JP2006088220A - 電縫鋼管の溶接方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 電縫鋼管の溶接におけるインピーダンスの瞬時の変化量を基に、演算処理結果から溶接時の冷接欠陥の発生状況を高い精度で予測し、溶接入熱をオンライン制御することにより、溶接時の入熱不足に起因する電縫鋼管の冷接欠陥の発生を安定して抑制し、溶接品質に優れた電縫鋼管を製造することが出来る電縫鋼管の溶接方法を提供する。
【解決手段】 電縫鋼管の溶接方法において、予め設定した10秒未満の時間間隔で溶接電流Iおよび溶接電圧Eを測定し、該溶接電流Iの時間変化量ΔIおよび溶接電圧Eの時間変化量ΔEをそれぞれ求めた後、ΔZ=ΔE/ΔIで定義されるインピーダンスの時間変化量ΔZを求め、該インピーダンスの時間変化量ΔZに基づいて溶接入熱を制御する溶接品質に優れた電縫鋼管の溶接方法。
【選択図】 なし
【解決手段】 電縫鋼管の溶接方法において、予め設定した10秒未満の時間間隔で溶接電流Iおよび溶接電圧Eを測定し、該溶接電流Iの時間変化量ΔIおよび溶接電圧Eの時間変化量ΔEをそれぞれ求めた後、ΔZ=ΔE/ΔIで定義されるインピーダンスの時間変化量ΔZを求め、該インピーダンスの時間変化量ΔZに基づいて溶接入熱を制御する溶接品質に優れた電縫鋼管の溶接方法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、電縫鋼管の溶接方法に関し、詳しくは、溶接欠陥の発生を抑制するための電縫溶接における入熱量制御方法に関するものである。
一般に電縫鋼管の製造方法は、概略以下のように行なわれる。つまり、先ず、帯鋼を複数の成型ロールを用いてその両端面が突合せさるように順次円筒状に成形する。これに引き続いて、この円筒状の帯鋼両端部近傍に誘導コイル、あるいはコンタクトチップにより高周波電流を通電し、そのジュール熱により帯鋼両端部を加熱溶融し、スクイズロールで加圧することにより接合する(以下、この溶接方法を電縫溶接方法という)ことで電縫鋼管は製造される。
従来から通常の電縫鋼管の電縫溶接時において、帯鋼端部の入熱量(通電によるジュール発熱量)が低い場合に、溶接部に未溶着欠陥、あるいは、冷接欠陥と呼ばれる、溶融不足に起因する溶接欠陥が生じることが知られている。
溶接部の冷接欠陥は、走査型電子顕微鏡を用いて観察すると、破面上に配列された径1μm程度の無数の微小なディンプル状の集合からなり、その多くのディンプルの中央部には主として酸化物からなる介在物が存在する。このようなディンプル状介在物が電縫鋼管の溶接線に沿って1μm程度の間隔で連続に生成し、これが電縫鋼管の溶接部の靱性(シャルピー衝撃値)、全伸び等の機械的性質を低下させる原因となる。また、冷接欠陥発生部の微小酸化物粒径及びそれが配列する隙間は1μm程度と非常に微小であるため、X線透過試験や超音波探傷試験などの非破壊試験で冷接欠陥を検出することは不可能である。
したがって、従来、上記冷接欠陥が発生した場合には、主として、電縫溶接時の入熱量の設定を高めに変更し、電縫溶接時に溶接部から冷接欠陥発生原因となる微小酸化物を溶融金属の一部と一緒に排出させる方法により上記冷接欠陥の発生を抑制していた。
この方法では、電縫鋼管製品から試験片を採取し、扁平試験と呼ばれる破壊試験により圧縮応力負荷時の溶接部の破断状況を確認する、或いは、電縫溶接途中の試験片を採取し、溶接衝合部付近の断面観察により板厚方向の溶融状況を確認する、などのオフライン試験結果を基に冷接欠陥の発生を確認する必要がある。しかし、溶接部の冷接欠陥の発生を確認するためのオフライン試験は、非常に時間が掛かるため、溶接部の冷接欠陥の発生からそれを確認するまでの間における冷接欠陥を抑制することはできない。したがって、溶接部の冷接欠陥の発生により電縫鋼管製品の歩留低下などを招いていた。
