で、マイコン等で構成される。主ロープ異常検出手段S4は、主ロープの張力などの異常を検出する(図2の17)。かご内乗り人数検出手段S5は、かご内荷重センサ(図2の15)の荷重値から乗り人数を検出する。かご内乗客情報検出手段S6は、かご内乗客が子どもであるか、お年寄りであるか、車椅子を利用されているかなどの情報を、例えば、かご内カメラの画像情報から検出する。乗りかご荷重検出手段S7は、かご床下荷重センサ18によりかご内荷重値を検出する。
次に、エレベータ電子安全装置S10内の各要素について説明する。検出されたかご位置信号に基づいて、即時非常停止の過速度しきい値設定手段S11で、即時非常停止モードでの過速度しきい値(過速度レベル)を設定する。ここで、‘即時非常停止モード’とは、従来技術と同様の非常停止法を指しており、かご速度が第1の過速度しきい値を超えると巻上機ブレーキにより、さらに、第2の過速度しきい値を超えると非常止め装置15により、即時に停止するように作動させる。即時非常停止実施判定手段S12では、検出されたかご速度信号と即時非常停止に対する過速度しきい値を比較する。そして、過速度異常発生を判定した場合には、巻上機ブレーキ14または電気式非常止め装置15に作動信号を発して、即時停止するように作動させる。その結果、巻上機ブレーキ14または電気式非常止め装置15は非常制動をかけ、乗りかご1は減速されて昇降路内に停止する。この従来からある‘即時非常停止モード’は、速度異常を検出すると、とにかくすぐに停止させるという考え方に基づいている。
これに対して、本実施例では、新たに‘制御非常停止モード(または減速度制御非常停止モード)’を備えていることが特徴である。この制御非常停止モードとは、無条件に乗りかごを停止させるのではなく、即時非常停止モード検出よりも早い段階での異常速度を検出し、早く検出した余裕時間を利用して巻上機ブレーキなどの減速度を調整しながら乗りかごを非常停止させるモードである。減速度を調整して、乗りかごを最寄階のドアゾーン(乗り場戸を開くことが可能なゾーン)内に停止させたり、より緩やかな減速度で停止させるように制御する。この結果、非常停止になった場合でも、乗客のかご内閉じ込めを回避することができ、また急激な減速度による乗客への負担を回避することが可能となる。
以下、制御非常停止モードに対する電子安全装置S10内の各要素について説明する。かご位置検出信号に基づいて、制御非常停止の過速度しきい値設定手段S13では、制御非常停止モードに対する過速度しきい値(過速度レベル)を設定する。減速度制御による非常停止実施判定手段S14では、複数の検出信号を組合せて用い、減速度制御による非常停止の実施を総合的に判定する。用いる信号としては、過速度しきい値とかご速度検出信号との比較結果、さらに駆動装置異常検出信号、主ロープ異常検出信号、かご内乗り人数検出信号、およびかご内乗客情報検出信号である。複数の検出信号を組合せて判定することにより、より早期に異常検出できるため、それにより得られる余裕時間を減速度を調整制御する時間に当てることが可能となる。また、かご内の乗客状況に応じてより適切な減速度の調整法を定めることができる。具体的な非常停止実施の判定法については、図7および図8のフローチャートにより後述する。
減速度制御による非常停止を実施すると判定した場合は、現在のかご位置、速度、さらに乗りかごの荷重の各検出信号に基づいて、減速度指令算出手段S15で減速度指令(時間軸上での減速度パターンによる指令)を算出する。例えば、現在のかご位置、速度から最寄階のドアゾーン(乗り場戸を開くことが可能な位置ゾーン)内へ安全に停止するための減速度パターンが減速度指令として算出される。減速度指令算出法の詳細は図9、図10のフローチャートにより後述する。減速度制御手段S16では、算出された減速度指令に基づいて巻上機ブレーキ14や電気式非常止め装置15の制動力を制御する作動信号が算出されて各装置に出力される。ここでは、減速度指令に従ってかご位置や速度が実際に制御されているかを、位置や速度検出信号を用いてフィードバック制御する。例えば、減速度指令から速度指令、位置指令を算出して、それぞれを速度検出信号、位置検出信号と比較してその偏差を小さくするように逐次作動信号を調整する。また、フィードバック制御ではなく、減速度指令からその減速度を得るための巻上機ブレーキや電気式非常止め装置に対する制動量を算出して、それを作動信号とするフィードフォワード制御でも同じことを実現できる。フィードバック制御の方がより減速度指令に忠実な制御を実施できるが、演算時間が必要なため、より高速な動作が求められる場合はフィードフォワード制御の方がよい。
以上に説明した減速度制御による非常停止モードにより、先行で過速異常を検知して、その余裕時間で減速度を調整制御することで、非常停止であっても乗りかごを最寄階のドアゾーン内に安全に停止させることができる。その結果、乗客の閉じ込めを無くすことができる。また、より緩やかな減速度によって停止させることができ、急減速による乗客への身体的負担を緩和することができる。
図1に説明した即時非常停止の過速度しきい値設定手段S11、制御非常停止の過速度しきい値設定手段S13では、それぞれ巻上機ブレーキに対する第1の過速度しきい値と、これより大きい電気式非常止めに対する第2の過速度しきい値が設定される。従って、図1の電子安全装置では、過速度しきい値は合計4パターン設定されることになる。具体的には、後述する図4のような過速度しきい値パターンとなる。
本実施例においては、図1で説明した巻上機ブレーキ14と電気式非常止め装置15は、共に電気的な機構により、制動力を可変にできる装置を備えている。従来の装置は、作動信号が入ると動作オンのみであったが、本実施例の装置は、PWM制御により動作オンとオフを頻繁に繰り返したり、オン状態でも制動力を連続量で可変に調整できる装置である。例えば、補助ブレーキ14bによって、PWM制御による連続可変のブレーキ力の調整を実現した装置である。その結果、減速度指令に従って、各制動力を調整でき、実際の減速度を調整することができる。
