JP2011173161A - レーザ溶接鋼管の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】レーザ溶接鋼管を製造するにあたって、オープンパイプのエッジ部を適正な形状にしてレーザビームを照射することによって、アンダーカットやアンダーフィルを防止し、かつ良好な品質のレーザ溶接鋼管を高歩留りで効率良く製造する。
【解決手段】造管成形工程の前あるいは溶接工程の前に、オープンパイプ1の外面側ではエッジ部の端面から円周方向に1mm以上t/3以下かつ外表面から板厚方向に0.5mm以上t/3以下の領域に塑性変形を付与し、オープンパイプの内面側ではエッジ部の端面から円周方向に1mm以上t/3以下かつ内表面から板厚方向に0.5mm以上t/3以下の領域に塑性変形を付与して、エッジ部を増厚する増厚加工工程を有する。
【選択図】図1
【解決手段】造管成形工程の前あるいは溶接工程の前に、オープンパイプ1の外面側ではエッジ部の端面から円周方向に1mm以上t/3以下かつ外表面から板厚方向に0.5mm以上t/3以下の領域に塑性変形を付与し、オープンパイプの内面側ではエッジ部の端面から円周方向に1mm以上t/3以下かつ内表面から板厚方向に0.5mm以上t/3以下の領域に塑性変形を付与して、エッジ部を増厚する増厚加工工程を有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、レーザビームを用いてオープンパイプ長手方向のエッジ部を溶接する鋼管(以下、レーザ溶接鋼管という)の製造方法に関し、特に油井管あるいはラインパイプ等の石油,天然ガスの採掘や輸送に好適なレーザ溶接鋼管の製造方法に関するものである。
油井管あるいはラインパイプとして用いられる鋼管は、溶接鋼管(たとえば電縫鋼管,UOE鋼管等)とシームレス鋼管に大別される。これらの鋼管のうち、電縫鋼管は、熱間圧延した帯状の鋼板(いわゆるホットコイル)を素材として使用し、安価に製造できるので経済的に有利である。
しかし一般に電縫鋼管は、成形ロールを用いて鋼板を円筒状に成形してオープンパイプ(ここでオープンパイプとは、多段の成形ロールにより成形された端部が接合されていないパイプ状の鋼帯を指す。以下、オープンパイプと記す。)とし、そのオープンパイプのエッジ部(すなわち円筒状に成形した鋼帯の両側端部)をスクイズロールで加圧しながら電気抵抗溶接(高周波抵抗溶接とも呼ぶ)して製造するので、溶接による継ぎ目(いわゆるシーム)が必然的に存在し、そのシームの低温靭性が劣化するという問題がある。そのため電縫鋼管の油井管やラインパイプは、寒冷地での使用には課題がある。シームの低温靭性が劣化する理由は、エッジ部を溶接する際に高温の溶融メタルが大気中の酸素と反応して酸化物を生成し、その酸化物がシームに残留し易いからである。
しかし一般に電縫鋼管は、成形ロールを用いて鋼板を円筒状に成形してオープンパイプ(ここでオープンパイプとは、多段の成形ロールにより成形された端部が接合されていないパイプ状の鋼帯を指す。以下、オープンパイプと記す。)とし、そのオープンパイプのエッジ部(すなわち円筒状に成形した鋼帯の両側端部)をスクイズロールで加圧しながら電気抵抗溶接(高周波抵抗溶接とも呼ぶ)して製造するので、溶接による継ぎ目(いわゆるシーム)が必然的に存在し、そのシームの低温靭性が劣化するという問題がある。そのため電縫鋼管の油井管やラインパイプは、寒冷地での使用には課題がある。シームの低温靭性が劣化する理由は、エッジ部を溶接する際に高温の溶融メタルが大気中の酸素と反応して酸化物を生成し、その酸化物がシームに残留し易いからである。
また電縫鋼管は、エッジ部を溶接する際に溶融メタル中で合金元素が偏析し易いので、シームの耐食性が劣化し易いという問題がある。そのため電縫鋼管の油井管やラインパイプは、厳しい腐食環境(たとえばサワー環境)での使用には課題がある。
一方でシームの低温靭性や耐食性を劣化させない溶接法として、レーザビームによる溶接(以下、レーザ溶接という)が注目されている。レーザ溶接は、熱源の寸法を小さくし、かつ熱エネルギーを高密度で集中できるので、溶融メタルにおける酸化物の生成や合金元素の偏析を防止できる。そのため、溶接鋼管の製造にレーザ溶接を適用すると、シームの低温靭性や耐食性の劣化を防止することが可能である。