通常、鋼管電縫溶接時の入熱設定の最適範囲は、鋼帯の板厚及び板幅、電源、成形、高周波発振、誘導コイルあるいはコンタクトチップの位置と衝合点までの距離、溶接速度等の溶接条件の変化やインピーダーの劣化などによって変化する。そのため、従来の電縫溶接では、一般に溶接電流、溶接電圧及び溶接速度から求められる溶接入熱を余裕をもって高目に設定し、その他の溶接条件が変化した場合でも入熱不足による溶融不足に起因する溶接欠陥の発生を抑制していた。しかし、この方法は、溶接入熱を高目に設定するため、溶接入熱の変動により過度に高くなった場合にアーキングと呼ばれる短絡現象が発生し、スパッタ(溶融金属の飛散)、およびスパッタ付着による鋼管製品の外観性劣化などの問題があった。
その他にも従来から電縫鋼管の電縫溶接における入熱量の設定を溶接条件の変動などのオンライン情報を検知し、それを基にリアルタイム制御する方法が種々提案されている。
例えば、鋼管の電縫溶接中に放射温度計を用いて溶接ビード温度を計測し、この温度計測値に基づいて溶接入熱量をフィードバック制御する方法が知られている。しかし、この方法では、放射温度計を用いて溶接ビードの平均温度は計測可能であるが、局所的な温度変化の測定は不可能であるため、溶接部の局所的な入熱不足による冷接欠陥の発生を精度良く予測し、抑制することは困難である。
また、特許文献1などにより電縫溶接時に溶接点上方に高速シャッターを備えた2次元イメージセンサ(CCDカメラ)を設置し、溶接点周辺の静止画像を撮影し、得られたデジタル輝度画像の輝度レベルにより溶接点周辺の温度分布を計測するか、さらに、デジタル輝度画像データを二値化演算処理して得られる二値化画像から溶接点周辺の温度分布、溶鋼排出量、溶接点位置及びV収束角度のうちの一つ以上を計測する方法も提案されている。
この方法は、高温状態の溶接金属の輝度画像データまたは二値化画像データを基に温度分布、さらには、溶接金属の溶鋼排出量を求める方法である。しかし、この方法では、例えば、スクイズロールの冷却水やその水蒸気により撮像画像の輝度レベルが変動し、溶接金属の温度分布や溶鋼排出量の算出誤差が生じる。また、溶接部を撮像するための2次元イメージセンサを溶接部近傍に設置する必要があるが、実際の鋼管製造ラインでは、溶接部近傍にローラなどの設備により2次元イメージセンサを設置するスペースが制約される。
また、特許文献2には、溶接電流と溶接電圧を測定し、これらの測定値から溶接時のインピーダンスを計算した後、このインピーダンス計算値を用いて溶接効率を求め、その溶接効率の変化に基づいて溶接入力を制御する電縫溶接時の溶接入力制御方法が開示されている。
この方法は、インピーダーの経時劣化による溶接効率の低下を防止することを目的とし、溶接電流及び溶接電圧の各測定値からインピーダンスの変化量を計算し、さらに溶接効率を求め、この溶接効率が一定になるように溶接入力を制御するものと考えられる。しかし、この方法で求められるインピーダンスの変化量は、インピーダーの経時劣化による溶接電流の経時変化に基づいて算出した値であり、このインピーダンスの変化量から、10秒程度の瞬時の入熱量変化により発生する溶接部の冷接欠陥を検出し、抑制することは困難である。
本発明は、上記従来技術の問題に鑑みて、電縫鋼管の溶接におけるインピーダンスの瞬時の変化量を基に、演算処理結果から溶接時の冷接欠陥の発生状況を高い精度で予測し、溶接入熱をオンライン制御することにより、溶接時の入熱不足に起因する電縫鋼管の冷接欠陥の発生を安定して抑制し、溶接品質に優れた電縫鋼管を製造することが出来る電縫鋼管の溶接方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するものであり、電縫溶接時のインピーダンスの瞬時変化量と冷接欠陥の発生状況との関係に着目し、インピーダンスの時間変化量に基づいて電縫溶接時の溶接入熱を制御することを技術思想とするものである。つまり、本発明の要旨とするところは、以下の通りである。