図3は、本発明の一実施例による複数の非常停止動作モードの考え方を整理した分類図である。図のように、非常停止モードは4つのモードがある。ここでは、過速度異常に対する非常停止を実施する装置として、巻上機ブレーキと非常停め装置の2種類があるとして、まず、巻上機ブレーキに対しての減速度制御非常停止モードと即時(無条件)非常停止モードがある。同様に、非常止め装置に対しての減速度制御非常停止モードと即時(無条件)非常停止モードがある。
巻上機ブレーキ14に対する減速度制御非常停止モードでは、速度検出信号以外に駆動装置の異常(例えば、モータ、インバータ、制御装置等の速度制御系の異常)に対する検出信号を組合せることによって、このモードに有効な異常事象発生を早期に判定することができる。駆動装置の異常としては、例えば、モータ、インバータ、および制御装置等の速度制御系の異常が考えられる。これらの速度系の異常による過速度異常の場合は、巻上機ブレーキで停止させることにより、乗りかごを安全に停止させることができる。
非常止め装置に対する減速度制御非常停止モードでは、速度検出信号以外に主ロープの異常(例えば、主ロープの張力の異常等)に対する検出信号を組合せることによって、このモードに有効な異常事象発生を早期に判定することができる。ロープ系の異常は巻上機ブレーキを停止させても乗りかごは停止できないため、非常止め装置で制動させる必要がある。
巻上機ブレーキに対する減速度制御非常停止モードでは、近傍の乗り場階のドアゾーン内に停止するように減速度を調整して非常停止させる。巻上機ブレーキに対する即時非常停止モードでは、とにかく即時に(無条件で)全制動力で非常停止させるようにする。このように2段構えの安全モードを設定することによって、万一減速度制御非常停止モードが適切に働かず、速度が増加した場合でも即時非常停止モードが働くことによって非常停止をかけることができる。この場合、ブレーキ機構を図2に示したように、2段設けて、一方の補助ブレーキを減速度制御非常停止モード用、他方の主ブレーキを即時非常停止モード用として使い分けることにより、より安全性を増すことができる。
非常止め装置15に対する減速度制御停止モードでは、1)近傍の乗り場階のドアゾーン内に停止するように減速度を調整して非常停止させる場合と、2)停止までの減速度を所定値以下に抑えるように制御して緩やかに非常停止させる場合の2通りの停止法がある。非常止め装置の場合、急激な減速度が作用するため、緩やかな停止が必要になる。また、非常止め装置に対する即時非常停止モードでは、とにかく即時に(無条件で)全制動力で非常停止させるようにする。巻上機ブレーキの場合と同様に非常止め装置でも2段構えの安全モードを設定しており、万一減速度制御非常停止モードが適切に働かず、速度が増加した場合でも即時非常停止モードが働くことによって非常停止をかけることができる。
図4は、本発明による過速度しきい値パターンの例を示した図である。図4のグラフは横軸が乗りかご位置、縦軸がかご速度を表しており、各位置に対する過速度しきい値を示している。まず、実線で従来から存在する特性を表している。細線Vpnは通常の乗りかごの走行パターンである。これに対して、太線Vt1が第1の過速度しきい値であり、巻上機ブレーキに対する即時非常停止モードの特性を示している。さらに、この巻上機ブレーキによる即時非常停止では止められなかった場合に備えて、太線Vt2が非常止め装置に対する即時非常停止モードの過速度しきい値の特性を示している。
これらの従来からの非常停止が作用する前に、本発明の実施例においては、まず、破線Vtc1を、巻上機ブレーキに対する減速度制御非常停止モードの過速度しきい値として用意している。このしきい値特性Vtc1は、即時非常停止モードの前記第1の過速度しきい値Vt1よりも小さい。さらに、これらの巻上機ブレーキ14による非常停止では止められなかった場合に備えて、破線Vtc2を、非常止め装置15に対する減速度制御非常停止モードの過速度しきい値として用意している。このしきい値特性Vtc2は、即時非常停止モードの前記第1の過速度しきい値Vt1よりも大きく、前記第2の過速度しきい値Vt2よりも小さい。
このように、4段階の過速度しきい値特性を設けており、実線のしきい値特性Vt1、Vt2では、従来からの即時の非常停止を実行する。一方、破線のしきい値特性Vtc1、Vtc2では、本発明の実施例特有の減速制御による非常停止を実行することで、安全でかつ乗客に配慮した過速度異常への保護を実現している。また、図示するように、減速制御のしきい値、即時のしきい値の順に大きさを設定することによって、まずは、乗客に配慮した非常停止を実施して、万一それがうまく作用しない場合は、安全に緊急停止させるという適応的な安全制御を実現できる。
図5および図6は、図4に示した過速度しきい値特性上での乗りかごの実際の動作過程を表している。最初に、図5では、巻上機ブレーキ14に対する過速度しきい値特性による非常停止のみを示している。
まず、従来の非常停止について説明する。
乗りかごが通常の速度パターンVpnに沿って矢印のように走行してきた場合に、例えば、点P1において、モータに何らかの異常が生じて速度が増加する異常が発生したと仮定する。この結果、乗りかごは速度V1が増加していき、点P2において、過速度しきい値Vt1を超える。この後、巻上機ブレーキ14による非常ブレーキが作動して、大きな減速度β1で一気に制動力がかかり、点P3の位置に非常停止される。図のように、従来の制御では、即時に(無条件に)停止させることのみが目的であり、ドアゾーンDZから離れた位置P3で停止させられるため、乗りかご内の乗客はかごから出ることができずに閉じ込められることになる。この例ではモータの異常で非常停止しており、自動で復旧運転することはリスクが大きく、結局人手による復旧、点検が必要なため、乗客がかごから救出されるまでに長い時間を要する可能性もある。
一方、本実施例においては、モータの異常で速度V2が増加していき、点P4において、巻上機ブレーキ14に対する減速度制御による非常停止モードの過速度しきい値Vtc1に達する。この結果、巻上機ブレーキ14を用いた減速度制御による非常停止制動が実行される。このとき、巻上機ブレーキ14による減速度βc1は、前記即時非常停止の減速度β1よりも小さく、かつ、最寄階のドアゾーンDZに停止するような減速度指令に従って制御される。この減速制御により、乗りかごの速度V2は減速され、最終的に最寄階のドアゾーンDZ内の点P5に停止することができる。
