JP5338511B2 - レーザ溶接鋼管の製造方法 - Google Patents
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しかし一般に電縫鋼管は、成形ロールを用いて鋼板を円筒状に成形してオープンパイプ(ここでオープンパイプとは、多段の成形ロールにより成形された端部が接合されていないパイプ状の鋼帯を指す。以下、オープンパイプと記す。)とし、そのオープンパイプのエッジ部(すなわち円筒状に成形した鋼帯の両側端部)をスクイズロールで加圧しながら電気抵抗溶接(高周波抵抗溶接とも呼ぶ)して製造するので、溶接による継ぎ目(いわゆるシーム)が必然的に存在し、そのシームの低温靭性が劣化するという問題がある。そのため電縫鋼管の油井管やラインパイプは、寒冷地での使用には課題がある。シームの低温靭性が劣化する理由は、エッジ部を溶接する際に高温の溶融メタルが大気中の酸素と反応して酸化物を生成し、その酸化物がシームに残留し易いからである。
一方でシームの低温靭性や耐食性を劣化させない溶接法として、レーザビームによる溶接(以下、レーザ溶接という)が注目されている。レーザ溶接は、熱源の寸法を小さくし、かつ熱エネルギーを高密度で集中できるので、溶融メタルにおける酸化物の生成や合金元素の偏析を防止できる。そのため、溶接鋼管の製造にレーザ溶接を適用すると、シームの低温靭性や耐食性の劣化を防止することが可能である。
ところがレーザ溶接では、溶融メタルは極めて狭い領域で形成される。そのため、スクイズロールで加圧されるオープンパイプのエッジ部が接合する位置(以下、接合点という)とレーザビームを照射する周方向の位置とにずれが生じると、レーザ溶接鋼管のシームが開口した状態となり、その部分は溶接不良として取り除く必要があり、レーザ溶接鋼管の歩留り低下を招く。なお、接合点はスクイズ点とも呼ばれるが、ここでは接合点と記す。
たとえば特許文献1には、鋼板の片面からレーザビームを照射し、他方の面に発生するプラズマ光を監視することによって、レーザ溶接の状況を判定する技術が開示されている。しかしプラズマ光は広く散乱するので、この技術ではレーザ溶接の状況を精度良く把握することが困難であるばかりでなく、レーザビームを照射する位置がエッジ部から外れても精度よく認識できない。
特許文献3は、アーク溶接によって生じる溶融メタルを撮影し、その画像に基づいて裏波ビードの形状を解析して溶接条件を制御する技術が開示されている。このアーク溶接の技術をレーザ溶接にそのまま適用すると、溶融メタルの鮮明な画像は得られない。その理由は、レーザ溶接では熱エネルギーが高密度で集中するので、過剰な光量が発生するからである。そのため、レーザ溶接における裏波ビードの形状を精度良く把握することは困難である。
図1(a)は、レーザ溶接鋼管を製造する際に、本発明を適用してオープンパイプ1のエッジ部2の接合点を溶接する例を模式的に示す斜視図である。図1(a)中の矢印Aは、オープンパイプの進行方向を示す。なお、レーザビーム3の照射によって発生する深い空洞(以下、キーホールという)4と、その周辺に形成される溶融メタル5は透視図として示す。そしてレーザビーム3を照射すると、図1(a)に示すように、高密度で集中する熱エネルギーによってエッジ部2が溶融するとともに、その溶融メタル4が蒸発して発生する蒸発圧と蒸発反力によって、溶融メタル5にキーホール4が発生する。キーホール4の内部には、レーザビーム3が侵入し、金属蒸気がレーザビーム3のエネルギーによって電離されて生じた高温のプラズマが充満していると考えられる。
このキーホール4は、レーザビーム3の熱エネルギーが最も収斂する位置を示すものである。したがってキーホール4を監視し、図1(b)に示すように、エッジ部の接合点Cがキーホール4内に配置されるようにレーザ溶接を行なうことによって、レーザ溶接鋼管を安定して製造できる。ただし、エッジ部2の接合点Cとキーホール4とを一致させるためには、高精度の位置制御技術が必要である。そこでエッジ部2の接合点Cを、キーホール4の周囲に形成される溶融メタル5内に配置するようにレーザ溶接を行なっても良い。溶融メタル5のオープンパイプの周方向(溶接線に対して垂直方向)の長さLmは、キーホール4の大きさ(直径)Lkに比べて大きいので、溶接ヘッド、およびその溶接ヘッド内に収納された集光レンズや集光ミラーの位置を制御することによって、比較的簡便な技術でレーザビーム3の照射位置を周方向に容易に制御できる。したがって本発明によれば、レーザ溶接鋼管を安定して製造できる。
なお、オープンパイプ1の進行方向Aにおけるエッジ部2の接合点Cは、エッジ部2の板厚方向の平均間隔Gが、スクイズロールによって狭まり、0.5mm以下になった箇所であれば、何処でも良い。
すなわち本発明は、鋼板を成形ロールで円筒状のオープンパイプに成形し、オープンパイプのエッジ部をスクイズロールで加圧しながらオープンパイプの外面側からレーザビームを照射してエッジ部を溶接するレーザ溶接鋼管の製造方法において、エッジ部に照射するレーザビームの照射部位をオープンパイプの内面側から監視し、オープンパイプの内面側まで貫通したキーホールが認められる場合はレーザビームによる溶接条件を継続して維持する一方、オープンパイプの内面側まで貫通したキーホールが認められない場合はレーザビームによる溶接条件を変更することによって、オープンパイプの外面側から内面側まで貫通したキーホールをレーザビームの照射部位に設けつつ溶接を行なうレーザ溶接鋼管の製造方法である。