(1)電縫鋼管の溶接方法において、予め設定した10秒未満の時間間隔で溶接電流Iおよび溶接電圧Eを測定し、該溶接電流Iの時間変化量ΔIおよび溶接電圧Eの時間変化量ΔEをそれぞれ求めた後、下記(1)式で定義されるインピーダンスの時間変化量ΔZを求め、該インピーダンスの時間変化量ΔZに基づいて溶接入熱を制御することを特徴とする溶接品質に優れた電縫鋼管の溶接方法。
また、Ei+1、Eiは、予め設定した10秒未満の時間間隔で測定したi+1番目、i番目のそれぞれの溶接電圧(V)を示す。
(2)前記インピーダンスの時間変化量ΔZが、予め設定した上限基準値に比べて大きい場合に、溶接入熱を増加させるように溶接入熱を制御することを特徴とする上記(1)記載の溶接品質に優れた電縫鋼管の溶接方法。
(3)前記インピーダンスの時間変化量ΔZが、予め設定した下限基準値に比べて小さい場合に、溶接入熱を減少させるように溶接入熱を制御することを特徴とする上記(2)に記載の溶接品質に優れた電縫鋼管の溶接方法。
(4)前記溶接入熱Qは、溶接電流I、溶接電圧Eおよび溶接速度vにより、下記(2)式に基づいて定義されることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れかに記載の溶接品質に優れた電縫鋼管の溶接方法。
(5)前記溶接入熱は、溶接電圧、および、溶接速度のうちの何れか、または、両方を変化することにより制御することを特徴とする上記(1)〜(4)の何れかに記載の溶接品質に優れた電縫鋼管の溶接方法。
本発明によれば、電縫鋼管の溶接において、従来法ではオンライン検出が困難であった局所的な入熱不足に起因する冷接欠陥の発生を高い精度で予測し、溶接入熱を制御することにより、実質的に冷接欠陥のない溶接品質に優れた電縫鋼管を安定して製造することができる。したがって、電縫鋼管の製造プロセスへの本発明法の適用により、溶接品質の高い電縫鋼管を良好な製品歩留で安定して製造可能となるため、産業上の貢献は多大なものである。
以下、本発明に係わる溶接制御方法の実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1に本発明の実施形態の一例を説明するための模式図を示す。
本発明は、通常の電縫鋼管の製造方法における電縫溶接の入熱制御に適用される。
図1に本発明の実施形態の一例を説明するための模式図を示す。
本発明は、通常の電縫鋼管の製造方法における電縫溶接の入熱制御に適用される。
通常の電縫鋼管の製造方法は、概略以下のように行なわれる。つまり、先ず、帯鋼(鋼板)5を搬送方向3に沿って複数の成型ロールを用いて順次円筒状に成形する。さらに、円筒状の帯鋼5はその中心をインピーダー6が通過し、誘導コイル(図示せず)、あるいは対向する接触子7により高周波電流1が通電させる。高周波電流1は表皮効果によって帯鋼両端部近傍に集中し、ジュール発熱によりその両端面の突合せ部は加熱溶融し、スクイズロール2によって加圧され、接合される(以下、この溶接方法を電縫溶接方法という)。
この際、溶接入熱条件が適正範囲にある場合には、スクイズロール2により、帯鋼5両端部が溶融状態で加圧される際に、鋼帯端面および溶接金属で生成した酸化物は溶融金属(図示なし)の一部と一緒に排出され、冷接欠陥のない良好な溶接シーム4が形成される。
本発明者らは、上記の通常電縫溶接において、溶接電流I及び溶接電圧Eのそれぞれの時間変化量ΔI、ΔEから求められるインピーダンスの時間変化量ΔZが冷接欠陥の発生状況と相関関係があることを実験などの検討結果から確認した。