このように、仮に、過速度異常で非常停止する場合でも、最寄階のドアゾーンDZ内にかごを停止させることができるため、閉じ込めを回避できる。仮に、危険のため、ドアを自力で開けられないようにした場合でも、保守員によって早期に乗客を救出することができる。
なお、この非常停止時の乗りかごの停止位置は、正規着床位置に合わせることが理想的であるが、制御対象が巻上機ブレーキ14であるため、高精度に制御することは難しい場合が多い。このため、ドアゾーン内を目標位置とすることで、無理なく、より安全に減速制御を図ることができる。そして、ドアゾーン内またはその近傍に乗りかごが停止すれば、保守員などによって外側から乗り場戸およびかご戸を開けることによって、かごを動かすことなく、早期に乗客を救出することができる。また、本来の着床位置で非常停止できた場合は、乗り場戸およびかご戸を内部より開けることで、閉じ込めを無くすことができる。
次に、図6には、非常止め装置15に対する過速度しきい値特性による非常停止を示している。
まず、従来の非常停止について説明する。
乗りかごが通常の速度パターンVpnに沿って矢印のように走行してきた場合に、例えば、点P1において、何らかの異常が生じて速度が増加する異常が発生したと仮定する。この結果、乗りかごの速度V3が増加していき、点P6において、過速度しきい値Vt2を超える。これによって、非常止め装置15による非常ブレーキが作動して、極めて大きな減速度β2で一気に制動力がかかり、点P7の位置に非常停止される。従来、即時に(無条件に)停止させ、ピットや天井への衝突を回避することが目的であり、乗客には極めて大きなショックを与えてしまう。また、ドアゾーンDZから離れた位置P7で停止させられるため、乗りかご内の乗客はかごから出ることができずに閉じ込められることになる。この場合、人手による復旧、点検が必要なため、乗客がかごから救出されるまでに長い時間を要する。
一方、本実施例においては、速度V4が増加していき、点P8において、非常止め装置15に対する減速度制御による非常停止モードの過速度しきい値Vtc2に達する。この結果、非常止め装置15を用いた減速度制御による非常停止制動が実行される。このとき、非常止め装置15による減速度βc2は、図5で説明した巻上機ブレーキ14による即時非常停止の減速度β1よりも大きい。しかし、図示するように、非常止め装置15による即時非常停止の減速度β2よりも小さく、かつ、最寄階のドアゾーンDZに停止するような減速度指令に従って制御される。この減速制御により、乗りかごの速度V4は減速され、最終的に最寄階のドアゾーンDZ内の点P9に停止することができる。
このように、仮に、過速度異常で非常止め装置15により非常停止する場合でも、最寄階のドアゾーンDZ内にかごを停止させることができるため、閉じ込めを回避できる。仮に、危険のため、ドアを自力で開けられないようにした場合でも、保守員によって早期に乗客を救出することができる。
なお、この非常停止時の乗りかごの停止位置は、正規着床位置に合わせることが理想的であるが、制御対象が非常止め装置15であるため、高精度に制御することは難しい。このため、ドアゾーン内を目標位置とし、比較的に減速度が小さい減速指令によって非常停止させることで、無理なく、より安全に減速制御を図ることができる。この場合、ドアゾーンの近傍に乗りかごが停止すれば、保守員などによって外側から乗り場戸およびかご戸を開けることによって、かごを動かすことなく、早期に乗客を救出することができる。また、本来の着床位置で非常停止できた場合は、乗り場戸およびかご戸を内部より開けることで、閉じ込めを無くすことができる。
図7は、本発明による非常停止動作の全体フローチャートを示した図である。以下、その流れを説明する。まず、乗りかごの位置および速度を検出する(ST101)。次に、乗りかご位置に基づいて、巻上機ブレーキ14による減速度制御非常停止モードの過速度しきい値Vtc1を算出する(ST102)。乗りかご速度が、過速度しきい値Vtc1よりも大きいか否かを判定して(ST103)、大きい場合には巻上機ブレーキによる減速度を調整制御する非常停止を実施する(ST104)。より詳しく述べると速度だけではなく、駆動装置の異常情報も合わせて総合的に判定する。そうでない場合は乗りかご位置に基づいて、巻上機ブレーキによる即時非常停止モードの過速度しきい値Vt1を算出する(ST105)。乗りかご速度がこの過速度しきい値Vt1よりも大きい場合には(ST106)、巻上機ブレーキによる即時非常停止を実施する(ST107)。そうでない場合は、乗りかご位置に基づいて、非常止め装置による減速度を調整制御する非常停止モードの過速度しきい値Vtc2が算出される(ST108)。乗りかご速度とこの過速度しきい値Vtc2とを比較して(ST109)、速度が大きい場合には非常止め装置による減速度制御非常停止が実行される(ST110)。より詳しく述べると速度だけではなく、主ロープの異常情報も合わせて総合的に判定する。そうでない場合は、乗りかご位置に基づいて、非常止め装置による即時非常停止モードの過速度しきい値Vt2が算出される(ST111)。乗りかご速度がこの過速度しきい値Vt2よりも大きいかどうかを判定して(ST112)、大きい場合には非常止め装置による即時非常停止が実施される(ST113)。
図8は、巻上機ブレーキによる減速度を制御する非常停止モードの動作フローチャートを示している。まず乗りかごの位置Xoおよび速度Voをガバナーエンコーダもしくは乗りかごに設置された検出センサなどにより検出する(ST201)。検出された乗りかご位置Xoに基づいて、まず、巻上機ブレーキによる減速度制御非常停止モードの過速度しきい値Vtc1が算出される(ST202)。これは次式のような検出位置に対する関数として求められる。
Vtc1=F(Xo)…………………………………………………………(1)
