JP5724294B2 - レーザ溶接鋼管の製造方法 - Google Patents
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Description
しかし一般に電縫鋼管は、成形ロールを用いて鋼板を円筒状に成形してオープンパイプ(ここでオープンパイプとは、多段の成形ロールにより成形された端部が接合されていないパイプ状の鋼帯を指す。以下、オープンパイプと記す。)とし、そのオープンパイプのエッジ部(すなわち円筒状に成形した鋼帯の両側端部)をスクイズロールで加圧しながら電気抵抗溶接(高周波抵抗溶接とも呼ぶ)して製造するので、溶接による継ぎ目(いわゆるシーム)が必然的に存在し、そのシームの低温靭性が劣化するという問題がある。そのため電縫鋼管の油井管やラインパイプは、寒冷地での使用には課題がある。シームの低温靭性が劣化する理由は、エッジ部を溶接する際に高温の溶融メタルが大気中の酸素と反応して酸化物を生成し、その酸化物がシームに残留し易いからである。
一方でシームの低温靭性や耐食性を劣化させない溶接法として、レーザビームによる溶接(以下、レーザ溶接という)が注目されている。レーザ溶接は、熱源の寸法を小さくし、かつ熱エネルギーを高密度で集中できるので、溶融メタルにおける酸化物の生成や合金元素の偏析を防止できる。そのため、溶接鋼管の製造にレーザ溶接を適用すると、シームの低温靭性や耐食性の劣化を防止することが可能である。
ところがレーザ溶接では、高密度エネルギー光線であるレーザビームを光学部品によって集光して溶接部に照射することによって溶接を行うので、溶接の際に急激な金属の溶融を伴う。そのため、形成された溶融池から溶融メタルがスパッタとして飛散する。飛散したスパッタは、溶接装置に付着してシームの品質を低下させるとともに、光学部品にも付着して溶接の施工が不安定になる。また、レーザ溶接では熱エネルギーを高密度で集中して溶接を行なうので、スパッタが多量に発生し、アンダーカットやアンダーフィル(すなわち窪み)等の溶接欠陥が発生する。アンダーフィルが発生すると、溶接部の強度が低下する。
図1は、レーザ溶接鋼管を製造する際に、レーザビームを1本用いてオープンパイプ1のエッジ部2の接合点を溶接する従来の例を模式的に示す斜視図である。図1中の矢印Aは、オープンパイプの進行方向を示す。なお、レーザビーム3の照射によって発生する深い空洞(以下、キーホールという)4と、その周辺に形成される溶融メタル5は透視図として示す。そしてレーザビーム3を照射すると、図1に示すように、高密度で集中する熱エネルギーによってエッジ部2が溶融するとともに、その溶融メタル5が蒸発して発生する蒸発圧と蒸発反力によって、溶融メタル5にキーホール4が発生する。キーホール4の内部には、レーザビーム3が侵入し、金属蒸気がレーザビーム3のエネルギーによって電離されて生じた高温のプラズマが充満していると考えられる。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
すなわち本発明は、鋼板を成形ロールで円筒状のオープンパイプに成形し、オープンパイプのエッジ部をスクイズロールで加圧しながらオープンパイプの外面側からレーザビームを照射してエッジ部を溶接するレーザ溶接鋼管の製造方法において、焦点距離が200mm以上であり、焦点位置でのスポット径が0.4mm以下の複数本のレーザビームを用いて、複数本のレーザビームの焦点位置での溶接線に対して垂直方向のスポット長さの合計が0.5mm以上、溶接線方向のスポット中心間距離を5mm以内に配列して溶接を行うレーザ溶接鋼管の製造方法である。
図2(a)は、2本のレーザビームを照射する位置を示しており、レーザビーム3-1,3-2をエッジ部2の両側に配置する例である。この例を斜視図で示したのが図3である。
図2(b)は、3本のレーザビームを照射する位置を示しており、レーザビーム3-1で予熱し、レーザビーム3-2,3-3をエッジ部2の両側に配置する例である。
図2(d)は、2本のレーザビームを照射する位置を示しており、出力の異なるレーザビーム3-1,3-2をエッジ部2の両側に配置する例である。この例ではレーザビーム3-1の出力が小さいので、レーザビーム3-1をレーザビーム3-2よりエッジ部2に近づけて配置している。
複数本のレーザビームを用いる場合のレーザビームの配置は、図2に示す例に限定するものではなく、目的に応じて適宜配置できる。ただし、レーザビームを5本以上使用すると、溶接装置の構造が複雑になり、メンテナンスの負荷が大きくなる。そのため、レーザビームを2〜4本使用することが好ましい。
オープンパイプ1の厚みtは3mm超えが好ましい。厚みtが3mm以下では、溶落ちが発生し易くなる。