図2に電縫溶接時に冷接欠陥が発生しない場合(図2上)および冷接欠陥が発生した場合(図2下)における溶接衝合点周辺を上方からみた模式図を示す。
ここで、図2に示される溶接衝合点15は、図1に示される円筒状に成形された帯鋼(鋼板)5が誘導コイル(図示せず)、あるいは接触子7により通電され、その両端部14が加熱溶融されつつ、スクイズロール2により加圧されて両端部14が接近し、接触する位置と定義する。
溶接シーム4で冷接欠陥が発生する場合(図2下、参照)は、帯鋼(鋼板)5の両端部14が入熱不足となり、加熱溶融が不十分であるため、スクイズロール2による加圧力が一定であっても、両端部14付近の変形抵抗が高くなる。したがって、溶接衝合点15の位置は、入熱量が十分に高く溶接シーム4で冷接欠陥が発生しない場合(図2上、参照)に比べて、誘導コイル(図示せず)、あるいは接触子7の位置から離れた位置に移動する。この溶接衝合点15の移動に伴ない、誘導コイルあるいは接触子7から主に帯鋼(鋼板)5の両端部14に沿って溶接衝合点15を経由して流れる溶接電流Iの経路長も変動する。つまり、溶接シーム4に冷接欠陥が発生する場合(図2下、参照)は、冷接欠陥が発生しない場合(図2上、参照)に比べて溶接電流の経路長が長くなり、そのためインピーダンスは増加する。また、発明者らの実験結果から、これらのインピーダンスの増加現象は、短時間に現れるため、電縫溶接時の冷接欠陥の発生を予測するためには、電縫溶接時の短時間でのインピーダンスの時間変化量ΔZを検出する必要があることを確認した。
本発明は、これらの知見を基づいてなされたものであり、溶接中に帯鋼(鋼板)5の両端部14の加熱溶融状態が変化し、溶接電流の経路長が変化することに起因し瞬時に変化するインピーダンスの変化量を基に、溶接入熱条件に依存する冷接欠陥発生状況を予測、判定し、溶接入熱を適正範囲に制御することを技術思想とする。
本発明の実施形態は、例えば、以下のように行なわれる。
つまり、図1に示されるように、先ず、電縫溶接時の溶接電流Iおよび溶接電圧Eを溶接電流測定器8および溶接電圧測定器9を用いて予め設定した10秒未満の所定測定間隔で測定し、これらの測定データを演算処理装置10に順次伝送する。これらの溶接電流Iおよび溶接電圧Eの各測定値からそれぞれの所定測定間隔における時間変化量ΔI、ΔEを求めた後、下記(1)式で定義されるインピーダンスの時間変化量ΔZを計算する。
そして、このインピーダンスの時間変化量ΔZを基づいて、予め演算処理装置10のメモリーに記憶された溶接入熱上昇時間および溶接入熱上昇速度の指令値を選択後、溶接入熱制御装置11に伝送し、溶接電源12の投入電力による溶接入熱制御を行う。
なお、溶接入熱制御は、溶接電源12の投入電力を一定とし、溶接速度により制御することも可能である。
また、Ei+1、Eiは、予め設定した10秒未満の時間間隔で測定したi+1番目、i番目のそれぞれの溶接電圧(V)を示す。
(インピーダンスの時間変化量ΔZと冷接欠陥の関係)
本発明におけるインピーダンスの時間変化量と冷接欠陥発生率および溶接入熱の関係について説明する。
本発明におけるインピーダンスの時間変化量と冷接欠陥発生率および溶接入熱の関係について説明する。
図3に測定時間間隔Δtが2.0、5.0、10.0secの場合における、電縫溶接時のインピーダンスの時間変化量ΔZと冷接欠陥発生率との関係を示す。
なお、試験条件は、電縫鋼管の肉厚:4.5mm、外径:250mm、溶接速度:33m/min、溶接時間:10min、溶接電流Iおよび溶接電圧Eを測定する時間間隔Δtは2.0、5.0、10.0secとし、この時間間隔Δtにおける溶接電流Iの時間変化量ΔIおよび溶接電圧Eの時間変化量ΔEをそれぞれ計算し、これらからインピーダンスの時間変化量量ΔZを計算した。溶接入熱は、溶接速度:33m/minと一定にし、溶接電源の投与電力を456kWから379kWまで徐々に低下させることにより変化させた。