一方でシームの低温靭性や耐食性を劣化させない溶接法として、レーザビームによる溶接(以下、レーザ溶接という)が注目されている。レーザ溶接は、熱源の寸法を小さくし、かつ熱エネルギーを高密度で集中できるので、溶融メタルにおける酸化物の生成や合金元素の偏析を防止できる。そのため、溶接鋼管の製造にレーザ溶接を適用すると、シームの低温靭性や耐食性の劣化を防止することが可能である。
そこで溶接鋼管の製造過程にて、オープンパイプのエッジ部にレーザビームを照射して溶接することによって鋼管(すなわちレーザ溶接鋼管)を製造する技術が実用化されている。
ところがレーザ溶接では、高密度エネルギー光線であるレーザビームを光学部品により集光して溶接部に照射することによって溶接を行うので、溶接の際に急激な金属の溶融を伴う。そのため、形成された溶融池から溶融メタルがスパッタとして飛散する。飛散したスパッタは、溶接装置に付着してシームの品質を低下させるとともに、光学部品にも付着して溶接の施工が不安定になる。また、レーザ溶接では熱エネルギーを高密度で集中して溶接を行なうので、スパッタが多量に発生し、アンダーカットやアンダーフィル(すなわち窪み)等の溶接欠陥が発生する。アンダーフィルが発生すると、溶接部の強度が低下する。
ところがレーザ溶接では、高密度エネルギー光線であるレーザビームを光学部品により集光して溶接部に照射することによって溶接を行うので、溶接の際に急激な金属の溶融を伴う。そのため、形成された溶融池から溶融メタルがスパッタとして飛散する。飛散したスパッタは、溶接装置に付着してシームの品質を低下させるとともに、光学部品にも付着して溶接の施工が不安定になる。また、レーザ溶接では熱エネルギーを高密度で集中して溶接を行なうので、スパッタが多量に発生し、アンダーカットやアンダーフィル(すなわち窪み)等の溶接欠陥が発生する。アンダーフィルが発生すると、溶接部の強度が低下する。
そこで、レーザ溶接にてスパッタの付着を防止する技術やスパッタの発生を防止する技術が種々検討されている。たとえば、レーザ出力を低減することによってスパッタの発生を防止する技術、あるいは焦点位置を大きくずらす(いわゆるデフォーカス)ことによってスパッタの発生を防止する技術が実用化されている。しかし、レーザ出力低減やデフォーカスは、溶接速度の減少(すなわち溶接効率の低下)を招くばかりでなく、溶込み不良が発生し易くなるという問題がある。
特許文献1には、レーザビームを分光して複数個のスポットを生成させてスパッタの発生を防止する技術が開示されている。しかし、複数個のスポットに分散させてレーザ溶接を行う技術は、レーザ出力を低減してレーザ溶接を行う技術と同等であり、溶接効率の低下を招くばかりでなく、溶込み不良が発生し易くなるという問題がある。しかも、レーザビームを分光するスリットミラーが高価であるから、溶接の施工コストが上昇するのは避けられない。
特許文献2では、レーザ溶接を行なう際にフィラーワイヤを用いてアンダーフィルを防止する技術が開示されている。しかし、この技術ではフィラーワイヤの成分によって溶接金属の組成が変化する。そのため、オープンパイプの成分に応じてフィラーワイヤを選択しなければならず、フィラーワイヤの在庫管理やレーザ溶接の作業管理の負荷が増大する。
特許文献3では、レーザ溶接とアーク溶接を複合して用いることによって、溶接欠陥を防止する技術が開示されている。しかし、この技術では溶接装置の構造が複雑になりメンテナンスの負荷が増大するばかりでなく、溶接の作業管理の負荷が増大する。
本発明は、レーザ溶接鋼管を製造するにあたって、オープンパイプのエッジ部を適正な形状にしてレーザビームを照射することによって、アンダーカットやアンダーフィルを防止し、かつ良好な品質のレーザ溶接鋼管を高歩留りで効率良く製造する方法を提供することを目的とする。
発明者らは、オープンパイプのエッジ部にレーザ溶接を施してレーザ溶接鋼管を製造するにあたって、レーザ溶接の溶接現象の安定化技術について調査検討した。