レーザビーム3を照射する角度(以下、前進角という)は2〜20°の範囲内が好ましい。前進角を設けてレーザビーム3を照射することによって、スパッタの発生量が減少する。ただし、前進角が2°未満ではその効果が得られない。また、20°を超えてもその効果は得られない。
本発明で使用するレーザビームの発振器は、様々な形態の発振器が使用でき、気体(たとえばCO2,ヘリウム−ネオン,アルゴン,窒素,ヨウ素等)を媒質として用いる気体レーザ,固体(たとえば希土類元素をドープしたYAG等)を媒質として用いる固体レーザ,レーザ媒質としてバルクの代わりにファイバーを利用するファイバーレーザ等が好適である。あるいは、半導体レーザを使用しても良い。
ただし補助熱源としてはアークの使用が最も好ましい。アークの発生源は、溶融メタル5の溶落ちを抑制する方向に電磁力(すなわち溶接電流の磁界から発生する電磁力)を付加できるものを使用する。たとえばTIG溶接法,プラズマアーク溶接法等の従来から知られている技術が使用できる。アークの発生源はレーザビームと一体的に配置することが好ましい。その理由は、アークを発生させる溶接電流の周辺に生じる磁界の影響を、溶融メタル5に効果的に与えるためである。さらに、アークの発生源をレーザビーム3より先行させて配置することが一層好ましい。その理由は、エッジ部2の水分や油分を除去できるからである。
以上に説明した通り、本発明によれば、大きいエネルギーを有するレーザ溶接によってレーザ溶接鋼管を製造するにあたって、アンダーカットやアンダーフィルを抑制するとともに、溶接効率を低下させることなく良好な品質のレーザ溶接鋼管を歩留り良く得られる。得られたレーザ溶接鋼管は、シーム6の低温靭性や耐食性が優れており、寒冷地や腐食環境で使用する油井管やラインパイプに好適である。
表2に示す発明例は、本願発明の必須の要件を満足する例である。なお、発明例のうち鋼管No.10は溶接速度が本発明の好適範囲を外れる例、鋼管No.11はレーザ出力が本発明の好適範囲を外れる例、鋼管No.12はアップセット量が本発明の好適範囲を外れる例、鋼管No.13はエネルギー密度が本発明の好適範囲を外れる例である。これらは、いずれも本願発明の必須の要件を満足するので発明例とする。
得られたレーザ溶接鋼管を、超音波探傷試験に供し、JIS規格G0582に準拠してシームを20mにわたって探傷した。その探傷結果を表2に示す。なお表2においては、基準となるN5内外面ノッチの人工欠陥に対して、ピーク指示高さが、10%以下のものを優(◎),10%超え25%以下のものを良(○),25%超え50%以下のものを可(△),50%超えのものを不可(×)として評価した。
2 エッジ部
3 レーザビーム
4 キーホール
5 溶融メタル
6 シーム
Claims (7)
- 鋼板を成形ロールで円筒状のオープンパイプに成形し、前記オープンパイプのエッジ部をスクイズロールで加圧しながら前記オープンパイプの外面側からレーザビームを照射して前記エッジ部を溶接するレーザ溶接鋼管の製造方法において、焦点距離が200mm以上であり、焦点位置でのスポット径が0.4mm以下の複数本のレーザビームを用いて、前記複数本のレーザビームの焦点位置での溶接線に対して垂直方向のスポット長さの合計が0.5mm以上、溶接線方向のスポット中心間距離を5mm以内に配列して溶接を行なうことを特徴とするレーザ溶接鋼管の製造方法。
- 前記オープンパイプの外表面における各レーザビームのエネルギー密度を70kW/mm2以下とすることを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接鋼管の製造方法。
- 前記オープンパイプの厚みをtとし、前記オープンパイプの外表面からt/3以上内面側に焦点位置を配置することを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ溶接鋼管の製造方法。
- 前記複数本のレーザビームのレーザ出力を合計15kW以上、溶接速度を7m/分以上とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーザ溶接鋼管の製造方法。
- 前記レーザビームに前進角2〜20°を付与することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のレーザ溶接鋼管の製造方法。
- 前記オープンパイプの厚みtが3mmを超えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザ溶接鋼管の製造方法。
- 前記オープンパイプのエッジ部をスクイズロールで加圧するにあたって、0.3〜1.0mmのアップセットを付与することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のレーザ溶接鋼管の製造方法。
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