なお、溶接入熱Qは、下記(2)式に基づいて溶接電流I、溶接電圧Eおよび溶接速度vから計算される。
また、冷接欠陥発生率は、電縫鋼管の溶接線における単位長さあたりの各冷接欠陥の長さの合計値を測定溶接線長さに対する相対値(%)として示した。
図3から溶接電流Iと溶接電圧Eを測定する時間間隔Δtが10.0secの場合には、電縫溶接時の溶接電流Iおよび溶接電圧Eの測定値から計算されるインピーダンスの時間変化量ΔZと冷接欠陥の発生率との間に相関関係が見られないが、Δtが2.0、5.0secの場合には、インピーダンスの時間変化量ΔZと冷接欠陥の発生率とに良い相関関係があることが判る。
測定する時間間隔Δtが2.0secの場合では、電縫溶接時のインピーダンスの時間変化量ΔZが0.0025を超えると冷接欠陥が急激に発生し、それ以下では冷接欠陥は発生しなくなる。また、測定する時間間隔Δtが5.0secの場合では、電縫溶接時のインピーダンスの時間変化量ΔZが、0.001を超えると冷接欠陥が急激に発生し、それ以下では、冷接欠陥は発生しなくなる。
これらから、溶接電流Iと溶接電圧Eを測定する時間間隔Δtが10.0secの場合には、電縫溶接時の検出分解能が大きくなりすぎて冷接欠陥の発生状況を検出することはできないが、時間間隔Δtがそれ以下では、電縫溶接時の溶接電流Iおよび溶接電圧Eの測定値から計算されるインピーダンスの時間変化量ΔZを基に電縫鋼管シーム溶接部の冷接欠陥の発生状況を予測することができる。また、予め測定する時間間隔Δt毎に基準値を設定することにより、この基準値をもとに電縫溶接時のインピーダンスの時間変化量ΔZから電縫鋼管シーム溶接部の冷接欠陥の発生を判断し管理することができる。
本発明では、電縫溶接時のインピーダンスの時間変化量ΔZから電縫鋼管シーム溶接部の冷接欠陥の発生状況を予測できるための前提条件として、電縫溶接時のインピーダンスの時間変化量と冷接欠陥発生率との良好な相関関係を維持するために、溶接電流Iおよび溶接電圧Eを測定する時間間隔を10.0sec未満とした。
(溶接入熱と冷接欠陥の関係)
図4に溶接速度を33m/minと一定にし、溶接電源の投与電力を379〜456kWで変化させた場合の電縫溶接時の入熱と冷接欠陥発生率の関係を示す。
図4に溶接速度を33m/minと一定にし、溶接電源の投与電力を379〜456kWで変化させた場合の電縫溶接時の入熱と冷接欠陥発生率の関係を示す。
なお、試験条件は、図3と同じ条件で行った。
従来から電縫溶接時の入熱が高い場合に帯鋼両端面が加圧される際に、鋼帯端面および溶接金属で生成した酸化物が溶融金属の一部と一緒に排出されやすくなるため、シーム溶接部の冷接欠陥発生率は減少することは知られている。
なお、溶接入熱Qは、下記(2)式に基づいて溶接電流I、溶接電圧Eおよび溶接速度vから計算される。
図4に示されるように本発明者らの確認試験においても溶接入熱Qが0.75kJ/mm以上になると冷接欠陥は発生しない。
したがって、図3に示される電縫溶接時の溶接電流Iおよび溶接電圧Eの測定値から計算されるインピーダンスの時間変化量ΔZと冷接欠陥の発生率との相関関係をもとに予め測定する時間間隔Δt毎に基準値を設定し、この基準値をもとに電縫溶接時のインピーダンスの時間変化量ΔZからシーム溶接部の冷接欠陥の発生を予測する。そして、電縫溶接時のインピーダンスの時間変化量ΔZからシーム溶接部の冷接欠陥が発生すると判断する場合に、図4の電縫溶接時の入熱と冷接欠陥発生率の関係に従い、電縫溶接時の入熱を増加させることにより電縫鋼管シーム溶接部の冷接欠陥の発生を抑制することができる。
(入熱制御方法)
本発明の入熱制御方法の実施形態を以下に説明する。