図2は、レーザ溶接鋼管を製造する際に、レーザビームを1本用いてオープンパイプ1のエッジ部2の接合点を溶接する例を模式的に示す斜視図である。図2中の矢印Aは、オープンパイプの進行方向を示す。なお、レーザビーム3の照射によって発生する深い空洞(以下、キーホールという)4と、その周辺に形成される溶融メタル5は透視図として示す。
図2は、レーザ溶接鋼管を製造する際に、レーザビームを1本用いてオープンパイプ1のエッジ部2の接合点を溶接する例を模式的に示す斜視図である。図2中の矢印Aは、オープンパイプの進行方向を示す。なお、レーザビーム3の照射によって発生する深い空洞(以下、キーホールという)4と、その周辺に形成される溶融メタル5は透視図として示す。
レーザビーム3を照射すると、図2に示すように、高密度で集中する熱エネルギーによってエッジ部2が溶融するとともに、その溶融メタル5が蒸発して発生する蒸発圧と蒸発反力によって、溶融メタル5にキーホール4が発生する。キーホール4の内部には、レーザビーム3が侵入し、金属蒸気がレーザビーム3のエネルギーによって電離されて生じた高温のプラズマが充満していると考えられる。
このキーホール4は、レーザビーム3の熱エネルギーが最も収斂する位置を示すものである。エッジ部の接合点をキーホール4内に配置することによってレーザ溶接鋼管を安定して製造できる。ただし、エッジ部2の接合点とキーホール4とを一致させるためには、高精度の開先加工技術が必要である。エッジ部2の加工状態および突合せ状態が不安定であると、溶融メタル5が不安定になる。その結果、スパッタが多発し、アンダーカットやアンダーフィル等の溶接欠陥が発生し易くなる。そこでレーザビームを照射する前にエッジ部を加工して適正な開先形状を付与する。
開先形状が適正であれば、レーザビームのスポット径,スポット形状,スポット個数を適正に維持する、あるいはレーザビームの焦点位置を変化させる等の従来から知られている技術を用いてレーザ溶接を行なうことによって、アンダーカットやアンダーフィルを防止することが可能である。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
すなわち本発明は、板厚tmmの鋼板を成形ロールで円筒状のオープンパイプに成形する造管成形工程と、オープンパイプの外面側からレーザビームを照射してエッジ部を溶接する溶接工程とを順次施してレーザ溶接鋼管を製造するレーザ溶接鋼管の製造方法において、造管成形工程の前あるいは溶接工程の前に、オープンパイプの外面側ではエッジ部の端面から円周方向に1mm以上t/3以下かつ外表面から板厚方向に0.5mm以上t/3以下の領域に塑性変形を付与し、オープンパイプの内面側ではエッジ部の端面から円周方向に1mm以上t/3以下かつ内表面から板厚方向に0.5mm以上t/3以下の領域に塑性変形を付与して、エッジ部を増厚する増厚加工工程を有するレーザ溶接鋼管の製造方法である。
本発明のレーザ溶接鋼管の製造方法においては、溶接工程の後に、レーザ溶接鋼管のシームに沿って突出した部位を除去する工程を有することが好ましい。また、溶接工程にて、オープンパイプのエッジ部をスクイズロールで加圧しながら溶接することが好ましい。さらに、オープンパイプの外面側のジャストフォーカスでのスポット径が0.8mm以下であるレーザビームを1本または2本以上用いることが好ましい。
本発明によれば、レーザ溶接鋼管を製造するにあたってレーザビームの照射によって加熱溶融する部位(すなわちスポット)を適正に配列するとともに、スポット径を適正に維持して、オープンパイプの外表面におけるエネルギー密度を制御することによって、アンダーカットやアンダーフィルを防止し、かつレーザ溶接鋼管を歩留り良く安定して製造できる。得られたレーザ溶接鋼管は、シームの低温靭性や耐食性が優れており、寒冷地や腐食環境で使用する油井管やラインパイプに好適である。
本発明では、鋼板を成形ロールで円筒状のオープンパイプに成形する造管成形工程の前、あるいはオープンパイプの外面側からレーザビームを照射してエッジ部を溶接する溶接工程の前に、エッジ部の板厚を増加(以下、増厚という)する加工を施す増厚加工工程を設ける。