しきい値が決まると、乗りかごの検出速度Voと過速度しきい値Vtc1とを比較して(ST203)、速度がしきい値よりも大きい場合には、次に、駆動装置(モータ、インバータ、速度制御用の制御盤)に対する状態信号が入力される(ST204)。速度がしきい値よりも小さい場合は処理を抜ける。処理ST204以降に戻り、入力された駆動装置の状態信号から駆動装置の各要素に異常状態が生じているか否かをチェックする(ST205)。異常が生じていることを検出した場合は、巻上機ブレーキに対する減速度制御非常停止を実行する(ST206)。駆動装置の異常が検出されない場合は次にロープ状態(例えば張力など)に対する信号を入力する(ST207)。ロープ状態の異常を検出した場合は(ST208)、非常止め装置に対する減速度制御非常停止を実行する(ST209)。
以上のフローチャートのように、過速度しきい値による速度オーバーの判定と駆動装置の異常状態検出による判定とを組合せることにより、より低い過速度しきい値で過速異常を判定できるため、従来よりもより早く異常を検出することができる。その結果、生じた余裕時間を用いて、減速度を調整した非常制動装置の制御を実施できる。また、駆動装置の異常検出と組合せることによって、過速度しきい値を下げたことによる(図4の太線Vt1から破線Vtc1にしきい値を下げている)誤検知の発生率増大を避けることができる。また、ロープ異常状態を検出した場合は、巻上機ブレーキでは乗りかごを減速できない可能性が高いため、非常制動装置を切替えて、非常止め装置を作動させるようにしている。この場合も先行検知により、時間的な余裕があるため、減速度を制御する非常停止を実行する。
図8のフローチャートの処理は電子安全装置S10(図1および図2)で実行される。駆動装置の状態信号は、図2に示した駆動装置(モータ6、制御盤5内のインバータなど)の各装置から直接入力されるか、一度、制御盤5に集められて制御盤5で異常判定を実施された後、その結果が電子安全装置に入力されるかのいずれかである。ロープの状態信号は、図2のロープ異常検出装置17で検出されて電子安全装置S10に入力される。
図9は、非常止め装置による減速度を制御する非常停止の処理フローチャートの例を示している。まず、乗りかごの位置Xoと速度Voを検出する(ST301)。次に、検出した乗りかご位置Xoに基づいて、非常止め装置による減速度制御非常停止モードに対する過速度しきい値Vtc1を算出する(ST302)。これは、次式のような検出位置に対する関数として求められる。
Vtc2=F(Xo)…………………………………………………………(2)
算出された過速度しきい値Vtc1と検出された乗りかご速度Voを比較して(ST303)、速度Voが小さい場合は、速度異常はないとして処理を抜ける。速度Voが大きい場合は、次に、張力などロープ状態の検出信号を入力する(ST304)。ロープ状態の検出信号からロープが異常状態であるか否かを判定する(ST305)。異常が無い場合は処理を抜け、異常を判定した場合は、次にかご内乗り人数の信号を入力する(ST306)。かご内乗り人数がゼロより大きいか、つまりかご内に乗客が乗っているか否かを判定して(ST307)、かご内に乗客が乗っていない場合は非常止め装置に対する即時非常停止を実施する(ST308)。かご内に乗客が無い場合は必ずしも減速度を調整して非常停止する必要は無いため、このようにしても良い。また、仮に乗客が乗っていない場合でも、強い減速による衝撃でレールや非常止め装置自体の損傷が懸念される場合は、減速度制御による非常停止を実施するのが有効である。処理ST307に戻り、かご内乗り人数がゼロより大きい場合は、次にかご内乗客情報信号を入力する(ST309)。かご内の乗客の中に、子供や老人などがいれば、より緩やかな減速で非常停止することが望ましい。そこで、このような乗客が乗っているか否かをチェックして(ST310)、そのような方が乗っている場合は、非常止め装置に対する減速度制御非常停止を実施し、かつ減速度指令をできる限り緩やかな減速度特性となるように設定する(ST311)。この場合の減速度指令は、ドアゾーン内に非常停止が可能であれば、そのゾーン内へ停止できる最も小さい減速度となり、不可であれば、安全上許容できる範囲で最小の減速度となるようにする。判定処理ST310の結果が否である場合も非常止め装置に対する減速度制御非常停止を実施するが、必ずしも緩い減速度の非常停止としなくてもよい。
以上のようなフローチャートに従うことによって、過速度判定とロープ異常検出とを組合せて、より早く過速度異常を検知することが可能となり、それによって得られる余裕時間を減速度制御に利用できる。また、かご内の乗客の有無やその乗客の情報に基づいて、より適切な減速度に設定することが可能である。例えば、小さい子供などは強い減速度による衝撃はあまり好ましくなく、子供が居ることを検出した場合は緩い減速度で非常停止させることによってより衝撃の小さい非常停止が可能である。
図9のフローチャートの各検出信号の検出手段について、ロープの状態信号は、図2のロープ異常検出装置17で検出されて電子安全装置S10に入力される。かご内乗り人数は、図2のかご床下の荷重センサ18の荷重値より検出できる。かご内乗客情報は、乗りかご内のカメラによる画像認識や無線タグなどによる個人認証により検出できる。また乗り場の呼びの種類(例えば、車椅子用の乗り場呼びなど)からも検出できる。
尚、非常止め装置による減速度制御非常停止について補足すると、非常止め装置は、レールにくさびを噛みこませる機構のため、そのままでは制動力を可変調整することは難しい。しかし、電気的制御を組み込むことによって、制約付きでの制御力の調整は可能である。従って、非常止め装置による減速度制御は、巻上機ブレーキ以上に制動力の調整条件の制約が強く、まずは、1)安全に非常停止できる範囲内で可能な限り緩やかな減速度に制御すること、次に、2)ドアゾーン内に停止するように減速度を制御することの優先順になる。
図10は、減速度指令算出の考え方を説明する説明図であり、昇降路垂直上での乗りかごの位置を示している。図の縦方向のX軸が昇降路垂直方向に対する座標軸を表している。初期状態で乗りかごは位置Xo、速度Voとする。ここで、速度Voは、図4に示した巻上機ブレーキに対する減速度制御非常停止モードの過速度しきい値Vtc1を超えていると仮定する。乗りかごは、下降中(X軸の向きと逆方向)であるため、速度は負の値となっている。このとき、減速度βで乗りかごを減速させたと仮定すると、乗りかごに対する減速度、速度、位置のそれぞれは次の方程式のように表される。
