JP5339033B2 - 微粒子捕捉性能が表裏面で異なる多層構造膜およびその製法。 - Google Patents

微粒子捕捉性能が表裏面で異なる多層構造膜およびその製法。 Download PDF

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本発明は微粒子捕捉性能が表裏面で異なる再生セルロース多孔膜および該膜の乾式製造方法に関する。より詳しくは、膜の裏面方向から多孔膜中の孔を通した物質の拡散(これを以下、孔拡散と略称)法および濾過法により微粒子を除去する技術に最適な平膜および該膜の製造方法に関する。
バイオテクノロジーにおいて、その原料物質中に含まれる微粒子にはプリオン、ウイルス、細菌などの感染性微粒子の他にタンパク質などの会合体や変性体などがある。これらの微粒子が最終製品の中に混在すると種々の感染症や発熱の原因となる。そのためバイオ技術で得られる製品(特にバイオ医薬品)の製造工程では上記の微粒子の除去あるいは不活化工程が必要である。バイオ医薬のみに限らず生物由来の原料を利用する食品や化粧品の製造工程中では微粒子対策は不可欠である。
微粒子対策としてウイルス除去膜や除菌フィルターは既に商品化されており、除プリオン膜技術も近い将来市場に出現する可能性がある。膜分離方法としては膜間差圧を物質移動の駆動力とする膜濾過技術と、最近では膜中の孔を通して物質の濃度勾配を駆動力とした孔拡散技術が開発されている。
従来、液体中に分散した微粒子の分離および除去には中空糸や平膜による膜濾過が行われている。この時の問題点として、膜が目詰まりすることによって回収される物質の膜透過率、回収率、除去される物質の除去率等に大きな影響を与えることが挙げられる。
目詰まりを起こすメカニズムとして、(1)膜の平均孔径より小さな微粒子が膜内部の細孔に凝集して詰まる(梗塞型)(2)膜の平均孔径より大きな微粒子が膜表面の孔入口に詰まる(血栓型)がある。内部の多層構造により微粒子を分離、除去する膜では特に(2)の血栓型目詰まりを防ぐことでその特質が充分発揮される。
多層構造膜を用いた濾過の場合、膜の平均孔径より大きな微粒子が液体の透過を開始する面に堆積すると、平均孔径より遥かに大きな孔は目詰まりすることなく残存する場合が多く、また層内の微粒子の径より小さな孔は血栓型目詰まりが起こり多段濾過が起こらなくなる。そのため結果的に膜の微粒子捕捉性能を低下させ、また膜の圧力損失が高くなるという欠点がある。孔拡散においては、液体の透過を開始する面の孔数が少なかったり、あるいは孔径が小さいと微粒子のブラウン運動による孔へ入り込む確率が低いため微粒子の透過速度の減少を起こすことになる。
すなわち、膜において粒子径の分布の広い微粒子が分散した液体の透過を行なう場合において濾過を開始する面側には微粒子の平均粒子径より大きな径の孔が多く分布し、微粒子の透過を阻止する点では微粒子の平均粒子径より小さな径の孔が分布したグラジエントな多層構造膜が、微粒子を除去し目的物質を分離精製する技術において最適な膜と言える。
基本的なミクロ相分離法による多層構造膜の作製方法は特許文献1に詳しい。この方法では膜の表面の平均孔径が小さく、膜裏面の平均孔径は表面の3倍以上となる(特許文献2)。
この時、平均孔径5〜30nmの膜の裏面表層について走査型電子顕微鏡により観察すると、平均孔径は膜裏面の方が大きいが膜面積当りの孔数が非常に少ない構造となっており、また、この膜の断面の超薄切片を透過型電子顕微鏡により膜厚方向に沿って観察すると、膜の裏面表層から0.2μmの厚さで緻密層が出来ていることが確認された。裏面側にも層構造が発達し、かつ裏面表層に薄い緻密層が生じているのは平均孔径が100nm以上の場合には認められていない特殊な場合である。
濾過の際の目詰まりの進行を遅らせる条件として、膜の表裏面の孔径を変化させ、濾過を孔径の大きい側から小さい側へ起こさせるように濾過方法を指定する(特許文献3)。平均孔径の大きな膜の裏面から液体透過を開始するが、膜面積当たりの孔数が少ないことで血栓型目詰まりを起し易く、微粒子が拡散した液体を濾過する際の圧力損失を起こし、物質の透過率、回収率、除去される物質の除去率等を低下させる大きな要因となっていることが明らかとなった。