増厚加工工程を造管成形工程の前に設ける場合は、オープンパイプの素材となる鋼板(板厚tmm)の両端部を増厚する。増厚された鋼板の両端部は、造管成形工程を経て、図1に示すようにオープンパイプ1のエッジ部の増厚された部位となり、レーザ溶接における開先を形成する。
増厚加工工程を造管成形工程の前に設ける場合は、オープンパイプの素材となる鋼板(板厚tmm)の両端部を増厚する。増厚された鋼板の両端部は、造管成形工程を経て、図1に示すようにオープンパイプ1のエッジ部の増厚された部位となり、レーザ溶接における開先を形成する。
増厚加工工程を溶接工程の前に設ける場合は、オープンパイプ(板厚tmm)の両エッジ部を図1に示すように増厚し、レーザ溶接における開先を形成する。
増厚加工工程にて鋼板の両端部あるいはオープンパイプ1の両エッジ部を塑性変形によって増厚する加工技術は、特に限定せず、従来から知られている技術(たとえばロール,プレス,金型等)を使用する。本発明では、エッジ部に開先を形成するとともに、エッジ部の強度を高めて開先形状を保持するために、この増厚加工を塑性変形で行なう。塑性変形を付与せずに切削,研削等のみで開先を形成した場合、エッジ部の強度は増加しないので、オープンパイプをスクイズロールで加圧したときに開先形状が変化するという問題が生じる。
増厚加工工程にて鋼板の両端部あるいはオープンパイプ1の両エッジ部を塑性変形によって増厚する加工技術は、特に限定せず、従来から知られている技術(たとえばロール,プレス,金型等)を使用する。本発明では、エッジ部に開先を形成するとともに、エッジ部の強度を高めて開先形状を保持するために、この増厚加工を塑性変形で行なう。塑性変形を付与せずに切削,研削等のみで開先を形成した場合、エッジ部の強度は増加しないので、オープンパイプをスクイズロールで加圧したときに開先形状が変化するという問題が生じる。
なお増厚加工工程では、切削や研削を施した後で塑性変形を付与しても良い。その理由は、切削や研削を施した後で塑性変形を付与することによって、エッジ部の強度が増加するからである。
このようにして増厚加工工程で塑性変形を付与する領域は、オープンパイプ1の外面側では、図1中にaで示すようにエッジ部の端面から円周方向に1mm以上t/3以下、かつ図1中にbで示すように外表面から板厚方向に0.5mm以上t/3以下の領域とする。一方、オープンパイプ1の内面側では、図1中にcで示すようにエッジ部の端面から円周方向に1mm以上t/3以下、かつ図1中にdで示すように内表面から板厚方向に0.5mm以上t/3以下の領域とする。
このようにして増厚加工工程で塑性変形を付与する領域は、オープンパイプ1の外面側では、図1中にaで示すようにエッジ部の端面から円周方向に1mm以上t/3以下、かつ図1中にbで示すように外表面から板厚方向に0.5mm以上t/3以下の領域とする。一方、オープンパイプ1の内面側では、図1中にcで示すようにエッジ部の端面から円周方向に1mm以上t/3以下、かつ図1中にdで示すように内表面から板厚方向に0.5mm以上t/3以下の領域とする。
塑性変形を付与する外面側の領域aが1mm未満では、レーザ溶接による溶融メタルから発生するスパッタが増加して、アンダーカットやアンダーフィルが生じ易くなる。一方、t/3(mm)を超えると、増厚した部位を溶接工程の後で除去することが困難になる。したがって、塑性変形を付与する領域aは1mm〜t/3の範囲内とする。
また、塑性変形を付与する外面側の領域bが0.5mm未満では、レーザ溶接によるキーホールの位置が変動したときに、オープンパイプ1が局所的に溶融し、様々な溶接欠陥を引き起こす。一方、t/3(mm)を超えると、増厚した部位の厚みが大きくなり、レーザ溶接の出力を増大する、あるいは溶接速度を低下させる等の対応が必要である。その結果、溶接コストの上昇、あるいは生産性の低下を招く。したがって、塑性変形を付与する領域bは0.5mm〜t/3の範囲内とする。