dV/dt=β…………………………………………………………………(3)
V=∫(dV/dt)dt=βt−V……………………………………(4)
X=∫Vdt=(1/2)βt−Vt+X……………………………(5)
ここで、減速による停止目標位置をXとおくと、Xは次式を満たす必要がある。
dzL<X*<XdzU…………………………………………………(6)
ここで、XdzLとXdzUは、ドア開閉可能ゾーンの下端と上端を表すものとする。乗りかごが時間t*で停止目標位置に停止するには、式(7)、(8)の関係が成り立つ必要がある。
X(t*)=X*………………………………………………………………(7)
V(t*)=0………………………………………………………………(8)
さらに、減速度βに対してもかご内乗客への衝撃緩和、主ロープの滑り発生抑制のために、次のような上限条件が定められる。βTHは異常モード(過速度異常の原因)、かご内荷重、かご内乗客数、かご内の乗客情報などによって決められる。
β<βTH………………………………………………………………………(9)
同様に速度Vに対しても、次段の過速度しきい値を超えないようにするために次のような上限条件が定められる。
V<VTH……………………………………………………………………(10)
以上の(4)〜(10)式を全て満たすようなβを解くことよって、求めるβの値を得ることができる。基本的には、(4)、(5)、(7)および(8)から変数β、t*を解いて、これが(5)、(6)の条件を満たすか否かを確認するという手順でβを求めればよい。条件を満たすβが存在すれば、そのβの値を減速指令値にして非常制動装置(巻上機ブレーキ、非常止め装置)を動作させる。条件を満たすβが存在しない場合は、減速度制御による非常停止は実施しないという制御手順になる。
また、ここではβを一定であるように扱ったが、実際にはβ=β(t)として、時間変数(時間によって値が変わる)で扱ってもよい。例えば、β(0<t<t)=β、β(t<t<t*)=βのように時間に応じて減速度を調整することによって、条件を満たす解の範囲が広がり、より減速度制御の動作可能範囲が広がる可能性もある。また、自動車のポンピングブレーキのような減速度制御を実施することにより、かご内乗客への負担を緩和することも可能である。
以上が本発明の実施例による減速度指令決定の基本的な考え方であり、このような決定法によって、過速異常検出時点でのかご位置、速度、さらに異常モードやかご内荷重の条件に応じたより適切な減速度指令を算出することが可能である。具体的には、ドア開閉可能ゾーン内に乗りかごを停止でき、かつ減速度および速度を所定値以下とする条件を満たすような減速度指令を算出することが可能である。
図11は、本発明の一実施例における減速度制御による非常停止に対する減速度指令算出のフローチャートである。この図11のフローチャートは、近傍の乗り場階のドア開閉可能ゾーン内に停止させるような減速度指令を算出する処理である。以下、その流れを説明する。
まず、過速度異常検出時点での乗りかごの位置Xoと速度Voを検出する(ST401)。次に、装置異常信号(図3)より推定した過速度異常の原因、乗りかご内荷重、かご内乗り人数、乗客情報(乗客が老人または子供か等)から減速度βの上限値βTHを算出し(ST402)、さらに、図4に示す多段の過速度しきい値の特性から、次段の過速度しきい値に基づき速度Vの上限値VTHを算出する(ST403)。次に、現在の乗りかご位置と走行方向から最も距離的に近い階もしくは次に距離的に近い階を定め、その階に対するドア開閉可能ゾーンより停止位置目標範囲を算出する(ST404)。停止位置目標範囲は下限をXdzL、上限をXdzUとする。
以上の条件に対して、以下のループ計算により適正な減速度指令を求める。まず、減速度β(t)の初期パターンを設定する(ST405)。これは、例えば、次式のようにβの上限値を基にそれより小さい値に設定する。
β(t)=β(t)=K・βTH(0<K<1)……………………(11)
尚、ここでは、パターンという言葉を時間tに対する値の集合全体を含めて呼ぶことにする。設定した減速度パターンβ(t)より、速度パターンV(t)を次式により算出する(ST406)。
V(t)=∫β(t)dt…………………………………………………(12)
算出した速度パターンが上限値VTHを超えていないか否かをチェックして(ST407)、超えていない場合は処理ST408に進み、超えている場合は減速度を修正する処理を実施する(処理ST411以下)。以下、処理ST408以降の処理を説明する。まず、算出した速度パターンより、次式により位置パターンx(t)を算出する(ST408)
X(t)=∫V(t)dt…………………………………………………(13)
算出したX(t)に対して、その停止時のかご位置X(t*)が停止目標範囲内にあるかどうか(式(14)を満たすかどうか)をチェックする(ST409)。
dzL≦X(t*)≦XdzU…………………………………………(14)
尚、停止時の時間t=t*は次式を満たすものとする。
V(t*)=0………………………………………………………………(15)
停止時のかご位置が式(14)を満たす場合は、これに対応する減速度パターンβ(t)を減速度指令パターンβ*(t)に決定し(ST410)、所望の減速度指令が決まる。そうでない場合は、減速度を修正する処理を実施する(処理ST411以下)。
以下では、処理ST411以降の減速度修正の処理について説明する。まず、計算開始からの所用時間が減速度演算許容時間内かどうかをチェックする(ST411)。これは、非常制動が緊急を要する状況のため、計算打ち切りの時間リミットに対応する。減速度演算許容時間を超えている場合は、減速度制御を打ち切り即時非常停止を実行する(ST414)。許容時間内の場合は、式(16)のように減速度パターンβ(t)を修正更新して(ST412)、β(t)が上限値βTHを超えていないかをチェック(ST413)する。もし、超えていない場合は、修正されたβ(t)に対して、処理ST406以降の処理を再び実行し、条件を満たすβ(t)を求めていく。
β(t)=β(t)+△β(t)…………………………………………(16)