平膜とは平面状の膜であり、その平均孔径は(粘度・膜厚・濾過速度/膜間差圧・空孔率)の平方根で与えられる。ここで濾過速度は一平方メートル当りの純水の濾過速度でml/minの単位で測定され、膜厚はミクロン単位、粘度はセンチポイズ、膜間差圧はmmHg単位で、空孔率は無次元単位である。この際の平均孔径はnm単位となる。空孔率は次式で与えられる。
空孔率=(1−膜の密度/素材高分子の密度)
膜の密度は(膜の重量/膜の面積×膜の厚さ)で算出される。素材高分子の密度は空孔率0%の時の膜の密度で、これはすでに文献で与えられる。
多層構造膜とは、膜の断面方向から電子顕微鏡で観察すると0.01〜1μmの厚さの層が認められ、この層が100層以上積層した膜である。膜の表面からの電子顕微鏡観察では網目状または粒子間の隙間が孔として、また粒子相互は融着した様子が観察される膜である。
乾式によるミクロ相分離法で作製される多層構造膜における膜表面とは気層に接し且つ良溶媒が蒸発する面であり、膜裏面とは固体(支持体)に接する面である。
特開2006−055780「平膜孔拡散分離機」 特開昭58−089628「再生セルロース多孔膜」 特告平成2−57982「再生セルロース中空糸膜」
本発明では、アプリケータを用いてあらかじめ設定された厚さでセルロース誘導体溶液を表面の平滑性の優れた支持体上に流延し、その後良溶媒の蒸発によりミクロ相分離を起こさせる乾式の平膜製膜方法では、平均孔径5〜30nmの平膜を作製すると、製膜の際に支持体に接触している面に0.2μm程度の薄膜ができ、膜裏面における孔数が極端に少なくなるという現象があった。ただし電子顕微鏡で評価される裏面の平均孔径は表面のそれの数倍である。また、平均孔径が100nm以上では該薄膜は消失する。
そのため、平均孔径が100nm未満の多層構造膜では膜表面側および膜裏面側からのいずれの場合でも液体を透過する面側で目詰まりを起こしやすくなり膜中に除去したい微粒子を満足に捕捉することができず、多層構造膜の特質を充分発揮することができなかった。特に微粒子を多く含む溶液を濾過した場合目詰まりが進行する多層構造膜で、しかも表裏面での平均孔径差のある膜で粒子径分布の広い粒子成分を分散した液より溶解した有効成分を効率よく回収し、同時に微粒子の除去率が高い膜の構造を示す、その膜の製造方法を本発明では提供する。
膜の表裏面の判断については、目視による判断ではなく膜表面での微粒子捕捉性能を明確にすることが求められてきた。従来は目視による判断、又は走査型電子顕微鏡による観察、共焦点顕微鏡による表面構造の確認法が検討されてきた。しかし、これらの方法ではその測定及び解析が困難な場合があることから、簡易的な膜表面の判断法が求められてきた。
膜の表裏面の判断についてはその表面での微粒子捕捉性能を測定することで可能となる。またこの表裏面の捕捉性能の差を定量的に分析することで、膜のポーラス度が期待される表面の孔構造が明確となる。微粒子を膜の表裏面それぞれからわずかに濾過を行い、その粒子の膜での捕捉量の比(C/C)をとることによってその表裏面の判断が可能となる。またこれを定量的に評価するために膜中に入り込んだ粒子を溶解し、その溶液中の濃度を分析することによって定量的に膜表裏面の差を判断できる。
本発明に至る最大の発見は、膜の表裏面の判断法として、膜の平均孔径の2倍の粒子径をもつ水酸化第二鉄コロイド粒子のような微粒子を用いて簡便に粒子の捕捉性能を確認することで、膜の表裏面の差が判断できる点にある。これらの方法を用いることで顕微鏡のような装置がない場合、または製造現場で簡易明確に膜の表裏面の判断、その膜表裏面のポーラス差が判定できる。
本発明の最大の特徴は膜の平均孔径の2倍の平均粒子径を持つ微粒子の捕捉量を膜表面(E面)からの濾過の場合の値Cと膜裏面(S面)からの濾過の場合の値Cの比を特定した点である。この比が大きくなると種々の粒子径を持つ微粒子を分散した溶液からこれらの微粒子を完全に除去(対数除去係数として3以上)し、溶解した成分を100%に近い値で回収することを発見して本発明に至った。