また、塑性変形を付与する外面側の領域bが0.5mm未満では、レーザ溶接によるキーホールの位置が変動したときに、オープンパイプ1が局所的に溶融し、様々な溶接欠陥を引き起こす。一方、t/3(mm)を超えると、増厚した部位の厚みが大きくなり、レーザ溶接の出力を増大する、あるいは溶接速度を低下させる等の対応が必要である。その結果、溶接コストの上昇、あるいは生産性の低下を招く。したがって、塑性変形を付与する領域bは0.5mm〜t/3の範囲内とする。
塑性変形を付与する内面側の領域cが1mm未満では、レーザ溶接による溶融メタルから発生するスパッタが増加して、アンダーカットやアンダーフィルが生じ易くなる。一方、t/3(mm)を超えると、増厚した部位を溶接工程の後で除去することが困難になる。したがって、塑性変形を付与する領域cは1mm〜t/3の範囲内とする。
また、塑性変形を付与する内面側の領域dが0.5mm未満では、レーザ溶接によるキーホールの位置が変動したときに、オープンパイプ1が局所的に溶融し、様々な溶接欠陥を引き起こす。一方、t/3(mm)を超えると、増厚した部位の厚みが大きくなり、レーザ溶接の出力を増大する、あるいは溶接速度を低下させる等の対応が必要となり、その結果、溶接コストの上昇、あるいは生産性の低下を招く。したがって、塑性変形を付与する領域dは0.5mm〜t/3の範囲内とする。
また、塑性変形を付与する内面側の領域dが0.5mm未満では、レーザ溶接によるキーホールの位置が変動したときに、オープンパイプ1が局所的に溶融し、様々な溶接欠陥を引き起こす。一方、t/3(mm)を超えると、増厚した部位の厚みが大きくなり、レーザ溶接の出力を増大する、あるいは溶接速度を低下させる等の対応が必要となり、その結果、溶接コストの上昇、あるいは生産性の低下を招く。したがって、塑性変形を付与する領域dは0.5mm〜t/3の範囲内とする。
このようにして増厚されてオープンパイプの外面側と内面側に張出した部位は、溶接工程にてエッジ部を接合したレーザ溶接鋼管のシームに沿って外面側と内面側に突出する。そこで、溶接工程の後で、レーザ溶接鋼管の外面側と内面側に突出した部位を除去する。その突出した部位を除去する技術は、特に限定しない。ただし、電縫鋼管やUOE鋼管等のビードの除去で実用化されている切削もしくは研削技術を適用すれば、突出した部位を安価かつ容易に除去できる。
本発明では、溶接工程において、1本もしくは複数本のレーザビームを用いてレーザ溶接鋼管を製造する。図2は、オープンパイプのエッジ部の接合点を1本のレーザビームで溶接する例を模式的に示す斜視図である。図3は、オープンパイプに2本以上のレーザビームを照射する位置の例を模式的に示す平面図である。図2,3中の矢印Aは、いずれもオープンパイプの進行方向を示す。
使用するレーザビームのジャストフォーカスでのスポット径は、いずれも0.8mm以下とする。ここで、ジャストフォーカスでのスポット径(以下、スポット径という)とは、レーザビームを光学的に円形に集束させた焦点平行部のビームの直径を指す。スポット径が0.8mmを超えると、オープンパイプの溶融量が増えるので、キーホールを発生させるためにはレーザ出力を増加せざるを得ない。その結果、スパッタの発生量(特にオープンパイプの内面側)が増大する。一方、スポット径が0.07mm未満では、キーホールを発生させるのが困難になる。そのため、スポット径は0.07〜0.8mmの範囲内が好ましい。
なお、焦点平行部のビームが楕円形である場合は、その短径を0.8mm以下とする。好ましくは、短径が0.07〜0.8mmの範囲内である。
次に、2本以上のレーザビームを用いてオープンパイプを接合する場合の、レーザビームを照射する位置について、図3を参照して説明する。
図3(a)は、2本のレーザビームを照射する位置を示しており、レーザビーム3-1,3-2をエッジ部2の両側に配置する例である。
次に、2本以上のレーザビームを用いてオープンパイプを接合する場合の、レーザビームを照射する位置について、図3を参照して説明する。
図3(a)は、2本のレーザビームを照射する位置を示しており、レーザビーム3-1,3-2をエッジ部2の両側に配置する例である。
図3(b)は、3本のレーザビームを照射する位置を示しており、レーザビーム3-1で予熱し、レーザビーム3-2,3-3をエッジ部2の両側に配置する例である。