以上のように、図10のフローチャートに従うことにより、停止位置(X(t))の条件、減速度(β(t))の条件、速度(V(t))の各条件を満足するドア開閉可能ゾーンに乗りかごを停止できるような減速度指令(β(t))を算出することが可能である。算出されたβ(t)に従って、非常制動装置(巻上機ブレーキ、非常止め装置)の制動力を操作して、実際のβ(t)がβ(t)と等しくなるように制御する。これにより、減速度、速度の条件を満たした上で乗りかごをドア開閉可能ゾーンに停止させることが可能である。
図12は、乗りかごの減速度を抑制して緩やかに停止させる(以下、緩停止と呼ぶ)場合の減速度制御による非常停止に対する減速度指令算出のフローチャートである。流れは基本的に図11と同様であり、以下ではその要点を説明する。
まず、過速度異常検出時の乗りかごの位置X、速度Vを検出する(ST501)。さらに、減速度βの上限値βTHを算出する(ST502)。ここで、βTHは緩停止に対する減速度の条件より決定し、乗客に対して減速制動による衝撃を軽減するような値もしくは時間変化に設定される。この値は、ビルの用途(オフィス、マンション、病院等)によって調整されてもよい。例えば、マンションや病院ではより緩やかな減速度が望まれると考えられるため、上限値βTHはより小さい値に設定される。速度Vの上限値VTHについても次段の過速度しきい値を超えないような値に設定される(ST503)。このように設定された減速度、速度の条件に対して、それらを満たすような減速度パターンβ(t)を以下の処理で算出する。まず、減速度β(t)に対する初期パターンβ(t)を算出する(ST504)。さらに、β(t)に基づいて、速度パターンv(t)を算出する(ST505)。速度パターンV(t)が、速度上限値VTHを超えないか否かをチェックして(ST506)、上限値より小さい場合には、この時の減速度パターンβ(t)を減速度指令パターンβ(t)に決定する(ST507)。決定した減速度指令パターンβ(t)に従って、非常制動装置(この場合は非常止め装置が対象)の制動力を制御することにより、より緩やか減速度で乗りかごを停止させることが可能である。
尚、図12のフローチャートには記述していないが、減速度β(t)に対しては下限値があり、これは昇降路底部にある緩衝器に衝突する手前で停止させるか、もしくは所定の速度以下で衝突するような条件を満たすように設定される。減速度指令は、必ずこの下限値より大きいことを前提とする。処理ST506に戻り、速度パターンV(t)が上限値VTHを超える場合は、減速度パターンの修正処理を実施する。まず、計算開始からの経過時間が減速度演算許容時間内かどうかをチェックして(ST508)、許容時間を超えている場合は、減速度制御による非常停止に代えて、即時非常停止を実行する(ST511)。許容時間内の場合は、減速度パターンを式(16)のように修正更新して(ST509)、修正後の値が上限値βTHを超えていない場合は(ST510)、処理ST505に戻り、修正したβ(t)が速度上限条件を満たすかどうかをチェックする。
以上のように、図12のフローチャートに従うことにより、減速度(β(t))の条件、速度(V(t))の各条件を満足する緩停止を実現するような減速度指令(β(t))を算出することが可能である。
図13は、減速度制御の説明図である。ここでは、乗りかごが下降運転(速度V<0)の場合を想定している。図13(a)は、減速度パターンの例を表している。グラフの横軸が時間、縦軸が減速度(dV/dt)を表している。実線C01〜実線C05までが減速度パターンを表しており、この例では2段階の減速度特性となっている。まず、減速度の立ち上がり部(実線C01)があり、ここは、制動をかけ始めた状態に対応する。その後、定常状態(実線C02)に達して、速度が一定の変化率で減少し、減速度を少し下げる(実線C03)。さらに、定常状態(実線C04)で減速させた後、減速度をゼロにさせる(実線C04)。必ずしも、このような2段階の特性とする必要は無いが、より確実にドア開閉可能ゾーンに停止させる目的や、乗りかご内の乗客への減速制動による負担を緩和する目的で、図13のような複数段の減速度特性で段階的に減速することが有効な場合もある。本発明の実施例による減速度制御による非常停止法であれば、これが可能になる。減速度パターンの最大値は減速度上限値βTH(点線C06)を超えておらず、減速による乗客への負担をより軽減した上で非常制動をかけることが可能である。
図13(b)は、速度パターンを表している。図13(a)のように制御された減速度に基づいて、速度パターン(実線C07)も制御されており、t=t*で停止状態(V=0)となる。
図13(c)は、乗りかごの昇降路上の位置の時間推移(位置パターン)を表している。縦軸が、乗りかごの昇降路上の位置を表している。かご位置特性(実線C07)は、過速度異常検出時点の初期位置から減速度制御によって適正に減速されて、最終的にt=t*のかご停止時点では、ドア開閉可能ゾーン内で停止させることが可能である。
図14は、非常制動装置(巻上機ブレーキまたは非常止め装置)による制動力調整法の一例を表した図である。エレベータ電子安全装置S10(図1)で算出された減速度指令に基づいて、非常制動装置の制動力が調整されるが、これは、例えば図14のようにパルス状に制動力を作用させて、そのパルス幅を調整することにより実施できる。これは、電力変換用インバータのPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)と同じ考え方である。
例えば、図14(a)のようなパルス状の制動力操作信号をエレベータ電子安全装置が非常制動装置へ送信する。図14(a)のグラフは横軸が時間、縦軸が制動力操作量を表している。時間区間D03では、幅の広いパルス信号による制動力操作信号(D01)が発せられており、時間区間D04では、幅の狭いパルス信号による制動力操作信号(D02)が発せられている。
この結果、非常制動装置での制動機構の動作量(制動力に対応)は、図14(b)のようになる。具体的には、制動力操作信号と同じように制動機構が動作され、時間区間D03では幅の広いパルス形状での制動動作(D05)が実施され、時間区間D04では幅の狭いパルス形状での制動動作(D06)が実施される。これを時間平均してみると、太字の実線D07のような特性となり、パルス幅に比例して、時間区間D03では強い制動力が作用され、時間区間D04ではそれよりも弱い制動力が作用されている。