ここで微粒子捕捉性能とは例えば、膜に水酸化第二鉄コロイド粒子のような微粒子をわずかに濾過した場合にその膜表面に捕捉される微粒子の量をいい、膜の濾過面が期待するようなポーラスな構造であれば粒子が入り込みやすいことから微粒子の捕捉性能が高く、膜表面にポーラスでない緻密な薄膜層のようなものが存在した場合、粒子の捕捉性能は低くなる。よって粒子の捕捉性能が高いということは濾過を行う膜の表面が、膜の設計上ポーラスであり、膜表面からの微粒子が入り込みやすい構造であるということになる。
また表裏面で異なるとはこの微粒子の捕捉性能において、膜の裏面(S面)から濾過を行った場合と、膜の表面(E面)から濾過を行った際にその微粒子の捕捉性能が高く、膜のE面から濾過を行った場合には、その膜構造上の特性から、セルロース粒子が詰まった構造であることから、粒子の捕捉性能が低いと予測される。これを定性的、定量的に判断する手法として、目的とする膜の平均孔径の2倍の大きさの微粒子(例として水酸化第二鉄コロイド粒子)を用いた濾過法が適する。
膜の表裏面で粒子の捕捉性能が異なる場合には、微粒子(コロイド粒子等)を表面および裏面から一定圧力で濾過を行った際にその面に入り込んだ量を目視(定性的)、または定量的に確認し、その捕捉量に差があるということである。この定量化の際は膜に微粒子を濾過した後に、洗浄(溶解)液中に膜を浸漬し、一定時間放置した後にその洗浄液中の鉄濃度を測定する方法がある。
定量化の際の溶解用の溶媒としては微粒子の成分によって決まる。微粒子が水酸化第二鉄の場合には塩酸水溶液、またはアスコルビン酸水溶液を用いることで溶解できる。分析法の検出の感度の高さから、溶解液としては塩酸を用いることが望ましい。
さらに微粒子の選定として染料(分散染料)が挙げられる。染料を用いた場合にはこれを濾過した後に、有機溶媒(アセトン)または油中に溶解させることで捕捉量を定量化できる方法を提案する。
とCとの比(C/C)が1.0で多層構造を持つ膜では孔拡散法での微粒子除去性能は特に優れ、溶解成分の回収率も濾過の初期では高い。しかし、微粒子の目詰まりが急速に進行し濾過容量(単位膜面積当りの処理可能濾過量)は小さい。多層構造の層数が100以上でありこの比が1/5以下であれば、微粒子除去性能の低下は少なく濾過容量の増加が顕著である。
多層構造膜についての捕捉量比C/Cの値は膜の平均孔径、層数、層内での平均孔径の膜厚方向での変化(孔径の膜厚方向でのグラジエント)、層内での空孔率の膜厚方向での変化、平均孔径の2倍の平均粒子径を持つ微粒子(検査用微粒子と略称)の粒子径分布、さらに膜への微粒子の負荷量に依存することが明らかとなった。
検査用微粒子の粒子径分布は動的光散乱法で測定し、数平均粒子径の5倍以上の微粒子の存在を無視する。得られた粒子径分布より3次平均粒子径(平均粒子径)と重量平均粒子径との比が1.5倍以下の場合に検査用微粒子として採用する。濾過条件として膜間差圧を0.75気圧以下としたデッドエンド法とする。濾過後に水で膜表面を軽く洗うことによって膜表面に残留した微粒子を除去し、膜内部に捕捉された微粒子量を評価する。
捕捉量比C/Cの値は製膜条件が同一で流延用溶液中のセルロース誘導体濃度のみを変化させた場合には膜の表裏面の平均孔径と正の相関性がある。流延用溶液組成を大幅に変化させた場合には、両者の正の相関性は必ずしも存在しない。すなわち膜の表裏面の平均孔径変化(孔径の膜厚方向でのグラジエント)と濾過容量との相関性はC/C値と比較して弱い。C/Cの値と濾過容量とは強い負の相関性が見出された。特に、この値が1/5以下の多層構造膜では濾過容量は急激に大きくなる。しかし、1/500以下ではこの値が減少に伴う濾過容量の増加はほとんど認められず一定値に近づき、一方では粒子除去性能を示す微粒子の対数除去係数の減少が顕著となるためC/Cの望む値には下限が存在する。