図3(c)は、4本のレーザビームを照射する位置を示しており、レーザビーム3-1,3-2,3-3,3-4をエッジ部2の両側にそれぞれ2本ずつ配置する例である。
図3(d)は、2本のレーザビームを照射する位置を示しており、出力の異なるレーザビーム3-1,3-2をエッジ部2の両側に配置する例である。この例ではレーザビーム3-1の出力が小さいので、レーザビーム3-1をレーザビーム3-2よりエッジ部2に近づけて配置している。
図3(c)は、4本のレーザビームを照射する位置を示しており、レーザビーム3-1,3-2,3-3,3-4をエッジ部2の両側にそれぞれ2本ずつ配置する例である。
図3(d)は、2本のレーザビームを照射する位置を示しており、出力の異なるレーザビーム3-1,3-2をエッジ部2の両側に配置する例である。この例ではレーザビーム3-1の出力が小さいので、レーザビーム3-1をレーザビーム3-2よりエッジ部2に近づけて配置している。
図3(e)は、2本のレーザビームを照射する位置を示しており、レーザビーム3-1,3-2をエッジ部2に沿って配置する例である。
複数本のレーザビームを用いる場合のレーザビームの配置は、図3に示す例に限定するものではなく、目的に応じて適宜配置できる。ただし、レーザビームを5本以上使用すると、溶接装置の構造が複雑になり、メンテナンスの負荷が大きくなる。そのため、本発明ではレーザビームを1〜4本使用することが好ましい。
複数本のレーザビームを用いる場合のレーザビームの配置は、図3に示す例に限定するものではなく、目的に応じて適宜配置できる。ただし、レーザビームを5本以上使用すると、溶接装置の構造が複雑になり、メンテナンスの負荷が大きくなる。そのため、本発明ではレーザビームを1〜4本使用することが好ましい。
個々のレーザビームの焦点位置での溶接線に対して垂直方向のスポット長さの合計を0.5mm以上とし、溶接線方向のスポット中心間距離を5mm以内とする。スポット長さの合計を0.5mm以上とすることで、接合点を溶融メタル5内に比較的容易に配置することが可能となる。また、スポット中心間距離を5mm以内とすることによって、溶融メタルの分離を防止することが可能となる。
2本以上のレーザビームを所定の位置に照射し、かつエッジ部の接合点を適正な位置に配置するためには、高精度の制御技術が必要である。そこで複数本のレーザビームが形成する溶融メタル内にエッジ部の接合点を配置するように制御しながらレーザ溶接を行なっても良い。溶融メタルはレーザビームのスポット長さ合計に比べて、溶接線に対する垂直方向の長さが大きいので、比較的容易に制御できる。
オープンパイプの板厚tは3mm超えが好ましい。板厚tが3mmを超えると、オープンパイプの溶融量が増えるので、一般にスパッタが発生し易くなるが、本発明を適用することによってスパッタの発生を抑制できる。板厚tが3mm以下では、溶落ちが発生し易くなる。
レーザ溶接によるスパッタの発生を皆無にすることは困難であるから、アンダーカットやアンダーフィルの発生を防止するために、エッジ部に0.3〜1.0mmのアップセットを付与することが好ましい。アップセット量が0.3mm未満では、アンダーカットやアンダーフィルを防止できない。一方、1.0mmを超えると、シームの手入れに多大な時間を要する。
レーザ溶接によるスパッタの発生を皆無にすることは困難であるから、アンダーカットやアンダーフィルの発生を防止するために、エッジ部に0.3〜1.0mmのアップセットを付与することが好ましい。アップセット量が0.3mm未満では、アンダーカットやアンダーフィルを防止できない。一方、1.0mmを超えると、シームの手入れに多大な時間を要する。
また、たとえば図2に示すように、オープンパイプ1の進行方向Aにおけるエッジ部2の接合点は、エッジ部2の平均間隔がスクイズロール(図示せず)によって狭まり、0.5mm以下になった箇所であればどこでも良い。
本発明で使用するレーザビームの発振器は、様々な形態の発振器が使用でき、気体(たとえばCO2,ヘリウム−ネオン,アルゴン,窒素,ヨウ素等)を媒質として用いる気体レーザ,固体(たとえば希土類元素をドープしたYAG等)を媒質として用いる固体レーザ,レーザ媒質としてバルクの代わりにファイバーを利用するファイバーレーザ等が好適である。あるいは、半導体レーザを使用しても良い。