例えば、この図14のようなパルス幅を調整する方法によって、各非常制動装置に対して、減速度指令に対応した制動力を作用させることが可能である。この結果、所望の減速度制御が実現でき、ドア開閉可能ゾーン内への停止や減速度を弱めた緩停止が可能である。
非常制動装置に対する制動力の制御は、図14のような例に限らず、例えば、摩擦部材の接触面の距離を機構により直接的に調整して制動力を制御してもよい。
図15は、本発明の他の実施例によるエレベータ電子安全システムの主要制御構成図である。この実施例は、乗りかごの加速度を検出することにより、将来の乗りかごの位置と速度を予測して、両者の関係に基づいてより早く過速異常を検出して、その余裕時間を用いて減速度制御を実施することを特徴としている。
以下、図15の構成について説明する。尚、図15に示したエレベータ電子安全システムの構成において、図1と同じ要素については、図1と同じ符号を付しており説明は省略する。図15において、図1と異なる点は、かご加速度検出手段S21、かご速度予測手段S22、およびかご位置予測手段S23を備えている点である。まず、かご加速度検出手段S21では、乗りかごの加速度が検出される。この加速度は、速度の微分値もしくは加速度検出器により検出される。かご速度予測手段S22では、検出した加速度に基づいて、乗りかごの将来時点での予測速度を算出する。さらに、このかご速度予測値に基づいて、かご位置予測手段S23では、乗りかごの将来時点の予測位置を算出する。
以上のような、予測かご速度、予測かご位置に基づいて、先行して過速度異常を検出する。具体的には、かご位置予測手段S23で算出された予測かご位置情報を、制御非常停止の過速度しきい値設定手段S13に入力して、各将来時点での予測位置に対する過速度しきい値を設定する。そして、減速度制御による非常停止実施判定手段S14では、各将来時点での予測位置に対する過速度しきい値とその時の予測速度とを比較して、非常停止実施が必要かどうかを判定する。具体的には、ある将来時点以降で予測速度が過速度しきい値を超えるような場合には、既に過速度異常となる兆候が生じており、先の時点でオーバースピード状態になると予測して、先行で減速度制御による非常停止の実施を判定する。減速度制御による非常停止の内容と効果については既に説明しているため、ここでは省略する。このように、減速度制御による非常停止制動を実施できるのは、予測位置と予測速度によってより早く過速度異常を検知しているためであり、先行して検知した余裕時間を利用して、非常制動装置に対して減速度制御を行うことが可能になる。
図16は、図15に示した予測速度、予測位置に基づいた減速度制御による非常停止を実施するエレベータ電子安全装置に対する過速度異常先行検知のフローチャートである。以下のその流れを説明する。
まず、現時点での乗りかごの現在位置X、速度V、加速度αを検出する(ST601)。次に、加速度の時系列データに基づいて、乗りかごの平均加速度αAVEを算出(ST602)する。算出した平均加速度をその時点の加速度と見なして、乗りかごの予測速度Vc(t)を次式により算出する(ST603)。
Vc(t)=αAVE・t+V…………………………………………(17)
ここで、t は将来時点の時間を表している。さらに算出した予測速度vc(t) に基づいて、予測位置xc(t) を次式により算出する(ST604)。
Xc(t)=(1/2)・αAVE・t+V・t+X…………(18)
算出した予測かご位置Xc(t)に対して、各位置に対応する過速度しきい値Vth(t)を算出する(ST605)。
予測した各時点tにおける乗りかご予測速度Vc(t)に対して、その時の予測位置から求めた過速度しきい値Vth(t)を超えているかどうかを判定する(ST606)。これは、次式を満たす将来時点tが存在するかどうかを判定することに対応する。
Vc(t)≧Vth(t)…………………………………………………(19)
しきい値を超えると判定された場合は、将来的に過速度異常が発生すると予測して、先行で減速度制御による非常停止を実施する。
本発明の一実施例によるエレベータ安全システムの主要部の制御構成図。 本発明の一実施例によるエレベータ安全システムを含んだエレベータ全体構成図。 本発明の一実施例に基づいた非常停止動作モードの分類図。 本発明の一実施例による過速度しきい値パターン特性図。 過速度しきい値特性に基づいた巻上機ブレーキでの非常停止動作例。 過速度しきい値特性に基づいた非常止め装置での非常停止動作例。 本発明の一実施例による非常停止動作全体に対するフローチャート。 本発明の一実施例による巻上機ブレーキに対する減速度制御による非常停止のフローチャート。 本発明の一実施例による非常止め装置に対する減速度制御による非常停止のフローチャート。 本発明の一実施例による減速度指令算出方法の考え方を説明する図。 本発明の一実施例による減速度指令算出法を示すフローチャート。 本発明の他の実施例による減速度指令算出法を示すフローチャート。 本発明の一実施例による減速度制御を実施した場合の減速度、速度、かご位置の時間推移説明図。 本発明の一実施例によるPWM制御による制動力調整法説明図。 本発明の他の実施例によるエレベータ安全システムの主要制御構成図。 図15での速度予測による過速度異常先行検出法を示すフローチャート。
符号の説明
1…エレベータ乗りかご、2…昇降路、3…機械室、4…巻上機、5…制御盤、6…モータ、7…シーブ、8…プーリ、9…主ロープ、10…釣合錘、11…レール、12…緊張用プーリ、13…ガバナ(調速機)、14…巻上機ブレーキ、15…非常止め装置、16…緩衝器、17…ロープ異常検出装置、18…荷重センサ、20…ガバナロープ、H01,H02…各階の乗り場床。

Claims (13)

  1. エレベータ乗りかごの速度が第1の所定値を超えた場合に、巻上機ブレーキで非常停止させる非常停止ステップと、
    前記乗りかごの速度が第1の所定値よりも高い第2の所定値を超えた場合に、かごとレールとの間に設けられた非常止め装置で乗りかごを停止させる非常止めステップとを備えたエレベータの安全停止方法において、