/Cの値を小さくするには溶液組成としてセルロース誘導体濃度を下げることで成功することもあるが、この場合平均孔径が大きくなる傾向がある。本発明製法での最大の特徴は乾式のミクロ相分離法での製膜の際、流延溶液を支える固体平面の流延表面にミクロな凹凸を有する点にある。この凹凸の存在により良溶媒の蒸発側の膜表面(E面)の平均孔径を変えることなく膜裏面(S面)の平均孔径と空孔率を大幅に上昇させることが可能となる。流延用の固体板上の凹凸面の存在によりどのような作用が起こるのかについての機構は明確ではない。おそらくはミクロ相分離法で発生した粒子が連結し、その後収縮する際にミクロなスケールで該粒子の重心を固定する作用のため空間部が増加するためであろう。
流延用の固体板上の凹凸面に下記の特徴を有する。製膜後のセルロース誘導体膜との間に親和力が小さく、かつ流延液に膨潤や溶解しない素材で構成された固体状平板があること、また溶液が流延される面上に凸部が1μm当り0.001〜100個存在し、かつ凸部の高さが0.1μm〜10μmである固体平板であること。この凹凸面の存在によりE面付近の平均孔径と層状構造はほとんど影響を受けずS面側のみ平均孔径と空孔率が大幅に増大し、またS面表面での緻密層が解消する。C/Cは1/10以下となり、S面からの濾過による濾過容量が平滑なガラス面上で作製した場合と比較して、平均孔径20nmで1重量%のウシγ―グロブリン水溶液の濾過で5倍以上となった。
流延用の固体板上に凹凸面をつけると、作製されたセルロース誘導体の多層構造膜と固体板との間の接着が進み該膜の剥離回収が困難な場合が起こりやすくなる。これを防止するには該固体板の素材としてセルロース誘導体と固体板との間の親和力を小さくすれば良い。そのためには固体板の親水性の程度を変化させるか流延溶液に金属塩を添加するか、固体板上に界面活性剤を塗布すれば良い。
本発明物の第二の特徴はセルロース誘導体平膜およびそれをケン化して得られる再生セルロース平膜において、該膜のミクロン〜ナノメートルオーダーの膜構造として、厚さ0.5μm以下0.05μm以上の薄膜が100層以上積層した構造(これを多層構造と定義)で構成されている点である。この膜は乾式法のミクロ相分離法で作製される。
多層構造は平膜の断面の超薄切片を透過型電子顕微鏡観察により、厚さ0.05μm〜0.5μmの帯状物が平膜表面に沿って積層していることによって確認できる。一層を膜面の方向から観察した場合、網目状の非円形孔(UP孔と定義されている)で構成される。多層構造により液中に分散する微小粒子の膜除去性が高く、溶解している成分(例えばタンパク)の膜回収率が高くなる。
セルロース誘導体を用いることにより、選択できる良溶媒の種類を大幅に広げることができ、そのため良溶媒の流延中での選択的な蒸発によって引き起こされる乾式法のミクロ相分離の発生が容易となる。セルロースは親水性の優れた材料であるが、低沸点の良溶媒は明らかでない。セルロース誘導体にすることに素材としての親水性度も変化させることができる。セルロース誘導体の例として酢酸セルロース、硝酸セルロース、硫酸セルロースなどの酸とのエステル化によって生じたセルロース誘導体がケン化反応によってセルロースに再生するのが容易である点、実用的な観点から望ましい。
セルロース誘導体として置換度が2以上で2.8以下の酢酸セルロースが親水性と疎水性との両性項を持つ化合物として良溶媒の選定が容易である。例えばアセトンやメチレンクロライド等の低沸点の溶媒が利用でき多層構造膜の作製が容易である。酢酸セルロースを苛性ソーダでケン化して再生セルロースにすることも容易である。得られた再生セルロースの結晶化度は10%以下であり、再生セルロースの中で最高の親水性を示す。再生セルロース中には置換度表示で0.1以下の酢酸基が残存し、結晶化を防いでいる。
本発明物の第3の特徴は、本発明多層膜の空孔率が70%以上、平均孔径が0.005μm以上0.5μm以下、膜厚が40μm以上500μm以下である点にある。多層構造膜の特徴は膜厚にしたがって層数が多いほど発揮される。