このようなエッジ部2の接合点Cとキーホール4あるいは溶融メタル5との位置関係の調整は、オープンパイプ1の内面側から監視してキーホール4を識別することによって容易に行なうことが可能である。
なおキーホール4の大きさは、図2に示すように、スタンド間から吊下げたマンドレルバー7に固定された監視カメラ8によって、オープンパイプ1の内側から監視した。撮影条件は、オープンパイプ1の内面からレーザビームおよびプラズマ光と異なる波長成分の光を照明装置9から照射し、たとえば337nm(ナノメートル)の波長の紫外線を照射して、その波長の光のみ透過するフィルターを使って撮影することで、キーホール4および溶融メタル5からの赤外線やプラズマ光等による外乱を排除した。ここで、透過させる波長はプラズマ発光のスペクトルに応じ、それを避けた波長帯域であって且つ利用可能な光源およびフィルターとの兼ね合いで選択すればよい。撮影速度は、30コマ/秒で行ない、ランダムで5枚をサンプリングした静止画像の平均値を求めた。なお、内面側のキーホールの形状は、ほぼ円形もしくは楕円形である。キーホール4の形状が楕円形になっている場合は、短径を測定した。また、キーホール4の閉塞の判定やレーザビーム3の照射位置の制御のために、監視カメラ8で撮影した映像よりエッジ部2の接合点Cやキーホール4および溶融メタル5を画像処理してそれらの寸法や位置を数値化する画像処理装置11、判定処理装置12およびレーザビームの位置制御装置10を用いた。なお、キーホール4の監視装置は、上述した構成に限定するものではなく、任意の構成のものが使用できる。
本発明で使用するレーザビーム3の発振器は、様々な形態の発振器が使用でき、気体(たとえばCO2,ヘリウム−ネオン,アルゴン,窒素,ヨウ素(I)等)を媒質として用いる気体レーザ、固体(たとえば希土類元素をドープしたYAG等)を媒質として用いる固体レーザ、あるいはバルクの代わりにファイバーを媒質として利用するファイバーレーザ等が好適である。また、半導体レーザを使用することも可能である。
キーホール4の監視装置は、図2に示す装置を用いて内面ビード切削装置のマンドレルバー7に監視カメラ8を取り付けて、オープンパイプ1内に挿入した。監視カメラ8は、レーザービーム3の照射によって発生するプラズマ光等の外乱を抑止するために、特定の波長(すなわち337nm)のみを可視化できるカメラを使用した。
得られたレーザ溶接鋼管を、超音波探傷試験に供し、JIS規格G0582に準拠してシームを20mにわたって探傷した。その探傷結果を表2に示す。なお表2においては、基準となるN5内外面ノッチの人工欠陥に対して、ピーク指示高さが、10%以下のものを優(◎),10%超え25%以下のものを良(○),25%超え50%以下のものを可(△),50%超えのものを不可(×)として評価した。
以上に説明した通り、本発明を適用すれば、厚肉材(厚さ4mm以上)のオープンパイプであっても、健全なレーザ溶接を行なうことが可能である。
2 エッジ部
3 レーザビーム
4 キーホール
5 溶融メタル
6 シーム
7 マンドレルバー
8 監視カメラ
9 照明装置
10 位置制御装置
11 画像処理装置
12 判定処理装置
Claims (4)
- 鋼板を成形ロールで円筒状のオープンパイプに成形し、前記オープンパイプのエッジ部をスクイズロールで加圧しながら前記オープンパイプの外面側からレーザビームを照射して前記エッジ部を溶接するレーザ溶接鋼管の製造方法において、前記エッジ部に照射する前記レーザビームの照射部位を前記オープンパイプの内面側から監視し、前記オープンパイプの内面側まで貫通したキーホールが認められる場合は前記レーザビームによる溶接条件を継続して維持する一方、前記オープンパイプの内面側まで貫通したキーホールが認められない場合は前記レーザビームによる溶接条件を変更することによって、前記オープンパイプの外面側から内面側まで貫通したキーホールを前記レーザビームの照射部位に設けつつ溶接を行なうことを特徴とするレーザ溶接鋼管の製造方法。
- 前記キーホールの大きさを、前記オープンパイプの内面側で直径0.2mm以上とすることを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接鋼管の製造方法。
- 前記スクイズロールで加圧されるエッジ部の接合点を、前記レーザビームの照射によって生じる内面溶融メタル内に配置することを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ溶接鋼管の製造方法。
- 前記スクイズロールで加圧されるエッジ部の接合点を、前記内面側キーホール内に配置することを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ溶接鋼管の製造方法。
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