    前記乗りかごの速度が前記第1の所定値よりも低い所定値を超えた場合に、前記巻上機ブレーキによる減速度よりも小さい減速度でエレベータ乗りかごを停止させるように、前記巻上機ブレーキまたは前記非常止め装置の制動力を調整するとともに、
    前記乗りかごの速度が前記第2の所定値よりも低く前記第1の所定値よりも高い所定値を超えた場合に、前記非常止め装置による減速度よりも小さく前記巻上機ブレーキによる減速度よりも大きい減速度でエレベータ乗りかごを停止させるように、前記巻上機ブレーキまたは前記非常止め装置の制動力を調整する制動力制御非常停止ステップを備え、
    前記制動力制御非常停止ステップは、過速度しきい値とかご速度検出信号との比較結果、さらに駆動装置異常検出信号、主ロープ異常検出信号、かご内乗り人数検出信号、およびかご内乗客情報検出信号を組合せて非常停止の実施を総合的に判定し、
    前記巻上機ブレーキ及び前記非常止め装置の制動力の調整は、PWM制御により動作オンとオフを繰り返す、又はオン状態でも制動力を連続量で可変に調整できるように摩擦部材の接触面の距離を調整することを特徴とするエレベータの安全停止方法。
  2. 請求項1において、前記制動力制御非常停止ステップは、かご位置の前方の乗り場のドアゾーン内を目標停止位置として制動力を調整することを特徴とするエレベータの安全停止方法。
  3. 請求項1または2において、前記制動力制御非常停止ステップにおける前記乗りかごの速度は、主ロープを介することなく検出した乗りかごの速度であることを特徴とするエレベータの安全停止方法。
  4. エレベータ乗りかごの速度を検出するかご速度検出装置と、
    検出したエレベータ乗りかごの速度が第1の所定値を超えた場合に、巻上機ブレーキで非常停止させる非常停止装置と、
    前記乗りかごの速度が第1の所定値よりも高い第2の所定値を超えた場合に、かごとレールとの間に設けられた非常止め装置で乗りかごを停止させる非常止め装置とを備えたエレベータの安全停止システムにおいて、
    検出した前記乗りかごの速度が前記第1の所定値よりも低い所定値を超えた場合に、前記巻上機ブレーキによる減速度よりも小さい減速度でエレベータ乗りかごを停止させるように、前記巻上機ブレーキまたは前記非常止め装置の制動力を調整するとともに、
    前記乗りかごの速度が前記第2の所定値よりも低く前記第1の所定値よりも高い所定値を超えた場合に、前記非常止め装置による減速度よりも小さく前記巻上機ブレーキによる減速度よりも大きい減速度でエレベータ乗りかごを停止させるように、前記巻上機ブレーキまたは前記非常止め装置の制動力を調整する制動力制御非常停止手段を備え、
    前記制動力制御非常停止手段は、過速度しきい値とかご速度検出信号との比較結果、さらに駆動装置異常検出信号、主ロープ異常検出信号、かご内乗り人数検出信号、およびかご内乗客情報検出信号を組合せて非常停止の実施を総合的に判定する判定手段と、
    前記巻上機ブレーキ及び前記非常止め装置の制動力をPWM制御により動作オンとオフを繰り返して調整するか、又はオン状態でも制動力を連続量で可変に調整できるように摩擦部材の接触面の距離を調整する手段を備えたことを特徴とするエレベータの安全停止システム。
  5. 請求項4において、前記巻上機ブレーキは、前記非常停止に用いる主ブレーキのほかに、前記制動力制御非常停止手段において用いる補助ブレーキを備えたことを特徴とするエレベータの安全停止システム。
  6. 請求項4または5において、前記エレベータ乗りかごの位置を検出するかご位置検出装置を備え、前記制動力制御非常停止手段は、検出した前記かごの速度と検出したかご位置とに応じて、かご位置前方の乗り場のドアゾーン内を目標停止位置として制動力を調整する制動力調整手段を備えたことを特徴とするエレベータの安全停止システム。
  7. 請求項4〜6のいずれかにおいて、前記制動力制御非常停止手段は、前記非常止め装置による減速度よりも小さい減速度でエレベータ乗りかごを、かご位置前方の乗り場のドアゾーン内に停止させるような減速度指令を算出する手段と、この減速度指令に従って前記制動力を制御する手段とを備えたことを特徴とするエレベータの安全停止システム。
  8. 請求項4〜7のいずれかにおいて、昇降路内における前記乗りかごの昇降速度を、主ロープを介することなく検出する乗りかごの昇降速度検出手段を備えたことを特徴とするエレベータの安全停止システム。
  9. 請求項4〜8のいずれかにおいて、巻上機またはその駆動装置の異常を検出する異常検出装置を備え、検出した乗りかごの速度が前記所定値を超え、かつ前記巻上機またはその駆動装置の異常を検出した場合に、前記制動力制御非常停止手段が動作するように構成したことを特徴とするエレベータの安全停止システム。
  10. 請求項4〜9のいずれかにおいて、主ロープの異常を検出する主ロープ異常検出装置を備え、検出した乗りかごの速度が第1の所定値よりも低い前記所定値を超え、かつ主ロープの異常を検出した場合に、前記制動力制御非常停止手段が動作するように構成したことを特徴とするエレベータの安全停止システム。
  11. 請求項において、前記乗りかごの荷重センサを備え、前記減速度指令を算出する手段は、検出した乗りかごの速度と検出位置に加えて、検出した乗りかごの荷重を用いて、前記減速度指令を算出するように構成したことを特徴とするエレベータの安全停止システム。
  12. 請求項7または11において、乗りかご内に人数検出手段を備え、前記減速度指令を算出する手段は、検出した乗りかごの速度と検出位置に加えて、検出した乗りかご内人数を用いて、前記減速度指令を算出するように構成したことを特徴とするエレベータの安全停止システム。
  13. 請求項7,11または12において、乗りかご内の乗客の人物情報検出手段を備え、前記減速度指令を算出する手段は、検出した乗りかごの速度と検出位置に加えて、検出した乗りかご内の乗客の人物情報を用いて、前記減速度指令を算出するように構成したことを特徴とするエレベータの安全停止システム。
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