一方、濾過速度とタンパク回収率は層数の増加に伴って減少するので膜厚としては最適値が存在する。特に濾過用膜としてはこれらの要請はより厳しい。多層構造膜では空孔率が大きければ大きいほど良く、特に膜への力学的要求の少ない孔拡散用の膜としては空孔率が70%以上であることが重要である。また平均孔径が0.005μm未満になると透過分子と膜素材との相互作用が大きくなり、微粒子除去性能に対する予測性が損なわれる。平均孔径が0.5μmを超える場合にはCE/Cの効果はほとんど認められず、物質透過性については平均孔径、空孔率と膜厚とで制御できるのでCE/Cを設定する必要はない。取り扱いの容易さからはCE/C≒1の方が望ましい場合もある。
高分子溶液を粗面上に流延し、膜の支持体と接する面側をポーラスにすることによりS面の構造を制御できる。支持体の固体状平板の例としてすり板ガラスがある。得られた膜構造を製造現場で簡単に確認する手段として、膜の平均孔径より2倍のサイズの有色粒子が拡散している溶液を膜片側から加圧濾過し、膜表面に入りこんだかどうかを色の付き具合で判定する。有色粒子の例としてコロイド粒子あるいは分散染料がある。
本発明を用いることで膜の表裏面のポーラス度の差(微粒子捕捉性能)を定性的、定量的に判断することが可能となる。見た目では膜の表裏面の判断、膜の濾過面が期待するポーラスな様子構造であるかの判定が困難であった。この微粒子(例えば水酸化鉄コロイド粒子)を用いた方法によりこの膜の表裏面での微粒子捕捉性能の差、ポーラス度の判定が明確となる。微粒子捕捉性能をE面とS面との比で表現された特定された数値を持つ多層構造膜では層のすべてが有効に機能するため(1)微粒子除去性能を高く維持し(2)溶解成分の回収率が高く(3)濾過容量の大きい膜が設計できる。
特許文献1および特許文献2により明らかとされている製法で酢酸セルロース多層構造平膜を作製する際、すり板ガラス上に溶液を流延する。流延後、定められた環境下(温度20℃、湿度40%、層流での流動状態での空気下)で静置し、メタノール中へ浸漬後、更に0.1規定の苛性ソーダ水溶液に浸漬しケン化反応により再生セルロース多孔膜を作製する。製膜後の膜表裏面の微粒子捕捉性能の確認試験法として、水酸化第二鉄コロイド粒子を用いた方法が提案できる。平膜を47mm直径の円形に切り抜き、装置内の容量が片側1mLで両側2mL入る構造の孔拡散分離装置にはめ込み、この装置の片側(膜S面側)に注射器と空気抜き用の注射針を用いて0.7気圧以下で膜の平均孔径の2倍の大きさの水酸化第二鉄コロイド溶液を充填する。この時の粒子径は動的光散乱により測定し、その分散度(重量平均粒子径と数平均粒子径の比)が1.5以下であることを確認する。更に0.7気圧の圧力をかけてコロイド溶液を注入し、デッドエンド方式で濾過を行う。1時間濾過を行った後に膜を取り出し膜表面に付着した粒子は蒸留水で洗浄除去した後に、その濾過面の観察を行う。
濾過面の観察法としてその色の濃さの判断を行い、更に定量的に分析を行うため、膜に入り込んだ粒子を0.2規定の塩酸水溶液により溶解し、その溶解液中にチオシアン酸カリウムを微量添加して着色する。これを分光器にかけその吸光度を測定する。目的とする膜のS面とE面から同様に濾過を行い、その溶解液中の比をとって,粒子の膜での捕捉量を定量的に評価する。この時膜のS面とE面の捕捉量比(CE/C)が1/5以下1/100以上であることが求められる。
平均置換度2.50の酢酸セルロース(平均重合度210)を重量濃度(流延用原液中での重量濃度)9.24%、アセトン54.17重量%、メタノール6.21重量%、塩化カルシウム2水和物1.92重量%、RO水0.95重量%、シクロヘキサノール27.50重量%で溶解後、濾過脱泡を行った。その溶液をすり板ガラス上に0.5mmの厚さで流延し、20℃の環境で40分間放置しミクロ相分離を発生させ多孔質多層構造平膜を作製した。その後、水に浸漬してミクロ相分離の進行を止め、すり板ガラスから膜を剥離し、膜中に残存する不純物を除去するためメタノール及び水に浸漬した。次に20℃の0.1規定苛性ソーダ水溶液中に4時間浸漬しケン化反応を起こし再生セルロース膜とした。その結果、すり板ガラスに接していた面に孔数の多い膜厚89μm、平均孔径22.6nm、空孔率85%の再生セルロース膜が得られた。