本発明で使用するレーザビームの発振器は、様々な形態の発振器が使用でき、気体(たとえばCO2,ヘリウム−ネオン,アルゴン,窒素,ヨウ素等)を媒質として用いる気体レーザ,固体(たとえば希土類元素をドープしたYAG等)を媒質として用いる固体レーザ,レーザ媒質としてバルクの代わりにファイバーを利用するファイバーレーザ等が好適である。あるいは、半導体レーザを使用しても良い。
オープンパイプの外面側から補助熱源によって加熱しても良い。その補助熱源は、オープンパイプの外表面を加熱し溶融できるものであれば、その構成は特に限定しない。たとえば、バーナ溶解法,プラズマ溶解法,TIG溶解法,電子ビーム溶解法,レーザ溶解法等を利用した手段が好適である。
なお、補助熱源としてはアークの使用が最も好ましい。アークの発生源は、溶融メタルの溶落ちを抑制する方向に電磁力(すなわち溶接電流の磁界から発生する電磁力)を付加できるものを使用する。たとえばTIG溶接法,プラズマアーク溶接法等の従来から知られている技術が使用できる。アークの発生源はレーザビームと一体的に配置することが好ましい。その理由は、アークを発生させる溶接電流の周辺に生じる磁界の影響を、溶融メタルに効果的に与えるためである。さらに、アークの発生源をレーザビームより先行させて配置することが一層好ましい。その理由は、エッジ部の水分や油分を除去できるからである。
なお、補助熱源としてはアークの使用が最も好ましい。アークの発生源は、溶融メタルの溶落ちを抑制する方向に電磁力(すなわち溶接電流の磁界から発生する電磁力)を付加できるものを使用する。たとえばTIG溶接法,プラズマアーク溶接法等の従来から知られている技術が使用できる。アークの発生源はレーザビームと一体的に配置することが好ましい。その理由は、アークを発生させる溶接電流の周辺に生じる磁界の影響を、溶融メタルに効果的に与えるためである。さらに、アークの発生源をレーザビームより先行させて配置することが一層好ましい。その理由は、エッジ部の水分や油分を除去できるからである。
本発明では、厚肉材(たとえば厚さ4mm以上)のオープンパイプであっても、エッジ部を高周波加熱等で予熱することなく、レーザ溶接を行なうことが可能である。ただしエッジ部を予熱すれば、レーザ溶接鋼管の生産性が向上する等の効果が得られる。
以上に説明した通り、本発明によれば、大きいエネルギーを有するレーザ溶接によってレーザ溶接鋼管を製造するにあたって、アンダーカットやアンダーフィルを抑制するとともに、溶接効率を低下させることなく良好な品質のレーザ溶接鋼管を歩留り良く得られる。得られたレーザ溶接鋼管は、シームの低温靭性や耐食性が優れており、寒冷地や腐食環境で使用する油井管やラインパイプに好適である。
以上に説明した通り、本発明によれば、大きいエネルギーを有するレーザ溶接によってレーザ溶接鋼管を製造するにあたって、アンダーカットやアンダーフィルを抑制するとともに、溶接効率を低下させることなく良好な品質のレーザ溶接鋼管を歩留り良く得られる。得られたレーザ溶接鋼管は、シームの低温靭性や耐食性が優れており、寒冷地や腐食環境で使用する油井管やラインパイプに好適である。
帯状の鋼板の両端部をエッジミラーとフィンパスロールで図1に示す形状に増厚加工した後、成形ロールで円筒状のオープンパイプに成形し、そのオープンパイプのエッジ部をスクイズロールで加圧しながら、レーザビームを外面側から照射してレーザ溶接鋼管を製造した。鋼板の成分は表1に示す通りである。鋼板の板厚、および図1のa〜dの寸法は表2に示す通りである。
レーザ溶接では、10kWのファイバーレーザ発振器を1台または2台使用した。その出力と溶接速度は表2に示す通りである。ファイバーレーザ発振器を1台使用する場合はレーザビームを図2に示すように照射し、2台使用する場合はレーザビームを図3(a)に示すように照射した。