本発明の入熱制御方法の第1実施形態は、例えば、図5に示される処理フローより行われる。
本発明の入熱制御方法の実施形態を以下に説明する。
本発明の入熱制御方法の第1実施形態は、例えば、図5に示される処理フローより行われる。
電縫溶接を開始後、溶接電流測定器8と溶接電圧測定器9を用いて溶接時の溶接電流I1(A)と溶接電圧E1(V)を測定し、予め設定された10秒未満の時間間隔Δt後、さらに、溶接電流I2(A)と溶接電圧E2(V)を測定し、溶接電流I1(A)、I2(A)から下記(3)式で示される溶接電流の時間変化量ΔI1を算出し、溶接電流E1(V)、E2(V)から下記(4)式で示される溶接電圧の時間変化量ΔE1を算出する。さらに、これらの溶接電流の時間変化量ΔI1、溶接電圧の時間変化量ΔE1から下記(5)式によりインピーダンスの時間変化量ΔZ1を算出する。つぎに、このインピーダンスの時間変化量ΔZ1を予め設定された上限の基準値Amaxと比較し、インピーダンスの時間変化量ΔZ1が上限の基準値Amax以上の場合には、予め設定された入熱上昇時間指令値T1および入熱上昇速度指令値Q1を溶接入熱制御装置に出力し、入熱上昇時間T1の間、入熱上昇速度Q1の上昇速度で溶接入熱を上昇させるように溶接電源の投入電力を制御する。一方、前記インピーダンスの時間変化量ΔZ1が前記上限の基準値Amax未満の場合には、溶接入熱を上昇させる溶接電源の投入電力の制御は行わない。
さらに、時間間隔Δt後、溶接電流I3(A)および溶接電圧E3(V)を測定し、前記溶接電流I2(A)および溶接電流E2(V)から上記と同様に溶接電流の時間変化量ΔI2および溶接電圧の時間変化量ΔE2の算出、インピーダンスの時間変化量ΔZ2の算出を行い、上記と同様にインピーダンスの時間変化量ΔZ2と上限の基準値Amaxとを比較し、この比較に基づき上記と同様な溶接電源の投入電力制御を行う、という一連の処理が予め定められた回数(i=n)だけ繰り返し行なわれる。
ΔIi=Ii+1−Ii ・・・ (3)
ΔEi=Ei+1−Ei ・・・ (4)
ΔZi=ΔEi/ΔIi ・・・ (5)
但し、i=1〜n
また、本発明の入熱制御方法の第2実施形態は、例えば、図6に示される処理フローより行われる。
ΔEi=Ei+1−Ei ・・・ (4)
ΔZi=ΔEi/ΔIi ・・・ (5)
但し、i=1〜n
また、本発明の入熱制御方法の第2実施形態は、例えば、図6に示される処理フローより行われる。
電縫溶接を開始後、溶接電流測定器8と溶接電圧測定器9を用いて溶接時の溶接電流I1(A)と溶接電圧E1(V)を測定し、予め設定された10秒未満の時間間隔Δt後、さらに、溶接電流I2(A)と溶接電圧E2(V)を測定し、溶接電流I1(A)、I2(A)から下記(3)式で示される溶接電流の時間変化量ΔI1を算出し、溶接電流E1(V)、E2(V)から下記(4)式で示される溶接電圧の時間変化量ΔE1を算出する。さらに、これらの溶接電流の時間変化量ΔI1、溶接電圧の時間変化量ΔE1から下記(5)式によりインピーダンスの時間変化量ΔZ1を算出する。つぎに、このインピーダンスの時間変化量ΔZ1を予め設定された上限の基準値Amaxと比較し、インピーダンスの時間変化量ΔZ1が上限の基準値Amax以上の場合には、予め設定された入熱上昇時間指令値T1および入熱上昇速度指令値Q1を溶接入熱制御装置に出力し、入熱上昇時間T1の間、入熱上昇速度Q1の上昇速度で溶接入熱を上昇させるように溶接電源の投入電力を制御する。一方、前記インピーダンスの時間変化量ΔZ1が前記上限の基準値Amax未満の場合には、さらに、前記インピーダンスの時間変化量ΔZ1を予め設定された下限の基準値であるBminと比較し、インピーダンスの時間変化量ΔZiがBmin以下の場合には、入熱減少時間指令値T2および入熱減少速度指令値Q2を溶接入熱制御装置に出力し、入熱減少時間T2の間、入熱減少速度Q2の減少速度で溶接入熱を減少させるように溶接電源の投入電源を制御する。一方、前記インピーダンスの時間変化量ΔZiがBmin超の場合には、溶接入熱を減少させる溶接電源の投入電力の制御は行わない。