ケン化後の再生セルロース膜を47mm直径の円形に切り抜き、孔拡散分離装置にはめ込んだ。この装置の片側(膜のS面側)に水酸化第二鉄コロイド溶液(平均孔径45nm、150ppm)を2mL充填した。このとき平均粒子径は動的光散乱FPAR−1000(大塚電子)により測定し、重量平均と3次の平均粒子径(数平均粒子径)との比が1.1であった。さらにコロイド溶液を充填することで圧力(およそ0.7気圧)をかけてデッドエンド法で濾過を行った。このまま1時間静置し、濾液が出なくなった時点で装置から膜を取り出し、膜表面に付着した粒子は蒸留水で3回洗浄した後に濾過面の観察を行った。この時膜の濾過面は全体的に黄褐色でコロイド粒子が膜表面に入り込んだ様子が確認された。次に膜のE面から同様に濾過を行い、膜の濾過面の観察を行った。このとき濾過面はわずかに黄色であり、ほとんど色は付いていなかった。更にこの膜中のコロイド粒子を溶解するため膜を0.2規定の塩酸溶液5mL中に浸漬し、50℃に保ち1時間溶解した。この溶解液にチオシアン酸カリウムを微量添加して赤褐色に着色し、この溶液の吸光度をUV−Vis分光器(日立製作所)により測定した。その結果、膜の表面を裏面の溶解液中の濃度比(CE/C)は1/10であり、膜のS面はE面の10倍の微粒子捕捉性能が高いことが確認された。よって、膜の表面と裏面のポーラス度の差が大きい理想的な膜であることが確認できた。
1重量%のウシγ―グロブリン溶液を作製した。溶液の透明度は純水に比べて明らかに低下しているので会合体の存在が明らかである。この溶液を一定濾過速度(10L/m・時間)で10時間以上デッドエンドでの濾過を実施した。ただし実施例1で作製した膜のS面上に平均孔径80nm、膜厚100μm、空孔率85%の膜を重ねている。膜間差圧が2気圧になった時点で濾過を終了させた。終了時までの濾過量は100L/mで、γ―グロブリンの回収率は98%であった。
バイオテクノロジーを利用した各種産業(例えばバイオ医薬品、食品産業)での製品に対する安全性の要求を満足する技術として本発明はこれらの産業に寄与する。膜の微粒子捕捉性能、除去能の高さと、目詰まりが起らない特徴を持ち従来の膜分離技術の適用が不可能と考えられていたリサイクル分野、環境産業へも安全性と省エネ分離技術として利用される。





Claims (4)

  1. セルロース誘導体平膜およびそれをケン化して得られる再生セルロース平膜において、(1)その膜構造が厚さ0.5μm以下で0.05μm以上の薄膜が100層以上積層した構造(多層構造と略称)で構成され、(2)空孔率が70%以上、平均孔径が0.005μm以上で0.5μm以下、膜厚が50μm以上で500μm以下であり、かつ(3)膜の平均孔径の2倍の平均粒子径を持つ微粒子の平膜表裏面(それぞれE面とS面と定義)でのろ過による捕捉量の比が1/5以下で1/100以上であることを特徴とする平膜
  2. 請求項1に記載の平膜を作製する方法において乾式法のミクロ相分離法で製膜し、流延用溶液をミクロな凹凸を持つ固体平板上に流延することを特徴とする製膜方法。
  3. 請求項1においてセルロース誘導体として置換度が2以上で、2.8以下の酢酸セルロースであること、および該酢酸セルロースをケン化して置換度を0.1以下とした後、乾燥させた再生セルロースであることを特徴とした平膜
  4. 請求項においてミクロな凹凸を持つ固体平板が下記の構造を持つことを特徴とする製膜方法。
    固体平板の特徴:製膜後のセルロース誘導体膜との間の親和力が小さい素材で構成された固体平板で、溶液が流延される面上に凸部が1μm当たり0.001〜100個存在し、かつ凸部の高さが0.1μm〜10μmである固体平板。
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