表2に示す発明例は、増厚加工の寸法a,b,c,dが本発明の範囲を満足する例である。比較例のうち、溶接鋼管No.5は増厚加工の寸法b,cが本発明の範囲を外れる例、溶接鋼管No.6は増厚加工の寸法a,cが本発明の範囲を満足する例、溶接鋼管No.7は増厚加工の寸法dが本発明の範囲を外れる例、溶接鋼管No.8は増厚加工の寸法cが本発明の範囲を満足する例である。
表2に示す発明例は、増厚加工の寸法a,b,c,dが本発明の範囲を満足する例である。比較例のうち、溶接鋼管No.5は増厚加工の寸法b,cが本発明の範囲を外れる例、溶接鋼管No.6は増厚加工の寸法a,cが本発明の範囲を満足する例、溶接鋼管No.7は増厚加工の寸法dが本発明の範囲を外れる例、溶接鋼管No.8は増厚加工の寸法cが本発明の範囲を満足する例である。
得られたレーザ溶接鋼管を、超音波探傷試験および磁粉探傷試験に供し、JIS規格G0582およびJIS規格G0565に準拠してシームを20mにわたって探傷した。その探傷結果を表2に示す。なお表2において超音波探傷は、基準となるN5内外面ノッチの人工欠陥に対して、ピーク指示高さが、10%以下のものを優(◎),10%超え25%以下のものを良(○),25%超え50%以下のものを可(△),50%超えのものを不可(×)として評価した。また磁粉探傷は、レーザ溶接鋼管の内面の溶接欠陥を検査し、溶接欠陥が認められないものを優(◎),点状の溶接欠陥が認められたものを可(△),線状の溶接欠陥が認められたものを不可(×)として評価した。
表2から明らかなように、発明例(すなわち溶接鋼管No.1〜4)では、超音波探傷は優または良であり、磁粉探傷も優であった。また、スパッタの発生に起因するアンダーカットやアンダーフィル等の溶接欠陥は認められなかった。一方、比較例(すなわち溶接鋼管No.5〜8)では、超音波探傷は可または不可であり、磁粉探傷も可または不可であった。また、スパッタの発生に起因するアンダーカットやアンダーフィル等の溶接欠陥が認められた。
レーザ溶接鋼管を歩留り良く安定して製造でき、産業上格段の効果を奏する。
1 オープンパイプ
2 エッジ部
3 レーザビーム
4 キーホール
5 溶融メタル
6 シーム
2 エッジ部
3 レーザビーム
4 キーホール
5 溶融メタル
6 シーム
Claims (4)
- 板厚tmmの鋼板を成形ロールで円筒状のオープンパイプに成形する造管成形工程と、前記オープンパイプの外面側からレーザビームを照射してエッジ部を溶接する溶接工程とを順次施してレーザ溶接鋼管を製造するレーザ溶接鋼管の製造方法において、前記造管成形工程の前あるいは前記溶接工程の前に、前記オープンパイプの外面側では前記エッジ部の端面から円周方向に1mm以上t/3以下かつ外表面から板厚方向に0.5mm以上t/3以下の領域に塑性変形を付与し、前記オープンパイプの内面側では前記エッジ部の端面から円周方向に1mm以上t/3以下かつ内表面から板厚方向に0.5mm以上t/3以下の領域に塑性変形を付与して、前記エッジ部を増厚する増厚加工工程を有することを特徴とするレーザ溶接鋼管の製造方法。
- 前記溶接工程の後に、前記レーザ溶接鋼管のシームに沿って突出した部位を除去する工程を有することを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接鋼管の製造方法。
- 前記溶接工程にて、前記オープンパイプのエッジ部をスクイズロールで加圧しながら溶接することを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ溶接鋼管の製造方法。
- 前記オープンパイプの外面側のジャストフォーカスでのスポット径が0.8mm以下であるレーザビームを1本または2本以上用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーザ溶接鋼管の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010040694A JP2011173161A (ja) | 2010-02-25 | 2010-02-25 | レーザ溶接鋼管の製造方法 |
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