さらに、時間間隔Δt後、溶接電流I3(A)および溶接電圧E3(V)を測定し、前記溶接電流I2(A)および溶接電流E2(V)から上記と同様に溶接電流の時間変化量ΔI2および溶接電圧の時間変化量ΔE2の算出、インピーダンスの時間変化量ΔZ2の算出を行い、上記と同様にインピーダンスの時間変化量ΔZ2と上限の基準値Amaxおよび下限の基準値Bminとを比較、さらに、これらの比較に基づき、上記と同様な溶接電源の投入電力制御を行う、という一連の処理が予め定められた回数(i=n)だけ繰り返し行なわれる。
ΔIi=Ii+1−Ii ・・・ (3)
ΔEi=Ei+1−Ei ・・・ (4)
ΔZi=ΔEi/ΔIi ・・・ (5)
但し、i=1〜n
なお、上記の上限の基準値Amaxは、例えば、図3に示すような電縫溶接時のインピーダンスの時間変化量ΔZと冷接欠陥発生率との関係から実験的に定められる。
ΔEi=Ei+1−Ei ・・・ (4)
ΔZi=ΔEi/ΔIi ・・・ (5)
但し、i=1〜n
なお、上記の上限の基準値Amaxは、例えば、図3に示すような電縫溶接時のインピーダンスの時間変化量ΔZと冷接欠陥発生率との関係から実験的に定められる。
上記の本発明の第1実施形態では、インピーダンスの時間変化量ΔZiに基づく入熱上昇制御により電縫溶接時の溶接シームでの冷接欠陥発生を抑制することが可能となる。
また、上記の本発明の第2実施形態では、上記第1実施形態の冷接欠陥抑制効果に加えて、さらに、インピーダンスの時間変化量ΔZiに基づく入熱減少制御により、過大な入熱時の溶接スパッタの発生を抑制し、溶接時の使用電力を低減する効果が得られる。
上記本発明の第1実施形態および第2実施形態では、溶接入熱Qを溶接電源の投入電力(溶接電流I、溶接電圧E)により制御したが、溶接速度vにより制御することも可能である。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例で用いた条件は一例であり、本発明は、該条件に限定されるものではない。
表1に示す条件を用いて、冷接欠陥の発生しない高い溶接入熱:0.79kJ/mm(投入電力:435kWで、かつ溶接速度:33m/min)で溶接を開始し、溶接開始直後から意図的に、1分間に2.82m/minの上昇率で、溶接速度を上昇させて比較例の溶接をおこなった。次に本発明の実施例として、表1に示す溶接条件を用いて、冷接欠陥の発生しない高い溶接入熱:0.79kJ/mm(投入電力:435kWで、かつ溶接速度33m/min)で溶接を開始し、溶接開始と同時に表2に示す溶接電圧制御を用いた溶接入熱制御条件で、溶接入熱制御を行った実施例1と、表3に示す溶接電圧制御を用いた溶接入熱制御条件で、溶接入熱制御を行った実施例2をおこなった。
これらの試験結果として、比較例と実施例1および実施例2の投与電力と溶接入熱量および冷接欠陥発生率を表4示す。なお、冷接欠陥発生率は、電縫鋼管の溶接線における単位長さあたりの各冷接欠陥の長さの合計値を測定溶接線長さに対する相対値(%)として示した。
表4において、比較例は、溶接開始から85秒後に、入熱不足に起因して冷接欠陥が発生し始め、徐々に冷接欠陥が増加し、溶接開始から92秒後には、冷接欠陥の発生率が100%となった。
一方、実施例1および2では、本発明法によるインピーダンスの時間変化量に基づく入熱制御を行ったため、冷接欠陥は常に0%にすることができ、溶接品質に優れた電縫鋼管が得られた。
なお、溶接速度33m/minで溶接を開始し、溶接速度を上昇させたときに、溶接入熱を変更せずに溶接を行った比較例と、本発明法によるインピーダンスの時間変化量に基づく溶接入熱の制御を行った実施例1および実施例2のそれぞれにおける溶接速度、投与電力、冷接欠陥の発生率の経時的(溶接時間)変化を図7および図8に示す。
比較例は、溶接開始から85秒までは、溶接入熱が適正条件範囲内のため、冷接欠陥は発生しなかったが、そののち溶接入熱が適正範囲から低く外れたために、溶接入熱不足に起因して冷接欠陥が発生し始め、さらに溶接速度が大きくなったことによって、さらに入熱不足が生じて、溶接開始から92秒後に冷接欠陥の発生率が100%となった。
一方、実施例1では、本発明のインピーダンスの時間変化量に基づく溶接入熱制御をおこなったことにより、溶接開始から80秒後に溶接入熱は上昇を始め、溶接終了の180秒まで上昇を続けた。溶接開始から終了まで、冷接欠陥の発生率が0%となることが判る。
また、実施例2では、本発明法のインピーダンスの時間変化量に基づく溶接入熱制御をおこなったことにより、溶接開始1秒後に、溶接入熱が減少し始め、溶接開始から13秒後に溶接入熱は411kWになり、溶接入熱一定となり、その後、3秒後に溶接入熱は上昇を始め、溶接終了の180秒まで上昇を続けた。この溶接入熱の制御によって、溶接開始から終了まで、冷接欠陥の発生率が0%となることが判る。
1 高周波電流
2 スクイズロール
3 搬送方向
4 溶接シーム
5 帯鋼(鋼板)
6 インピーダー
7 接触子
8 溶接電流測定器
9 溶接電圧測定器
10 演算処理装置
11 溶接入熱制御装置
12 溶接電源
13 鋼管外側表面(帯鋼)
14 端部
15 溶接衝合点
16 溶接線
17 溶接衝合点の位置の差
2 スクイズロール
3 搬送方向
4 溶接シーム
5 帯鋼(鋼板)
6 インピーダー
7 接触子
8 溶接電流測定器
9 溶接電圧測定器
10 演算処理装置
11 溶接入熱制御装置
12 溶接電源
13 鋼管外側表面(帯鋼)
14 端部
15 溶接衝合点
16 溶接線
17 溶接衝合点の位置の差
Claims (5)
- 前記インピーダンスの時間変化量ΔZが、予め設定した上限基準値に比べて大きい場合に、溶接入熱を増加させるように溶接入熱を制御することを特徴とする請求項1記載の電縫鋼管の溶接方法。
- 前記インピーダンスの時間変化量ΔZが、予め設定した下限基準値に比べて小さい場合に、溶接入熱を減少させるように溶接入熱を制御することを特徴とする請求項2に記載の電縫鋼管の溶接方法。
- 前記溶接入熱は、溶接電圧、および、溶接速度のうちの何れか、または、両方を変化することにより制御することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の溶接品質に優れた電縫鋼管の溶接方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004280220A JP2006088220A (ja) | 2004-09-27 | 2004-09-27 | 電縫鋼管の溶接方法 |
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JP2008212961A (ja) * | 2007-03-01 | 2008-09-18 | Nippon Steel Corp | 電縫鋼管の製造方法 |
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2004
- 2004-09-27 JP JP2004280220A patent/JP2006088220A/ja not_active Withdrawn
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